『Phun』を力学シミュレータに(8)
『Phun』もβ5版へのバージョンアップの声を聞き,早速ダウンロードしてみたところ,とりわけβ4では使い物にならなかったくさり(chain)が改良されていた。ちょうど,β4版で使えるようにしようと苦心惨憺していたところ。これでようやく,糸が登場する力学を扱えるようになった。

※ その後滑車のあるシーンを手がけたが,やはりうまくいっていない。下の例は運がよかった?

β5版は,メニューや物体の設定項目の改良・拡張など,だいぶ進化がうかがえる。
(ただ,右クリックメニューが使えなくなったらしいのが残念)
chainは,β4版ではほとんど使えないシロモノだった。質量を小さくすると連結も弱くなり,その状態でおもりを下げると連結が伸びて騒ぎ出すといったありさま。基本的な(疑似弾性的)性質は変わらないが,だいぶ強くなったようだ。ある程度の張力をかけても伸びなくなった。これで,『Phun』に足りない(つくれない)ものとして残念な思いをしていた「伸びない軽い糸」に近いものがようやく実現した。

さっそくの応用問題。下記を使わせてもらうことにする。


質量Mの台が,なめらかな水平面に置かれている。質量M_1のおもりを下げた軽くて伸びない糸が,台に固定された軽い滑車を通じて,台上の質量M_2の小物体につなげられている。おもりは,台の右側面にそって摩擦なく運動できるように拘束されているものとし,またM_2は台上を摩擦なく運動するものとする。全体が静止した状態から静かに小物体を離すとき,おもりがhの高さを落下する間の運動を考察する。


(シミュレーション設定値 M=0.50,M_1=0.10,M_2=0.30,h=1.48,g=9.80

まず,手始めに台が水平面に固定されている場合を考察しよう。
おもりおよび小物体の運動方程式は,
M_1a = M_1g-T
M_2a = T
したがって,加速度は
a=\frac{M_1g}{M_1+M_2}
となり,運動時間は
h=\frac{1}{2}at^2\quad\therefore t=\sqrt{\frac{2(M_1+M_2)h}{M_1g}}\quad(=1.10 \rightarrow 1.11)
   ※ (理論値 → シミュレーション値) 以下同様
軽く(設定最小値)してもかなりたるんで,張力がななめになりそうだが,まあこれぐらいは愛嬌というところ。どうやら,うまいぐあいに「軽くて伸びない糸」らしきものが実現しているようだ。シメシメ。

さて,いよいよ本題。台の固定をはずして,3体の運動にしてみる。

各加速度および力を上の図のようにおく。
おもり,小物体,台の運動方程式は
M_1\beta=N
M_1\alpha=M_1g-T
M_2(\alpha-\beta)=T
M\beta=T-N
以上から,加速度は
\alpha=\frac{M_1(M+M_1+M_2)}{(M_1+M_2)(M+M_1+M_2)-{M_2}^2}\cdot g\quad(=3.27)
\beta=\frac{M_1M_2}{(M_1+M_2)(M+M_1+M_2)-{M_2}^2}\cdot g\quad (=1.09)
運動時間は,
h=\frac{1}{2}\alpha t^2 \quad\threfore t=\sqrt{\frac{2h}{\alpha}}\quad(=0.95 \rightarrow 0.95)
台の移動距離は,
h\times \frac{M_2}{M+M_1+M_2}\quad(=0.49 \rightarrow 0.52)
となった。う~ん,合格!


台の移動距離と運動時間を測定。β5版でメニューや設定項目も一新。

『Phun』による「軽くて伸びない糸」シミュレーション ※ ファイル拡張子がphnからphzになった。

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最終更新:2009年11月27日 11:15