ファインマンのトラス問題
「物理のかぎしっぽ数式掲示板」に寄せられた質問から,
「ファインマン物理学」の力学の演習にあるトラスの問題。


図のようなトラスで、対角線の支柱はみな5の長さ、水平の支柱はみな6の長さである。
つなぎめは蝶番でみな自由に動く。トラスの重さは無視できる。
a) 図のように荷をかけたとき、支柱のどれとどれは、針金で代用できるか。
b) 支柱BD,DEの内部にはたらく力を求めよ。

本来,仮想仕事の原理の問題。しかし,a)ですべての力の正負を仮想仕事で判断するのはなかなか難しい。ファインマンダイヤグラムを発明するようなイメージの天才ならばまだしも。コツとしては,支柱の1本をばねに置き換えてEを下に引くとき,ばねが伸びるか縮むか…ということである。伸びる場合はもとの支柱内部の力は張力,縮む場合は抗力であったことになる。

いよいよとなれば,違反ではあるがつりあいから各連結が受ける力を求めるしかない。
連結点AおよびBが支柱ABから受ける張力をT_{AB}のように表せば、
たとえば連結点Aにおいて,

\frac{3}{5}T_{AB}+T_{AC}=0
\frac{1}{3}W+\frac{4}{5}T_{AB}=0

といった具合に連立させて、順次求めていけば

T_{AB}=-\frac{5}{12}W\quad,\quad T_{AC}=\frac{1}{4}W\quad,\quad T_{BC}=\frac{5}{12}W\quad,\quad T_{BD}=-\frac{1}{2}W
T_{CD}=-\frac{5}{12}W\quad,\quad T_{CE}=\frac{3}{4}W\quad,\quad T_{DE}=\frac{5}{12}W\quad,\quad T_{DF}=-W
T_{EF}=\frac{5}{6}W\quad,\quad T_{EG}=\frac{1}{2}W\quad,\quad T_{FG}=-\frac{5}{6}W

を得る。負になったものは抗力になるわけだ。
したがって,a)の答えは,張力が正であるAC,BC,CE,DE,EF,EGとなる。

せめて,b)は仮想仕事の原理をちゃんと使おう。


BDを縮めると,C点が下がる。
そこで,CGの水平から下がった角度を\it{\Delta}\thetaとおくと,点Eの下がりはh=6\it{\Delta}\theta
同時にDからCEにおろした垂線が\it{\Delta}\theta傾くので,これによるBDの縮みは4\it{\Delta}\thetaである。

一方,ACが水平から下がる角度は2\it{\Delta}\thetaとなる。
同時にBからACにおろした垂線が2\it{\Delta}\theta傾くので,これによるBDの縮みは8\it{\Delta}\theta
合計でBDは12\it{\Delta}\theta縮む。仮想仕事の原理により,求める抗力をFとすると

F\times 12{\it\Delta}\theta = W\times 6 \it{\Delta}\theta

となり,F = W/2を得る。
この結果は,ファインマンのテキストの解答と異なる。テキストが間違っているらしいことは,『Phun』によるシミュレーションでも確認できる。

同様にしてDEが受ける力5W/12を得る。


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最終更新:2009年03月30日 23:25
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