<
ぶしつ!>
「そろそろ唯の誕生日だな。梓、何あげるか決めてるのか」
「律先輩、どうして私に聞くんですか」
「そりゃ、梓は唯の事が…」
「ちなみに先輩方は何を贈るんですか?」
「シカトかよ…」
「当日が土曜日だからな、前日に欲しがってたぬいぐるみをあげるつもりだ」
「私も前日にちゃんとしたケーキを
プレゼントしようかと思ってるわ」
「なるほど、…律先輩は?」
「そうだな…、びっくり箱?」
「もう良いです」
「で、梓はどうするんだ?」
「どうせ、私がプレゼントです!とかだろ」
「訳のわからない事を言わないで下さい」
「それも良いと思うわ~」
「ムギ先輩まで…」
「でもこの機会を利用して気持ちを伝えても良いと思うぞ」
「わ、私は別に…」
「早くくっつけよ」
「律先輩は面白がってるだけですね。
ムギ先輩も満面の笑みを浮かべないで下さい」
「じゃあ梓は何を贈るつもりなんだ?」
「それは…、今悩んでるところです」
「みんなー、遅れてごめんねー」
「おお唯、良いところに。何か梓が困ってるらしいぞ」
「ちょ、律先輩!」
「
あずにゃん、どうしたの?何かあった?」
「い、いえ。何もありません。全く」
「でも入ってくる時、悩んでる、って聞こえたけど」
「気のせいです」
「くっくっく」
「律、お前は…いい加減にしろ!」
「痛っ、澪しゃん、殴らなくても…」
「?」
「唯先輩、気にしないで下さい」
「う、うん?」
「さぁ、練習を始めましょう」
「あー、ちょっとお茶飲んでからでも良い?何か疲れちゃった」
「んー?疲れたって何かあったのか?」
「そう言えば何で遅れてきたんだ?」
「え、あ、あの…。その…。な、何でもないよ」
「そう言えば唯ちゃん、お昼に来てた下級生…」
「ああ、来てたな」
「おー、小柄な子だろ。あ、もしかして今、呼び出されて告白されてたとか?」
「……」
「マジか」
「律、また余計な事を…」
「唯ちゃん…」
「い、いや~、あはは…」
「何て言われたんだ?」
「おい、律よせ」
「言いたくなければ言わなくて良いのよ。唯ちゃん」
「別に良いじゃん。だって断ったんだろ」
「ま、まあそうかもしれないが」
「本当に…断ったの?」
「うーん。断ったって言うか…」
「え」
「…バカ律」
「さぁ、そろそろ練習始めましょうか」
「そ、そうだな」
「余計な事聞いて悪かったな。唯」
「断ってないんですか?」
「お、おい、梓」
「梓、練習するぞ」
「そうね。練習しましょう」
「唯先輩?どうなんですか?」
「返事は私の誕生日にして下さいって言われた」
「それでどうするんですか?」
「ど、どうするって言われても」
「迷ってるって事ですか」
「別に迷ってる訳じゃないよ」
「じゃあOKって事ですか?」
「そうじゃないよ」
「断るんですか?じゃあどうしてその場で断らなかったんですか?
告白された人に誕生日を祝われてその後に断れるんですか?」
「う、うーん…」
「唯先輩にはそんな事できないですよ」
「そ、そんな事は…ないよ…たぶん」
「はぁ…、そうですか。じゃあせいぜい頑張ってください」
「練習、始めようか」
「ああ、そうだな」
「そうね、梓ちゃんも唯ちゃんも。ね」
「…うん」
「…はい」
<ゆいのきょうしつ!>
「はぁ…」
「何だ唯、元気ないなー」
「律、そっとしといてやれ」
「唯ちゃん、あんまり考え込まないでね」
「ところで誕生日ってどうするんだ?土曜日だろ」
「だから余計な事を聞くな」
「…えっと、一応、駅前で待ち合わせしてるけど」
「ふーん。何時に?」
「え、12時だけど…?」
「で、どこ行くの?」
「いや、それしか決めてない…」
「何だそりゃ」
「うーん。別に行きたい所も無いみたいで…」
「なるほどねー」
「りっちゃん、もうその話は…」
「律、その辺にしとけ」
「はいはい。じゃー頑張ってなー」
「う、うん…」
<あずさのきょうしつ!>
「おーい、梓」
「律先輩、どうしたんですか?わざわざうちのクラスまで来て」
「唯は土曜日12時に駅前で待ち合わせ、その後どうするかは決まってないとさ」
「は?」
「じゃ、それだけだから」
「ちょ、ちょっと律先輩」
「何?」
「な、何ですか突然」
「別に」
「それを私に知らせてどうするんですか」
「その情報を使ってどうするかは梓が決めろよ」
「…後をつけろとでも?」
「はぁ?それで良ければそれでも良いけど?」
「何なんですか。何をしろと言うんですか」
「待ち合わせ12時って事は11時ごろまでは体が空いてるんだなーとか」
「……」
「じゃーねー」
<ぶしつ!>
「唯、1日早いけど誕生日おめでとう!」
「おめでとう」
「唯ちゃん、おめでとう」
「…おめでとうございます」
「みんなありがとう!」
「明日土曜日だから今日で悪いんだがプレゼント渡すぞ」
「これ私が前に言ってたぬいぐるみだ。覚えててくれたんだ。ありがとう!」
「唯ちゃん、これ私から。後に残らないもので悪いんだけど」
「うわ、すごいケーキだね。美味しそう!ありがとう!」
「じゃー、私からはー!これだー!」
「うーん。微妙に開けたくない…」
「失礼だな。おい」
「やっぱり…」
「律、そろそろ成長しろ」
「りっちゃん…本当にびっくり箱持ってきたのね」
「でもりっちゃんらしくて嬉しいよ。ありがとう」
「すいません。唯先輩、私は何も用意してなくて」
「ううん。全然良いよ。気にしないで」
「梓…」
「梓ちゃん…」
「よーし。みんなからお祝いしてもらったから元気が出てきたよ!」
「じゃあ練習するか」
「え、今日は唯の誕生日祝いだから練習は良いんじゃないか?
「唯の誕生日にかこつけてサボろうとするな!」
「ふふふ」
「りっちゃん隊長、私は今日練習を頑張るよ!」
「まあ今日の主役がそう言うならやりますか」
「唯が言わなくてもやるんだ」
「じゃあ頑張りましょう~」
「……」
<ひらさわけ!>
「…お、おはよう…憂」
「梓ちゃん?どうしたのそんなに息を切らして」
「唯先輩…、まだ…いる…かな」
「お姉ちゃん?うん、寝てるけど」
「え…まだ寝てるの?もう10時だよ!今日出かけるのに起こさなくて良いの?」
「出かける?そんな事言ってなかったよ?」
「ちょっと起こしてくる!」
「え、あ、う、うん」
「唯先輩!入りますよ!」
「あ……あずにゃーん……おやすみ…」
「起きてください!もう10時過ぎてますよ!準備しなくて良いんですか!」
「大丈夫だよ~」
「何が大丈夫なんですか!全然ダメですよ!遅刻しますよ!」
「今日、学校休みだよ~?」
「学校じゃなくて…。人と会う約束してるじゃないですか!」
「してないよ~」
「は?ちょっと待って下さい。唯先輩、いくらなんでもそれはひどいです」
「うーん?」
「すっぽかすつもりですか」
「んー?何をー?」
「だから、その、今日告白してきた人と…会うんですよね」
「んーそれは昨日断ったー」
「え」
「うーん。あずにゃんが怒鳴るから目が覚めちゃったよ」
「ど、どういう事ですか」
「え、あずにゃんが大きい声出すから…」
「目が覚めた理由は聞いてません!」
「?」
「寝ぼけてますね…」
「うん」
「そこではっきり返事をしなくても良いです。
もう一度聞きます。唯先輩、今日は人と会う約束があるんじゃないですか?」
「それは昨日断った」
「どうしてですか」
「ちゃんと言った方が良いと思ったから」
「何をですか」
「好きな人がいるって。
考えてみたら一緒に過ごした後にそんな事言われるの嫌だよね」
「…」
「それに私も誕生日に別の人と過ごすのは違うかなって」
「…そうですか」
「でも今日はあずにゃんが来てくれたからすごく嬉しいよ!
目が覚めたらあずにゃんがいたから今までで一番嬉しい誕生日だね!」
「そんな事はないでしょう。…好きな人と過ごせた方が良いに決まってます」
「え?好きな人と過ごしてるよ。今」
「は?」
「?」
「えっと、唯先輩?」
「ん?」
「ちょっと意味がわからないんですが」
「何が?」
「「好きな人と過ごしてるよ。今」の部分を翻訳して頂けませんか」
「あずにゃんの事が好きだから、今日は好きな人と過ごせて幸せだよ。かな」
「ちょ、ちょっと待って下さい」
「うん」
「今、かなりさらっと言いましたけど」
「うん。私の好きな人はあずにゃんだよ。あれ?もう気づいてるのかと思ってた」
「わかりませんよ…」
「ずっと好きだよって言って抱きついてたのに…」
「あれは、冗談じゃなかったんですか」
「うん」
「……ちょっと待って下さい。でも他の人にもしてますよね」
「……た、たまにね」
「どういう事ですか」
「そ、それは…癖かなー」
「私の事が好きなら抱きつくのは私だけにすべきじゃないですか?」
「そ、そうかもしれない…ね」
「かも?」
「い、いや。そ、そうだね。うん。そうだよ!」
「やっぱり信用できないですね」
「い、いや、そんな事ないよ。好きだよ!あずにゃんの事が大好きだよ!」
「そうやって他の人にも言ってますよね。絶対」
「そんな事ないよ。あずにゃんの事が一番好きだよ」
「一番…、と言う事は二番、三番と続くわけですか。それは」
「ち、違うよ!あずにゃんの事だけが好きなんだよ。ホントだよ!」
「どうですかねー」
「うう…誕生日なのに…」
「もはやそんな事は関係ありません」
「ええー、関係ないのー」
「そうです。今、重要なのは本当に唯先輩が私の事を好きなのかどうかです」
「好きだって言ってるのに…」
「今までの態度から考えて信用できません」
「…あずにゃん、信じて…」
「そ、そんな目で見てもダメです」
「うーん。どうすれば信じてくれるのかなー」
「さぁ、頑張ってください」
「そ、そう言えばあずにゃんがどうして今私の部屋に?」
「ごまかしてますね」
「い、いや。だって良く考えたら朝起きてあずにゃんが突然部屋にいるから」
「…まあ確かに突然ですよね。すいません。昨日プレゼントを渡せなかったので」
「いいって言ったのに」
「いえ、ちょっと今朝慌てて買いに行ったものでつまらない物ですが」
「あー、ギターの弦だー。これでちゃんと練習しろって事だね!あずにゃん!」
「唯先輩はギー太を大事にしているので」
「あずにゃん、ありがとー」
「何だか色々ごまかされた気がしますが、そろそろ失礼しますね」
「えー、帰っちゃうのー?」
「プレゼントを渡しに来ただけなので」
「今日、何か用事があるの?」
「特にありませんが」
「じゃあ帰らないでうちにいてよ!」
「…」
「あずにゃん」
「はい」
「今日は何の日?」
「いいフナの日です」
「……」
「すいません。唯先輩の誕生日です」
「そうだよねー、じゃあ私の我儘を聞いてくれても良いんじゃないかなー?」
「いつも聞いてるような気が…」
「何かな?」
「いえ、何でもありません。わかりました。ではもうしばらくいます」
「わーい。あ、そう言えばお腹が空いたねぇ、あずにゃん朝ごはん食べた?」
「いえ…、今朝は急いでいたもので」
「じゃあ一緒に朝ご飯を食べてから弦を張り替えよう!」
「は、はぁ…」
――――――
「じゃあせっかく弦を張り替えたのでギターの練習でもしますか」
「うっ、何となくそう言われるような気がしてたよ」
「まあ他にする事がありませんからね」
「あずにゃんはひどい事を言うねぇ」
「そうですか?」
「そうだよ。さっきも朝起きてすぐ怒られたし…あ」
「墓穴を掘りましたね」
「い、今のは無しで」
「思い出したようなので再開です」
「毎日色んな人に抱きついて大好き!とか言ってる人の告白をどう信用しろと」
「そ、それは、あれだよ。ほら、私の目を見てくれれば」
「目が泳いでますけど」
「う…」
「真剣さが足りませんよね。大体」
「ど、どうすれば…」
「さぁ?それは唯先輩が考える事です」
「うーん。そもそもさ」
「何ですか」
「あずにゃんは私の事どう思ってるのかな?」
「そ、それは…、い、今は関係ないと思いますが…」
「私は知りたいよ」
「……」
「そんなに追求してくるのはあずにゃんも私の事が好きだと思って良いの?」
「そ、それは…」
「あずにゃん」
「は、はい」
「もしあずにゃんが私の事を好きなら私の事を信じて目を閉じて欲しい」
「はぁ…」
……
「…ゆ、唯先輩…!」
「これで信じてくれた?」
「こ、これは、さすがに他の人にしてないですよね」
「本当に全く信じてないんだね…」
「い、いえ、すいません。ちょっと動揺して…」
「あずにゃんだけだよ」
「絶対ですか」
「絶対だよ。あずにゃんとしかキスしないし、もう他の人に抱きつかないよ」
「…わかりました。信じます」
「へへー、良かったー。二つも誕生日プレゼントありがとう!」
「あ、唯先輩」
「ん?何?」
「すいません。すごく遅くなりましたが、誕生日おめでとうございます」
「ありがとうあずにゃん。来年も再来年も
ずっと一緒にいようね」
「…はい。
これからは誕生日に予定入れないで下さいね。私がお祝いしますから」
「うん!」
<ぶしつ!>
「こんにちはー」
「おー、梓」
「律先輩だけですか?珍しいですね」
「何か不満があるのか?」
「い、いえ。違いますよ。その、昨日の事のお礼を言おうと思っていたので…」
「ん?昨日の事?」
「はい、唯先輩の誕生日の事です。色々ありがとうございました」
「ほうほう、その顔は役に立ったみたいだな」
「ええ。あ、ただ役に立ったと言うか…」
「唯が先に約束断ってたか」
「知ってたんですか?」
「いや、何となく唯ならそうするかなって。じゃあ情報はいらなかったな」
「いえ!そんな事ないです。
律先輩から言われなかったら、その…、ありがとうございます」
「そうか、梓良かったな」
「梓ちゃん、良かったわね~」
「み、澪先輩、ムギ先輩」
「心配したぞ」
「そうよ~」
「ご心配おかけして申し訳ありませんでした」
「ところで結局プレゼントはどうしたんだ?」
「あ、当日にギターの弦を買いまして…」
「それから?」
「そ、それからって何ですか」
「あれ、遅れた?ごめんねー」
「噂をすれば…」
「お、唯」
「あら、唯ちゃん」
「あ、あずにゃーん」
「い、いきなり抱きつかないで下さい!」
「仲のよろしい事で」
「昨日は良い誕生日だったみたいだな」
「ふふふ、唯ちゃん嬉しそうね」
「うん!」
「ところで唯、ギターの弦以外に何をもらったんだ?」
「えへへー」
「唯先輩!何嬉しそうにしてるんですか!否定して下さい!」
「なるほどー」
「な、何を納得してるんですか」
「結局最初に言った通りになったじゃないか。プレゼントは梓だろ?」
「うん!」
「ゆ、唯先輩!そ、そこまではしてません!」
「ほう、じゃあ、どこまでしたのかな?」
「はっ…、ち、違います!何もしてません!」
「いまさら否定しても遅ーい!」
「律、あんまりからかうな」
「でも幸せそうだから、良いんじゃないかしら~」
「…それにしても、唯も澪ももてるなぁ、ムギ」
「そうね~、でも私は見てるだけで幸せだから~」
「ムギに聞いたのが間違いだったか」
「わ、私は別にもてないぞ!」
「ファンクラブまであるくせに」
「そ、それは…」
「唯に告白した子だって結構かわいかっただろ」
「…そうだな。小さくて」
「あ、いや、べ、別に身長とかは…」
「…梓も小さくてかわいいよな」
「だ、だから身長は別に…なあ、ムギ」
「りっちゃんもそろそろ人の世話を焼いてる場合じゃないんじゃないかしら~」
「む……」
「小さくて、かわいい…か、どうせ私は手も大きいし…」
「う……、そ、そうだ唯」
「んー?何?」
「唯は和と仲が良いよな」
「うん?幼馴染だからね」
「でももう梓もいる事だしそろそろ抱きつくのやめたらどうだ?今日もしてたろ」
「あ」
「…唯先輩」
「は、はい」
「手を離して下さい」
「はい」
「着席です」
「…はい」
「さて唯先輩、今、律先輩が言っていた事は本当ですか?」
「い、いや、あ、あずにゃんこれには訳が!」
「ええ、聞きますよ。これから詳しく」
「う…、お、怒ってる?」
「怒られるような事をしたんですか?」
「あの、それは…」
「答えはYesかNoです」
「い、いえす……、で、でもちょっとだけだよ!すぐ離れたよ!」
「なるほど、5秒以内だったら私が許す。とか思ってるんですか」
「そ、そう言う訳じゃないけど…。り、りっちゃーん、ひどいよー」
「ふっ、少しは痛い目に合えバカップルめ」
「りっちゃん、ごまかすために唯ちゃんを生贄に…」
「梓もまあそのくらいで…」
「澪先輩、こう言う事は最初が肝心なんです!」
「……犬のしつけみたいだな」
「昨日、約束したじゃないですか!もう忘れたんですか?」
「うう…、つい癖で…」
「癖?それ直すって言ってましたよね。昨日」
「は、はい…そうです。ごめんなさい」
「さっそく尻にしかれてるな」
「律、お前のせいだろ」
「でも仲が良くて良い事だわ」
「ま、とにかく」
「昨日は良い誕生日だったみたいだな」
「一日遅れだけど、改めて~」
<おしまい!>
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最終更新:2010年12月10日 13:51