「ゆっくりしていってね!!」
その
ゆっくりれいむはガラス張りの大きな箱の中にいた。
箱の中はゆっくりには十分すぎるほどの広さと遊び場があり、
ゆっくりれいむは時には遊び、時にはゆっくりしながら生活していた。
このゆっくりれいむは昔は野生であり、
天敵も多く食料調達すらままならない過酷な環境の中を生き抜いてきたのだが、
あるときやさしいおじさんに連れられて、この箱の中で生活することになったのだ。
箱の中にも外にもゆっくり種の友達はいなかったが、
毎日やさしいおじさんが箱の中をたずね、
ごはんをくれたり、遊び相手になってくれたりした。
ちょっとした「おやつがたべたいよ!」といったわがままなら聞いてくれたりもした。
箱の中の遊具でちょっと怪我をし餡子がこぼれそうになったときには、
血相を変えて駆けつけ、おじさんのお友達をあつめて治してくれた。
なかなか箱の外には連れて行ってくれないのがちょっと残念だけど、
ゆっくりれいむはやさしくしてくれるおじさんが大好きだった。
箱の外には毎日いろんな人が訪れ、ゆっくりれいむを物珍しそうに見つめ、
ある者はかわいい、ある者は気色悪いと、さまざまな感想を述べていたが、
厚いガラス越しで声が聞こえないこともあり、
ゆっくりれいむは、くる人全てが注目してくれている事実を素直に喜び、
飛び跳ねては「ゆっくりしていってね!!」と愛嬌を振りまいた。
天敵のいない環境。約束された生活。
ゆっくりれいむは間違いなく世界一大切にされるゆっくりだった。
夜になり、電気も消えるとゆっくりれいむもお休みの時間。
明日もいっぱい人がきてくれるかな。明日もゆっくり出来るかな。
そう考えながら、ゆっくりれいむはうとうとと夢の中に旅立つ準備を始める。
眠りに落ちる直前ゆっくりれいむは、まだ箱の外にいたころ数度だけ見た、
同じゆっくり族の友達となかよくゆっくりしたことを思い出す。
いつかはあの子と一緒にここでゆっくりできたらいいな。
そんなことを思いながらゆっくりれいむは眠りに付いた。
ゆっくりれいむがゆぅゆぅと寝息を立てながら眠るその箱には、
「最後の"ゆっくり"種」という文字が記されていた。
おわり
最終更新:2008年09月14日 05:06