ゆっくりいじめ系2910 教育の成果1

それはかすかな音だった。
だが俺は農夫として長くこの畑で働き続け、『やつら』と長い間付き合ってきたため、
その音を聞き漏らすことはなく、その発生源をすぐさま特定できた。
気配を殺し、音のした方をそっと探る。
青葉のカーテンを掻き分けると、そこには数匹のゆっくりがいた。
「いい、ちびちゃんたち? 音を立てちゃだめだからね。ゆっくり、ゆっくり動いてね。
跳ねたりしちゃだめだよ? ゆっくり理解してね? そろーり、そろーり」
「おきゃーしゃんゆっくちわかっちゃよ……。しょろーり、しょろーり」
ゆっくりどもは囁くような声を交わしている。
ゆっくりにしては真剣な表情をして、用心深くしている。
ゆっくりどもの内訳は親れいむに赤れいむ二匹、赤まりさ二匹。計五匹の一家だった。
普通、狩り(畑荒らしを狩りとは認めたくないが)をするのはつがいのまりさであることが多い。
子連れで現れたことと併せて考えると、こいつはしんぐるまざーなのかもしれない。
しんぐるまざーはゲス率の高いことで知られている。親がゲスならその子供たちも当然ゲスだろう。
これは手ごわいかもしれない……。
「やあ! ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていっちぇね!」
相変わらずの愚かぶりに思わず苦笑が漏れてしまう。
元気よく返事してしまったゆっくり一家は俺の方を見上げて硬直している。
「に、人間さん! あ、あのね! 違うんだよ! れいむたちは!」
「問答無用!」
ゆっくりと会話することなど無駄以外の何物でもない。
どうせすぐばれる嘘かくだらない言い訳を延々と並べ立てられるだけだ。
俺は仕事道具の鎌を素早く親と思われるれいむの脳天に突き刺した。
「ゆぎっ! ゆぎぃぃぃぃぃ!!」
親れいむは白目剥いて口から泡を吹き出して悶絶した。
「おきゃーしゃんがぁぁぁ!」
「おきゃーしゃんゆっくちしちぇね! ゆっくちしちぇね!」
まず叩く。まず人間の優位性を蠢く饅頭どもに知らしめる。
そうして初めて会話が可能になるのだ。
もちろん、足止めも兼ねている。
「さあて。こいつらを教育してやるか」
俺はゆっくりの教育をしていた。
ただ駆除するのではキリがない。やつらはいくら潰しても際限なく増えやがる。
だから教育をすることにした。
畑に侵入すること、野菜を盗むこと、人間に敵対することがいかに割に合わないことなのかを、
いかに人間がゆっくりより強いのかを教え込む。
この世の掟を餡子脳に刻み込んでやる。
教え込んで森に放す。解放されたゆっくりは仲間たちにこの世の道理を教え諭すだろう。その変わり果てた姿は言葉以上に雄弁だろう。
これはゆっくりどものためでもある。
やつらも人間や畑というものについて認識を改めれば、無駄に儚い命を散らすこともないのだ。
俺は虐殺や虐待が好きなわけではない。
話のわかる善良なゆっくりならいたぶったりはしない。
酷い目にあわせるのはゲスだけだ。それも教育のためにしかたなく、だ。
制裁を兼ねた教育なのだ。
……実際にはなかなかうまくいかない。
やつらゆっくりに、農業の概念、土地の概念を教え込むのは難しい。
やつらにも縄張りの概念はあるのだが、広大な畑すべてが人間一人のものという状態が納得いかないらしい。
やつらにとっては畑とそうでない土地との境界線もよくわからないらしい。
そして、野菜は勝手に生えてくるものと信じて疑わない。
畑に現れるゲスゆっくりは一向に減る気配がない。
そういうわけで、ゆっくりたちにゆっくり理解してもらうにはかなり手荒な方法を使わなければならない。
「おきゃーしゃん! おきゃーしゃん!」
「お返事しちぇね! 元気になっちぇね! ゆっくちしちぇね!」
「びゅ……びゅ……びゅ……」
赤ゆたちは必死に親れいむを舐めたり励ましたりしている。
逃げたりはせず親から離れない。
涙ぐましい家族愛……に見えるかもしれないが、無力な赤ゆにとって親ゆは生命線だ。
もっと端的に言えば食糧供給源だ。
逃げないのは親から離れては生きていけないからだ。別にかばっているわけではない。
ゆえに、俺のような経験者から見ればこういった態度だけでゲスか善良かを判断するのは極めて危険と言える。
俺はいつも腰に下げているズタ袋を広げると、赤ゆっくりを一匹ずつ摘み上げて放り込んでいった。
「やめちぇね! ゆっくちさせちぇね!」
「おきゃーしゃんに酷いことしゅるにゃあぁぁぁ! ぷきゅうぅぅぅぅぅぅ!」
赤ゆどもは必死に膨れて抵抗するが、もちろん何の効果もない。
ゆっくりの威嚇ほど無意味なものはない。
ゆっくりが出現した当初は野生動物たちにある程度通用したらしいが、今では慣れられてしまったのか誰にも効果がない。
押しも押されぬ最底辺動物の地位を獲得したわけだ。おめでとう。
俺はすべての赤ゆを収容すると、空いてるほうの手で親れいむを無造作に掴み上げ、家へと運んでいった。

「さあて歓迎するぞ、カスゆっくりたち。俺とおまえたちの植物相に関する考えの違いを腹を割って話し合おうじゃあないか。
それとも脳天を割ってやろうかね?」
俺はゆっくりどもをぶら下げたまま台所へと入っていった。
錬金術は台所で生まれたらしいが、拷問術もそうかもしれないな。
まあ、調理道具以外のものもいろいろ転がってるんだけどな。
ここにはゆっくりを虐待もとい教育するために便利な道具が揃っている。
とりあえずゆぎゃーゆぎゃーうるさい赤ゆどもを水槽の中に放り込む。
鍋でもよかったが、外の様子を見せられる方が何かと都合がいいし、うっかり調理してしまうかもしれないし。
こいつらを殺すつもりはない。生きて森に帰ってもらう必要がある。
こいつらこそ人間のおうち恐怖伝説の生き証人だからだ。
「びゅ……びゅ……びゅ……」
だが、親れいむの様子がおかしかった。ただ痛がってるのではないようだった。
どうやら、言語を司る部分の餡を破壊してしまったようだった。
ゆっくりは餡の配置に関しては個体ごとに差が激しいため、こういうアクシデントもしばしば起こる。
しかし困ったものだ。これではこの親れいむの口から反省の言葉を吐かせることはできないだろう。
手当てしてやっても一生言語機能は回復しないだろう。
仕方がない。こいつには死んでもらうとしよう。
なに、代わりに赤ゆたちは生き残るための知恵を得るのだ。親としても本望だろう。
俺はコンロに火をつけ、その上に親れいむをかざした。
「びゅううう! びゅううううう! ぶびゅびゅぶうぶうううううう!」
「おきゃーしゃん! おきゃーしゃん!」
「おきゃーしゃんをはなしぇぇぇぇ!」
「やめちぇね! やめちぇね!」
「どぼじでごんなごどずりゅのぉぉぉぉぉぉ!」
親れいむは灼熱地獄から逃れようと身をよじるがまったく効果は無い。
赤ゆっくりたちは一斉にゆんゆんと泣き喚いてる。
やがて、親れいむのあんよ(底部)は真っ黒に炭化し、完全に焼き潰された。
逃げられる心配はなくなったので机の上に放り出す。
「ぶびゅ……びゅびゅ……びゅ……」
「さあて、おまえたちにひとつ質問だが、おまえたち何でこんな目に合ってるのかわかってるか?
自分たちが悪いことをしてしまったのがわかるか?」
「ぷきゅうううう! れーみゅ強いんだよ! 本気でおこっちぇるんだよ!」
「ゆっくちできにゃい人間はしゃっしゃっとおきゃーしゃんを離しちぇね!」
こりゃ駄目だ。まだ力の差がわかっていないらしい。
こいつら相当なゲスだな。親れいむの言語機能がいかれたのはある意味幸運だったかもしれない。
しんぐるまざーがどうだの、れいむはかわいそうだの、人間は奉仕すべきだのとほざかれたらうっかり潰してしまいかねない。
そんな楽な死を与えてやるつもりはない。罪の重さにまったく釣りあわない。
「そうかそうか……。それじゃあ教えてやろう。おまえたちの罪状は畑荒らし。
俺が端正込めて育てた大切なお野菜さんを食い散らかしたことだ。どれどれ」
俺は親れいむを数回平手で打ち、無抵抗にさせてから無理やり口を開かせた。
開かせた口には歯医者が使うような金具をあてがい勝手に閉じられないようにする。
「きたねー歯だな。歯磨きしてないのか? ふうむ……野菜カスらしきものは見当たらないな。
まだ食われる前だったか。不幸中の幸いというべきか。
だが領域侵犯の罪は許しがたいことだ。そして未遂とは言え俺の野菜を食うつもりだったことは明らかだな。
ならば……未来永劫お野菜を食べてしまう心配が無いようにしよう! これは農家として当然の自衛行為だな!」
俺はごっついペンチを取り出すと、親れいむの歯をそれで掴み、一方親れいむの頭を抑えつつ……一気に引き抜いた。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~~~~!」
「おぎゃあじゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
俺は次々に歯を抜いていく。上の歯も下の歯もだ。
抜いてやった歯を赤ゆっくりに命中するように、水槽の中に投げ落してやる。
「ゆべっ!」
「いちゃい!」
「おきゃーしゃんの歯しゃんが……」
「ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~~~~!」
「もう喋れなくなったのだからいらないだろう。ついでに食う必要もなくなったわけだ。
さてと、あとわずかな命だが念のために化膿止めをつけてやろう。俺って優しいね」
俺は冷蔵庫から練りわさびを取り出すと、たっぷりと取り出し、親れいむの歯茎に塗りつけてやった。
「ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~~ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛~~~~~~~~!」
あんよが潰されてなかったら、そこら中を跳ね回っていたことだろう。
親れいむは微動だにできないため身をぐねぐねとよじることしかでない。
こいつの痛みを想像すると寒気がするぜ。
「ゆえーんえんえん! ゆええーんえんえん! ゆええええええーーーーーーーん!」
赤ゆっくりたちはひたすら泣き喚いている。餌運びマシーンがお釈迦になって悲しがっているのだろう。
次はこいつらに教育を施す番だな。親ゆっくりを廃ゆにして見せたことで力の差はわかったことだろう。
「これで人間のお野菜さんを食べるとどうなるかがわかっただろう。
次はゆっくり二大罪悪の残りのひとつ、おうち宣言に関する授業だ」
赤ゆたちは俺のありがたい講釈には耳を貸さず、泣き喚いたり、水槽の隅で震えたり、膨れて威嚇したりと様々だが、
未だに謙虚な気持ちになってないことでは同様のようだった。
「おまえたちおうち宣言は好きか? どうだ俺のおうちは? 欲しいか? 食糧食い散らかしたいか? うんうんしたいか?
『ここはれいむのおうちだよ! ゆっくりできない人間はゆっくりしないでさっさと消えてね!』だっけ?
おまえら我侭に振舞えばなんでも通ると思ってんのか? ああ!?」
赤ゆたちは何も答えない。
「まったくおまえたちの認識の甘さには呆れさせられる。ゆっくりなど最低の下の下の下等動物にすぎないというのに、
どうして霊類の長である人間に勝てると思うんだ? どうしてその住居を奪えるなんて勘違いをするんだ?
おまえらのおきゃーしゃんをガラクタにしてやったんだぞ? 親より小さいおまえらがどうやって俺と戦うってんだ?
答えてみろよ? ゆっくり答えてみろよ?」
赤ゆたちは何も答えない。
涙をためて膨れるばかりだ。
どうやらまったく反省してないらしい。
「仕方がない。それじゃあおうち宣言をさせてやろう。気の済むまでさせてやろう。嫌になるほどさせてやろう!」
「やめりょおおお!」
「はなしぇぇぇぇぇ!」
俺は赤ゆっくりどもを水槽からつまみ出すと、特性の『おうち』に招待してやった。
特性の『おうち』も水槽だがちょっとした仕掛けがある。
「いぢゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「いぢゃい! いぢゃいよおぉぉぉぉぉぉ!」
水槽の底にはマットが敷かれていた。
それは針の植わった特製のマットだった。
「だじぢぇぇぇぇぇぇ!」
「ここからだじぢぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「おぎゃーしゃぁぁぁぁん! おぎゃーしゃぁぁぁぁぁぁん!」
「ゆああああああああ! だずげぢぇぇぇぇぇぇ!」
かなり気に入ってくれたようだ。
「どうだい? とてもゆっくりできるおうちだろう? そこでなら好きなだけおうち宣言していいぞ。
おうち宣言しなくていいのか? そこはまりしゃのおうちだよ? ゆっくりしていかないの?
あまあまを持ってきてやろうか? おもちゃを入れてやろうか?」
赤ゆたちは痛みに跳ね回った。なんとか針のない場所を探そうとしてるのもいるが、そんな場所はないし、動き回ればそれだけ針も刺さっていく。
ずぶりずぶりと赤ゆたちを容赦なく責め立てる。
「だじぢぇ……」
「もういやぁぁぁぁぁ」
「ゆっぐぢできにゃいぃぃぃぃ……」
このおうちはたっぷり堪能したようなので、次のおうちに入れてやる。
「ゆふぅ……ゆふぅ……」
「ゆひぃ……ゆひぃ……」
ゆっくりたちは針地獄から逃れられてようやく一息つけたようだ。
二番目のおうちは針が生えていたりはしなかった。ゆっくりを傷つけるものは無いように見えた。
おかしなところは何もなかった。
なぜか緑色に染まっていることを除いて。
「ゆひ?」
「ゆひぃ? ゆひゃぁぁぁぁぁぁ!」
「ゆびゃぁぁぁぁぁ! あじゅいぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「いじゃい! いじゃい! だじゅげぢぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
四匹の赤ゆたちは次々に悲鳴を上げて跳びはね始めた。
そう、この水槽は一面わさびを塗ってあるのだ。
傷口から染み込んでそれはもうさぞや……。
「どうだ緑色で綺麗なおうちだろう? 森さんに帰ってきたみたいでゆっくり落ち着けよな?
あまり嬉しくて跳びはねてしまうか! そりゃよかった!」
人間でも傷口にわさびなんから塗られたら悶絶するほど痛いだろうが、甘味生命体であるゆっくりにとって辛味は毒といってもいい存在だ。
うっかり唐辛子を食べたせいでショック死することもあるという。
こんなわさび空間に入れられたら傷口がなくとも相当な苦痛だろう。
赤ゆどもをしばらくダンスさせてから、俺は赤ゆたちを最後のおうちに運んだ。
最後のおうちは他のよりも変わっていた。三つの四角い箱を角同士でくっつけたような形をしていた。
ゆっくりたちがいるのは中心に開いた三角形の空間だ。
他四つの四角い空間は外面が黒く塗りつぶされていた外を見ることが出来ない。
針もない、毒もない。
暗いことを除けばゆっくりできる空間に思えたことだろう。
「さあて、赤ちゃんゆっくりたちのために素敵なショーを始めるとしよう!」
俺は三角の空間の壁のひとつを取り外した。
「ゆ! ゆゆ? ゆんやああああああああああああああ!」
赤ゆたちは壁の向こうに現れたものに驚愕した。
それはれみりゃであった。
「うー! たべちゃうぞー!」
「れみりゃはいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「きょっちきょないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
れみりゃとは言うまでもなく捕食種だ。ゆっくりを食って生きる変わった生物だ。
ゆっくりにとってこの上ない恐怖の対象なのだ。
「はっはっは。お友達にあえて嬉しそうだな」
当然のことながら、ゆっくりたちはれみりゃから出来る限り遠ざかろうとした。
つまり反対側の角っこにきたわけだ。
「二匹目のお友達にも登場してもらおうか!」
俺は壁のひとつを取り外した。
そこの向こうにはふてぶてしいツラがあった。
「おお、ゆっくりゆっくり。 おお、うるさいうるさい。 おお、うざいうざい」
「ゆっぐぢできにゃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
次に現れたのはなんときめぇ丸であった。
きめぇ丸は捕食種ではないが大抵のゆっくりが苦手とする種だ。
ある意味捕食種以上に恐れられているという。
きめぇ丸に出会うとゆっくりできなくなってしまうそうだ。
ゆっくりたちは指図されるまでもなくこの二大恐怖から等間隔に距離をとった。
四匹固まってこの上ない挟み撃ちの恐怖に震え上がっている。
「いよいよ最後のお友達の登場だ!」
俺は最後の壁を取り外した。
「ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
一際高い恐怖の絶叫が響き渡った。
「こーぼーねー」
そこにいたのはなんとなんと、ゆっくりゆゆこだった。
ゆゆことは最大級の捕食種だ。恐ろしい大喰らいで、ゆっくりを群れ単位で壊滅させるらしい。
ゆっくり最悪の天敵といってもいい。
「ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ゆあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
恐怖三つ巴の中でゆっくりたちはもう叫び続けることしかできない。人間だったら顎の骨が外れそうだな。
「どうだ? おうちは気に入ったかい? どれでも好きなのに住まわせてやるぞ。それとも、三つのおうちを交互に行き来するかい?
それはまた豪勢だな! はははははははははははははは!」
「ゆぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
タネを明かすと、この三体の捕食種+αたちは本物ではない。
ゆっくりなんてくだらないものを飼うのは都会もんだけだ。そもそも、ゆゆこは超レアなのでいくら金を積んでも個人で手に入るものではない。
研究機関が抱え込んでいるのだ。
こいつらの正体は人形だ。隠されたスイッチを押すと本物そっくりの鳴き声を出すことも出来る。
本来は、ある種の『カカシ』として使われていたのだが、狡猾なゆっくりどもはじきに見破るようになってしまった。
とはいえ、それは成体に関してのこと。物の道理のわからぬ赤ゆっくりには充分通用する。
「ん?」
俺はちょっと変わったことに気がついた。
別にたいしたことではないのだが、赤ゆっくりたちはこの三つの恐怖のうち、れみりゃばかりに気を取られてるように見えた。
位置を見れば一目瞭然だ。初見ではゆゆこに一番驚いたように見えたが、今はむしろゆゆこ側にかなり近づいている。
れみりゃよりも、きめぇ丸やゆゆこの方が恐れられていると思っていたのだが……。
まあ、れみりゃは希少種ではない身近な恐怖だからかもしれない。どのみちどうでもいいことだ。
重要なのは赤ゆどもが恐怖しているということだ。
とりあえずこの教育はここまでとしよう。
俺は、叫び疲れて荒い息をついてガクガク震えている赤ゆたちを元の水槽へと返した。
「ゆふぅ……ゆふぅ……」
「ゆひぃ……ゆひぃ……」
「きょわいよ……きょわいよ……たしゅけちぇ……」
「で、おまえたち。ゆっくり理解したか? 人間さんの強さがわかったか? 罪を犯したことを認めるか?」
「ゆぅぅぅぅぅ……ゆぅぅぅぅぅぅぅ……」
「ゆぅぅぅ……ゆぅぅぅぅぅぅぅ……ゆぅぅぅぅぅ……」
ゆっくりたちは威嚇こそしなくなったものの、嗚咽を漏らすばかりでまったく俺の話しを聞いていないようだった。
姉妹お互いに寄り添いあい、水槽の隅っこに固まって震えるばかりだ。
普段ならこの辺りで絶対者たる人間に許しを乞うところなのだが……。
こいつらはもしかすると噂の完全ゲスだろうか?
完全ゲスには何を言ってもいっさい聞かないという。絶対にまともな答えを返さないという。
あまりに知能が低すぎて自分が悪いとは夢にも思わないのだ。
そうだとするとこいつらを教育するのは相当難しいかもしれない。
これは完全な仕置きが必要のようだな。
強烈なショックを与えてゲス性を払拭させるしかない。
俺は放置していた親れいむの様子を確かめた。
「ん゛……ん゛ん゛……ん゛……」
激痛の中で意識が混濁してるらしい。放っておいても衰弱死するかもしれない。
だが、ここは派手に死んでもらうことにしよう。
「さて、今日最後の授業だ。
おまえたちには畑荒らしとおうち宣言という二つの罪悪があるが、それらに必ず伴うものがある。
そう、威嚇だ。ぷくーって膨れる奴だ。
もちろんそんなもの強く賢い人間にはまったく通用しない。ちっとも怖くない。
……だが! それは人間を見下しているという、人間の強さを認めていないという明白な証拠だ!
そこでおまえたちにはそのぷくーを二度と出来ないようにしてやろう」
といっても、頬に穴を開けるとかそんな横着な方法ではない。
強烈なショックだ。
俺は親れいむにタイヤに空気を入れるためのガスボンベを咥えさせた。
ガムテープで口を塞ぎ、ボンベの先を固定する。
ついでに目もガムテープで塞いでおく。
その状態で水槽の中に入れてやる。
「おきゃーしゃん! おきゃーしゃん!」
「おきゃーしゃぁぁぁぁん!」
「ゆっくちしちぇね! おきゃーしゃんゆっくちしちぇいっちぇね!」
赤ゆたちは変わり果てた姿の親れいむの側に集まり、頬擦りしたり声をかけたりしている。
まさに今生の別れだな。
俺はガスボンベを起動させた。
たちまち親れいむが膨れていく! 膨れていく!
その膨らみようはあの下衆な威嚇のときとは比較にならない。風船みたいに浮き上がりそうなほどだ。
「おきゃーしゃん! もうぷきゅーしにゃいでぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「ゆっきゅちしちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
「おちょーしゃんおきゃーしゃんを助けにきちぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
こいつら片親じゃないのかね。それならば後でおちょーしゃんとやらにも保護者面談をせねばな。
「おきゃーしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
「お゛ぎゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛じゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
パン!
とても心地の良い音が響き渡った。
そして、水槽の中は黒く染まった。
衝撃に跳ね飛ばされた赤ゆたちも全身黒く染まっている。
それはまさに散華だった。
ゆっくりにはもったないほど美しい死に様といえよう。
蓋を閉めてなかったので、親れいむだった餡は外にもいくらか飛び散った。
俺の頬にも少し付着した。
舐めてみた。……とても甘かった。
ゆっくりを苦しめると餡が甘くなるという。
加工所の連中はそれだけのためにゆっくりを悪魔的所業によって苦しめるらしいが、俺はそこまでイカれてはいない。
あくまで畑のため。あくまで教育のため。
俺が痛めつけるのは救いようのないゲスだけだ。
救いようのないゲスを救ってやるために。
「おちびちゃんたちわかったかなぁ? あんまりぷくーするとこんなになっちゃうんだぞぉ?」
赤ゆっくりたちは押し黙っていた。
ためしに摘み上げてみたがなんの反応もしない。
餡を落してやってもまったく微動だにしない。その目はあらぬ虚空を見据えている。
親れいむの散華は相当なショックだったらしい。
このショックが善良なゆっくりに変わる糸口になればいいのだが。
少なくとも威嚇癖は治るはずだ。
とりあえずは切り上げてこいつらを休ませるとするか。死んでもらっては困るからな。
念のためにゆっくりの傷に効くというオレンジジュースを塗っておく。
さて、俺も休憩しよう。

俺の畑は先祖代々受け継がれてきたものだ。
俺は自分の土地に誇りを持っている。農業という仕事に誇りを持っている。
農業とは自然と調和し、一体化することだと思っている。
農業で成功するには野菜の気持ちを知り、天地の呼吸を感じ取れなければならない……というのは亡き祖父の弁だ。
大げさではあるが、大地を慈しむ気持ちは大切だと思う。
だからこそ、俺はゆっくりが嫌いだ。嫌いというより憤りを感じているといったほうがいいかもしれない。
突如どこからともなく現れたあいつら。
少ないが知性を持ち、人間の言語を話しさえするのに、言葉の通じないあいつら。
そう、ゆっくりとは話にならない。
あいつらには人間の常識がわからないのだ。人間を舐め腐り、嘲笑っているのだ。
そして大地からの贈り物を汚く食い散らかす。あいつらは感謝の念を持たない。
だから教えてやらねばならない。
人間の強さを。自然に生きる者の掟というものを。
ゆっくりは新参者なのだ。先輩が教えてやらねばならない。ときには厳しい態度で臨むことも必要だ。
それがあいつらのためにもなる。
力の差を教える。やってはいけないことを教える。人間の常識と礼儀を教え込む。
それがうまくいったら……農業を教えてやるのだ。
農作業を教えて、手伝わせるのだ。
別に俺がさぼりたいわけじゃない。何の価値も無いゆっくりたちに価値を与えてやるためだ。
闖入者のあいつらを自然と調和させてやるのだ。
あいつらとていつまでもクズゲスのままじゃいやだろ?
能率は悪くてもいい。もちろん正当な報酬を払う。
ゆっくりを奴隷にしている農場もあると噂で聞いたが、俺はそんな汚いまねは絶対にしない。
俺の畑は先祖代々受け継がれてきた神聖な土地だからだ。そういった行為は土地を汚すことになる。
あの赤ゆたちとはしばらくの間ともに生活するつもりだ。
これからが楽しみだな。くっくっくっ。









by餡ブロシア


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最終更新:2011年07月28日 12:32
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