「ここはれいむのおうちだよ!! すっきりできるまりさをよういしてでていってね!!」
 ?
 家に帰ったら、玄関先でそんな事を言うゆっくりが待ち構えていた。

「きこえなかったの? ここはれいむのおうちだよ!! すっきりできるまりさをよういして、でていってね!!」
 お前の家ならさっさと入れよ。
 そうは思いつつも、まぁ無理だしと律儀に突っ込み、玄関を開けて中に入る。

「ここh!! ぶじゃ!!」
 当然のように進入してくる霊夢をドアに挟み込み、疲れた足にサロンペスを張りながら質問する。

「ここは俺のお家だよ。霊夢のうちなら自分で中に入れるもんね」
「ゆぐ!! ゆっぐりりがいしだがら、はやくたすけでね!!」

 少々納得できなかったが、まぁこんな事で一々時間もとっていられないので、直ぐに挟まれていたドアから解放してやる。

「ゆっくりいたかったよ!! もうおうちかえる!!」
 べそをかきながら去っていこうとする霊夢。
「おっと待ちな」
 このまま返すわけには行かない。
 そう思うよりもはやく、腕が伸び霊夢を捕まえていた。

「ゆぐぐ!! ゆっぐりはなしてね!!」
 捕まえたまま霊夢を家の中に連れ込み、一室へ連れ込む。

「ゆぐ!! おにいさんおかえりなさい!!」
 そこにいたのは、ゆっくり魔理沙。
 ではなく、ゆっくりアリス。
 最近、購入した自慢のペットなわけで、俺がいない間は暇だろうから一室を預けてやった次第である。

「ゆぐぇ!! あぢぃす!! おにーーざんはなじで!! あぢきすいやだ!!」
 なまじ野生の間では強姦魔で名前が通っているだけあって、霊夢の怖がり様は異常なほどであった。

「はらほら、そんなに怖がるなって」
「ゆびーー!! いやだぁーー!! おうじがえじでぇーーー!!!」
 嫌がる霊夢を無理やりアリスの前まで放り投げ、霊夢の反応を観察する。

「ゆぐーー!! ゆぐーー!!」
 体をぷくっと膨らませて威嚇はしているが、涙目でやっても効果はないだろう。
 寧ろれみりゃのそれとまったく一緒だ。

「ゆゆ? おにーさん。このれいむはどうしたの?」
「ゆぐ?」
 至極まっとうな事を言い出すアリスを、霊夢は呆気に取られたまま見つけている。
 先ほどの言動はどこへやら、今は置物のようにピクリとも動かない。

「ああ。さっき玄関前でThis is my house !! って言ってからか説教をしたんだよ」
「ゆっくりりかいしたわ!!」
 アリスは納得したようで、目線を霊夢に戻す。

「……ゆゆ!! ゆっくりしていってね!!」
 そのことで、意識が戻った霊夢は、反射的にお決まりの言葉を話、アリスに微笑みかけた。

「ゆ?」
 が、アリスの返事はどこか困っているような、……まぁ理由は分かるが。

「その霊夢は、魔理沙とすっきりしたいから魔理沙を置いていけって言ったんだよ」
「ゆ!! そうだよ!! れいむはまりさとすっきりしたいんだよ!!」

 霊夢が反応した事によって、アリスが受け取った情報は幾分か増えた。
 これだけでも、大体のニュアンスは汲み取ってくれるだろう。

「ゆゆ。そうだったの!! それなら、このおにいさんにまかせればいいわ!!」
「ゆぐ? どういうこと?」
 キョトンとした霊夢を尻目に、アリスは霊夢の体をずずっと押し俺の前まで持ってきた。

「お兄さん!! れいむをゆっくりさせてあげてね!!」
「任せろ」

「ゆゆゆ?!!」
 混乱する霊夢を抱きかかえ隣の部屋へ。
「ゆぐ!!」
 暫く霊夢の体を弄ぶ。
「ゆぎゃーー!!!」


 数十分後
「どうだ? みてみろ」
 出来上がった霊夢を鏡の前へ立たせる。
「ゆゆ!! まりさ!! まりさがいるよ!!!」
 そこにいたのは、綺麗な綺麗なゆっくり魔理沙であった。
 もっとも、それはコスプレをさせた霊夢であって本当の魔理沙ではない。
 しかも、心まで綺麗かと言えばそれも分からない。

「ゆっゆ♪ おにーさんのぎじゅつはすごいのよ!! ゆっくりおどろいてね!!」
 アリスが説明するまでもなく、霊夢は驚いていた。
 それはもう、びっくりするほどに。

「すごいよ!! れいむがまりさになっちゃったよ!!」
「そうだよ。きみがすっきりすれば、まりさがすっきりしたことになるよね!!」
「ゆゆ! でも、ひとりだとすっきりできないよ!!」
「大丈夫。君くらいかわいい魔理沙だったら、霊夢なんて直ぐに見つかるよ」
 全て同じ顔に見える俺からすれば、根も葉もない説明だったが、それでコイツは信じてくれたようだった。
「ゆっくりりかいしたよ!! おにいさんありがとう!!」


 玄関まで運んでやった霊夢、もとい魔理沙を送り出してやる。
「れいむ!! まっててね!! すっきりさせてあげるからね!!」

 勢いよく駆け出してゆく魔理沙。
「よかったわね!!」
 その後姿を見つめながら、アリスが声をかけてきた。

「ああ。まさか霊夢様に振舞うとは思っても見なかったからな」
 あの魔理沙は本当に魔理沙だった。
 数週間前、同じように霊夢にした後、目を離した隙にどこかへってしまった魔理沙。
 まさか、また俺の家に来てくれるとは、迷惑ながらもどこか愉快であった。



「ゆんゆん♪ れいむはどっこかなぁ~~♪」
 件の魔理沙は、男の家を出た後ご機嫌に道を歩いていた。
「ゆゆ!! そのこえはまりさだね!!」
 木陰から聞こえた声。
 それは正に霊夢の声であった。
 もちろん、即座に声のしたほうへ反応する。
「ゆゆ!! そうだよ!! まりさだよ!! ゆっくりしていってね!!」
「ゆっゆ♪ ゆっく!! ぞんなぶざいぐなまでぃさみがぐないわ!!!!」
 姿を現した霊夢は、それだけ告げると、ぷんぷん怒って去ってしまった。
 霊夢はそのまま八つ当たり気味に跳ね回り、端から落ちるのだがそんな事は魔理沙は知らない。


「ゆ……。どうして……」
 魔理沙は、ただただ呆然とするしかなかった。




「やっぱり。まりさにするのは面倒だな」
「でもおにいさん。あのまりさは、もとのかおよりもぜんぜんぶさめんだったわ!!」
「そうか? でもまりさはなにもいわなかったし……」
「きっとずっとまりさで、すっきりしたかったのよ! それで、かがみでみたまりさのかおがきれいにうつったのね!!」 
「なるほどね」

 数度頷きながら、俺は仕上げにパチュリーのカツラを外してやった。

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最終更新:2022年06月03日 22:11