俺は、蔵の中に閉じ込めていたゆっくりまりさをさがしていた。
ふつうの成体のゆっくりよりサイズが大きかったのですぐ見つかると思ったが中々見つからない。
「しかたないな。」
埒があかなかったので、飼っているゆっくりのために用意してあまったゆっくりまりさの餡子でおびきだすことにした。
餡子を放置してしばらく隠れることにする。
「うっめ、これめっちゃうっめこれ」
愚かなやつだ。
まりさがのこのこ出て来た。
群れからはぐれて半日、何も食べていないので仕方ないといえばしかたなかったが。
まあ食欲を完全に抑える事など、ゆっくりであるまりさには出来るはずもない。



「さてと」
餡子を食べている途中のまりさをつまみあげる。
まりさに餡子をやるために蔵に来たんじゃない、今回の仕事のために尋問しに来たのだ。
「まりさ、お前の群れの巣は何処だ?」
顔をつき合わせて単刀直入に聞く。
「おにいさんみたいなゆっくりできないひとにはおしえないよ、はやくまりさにつづきをたべさせてね。」
断られた、もちろん一筋縄で行くとは思っていない。
ゆっくりをゆっくりいたぶるには……、と。
転がっていたノコギリを拾うと、まりさの頬を撫ぜるように切った。
まりさの頬の表面が削り取られる。
「いたっ、なにするの?」
「巣の場所を言わないともっとやるぞ」
「まりさはむれのりーだーなんだよ、いえるわけないよ。だからゆっくりやめてね!!!」
まりさには珍しく強情だな。
「じゃあ、ゆっくりとやめてやる。やめるまでお前はたえられるかな?」
「ゆっ?!!」
まりさを上から押さえつけ、ゆっくりとノコギリを頬にあてた。
「次は、もっと強く切るぞ」
「やめて、やめてね」
「大丈夫、すぐには終わらせないから。ゆっくり苦しんでね……」
ノコギリを押しつける力を強くしていく。
「いだいよ、ゆっぐりやめでね」
ある程度強くすると、手に伝わる感触変わる。
無数の刃がまりさの頬に小さい穴をいくつも空けていくのがわかった。
「いだいぃぃ、やめでやめでね!」
「なら、巣の場所を言え」
「だめだよ、それはむりだよぉ」
だめか、じゃあ仕方ないね。
俺はノコギリをゆっくり引き始めた。
弾力が強いまりさの頬の皮はよく伸びた。
「まりざはいわないよ、だがらゆっぐりやめでね!」
耐えてやがる、仕方ないもっと引くか。
ノコギリを引いていくうちに刃に引っかかっている皮が切れ始めた。
まとめて切らない様にノコギリを引くのはゆっくりと。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……」
プチプチとした感触とともに頬の裂傷が広がっていく。
まりさは、引っかかっている皮が一箇所切れるたび唸り声をあげた。



しかし、一回目の斬撃が終わっても巣の場所は聞き出せなかった。
強情すぎる、このまま切り続けても変わらんな、アプローチを変えるか。
「こりゃ、おまえを殺して自分で探すしかないかな」
「ころさないでね。すのばしょをいうからゆっくりさせてね!!!」
自分の身に危険を感じたら急に堕ちやがった、やはりリーダーとは言ってもまりさはまりさか。
まあ、上等なサイズのゆっくりなんであまり傷つけたくなかったし良かった良かった。



俺は、巣の場所を聞き出すと群れごと降伏するように説得に入った。
「お前たちの群れ全てを加工場に連れて行きたいから、おまえから説得してくれないか?」
「できないよ、かこうじょうはだめだよ」
ゆっくりなら当然の反応だ。
予想していた俺は、ある物が入った箱をまりさに見せた。
「言う事を聞け、みんなでこうなりたいのか?」
「ゆゆゆっ?!!」
家で消費したゆっくりの装飾品だった。
霊夢種や魔理沙種のものが多いが、レミリア種の物も混じっていた。
「元々駆除しなきゃならなかったんだ、逆らえば全滅させるぞ。ならば、加工場で少しでもゆっくりした方がいいだろう」
まりさを見る。
少なくとも不思議そうな顔はしてないので理解しているようだ、むしろ考え込んでいる。
「それに、子供たちはペットに回してもらうようにするから」
さらに、畳み掛ける。
まりさは相変わらず考え込んでいた、聞いてるのかこいつ?
しばらくして、まりさはゆっくりと結論を出した。
「ゆっくりわかったよ……、まりさもすまでつれていってね!!!」
「ああ、おたがいのためによろしくな」
「うん、まりさはしっかりやるね!!!」
天然の子ゆっくりは、躾ければ大分ましなゆっくりに育つのでペット用にまわされることもある。
全滅を避けたいリーダーとしては魅力的な話なんだろう、多分。



俺は、やたら元気なまりさを手当てして、食べかけの餡子とともに籠に入れると一息ついた。
ゆっくり駆除の仕事なんて面倒だと思ったが、案外楽にいきそうだ。
やはり、依頼主の村長がリーダーのゆっくりまりさを生け捕っていたのが大きかった。
巣の場所は聞き出せたし、リーダーもこちらに引き込んだ。
明日は、檻とリアカーだけで足りるだろう。
ここにある物騒な秘密道具は使わなくて済みそうだ。
明日の準備を終えると、蔵の鍵を閉めて母屋で眠ることにした。





翌日、まりさから聞き出した場所に行く。
農作業がひと段落ついた村の人にも何人か来てもらった。
そして、ゆっくり達の巣である洞窟についた。
時間はおやつの時間といったところかな。
「いまのじかんなら、まりさのむれはみんなこのなかにいるよ」
籠の中のまりさが言った。
頬の傷は跡は残っていたが塞がっていた。
「じゃあみんなを呼んでくれ、頼む」
昨日の打ち合わせどうり呼び出すように頼んだ。
しかし、まりさは呼ばなかった。
「どうしたんだ?」
まりさに問う。
「おにいさんのていあんもよかったけど、まりさはもっといいてをしってるよ」
何言っているんだこの阿呆は。
そう思うのも束の間、まりさが巣の中に向かって叫ぶ。
「みんなー、ゆっくりできないひとがきたからかくれてー!!!」
!!?
「しばらくしたらにげてねー!!!」
やられた。
このままでは、駆除すらできない。
この糞饅頭めが。



次の手を考えていると、まりさがいやらしい笑みとともに話しかけた。
「おにいさん、しばらくゆっくりしたらまりさのかちだよ」
「出てくるように言え、でなければ全滅させるぞいいのか」
悔しいがまりさのほうが有利だ。
無理だと思ったが、一応言ってみる。
「ぜんめつにはならないよ。おとなはみつかるかもしれないけど、すきまにはいったこどもたちまでみつけられるわけないよ」
駆除するにしても通常の手段では、ゆっくりたちに有利すぎる。
全部駆除するのに時間がかかりすぎるのだ。
夜になれば妖怪がうろつきはじめるため、ここを離れねばならない。
そして、次にここに来る時には巣はもぬけのからになっているだろう。
そう、ゆっくりにゆっくりされたら負けなのだ。
手段はないわけではないが、経費がかかりすぎる。
なのでもう一度言った。
「もう、加工場に行く気はないのか」
もちろん、まりさが言う事を聞くはずもなく、
「おにいさんはなさけないね、そんなおねがいをするなんてみじめだよ」
さらに罵倒してきた。
ふーーーーー。
「まりさ、お前の策は完璧なんだな?」
「ゆぅーー?」
「お前の策は完璧かと聞いている」
「そうだよ、おにいさんははやくまけをみとめて、ゆっくりくつじょくをあじわってね!!!」
わかった、ならば虐殺だ。
そして俺は、最後の手を使おうと決心した。



まりさの返答を聞くとすぐに村人の所に行った。
「すいません、取りに戻る物ができたので、ここを見張っててくれませんか」
「大丈夫なんですか?」
「また、ゆっくりに来られたら村は……」
「もう駄目だー」
一部始終を聞いていた村人達は不安を口にしたが、何とかなだめて言うとおりにさせた。
まりさは籠ごと預けた。、
「にげないでゆっくりしていってねぇー!!!」
去り際にまりさがさらに罵倒してくれた。
うん、勝った気になってるね、うん。



家まで戻った俺は、蔵の奥から秘密道具をとりだした。
これなら穴倉に逃げ込んだ事を後悔させられるな。
そして、他に必要なものを用意し、リアカーにそれらを乗せ急いで戻った。



ゆっくりの巣に戻ると、まりさの籠を受け取り、村人達に巣から離れるように言った。
今回の秘密道具は大変危険なものなので、当然の処置だ。
「おにいさん、まりさたちでもこんなにゆっくりしないよ、まだあきらめないの?」
まりさの言う事に耳を貸さず、リアカーに積んでおいた耐火服に着替える。
「おにいさん、まりさをここからだしてあきらめてくれたらここをすててどこかにいってあげるよ、わるくないでしょ!!!」
「駄目だな」
まりさに答えながら着替えを終えると、双胴のタンクを担ぐ。
中身はもう充填ずみだ。
タンクにホースで繋がっている銃部を持って準備完了だ。
「行くぞ」
「まりさをにがしてくれたらむれごとここからいなくなってあげるっていうのわからないの?ばかなの?」
……。
まりさの籠を持ち巣の中に向かった。



洞窟の入り口あたりに着いた。
「おにいさん、ゆっくりぜつぼうした?」
巣内の壁面には所々窪みがあり、ゆっくりが隠れられそうな所が多そうだ。
10メートルほど奥に何かがいるのが見えた。
あそこが居住部かな、距離は問題無いな。
「そうだな、さっきまではしてたよ。でも、もうしていない」
「まりさはめーわくしてるんだからとっととあきらめてね!!!」
こちらも、諦めるわけにはいかない。
「まりさ、お前にも絶望してもらうぞ」
儲けのためにね。



俺は、まりさの籠を地面に置き発射体勢に入った。
銃部を構え、巣の奥に向ける。
燃料噴出のトリガーを引き、着火装置を入れる。
大量の炎が勢いよく巣の奥に放射された。
「うわー、あかくひかってきれー!!!」
まりさが呑気なことを言ったが、炎の色しか見えてないからだろう。
なにが起こっているか理解できないようだ。





火炎放射器が使われるすこし前から巣の居住部の状況を見てみよう。





居住部では、小さめのゆっくり達は窪みに入り込み、大きめのゆっくり達は岩陰にかくれてじっとしていた。
「「「せまいよー、ゆっくりだちてね」」」
小さいゆっくりは隠れるのに慣れていないせいか文句を言っていた。
「だめだよ、リーダーが帰るか、夜まで待ってね」
しかし、一人部屋の中央に鎮座するお母さんれいむに注意されると、おとなしくなった。
他のゆっくり達は慣れているのか黙って隠れていた。



この群れは隠れる事で群れを人間から守っていた。
人間や他のゆっくりに、『ゆっくりしていってね!!!』されても出て行かないほど徹底されている。
時には、群れの一部を囮にしてでも群れを守る、昔からそうやってきた。
今回は、何度も襲っていた畑の主たちに待ち伏せされたので、リーダーまりさが囮となり捕まってしまったのだ。
「まりさもがんばってるし、こどもたちにはゆっくりいきのびてもらわなきゃ」
お母さんれいむはリーダーまりさが捕まったと何となく気づいていた。
いざとなったら自分も囮になる覚悟はできていた。



ふと、お母さんれいむが入り口を見ると人間が入ってくるのが判った。
リーダーまりさの声がまた聞こえたが油断はできない、さっきから入ってこないのを鑑みると捕虜になっているのかもしれない。
群れを、子供達を守る為には見捨てねば。
そんな事を考えているお母さんれいむだったが、突然視界が真っ赤に染まった。
「ゆっ?!!」
反射的に目蓋を閉じた。
続いてすさまじい熱さが襲った。
「あぢゅっ?!!」
燃え盛る燃料が、ジェット噴流となって轟音とともに居住部を襲ったのだ。
その勢いは止まることを知らず、壁や天井に当たると跳ね返り舐めるように燃やし尽くした。
「あづいー!」
「ゆっぐりできない゛ーーー!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛?!!」
中央にお母さんれいむは真っ先に炎を浴び、岩陰に隠れていたゆっくりたちも燃え始めていた。
もはや隠れてられる状況ではなく、岩陰に潜んでたゆっくりは火を消そうと転げまわっていた。



小さいゆっくり達は助かったかというとそうはならなかった。
「くるちい、くるちいよー!」
「くちのなかあちゅいー!」
「おがあざーーーーん!」
燃えることこそ無かったが、高温のすすや空気を吸い込み体の中から火傷をおっていたのだ。



辺りには焼き饅頭の香りが漂っていたが、そんな事を気にするゆっくりは一匹もいなかった。



すこしすると燃えていたゆっくりたちの火が消えた。
燃え尽きたものいたが、結構な数のゆっくりが生き残っていた。
「いだい゛ー、うごげない゛ー!!」
「ぐるじい、ぐるじいよー!!」
「みず、みずをのま゛ぜでー!!」
「おしょと、おしょといくー!!」
しかし、生き残っているだけでもう虫の息だった。
全身のほとんどが焼き饅頭となり、運動機能と代謝機能に異常をきたしていたのだ。
大部分の皮が伸縮できないのでいつもの様に動けず、保水性が無くなった皮はただでさえ失われた水分を放出するのみだった。
もちろん、火傷の痛みが全身からする。
少しの刺激がすさまじいまでの痛みを引き起こした。
さらに、燃料やゆっくりたちが燃えた事で酸素が失われ、動くのに大量の餡子を消費するようになっていた。
その消費するべき餡子も、大部分が焼けてパサついて使い物にならなかった。
動いたらまともな餡子が減って衰弱して死に、動かなくても水分が失われてまともな餡子が乾燥して死ぬ。
全滅は時間の問題だった。







巣の入り口に戻ってみよう。
「おにいさん、なにしたの?まりさにおくをしらべさせてね!!!」
まりさは困惑しているようだ。
俺が何かしたのはわかったが、まりさにはきれいなだけだった。
しかし、奥からは群れのゆっくり達の呻き声が聞こえてくる。
それが気がかりなのだろう。
「だめだ、もう少し待て」
しかし、まりさに死んでもらっては困る、それにまだ換気が済んでいない。
一酸化炭素がこわいです。



「ゆっくりちゃちぇてー」
換気を待っていると、巣のおくからちびゆっくりが這い出してきた。
跳ねて移動する元気が無いようで、さらに全身すすまみれだった。
「どうしたのぉーーー?」
まりさがその姿に驚き声をかける。
「おにいさん、ちびゆっくりをたすけてあげてね!!!」
そして、俺に助けを求めた。
ふふふふふ。
「だめだ、汚いゆっくりでは」
「あらってあげればだいじょうぶだよ、はやくたすけてね!!!」
まりさが食い下がった、説明するか。
ちびゆっくりを持ち上げる。
そして、口から舌を引き出しまりさに見せる。
「この舌を見ろ、中まで汚れているだろう。それにもう衰弱しすぎてる、どのみち助からないんだよ」
ちびゆっくりの舌は火傷のため腫れて煤がこびりついており、まったく抵抗しない事から相当に衰弱しているのがわかった。
まりさが唖然としていたので、ちびゆっくりを地面に落とし、そのまま踏み潰した。
ぷちっ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、まりざのあがぢゃんがーーー!!」
まりさは泣きながら叫んだ。
いい顔だ、しかしまだ足りない。
その後も何体かちびゆっくりが出てきたがまりさに見せ付けるように踏み潰していった。
ぎゅっ、ぷちっ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
ぎゅぅーー、ぷちっ。
「やめで、やめでーーーー!!」
ぎゅぎゅぎゅぎゅぎゅ、ぷち。
「なんでごんなごどずるのーーー!!」
最後の一匹には何もしなかった。
これはやさしさじゃないよ、まりさに絶望してもらうためなんだからねッ!!!
「おにいさん、まりさのいうこときいてくれてありがとう!!!」
大分卑屈に出るようになったな。
「ちびれいむ、ゆっくりしてね!!!」
「……」
まりさが、籠の前で止まったちびゆっくりに声をかけるが反応が無い。
「ゆっくりしていってね!!!」
「……。」
「ふ……、ふざけてないでまりさとゆっくりしてね!!」
気づいてるな。
「もう死んでいる諦めろ、おまえのせいだ」
「ちがうよ、まりさはわるくないよ。ちびれいむはゆっくりしすぎてるだけでしんでないよ」
泣く必要はないと思うがな。
「ゆっくりしていってね!!、ゆっくりしていってね!!、ゆっくりしていってね!!」
まりさはしばらくの間狂ったように繰り返していたが、それに答えるものはいなかった。



最後のちびゆっくりが死んでから少したった。
「だれかまりさとゆっぐりじでよぉー」
ようやく、死んでるのを認めたか、ゆっくりしすぎだな。
「いいだろう、奥に連れて行ってやる」
もう換気は済ん頃合いだろう。
「はやぐ、みんなにみんなにあわぜでー」
うるさいな。
まりさの籠を持ち奥に進み始める。
「さて、みんなどうなってるかな、まりささんよぉ」
まりさの様子を見ながらゆっくりと進む。
「ゆっぐりじないでー、はやぐじでー」
もちろん無視して、ゆっくり進む。
ゆっくり絶望していってね♪



奥に進んでいくと、予想どうりの惨状だった。
途中すすだらけで力尽きたちびゆっくりが何匹もいた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
まりさは、もう死んでるとわかっているのか嘆きの声しかあげなかった。
まあ、止まって見せるたび声をあげ泣くだけいいか、きちんと絶望してるって事だし。



奥に近づくと、急に転がってるゆっくりのサイズが大きくなった。
サイズは一般の成体程度、髪の毛はチリチリで頭頂部は禿げ上がっており、焦げ目が多いがこんがり焼けて肌はガサガサだった。
そのゆっくりの後ろには、体を引きずった後が少量の餡子とともに続いている、跳ねて移動できなかったらしいな。
すさまじい苦悶の形相で固まってるところを見ると、相当の苦行だったようだ。
「ゆっくりしていってね……」
目の前の状況に考えをめぐらせていると、急にまりさが言った。
元気が足りていない、いい兆候だ、というか心配してあげろよ。
「ゆっぐりじで、まりさとゆっぐりじでぇー!!」
さすがにこのサイズのゆっくりは少なかったが、見つけて止まるたび、まりさは同じような反応をした。
しかしその反応はどれも、自分本位で仲間の事を軽んじてる反応だった。



「みんなーででぎでー、もうででぎでまりざどゆっぐりじでぇぇぇーーー!!」
まりさが言うが誰も出てこない。
全滅した事をわかってもらうために籠から出してやる。
「みんなででぎでぇー!!」
「もう諦めろ」
「れいむ、れいむー」
聞いちゃいないな。
「ま、まりさ……?」
「れ、れいむ?!!」
急に別のゆっくりの声が聞こえる。
なんと、お母さんれいむが生きていたのだ。
しかしその状態はひどかった。
所々焼け焦げており、皮の大部分は焼き饅頭化しておりガサガサだ。
飾りは残っているものの、髪はチリチリになり禿げ上がってしまっている。
さらに、低酸素状態にあったためか衰弱もしていて、ほとんど動かない。
幸いだったのは、体が大きく皮も厚いため、餡子は中まで焼けずにいた事だ。
れいむが口を開く。
「まりさぁなんで、なんでこんなことになったのぉーーー?」
「そ、それは……」
れいむが問いかけるがまりさは答えられなかった。
リーダーの言うとおりにした結果がこれでは問いたくなるのも仕方ない。
なので、俺が代わりに教えてあげる事にした。
「れいむ、こうなったのはまりさが俺の提案を断ったからだよ」
「まりさひどいよ、まりさのせいでこうなったんだからどうにかしてね!!」
れいむ、初見の俺の言う事を信じるなよ。
さて、どう言い訳するかな、まりさは。
「しかたなかったんだよ!!!、おにいさんはかこうじょうにみんなをつれてくっていったんだ、しかたなかったんだよ!!!」
「ゆゆっ、かこうじょうはだめだよ。おにいさんふざけるのもいいかげんにしてね!!」
この程度は予想済みだ、仕方ない。
でもこいつはお母さんれいむだ。
なら確実に堕ちる、次の言葉で。
「俺は、子供は助けるって言ったよ。そうじゃなきゃ全部殺すって」
「ゆゆゆっ?!!まりさほんとうのことなの?」
「ううう……」
すごい食いつくなー、さすが群れのお母さん。
一方まりさは答えなかった、しかしれいむは沈黙を肯定ととらえたようだ。
「まりさ、こどもをたいせつにしないりーだーにはもうついていけないよ、出てってね!!!」
いいぞ、もう堕ちた。
そう思ってると、まりさが反論した。
「こどもなんてあとからいくらでもつくれるよ。まりさがいることのほうがむれにはたいせつだよ」
「……」
それが本音かよ、れいむ黙っちゃったよ。
じゃあ、もっとまりさのお株を奪うか。
「そうだよなまりさ、まりさは殺されないために巣の場所言っちゃうくらいだもんな」
「ううう……」
「ほんとなの、おにいさん……」
「ホントだよ、まりさを殺すと言ったらすぐに教えてくれたよ。」
れいむが食いついてきたのでこたえてやった。
それにしてもこいつ、動けないだけで普通のゆっくりと変わらん元気さだ、新鮮な酸素のおかげかな。
そして、れいむがまりさを完全に見放した。
「まりさはゆっくりころされればよかったんだよ!!!、そうすればあしたにはれいむたちここをすててたのに」
「ひどいよれいむ、みんなつかまりそうだったからまりさがおとりになってあげたの!!!。」
まりさが何か言ったが、れいむがすぐに反論した。
「つかまったんならいみないよ、りーだーだったらゆっくりしんでね!!!」
「まりさわるくないよ、おにいさんがわるいんだよ……」
まだ言い訳するか。
「まりさがしんでるか、へんなことれいむにふきこまなければこうなってないよ。もうどっかいってね!!!」
「れ゛い゛む゛ぅーーーー!!!」
追い詰められたまりさがれいむに飛び掛った。



はっきり言って、たいした勢いではなかった。
例えるなら、言い負かされた子供がついつい怒って相手を叩いてしまうぐらいだった。
まりさには害意などなかった、しかし……。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛、ひどいよまりざぁぁぁーーー!!」
ほぼ全身が焼饅頭となり、皮と餡子の結合が所々剥離したれいむには強烈すぎた。
左半分の皮が中央から耳辺りまで剥がれ落ちてしまっていた。
餡子が剥き出しなったのはもちろん、眼球は飛び出したままにまだくっついており、きれいな歯並びも丸見えのため非常に怖かった。
「まりざぁぁぁ、じね、じね、じねぇぇぇ!!!」
右側が引きつった怒りの表情、左側が剥き出しの無表情餡子フェイスに飛び出した眼球ときれいな歯並びが映えるお母さんれいむがまりさに迫る。
普段は温厚なお母さんれいむをここまで怒らせるとはさすがまりさ。
「ひいぃぃぃっ」
まりさは恐怖に身がすくみ、声をあげるばかりでほとんど逃げる事ができない。
対するれいむは、唯一まともに動かせる底面の皮を器用に動かし、体を引きずるように進んでいた。
その速度はとても遅かったが、恐怖に支配されたまりさを追い詰めていくには十分だった。
「こないでね、こないでね……、ひっ?ひいぃぃぃ」
まりさが下がる途中で仲間の死骸にぶつかったようだ。
そして、まりさが辺りを見回す。
周りには仲間の死骸がたくさんある。
すすだらけのちびゆっくり、完全に炭化した小さめのゆっくり、死にきれず足掻きに足掻いて苦悶の表情のまま死んだ成体のゆっくり。
「じね!、じね!、ゆっぐりじねぇぇぇ!!!」
そこに、お母さんれいむの呪詛が加わる。
その声は洞窟内で反響し、全ての死骸がまりさを責めているかのようだ。
「い゛やぁぁぁーーー!!、まりざわるぐないわるぐない゛、みんなごな゛い゛でよ゛ぉぉぉぉぉ」
「じね!、じね!、じね!、じね!、じね!、じね!、じね!、じね!、じね!、じね!、じね!、じね!、……」
まりさは自分の群れに、巣の入り口まで追い立てられてしまった。


「ふふふ、ころせる、まりさをころせるよみんなぁー!!!」
怒りに狂ったれいむは、巣の入り口の前で完全にまりさを捕らえた。
まりさはもう、必殺の間合いから逃げられなくなっていた。
でも、俺としてはまりさが死ぬのは困る。
俺は、火炎放射器をれいむに向け燃料噴出のトリガーを引いた。
「ゆゆっ?」
ゲル化した燃料がれいむに振りかかった。
するとまりさが言った。
「れいむ、まりさはいきのこりがいたらたすけてっておねがいしたんだよ、だからゆるしてね!!!」
俺が水でもかけたと思ったらしい、すごい変わり身の速さだ。
しかも、この隙に間合いを離している。
「ああ、まりさにこうしろっていわれたんだ」
相槌を打ってやった。
さあ、もっと怨まれろよまりさ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!、がゆい゛ぃぃぃ……、いだい゛ぃぃぃ……」
れいむの様子がおかしい。
燃料に体中を侵されたせいだろう。
剥き出しの餡子や火傷の跡にはさぞ痛痒い事だろう。
「まりざ、ゆっぐりじないでじねぇぇぇ!!!」
「うわああああああ?!!」
れいむが、まりさにまたも迫る。
そして、動けないまりさ。
「れいむ、ゆっくり焼けてね」
俺は、れいむを止めるために火炎を吹きつけていた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!、あ゛づい゛い゛い゛ぃぃぃ!、ぎえでぇぇぇぇぇ!!!」
燃料まみれだったれいむあっという間に火達磨になった。
もう転がって消すこともできず、ただ焼かれていく。
洞窟内とは違い酸素が豊富なので、炎が消える事もない。
「じねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじね……」
れいむは、まりさへの恨みの言葉を吐きながら炭の塊になっていった。


しばらくしてれいむの火が消える。
まりさはまだ恐怖に震えている。
俺は、れいむだったものに鉈を打ち込み割ってみる。
中央はまだ餡子が残っていた。
まりさの冬眠の食いだめ用には丁度いいな。
残ったれいむを鉈ですくうとまりさに食べさせた、もちろん強引に。
「吐くなよ」
火炎放射器を向け飲み込ませる。
もう、これが危険なものだと理解したらしい、とてもいいことですね。
「お、おにいさん、まりさをたすけてね……」
餡子を食べたまりさが助けを求めてくる。
「駄目だ、群れをつぶしたリーダーを生かしておける訳ないだろ」
実際には売るためなんだけどね。
「なんでもじまずがらぁぁぁ!!!」
「うん、無理なんだ、すまない。あの世でみんなによろしくな、無理だろうが」
俺は、捕獲用の冷却スプレーをまりさに吹き付けた。
「だずげでぇぇぇぇ……」
いい表情だ、うん最高級確定。
まりさは恐怖の表情のまま覚めることのない眠りについた。





まりさは自分の群れの巣の前にいた。
しかし、お兄さんもいないし籠にも入っていない。
「よかった、やっとゆっくりできるよ」
今までのは悪い夢だったんだ。
巣の中のみんなに生還した事を祝福してもらうんだ。
まりさは軽やかな足取りで巣の中に入っていった。
しかし、様子がおかしい。
誰も自分を出迎えないのだ。
群れを守った英雄に失礼だろうとまりさは思った。
そして、プンプンと怒りつつ居住部に着くと、しっかりとみんなが出迎えてくれた。



「「「「ゆっくりしんでね!!!」」」」
まりさは驚いて返す。
「みんなどうしたの?ゆっくりさせてね!!!」
「「「「ゆっくりしんでね!!!」」」」
出迎えの言葉は変わらない。
「まりさはむれをすくったえいゆうだよ、ふざけてないでゆっくりさせてね!!」
まりさは一機に奥に入っていった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛、うぞだぁぁぁ!!」
しかし、そこにいたのは悪い夢と同じ焼かれたゆっくり達だった。
すすだらけのちびゆっくり、完全に炭化した小さめのゆっくり、苦悶の表情のまま焼き固まった成体のゆっくり。
悪い夢と違う点は、どれも元気に動き回る事だ。
「「「「ゆっくりしんでね!!!」」」」
同じ言葉を繰り返しながらまりさに迫る焼饅頭達。
中でも、お母さんれいむは左半分が餡子剥き出しでずっと燃え続けている。
「あ゛あ゛あ゛あ゛!、ごめんなざいごめんなざいごめ゛ん゛な゛ざい゛ぃぃぃ!!」
まりさは巣の中から逃げだした。
悪い夢とは違い全速力で逃げられた。



「ここまでくればだいじょうぶだよ、ふりきったよ」
まりさは近くの崖まで逃げてきていた。
ここまでくれば大丈夫、ゆっくりして落ち着いたらもっと逃げよう、そう思っていた。
「「「「ゆっくりしんでね!!!」」」」
しかし逃げられない、気づいたら囲まれていた。
追ってこられているような気配はなかった、急に囲まれたのだ。
「ゆるして、ゆ゛る゛じでよ゛、み゛ん゛な゛ぁぁぁ!!」
「「「「ゆっくりしんでね!!!」」」」
「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ!!」
まりさは逃げ出そうとした。
しかし、崖を背にして囲まれているのでみんなのいる方にしか逃げられない。
群れのゆっくりに邪魔され、崖のふちに戻される。
「「「「ゆっくりしんでね!!!」」」」
何度も逃げようとしたがすべて無駄だった。
そのたび戻され、死ねと言われる。
まりさの精神は極限まで磨り減っていった。



「じにます、じにまずがらゆるじでぐらざい゛ぃぃぃ!!!」
ついにまりさは諦めた、逃げる事をやめた。
そして、自ら死ぬ事を選んだのだ。
「「「「……」」」」
みんなの沈黙を肯定と捉えたまりさは崖から飛び降りた。
「これで、あのよでみんなとゆっくりできるよ……」
まりさは、ひとすじの涙を流しながら崖の下に落ちていく。
そして、地面に叩きつけられた。
まりさは、自分の餡子が四方八方に飛び散るのをはっきりと感じていた……。





まりさはまたも自分の群れの巣の前にいた。
やはり、お兄さんもいないし籠にも入っていない。
「よかった、ようやくゆっくりできるよ」
今までのは全部悪い夢だったんだ。
今度こそ、巣の中のみんなに生還した事を祝福してもらうんだ。
まりさは軽やかな足取りで巣の中に入っていった。
しかし、またもや様子がおかしい。
誰も自分を出迎えないのだ。
群れを守った英雄に失礼だろうとまりさは思った。
そして、プンプンと怒りつつ居住部に着くと、変わらずみんなが出迎えてくれた。



「「「「ゆっくりしんでね!!!」」」」
まだ悪夢からは抜け出せない。
群れのみんなの事は無視しようとして無視できるものではない、繰り返される恨み言に精神をすり減らす。
かといって逃げても追いつかれる、逃げ続けても気づけばいつの間にか巣の中に引き戻されている。
「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ……」
まりさは何度も何度も自殺し続けた。



では、まりさの本体は何処にいるか?
それはどこかのお屋敷の冷凍庫の奥底、最高級ゆっくりと書かれた箱の中に入った状態で忘れ去られてしまっている。
まりさは覚めることのない眠りの中、れいむの餡子から発せられる終わらない悪夢にうなされ続けるのだ。





おわり。

作者:怪僧トンポ


ゆっくりは消毒だーにしようとしたら、なんか脱線してしまった。
テッドさまや、ザ・フューリーの様な圧倒的火力だと即死だから虐めようがないんです。

あと、今回はれいむの方が正しかったですが捕まったのがれいむだとれいむが悪くなります。
れいむだと子供で脅せば楽に篭絡させられるんですよね。

捕まったのがぱちゅりーなら空気読んで群れは助かったかもしれません。
むしろ、昔そんなことがあったのかも。

最後になりましたが、お読みいただきありがとうございました。

ちょっと句読点変えました。
あと、ゆっくりの設定

りーだーまりさ
優先順位は、1:自分の命、2:群れ、3:お母さんれいむ、4:子供
非常にずる賢く、相手の欲求を読み取りそれを生かして立ち回る。
しかし、非常に臆病で優先順位2位以上を特に優先する。
最初は燃やす予定でしたが、それはお母さんの役目になりました。

お母さんれいむ
優先順位は、1:子供、2:群れ、3:りーだーまりさ、4:自分
子供を大事にするいいお母さんで、非常に温厚。
しかし、子供の事が特に大事でそれに関しては常軌を逸した行動を取る。
最後の燃えがなければ、生き残る可能性があった唯一の焼き饅頭。
長期にわたる水分と餌のサポートが必須ですが。

ちびゆっくり
初めてのかくれんぼの結果がこれだよ。
ダメージが中途半端で結構苦しんだはず。

小さめのゆっくり
『隠れる』と言う教育はほぼ済んでいた。
隙間に隠れられない、体格が小さい、の二点のせいで炭化した。
一瞬で終われたのはむしろ幸せだったかもしれない。

成体サイズのゆっくり
『隠れる』と言う教育を修了したエリートゆっくり。
このサイズが一番苦しむように火炎放射器の被害を調整しました。
火傷、充分でない酸素、減り続ける餡子と水分、まさに生き地獄。 
確殺ではあるが、必殺ではない。

お兄さん
利用できるゆっくりは利用するというポリシーが裏目にでた。
さすがに、まりさが交換条件出して群れごと逃げようとするなんて思いません。
まあ、依頼が『ゆっくりを追い払う』だったらまりさの条件をのむでしょうが。

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最終更新:2022年05月03日 17:23