前書き
このお話は現実世界にゆっくりが出現したような世界観で書かれています。


ゆっくりを飼い始めて1ヶ月ぐらいだろうか。
留守中にどこからか入り込り込んだゆっくりが布団で寝ていたときは驚いたが、
急いで台所を確認するがあらされた様子はない。
インスタント食品ばかりでゆっくりが食べられるようなものが無かったのが幸いした。


帰ってきた俺の気配に気づいたゆっくりが目を覚ます?
「・・ゆ?おじさんだーれ?ゆっくりできるひと?」
お決まりの台詞だ。
「ちらかってるし、ごはんもないけど、ゆっくりしていってね!」
確かに散らかっているが、お前が言う事じゃない。

起きたゆっくりがおもむろに動き出す。
「ゆ!」
ドーンと体当たりすると積んでいた漫画や雑誌の山が崩れだす。
ゆっくりはあたりをキョロキョロと何かを探しているようだった。
「ゆー、やっぱりごはんがないよ。」
「おじさん、ここはあんまりゆっくりできないところだから、
べつのところでゆっくりしたほうがいいよ!」
そう言うと今度は脱ぎっぱなしの洋服をくわえブンブンと振り回し始める。。
「おい!やめろ!」
あせって、ゆっくりを掴み取る。
「ゆ、ゆっくりはなしてね!れいむはおなかがすいたの!ごはんがないとゆっくりできないよ!」
「お前、お腹すいているのか?」
「すいてるよ!ゆっくりなにかたべさせてね!」
「あ、ああ、なにか食べさせてやるよ」
先に言われてしまったが、とりあえず何か食べさせてみよう。
冷蔵庫をあけ探してみるが、自炊などしないのでろくな物が無い。
「ああ、これなんていいかな。」
手にした食べ物をゆっくりに差し出す。
「ゆっくりたべさせてね!」
そう言ってゆっくりは口を大きく広げる。
こいつのあごの間接はどうなっているんだろうか。
「・・・・・・」
しらばらくそのままにしてみると、ゆっくりのまん丸な目がこちらを向く。
その目が徐々に早くしろよと言いたげなふてぶてしい物になる。
いいかげんに口に入れてやると、むしゃむしゃと幸せそうに味わいだす。
「うまいか?」
俺の問いかけに無言で口をあける。
「うまいか?」
もう一度聞くとさっきと同じような目をこちらに向ける。


俺が用意したご飯を食べ終えたゆっくりは窓際の日光がさしている所まで行き昼寝を始めた。
満足したのだろう。カビの沸いた蜜柑でもおいしいようだ。


それから今日までゆっくりは俺の生ごみ処理機として暮らしてきた。
もっとも、与えるのはカップメンの残り汁やまずくて食べられなかったコンビニの新商品ぐらいだった。
おなかがすいたと不満を漏らす事もあったが、目をつぶらせオレンジジュースと偽り水を流し込めばそれで満足していた。
さすがにおにぎりの包み紙や弁当の容器は食べられないようだが、小さいものであれば無理矢理の飲ませることもできる。
使用済みの丸めたティッシュやお菓子用の小さい包装紙はゴミとして出す必要がなくなった。


ゆっくりを飼ってから最初の冬を迎える。
家にはエアコンやファンヒーターといった都会派な暖房器具は無い。
暖をとるには一人用のコタツしかない。
昼間、日光がさしている時はそうでもないが夜になるとコタツ無しではいられない。

今夜もいつもの様に冷えてきた。

「さむいよ!ゆっくりさせてね!」
そういってコタツに入ろうとするゆっくり、
しかし、一人用のコタツは俺の足だけでいっぱいでゆっくりが入るスペースは無かった。
コタツ布団をもぐるだけでならスペースはあるが、
ゆっくりは真ん中のヒーターの下に移動しようとグイグイと押してくる。
かかとを落とすと静かになるのでそのまま蹴り出す。
そうすると静かになるので、そのまま蹴り出す。


ある日、帰ってくるとゆっくりの姿が見当たらない。
寒い外から帰って来た俺にはそんな事よりコタツが先だった。
カバンを置いてイソイソとコタツにもぐりこむ。
ああ、暖かい。ここが俺の桃源郷、体が温まるまでここでしばらくゆっくりしよう。
だが、待てよ。小さい一人用のコタツでもこんなに早く暖かくなるだろうか。
スイッチを切り忘れたか?いや、出かける前に切った記憶はある。
それに、なんだろう?このあったかいぷにぷにした物体は・・・。

コタツの中をみるとゆっくりがいた。
まさか、こいつが勝手にスイッチを入れたのだろうか・・・。
「ゆ?おじさん、おかえり!おなかすいたよ!ごはんまだ?」
「うるさい!おまえは出ろ!」
「ゆぐ!」
ゆっくりをコタツからけり出すと、ピョンピョン跳ねながら怒りをあらわにした。
「そこはれいむのゆっくりぽいんとだよ!おじさんはでてってね!」
「そんなにゆっくりしたいなら、おそとでゆっくりするよいいよ!」
「ゆっくりできないひととはいっしょにいられないよ!とっととでてってね!」


「そうか、おまえあったかい所でゆっくりしたいんだな・・・。」
「そうだよ!だからおじさんはでてってね!」
「ゆっくりするならもっといいところがあるよ。」
「ゆ?いいところ?だったらはやくあんないしてね!」

俺はコンロに鍋を置きその中にゆっくりを入れ蓋をしめる。
「ゆ!くらいよ!ここどこ!」
「おのれ謀ったなゆかり!だがこれで勝ったと思うな!」
「人の世に闇がある限り私は何度でも蘇る!」
「せいぜいその時まで・・・」
「ゆっくりしていってね!!!」

途中から訳のわからないことを喚きだすが、無視して火をつける。

火をつけて3分・・・・
「ゆ?あったかくなってきたよ!ゆっくりできるよ!」

火をつけて5分・・・・
「ゆふーzzZ・・・ゆふーzzZ・・・」

火をつけて10分・・・・
「ゆ?あっあつよ!!ここどこ!ゆっくりだしてね!!!」

火をつけて15分・・・・
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!あ”つ”い”-!!た”し”て”ー!!こ”こ”か”ら”た”し”て”ー!!!!」
「お”し”さ”ん”た”す”け”て”ー!!あ”つ”い”よ”ーー!!!!」

助けを求めてきたところで蓋をあける。
暑さに震えているゆっくりだが、俺の顔を見るといくらか安堵した顔をみせる。
「あ”あ”あ”・・・、お”し”さ”ん”た”す”け”て”・・・」
俺は鍋一杯になるまで水を入れてやる。鍋の温度は下がり水はぬるま湯になった。
ゆっくりはぬるま湯につかって気持ちよさそうにしていた。
「出してやろうか?」
「ゆ?もうちょっとここでゆっくりするよ!あとでだしてね!!」
「そうか、じゃあここでゆっくりしね」
「うん!ゆっくりしてるよ!!」

鍋に再び蓋をする。ゆっくりがまた何か言っているが気にせず蓋に重しを乗せておく。

10分ぐらい足っただろうか。
「おじさん!だして!そろそろだしてね!」
「はやくだして!ださないとゆっくりさせてあげないよ!」
「ゆ!ゆぐ!からだがとけるよ!はやぐたすけで!!」

いつの間にか静かになっていた。
時計を見ると水を入れてから30分ぐらいだ。

俺が静かになった鍋の蓋をあけるとそこには・・・・ Fin








後書き
どうみてもお汁粉です。本当にありがとうございました。
設定として必要ないのですが、登場したゆっくりは一応霊夢です。

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最終更新:2016年11月07日 16:48