「ゆがぁ!」
「ゆべし!」
「ゆちゅーん!」
ゆっくりの断末魔が響き渡る森の中。踏まれて手で潰されて、火あぶりから水責め
そして寸止めプレイまで、この世の地獄を味わっているゆっくり達を遠くから眺めている何かが居た。
れいむだ。


「まりざ・・・ありずぅ・・・ぞれにびょんもぉ・・・・」
涙で顔がふやけるのも構わずに泣き続けるれいむがいた。
れいむはこのゆっくり達の中の一匹である。いつもみんなでゆっくりと過ごしていた。
今日はたまたま昼過ぎまで寝ていた為に、この惨劇に巻き込まれずに済んだ。
れいむはただ遠くから眺めていることしかできなかった。自分があそこに向かったところで犬死である。

「どうじでぇ・・・・でいぶだぢなにもじでないのにぃいいいい・・・・」
本当に何もしていない。しかし人間側にしてみれば単なる気まぐれである。理由などない。
虐殺が終わり、広場に餡子と皮だけが残っていた。
れいむはその傍に駆け寄り、残った飾りを大事そうに一つ一つ集めた。
「まりさのおぼうし・・・ありすのかちゅーしゃ・・・」
表情は虚ろであったが、意外にしっかり行動していた。
れいむは、集めた飾りを埋めるための穴を掘り始めた。

ふと、昔の事を思い出した。
自分がまだ子供だった時。今日と同じように死んでいった家族の事を。
まりさと遊んだ帰りに巣に着いたとき。巣の入り口で無残にも頭から串刺しにされていた妹達を。
体の半分だけがどこかへ行ってしまった両親達を。


「ゆぐぅ・・・れいむたちは・・・ゆっくりしたいだけなのに・・・」
哀しかった。とても哀しかった。心の中が真っ白になった。
れいむは思った。自分達はなぜこうもゆっくりできないのだろうかと。
故にゆっくりは哀しみを背負わなければならない。
その時、れいむの中で何かが目覚めた・・・・





数ヶ月後。とあるゆっくり虐待愛好家の3人がいた。
彼らはいつも通りに森へ入ると、すぐに一匹のれいむを見つけた。
「ヒャッハー!れいむだー!」
一人の男が飛びかかる。
すると、れいむが男の体をすり抜けた。
いや、実際にはすり抜ける訳などないのだが、そうとしか思えないほど華麗な動きで男のダイブを避けたのだ。
男たちに電流が走る!

「な、なんなんだ今のは・・・」
「ゆっくり・・・してないよ!」
思わずゆっくりっぽくなる男。れいむは冷静な目でこちらを見ながら
「れいむにはどんなこうげきもつうようしないんだよ! ゆっくりりかいしてね!」
その姿にはある種の神々しいオーラがあった。

「ちくしょう!負けてたまるか。」
さきほどのダイブした男が立ちあがった。すると両手から白い光弾を雨霰のように発射する。
この男。ものすごい格下とはいえ実は妖怪である。本気を出せばゆっくりごときと思ったが・・・
それらがれいむに当たることはなかった。

「れいむのまえにはしあるのみだよ!」
言うや否や、れいむは凄まじいタックルを妖怪の男の腹に喰らわした。
男は200mぐらい吹っ飛ばされてどこかへ消えていった。



「なん・・・だと・・・?」
流石の俺もこの状況にはうろたえるしかなかった。
なにあれ?ゆっくり?ガ板のゆっくりが混じってますよ?
隣の友人にどうしようか聞こうとしたが、既に居なかった。

「そ、その技はなんだ!」
聞いてどうにかなる訳でもないが、聞いてしまった。
しかしれいむは思ったよりも丁寧に答えてくれた。
「れいむは・・・れいむはかなしみをせおったんだよ!」
哀しみ・・・?


「あれはまさしく・・・ゆ想天生!」
「し、知っているのか!」
這いつくばりながらこちらへ戻ってきた妖怪の友人Aの思わぬ発言に驚く俺。
「うむ。あの技は哀しみを背負うことで初めて会得できる究極奥義。会得すればこちらの攻撃は当たらず相手の攻撃が一方的に当たるという・・・」
なんてこったい。これじゃ勝てねーよ!ていうかなんでゆっくりが哀しみを背負うんだよ。

「れいむはせかいじゅうのゆっくりをたすけるよ。じゃましたらおこるからね!ぷんぷん!」
顔を膨らませながらそう言うと、れいむはどこかへ行ってしまった。
俺達はその様子をただ茫然と眺めているだけだった。


それから三日後。虐待愛好家たちは大変な事態に陥っていた。
謎のれいむによって自分たちの集めたゆっくり、更に色々な道具などが全て壊されたからだ。
加工所も同様である。
様々な手段で撃退しようとしたが、それも失敗に終わった。
なにせ攻撃は当たらないのに、向こうの攻撃は当たるのだ。しかも何故かすごく強力になってるし。
お手上げである。


こうして鬼ーさんたちにとっては地獄。ゆっくりにとっては天国の日々が続いた。

それは俺も同様だった。
部屋の片隅で酒に溺れながらボーっとしていた。
部屋には何もない。ゆっくりなど一匹もいない。
あの可愛らしいゆっくりが。愛情こめて虐待したゆっくり達が。
居なくなって初めて分かる寂しさ・・・心は撃ち抜かれたかのようにポッカリと穴が空き
スキマ風がピューピュー吹いていた。

ふと外を見ると、あのれいむが居た。
どうやら隠れていたおにーさんに制裁を食らわしているらしい。
「ギャ!グッワ!待ってくれ!待ってくれ!」
おにーさんは、叫んだ。
「許してくれよ!虐めたかっただけなんだから」
「バキッ!ボコッ!」
れいむはかまわず殴り続ける。
「ヒッー!助けてー!助けてー!」
おにーさんはが悲鳴に近い叫び声をあげた。
「おにーさんみたいなひとはゆっくりはんせいしてね!」
れいむが叫びながら殴り続ける。
「ギャー」
おにーさんの血があたりに飛び散った。れいむのりぼんも血で染まっている。
「くるってるんだよ!くるってるんだよ!」



そんな様子を俺はじっと見ていた。
なんなんだろうかこれは・・・哀しすぎる。何故ゆっくりを虐められないのか
哀しい・・・哀しい・・・
その時俺の心に何かが宿った・・・気がした。
しかし何かが宿ろうが宿らまいが、とにかく急いで外に出た。助けないと結構やばい。



「ゆ!おにーさんなにしにきたの?」
れいむの言葉を無視して割と重体な男を家の中に入れた。
適当に手当をして外に出ると、れいむが居た。
「かくまったらおにーさんもどうざいだよ! ゆっくりりかいしてね!」
「れいむよ・・・ゆっくりがもどったならそれでいいじゃないか。」
その問いにれいむは
「そんなわけないでしょ! さいはんしないように、きちんときょういくするんだよ!」



哀しくなってきた。あの「ゆっくりー♪」だの、「すりすりするよー♪」だの
「れいむおこったよ!ぷんぷん。」だの、可愛らしいれいむはどこかへ言ってしまったようだ。
別にこいつについて何か知ってる訳でもないが、消えたのだろう。だって可愛くなかったら虐待なんてしないじゃん。
多分。

そして哀しみは限界を超えた。





「ゆっくりしんでね!」
その声が聞こえたと同時に、俺の体は勝手に動いていた。
自分でもどうやって動いてるのか分からないほど華麗に。
「ゆ!?」
れいむは驚いてた。再度攻撃をこちらに仕掛ける。
しかし俺は先ほどと同じように避けた。

その瞬間、全て理解した。
「・・・この俺も哀しみを背負うことができた…」


「あ、あれは無想転生!」
「し、知っているのか兄者!」

近くから声が聞こえた気がするが気のせいだろう。
れいむはというと、こちらの気配を感じ取ったのか
ゆ想天生を使った。
「おにーさんのこうげきはあたらないよ! ゆっくりはんせいしてね!」
そしてこうげきに移るれいむ。
俺はカウンターにと、近くの枝をれいむの頭に目がけて突き刺した。
「ゆげぇえええ!!!!」

刺さった。何故だがわからないが刺さった。
「どうじでええええ!!!! でいぶぢゃんどよげだのにぃいいい!!!」
俺にもわからない。
「無想転生同士がぶつかり合ったとき、全ての奥義は意味を成さなくなり決着は互いの拳のみに委ねられるという・・・」
どこからか解説が入った気がしたが気のせいだろう。

俺は枝からなんとか抜けようともがくれいむに近づいた。
そして右手を思いっきり溜める。
そこに全てを賭ける。

死んでいった友、共に虐待したゆうか、そしてペットのポチ




「受けてみよ、我が全霊の拳を! 天に滅せい!」
「やばでえええええええええええええええええええ!!!!!!」







戦いは終わった。
そこにあったのは潰れた饅頭だけだった。




【あとがき】
ラオウ様の一撃はアーマー付きです。


by バスケの人

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最終更新:2022年04月17日 01:25