青年の家から連れてこられた子れいむはまりさ達の群れに到着した。
今日は新しく自分たちの仲間となった子れいむの歓迎会だ。
大人たちががんばって大量のご馳走を用意した。
「さ、れいむ!いっぱいたべてね!」
しかし促されたれいむは一切反応しない。
「ゆ?どうしたのれいむ?」
「なにこれ?こんなごみよりはやくあまあまなごはんをよういしてね!しゅーくりーむでいいよ!」
事実そこにあるのは虫や生ごみなのだ。
しかしそれは野生のゆっくりにとってはご馳走である。
このれいむは青年によって甘やかされて育った。
最初の一週間ほどは贅沢な生活に満足していた。
しかしご飯も毎日同じものですぐに飽きたて美味しくなくなったし青年もまるで遊んでくれない。
こんな家よりもまりさおねえさんの家のほうがゆっくりできる。
子れいむの頭ではこうなっていた。
「なにいってるの!?これがごはんだよ!ほら。」
ぱくぱくとご飯を平らげていくまりさ。
「…みててきぶんがわるくなったよ。ねむりたいからべっどをよういしてね!」
「ゆ…。」
そんなれいむの反応にめげず寝床へ連れて行く。
しかしそこでもれいむはわがままに文句を言う。
「こんなところじゃねむれないよ!ちゃんとふかふかなべっどをよういしてね!」
青年の家の家では彼が用意したふかふかのベッドで眠っていた。
ただの洞窟に藁ですらない枯れ草を敷いただけのベッドでは満足できるはずも無い。
「それにむしさんのこえがうるさくてねむれないよ!ゆっくりしないではやくなんとかしてね!」
確かに虫の声はしているが野外なのだから当然だ。
しかし青年の家で暮らしていたれいむにはそれが分からない。
結局この日はれいむのわがままを聞いているだけで終わった。
ちなみにれいむは眠れない眠れないと言いながら日が落ちると勝手に寝ていた。
翌日朝早く大人たちが狩の準備をしていた。
「ゆっくりおはよう!」
あのれいむが目を覚ました。
大人子供問わず渋い顔をするものが多い。
このれいむの昨日の有様を見ているのだから当然だ。
「れいむはたいくつだよ!あそびたいからおもちゃもってきてね!それとおなかすいたからあまあまもってきてね!」
「ごはんはちょっとまってね、おもちゃはないけどそとのみんなとあそんでね。」
まりさがれいむに根気強くそう諭す。
しかしれいむはそんな言葉に一切耳を傾けようとしない。
青年の家では少なくとも相手に聞こえた願いはすべて叶えて貰えたのだ。
「おもちゃもないの?ばかなの?しぬの?あんなきたないゆっくりたちとあそんでたのしくないよ!」
大人たちの中には目に見えてイライラしている者も多い。
わずか一晩でこのれいむは群れの大人すべてを敵に回していた。
何とかれいむをなだめすかし狩に出かけたがその間にれいむは自分より小さいゆっくり達をおもちゃにして遊んでいる所を大人に止められた。
それを注意されても。
「おもちゃをもってこないまりさたちがわるいいんだよ!ゆっくりりかいしてね!」
と言って取り合わない。
食事の時間になっても、
「まずいけどおなかすいたからしょうがなくたべるよ!むーしゅ!むーしゃ!げろまず!」
そんなことを言いながら大人三匹分はご飯を食べた。
睡眠時間でも、
「やっぱりむしさんがうるさいよ!まりさはむのうだね!さっさとなんとかしてね!」
そんなわがままばかり言うれいむに群れのゆっくり達は完全にあきれ返っていた。
そしてついに数日後、
「こんなところじゃゆっくりできないよ!おかあさんのところのほうがゆっくりできたよ!」
ついにれいむも我慢の限界を迎えた。
何を我慢したのかと思うかもしれないがれいむにとっては我慢の連続だったのだ。
ついには青年の家のほうがよかったと言い出す始末。
それは事実なのだが勝負に勝ったと思っている群れの者たちにとっては禁句だった。
「いいかげんにしてね、れいむ!そんなにおにいさんのところがいいならおにいさんのところにかえってね!」
まりさがもっともなことを言う。
周りのゆっくり達もいい加減このれいむに付き合うのは限界を迎えていたため口を差し込む者は少しもいない。
「それじゃあれいむたちはおかあさんのところへかえるよ!むのうなまりさたちはゆっくりしね!」
一瞬ほっとしたがまりさだが違和感に気づく。
れいむ…達?
「まりしゃもれいみゅのおきゃーしゃんのときょろへいきゅよ!」
「れいむもだよ!れいむおねえさんのいうとおりここじゃゆっくりできないよ!」
「ありしゅもだよ!」
子供達の一部が口々にそう言い始めたのだ。
教育前の赤ゆっくりや、あまり教育に身を入れていないプチゲス達が大半だ。
実はれいむは同年代か年下のゆっくり達を集めていかに青年の家がすばらしかったかを話したのだ。
「「「「「「「「どおじでぞんなごどいうのおおおおおおお!!!!!」」」」」」」」
そんなことを知らない大人たちは悲しみにくれる。
あれほど自分達が苦労して人間達から救ったのに。
しかしそんな彼女達にかけられるのは冷たい言葉だ。
「まりさたちがにんげんさんよりゆっくりさせてくれるっていうからここにきたんだよ!にんげんさんのほうがゆっくりさせてくれるなんて!まりさのうそつき!」
「ありしゅのしぇいでゆっきゅりできにゃいよ!」
「れいむのせいでおかあさんからはなれたんだよ!もんくあるならもっとゆっくりさせてね!」
この子ゆっくり、赤ゆっくり達も人間に飼われそうになっていた所をれいむと同じような台詞でここにつれてこられた者たちだ。
「ゆっくりさせてくれるから」という理由できたためそれ以上にゆっくりできる場所があるならばここにとどまる理由は無い。
そして大人たちが止めるにもかかわらず子ゆっくり達は半数近くが人里へ降りていってしまった。
あの後れいむの主張に感化されてしまったかなりの数の子ゆっくりが彼女達に合流したためだ。
「ゆううううう…。」
これまでの苦労を思い泣くまりさ。
いったいこれまでの自分達の苦労は何だったのだろうか?
「なかないでまりさ。せめてにんげんさんとゆっくりできるようにいのりましょう。」
そうありすが慰めてくれるが野良のゆっくりがそうそう良い人間に飼われることなど無いことをまりさは知っている。
仮に良い飼い主に出会えたとしても、どれだけいい子にしていても、突然理不尽な理由で捨てられてしまうこともある。
なにせ自分達がそうだったのだから。
まりさ達は悲嘆にくれているがこの事件はゲス予備軍を淘汰できた意味でこの群れにとっては利益をもたらしていた。
しかし「人間よりもゆっくりと一緒の方がゆっくりできる」という群れのアイデンティティーをも破壊してしまった。
彼女達は悲しみながらもこれからも活動を続けていくだろう。
しかしこれまで通りの活動ができるはずは無かった。
「おかあさんのところへいったらあまあまいっぱいたべようね!」
「ありしゅはときゃいはだきゃらきっとにんげんしゃんもやさしくしちぇくりぇるわ!」
「まりさはれいむがいっていたおもちゃがほしいよ!」
もはや寝言の領域に入った子ゆっくり達の妄想は止まらない。
飼い主に捨てられたという境遇こそ大人達と同じものの彼女達は致命的に大人たちとは違う所があった。
れいむ以外は直接人間に会ったことがないのだ。
会ったことがある子ゆっくりは群れに残った。
れいむも知っているのは青年のみ、それもその一面のみである。
ゆえに彼女達が人間に対して大人ほど恐怖を感じないのは必然だった。
無知―――それは霊長たる生物意外が許されるものでは無い。
「なんだぁ?ちびなゆっくりがうじゃうじゃと。」
子ゆっくり達の集団を最初に発見したのは大人達の群れ住んでいる山の持ち主の男だ。
ゆっくりが住み着いていたのは知っていた。
しかし彼女たちの主張を盗み聞きしある種の感動を覚えた男は山にゆっくり達が住み着くことを黙認したのだった。
「ゆ!にんげんさん!れいむにあまあまもってきてね!それとおかあさんのとこへつれてかえってね!」
「ゆっきゅりしにゃいではきゅしちぇね!」
「おもちゃがほしいよ!もってきてね!」
ゆーゆーと男に要求する子ゆっくり達。
教育した大人たちが見たらたいそう嘆くだろう。
赤ゆっくりだけでなく子ゆっくり達まで馬鹿なことを言う。
男はため息をつく。
山から下りてきたように見えたからあの群れの連中かとも思ったがどうやら違うようだ。
群れの子ゆっくりとは何度か会ったことがあるがもっと素直でかわいかった。
実際は教育がすんでいない子ゆっくりは山から出されないため男は群れのゆっくりはいい子ばかりと勘違いをしていた。
「おまえら、少しそこで待ってろ。望みのものは用意してやる。」
「はやくしてね!れいむはおなかすいてるんだよ!」
他の子ゆっくり達も口々に遅い遅いと文句を言う
れいむに影響されてこの集団の子ゆっくりたちは早くもゲス化が始まっていた。
「さてと、加工所加工所っと。」
男は携帯電話で加工所への連絡を入れた。
「たすけてれいむ、わふ!!!」
「ありしゅはときゃいはなのよ!ていちょうにあちゅかいなしゃぶふっ!!!!」
「どおじでだずげでぐれげぶ!!!」
次々と加工所の職員に捕らえられていく子ゆっくり達。
「どおじでごんなごどずるのおおおおおおお!!!!!」
一匹の子ゆっくりが叫ぶ。
加工所職員はいつものことなので無視して淡々と作業をするのみ。
代わりに男が説明する。
「彼らは加工所の職員だからだよ。」
「ゆ!かこうじょはゆっくりできないよっておふっ!」
どうやら加工所を知っているらしい野良のネットワークも侮れないものだと男が思っているとあっという間に残りは子れいむ一匹になっていた。
「こいつがリーダー格みたいだな。」
「子ゆっくりや赤ゆっくりばかりなのは珍しいな、親だけ殺されたりしたのかな?」
さすがにこのような事例は加工所の歴史でもかなり少ない。
「はなじでえええええええ!!!!!!れいむおかーさんのところにかえるうううううう!!!!」
「あー、はいはい。」
れいむが青年の言いつけ通りおにいさんと叫んでいれば状況は変わったかもしれない。
しかしそれはすべて後の祭りである。
彼女達は加工所でその短い生涯を終えるだろう。
ぱちゅりーに赤っ恥をかかせて以降、無知だの何だのと言うことは無くなった。
文字を少し教えてやり子供用の平仮名ばかりの本を与えるとうれしそうに読んでいる。
ちなみに俺が三日でいいと言ったのはその間にぱちゅりーを口説き落とす自信があったからだ。
今思うととんでもない自惚れである、我ながらおお愚か愚か。
まりさが温情で一週間にしてくれなかったらぱちゅりーとはお別れだっただろう。
で、一週間ほどして約束の半月の日にいつもの場所へ行ったのだがあいつらは結局来なかった。
れいむは別にどうでもいいのだがあいつを放り込まれた群れがどうなったのかは少し興味があったのだが。
それっきりれいむのことは忘れてしまった。
夜、子ゆっくりばかりの群れが現れたなんていうニュースを聞いても俺にはまったく関係の無い事だった。
修正してアップロードし直そうかと思いましたがストレスがマッハなので別作品にしました。
過去書いたもの
奇跡のゆっくりプレイス
醜い男
生きるための選択
体つきゆっくり愛好家
ありすの戦い
黒歴史
ぱちゅりーの教育
ゆっくりした教育
byデストラクション小杉
最終更新:2022年05月21日 22:52