※制裁寄りです
※一部のゆっくりがゆっくりっぽくないです
※一部のゆっくりがハッピーエンドです










とある山中のとある森の中。
ここに、大きなゆっくりアリス(ドスまりさほどではなく、体高1メートル強)の纏めているゆっくりの群れがあった。
この群れは、外観は特に変わったところは無いのだが、1つだけ他の群れとは大きく異なる特徴があった。

『ゆっくりを殺してもいい』のである。

これは長である大アリスがこの群れを作ったときに決めたことで、特に秘密にもされていないために他の群れでも知っているゆっくりは多い。
もちろん群れのゆっくりは全員この決まり(?)を知っているが、のんびりとしたこの群れではゆっくりの殺し合いなどただの1度も起こったことは無い。
なぜそんな決まりがあるのかすら知らないゆっくりも多い。
そしてその群れからほんの少しだけ離れた木の洞に、そのゆっくりまりさはいた。

群れから離れているとはいっても、特に迫害されているとか何かタブーを起こしたと言うわけではない。
最近やっと親離れして、なんでも一人でやってみたい年頃なのだ。
だから、

「まりさはこれからひとりですむよ! ごはんもひとりでとってくるよ!」

と言い、(群れの中だとおせっかいなゆっくりに世話を焼かれてしまうため)群れの外に住みだしたのだ。



実際、特に一人暮らしでも不便な点は無かった。
一人暮らしを自分から言い出すことでも分かるように、このまりさはもともととても活発なのだ。
狩りがうまいため、まりさの家の中には充分な蓄えがあった。
それに、小さいときに群れの長である大アリスに教えてもらった"とかいは"な家具もこしらえて、まりさは自分だけの城に満足していた。





そんなある日、1匹のアリスがまりさの元へやってきた。

「ゆっくりしていってね! あら、なかなかとかいはなおうちね!」
「ゆゆ? ゆっくりしていってね!」
「ちょっとあがってもいいかしら?」

自慢の家を褒められれば悪い気はしない。
まりさは、旅をしてきたと言うアリスを家にあげることにした。

「・・・それでここにたどりついたの」
「ゆゆ~。 すごいね~」
「でも、ひがくれるまでにこのもりをぬけないとあぶないの・・・」
「ゆゆ? それならまりさのおうちにとめてあげるよ!!」
「ゆゆっ!? ほんと!?」

どんな出来事も、きっかけは些細なものだ。
この一晩で気があった2匹は、やがて付き合い始め、結局アリスはまりさの家に永住することとなった。
そして・・・





秋の初めに、2匹は子供を授かった。

「ゆゆ~・・・ほんとうにゆっくりしたあかちゃんねぇ・・・」
「ゆゆっ! もっとごはんをたべてあかちゃんにえいようをあげないといけないね!」

まりさの頭に生えた茎の先には、既に5つの実が生っていた。
後に、この茎が子供の身体(皮)となり、茎の中を通る餡子が中身になるのである。
幸いこのアリスは家庭的で、まりさのためにたくさんのご飯を採ってきてくれたし、まりさも持ち前の健康さから身体を壊すようなことは無かった。


この夫婦に足りなかったのは唯一つ。
まりさの、妊娠時の知識と経験だけだった。





赤ゆっくりのパーツが整い、形もほぼ普通のゆっくりになってきたある日の夕方。

「ゆゆ? ありす、なにしてるの?」
「あかちゃんたちのためにおふとんをつくってるのよ」
「ゆゆ~。 まりさにもみせて~」

と言って、まりさがアリスの方へ振り向こうとした時、洞の壁に茎の先が引っかかり、

パキリ

「・・・ゆ? ゆうううううううううううぅぅぅ!?」
「ゆゆ? どうし・・・ああああああああぁぁぁ!!」

茎が根元から折れてしまった。

「ゆ・・・ゆあ・・・あがぢゃんん・・・」
「まって! まだたすかるかもしれないわ!」

絶望の表情で固まるまりさの横で、旅の経験から"このレベルまで成長しているならこのままでも生まれるかもしれない"と考えたアリスは既に行動を開始していた。
茎になるべく振動を与えないように、ゆっくりと作ったばかりのお布団に運んで行き、そっと寝かせる。

「ゆゆ・・・あがぢゃん・・・ごめんね・・・ごめんね・・・」
「ゆっ! だいじょうぶよ! まりさのあかちゃんならちゃんとうまれてくるわ!」

まだ震えているまりさを励ましながら、アリスもまた子供達の誕生を天に祈り続けた。





茎を優しくゆすったり、赤ちゃん達をそっと舐めたりしながら迎えた3日目。
茎もすっかり萎びきって、もう用を成さなくなった昼過ぎに、一つ目の赤ちゃんがポロリ、と茎から落ちた。

「ゆ・・・ゆゆっ!? あかちゃんがうまれたよ!!」
「あかちゃん!! ゆっくりしていってね!!」

喜び勇んだ2匹だったが、どうも赤ちゃんの様子がおかしい。
普通ならぷくっと膨らんで元気に挨拶を返してくるのだが、この赤ちゃんはなんだか平べったく、頼りなくぷるぷると震えている。

「あか・・・ちゃん・・・? ゆっくりしていってね・・・?」
「ゅ・・・う~・・・あ゛・・・?」

たぷたぷと波打ちながら視線をまりさの方に向ける赤ちゃん(?)。
その目には一応の理性はあるようだが、ゆらゆらとしてはっきりとした言葉を話さない。

「あ・・・あかちゃんどうしちゃったの・・・? ありすぅ・・・」
「わ・・・わからないわ・・・。 わたしもこんなのはじめてだもの・・・」

そうこうしている間に他の赤ちゃん達も生まれてきたはいいのだが、全員始めの赤ちゃんと同じように潰れていて、ゆらゆらとゆらめくだけだった。





「ぱちゅりー・・・どうなの?」
「・・・これは"みじゅくじ"ね」
「ゆゆ?」
「じゅうぶんなえいようをあたえられずにそだったものだから、なかみがじゅうぶんにできなくてかたちをたもてないのよ」

要は折れた茎から不完全な栄養の取り方をしたため、皮だけが大きくなり中身を十分に構成できなかった。
そのため皮が余り、潰れスライムのようなゆっくりになってしまったのだ。

「ゆ・・・ゆあ!? どど・・・どうすればなおるの!?」
「ざんねんだけど・・・ずっとなおらないかもしれないわ・・・」
「ゆ・・・ゆ・・・ゆああああああああああああ!!!!」

まりさは、自分の不注意から赤ちゃんたちに大変な業を背負わせてしまったという思いに耐えられず泣き叫んだ。
そんなまりさに寄り添いながら、アリスもまた隠しきれない悲しみに顔を曇らせている。
と、

「ゆ・・・ぎゅぅ・・・ぢ・・・」
「ゆ・・・くぅ・・・し・」

赤ちゃんたちが不明瞭な発音で何かを言い始めた。

「ゆゆっ! たいへんだわ!」

赤ちゃんが何を欲しているかをすぐに悟り、そちらへ近づくアリス。
しかし肝心の茎はもうかさかさのミイラになっている。
と、

「う゛・・・ゆぐ・・・げぇっ!!」
「ゆあ!?」

いきなりクリームを吐き出し始めた。
騒然となっている周りをよそに、

「はい・・・あかちゃんたち。 ごはんですよ・・・」

吐き出したクリームを掬って赤ちゃんの口に少しずつ均等に注ぎ込んでいく。
赤ちゃんたちは、プルプルと震えながら口を開いたり閉じたりして何とか飲み込んでいく。

「ゆ・・・ゆゆ!? ありす!! すぐにやめてね!! ゆっくりできなくなっちゃうよ!!」
「あかちゃんたちはふつうのたべものはたべられないでしょう?」
「ゆゆ・・・」
「これがいちばんいいのよ。」
「ゆっ! だったらまりさも・・・」
「まりさのあんこもまだだめよ。 のどにつまらせてしまうわ。」
「で、でも・・・」
「しんぱいしないで」

そういいながら、吐き出したクリームを全て子供たちに食べさせ終えるアリス。
自らの中身を吐き出したために、顔は青ざめ、若干のやつれが見て取れる。

「ゆ・・・ゆぅ・・・ありす! むりしちゃだめだよ!」
「でも・・・」
「まりさもがんばるよ! きょうはゆっくりやすんでね! まりさのあんこもやわらかくすればたべられるよ!!」
「じゃあ・・・つらいときはまりさにまかせるわね・・・」
「ゆゆぅ・・・」

まりさはその言葉に安心しながらも、一抹の不安をどうしても拭いきれなかった。
そして、悪い予感ほど的中するものである。





「さあ、ごはんですよ~」
「ゆぅい・・・ゆ・・・ぐち・・・」
「ゆ・・・あぁ・・・まあま・・・」
「こくっ・・・こくっ・・・けぷっ」
「な・・・なんでええええぇぇぇ!!」
「あ・・・おかえりなさい」
「なんでまたありすがあげてるのおおおおおぉぉぉ!?」

あれからアリスは、まりさに何のかのと理屈をつけて中身を吐き出させず、自分だけの中身で赤ちゃんたちを養っていた。
まりさはその度に自分もやる、木の実を噛み砕いて与えよう、赤ちゃんたちももう大丈夫だなどと言ってはいるのだが、全く聞いてもらえない。

実際、まだ赤ちゃんたちは木の実などが食べられる状態ではないのだ。
形が維持できず、地面に着いている箇所を中心に潰れている赤ちゃん達。
流動体にしか見えないこの赤ちゃん達に固形物を噛み砕く能力はほとんど無い。
一応物を咀嚼することはできるのだが、噛んでいるうちに上を向いていた顔がプルリと横を向いてしまい、閉じ切れない口から全て流れ出てしまう。
そんな赤ちゃん達に与える物として、アリスの中身は確かに最適だといえるのだが・・・

「ありずがじんじゃうよおおおおおおおお!!!!」

アリスの身体は最初の頃より一回り小さくなり、頬の辺りの皮が余ってたるんでいた。
まりさはそんなアリスを見ても醜いなどとはかけらも思わないが、ただこのままアリスがしぼんでいっていつか消えてしまうのではという恐怖と無力感に苛まれていた。
もちろん、まりさもアリスのために朝から晩まで狩りを続けてはいるのだが、直接中身を吐き出してしまうスピードには到底追いつかない。
さらに、四六時中れみりゃや他のゆっくりから家族を守るために、まりさも疲弊してきている。
狩りのペースも、だんだんと落ちてきていた。

「さあ、おひるねのじかんですよ」
「ぅゆ・・・まぁ・・・ま。」
「ゆぅ・・・ゆ・・・ゆっ!」
「ゆぅ、くち し・・・いて・・・」

ぷるぷると転がりながらアリスとまりさのそばに寄って来る赤ちゃん達。
いや、普通のゆっくりなら転がるという表現で正しいのだろうが、この子ゆっくり達がやるとスライムの大移動にしか見えない。
しかしまりさは、最愛のパートナーを苛んでいる子供達のこんな姿を見ても、どうしても憎いと思うことができなかった。
自分とアリスの子供達。どうして憎むことができようか。
初めてママと呼んでくれたときはアリスと抱き合って喜んだし、初めて自分から動いたときには歓喜の涙が止まらなかった。
しかしこのままの生活を続ければ確実にアリスがどうにかなってしまう。

まりさは、大アリスの側近であるパチュリーに知恵を借りることにした。





パチュリーの判断は合理的かつ冷酷なものだった。
何度かまりさの頭に浮かび、そのたびに必死で振り払ってきた考え。
その考えを、ほとんど考える様子も無く口にした。

「あかちゃんたちを、すてなさい」
「ゆ・・・ゆ゛ううううううううぅぅぅっ!!」

半ば予想していた答えだったために反論も出来ない。

「あがぢゃんはころせないよおおおおお!!」
「ころすんじゃないの。 すてるだけよ。 じぶんたちのちからだけでいきていけるかもしれないわ。」
「そ・・・そんなこといったってええええぇぇぇ!!」

確かにゆっくりにも捨て子の概念は存在する。
しかし、もともと生存能力の低いゆっくりの子供が生き延びる確率はものすごく低い。
まして自分ではまともに動くことさえ困難なまりさの子供のこと。
もし生存確率を計算したとして、果たして0以上の数字が出るだろうか。

「まりさとありすがいれば、またこどもはつくれるわ。」
「でもあのこたちはまりさのせいであんなになっちゃったんだよ! まりさのせきにんだよ!」
「・・・しあわせになりたいのなら、こどもをすてなさい。」

自分の失敗で完全な姿になれなかった子供達を、自分の都合で死なせるなどとんでもない。
しかし、まりさが受けるべき業はアリスが全て受け止めてしまっている。
そんなまりさの苦悩は結局癒されず、まりさはパチュリーから差し入れにと貰ったバルトスズメバチの巣を咥え、とぼとぼと帰路についた。





まりさが帰った少し後のパチュリーの部屋。

「パチュリー」
「あら、おさ。 どうしたのかしら?」
「まりさに、むれのそばにきているれいのしゅうだんについて、ちゃんとちゅういしましたか?」
「いいえ。」
「・・・なんですって?」
「わたしはまりさをこどものころからしっています。 あのこはじぶんのこどもをみすてられないでしょう」
「・・・まさか」
「あのこどもたちへのみれんをたちきる、ちょうどいいちゃんすです。」
「あなたは、なんということを・・・」
「わたしは、あのこをたすけたいのです。 このままでは、じきにあのことありすはすいじゃくししてしまう」
「・・・わたしがいえたぎりではありませんが、あなたのやりかたはざんこくすぎる!」
「・・・・・・」
「しんえいたい!! あつまりなさい!!」
 ・・・・・・・・・・
 ・・・・・・・
 ・・・・
 ・・
 ・





まりさが家にたどり着くと、そこには妙なゆっくりの集団がいた。

「まんなかはれいむのものだからね! だれもとらないでね!」
「ゆっ、わかったわ。 じゃあわたしはここかしら」
「こっちにはごはんがいっぱいあるわ! いなかもののごはんだけど、おなかがすいてるからがまんしてあげるわ!」

ゆっくりれいむが一人と、ゆっくりありすがいっぱい(まりさの感覚で)。
そんな奇妙な組み合わせが、自分の家の周りに群がり、何匹かは自分の家に入り込んでいる。

「ゆっ! なにやってるの!?」
「あら、だぁれ?」
「ここはれいむたちのおうちだよ! ざんねんだけどまりさのばしょはないよ!」
「ゆゆっ!! なにいってるの!?」

と、そこでまりさは家族のことを思い出し、

「ゆっ! ありすとあかちゃんはどこ!?」

ありすたちを掻き分けて家の中に入ると、そこには

「ゆ゛っ・・・ゆ゛ぅっ・・・」
「ゆふん♪ はやくでていかないあなたがわるいんだからね♪」
「こんないなかにいるんだもの。 どうせれいぱーにちがいないわ!」
「とかいはのありすたちがせいさいをくわえてやりましょう!」
「このへんなのもつぶしましょうね~♪」

ありすたちが、まりさの家族全員に体当たりをし、あるいは踏み潰していた。
しかも、さも当たり前のことをしているんだという誇らしげな表情と、ぽいんぽいんと楽しげに跳ねている様子がなお一層おぞましい。

「ゆ・・ゆーーーっ!! なにやって・・・ゆべっ!!」
「ふんっ!」

ありすたちに飛び掛ろうとしたところで、よこかられいむに体当たりをされて吹き飛んでしまう。

「ゆっくりできないまりさだけど、なかなかかわいいわね。」
「ありすたちのおよめさんにしてあげようかしら!」

その言葉だけで分かった。
こいつらは、小さい頃からおさに気をつけるよう注意されていた"れいぱー"だ。
でも逃げるわけには行かない。 アリスを助けないと!
と意気込んでアリスの方を見ると、

「ゆ゛・・・まり・・・さ・・・ごめん・・・さ・・・あか・・・ちゃ・・・」
「ゆゆっ! ありすのせいじゃないよ! まってて! いま・・・」
「ゆゆん♪ どこにもいかせないわよ!」

アリスに気を取られている隙に、侵入者達に取り押さえられてしまった。

「ゆぐうううううぅぅぅっ!!」
「ゆゆぅ・・・このまりさはずいぶんいなかものね」
「あんまりごねるようなら・・・ゆゆっ!?」

と、何やら物騒なことを言い出そうとしていたありすの言葉が止まった。
疑問に思いその視線の先を見てみると、

「ゆ゛っ・・・ゆぎゃあああああああぁぁぁっ!!」
「なにずるのおおおおおおおおぉぉぉ!?」
「ごんなのどがいはじゃないいいいいいいぃぃぃ!!」

赤ちゃんたちを踏み潰していたありすたちが必死の形相で転げまわっていた。
その表情は苦痛に醜く歪み、尋常ではない悲鳴を上げているが、一体・・・?
と、転げまわっていたありすの口から

「ゆぎいいいい・・・ぎっ!? ゆ゛が・・・ゆ゛げぇっ!!」
「ゆぅ・・・くり・・・ごは・・・ん」
「ゆ゛・・・ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・」

なんとまりさたちの赤ちゃんがプルリンと顔を覗かせたではないか。
件のありすは、白目を剥いて痙攣している。

「ゆ・・・ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁあぁあっ!!」
「あ・・・ありずうううううううぅっ!!」
「どおじでそれがいぎでるのおおおおおぉぉぉ!?」

パニック状態の他のゆっくりたちをよそに、他のありすからも

「ゆぅ・・・くぅり・・・」
「おか・・しゃ・・ん」
「これ・・・たべう・・・ぉいしー・・・」

ある者は口から、ある者は眼窩からにゅるりんと、あるものは頭頂部を食い破って姿を現した。
と、1匹のゆっくりありすが

「ゆ゛・・・ゆ゛ああああっ!! なんでごどずるのおおおおお!?」

赤ちゃんに飛び掛り、そのままドスンと赤ちゃんを下敷きにした。
が、

「ふぅ・・・これであんしんね♪ ・・・いっぎゃあああああああああ!?」

先程のありすたちと同様に転がり始め、程なくして

「ぅゆ・・・おかぁり・・・ぉいしー!」
「ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・ゆ゛っ・・・」

全く同じ結果となった。


種を明かせばなんてことはない。
子ゆっくり達は見た目スライム状で、とても平べったく潰れることが出来る。
つまりとても平べったく潰されても全く平気なのだ。
あとは、自分に乗っかっている柔らかいものを食い破り、中身を食べ進んでいくだけ。
身体は異常でも精神は何の問題もない子供達はそれくらいの判断は出来たし、何より。

こんな自分達を今まで優しく育ててくれたお母さん。
そのお母さんを痛めつけられて黙っているほど、この子供達は温厚ではなかった。


知ってしまえば何の不思議もないことなのだが、

「ゆ゛・・・ゆああああああああん!!」
「ばげものおおおおおお!!!!」
「だずげでえええええええええぇぇぇ!!」
「ゆゆ!? みんななにやってるの!? つかえないやつは・・・ゆゆうっ!!」

れいむ以外(つまり残ったありす全員)は、あかちゃんたちを"ゆっくり出来ない化け物"と認識し、我先にと逃げ出し始めた。
しかし、

「にがしませんよ。 あなたたちのりーだーはだれですか!?」

既に大アリスとその親衛隊により、家の周りは包囲されていた。

「ゆゆん!! れいむがこのむれのりーだーだよ!! なにかよう!?」
「こんなのでむれきどりですか・・・まあいいでしょう。 あなた達はわたしたちのなかまをころそうとしましたね?」

あくまでも、静かに丁寧に話しかける大アリス。
しかしれいむの方は、

「ゆっ・・・ れいむしってるよ! ここのむれはゆっくりをころしてもいいむれなんだよね!!」
「・・・」
「だからこのゆっくりできないできそこないをころしてあげてるんだよ!! かんしゃしてね!!」
「・・・どうしてこどもたちをころすのですか?」
「ゆゆ? れいむがこのゆっくりぷれいすでゆっくりするためだよ?」
「りゆうはそれだけですか?」
「ゆゆっ! しつこいね! れいむがゆっくりするためだけにあのできそこないをころすんだよ! これでいい!?」

とその時、虫の息だったはずのアリスがゆっくりとれいむに近づいていく。
そして、

「だれが・・・」
「ゆゆ?」
「だれができそこないだああああああああああああっ!!!!」

クワッと、これまで一度も見せたことのない、鬼の面を被ったような表情でれいむに飛び掛るアリス。
そのまま大口を開き、一気にれいむの頬に噛み付く。

「よくも!! わたしたちのかわいいあかちゃんを!! よくもおおおおおおおおっ!!!!」
「いっぎゃあああああああああ!! いだいいいいいいいいいい!!!!」
「ゆるさない!! ゆるさないゆるさないゆるさない!!!! ころしてやるううううううううっ!!!!」

どこにそんな力が残っていたのか、噛み付いたまま自分を支点にして振り回し、そこらじゅうにれいむを叩きつける。

「ゆびっ!! ゆぎっ!! ゆべっ!! ゆげえぇっ!!」
「しね!! しね!! しねぇっ!!」

ブツッ・・・ベシャアッ!

「ゆぎゃっ!!」

思い切り噛み付いて思い切り振り回したため、れいむの皮は程なくちぎれ、れいむは地面に投げ出された。
そして、アリスはそのまま、動かなくなった。

「ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・いだいいぃ・・・ゆっぐりでぎないいぃ・・・」
「ゆっくりをころすのは、とてもわるいことなんですよ」

大アリスがれいむに語りかける。

「ゆ゛・・・あのありずはれいむをごろそうとしたよ・・・」
「ええ。 しかしわたしたちはあなたたちをころします。」
「ゆ゛っ・・・な゛ん゛でえぇ・・・どおじでえぇ・・・」

れいむは必死に訴える。
しかし、周りのゆっくり全員が自分に殺意を向けているのはさすがのれいむにも分かる。

「れ゛いむ゛なんにもわるいことしでないのにいぃ・・・」
「ゆっくりをころすのはわるいことなのですよ」
「ゆうぅ・・・だって、ゆっくりをころしてもいいって・・・」
「ゆっくりをころすようなゆっくりは、ほかのゆっくりにころされなければならないのです。」
「ゆぎぃ・・・ごべんなざい・・・ごべんなざいぃ・・・」

もう生き延びるためならなんだってしようと思った。
自分が何に対して謝っているかもよく思い出せないまま、痛む身体で必死に土下座のポーズをつくって謝った。
しかし。

「あなたをころすのは、あなたがわるいことをしたからではありませんよ。」
「ゆびっ! じゃあ・・・なんで・・・」
「このむれのため・・・いえ、わたしのためにころすのです。」
「ゆ゛っ・・・」
「もっといえば、"わたしがゆっくりするためだけにあなたをころす"のです。」
「あ・・・・・・」
「りかいできたようですね。・・・つれていきなさい」
「りょーかいだぜ! さあ! くるんだぜ!」

れいむはさっきの自分の言葉とその時の心境を思い出し、もう自分は絶対に助からないんだと理解してしまった。
自分に助かる道がないと悟ったれいむは、うつろな表情で涙を流し、何やらぶつぶつと呟きながら乱暴に引きずられていった。

「さて、のこりのあなたたちは・・・」
「ゆ・・・ゆゆっ! わたしたちはあのれいむにおどされていたのよ! だから・・・」
「なるほど。 ではこんどはわたしがおどします。」
「ゆゆっ!?」
「そのいえのなかにもどりなさい。」
「ゆゆ・・い、いやよ! だってあのなかには・・・」
「できないのならこのばでぜんいんやつざきですが」
「ゆ゛ゆ゛ぅ・・・いぎまずうぅ・・・」

と言いつつもなかなか動こうとせず、半ば大アリスの親衛隊に追いやられる形で家の中にそろそろと入っていくありすたち。

「そーろ、そーろ・・・」
「そろーり、そろーり・・・あのばけものは・・・ひっ!?」
「ぅゆ? ごぁん・・・」
「ごはん・・ちがぅ。 おかぁー・・しゃの・・・かたき・・・」
「でも、ごぁはん・・・」
「たべぅ。」
「みん・・・ぁで、たべぅ。」

意見が一致したところで、転がったり跳ねたり(最近ほんのちょっと跳ねられるようになった)しながら寄ってくる子ゆっくり達。
そこにまりさも加わり、

「あかちゃんたち! ありすのかたきをとるよ! ゆあああああっ!!」
「いやああああぁぁぁ!! だじでえええええぇぇぇ!!」
「だずげでええええええぇぇぇ!!」
「ごべんなざいいいいいいいいいい!!」

大アリスはそれを見て、

「そのぶざまなあわてっぷり・・・いなかものまるだしですね。 さて・・・」
「どごいぐのおおおおおおお!? だずげでよおおおおおおおお!!」
「・・・こどもたちがあぶなくなったらすぐにせんめつしなさい。」
「りょーかい!」
「わかったよ!」
「ゆぎゃああああああああああああああ!!」





子供達の動きを見て、まりさは改めて確信する。
この子供達は本当に自分とアリスの子供達だと。
アリスの賢さとお互いを思いあう優しさ。
まりさの活発さと勇気。
その両方を兼ね備えた最高の子供達!
ちょっと他の子と違うから何だ。 ちょっと動きがゆっくりしてるから何だ!!
この子はまりさの、宝物。
アリス、見ててね!
この子達を、アリスに誇れる立派な子に育てて見せるからね!
だから、お空の上からまりさたちを見守っててね!


                                          終わり















オマケ





大アリスは、まだ微かに息をしているアリスに近づき声を掛けた。

「ありす。 だいじょうぶですか? いま・・・」
「てぎわ・・・いい・・・のですね・・・」
「・・・こんかいのけんはこちらのせきにんですから。」
「・・・?」
「それに、こういったときのためにあのほうりつをつくったのですから。」
「ありがとう・・・まりさを・・・たのみます・・・」
「ありす! あきらめてはいけません! まだ・・・」

そう言いながらも、その顔色の悪さからアリスがもう長くないと思った大アリスは、せめて最後にまりさに合わせてあげようと

「ぱちゅりー・・・まりさをよんできてくださ・・・」
「おさ。 ちょっといいかしら?」
「え? なに・・・いったぁ!?」

いつの間にかれみりゃの牙(大アリスの勲章の一つ)を持っていたパチュリーが、それを大アリスの身体に深々と突き刺したのだ。
そしてそこから思い切り

ちゅうううううううぅぅぅ・・・

「ちょ・・・ふあああああああぁぁぁ・・・」

大アリスの中身を吸えるだけ吸い出した。
そして、

「むふぉごむふぁいふぁん(ちょっといたいわよ)!」
「ぱちゅりー・・・あなたにもおせわに・・・う゛っ!?」

ブスッ!
ぶちゅうううううううううううっ!!

「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
「な・・・なにをしているのですか!!」
「なにって・・・」

アリスの中に大アリスの中身を吹き込み始めたパチュリーに、慌てて制止の声を掛ける大アリス。
しかしその時、

「はぁ・・・はぁ・・・あら? からだがかるい・・・」
「え!?」
「・・・あなた、ずっとこどもたちにじぶんのなかみあげてたでしょう?」
「あ・・・はい・・・」
「かおいろがわるいのもふらふらなのも、ただなかみがたりてなかっただけよ。」
「で・・・でもありすはあんなにたいあたりされて・・・」
「あんなみじかいじかんたいあたりされたくらいでゆっくりはしんだりしません。」
「ぱちゅりー・・・あなたはそこまでけいさんして・・・?」
「けいさんするまでもないでしょう? こんなわかりきったこと。 こどもたちがあんなことになってるとはそうぞうもしませんでしたが・・・」
「はぁ・・・とにかく、このことをはやくまりさにつたえないと!」
「わたしもいきます。 まりさにあやまらなければ・・・」





まだふらついているアリスと、アリスをかばいながら移動する大アリスを追いながら、パチュリーは思う。
今回の件はうまく収まったと思う。
しかし、まだ問題は何一つ解決されていない。
子供達は少しずつ成長しているようだが、まだ一人で行動するには時間がかかるだろう。
それまで両親の中身を与え続けるか? 論外だ。
では他のゆっくりを襲うか? 長が許さないだろう。
それに、外敵から身を守る努力も、他とは比べ物にならないくらい大変だ。
それ以外にもいろいろある問題を、あの子達はどうやってクリアしていくつもりだろうか。

ここはゆっくりを殺してもいい群れ。
誰よりも、どこよりもゆっくりの命の重みを分かっている群れ。
あの子供達は、この群れで生まれたことが果たして幸運だったのか不幸だったのか・・・

などと考えていたら、前の二人と距離が開いてしまった。
とりあえず今深く考えてもどうしようもないと考えるのをやめたパチュリーは、前の二人に追いつくために速度を上げた。










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  • お題と称してやりたい放題!

  • 最初は普通に未熟児を生んだ一家が滅びかかって・・・みたいなのを考えてました。

  • しかし途中から、なんか愛で寄りの感動話になったので急遽変更してこんなんに。

  • 未熟児が、逆に虐待側という意表をついて・・・ただの天邪鬼ですごめんなさいorz

  • 若干のパロも含んでいます。 と言うかこのパロ入れなかったらもうちょっと短く纏められたはずなのに・・・
                                                       598

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最終更新:2022年05月19日 11:55