長すぎる4時間が過ぎ、まりさの回収用の台車を押して中庭に踏み込む青年。
中庭の広さは四方を建物に囲まれているとはいえ、小さな人工池もあってなかなかの広さ。どこにいったのかと、視線を投げかける青年。ちなみにゆっくりありすの安全と、まりさの自殺を塞ぐために池の水は抜かれていた。
池の窪みにでも逃げられていたら厄介だなと、そちらへ足を向けようとしたときだった。
「ひどいいいいいい……」
地の底を這うような、当のまりさの声が聞こえてきた。
声のした草むらをかきわけ進むと、そこにはまりさと、それを遠巻きに取り囲むありすたちの姿があった。
が、一目で違和感がわく。
まりさの頭部で、いつも自慢げにぴんと先を伸ばしていた円錐の帽子。
それが見えない。金色の毛並みのよい髪の毛だけ。
だが、まりさは帽子を被っていた。
よく目を凝らして、青年は気づく。
まりさの頭を飾る黒い輪っか。4時間前まで被っていた帽子と見比べるとわかる。帽子の円錐部分がすべて引き裂かれて、そのふちだけが残る帽子のなれの果てだと。
まりさの帽子は、すでにシャンプーハットとしか言えない形状となっていた。
「まりざの、ずでぎなぼうじいいいい……」
そして、その帽子が示すようにまりさも昨日以上のぼろぼろだった。
白い粘液が今日は念入りに髪の毛に層をなすほどにかけられ、髪の先からしたたりおちて、まりさの頬を流れ落ちている。
まりさのもちもちとしていた肌はところどこ変色し、まるで人間のキスマークのよう。いくつもの葉型がつき、薄皮ごしにあんこの黒ずみが見えた。どれほど強く吸い付き、まりさを引きずり回したか想像に難くない。
リンチというべき性交により、まりさは朦朧としていた。
表情のない顔で、必死に目の前に散らばった黒い帽子の残骸を集めようとしては、性欲の回復したありすに押し倒されて遠ざけられている。
転がされて消えた草葉の影から、ゆっゆっゆーっと忙しないありすのあえぎ。すでぎなぼうじいいと繰り返す、まりさのうめき。
「帽子、どうしたんだ?」
想像はつくものの、一応聞いてみる。
すると元気に返事をしたのは、「はげしくありすを求めてきたまりさはすてき~」と都合のいい思い出に再び発情しかかっていたありす。
「ありすたちがまりさをコーディネートしてあげたの!」
にこにこ顔で青年の元へやってくる。
「なんで、あんなことをしたんだい?」
「あんまり格好よくするとライバルが増えそうでちょっと怖いけど、かっこいいありすのまりさをみんなに見てほしかったの!」
はにかみながらうっとりとするありすを見て、青年はその行動が善意からきているのだと確信した。
この二日間で最もまりさの心を打ち砕いた行動の原理は善意。
なんともいえない気分でたたずんでいると、草むらからぴょんと勢いよく飛び出してくるのは先ほどまりさを押し倒していたゆっくりありす。
「大成功よ! まりさってば、さいごまでありすにすてきなぼうしをありがとうってお礼いっていたの! うふ、もえちゃったわ!」
そんな戯言を聞き流して、草むらの奥へ。
「ぼうじいいい……ぼうじいいい……」
そこには同じ言葉を繰り返すだけのまりさがいた。
「しっかりするんだ。帽子は少し欠けたけど、ちゃんと頭にあるから」
「ぢがう、ごんなの、れいむの褒めてくれた、まりざのぼうしじゃ、ない」
途切れた途切れの言葉に、青年はまりさの深刻な心の消耗を察して急いで台車にのせた。
間髪要れず、すぐに建物へと押していく。
「まりさ! スイーしながら愛を確かめ合うなんて、なかなか都会的ね!」
「んほおおおおおお、カーすっきりもいいわねええええ!!!」
「今日はこれでおしまいだ!」
台車に飛び乗ろうとするありすたちをかきわけ、屋内へ。
ただひたすらに自室を目指した。
「おにーさんの、うそつき……」
体の汚れをぬぐわれ、深く刻まれた噛み痕に包帯をまいた後のまりさの第一声。
うわ言のように力ない呟きも、青年の心を刺す寸鉄だった。
まりさの目はうつろに空を見つめていたが、青年は目をあわすことができない。
「すまなかった」
心から、青年は謝罪した。
うかつなことで必要以上の苦痛を与えたことを、青年はずっと謝りたかった。
まりさは、その言葉をどう受け止めたのか、ぼんやりとした表情に変化はない。
「……あのね、おにーさん、おねがいがあるの」
やがて、ぽつりと呟く。
「なんだい、言ってごらん。おいしいお菓子かな、ふかふかの寝床かな」
ここから出すこと以外なら、何でも用意するつもりで青年が応えると、まりさはようやくちらりとこちらを見る。
「まりさを、だっこしてね……そうして、壁さんにおもいっきりたたきつけてね」
青年は思わずまりさの瞳をのぞきこんだ。
瞳に迷いはない。
「あのね、帽子もこんなになって、まりさもくるしいばっかりで……疲れちゃったよ」
淡いまりさの微笑みに、何も言えず立ちすくむしかない青年。
昨日、そうやって死んだゆっくりがいた。今日、まりさをそうしてあげても、自分の管理不行き届き。減給程度で済むかもしれない。
そうすれば、このまりさとの心が避けそうな付き合いだって終わる。
もう、心に重石を抱かなくてすむし、まりさだってこれ以上苦しまずにすむんだ。
「まりさ」
了解の言葉を発しようとしたそのときだった。
「おい!」
突然の大声。
振り向いた青年が硬直した。
かけよってくる血相を変えた人間の姿。
そこには、夜半の巡回をしていた上司のだった。
しかし、突き進んできた上司はその傍らを抜けて一直線にまりさの元へ。
呆然とする青年の前で、優しくまりさを抱え起こしていた。
まりさは、馬車の御者をしていた優しく気のいい男の登場に目を見開く。
だが、悲しげにひそめられる眉。
「おじさん……なんで、きょう会ったのに、たすけてくれなかったの……?」
「すまない。実は君を間違えたところに連れて行ってしまってね。何とか助けたかったんだが、ここの人たちは怖い人ばかりで、今まで何もできなかったんだ」
まりさは顔を歪める。ああ、思ったとおりだったんだね。おじさん、ひどいよ。もっと早くきてくれれば、まりさ死のうとなんて、みじめなことは思わなかったのに。
「でも、大丈夫。話はすんだんだよ。これから馬車が迎えが来るからね。こっそり逃がしてあげるから、それまでがんばるんだよ」
その言葉に、まりさの涙腺が悲しみ以外で久しぶりに緩む。
これから、おじさんの馬車にのって、ほんとうの歌劇団のところに行こう。
いや、ここ以外なら、どこでもいいよ。
どうせなら、いちばんゆっくりできるところに、おうちにかえろう。れいむや、みんなのいる暖かなところへ。悲しみなんてなかったあの群れに帰ろう。
「そういうわけで、馬車がくるまであと四日間、がんばるんだよ」
「ゆ?」
ありすに襲われてから膜がかかったようだったまりさの頭。
だが、時間とともにその言葉の意味を飲み込まずにはいられない。
がたがたと、震えがまりさを襲う。
「い、いやああああああああああああ。よっかも、むりいいいい、むりいいいいいいいい!!!」
一日で殺されると思った。二日で、死んだほうがいいと思った。
それがあと四日間。
もはや、まりさの想像を越える地獄だった。
「がんばるんだ! 諦めて、群れのみんなを悲しませていいのかい!」
群れのみんな。
その言葉に、まりさの震えが止まった。
自分を見守り、送り出してくれた絶対に失いたくない場所。
「まりさ、群れのみんなのために、がんばる。みんなに、恩返し、する」
まるで自分に言い聞かせるようなまりさの姿に、男は微笑を浮かべる。
「よし、なるべく急ぐからまりさも諦めたらだめだからね!」
激励は時として人を追い詰めるだけだが、男の言葉はまさにそれだった。
青年は、目の前で行われたことの残酷さに言葉を失っていた。
が、上司に何も言える言葉がなく、ただ引き上げてくる上司を見つめるだけだった。
一方、上司には青年にかけるべき言葉があった。
立ち止まり、目線を合わせないままに小声でささやく。
「どんな決断であっても、君が最善と信じて責任をもてることなら思うがままにやればいいと思うが」
立ちすくむ青年の耳朶に、続いて聞こえてきたのは上司の苦笑まじりの声。
「ただね、目の前にあらわれた逃げ道をただ駆け出すようなことを、決断とはいわないよ。君は最後まで踏みとどまって、見届ける義務がある」
立ち去る上司の足音が消えてから、青年の体を途方もない無力感が打ちのめしていた。
「あとよっか……」
青年が黙りこんだ室内に響き渡るのは、まりさのうめくような呟きだけだった。
『これまでの提供ゆっくりの最長生存日数は、五日間』
青年はマニュアルに書かれていた言葉を思い出す。
生きながらえたとして、あと三日。
そのことをまりさに教える勇気は、青年にはすでになかった。
三日目の朝、迎えにきた青年の前に、まりさがずりずりと体をひきずりながら姿をあらわす。
見るからに、体力が回復していない。
青年の自腹のお菓子とジュースを昨日与えたのにも関わらず、だ。
交尾の消耗は内部からまりさをえぐりとっていたのだろう。
もうすぐ、朝がきても身を起こす力もなくなる。ゆーゆー力なく鳴くだけの、お煎餅のように平べったい生き物になってしまう。
そんな予感を押し殺して、青年はまりさを抱えあげた。
「もう一ふんばりだぞ。がんばれよ」
「あと四日で、れいむ……あと四日でれいむ……」
無責任な青年の声援も、まりさへ通じた様子もなかった。
無理に会話しようとすると、はりつめたまりさの気持ちが折れるかもしれない。
青年無言のまま、まりさを再び中庭へと送り届ける青年だった。
昨日は帽子が噛み切られた。
今日は、果たしてまりさは何を失うのだろう。
「いだあああい、いだああい、いだああああああああっ!」
廊下にまでに響きわたるまりさの絶叫に青年は足を速めた。
まりさをありすの元へ話してから、まだ4時間たっていない。あと、砂時計を数度ひっくり返す必要があった時刻。
急いだところで、4時間たたなければ手がだせない職務規定をわかってはいたものの、走らざるをえなかった。
中庭にいるまりさは、幸いすぐに見つかった。
ガラス戸の向こうで、わずかに宙に浮いている状態だったからだ。
原因はすぐに判明する。
夜叉の顔で、まりさの髪にかじりついているありすたち。
「はなしてね! まりさは、ありすとだけをすっきりしたいのよ!」
見れば、二十匹近いありすたちがそれぞれにまりさの髪をかじりつき、四方八方にひっぱりあっている。
「いだいいいいいい! がわが、がみが、ちぎれるうううううわああああああ!!!」
渾身の力でひっぱられているのだろう。
ちっぱりあげられる力で、まりさが少し浮かび上がっているほどだ。体格は、ありすたちの方が一回り大きい。
「ちがうわ! まりさは、獣のようにありすを求めているの!」
「うそよ! まりさは今、ありすへのあいをささやこうとしているの! 邪魔しないで!」
譲れない理由で引っ張られるまりさの顔は、頭部がのびきってたれさがる顔は苦痛と恐ろしさで青白い。引き伸ばされた金髪に垂れ下がるまりさは、実ったばかりの青りんごようだった。
肌が根元から引きちぎられる苦痛はどれほどのものだろう。涙が幾筋も流れ落ちる。
どうにもならない気絶もできな痛みに、くしばったまりさの歯。ぎりぎりと、終わらない苦痛に歯噛みしている。
その口元からは、だらだらとこぼれておちるよだれ。
まりさのとめられないよどれと、流し続ける涙は、まりさ争奪戦にのりおくれてひっぱりあいに参加できなかったありすたちにに、根こそぎじゅるじゅると吸われていた。
「まりざのだえきいいい! とっでもこうふんするのおおおおお!」
「まりさのなみだ、あまあまなのおおおおお!! ろまんちっくうううう!!!」
そんな、ありすの赤ら顔から、顔をそむけることもできずに目をつぶって耐え忍ぶまりさ。
が、ここでようやくまりさが開放される。
響き渡る、張り詰めたローブがちぎれとぶような鈍い音。
「ゆぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!!!」
「ゆっ!?」
まりさの地を震わす大絶叫と同時に、ごろごろと盛大に転がるありすたち。
何事かと青年が目をやると、そこには奇妙な生物がピクピクと震えていた。
髪の毛がほとんど根元からむしり取られているか、頭皮ごともっていかれて餡子がぼつぼつと見ているゆっくりまりさ。
かろうじて残っている髪の毛は数房だけ。落ち武者のようにだらりと伸びて、シャンプーハット状の帽子にの縁から垂れ下がっている。
まりさのかつての面影を残すものは、クリクリとしたお目めだけ。
「ゆゆゆゆゆゆゆ……」
だが、その瞳も白目をむいて今は別人の形相。口にはぶくぶくとあぶく。はがれた頭の皮からのぞく茶色の中身が痛ましかった。
青年はもどかしさに悶えた。まりさを助けられる時間帯まで、あとほんの少し。
もちろん、気を使って休ませてあげられるゆっくりなど、この場に存在しない。
「やっぱり、まりさはみんなのものなのねえ……ゆうっ!?」
「ゆ! どうしたの、まりさ! つるっぱげよ!」
「あんしんして! まりさがみっともなくなっても、ありすは見捨てたりしないわ!」
「すぐにたくさん生えるように、優しいありすがあたまにたっぷりだしてあげるね!」
「ざっぞぐ、いぐよおおおおおおおほおおおおお、まりさのあたまにたっぐさん、生えてねええええほおおおおおおお!!!」
次々と、失神しかけのまりあさにのりあげていくありす。怒涛の波にのまれつつ、あまりの苦しさにうっすらと我に返るまりさ。
そうして、見てしまった。
記念品のようにありすたちが口にくわえこんだ、まりさ自慢のふわふわな髪の毛を。
「まりざのがみのげがああああああ!」
今、まりさの頭には帽子の保護もなく、さらさらな自慢の髪の毛もない。帽子と髪の毛の代わりに頭の上にあるのは、つるつるの感触を恍惚の表情で味わうありすたち。入れ替わり立ち代り、のしかかっては存分に下腹部をうちつけていく。
「ゆっぐるじい……」
自分の体よりもおおきなありすの押しつぶすような愛撫。
まりさはこみあげる嘔吐の衝動に、ぽろぽろと涙をこぼす。
一瞬の気の緩みで吐き出してしまいそうな餡子。そうなったら終わりだ。
今のありすたちは餡子まみれになったところで、余計興奮して襲いかかってくるだけだろう。群れのみんなに会うまで、死にたくない。
むりやりにこみあげる熱いものをのみこむ。嫌悪と悪寒に、まりさの小刻みな震えが止まらない。
一度ひいた波がより高さをまして戻ってくるように、高まる嘔吐感との死闘が始まった。
悲鳴すらあげられない。容赦のないありすの交尾に、もう焼け付いたような痛さしか残さないまりさの肌。そこをこすられる度に、全身をびりびりと走る痛み。どれだけ苦しいか、どれだけやめてほしいのか、ありすに訴えたくて仕方がないというのに。
しかし、今は砕けそうなほどに歯をかみしめるしかできなかった。
そんなまりさを見て、青年は焦燥にかられている。
もう、いい加減4時間たっただろうと時刻を確認するが、示された経過時間は完了まであと五分。
長すぎる。
まりさの体の震えがひどくなってきた。
血走った眼差しが、ちらちらと青年に視線を送る。はやく、はやく止めてと、声にならない嘆願に、その唇がぷるぷると揺れていた。
「うふ、まりさのくちびる、ぷるぷるしてかわいいいいいい!」
「ありすを誘う、魔性のくちびるねえええええええ!!」
が、意思を伝えるための唇の震えは、別の注意を集めてしまっていた。
甲高い嬌声をあげたのは、まりさのよだれと涙を堪能していた二匹のありす。
「ゆ!?」
唇を覆う鋭い痛みに驚愕するまりさの唇。
途端に、まりさをのけぞられる爆発するような痛み。
「ゆひ、いはああい、いはあああああいいい!」
それなのに、満足の行く悲鳴を上げられなかったのは、上唇、下唇を甘噛みしたまま、引っ張っていく二匹のありすがいたからだった。
「はひ、してひるのおおおおおお!?」
犯されるのとは違う、鋭角的な傷みに取り乱すまりさ。
ありすたちはがっちりとまりさの唇をくわえこみながら、まばゆいほどの笑顔を向けていた。
「ゆっふっふ♪ まりさのばらのようなくちびる、だあれにもわたさないの!」
その言葉が合図のように、二匹、別々の方向へ急速にひっぱっりだした。
「ゆーえす! ゆーえす!」
「やへて、くださひいいいいいい!!」
牧歌的なありす二匹の掛け声に割り込む、まりさの懇願。
だが、満面の笑みのありすたちにはとどかない。
びちっと、湿った縄が重みで断ち切れるような鈍い音が響いた。
「まりふぁの、くちひるうふぁあああ!!!」
熱い鉄板に触れたように跳ね上がるまりさ。
何が起こったのか、まりさの顔をのぞきこんで青年は理解した。
「ま、まりふぁのくちひる、ふぁえしてええええええ!!」
まりさの可愛らしい顔は、もうない。
唇が上下、噛み切られてむき出しとなった歯並び。
解剖途中の死体のような容姿に、息を呑む青年。
唇を噛み切ることで、そんなおぞましいコーディネートしでかしたありす二匹は、何やら口をもごもごと動かすのに忙しかった。
「むーしゃ、むーしゃ♪」
「た、たへないふぇええええ!! まりふぁのおくち、かえふぃてえええええ!!!」
だが、加工所にきてから、まりさの望みが叶えられたことは一度だってなかった。
「むーしゃ、むーしゃ。うふふ、すっきりー!」
高らかな宣言の後、にへらと初恋にときめく少女たちのように微笑むありす二匹。
「うふ! まりさのあまーい唇、うばっちゃった♪」
「ちょっと大胆だったかしら! でも、恋する乙女は立ち止まれないわ!」
台詞自体はかわいらしいありすの言葉だったが、青年の心に悪寒が走る。
愛情をもって、おいしいおいしいとまりさの皮を食べたありす。
それは、今、最後の留め金が外されようとしているということではないのだろうか。
「時間だ! 離れなさい!」
青年は小走りでまりさとありすたちの間に踏み込む。
ようやく、五分。
性行為を超える何かの始まりを予感させる地獄の五分がおわった。
ほっと一息をつく青年。
だが、抱え込んだまりさは震えるばかりで、未だ悪夢から帰ってこない。
「なんで……まりふぁのおくち、たふぇるのお……」
繰り返す言葉を聞きながら、青年はまりさを与えられた部屋に戻すべく、ひたすらに走った。
最終更新:2022年05月03日 16:42