……翌日。
「さぁ、あなたたち、じゅんびはいいですか?」
「じゅんびはいいぞー!ごしゅじーん!」
「ンボォ……」
「ガッバァ……」
「ウー……」
「それはよろしいことです。では、いきましょうか。……すべてのけりをつけに……、ね」
続・邪悪なる者達・結
作:ぺけぽん
……ドスまりさの広場にて。
「ど……、どすーっ!!どすーっ!!どこにいるのぜえぇぇぇぇっ!?」
「ゆぁ~ん?いったいなんなのぜ?」
ドスまりさは群れの広場で、群れのまりさ達が他のゆっくり達から略奪してきた食糧を堪能していた。
そこへ、群れの外へ狩りに出掛けていた一匹のまりさが、慌ただしく声を荒げながら戻って来た。
「そ、そとに!むれのそとに!!」
「おちつくのぜ!そとにいったいなにがあるのぜ!」
「そ、そとに……!ば、ばけものゆっくりがいたのぜ!!」
「!?」
「そ、それもいちひきやにひきじゃないのぜ!!たくさんいたのぜ!!」
ばけものゆっくり。
その単語を聞いたドスまりさの脳裏に、一匹のゆっくりの姿がよぎった。
(ま……、まさか……、せーが……!?)
ドスまりさは、かつて自分が敗れ、そして自分が破った因縁のゆっくりの事を思い出していた。
「どすーっ!!たいへんなのぜえぇぇぇぇっ!!」
「ばけものゆっくりたちが、こっちにむかってくるのぜぇっ!!」
「なんとかするのぜえぇぇぇぇっ!!どすうぅぅぅぅっ!!」
そして、他にも外に出掛けていた群れのまりさ達が、次々とドスまりさの元へ駆け込んできた。
「お、おちつくのぜ!!これはきっと、あのせーがのしわざなのぜ!」
「せ、せーが!?せーががしかえしをしにきたのぜ!?」
「そうなのぜ!ばけものゆっくりといえば、あのせーがしかおもいつかないのぜ!」
「そ、そういわれれば、そうなのぜ……」
「おまえら!あのせーがと、ばけものゆっくりたちには、いちどかっているのぜ!!まけいぬなんざ、こわくないのぜ!」
ドスまりさは恐れ慄く群れのまりさ達を必死に鼓舞し始めた。
「どすのむれは、つよいまりさたちのむれなのぜ!おまえたちはつよいのぜ!!どんなてきでも、けちらせるのぜ!!」
「そ、そうなのぜ!あんなきもちわるいやつらなんか、こわくないのぜ!」
「やってやるのぜ!!」
「かえりうちにしてやるのぜ!!」
ドスまりさの鼓舞は効果があったようで、群れのまりさ達は次第に戦意が湧き上がっていた。
せーが達には一度大勝しているという事もあるのだろう。
「おまえら!いますぐにぶきをよういするのぜ!あのせーがを……、さいっじゃくっどもをむかえうつのぜ!!」
「「「「「「ゆっゆっおー!!」」」」」」
ドスまりさの号令により、群れのまりさ達は戦いの準備をし始めた。
(くそせーが……!あいつは、こんどこそころしてやるのぜ……!!)
ドスまりさは因縁の相手を今度こそ殺すべく、闘志と殺意をたぎらせていた。
……そして、数分後。
ドスまりさと群れのまりさ達は、群れの入口付近でせーが達を待ち構えていた。
「き、きたのぜ!」
群れのまりさ達の内の一匹が、声を上げた。
……見ると、大分遠くの方から、沢山のゆっくり達らしき集団が、こちらにやって来ていた。
その集団は次第に近くなり、段々とその集団の詳細が見れるようになっていた。
先頭を勤めるのは、ゆんしー達の親玉、せーが。
「ンボオォ……」
「バリザァ……」
「ズッギリィ……」
……その背後には、二十匹程の、金髪のゆんしーありす達がいた。
それは、生前のれいぱーありす達だった。
死してもなお、まりさ種に対する歪んだ愛と性欲は変わらずであった。
「せーが……!」
己の宿敵と再会したドスまりさは、顔を歪めた。
……徐々に二つのゆっくりの集団の距離は縮まり、そして、せーが達はドスまりさ達の目前まで辿り着いた。
「ひさしぶりですね。どすまりさ」
「せーが……!おまえ、あれだけどすにぼろまけしておいて、よくふくしゅうするきになれたのぜ!」
「えぇ。せーがはあきらめのわるさだけがとりえなので」
「はっ!あきらめのわるさも、ここまでくるとあわれなのぜ!かずはこっちのほうがうえなのぜ!」
……ドスまりさの言う通り、ドスまりさ達とせーが達の戦力の差は、歴然としていた。
大雑把に言うなら、3:1の比率で、せーが達の方が分が悪かった。
数で負けている上に、ドスまりさという規格外の存在が加われば、勝負どころの話ではなかった。
「そうですね。どうみても、こっちのほうがまけていますね。……ところで、どうしてどすすぱーくをうとうとしないのですか?」
「ゆっへっへ……。さいしょはそのままぶちかましてやろうかとおもっていたけれど、そんなことをしなくてもいいときづいたのぜ!」
ドスまりさがそう言うのと同時に、群れのまりさ達が一斉に口に咥えていた木の枝を向けた。
「いくらおまえがばけものゆっくりをみかたにしても、このかずで、いったいどうするのぜ?」
「……」
「かりに、ほかにもなかまがいたとしても、どすのどすすぱーくでけちらしてやるのぜ!おまえのことなのぜ!ほかにもなかまがいるのぜぇ?」
「う……!……なるほど。すっかりおみとおしというわけですか」
「ゆーっひゃっひゃっひゃ!!おまえがかんがえそうなことなんざ、おみとおしなのぜ!ほれほれ、さっさとなかまをよぶといいのぜ!」
「う、うぅ……」
「どうせ、そこらへんにかくれているのぜぇ?でてきていいのぜ!このままじゃ、けんかにもならないのぜ!」
ドスまりさは完璧にせーがの事を馬鹿にしていた。
こちらの動きを看破され、焦っているせーがを見て、内心良い気分になっていた。
「……だそうですよ?ありすさん?」
「ンンンンンンボオオォォォォォォォッ!!!!」
「……あ?」
……焦りの表情から一転、黒い笑みを浮かべたせーがと、自分の背後から聞こえてくる、おぞましい声を聞くまでは。
「ゆ、ゆひゃあぁぁぁぁっ!?」
「な、なんなのぜ!?あれはあぁぁぁぁっ!?」
「ゆぎゃあぁぁぁぁっ!!こわいのぜえぇぇぇぇっ!!」
群れのまりさ達の驚愕と恐怖の入り混じった悲鳴を聞き、ドスまりさは背後を振り返った。
「ンボオワアァァァァッ!!バアァァァァリイィィィィザアァァァァァッ!!」
……群れの広場の方から、肌がベロンベロンに溶けかかり、腐臭を漂わせ、口から大量の唾液を流して、こちらに突っ込んでくる『敵』の姿があった。
その『敵』は、ドスまりさ位の大きさの体格の持ち主であった。
その『敵』とは、とても形容しがたいものであった。
……もし、その『敵』に名前を付けるなら、まさにそれは、『悪夢』と呼ぶに相応しいだろう。
「ゆ……、ゆわあぁぁぁぁっ!!」
……ドスまりさは理解していた。
目の前の『悪夢』は、自分が普通のまりさであった頃、自分にとって最大のトラウマである存在であるという事を。
ドスまりさになった今では、そのトラウマは克服したかに思えたが、そんなトラウマを軽く超える程の恐怖であるという事を。
「ワダジヨオォォォォッ!!アリズヨオォォォォッ!!ドガイハナアイヲ、イッジョニワガヂアイマジョオォォォォッ!!」
……自分と同じ大きさの『悪夢』は、ドスまりさだけを見ていた。
「く……、くるんじゃないのぜえぇぇぇぇっ!!」
ドスまりさは『悪夢』に対して、半ば半狂乱になりながら、どすすぱーくを放った。
「ンゴオォォォォッ!?バ、バリザアァァァァッ!!」
……どすすぱーくは『悪夢』の横腹を抉ったが、それでも『敵』は突っ込んで来た。
「んぎゃあぁぁぁぁっ!!くるなくるなくるなあぁぁぁぁっ!!」
ドスまりさは何回も、何回も迫りくる『悪夢』に対してどすすぱーくを放った。
「んギョオォォォォッ!!ズッギリジマジョオォォォォッ!!バリザノアガヂャンガホジイノオォォォォッ!!」
「あがあぁぁぁぁっ!?くるなあぁぁぁぁっ!!こっちにくるなあぁぁぁぁっ!!」
どすすぱーくは何度も『悪夢』の体に命中した。
頭を、顔を、腹部を、あんよを、光線の熱によって吹き飛ばし、消滅させた。
「ン……、ボ……、オォォ……」
……そして、体の大半を吹き飛ばされた『悪夢』の歩みは、ようやく止まった。
『悪夢』は口から腐りきったクリームを垂れ流し、その場に崩れ落ちた。
「はぁ……。はぁ……。はぁ……!」
ピクリとも動かなくなった『悪夢』の姿を見て、ドスまりさはやっと、心の底から安堵した。
「あらあら……。どすまりさともあろうものが、ずいぶんとひっしですねぇ?」
「せ……、せーがあぁぁぁぁっ!!よていへんこうなのぜぇっ!!いますぐっ!!そっこく!!ぶっころしてやるのぜえぇぇぇぇっ!!」
己のトラウマを呼び覚まされたドスまりさは、せーがを消し炭にすべく大きく口を開けた。
遊びは終わりだ、今すぐに永遠にゆっくりさせてやる。
ドスまりさはそう思い、どすすぱーくを放とうとした。
……が。
「あ……!し……、しまったのぜえぇぇぇぇっ!!」
……どすすぱーくは放たれなかった。
「どうしたんですか?はやくどすすぱーくをうてばいいでしょう?……あぁ、もしかして、できないんですか?」
「ゆ……、ゆぐっ……!」
「……あなた、どすすぱーくをうつには、とくべつなきのこがひつようなんですってね?……もう、そのおくちのなかには、きのこはないんでしょう?」
「な……、なんでそれをしっているのぜ!?」
……せーがの言う通り、ドスまりさ種はどすすぱーくを放つ為に必要な、特別なキノコを口の中に忍ばせている。
つまり、そのキノコがなければ、どすすぱーくは全く使えないのだ。
「ふふ……。せーがはあなたのことについて、あまりくわしくしらなかったので……、あなたのしりあいに、いろいろとおしえてもらったんですよ」
「だ……、だれにおしえてもらったのぜ!?」
まさか、自分の群れの誰かが寝返って情報を漏らしたのだろうか。
ドスまりさは群れのまりさ達を疑い始めた。
「あらぁ?いるじゃないですか。……あなたがどすまりさになってから、いちばんさいしょにころしたゆっくりですよ」
「ま……、まさか……!?」
「ねぇ?そうでしょう?……ふらんさん?」
せーがは上を見上げながら、そう言った。
「……ウー……」
……せーがの視線の先には、近く木の枝に止まってこちらを見ている、沢山のゆっくりふらん達がいた。
そのふらん達は、ドスまりさ達に殺され、せーがによって蘇ったゆんしー達であった。
ゆんしーふらん達は、せーが達がここに来る前からずっと、近くの木で待ち伏せていたのだ。
そのゆんしーふらんの中に、一匹だけ胴付きのふらんがいた。
……あの長ふらんである。
「ふらんさんから、あなたのきのこのことをおしえてもらいましてね……。なので、ありすさんをさしむけて、きのこをつかいきらせたんですよ」
「ウー……」
長ふらんは、その手に長い木の枝を槍のように構えていた。
長ふらんを初め、全てのゆんしーふらん達が、ドスまりさ達を睨みつけていた。
「あ、あんなところに、ふらんたちがいるのぜぇっ!?」
「こ、こわいのぜぇっ!!」
異形として蘇ったゆんしーふらん達の存在に気付いた群れのまりさ達は、その姿に怯えていた。
「お、おまえら!おちつくのぜ!いくらふらんたちがみかたでも、このどすがついているのぜ!」
「で、でも!どすはもう、どすすぱーくをうてないのぜ!?」
「があぁぁぁぁっ!!おまえっ!どすはどすなのぜっ!どすがあんなれんちゅうにまけるとでもおもっているのかぜ!?」
ドスまりさは群れのまりさ達を落ち着かせようとしたが、なかなかうまくいかなかった。
……れいぱーありすならともかく、通常種の天敵の捕食種、しかもそれがふらん種となれば、話は別だろう。
「あらあら、こわがってくれて、なによりで。ですが、これだけではありませんよ?」
「あ……、あぁ!?」
ドスまりさがどういう事か尋ねようとしたが、その必要はすぐになくなった。
「ここにいるぞー!!」
……ドスまりさ達の背後から、気合が入っているのか間が抜けているのかよく分からない声が聞こえた。
……見ると、そこにはせーがの第一の専属、よしかを始めとする、たくさんのゆっくりの集団がいた。
「ガッバッバァ……」
……よしかの背後には、顔が緑色に変色し、よく分からない鳴き声を発しているゆっくり達がいた。
それは、ドスまりさ達に殺された、ゆっくりにとり達だった。
「ふふふ……。どうやらいちぶをのぞいて、みんながあなたたちにふくしゅうしたいようですねぇ?」
「せ……、せーがあぁ……!」
「わかりませんか?このゆんしーたちのひょうじょう。ひつよういじょうのみれんやうらみがみえますよ?……あなた、そうとうきらわれているんですねぇ?」
「があぁぁぁぁっ!!だまれえぇぇぇぇっ!!どすすぱーくがなくても、おまえらなんか、ひとひねりなのぜえぇぇぇぇっ!!」
「さぁ、いきなさい、わがせんぞくたち。おのれのおもうがまま、うばい、おかし、ころしなさい。そのねがいをかなえなさい」
「おまえらっ!!ふらんたちはどすがやるのぜぇ!!おまえらはほかのれんちゅうをやるのぜぇ!!にげたらころすのぜえぇぇぇぇっ!!」
「「「「「「ユガアアァァァァッ!!」」」」」」
「「「「「「ゆおぉぉぉぉっ!!」」」」」」
……こうして、せーが率いるゆんしー軍団と、ドスまりさ率いるしっこくのけものが、激突した。
「おらぁっ!!しぬのぜぇっ!!」
「このばけものゆっくり!!」
「おまえらをころさないと、まりさたちがどすにころされるのぜ!!」
「だからさっさとしぬのぜぇっ!!」
大量のまりさ達による数の暴力に対し、ゆんしー軍団は個々の力を存分に発揮していた。
「バリザアァァァァッ!」
「ズッギリイィィィィッ!」
「ゆんやあぁぁぁぁっ!!ずっぎりじだくないいぃぃぃぃっ!!」
「あがぢゃんうみだぐないいぃぃぃぃっ!!」
ゆんしーありす達は、まりさ達に木の枝で体を抉られたり、踏み潰されたりしながらも、まりさ達を犯し、すっきりー殺していた。
その異常と呼べる愛の表現は、もはや感心に値する程である。
「みんなー!やっちまえー!」
「ガッバァッ!!」
「ゴッバァッ!!」
「ゆぎゃあぁっ!?なんなのぜこれはぁっ!?くさいのぜえぇぇぇぇっ!!」
「ゆ、ゆっぐりできないのぜえぇぇぇぇっ!!」
「え、えれえれえれ……」
ゆんしーにとり達は、よしかの号令で、口から緑色の液体を発射し、まりさ達にその液体を浴びせていた。
腐臭やら死臭やら漂うその液体を浴びたまりさ達は、その臭さに阿鼻叫喚し、中には命の餡子を吐いて絶命する者もいた。
「ウウゥゥゥゥッ!!」
「ウガアアァァァァァッ!!」
「あぎゃあぁぁぁぁっ!!ふらんだあぁぁぁぁっ!!」
「だ、だずげでほじいのぜえぇぇぇぇっ!!」
「おそらをとんでいるみたいいぃぃぃぃっ!!」
ゆんしーふらん達は、生前と優るとも劣らぬ凶暴性と素早さを活かし、まりさ達を容赦なく狩っていた。
ただのまりさ種では、ゆんしーふらん達に敵う筈もなく、一方的な虐殺と化していた。
「な、なんなのぜぇっ!?こいつら!?」
「ゆひゃあぁぁぁぁっ!まりさはしにたくないのぜっ!だれかおとりになるのぜえぇぇぇぇっ!!」
「どぼじでそんなことをいうのぜえぇぇぇぇっ!!」
数で勝っていようとも、その大半がゲスまりさ達。
こちらを本気で殺しにかかっているゆんしー達とは、実力も覚悟も全くの別物だった。
まりさ達はあちこちでゆんしー達に殺されたり、その場から逃げ出したりなど、徐々に押されていた。
「せーがっ!なかまのかたきなのぜっ!」
「まりさたちのかおをわすれたとはいわせないのぜっ!」
「あなたたちは……。……えーと、だれでしたっけ?」
……一方、せーがは二匹のまりさと対峙していた。
「ふざけるんじゃないのぜぇっ!!あのひっさつわざは、まりさがさんびきでなければできないわざなのぜ!!」
「そのひっさつわざをやぶって、なかまをころしておいてわすれたとか、なめているにもほどがあるのぜぇっ!!」
「あぁ……。あの、さんびきいちれつにならんでつっこんでくる、ふざけたたたかいかたをしていたかたたちですか」
「「ゆがあぁぁぁぁっ!!」」
自分達の存在や技を否定され、復讐に燃える二匹のまりさはせーがに突っ込んで来た。
「こんどはまったくべつのあたらしいわざをかんがえたのぜ!」
「そのわざでしとめてやるのぜぇっ!」
二匹のまりさはそう言うと、せーがの周りをぐるぐる回り始めた。
「これは……」
「ゆーっへっへっへ!めのまえのまりさのこうげきをかわしても、すぐうしろのまりさが、こうげきをしかけるのぜっ!」
「まえとうしろのふたつのこうげきっ!かわせるものならかわしてみるのぜっ!」
二匹のまりさは口に咥えた枝をせーがに向けながら、ドヤ顔で回り続けた。
「あー……。もういいです、はい」
「「ウー!」」
せーががそう言うのと同時に、二匹のまりさの頭上にゆんしーふらんが舞い降り、二匹を咥えて空中へと飛び立った。
「「おぞらをとんでるみだいぃぃぃぃっ!!」」
……あの二匹の運命は、語らずとも分かるだろう。
「……ごしゅじーん、なんか、あっさりすぎないかー?」
せーが達の方へ合流して、近くまで来ていたよしかがそう言った。
「いいんですよ。どうせ、にひきいっぺんにつっこんできて、せーががかわしてりょうほうくしざしっておちですから」
「なんか、とことんざんねんだなー、あいつら」
徐々に遠くなっていく二匹のまりさの姿を眺めながら、よしかはそう呟いた。
……その頃、ドスまりさの方では。
「ウウゥゥッ!!」
「ウガアァァッ!!」
「このおぉぉぉぉっ!!しつこいのぜえぇぇぇぇっ!!」
自分の宙を回りながら攻撃を仕掛けてくるゆんしーふらん達に対し、ドスまりさは自分の髪の毛のお下げを振り回して反撃していた。
数匹は叩き落とす事が出来たものの、どすすぱーくが使えない今、ジリ損であった。
「ウウゥ……!ドスウゥ……!!」
……丁度そこへ、周囲のまりさ達を狩り終えた長ふらんが飛んできた。
「ゴロスッ!!ゴロズウゥゥゥゥッ!!」
「ゆがあぁぁぁぁっ!!このばけものふらんがあぁぁぁぁっ!!」
ドスまりさは長ふらんを叩き落とすべく、長ふらん目がけてお下げを振り降ろした。
……が、お下げは長ふらんには当たらず、長ふらんはドスまりさの懐に入り込んだ。
「ウアアァァァァッ!!」
……そして、雄叫びを上げながらドスまりさの右目に、木の枝を突き刺した。
「ぎゃあぁぁぁぁっ!?どすのりりしいおめめがあぁぁぁぁっ!?」
ドスまりさは右目に長い木の枝が刺さったまま、激しい痛みにより暴れ出した。
「どっ、どすっ!!あばれたら……、ぶべぇっ!?」
「や、やめるのぜっ!!どすっ!!あびゅっ!?」
「に、にげ……、ひでぶっ!?」
それにより、ドスまりさの近くにいた群れのまりさ達が何匹か踏み潰されてしまった。
「ど、どすがむれのみんなをころしたのぜえぇぇぇぇっ!?」
「も、もうおわりなのぜぇっ!!こんなどすについていたら、いのちがいくつあってもたりないのぜぇっ!!」
「た、たすけてくれなのぜえぇぇぇぇっ!!」
その光景を目の当たりにしてしまった、その場に残っていた群れのまりさ達は、戦いを放棄して我先にと逃げ出してしまった。
「お、おまえらあぁぁぁぁっ!!にげるんじゃないのぜえぇぇぇぇっ!!」
ドスまりさは必死に呼び止めるものの、群れのまりさはドスまりさの制止を聞く事はなかった。
……群れのまりさ達の大半は潰され、逃げ出し、辛うじて残っている者達もゆんしー達に次々と血祭りに上げられていた。
もはや、勝負は決しているようなものだ。
「あらあら……。たいしょうをみすててにげだすなんて、へたれにもほどがありますねぇ?」
……そして、この戦いの勝者であるせーがは、ドスまりさを見ながらクスクスと笑っていた。
その周辺にはまりさ達の死骸が転がっており、口には餡子が付着しているお飾りのかんざしが咥えられていた。
「せ、せーが……!!」
「ふふ……、ゆんしーたちばかりにまかせているわけにはいきませんからね。ひさびさにはげしいうんどうをして、つかれましたよ」
せーがはそう言いながら、頬に付いた返り餡子をペロリと舐めた。
「……どすまりさ。あなたはほんとうにわかりやすいですねぇ」
「どういういみなのぜぇっ!?」
「そのままのいみですよ。つよいからこそ、ほしいものをなんでもてにいれることができるからこそ、あいてをみくびり、ゆだんする……」
「ぐっ……!!」
「このまえもそうですよね?ゆんしーたちをどすすぱーくでふっとばされて、きゅうちにおちいっているせーがをみて、あなたはわらっていました」
「このどすが……!!おまえみたいな、ざこに……!!」
「……せーがをあざわらうひまがあったら、さっさところすべきだったんですよ。むれのなかまをまきこもうが、かんけいなしに」
「だったらいまころしてやるのぜえぇぇぇぇっ!!」
ドスまりさはせーが目がけて巨体を震わせて突っ込んで来た。
「おまえさえころせばっ!!どすのかちなのぜえぇぇぇぇっ!!」
「……どうして、そのさついをあのときにむけなかったんですか?そうすれば、こうはならなかったでしょうに」
「だまれえぇぇぇぇっ!!」
ドスまりさはせーがの目前という所まで近付いていた……、が。
「「「「「ウウゥゥゥゥッ!!」」」」」
「ぐへぇっ!?」
数匹のゆんしーふらん達が、ドスまりさの死角となっている右側から体当たりをしてきた。
右目を潰されていなければ、すぐに気付く事が出来ただろう。
「ゆ、ゆぎゃあぁぁぁぁっ!?い、いだいのぜえぇぇぇぇっ!?」
……ドスまりさの右側の顔や体に、何本もの木の枝が突き刺さっていた。
ゆんしーふらん達は殺したまりさ達から木の枝を回収しており、それを体当たりした時に突き刺したのだ。
それにより、ドスまりさは一瞬動きを止めた。
……その瞬間を、ゆんしーふらん達は見逃さなかった。
「「「「「ウーッ!!」」」」」
ゆんしーふらん達は、ドスまりさの右目に刺さっている長い木の枝を口に咥え、思い切りその木の枝を抜いた。
「あぎゃあぁぁぁぁっ!?」
ドスまりさの眼球が突き刺さったまま抜けたが、そんな事はお構いなしだった。
……そこへ、ゆんしーふらん達の背後にいた長ふらんが、ゆんしーふらん達から長い木の枝を受け取り……。
「ウアアァァァァッ!!シネエェェェェッ!!」
……それを、ドスまりさの左目に突き刺した。
「いっ……、いぎゃあぁぁぁぁっ!?いだいぃぃぃぃっ!?みえないぃぃぃぃっ!?なにもみえないのぜえぇぇぇぇっ!?」
……両目を潰され、視力を失ったドスまりさは痛みのあまり転倒し、その場で転げ回った。
「いぎゃあぁぁぁぁっ!?せえぇがあぁぁぁぁっ!!どこにいるのぜえぇぇぇぇっ!!があぁぁぁぁっ!!」
ドスまりさは何も見えないまま転げ回り……、近くの木に思い切り激突した。
「ごへぇっ!?」
ボキリ……。
……しかも、運の悪い事に、ドスまりさがぶつかった衝撃により、木が折れてしまったのだ。
その折れた木は……。
グサッ……。
「あ……、があぁぁぁぁっ……!?」
……ドスまりさの腹部に、深々と突き刺さってしまった。
木はドスまりさの背中を貫通しており、地面に縫いつけられる形となった。
「ガッバッバァ!!」
「ゴッパァ!!」
……そして、近くにいたゆんしーにとり達が、追撃とばかりにドスまりさの傷口に、あの緑色の液体を浴びせた。
傷口はグジュグジュと腐り出し、そこから命の餡子が漏れ出した。
「お……、げぇ……」
目は見えず、全く動く事が出来ず、腹部からは命の餡子がボダボダと漏れ出ている。
ドスまりさは、完全に詰んでいた。
「……どすまりさ。……なぜ、いちどはまけてしまったせーがが、なぜあなたに、ふたたびたたかいをいどんだのか、わかりますか?」
「が……、あ……?」
ドスまりさの近くで、せーがの声が聞こえる。
せーががどこにいるのかまでは、ドスまりさには分からなかった。
「ふくしゅうしたい、というのもあるのですがね……。……あなたはをみていると、まるで、ついこのあいだまでのせーがをみているようなのですよ……」
「な……、に……、を……」
「あなたはこのやまのちょうてんにたつことで、かんぜんにまんぞくしていた。……むかしのせーがのように……」
「ど、どす……は、お、おまえ、なんかじゃ……」
「……あなたのことはわすれて、あらたにゆんせいをやりなおしたほうが、いちばんりこうなんでしょうね。……でも……」
「ご……、お……」
「……あなたをたおさなければ、せーがは、まえにすすめないのですよ。……さようなら、どすまりさ。……さようなら、かつてのせーが……」
「……」
……ドスまりさは、何も言葉を返さなかった。
(なんで……、こうなってしまったのぜ……?)
……ドスまりさは、何も見えていなかった。
(どすはただ……、ゆっくりしたかった、だけなのに……)
自分の何が間違っていたのか、何故、こうなってしまったのか。
(もっと……、ゆっくり、したかった、のぜ……)
その理由を考えられぬまま、その答えを見いだせぬまま……、ドスまりさの意識は、闇に包まれた。
「……」
せーがは事切れたドスまりさの死骸を、じっと見つめていた。
……こうして、この山の古き暴君と、新しき暴君との戦いは幕を閉じたのだった……。
「せーがー」
「なんですか?あなた」
「……せーがは、だいじょうぶかなー」
「あらあら……。だいじょうぶですよ。あのこはじぶんのやりたいことを、なしとげることができますよ」
「……しんぱいだぞー」
「だいじょうぶですってば。だって……」
「だってー?」
「あのこは、だれよりもじぶんかってで、わがままで、ごうつくばりで……。……だれよりも、おろかなくらいに、じゅんすいですもの」
……数週間後、とある山にて。
「むきゅう!みんな!きょうこそは、けっせんのひよ!」
「みんな!もうすぐここに、『あいつら』がやってくるよ!あんなやつらは、れいむたちでおいかえしてやるよ!」
「「「「「「ゆっゆっおー!」」」」」」
とある広場にて、数十は超える数のゆっくり達が、大声を上げていた。
「むきゅ!れいむ、わかっているわね!ここで『あいつら』にかたないと、あとがないわよ!」
「わかっているよ、ぱちゅりー!そのために、どうっめいっをむすんだんだからね!」
「もうすぐここに、ありすたちもやってくるわ。ありすたちがとうちゃくすれば、さらにみかたのかずがふえるわ」
……この山は、つい最近までは比較的平和な山だった。
しかし、何の前触れもなく、隣の山から化け物と呼ぶに相応しいゆっくり達が侵略を開始したのだ。
……その為に、その山の群れのゆっくり達は手を組んで、そのゆっくり達を迎え撃とうとしているのだ。
「ゆっ!きたよ!」
そう言ったれいむの視線の先には、こちらにやって来るゆっくり達の姿があった。
「ごしゅじーん、おなかがすいたぞー。ごしゅじんのおかざり、かじってもいいかー?」
「だめです!じぶんのぼうしでもかんでいなさい!」
「けちー」
……こちらにやって来る侵略者達の集団の先頭に、何やら騒いでいる二匹のゆっくりの姿があった。
恐らく、その二匹が侵略者達のボスなのだろう。
その侵略者達の数は、山のゆっくり達より少ないようだ。
「むきゅうっ!!みんな!あいつらをおいかえしなさいっ!!」
「みんな!あいつらをやっつけるよ!!」
「「「「「「ゆおぉぉぉぉぉっ!!」」」」」」
山のゆっくり達は、その集団目がけて真正面から突っ込んで来た。
「あら……、このまえみたときよりも、かずがおおいですね。これはすこしまずいですね。こちらのほうが、かずがすくないです」
「ごしゅじん、どうするんだー?ひとまずにげるのかー?」
「ふふ、そんなことはしませんよ。……このやまには、おいしいたべものや、きれいなかわや、すみごごちのいいばしょがたくさんありますからね」
「そうだなー。このやまは、くらしやすいよなー。……それでー?」
「めのまえにそういうものがあるのに、それをおあずけされたら、しゃくにさわるでしょう?それに、あなただって、にげるきはないでしょう?」
「あたりまえだぞー!むこうから『ごはんさん』たちがやってくるのに、にげるわけがないぞー!」
自分達が窮地に立たされているというのに、その二匹のゆっくりは笑っていた。
……二匹にとって、こんな事は些細な事に過ぎないのだ。
一番大事な事は、邪魔をする者達を殺して、自分達の欲しいものを手に入れる。
……ただ、それだけの事なのだから。
「さぁ、いきなさい、よしか。せーがのだいいちのせんぞくよ。……そのくうふくを、おもうぞんぶんみたしなさい」
「おーっ!!」
よしかと呼ばれたゆっくりは、他の仲間達と共に威勢良く山のゆっくり達に突っ込んで行った。
自らをせーがと呼んだゆっくりは、その場に立ち止まった。
……今日もまた、せーがは誰かから何かを奪う。
……今日もまた、せーがの心は何一つ満たされない。
……今日も、明日も、明後日も、この命が続くまで、永遠に奪い続ける。
……他者を踏みにじり、己の欲望に従い、求め、欲しがり、手に入れる。
……ゆっくりとしての本質に、せーがは逆らわない。
……それが、ゆっくりとしての、自分自身のあるべき姿なのだから。
「さぁ……。きょうも、ぞんぶんにうばいつくしましょうか。……せーががゆっくりするために……」
……今日もまた、罪深く、欲深く、愚かで純粋な、せーがと言う名のけだものは、その悪意と欲望を心に秘めて静かに笑うのだった。
END
あとがき
どうも、知らない方は初めまして、知っている方はお久しぶりです。
ネタ切れに定評のあるぺけぽんです。
今回は何を書こうかなーと考えながら、自分の過去作品を見直している時に、「あ、せーがのその後でも書こう」と思い、書いたのでした。
……何でこう、ズルズルと長くなる上に、時間が掛かっちゃうんでしょうね、自分。
「ヒャア!せーがネタは古いぜ!」とか「ヒャッハァ!!続編なんざいらねぇんだよ!」と思っている方は、お許し下さい。
ご意見、ご感想、お待ちしております。
作者:ぺけぽん
最終更新:2022年07月31日 20:06