(スペア)
「ゆぎゃああああああああ!!!!」

「やべっ!やっちゃった。まいったなぁ・・・」

「い゛た゛い゛!!い゛た゛い゛よ゛お゛お゛お゛!!!」

「おかあさーん。おかあさーん。ちょっと来てー。」

「どうしたの?」

「ゆっくりを釘で引っ掻いて遊んでたら壊れちゃった。目が片方無くなっちゃったよ。」

「めがっ!めがああああ!!ああああああああああ!!!」

「こんな、どっかのグラサンした大佐みたいなゆっくりなんてやだよ。治して!」

「しょうがない子ねぇ。折角お父さんが買ってきてくれたんだからもっと大事にしなさい。」

「わかったよぅ。それで、治るの?」

「ちょっと待っててね。」

母親は『スペア用』と書かれた籠の前に行く。中には一匹のまりさ。
おととい家庭菜園に侵入し、ひとりで「むーしゃむーしゃ」とやっていたのを捕まえたものだ。
まりさは異様な姿をしていた。目は片方だけ。餡子は少なく、皮も半分剥がされていた。
皮が剥がされた部分は餡子が漏れぬようラップで包まれ、かろうじて生かされている。

「ごめんなさい。ごめんなさい。もうしません。ゆるしてください。ごめんなさい・・・」

母親はぶつぶつとうわ言を呟くまりさを抱えると、ナイフを取り出し眼を抉る。

「びゃあああああ!!めが!!めがみえない!!なにもみえないよおおおお!!!!!」

両目を失ったまりさは無視。取り出した眼を持ち子供の所へ。

「と゛う゛し゛て゛れ゛い゛む゛に゛こ゛ん゛な゛こ゛と゛す゛る゛の゛お゛お゛お゛!!!!」

泣き叫ぶれいむを尻目に、子供は猫を膝にのせ絵本を読んでいた。
母親はれいむの無くなった右目にまりさから取り出した眼をねじ込む。

「ひぎいいぃぃぃぃ!!!いだああああい!!いだあああいよおおおおお!!!!」

入り込んで来た異物を押し出そうとれいむの体はぶるぶる震える。
まりさの眼球がれいむの目の中でコロコロと転がるのを押さえながら、母親が呟く。

「やっぱりれいむにまりさの眼は合わないのかしら。拒絶反応がでてる。」

「治ったー?」

「まだ駄目ね。目玉が飛び出さない様にセロハンテープで固定しておいて。
 破れた皮は自分で治しなさい。やり方は教えたでしょ。まりさから皮を剥いで破れた所にテープで貼るのよ。
 冷蔵庫にオレンジジュースが入ってるから。それを飲ませれば早く治るわ。」

「はーい。」

「い゛た゛い゛よ゛お゛お゛!!!だれかこれとって゛え゛え゛え゛え゛!!!!!」

子供はれいむの泣き言を無視し、テキパキと工作を済ませる。
それを終えるとオレンジジュースを飲みながら、泣きわめくれいむの様子を眺め呟いた。

「次は何をして遊ぼうかなぁ。」


(ゆっくり合戦)
その年の人間の里の天候は異常だった。兆候は夏の頃からあった。
過去に例をみないほどの酷暑。その勢いは秋になっても衰えなかった。
晩秋になっても木々の葉は落ちず、やっと冬らしい気温になり、ゆっくり達が巣に籠ったのが今月の初め。
そしてもう二月になろうというのに未だ雪は降っていなかった。

里の広場には恨めしそうに空を眺め、ぐちぐちと文句を言う子供達が集まっていた。
遠くの山にはしっかりと雪が積もっている様なので来春の水不足の心配は無い。
大人達はやっかいな雪かきから解放され、むしろ喜んでいる様だ。
しかし子供達ににしてみればこれは大変な問題だった。

雪合戦ができない!!!

今日も雪は降りそうにない。ひょっとしてこのまま降らないんじゃないだろうか。
そんな事を話しているところへ悪ガキの一人がニコニコしながらやって来た。

「ねえ!みんな聞いてよ!いい事を思いついたんだ!」

「いい事?」

「そう!これで雪合戦ができるよ!」

子供らはその子の説明を聞くと、走って家にもどり手に手に籠を持って里のはずれに集まった。
皆が集まると彼らはゆっくりの巣がある近くの森に歩いて行く。越冬中のゆっくりを捕まえるため。
そして集めたゆっくりを雪玉の替わりにして雪合戦をしようというのだ。

森にやって来るとめいめいゆっくりの巣を探し始めた。
ゆっくり達も巣が見つからぬ様それなりに偽装してはいるのだが、次々と見つかってしまう。
ゆっくりは子供達の遊び道具。子供達はゆっくりについて何でも知っていた。

「おー、いたいた。しかしこんなんで隠れてるつもりなのかな。」

「ゆっくりしていってね!!!でもそとはさむいからはやくどあをしめてね。」

「へーこれってドアだったんだwまぁどうでもいいや。ゆっくりさせてやるからとっとと捕まってね。」

「ゆーーーーー!!!れいむのあかちゃんになにするの!!!はやくはなしてね!!!」

「ゆゆ!やめて!!ここからだして!!!」

「ゆ!まってて!いまたすけるよ!!こんなにんげんなんかすぐやっつkゆぐぇえええ!!!!」

「うっせーな。お前も籠に入るんだよ。一緒に連れて行ってやるんだから静かにしてろ!」

子供達は籠一杯にゆっくりを集めると広場に集まり準備を始めた。
親ゆっくりは底面に焼きを入れ、動けない様にしてから積み上げて陣地を造る。
赤ゆっくりは何箇所かに分けて置いておき雪玉の替わりにする。
中途半端な大きさのは串にさして焚火の周りに刺しておく。運動の後のおやつだ。

いよいよゆっくり合戦が始まった。広場には子供達の歓声とゆっくりの悲鳴が響き渡る。
ひゅーん、べちゃ。ひゅーん、べちゃ。ひゅーん、べちゃ。
次々と親ゆっくりの壁にぶつかり潰れていく赤ゆっくり達。

「ゆあああああ!!!れいむのあがち゛ゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

「やめて!!あかちゃんをなげnむぐっ!!!」

「あああああ!!!ありすが!ありすがまりさのあかちゃんをたべたあああああ!!!!」

「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!あ゛か゛ち゛ゃん゛!あ゛か゛ち゛ゃん゛か゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

陣地の後ろの方では給弾担当の子供達が赤ゆっくりを作っていた。

「ほら、こうやって振動させてからくっつけると交尾を始めるんだ。」

「へー。よく知ってるね。」

「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆゆ・・・・・・」

「いやだあああ!まりさはれいむとすっきりしたいのおお!!はなしてえええええ!!!!」

「や゛め゛て゛え゛え゛!!!これいじょうすっきりしたらしんじゃうよおおおお!!!!」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!す゛っき゛り゛ー!!!」

ゆっくり合戦は日が落ちるまで続いた。


(無限ループ)
れいむのつがいに待望のあかちゃんが産まれた。

「ゆっくちしていっちぇね!!!」

「「ゆっくりしていってね!!!」」

「やったねれいむ!ゆっくりらしいかわいいあかちゃんゆっくりだよ!」

「うん!ふたりでだいじにゆっくりそだてようね!!!」

その日二匹の間に産まれた五匹の赤ゆっくりは両親に守られゆっくりと育つ。
最初に産まれた赤れいむは好奇心旺盛で巣の外に出ようとしては母ゆっくりに怒られた。

「なんでそとにでちゃいけないの!れいむもおそとであそびたいよ!!!」

「だめだよ!おそとにはこわいにんげんがいるんだよ!」

「えさはおかあさんたちがとってくるよ!あかちゃんたちはいえでゆっくりまっててね!」

「ぷーーーーーー!!!」

そんなある日、ゆっくりの両親は巣の入口を閉めるのを忘れて外に出てしまった。

「ゆ!おそとにでられるよ!」

「だめだよ!おかあさんがそとにでちゃいけないっていってたよ!」

「だいじょうぶだよ!とおくまでいかないから!すぐにもどってくるよ!!!」

とうとう一匹だけで巣の外に出てしまった赤れいむ。
外の世界は初めて見る珍しいものばかり。
ひらひらと飛ぶ蝶を追いかけ、とうとう人里近くまで来てしまった。

「なんだこいつ。赤ゆっくりが一匹で外に出てるなんてめずらしいな。」

「今日はこいつで遊ぼうか。」

「ゆーーーー!!!なにするの!!!はなじでえええ!!!」

暇を持て余していた子供達に捕まってしまった赤れいむ。
数十分後そこには瀕死でプルプルと震える赤れいむがいた。

そこへ偶然神様が通りかかる。
目は潰され、皮は焼かれ、身は削がれ、「ゆぅぅ、ゆぅぅ」と力なく鳴く赤れいむ。
それを不憫に思った神様が赤ゆっくりに話しかける。

「かわいそうに。今痛みをとってあげますからね。」

「ありがとう・・・」

「でもこれは痛みを取り除いただけです。傷が深すぎてもう手の施しようがありません。
 あなたは間もなく死ぬでしょう。ここで会ったのも何かの縁。言い残す事はありませんか?」

「ゆっくりしたかった・・・れいむはもっとゆっくりらしくゆっくりしたかったよ・・・」

「そうですか。せめてあなたの来世が幸せでゆっくりなものになりますように・・・」

神様は生まれてすぐに死んでしまった哀れなゆっくりの願いをかなえてやる事にした。


れいむのつがいに待望のあかちゃんが産まれた。

以下ループ・・・

end




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最終更新:2022年05月03日 10:01