※これはfuku2359.txtの後編です


このキワモノ少女の活躍で優位に立てた様だが、相も変わらず地獄絵図のままだ。
寝返り者達は全員戦意喪失、ドゲス達は青筋を浮かべながらも、手が出ないといった様子だ。
カチリカチリと刃を鳴らす怪ぱちゅりーが不気味さを引き立てていた。
ここに来て先程からの疑問をぶつけてみることにした。

「ねぇ、あのぱちゅりーも奇形なの?」
「あんな出来そこないと一緒にしないで頂戴!!」
「そもそも、このバヂュダは―――(略)なのよ!」

長々と説教じみた説明を聞かされた。
年長者としての自尊心がちょっぴり痛んだ。
掻い摘むとこういうことだ。


ゆっくりに機械を組み込んだ、ゆっくりを超えるゆっくりである。
この子の祖父が古代ゆっくり文明の遺跡を暴いて、手に入れた技術である。
素材となるゆっくりは死んで間もない物である。
生前に、強い怨恨を持っているほど強い物となる。
生前の記憶は残るが、理性は皆無、きけーねの怪光線で操り人形と化する。
便宜上、この戦闘に特化させた改造ゆっくりを、「戦饅獣」と呼ぶことにした。

以上。
所々おかしくないか?
と聞いてみても、「無理が通れば道理が引っ込む」式に信じるしかないと返された。
饅頭が生きている時点で、道理もへったくれもないとのことだ。


『ゆへへへ!いまのうちなんだぜ!!』
『ないてくやしがればいいんだぜ!!』
『ゆっくりしないでしねばいいんだぜ!!』

そうこうしてる間に、餡子脳が落ち着いたのか、ドゲス達が動き始めていた。
ドゲス達は全部で十匹いたが、その半数が攻勢に出ていた。
私達が気づいた時には、もう攻撃に入るところであった。
攻撃対象はバヂュダだ。
囲んだ後、全方向からげすぱーくを放った。
直後、小規模の爆発が起こり、爆心地に近かった私とゲラ子は吹き飛ばされてしまった。

『ゆっへっへっへ!これであとかたもなくなったんだぜ!!』
『ざまぁないんだぜ!』


土煙が収まってきたころ、中心には真っ黒焦げの塊が残っていた。
ヒュウと風が吹くと、その焦げが剥がれて……人の頭蓋をかたどった様な不気味な物体が残った。
その形状から、バヂュダのなれの果てだと分かった。
塗装が剥がれただけで、所々に擦り傷がついた程度のダメージだった。

『ムギュ!マリサハヨクモワタシノゴホンヲヤブイタネ!!』
『ぞんだのじらだいよぉぉぉ!!』
『だんだのごいづ!?』
『ゆっぐじでぎなびぃぃ!!』

先程までの余裕も吹き飛び、再びうろたえ始めた。
彼女はその様子を見て、髑髏の杖で肩を叩きながら悦に浸っていた。
このバヂュダとやらは、生前にまりさ種に痛い目にあったらしく、その怨恨を引き継いだらしい。

「もういいわ!バヂュダ!!止めを刺しておやり!!!」
『ム゛ギュ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ゥ゛ン゛!!』
『こ、こっちにこないでね!』
『まりざはわるぐだいんだぜ!!』
『おじょうざん!ぼうじまぜんがらゆるじぜぐだざいぃぃぃ!!』

迫りくる脅威に、要求、開き直り、愛玩……ってさっきとほとんど一緒じゃない。
直接的に危険の及ばない、後ろのドゲス達さえも懇願していた。
そんなドゲス達を見て何を思ったのか、彼女は満面の笑みを浮かべた。
ドゲス達も釣られて引きつりながらも笑みを浮かべる。

「命令は変更よ!バヂュダ!殺さぬように攻撃なさい!!」
「目よ!鼻よ!耳よ!アハハハハハハ!!」

刺し、潰し、削ぐ。
見てくれに反する事無く、機械的に各臓器を破壊していった。

「ほらほら、命乞いはもうお終い?」
『ゆがぁぁぁ!ごろじでやる!え゛いえ゛んに゛ゆっぐびでぎなぐじてやる!!』
『ゆっぎりじだいでざっざどじねぇぇぇ!!』
「アハハ!もっと私を憎みなさいな、いい素材になるわぁ」
『『『『『ゆぎぃぃいぃぃいいぃいぃ!!』』』』』

ちょうど、囲んでいたドゲスを処理し終わった時、バヂュダから白煙が出てきた。
口から大きく煙を吐き出すと、動かなくなってしまった。
げすぱーくを受けた際に、機械部がオーバーヒートしてしまった様だ。

『ゆ゛ゆ゛!?うごかなぐなっだんだぜ?』
『しょせんびょーじゃくなぱちゅりーじゃあいてになんないんだぜ!!』
『おろかでぐずなぱちゅりーはまりさたちにひざまづいてればいいんだぜ!!』


身の危険が無くなれば、すぐこれだ。
奥でガタガタ震えていただけのドゲス達が調子を戻した。
喉元を過ぎれば何とやら……未だに半数のドゲス達の呻き声が聞こえるというのに高慢になる。
そして、自らの功績だと言わんばかりに踏ん反り返り、威張りだした。
これが気に入らない。


仲間たちが五匹分の命を懸けての成果だろう?
死にこそしていないが、その犠牲を悼む気持ちはないのか?
人間の醜い部分の縮図を突き付けられた気分だ。
スパークのためのキノコも尽きた今、もう容赦することもなかろう。

「ほらゲラ子!杵もって、あんころモチにしてちょうだい」
『ゲラゲラゲラゲラ!』

ようやく落ち着いたゲラ子に杵を持たせ、戦闘準備を取らせた。
私も鞭に手を伸ばし、いざ飛びかからんとしたところで、何かにつまづいてこけてしまった。

「お姉さん、おいしいトコ取りは許しませんわ!!」

例の少女が覗き込むようにして言った。
彼女の杖で転ばされたらしい。
ゲラ子はモタモタと足音を立てながら、何拍子も遅れてからこけた。

『じゃりんこ!まりさたちがかったんだからもうここはまりさたちのもんなんだぜ!!』
『やくそくしたのはおまえなんだぜ!?ここはいったんにげてでなおすがいいぜ!』
『やっぱりにんげんはばかなんだぜ!!』
『がきははやくおうちにかえってままのおっぱいでもすってればいいんだぜ!!』

何だか同じことの繰り返しを見せられているようだ。
興が覚めたとでも言うのか、急にやる気がなくなった。
逆に彼女は、しつこく子ども扱いされたことに腹を立てたのか、青筋を立てている。
笑顔を絶やさない分、その表情はなおさら恐ろしい。
一種の見せものだと思って、おとなしく見ていよう……

「何を寝ぼけたことを言ってるのかしら!?まだもう一体残ってましてよ?」
『ひきょうなんだぜ!まりさたちのかちなんだぜ!!』
『なにいってんの?ばかなの?しぬの?』
『うそをつくじゃりはゆっくりしね!』

最初に“この子ら”って言ったから、嘘ではないのだが、もう覚えていない様だ。
その肝心なもう一体というのが、見てくれがまりさ種で、脚部に四輪が付いている。
先程のと比べて、原型に近いためか、ドゲス達の反応も―――

『まりさたちにひとりでかてるとおもってるの!?ばかなの?』
『ゆっへっへっへ!おなじしゅとしてはずかしいんだぜ!!』
『おろかなじゃりにしたがったことをあのよでゆっくりこうかいすればいいんだぜ!!』

―――あまり驚異と感じていないようだ。
むしろ、先程の怪物ゆっくりを倒した(つもりでいる)ことが、自信となっていた。

「きけーね!目にものを見せてあげなさい!!」
『わがぶんめいのちからのまえにひれふすがいい!』

再びきけーねの角から怪光線が飛び出し、改造まりさに当てる。
メカまりさの瞳に光が灯ると、カラカラとドゲスの方へ進んでゆく。

『ゆへへへ!こんなきもちのわるいうごきをするまりさなんかにまけるわけがないんだぜ!!』

ドゲスの中の一匹が、このメカに体当たりをする。
その衝撃を受け、メカまりさは行進を止めた。

『みるんだぜ!やっぱりにせものはほんものにはかなわないんだぜ!!』
『『『『ゲラゲラゲラゲラ!』』』』

勝利を確信したのか、ドゲス達は大声で笑い出した。
普段から私の側で聞く笑い声とは、比べ物にならないほど下卑た笑いだ。
そんなことを考えていると、メカまりさの顔が観音開きの様に開き始めた。

シルシルと二つ、触手の様な物が出てくる。
その先端に、丸い物が付いている。
一回りサイズの小さい、まりさ種とありす種の頭部だ。
もちろんそれぞれ改造されている。

『なにこいつ!?ぎもぢわるいよ!!』
『ごいづもさっぎのぱちゅりーとおなじなのぉぉ!?』
「アリサリスM2!そいつらを叩き潰しておやり!!』
『チョイワルナマリサモカワイイワァァァ!』
『マリサヲバカニスルマリサハユックリシネ!!』
『『『『『ごっじにぐるだぁぁぁぁぁ!!』』』』』

簡単に得た自信が崩れるのは、同様に絶望と後悔に塗り替えられた。
双頭のメカゆっくりはドゲス達に思い思いの言葉と攻撃を加えていった。
ありす部は主に噛み付き、体当たり。
まりさ部は、口内から拳状の物体を飛ばし、目からは怪光線を放った。
捕食種も真っ青な戦いっぷりで、残りのドゲス達を殲滅した。

『ヤッパリマリササマハサイキョーナンダゼ!!』
『ワタシヲスッキリサセラレナイナンテ、トンダイナカモノダッタワ!!』
「アハハハハ!すばらしい、データ以上の成果よ!!」


ちょうど戦闘が終わった頃、寝返ったコマンドゆっくり達の生き残りがこちらに媚びてきた。
人間に反旗を翻した者は、即死刑ものだったが、鞭打ち三十回で勘弁してやった。

『どぼじでごんだごどじゅるどぉぉぉ!?』
『ゆびゅっゆびゃっびゅっびゅ』
『びゃるいどばどげずだどにぃぃぃ!』

この鞭は当初の殺さずに躾ける意味合いよりも、生き地獄を味わわせる物となった。
ゆっくりの代謝を高める薬品を仕込んだこの鞭は、叩くたびに傷ができ、治りを繰り返した。
叩き終わる頃には、様々に歪んだゆっくりになった。
それらをゆっくり舎の中にぶち込み、仕置きを終了とした。

「お姉さんって変わった物をもっているんですね~」
「あんたにゃ負けるわ」

畑には、もはや侵略者の姿は無く、ただ処理に困る様な餡子と残骸のみが残った。
あっけなく終わってしまったが、通常のゆっくりーだー五人分の仕事をこなしたのだ。
凄腕の部類に入るのだろうが……資源の確保というゆっくりーだーの務めも果たしているとは思えない。
そんな点では私と同じなのだろうか?
手短に私の主張を話し、意見を求めた。

「ふん、興味ありませんわ!この職も、世界征服を果たすための踏み台にすぎませんわ!!」
『わがきもーねぶんめいのさいけんも、もはやじかんのもんだいである!!』
「あぁ……そう頑張ってね」
『ゲラゲラゲラゲラ!』

交友の品として、例の鞭に使用している薬品を一瓶渡した。
効くかどうかは怪しかったが、バヂュダに投与したところ、生体部分が復活し、再起動したのを見て効力を認めた。
あちらから、代わりと言ってはなんだがと古びた新聞を見せてくれた。
内容は、ならず者と同じ様に賞金首となっていた少女の写真が写っていた。
どうやら、言葉だけではなく、実際に世間を騒がせていたらしい。


「すごいですね、この薬!一緒に世界征服してみません!?」
「いやぁ……遠慮しとくわ」

気が変わったらいつでも呼んでくれと、半ば強引に巨大うーぱっくを呼ぶ笛を渡された。
別れ際に、私以外の機械ゆっくりを見つけても呼んで欲しいと言付かった。
何でも、ゆっくり搭乗型のメカを持っている宿敵なんだそうだ。
日も暮れたころ、ようやく当初の予定地である海へ向けて出発した。



その後、全身を特殊新素材“超合皮Z”で固めたメカ『フランガーZ』と出会い、笛を吹くことになるが、それはまた別のお話。









~ゆっくりデータファイル~

No.5きけーね(ゆっくりけーね種の混種)
能力:もともと知能の高いけーね種だが、その中でも過去に遺跡を築いたほどの文明を誇っていた個体の末裔。
いやにプライドが高い。

特殊:『戦饅獣を操る程度の能力』
左半身の角から出す怪光線で、戦饅獣を操作する。

備考:体の左半身がきもーね、右半身がけーねと奇形を思わせる風体だが、それぞれ別の個体を繋ぎ合わせた物である。
遺跡の墓を暴いて、出てきた死体で作ったらしい。
どちら側の意識が残っているのかは不明。











後書き

ようやく、後半が書き終わりました。
今回の反省点は、思い付きだけで話を書かないってことです。
組み立てをせずに書いてしまって、そうとうキツかったです。
作中で出した元ネタは言わずもがな、往年のロボットマンガです。
最近はあそこまですっきりシンプルな作品が少ない気がします。

今まで書いた作品


ゆっくりいじめ系509 紅い弾丸
ゆっくりいじめ系601・647 ある新人ゆっくりーだーの話(前・後)
ゆっくりいじめ系711 ある植物型奇形妊娠の話
ゆっくりいじめ系748 ある動物型奇形妊娠の話

byケラ子


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最終更新:2022年05月03日 15:51