※ほとんどゆっくりを虐待していません、ご注意ください
「やられた……」
帰ってきて、荒らされた部屋を見てそう呟いた。
幸いあまり物が多い部屋ではなかったので物的な被害は少なかったが、これでは掃除が大変そうだ。
俺はもともと戸締りはしっかりするほうだ。
そのため、これまでゆっくりや泥棒の被害にあったことは無かったのだが、どうも今日はうっかり窓のカギをかけ忘れたらしい。
「まさかカギをかけ忘れたその日にゆっくりが来るなんて…」
バァーーン!
「「「まさかのときのゆっくりしていってね!」」」「だぜ!」「むきゅ!」
そう呟いた瞬間、ふざけたことを言いながらドアを開けて三匹のゆっくりが飛び込んできた。
突然の侵入者に驚きながらも、とりあえずは聞いてみることにする。
「お、お前たちが俺の家を荒らしたのか?」
だが、そのゆっくりどもは俺の言葉を完全に無視して言葉を続けた。
「れいむたちのもくてきはひとつ!」「ゆっくり!」「ごはん!」「むきゅ!」
「いや、二つじゃねぇか!」
思わず突っ込んでしまった……すぐに潰すのが一番いいのだろうが、少し興味がわいてきたので観察してみることにする。
「ゆ?」「ゆ?」「きゅ?」
見れば三匹は、体を斜めにしてよく分からないと言った表情をしている。
「いや、お前たち目的は一つって言ったろ?でも、ゆっくりとご飯だったら二つじゃないか」
俺の言葉を聞いて、比較的頭のいいぱちゅりーは合点がいったようだ。
「むきゅ!わかったわ!さっきれいむは『もくてきはひとつ!』っていったのにうっかりふたついっちゃったのね!」
「ゆ?どういういみ?」「よくわかんないんだぜ!」「だから……」
三匹は顔をつき合わせてごにょごにょ話をしている。テンポ悪いなぁこいつら……
たっぷり二分はかかって、ようやく残りの二匹も理解したようだ。
「ゆ!ゆっくりりかいしたよ!」「でもそんなことにきづくなんて、やっぱりぱちゅりーはすごいぜ!」「むきゅ!とうぜんよ!」
教えたのは俺だろうが……何自慢げな顔してやがる。
というかこいつら俺がいることを忘れてるんじゃなかろうか。
「おーい、そろそろいいか~?」
「ゆ!そういえばおじさんがいたんだったぜ!」「え~っとなんていうんだっけ?」「『れいむたちのもくてきはふたつ!』よ!」
またひそひそ話をしている。ちゃんと段取りは決めておけよ……
「れいむたちのもくてきはふたつ!」「ゆっくり!」「ごはん!」「すっきり!」「むきゅ!」
「三つだーーー!!」
そして、さっきとほぼ同じやり取りが繰り返される。
約五分の間、俺はゆっくりのツッコミ無しのボケ倒す会話に付き合う羽目になった。
バカな子ほどかわいいとは言うが、さすがに限度があるだろ……
部外者のロビンがマリポーサ倒しちゃって良かったんだろうかなどと考えていると、やっとゆっくりたちの話も終わったようだ。
「れいむたちのもくてきはみっつ!」「ゆっくり!」「ごはん!」「すっきり!」「ぐっすり!」
「だから四つだーー!!」
~ 中略 ~
ザ・ニンジャって三戦三敗三死亡なのにカッコいいよなぁ……おっと、終わったか?
「えっと…れいむたちのもくてきはみ…よ、よっつ!あれ?みっつだっけ?」「よっつでいいのよ!れいむ!」「まりさはいっかいやりなおしたほうがいいとおもうんだぜ!」
どうやらゆっくりれいむは相当混乱しているようだ。確かに一度仕切りなおしたほうがいいかもしれない。
だが、それにつき合わされるこっちの身にもなって欲しいものだが……
「そうだね!ゆっくりやりなおすよ!」「ぜ!」「きゅ!」
ゆっくり会議により一時撤退が決定されたらしい。ゆっくりにしては素早い動きでさっきのドアから出て行った。
俺もなんか疲れたし、このまま帰るんだったら見逃してやってもいい気もしてきた。
ある意味楽しめたと言えば楽しめたのかもしれないし。
そんなことを考えながらゆっくり達の出て行ったドアを見る……まだいる……
いや、もしかしたら隠れてこちらの様子を窺ってるつもりなのか?あいつらの体の構造上、覗き見ようと思ったら半分近く扉から出ているのだが。
それどころか、ぱちゅりーのやつはこちらに目配せの様なことまでしている。
もうここまで来たら最後まで付き合ってやるか……俺は空気が読めるんだ。
「あー、エヘン。……まさかこんな時に部屋を荒らされるなんて!」
バァーーン!
「「「まさかのときのゆっくりしていってね!」」」「だぜ!」「むきゅ!」
お前らは元気だなぁ、こっちは大分疲れたよ。
「れいむたちの……たくさんのもくてき!」「そうだぜ!それでいいぜ!」「さすがよれいむ!」
「ゆっくり!」「ごはん!」「すっきり!」「ぐっすり!」「そのほかのために!」
「おじさんには、ゆっくりプレイスについてゆっくりはくじょうしてもらうよ!」「ぜっぜっぜ!」「むっきゅっきゅ!」
一応凄みを利かせてるつもりであろうれいむに、悪魔的に笑うまりさとぱちゅりー。
しかし大分時間がかかったなぁ、最初にスッと行けば20分は短縮できたんじゃないか?
「………………言っている事がわからない……イカレているのか?………この状況で」
真面目に対応するのも面倒だ、適当なことを答える。
「ゆ!とぼけるつもりだね!」「おお、ごうじょうごうじょう」「それならこっちにもかんがえがあるわ!」
「まりさ!たいあたりのけいだ!」「ゆっへっへ!おそれおののくがいいぜ!」
体当たりって、まぁ体当たりだよなぁ。
こいつらにできる攻撃なんてそれくらいしかないし。
やたら自信満々だが、利くと思ってるんだろうか。
「おじさん!さいごのちゃんすだよ!ゆっくりはくじょうしてね!」
そんなことを言いながら俺の脚に体当たりを行うまりさ
「「こんふぇす!こんふぇす!」」
囃し立てるれいむとぱちゅりー、多分意味は分かってないだろう。
まりさもにやにや笑いながら体当たりを続けていたが、俺が何も反応しないので不安になってきたようだ。
「ぱ、ぱちゅりー!あんまりきいてないみたいだぜ!?」「むきゅ!ぼうしのかどをつかうのよ!」
「ゆ!わかったぜ!」
俺のほうを向き直り、頭突きの様にして帽子の角をぶつけてくる。
確かに帽子なら多少は硬いだろうから、少しは効果的かもしれん。
だが所詮ゆっくりはゆっくり、帽子だってそう硬いものでもないしな。
悪魔将軍って将軍なのに魔界の王子より偉いのはどういうわけなんだろうか……。
またもや関係の無いことを考えていると、まりさもだんだんと疲れてきた様子だった。
やがてまりさは罰の悪そうな顔をして二匹のところへ戻っていった。
「ほんとにごうじょうなおじさんね!」「なかなかやるね!」
ぼーっと突っ立ってだだけなんだがな。
「こうなったらさいごのしゅだん!すっきりのけいよ!」「「す、すっきりのけい!!?」」
見事にハモった。かなり驚いた顔をしているが、そんなに過酷な刑なんだろうか。
「そのすっきりの刑ってのはどんなのなんだ?」
とりあえず聞いてみる。
「むきゅ!いいわよ!とくべつにおしえてあげる!」
曰く、以前他のゆっくりが人間にされていたものだという。
手で振動を与え、すっきりする直前で止める。
少し時間が経って収まったらまた繰り返す。
そしてすっきりできそうでできない状況で苦しむ、と言うものらしい。
なるほど確かに実際にやられたら苦しいだろう。
実際にやられたら、な。
「さあれいむ!いくのよ!」「ゆっゆっゆ!」
再び悪魔的に笑いながら俺に近づくれいむ。
そして俺の足元に来ると、足にすりより始めた。
傍から見れば甘えているように見えるだろう。
「ゆっふっふ!さあどうだ!」
やっぱりな……
所詮ゆっくりの脳で人間がどうすれば発情するかなんて分かるわけも無い。
となれば、同じように振動を与えれば興h「「こんふぇす!こんふぇす!」」うるせぇ!!
もう真面目に考えるのも馬鹿らしい、とにかくれいむは俺の脚にすりよっている。
「ゆっふ……ぅん、ど、どう!?ゅ、ゆっくりはくじょうするきにっなった!?」
やっぱりこっちのほうが発情してやがる……
ゆっくりが他のものに振動を与えようと思えば、それに擦り寄って自分を振動させるしかない。
それはつまりゆっくりの交尾と同じ行動なわ「「こんふぇす!こんふぇす!」」だからうるせぇ!!
「ゆっ!ゆっふ!ゆっゆっゆ!!」
もはや刑とかは忘れたらしいれいむは、俺の脚にすりより続ける。
なんか粘液みたいなのも出てるし……ズボンについちまったよ。
このまますっきりさせるのも癪だし、ひょいと持ち上げる。
「ゆ!?なにするのおじさん!いますっきりするとこだったのに!!」
俺にやろうとしてたことを、自分で自分にしてやがる。
なんなの?バカなの?
「れいむ!しっかりしなさい!しぶんがすっきりしてどうするの!」「そうだぜれいむ!きをしっかりもつんだぜ!」
残りの二匹の叱咤激励。
「ゆ!ご、ごめんね!ゆっくりおちつくよ!」
れいむも多少自分を取り戻したようだ。
俺はれいむを持ったまま、ぱちゅりーに聞いてみた。
「んで、そろそろ終わりか?」
「むきゅ!?きゅ!きゅ~~~……」
困ったような顔をすると、隣のまりさとひそひそ相談を始めた。
「むきゅ、まりさ!なにかいいかんがえはない?」
「え!?ま、まりさにはむりだぜ!かんがえるのはぱちゅりーのしごとだぜ!」
「にんげんがここまでごうじょうだなんておもわなかったのよ!」
しかしこいつら声でけぇな、とにかくもう万策尽きたらしい。
腕の中のれいむも困った顔をしている。
そろそろ終わりにするか。俺は三匹に告げた。
「お前たちが取れる選択は一つだけ、加工所に連れて行かれるか、ここで俺に殺されるかだ!……あ、いや二つ!
お前たちに残された選択肢は二つ、加工所行きか、俺に殺されるか、稗田家に放り込まれるか……つまり三つ!
この三つから好きなものを選ぶがいい!加工所行き、俺に殺される、稗田家、友人のお兄さんにプレゼント……あー、畜生が!」
ボケ倒すゆっくりどもに付き合っていたせいで俺にも何か感染してしまったらしい。
軽く混乱する俺と、さらに混乱するゆっくり。
「ど、どうするんだぜぱちゅりー!?」
「きゅ!?もうこうなったらほうほうはひとつしかないわ!なんとかしておじさんをたおすか、ここからにげだすかよ!」
もう突っ込まんぞ。
そのまま、会議に夢中で逃げることも忘れた二匹とれいむをダンボールに放り込み、加工所へ持っていった。
何でも買い取り強化キャンペーン中とのことで、多少多めのお金をもらうことができた。
殺ゆっくりジョークの研究のために、多くのゆっくりが必要なんだそうだ。
「またお願いしますね!」という加工所職員の声を聞きながら、家の掃除のことを思い出して多少憂鬱になって帰路についた。
~Fin~
まずは、こんな駄文を読んでいただきありがとうございます。
SSどころかまともに文章を書くのも久しぶりな状況で、自分の文章のひどさに死にそうになりながらも何とか仕上げました。
元はゆンティ・パイソンの空飛ぶサーカス!としていくつかの小ネタで書くつもりだったんですが、
まさかの時のゆっくり宗教裁判が予想外に長くなってしまったので、とりあえず一つにして仕上げました。
いずれ、機会がありましたら他のゆンティ・パイソンのネタを書いてまとめたいと思います。
最終更新:2022年05月03日 18:37