-プロローグ-

「咲夜、どこにいるの?」
 紅魔館の主レミリア・スカーレットはお付のメイドを呼びつける。
「いかがなさいました?」
 一瞬でレミリアの前にメイドが現れた。メイドの名前は十六夜咲夜、紅魔館のメイド長である。
 彼女は時間を操る程度の能力を持っているため、主に呼ばれた時はその能力を使いすぐに駆けつける。
「今夜はなにか変わったものが食べたいわ。もちろん味も最高のものをね。」
「変わったもの・・・ですか?」
「そうよ、どのような物かはあなたに任せるわ。期待してるわよ。」
「・・・かしこまりました。」
 そう言い残してメイドは消えた。
「フフフフフ、楽しみだわ。」
 レミリアは優雅にお茶を楽しんでいる。


 -幻想郷市場-

「ふぅ、どうしようかしら。」
 幻想郷の市場を歩いている咲夜は悩んでいた。
「引き受けたもののお嬢様がお気に召すような物がなかなか見つからないわ。」
 当てもなく市場をさまよっていると活気のある声が聞こえてきた。
「5万!」
「ぬぅ、5万5千!」
「なんの7万!」
 どうやら何かの競(せ)りをしているようだ。
「あの、これはいったい何の競りなのでしょうか?」
 競りには参加していない見物人に聞いた。
「なんでもある高級食材が競りにかけられているらしいよ。」
 そう聞くと咲夜はすぐに高級食材が何なのかを確かめようと見物人を掻き分けて前へ進んでいった。
 どうやら机の上に置かれている箱の中に商品が入っているらしい。
 ひょっとしたらお嬢様がお気に召す物かもしれない。そう思い受付へ急いだ。
「おや?そのメイド服、紅魔館の方ですか?」
「はい、競りにかけられている物が高級食材だと聞きました。出品物は何なのですか?」
「あぁそれはね・・・」
「えっ・・・食材ですよね?」
 驚いているメイドの後ろからはなにやら、
「うーうー」
 と悲しげな泣き声が聞こえてくる。


 -紅魔館-

 ここは紅魔館の裏の森。2匹の翼の生えたゆっくりが飛び回っていた。
「うー♪うー♪」
 幻想郷のあちこちで見かけるゆっくり霊夢や魔理沙とは違い、なかなかお目にかかれないゆっくりれみりゃだ。
 2匹は小さい頃から紅魔館の妖精メイドにご飯やお菓子などをもらい、ゆっくりとすごしていた。
「う?」
 一匹のゆっくりれみりゃが遠くから近づいてくるメイドに気がついた。
「ぎゃおー♪」
「うーうー♪」
 ご機嫌な様子でメイドに近づいていくゆっくり達、だが次の瞬間、目の前からメイドが消えた。
「うー?」
 何が起こったかわからないゆっくりれみりゃ。
「うっうー」
 もう一匹のゆっくりれみりゃへ話しかけようとしたが姿はなかった。
「うっうっ、うぅぅぅぅぅ」
 泣きながらもう一匹を探して飛び回る。しかし二度と会うことはないのであった。

 もう一匹のゆっくりれみりゃは見知らぬ場所に移動していた。そして目の前には銀髪のメイドが立っていた。
「がおー、たべちゃうぞー。」
 いつもメイドにお菓子をもらっているのでまったく警戒せずに無邪気に振舞うゆっくりれみりゃ。
 今自分が置かれている白い板が何かとも知らずに・・・。
「さてと、始めましょうか。」
「うー♪うー♪」
 ゆっくりれみりゃが楽しそうにしゃべった直後にそれは起こった。
「う゛っ!う゛ーーーーーっ!!
 悲鳴を上げるゆっくりれみりゃ。体に激痛が走った。そして急いで飛んでその場から逃げようとした。
 しかし体は白い板の上から動かなかった。そしてゆっくりれみりゃは見た。
 自分の翼が無残に切り落とされているのを。
「う゛ぅぅぅぅぅ。」
 目に涙を浮かべながら転がって逃げようとする。
「に・が・さ・な・い・わ・よ。」
 メイドがそうしゃべった直後、またしてもゆっくりれみりゃの視界が瞬時に変わった。
 帽子はなくなり、体がちょうど入るくらいの入れ物に入れられ、蓋がされていた。
 もう、ゆっくりれみりゃには何がなんだかわからない。ただひたすら、泣き声を上げることしかできなかった。
「さぁ仕上げよ。」
 メイドの声が聞こえた直後、なにやらカチっと音がした。
 メイドの声に反応し一瞬泣き止んだゆっくりれみりゃだったが、その後何の変化もなかったため再び泣き出した。
 しばらくすると周りが白い煙で覆われてきた、体を動かして脱出しようとするが固定されているのか動けない。
 そしてゆっくりれみりゃの閉じ込められている入れ物は高温の煙でつつまれ、どんどんと温度を上げていく。
「う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」
 ゆっくりれみりゃは苦痛に満ちた悲鳴を上げた。
 しかし無情にもどんどんと温度は上がっていく。
 悲鳴を上げてもどうにもならない、脱出しようとしても体が動かない。
 知能の低いゆっくりでも理解する。自分はもう助からないと。いままで感じたことがないほどの恐怖が体中を駆
 け巡る。そして次の瞬間。
「う゛!うぅぅぅぅぅ!う゛ぅぅぅぅぅ!う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」
 今まで上げたことがない苦痛に満ちた悲鳴を上げ、ゆっくりれみりゃの入った入れ物は静かになった。

「ふぅ、やっと静かになったわ。」
 咲夜はそうつぶやくと、ゆっくりれみりゃの入った蒸篭(せいろ)をあけた。
「・・・ひどい顔。」
 ほかほかのゆっくりりみりゃは言い表すことができないほどひどい顔をしていた。
「さすがにこのままお嬢様に出すのはまずいわね。」
 咲夜は手馴れた手つきでゆっくりれみりゃを真っ二つにし、中のお肉をお嬢様の食べやすい一口サイズに切り刻む。
 そしてゆっくりれみりゃの皮を切り取り、一口サイズに切った肉を包み込む。
 時間を止めて作業をしているため冷めることなく作業をすることができた。
「こんなものかしら。」
 皿の上には少々形は違うが一口サイズの肉まんがきれいに盛り付けられていた。

「お嬢様、夕食の準備が整いました。」
 一瞬にしてテーブルの上に料理が並べられた。
「フフフ、どんなものを用意したのかしら。見たところただの肉まんの様だけど。」
「お食べになってください。そうすればわかると思います。」
 無言で口に運ぶレミリア。
「・・・・・・」
「さすがね、咲夜。見た目はただの肉まんだけど、肉も皮も今まで食べたことがないすばらしい味よ。」
「ありがとうございますお嬢様。」
 お嬢様は満足そうに料理を食べ終えた。
「咲夜、また今度この料理作ってくれるかしら?」
「かしこまりました。下準備に手間のかかる料理なのでお召し上がりになりたい時は今日のように早めにおっしゃって
ください。」
 食後の紅茶の準備をし、メイドは仕事に戻った。
「そういえば、あの夕食の材料は何だったのかしら」
 紅茶を飲みながら月を眺めレミリアはつぶやいた。


 -再び幻想郷市場-

「あぁそれはね、ゆっくりれみりゃだよ。」
「えっゆっくりれみりゃ?食材ですよね?」
「おや?ゆっくりれみりゃが食べられることを知らないのかい?」
「え、えぇ今初めて知りました。」
 受付の人は説明してくれた、ゆっくりれみりゃの顔は肉まんで中の肉、周りの皮とも絶品であること。
 また、ゆっくり霊夢や魔理沙と違い、なかなか見つからない上に捕獲も難しいため美食家の間で高額で取引されてい
 ると。
「メイドさんも競りに参加するかい?」
「あ、いえ。今回は遠慮させていただきます。」
「そうかい、残念だな。」
「それとは別のことなのですが、ゆっくりれみりゃの調理方法を教えていただきたいのですが、どなたかご存知の方を
紹介していただけないでしょうか?」
「調理方法なら私が教えてあげるよ。だけど、調理対象がないけどいいのかい?」
「えぇ、そこはなんとかします。」

 咲夜は紅魔館へ戻る道を歩いていた。
「とてもいいことを聞くことができたわ。」
 調理方法は至って簡単だった。

 1.逃げられないように翼を切り落とす。
 2.帽子を取り、きれいに洗い汚れを取る。
 3.転がって逃げようとするため気をつけながら蒸篭で蒸しあげる。(暴れるので注意)
 注意することは鮮度が落ちないように出来るだけ早く調理することであった。時をとめる事ができる自分にとって簡
 単なことだった。

 ゆっくりれみりゃは確かに捕獲することが難しいし、幻想郷でもなかなか見かけない。
 しかし紅魔館周辺にはゆっくりれみりゃは複数生息している。あまり紅魔館周辺には人間が足を踏み入れないため知
 られていないようだ。また、捕獲など時を止めてしまえば簡単なことであった。
「前々からうっとおしかったのよね、あの丸顔。私の大切なお嬢様に似ても似つかないのにれみりゃと名乗るなんて!」
 今宵、一匹のゆっくりれみりゃの生涯が終わりを告げようとしていた。

 End
                                                作成者:ロウ 



 後書き

 最後まで読んでいただきありがとうございます。過去に書いた2作はともに加工場を舞台にしたものでしたが、今作は
 前作の後書きに書いたように紅魔館を舞台にしたSSを書かせていただきました。
 今回のSS作成で一番難しかったのはゆっくりれみりゃのセリフですね。ゆっくり霊夢や魔理沙と違い、人の言葉を満
 足に話すことができず非常に困りました。あと、SS中の白い板はまな板ですので。
 ちょっと咲夜さんが黒すぎたかな?PAD長ファンの方申し訳ありません。あと、SS中の白い板はまな板ですので。

 現在頭の中にはゆっくりパチュリーいぢめのSSがある程度浮かんでいます。あまり文章を書くのは得意ではありませ
 んが、希望する方がいるならゆっくり書きたいと思います。

 今回はおまけもあるよ↓(本編には何の関係もありません)


 -瓶詰めゆっくり-

 まず生まれたての小さなゆっくりを用意します。
 小さなゆっくりがぎりぎり入る口の大きさ(自分の手も入るくらい)で、中である程度動けるビンへ小さなゆっくりを
 投入。(蓋が必要です)
 始めは「ここから出してね。ゆっくり出してね。」と泣いているが、エサを中へ入れてやるとゆっくりとくつろぎだす。
 次の日からはもう出してとは言わず喜んでビンの中でゆっくりすごしている。

 -数日経過-

 異変に気がつく。ビンが以前より狭くなっているのである。(正確にはゆっくりが成長しているのである)
 それでもまだゆっくりできるので能天気にビンの中でゆっくりしている。

 -さらに数日経過-

 とうとう満足に動けなくなるゆっくり。
「ゆっくりここから出してね!」
 なんて言ってくる。
 望みどおり蓋を開けてビンを横にしてやる。ビンから出ようとするがもちろんビンの口は小さくて出ることはできない。
「お願いだして!ゆっくりさせて!」
 と言ってくるので手を中へ入れてどこでもいいのでゆっくりをつかみ思いっきり引っ張る。
「ゆ゛!ゆ゛!ゆ゛ーーー!」
 もちろん出られるはずもなく。体が千切れそうになるので、
「ゆっくり引っ張ってね!もっとゆっくりしてね!」
 と涙を流して言ってくる、
「ゆっくり引っ張ったんじゃ出られないよ。」
 と冷たく言ってやる。そしてゆっくりはビンから出るのをあきらめる。


 -さらにさらに数日経過-

 ゆっくりはビン内部へ密着し、息をすることもままならない状態になっている。
「ゆ゛っぐりじだいよぉぉぉ」
 この状態になったらあとは自由にすればいい、

 蓋を開けナイフで切り中の餡子を取り出すもよし。
「ビンを割ればゆっくりできるよ。」といい希望を持たせビンごと割ってもよし。
 涙で溺れ死ぬのを待つのもよし。

 使い方は無限大!

 おまけend

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最終更新:2022年05月04日 22:38