■注意事項
  • 人間側が負けます。(虐待しますが復讐されます)
  • 虐待失敗。
  • 死者でます。
  • 強すぎるゆっくり注意。
  • オリ設定アリ。





■協定破棄

「ふざけるな!」
「まぁ落ち着け。これも村の為だ」

大声を上げているのは虐待派の男だ。この村は先ほど現れたドスまりさと協定を結んだ。
今は村人を集めてその説明を行っている最中だ。村の有力者には協定締結前に話を
つけているが、彼が協定を知ったのは今さっきの事だ。つまり自分の与り知らぬ所で
勝手に協定が成立し、その制約を受けねば成らない事になる。彼が怒るのも無理は無い。

「相手は糞饅頭だぞ!人間の誇りはないのか!」
「お前の気持ちは分かる。だが畑を荒らされる者の立場も分かってくれ」

この村では大半の村人は畑仕事で忙しく、いちいちゆっくりに構っている暇は無い。
畑を襲うゆっくりには手を焼いていたが、畑を放り出して森へ討伐に行く訳にも
行かない。
頼みもしないのに昼間から森に入ってゆっくり駆除に熱心な彼等に文句を言う理屈は
無いし、労いの言葉を掛けた事もある。

だが、それでゆっくりの被害が無くなる訳ではなく焼け石に水である。
協定で畑を襲わない事が約束されるのならば、選択の余地など有ろう筈が無い。
働きもせず遊び呆ける若者を快く思わない者も多いのだ。
自分達の畑の被害と、彼等の虐待遊びが出来なくなる不満を天秤に掛ければ、
村を治める立場としては答えは決まっている。
村の有力者で話し合った結果、全会一致で協定を締結する事に決まったのだ。

「ドススパークで脅して協定を結ばせるなんて無効だ!」
「これ、待たんか!話はまだ・・・」

彼とその一派はそう言い捨てて集まりから帰ってしまった。
彼としては、自分達の虐待が村に貢献しているという自負も有ったのだろう。
突然理不尽な制約を課せられて、四面楚歌で悪者扱いを受ければ納得は出来まい。
しかし彼等の虐待の自由の為と言って協定を蹴ってしまえば、畑の被害の怒りの矛先が
彼等に向かう事も容易に想像出来る。

「やれやれ・・・予想はしていたが、やはり反発はあるか」
「だが協定は成立した。これで少しは村も楽になるじゃろう」

時間は掛かるだろうか、分かってくれる筈だ。
コレを機に虐待をやめ、農業に情熱を燃やし、村の一員としての自覚を持って貰いたい。





「本当にやるのか?」
「あぁ、当然だ!!」

森の中で息巻くのは虐待派だった有志数名。
彼等のここ最近の働きにより、森のゆっくりは数を減らしつつあった。
ドスが危険を冒して人間と協定を結びに来たのもその為である。成果は出つつあった。
有利なのはコチラなのだ。なにも協定を結んでやる必要はないし、平等である事もない。

「こんな何のメリットも無い不平等な協定なんか結ばさせられて黙ってられませんよ!」
「俺達人間の恐ろしさ、見せてやりましょう!」
「ゆっくりに手を出さないなんて、一体何を考えているんだか」

協定によって畑や人里に下りて悪事を働いたゆっくり以外には手を出せなくなった。
当初は待ち構えていたが、実際畑に出るゆっくりが激減した為に、直ぐに虐待用の
ゆっくりが不足し、こうして直接森へ出向いて来たのである。

「協定破っちまってイイんすかね?」
「なに、人間の恐ろしさを分からせてやれば連中も考えを改めるだろう」

森のゆっくりを残らず駆逐すれば済む話だ。畑を襲うゆっくりは減るので問題ない。
ドスも人間と対等ではない事を思い知って、協定など結ぼうという自惚れた考えを
改めるだろう。人間に迷惑を掛けませんと土下座しておけば、俺達も鬼じゃない。
虐待用のゆっくりだって必要なんだから、全滅する程は殺さないでやるのに。
畑を襲わない代わりに自分達を殺さないでくれ等と、交換条件を出すとは生意気だ。
襲わないのは当然だし、殺されても文句を言える立場じゃ無いのだ。
知恵をつけて勘違いしたゆっくりは、制裁を加えて立場を分からせる必要がある。

「今日は思いっきりエンジョイしましょう!」
「やってやるぜ!!」
「虐殺だ!ひゃっほー!」





村では大騒ぎになっていた。
朝から虐待派だった男が見当たらない。元々朝は起きないし、一日中ぶらぶらしてるから
気にも留めなかったが、昼過ぎになっても見かけない。
彼だけじゃない。虐待派と呼ばれた一派がこぞって姿を見せないのだ。

「まさか、あいつ等・・・饅頭に何かするつもりじゃ」
「不味い事になった。どうする?」
「いや、まて。まだ決まった訳では・・・」

森へ向かう不審な一段が目撃された事が分かったのは既に夕刻。
大急ぎで村人を集めて対策を考えている所へ、彼等は意気揚々と帰ってきた。

「へへへ、やってやりましたよ!」
「安心してくれ。ゆっくりは殆ど全滅させた」
「ドスだけは取り逃がしたが、群は壊滅させたからな。これで畑の被害はなくなる筈だ」

最悪だ。終わりだ・・・沈痛な空気が村人の間に広がる。
その時、突如として村の上空に3本の光が走った。

「何だアレは!」
「まさか、高集束ドススパーク!?」

通常のドススパークが、ドス級の動きの鈍さを補い命中率を高める為に近距離拡散型
であるのに対し、威力を集束させ範囲を絞る代わりに射程を延ばすのである。
それが同時に3本飛んで来たと言う事は、手練のドスが最低でも3体は居る。

発射元は村を見下ろす事が出来る丘の上の辺りか?だが今から森へ入れば日が落ちる。
追撃困難な時間帯を狙って遠距離からの一方的な攻撃。
1撃目はたまたま逸れたが・・・警告?いや、警告なら協定の際に、ならこれは・・・

「いかん!直ぐに村から非難するんじゃ!!」





村は大きな打撃を受けた。
貯蔵していた食料庫が真っ先に狙われ、その後は大きな建物から順に砲撃を受けた。
流石に遠距離からのスパークでは崩壊には至らなかったが、修理に掛かる費用や
失った食料を考えると、ゆっくりによる畑の被害の比ではない。
幸い避難が早かった為に死者こそ出なかったが、中には資財を持ち出そうとして
避難が遅れ傷を負った者も居た。

「何怒っているんだ?感謝して貰いたいくらいだぜ!」
「今回の一件で饅頭の危険性が証明された筈だ」
「命がけで先制攻撃をした英断をもっと評価・・・「ふざけるな!」」

話の途中で怒号に遮られる。怒鳴ったのは被害を受けた畑の主だ。

「お前達は遊びでも、被害を受けるのは俺達農民だぞ!」

協定は虐待派には了承し得ない内容であったが、
作物の被害が無くなれば畑で働く人間にはこれ以上の利点は無い。
もとより、ゆっくりが虐待出来る事による得など何も無いのだから。
それを一方的な都合で破棄し、結果村に甚大な被害をもたらしたのだ。

「協定で作物の被害が無くなればそれに越した事は無いんだ」
「なんだと!!今まで饅頭から畑を守ってやった恩を忘れやがって!!」
「俺達は昼まっから森へ入って遊んでる時間は無いんだ!」
「お前達の遊びのせいで村はこの有様だ!!」
「遊びじゃない!危険な饅頭の駆除は村の為に必要な事だ!!」





村人を集めて緊急の会議が行われたが、責任の追及よりも
まずは怪我人の治療と、被害の復旧が優先すべきとあって、
森へゆっくり討伐に向かった者達への処遇は後回しになった。

「くそっ!饅頭どものせいでとんでもない事に・・・」
「このままじゃ村はお終いだ」

村がゆっくりから襲撃を受けたとあって虐待派には、血気盛んな村の若者や、
被害を受けた者、その友人や親族達も一部加わっている。
原因を作ったのは彼等だが、それよりもゆっくりに対する怒りの方が強い者も居る。

「元々協定なんか結ばなければこんな事には成らなかったんだ」
「協定派の連中は何を考えている・・・こっちに責任を押し付けやがって」

協定を破った一行は、先ほどの村の会議で今回の件の責任を散々追及された。
ゆっくりの危険性を主張し、協定を結んだ協定派を非難して対抗したが旗色が悪い。

「こうなったらドスを殺すしかない」
「俺たちの手で村を救って分からせてやるしかない」

村を守ってるのは俺達だ。ドスの協定ではない。
俺達の恩を忘れて、人間の誇りを捨てゆっくり達の言い成りになり、
逆に俺達を非難するとは・・・
本当に村に必要なのは、協定派か、ドスによる支配か
村の平和のために戦う俺達かハッキリ分からせてやる。





「村を襲った裁きは受けてもらうぞ」
「何言ってるの?先に協定を破って群を襲ったのはソッチでしょ?」

「ドススパークの力で脅して結んだ協定なんか無効だ!」
「その理屈なら人間が力で饅頭を蹂躙して結んだ協定も無効だね」

「弱い饅頭無勢が!強い人間様と平等な協定なんか結べると思うな!」
「立場が上なのに脅されて不利な協定結んだの?」

「負け犬の遠吠えだな。お前の群は壊滅した・・・俺達の勝ちだ」
「そうだね・・・私たちの群はもうおしまいだよ」

「本気で戦って人間に勝てる筈が無いだろ」
「本気で戦って人間に勝てる筈が無いしね」

「だから大人しくここで人間に殺されて死にやがれ!!」
「だからって・・・黙って殺されると思ったの?バカなの?死ぬの?」

「!?」

突然高熱の光に包まれる。ドススパークには警戒していた。
アレは発射までに時間が掛かるから、兆候が見えてからでも余裕で回避できる。
射程外に逃げても良いし、岩や木に隠れても良いし、カウンターで自滅させても良い。
人間が負ける筈が無い。俺達の勝ちだ。誇り高い人間が・・・はずが・・・が・・・

「大事なのは前例を作らない事だよ」
「協定を一方的に破って、何の被害も無かったなんて事にはさせないよ」

森の中からもう一方のドスが姿を現す。既に虐待派の筆頭だった男の居た場所には
消し炭が残るばかりである。大半の村人はその光景に我先にと逃げていくが、
虐待派の一部は果敢にもドスに向かって突っ込んでいく。

「糞饅頭無勢がぁー!!」
「人間がゆっくりなんかに負ける事があっちゃいけねーんだよ!!」

逃げずにドスに襲い掛かる所に二発目のドススパークが放たれた。効果範囲を絞らない
拡散型の光線は、逃げずに向かってくるその場に居た全てを焼き尽くした。
成り行きを見守っていた三体目のドスが、光線を放ち終えてゆっくりと姿を現す。

「この森が終わっても、ゆっくりは終わらないよ」
「他の群れのドス協定の為にも・・・」
「これから生きていかなきゃならないどこか遠くの皆の為にも」





結局、その後の村は以前の状態に戻った。
多少の被害は出したが、妖怪や野生動物や病気や災害による死者と比べれば
      • これも授業料だと思って諦めるしかない。

相変わらずゆっくりは田畑を襲っている。
あれからまた直ぐに数を増やした。生き残りが繁殖したのか、他所から移り住んだのか。
以前の様に群に管理される事も無く、協定を守る事も知らない
野生のまま欲望のままのゆっくりが遠慮無しに餌を求めて人里に下りてくる。
協定違反に加担した虐待派の生き残りは、日々畑仕事に従事している。
処罰したり追放するほど村にも余力は無い。償いとしては妥当だろう。
ドスは居なくなった。死んだのか、この地を見捨てて旅に出たのか。
あの日、応援に現れたドス級の2体も、同じ様に人間に裏切られたのだろうか。
あのドスも遠くの仲間を助けに行ったのだろうか。
次にこの森にドスが現れるのはいつか、賢い群が育つのはいつになるのか、
誰にも分からない。

協定はメリットももたらすが、当然破った場合のリスクもある。
規則を守れるだけの結束と組織管理能力が無ければ成立し得ない。
協定を結べる程には、人間は賢く無かったという事だろうか。

いや、そんな事はない。学べる筈だ。
少なくとも、今回の経験をした村人なら、協定の存在意義を理解し遵守するだろう。
跳ね返りは居るものだ。それを慣らせなかった自分たちが甘かったのだ。
やって見せるさ。あのドスはゆっくりさえまとめて見せたのだから。

「・・・なぁ、れいむ?」

男の傍らには透明な箱に入ったれいむが鎮座していた。片目は失われ、残った目からは
止まる事のない涙が流れている。虐待は人に迷惑を掛けない様に、世間にバレない様に、
影でこっそり嗜む物だ。最近の新人は押さえが利かなくて困る。





■あとがき
協定を不平等だと思うのは、森で虐待してる人間だけで、畑で働いてる人にとっては
悪い話じゃないと思う。被害を受けるのは他人で、制裁を下すのは自分、虐待して人から
感謝されるとか有り得ないだろ常考wって事で
普段と逆の虐待派以外の視点で書いてみた。

BY アンノーマン





■追記
スレの方で人間が負ける展開が色々言われててヒヤヒヤしながらの投稿ですが。
個人的には筋の通った虐待の理由が欲しいとは思わない。
虐待は理不尽な物で所詮マイノリティーで日陰者だと思ってる。

でも虐待を強引な理屈で正当化する展開は好きじゃないし。
上手く説明出来ないけど、虐待側が無茶理論かまして
自己正当化して、虐待の正当性を主張するのは好きじゃない。
(自分で無理を承知の上で、虐待の一環としての言葉攻めはアリだと思うけど)

最終的には人間だから勝って当然、虐待して当然なんだけど、
ソコに至る過程で、なんか虐待側に同調出来なくなったり、
ゆっくり側に同情してしまって虐待を楽しめない事も多々ある訳で。

別に筋を通したい訳じゃないですけどね。理不尽な理屈を突き付けられて
強引に虐待の展開を正当化されると、人間よりゆっくり側に同情してしまうのですよ。

ゆっくり視点でも、人間視点でも成立してる協定を
虐待派の理屈だけで壊せば、ゆっくりからも人間からも迫害されるだろうと。
ドス協定から虐待に至る展開は、納得が行かない物も多かったので、
自分ならこうする的な物を一度は書いてみたかったと言うのもあります。

今回は結末の為に意図的に虐待派の人間を「お粗末」な役にし過ぎてしまったのが。
最後に村長が鬼意参宣言して「若いの、まだまだじゃのう」って展開の予定だったのに
構成をシンプルにしようとした結果、色々虐待分が不足の結末です。

作者的には、これはこれで一つのパターンとしてアリだと思う。
でもドゲスまりさパターンも書いてみたい。

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最終更新:2022年05月18日 21:30