■注意事項
  • 虐待薄め、自滅観察型
  • まりさはゲスです
  • マリスと呼ばれるゆっくりは、カチューシャ以外はまりさです






■走れマリス!

マリスは激怒した。
かの傍若無人の人間を倒さねば成らぬと決意した。

マリスは人間のルールが判らぬ。
マリスは森で育ったゆっくりである。
人間の怖さも、畑の野菜の味も知らなかった。

マリスはゲスが嫌いだった。
自分はゲスではない。ゲスにはなるまいと硬く心に誓っていた。

マリスは見かけや種族で判断する事も嫌いだった。大事なのは中身だ。
まりさ種はゲス精神だとか、ありす種はレイパーだと言う偏見が許せなかった。

マリスはまりさである。何故か帽子を持たぬまりさであった。
帽子の代わりにありす種のカチューシャを持っていた。
この風変わりなまりさを、皆はマリスと呼んだ。

マリスは疲労困憊、満身創痍で森の中で力尽き倒れていた所を、
森に住む優しい仲間達に開放され、今はこの群で暮らしている。
過去の事はあまり思い出せなかったが、平凡ながら幸せな暮らしであった。

マリスには妻があった。そして今はれいむと住んでいた。
このれいむは傷ついたマリスを懸命に介抱してくれた。
元気になったマリスが群に残って一緒に暮らす事になった時、一番喜んだ。
二匹は直ぐにすっきり!して子供を作った。





その日、マリスは群の様子を怪しく思った。
何があったのか群の長であるぱちゅりーに話を聞く事にした。

「赤ちゃん達が死んでしまったの。見付かった時はもう餓死してたわ」
「酷いよ!親ゆっくりは何をしていたの!?」
「親だったまりさとありすは居なくなってしまったの」
「ッ!赤ん坊を見捨てるなんて・・・ゲスなゆっくりだね!!」
「捨てたんじゃないわ。ご飯を取りに人間の所へ行ってしまったのよ」
「人間の所?一体何故?」
「人間の畑やお家には美味しい食べ物がイッパイ有るわ」
「凄い!沢山ゆっくり出来るね!!」
「違うわ。ソレを勝手に食べたら殺されてしまうのよ!」
「人間はBAKAなの!?」
「畑の野菜は人間が育てた物だからよ。大事な野菜をゆっくりが盗むのが悪いのよ」
「ゆっくりできないね!」
「・・・まりさとれいむも帰って来なかったわ」

マリスは激怒した。

「呆れた人間だね!生かして置けないね!!」

マリスは単純なゆっくりであった。
極めてスタンダードであった。
そしてテンプレートであった。

「人間を倒してみんなでゆっくりするよ!!」





マリスとれいむは人間を倒す為に森を抜け、人里までやって来た。
生まれたばかりの赤ちゃんを巣に残すのは気がかりでは有ったが、
人間との危険な戦いに連れて行く訳には行かない。
人間を倒せば美味しいご飯が沢山手に入ると考えて勇気を出した。

森を抜けて一番初めに目に付いた畑の野菜にかぶり付いた所で捉えられ、
身動き出来ぬように縛られて人間の家の庭に放り投げられた。

「お前達、人様の畑でなんで勝手にお食事してるんだ?」
「ゆゆっ!アレはれいむが見つけたお野菜だよ!!」
「人間さんはさっさと死んでね!あとココはまりさがお家にするよ!」

マリス(他一名)は悪びれずに答えた。
当初の目的は既に記憶から抜け落ちていた。

「結局、ゆっくりはみんなゲスばかりか・・・」

人間は少し落胆したような、呆れたような顔をして言った。

マリスには許せぬ物がある。
ゲスな事をするヤツと、種族や外見だけでゲスと決め付けるヤツである。
自身がゲス呼ばわりされた事に酷く腹を立てて、怒鳴り散らした。

「まりさはゲスじゃないよ!ゲスは人間の方だよ!!」
「なんだと?」
「ご飯は見つけたゆっくりが食べていいんだよ!横取りした上に殺すなんてゲスのする
事だよ!!」
「ゆっくりなど所詮食欲の塊だ。約束も規則も野菜を見れば忘れて食い散らかす」
「まりさは約束は守るよ!」
「ボクだって本当はゆっくりと仲良くしたいんだ。でもお前達は直ぐに嘘を付く」
「まりさはそんなゆっくりじゃないよ!!」
「ゆっくりを殺したくは無い。信じたいんだ。ソレなのにお前達は愚かにも裏切る!」





マリスとれいむは、もう自分が助からぬと観念した。
しかし心残りがあった。群に残してきた愛する子供達である。

「まりさたちはどうなっても構わないよ!でも帰りを待ってる赤ちゃんが居るんだよ!」
「ゆっくりお願い! あの子達を育てるまで待ってね!!」

腹を空かしているだろう。これからどうやって生きていけば良いのか。
せめてあの子達を立派に独り立ちさせてやりたかった。
ふと、親まりさとありすが人間に捕まって餓死した赤ちゃんが脳裏をよぎった。
自分の子供をあんな目に遭わせる訳には行かない。
「お前達を逃がせと言うのか?」
「れいむが人質になるよ!だからマリスを行かせてあげてね!!」
「必ず戻って来くるよ!そしたらどんな罰でも受けるよ!」
「戻ってくる?嘘を付くな!そう言って逃げるつもりだろう!!」
「嘘じゃないよ!必ず・・・必ず戻ってくるよ!!」

二匹とも潰すのは容易い。
しかし、面白い事を言う。逃がせば再び死ぬ為に戻ってくるだと?
そんなバカな話があるものか。
このままでは二匹とも助からぬから一方が人質となり犠牲に成ると言うのか?

「もしまりさが戻って来なければれいむを殺す。それでいいんだな?」
「れいむ!まりさをゆっくり信じてね!!」
「れいむはマリスを信じてるよ!!」
「いいのかれいむ?まりさは裏切って逃げる気だぞ?」
「ゆ!マリスはそんなゆっくりじゃないよ!プンプン!」

信じたフリをして騙されてやるのも悪くない。
そうして「あぁ、これだからゆっくりは信用成らぬ」と嘆いて見せてやるのだ。
自己犠牲の愛ならば、痛めつけてその化けの皮を剥いでやる。
仲間に裏切られた、その絶望の表情を見てやろう。

「ほら、さっさと逃げろ。まりさが仲間を見捨てるゲスだって事は知ってる」

マリスは悔しそうな顔をしたが、人間に向かって行く事はしなかった。
子供達の為の命を無駄には出来ない。
れいむとスリスリをして必ず戻って来ると約束をした。
お別れを済ませて、悲しみをこらえ森へ駆け出そうと決心を固めた。





その時である。

「まりさ・・・おそいよ、まりさ・・・」

一匹のありすがマリスを呼び止めた。

「ゆっ!?飾りの無いありすが居るよ!!」
「覚えてないの? 忘れちゃったの?」

ありすは全身傷だらけの酷い姿であった。ゆっくりにとって大事である筈の飾りも無い。
だがマリスは直感した。このありすは人間に捕まっていたありすだ。
愚かにも畑の野菜に目が眩み、人間に捕まって子供たちを餓死させた愚かな親だ。
このありすはゲスありすなのだ。そう結論した。

「そのれいむはダレなのッッ!! ありすたちの赤ちゃんはどうしたのッッ!!」
「ゆ?何言ってるの?こんなありす知らないよ!!ありすはやっぱりゲスだね!!」
「まりさ!?何言ってるの?冗談はやめてよ!!赤ちゃん達はど・・・」
「死んだよ!BAKAだね!こんなゲスな親を持って赤ちゃんは可哀想だね!!」

ありすは震えて固まって動けないでいる。
その感情は怒りか、失望か、悲しみであろうか。
よく見るとありすは大事そうに何かを持っている。
ボロボロの布切れになった帽子。マリスには見覚えがあった。まりさの帽子だ。

「まりさ・・・」
「ゆ?なんでまりさの帽子をありすが持ってるの?」
「なんで覚えてないの?なんで忘れたの?」
「じゃあこのカチューシャは誰のなの?まりさは・・・まりさは?」





ありすは信じていた。かならずまりさが助けに来てくれると。
だからどんなに苦しい虐待を受けても、心が折れる事は無かった。

ありすは好きだった。種族など関係ないと言ってくれたまりさが。
ゲスじゃないまりさ種もいる。レイパーじゃないありす種もいる。
見かけでは無く中身が大事だと語ってくれたまりさがに心引かれ結ばれた。

ありすは思い知らせてやりたかった。
この人間はゆっくりを見下している。信用出来ないと思っている。
人間に見せてやりたかった。ゆっくりにも信頼できる絆がある事を。

ありすは信じていた。まりさならば、子供達を無事に育ててくれる事を。
人間に捕まった自分の代わりに、立派に子供達を教育してくれる。
愛情を注いで育てて、ゲスじゃないまりさと、レイパーじゃないありすにするんだと。
幸せな自分達の家族を皆に見せて、まりさ種とありす種を見下していた連中を見返して
やるんだと。いつか語った夢を果たしてくれると信じていた。

ありすはあの日人間に捕まった。
畑のお野菜を食べて見付かり、人間に挑んで負けて傷ついたまりさ。
人間に命乞いをして、まりさを帰す代わりにありすは捕まった。
ボロボロにされた帽子の代わりにカチューシャを渡して、必ず帰ってくると約束をした。
赤ちゃんを無事に育てたら、必ずありすを助けに来ると。
そんな事があるものかと人間は笑っていた。悔しかったがぐっと堪えた。
まりさとありすの信頼の絆があれば見返してやれると。
赤ちゃんを立派に育てて群の連中を見返してやれると。
たとえ自分の命が朽ち果てても、あのまりさとありすの夫婦は立派だったと
思い知らせて死ぬ事が出来る。
侮辱され罵られても、信念を持って耐えて生きてきた自分の人生は無駄ではなかった。
そう思って、その筈だった。

なのになんだ。こいつは何をしていやがった。そのれいむは誰だ。赤ちゃんは如何した。





「ありす、キミの言う事は正しかった。驚いた。本当にまりさは戻ってきた!」
「ありすは・・・ありすはしんじでたのにぃっ!!」

感動的再開を果たしたありすである。その身体は歓喜のあまりか震えている。
毎日毎日まりさがゲスであると言われ、それを否定し続けたありす。
念願かなってまりさが現れたのだ。さぞ満足だろう。
今の気持ちを確かめる為に、これまで何度も繰り返した質問をしてみる。

「ありす?まりさはゲスなゆっくりだよね?」
「まりさ・・・ゲス・・・このゲスまりさがぁあぁぁぁ!!」

あれ程苦しい虐待を受けても、まりさがゲスである事を否定し続けたありすは、
ついにまりさがゲスであると認めた。
折角命がけで戻ってきたまりさを罵倒するなんてなんてゲスなありすだろう。

「あぁ、やっぱりゆっくりはゲスだった。やっぱり信じたボクが馬鹿だった」
「ぢがうぅぅっ!!まりざはゲズじゃないぃぃ!!」
「これだからゆっくりは信用出来ない!ボクは信じていたのに!!」
「まりざー!! このゲスやろうがぁぁあぁぁぁぁぁ!!」
「でも、まりさ・・・一応戻ってきた訳だからボクはキミを許そうと思う」
「まりさはゲスじゃない・・・まりさはゲスじゃない・・・ゲスじゃない・・・」
「約束通りありすは開放してあげよう・・・あとは仲間同士でナカヨクしたまえ」
「ぢがうー!!まりざはげずじゃないんだぁぁぁぁー!!!」
「まりざぁぁー!!じねぇぇぇぇ!!!」





「ところでれいむ?キミはまりさを信じているのだったね?」
「ゆ?・・・ゆゆっ!?!?」
「もしまりさが戻って来なかった時の約束は覚えてるよね?」
「ゆっ!ゆゆっ!ゆっ!ゆゆっ?ゆっ!?」
「まりさが戻ってくるまで毎日虐待する。赤ちゃんの為に我慢するのだろ?」
「ぞんなのいやだぁぁー戻って来る筈ないぃぃぃ!もうおうちかえるぅぅぅ!!」
「まりさを信じないのかい?嘘を付いて騙したのかな?信じて無いのなら処刑を・・・」
「じんじでばず!バリズばがならずもどでぎまず!おねがいじまず!ばっででぐだざい」
「そうだね、ボクも信じたいんだ。だから一緒に待とうじゃないか」

もしれいむが信じないなら、ゲスだと認めるのならば
ボクはれいむを殺さなければ成らない。そんな事はしたくない。
だから信じよう。まりさはありすとの戦いに生き残って、群に帰って赤ちゃんを育てて
無事に再びココへれいむを迎えに来ると。
もしまりさが来なければ、約束通りれいむを処刑しなくてはいけない。
だから信じよう。信じて待ち続けよう。



by アンノーマン





■あとがき
走れメロス的なゆっくりの話。寝た被りのお話があったような二番煎じです。
ゆっくりならば、人質を残して逃げた挙句忘れてゆっくりするだろうな~と。
そのままゆっくりされても困るので、制裁を加えるなら無関係な相手にやられるより
裏切った相手に引導を渡して貰おうと思いました。
都合の悪い事は忘れて同じ失敗を繰り返し拾った命を捨てに人間の所へやってきます。
そしてまた同じ取引を持ちかけて、一生のお願いが何回あるんだよってパターンです。
忘れてしまうという、無自覚な悪意のゲスなんでしょうね。


まりさはゲスだと思う。あとゆちゅりー可愛い。愛してる。けっこんしたい。





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最終更新:2022年05月18日 22:12