※今までに書いたもの

神をも恐れぬ
冬虫夏草
神徳はゆっくりのために
真社会性ゆっくり
ゆっくり石切

※今現在進行中のもの

ゆっくりをのぞむということ1~


※注意事項

  • くれんじんぐ♪ くれんじんぐ♪ えすにっく的な意味で。
  • 俺設定満載。
  • 人間は原則的に介在しません。
  • ただし、ぷろろぎゅーとえぴろぎゅーに東方キャラが登場します。
  • ついでに、ぷろろぎゅーとえぴろぎゅーには虐待らしい虐待が登場しません。
  • 全般的にゆっくりは知能が高めです。
  • 一般論で言えばゲスに分類されるだろうゆっくりが大勢出ます。
  • 東のドス注意報。
  • ぼくのかんがえたさいきょうゆっくりがとうじょうしますがどこもおかしくはないな。

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 うっすらと襖を開けて外界の様子を覗き見れば、外にはまばらに雪が降り始めていた。
 空を覆うのは、灰色の分厚い雲。
 急に冷え込んだのも道理だった。これは、長く降るかも知れない。
 部屋着の上に羽織ったショールのずれを直し、少女は襖を閉ざして「ふぅっ」と物憂げな溜息を白く吐く。

「穣子ちゃん」
「……んー?」

 とある冬の日、山の中。
 山奥の社、その一室。
 装い質素な和風の部屋に響く声に、面倒を察した襖の少女は聞き流す事も出来ず、嫌々ながら声の主を振り返った。

「……炭が、足りないわ」

 ぐでん、と掘り炬燵に腰から下を突っ込み、床に突っ伏しながらいうのは紅葉を司る神。
 持ってこい、との意味が込められた無言の要求を受けてむっとした視線を紅葉の神の背に向けている――つまり襖の側の少女は、
 その妹神たる豊穣を司る神である。

(――自分で取りにいきなさい、っての)

 この居間から炭の積んである土間まで、幾許の距離もない。幾ら実姉だからって、横暴が過ぎるのではあるまいか。
 豊穣の神――秋穣子としては、そうも思うところではあったのだが。

「もぉ……しょうがないなぁ」

 姉のリクエストからしばしの沈思の後で、結局不満たらたら腰を上げたのは穣子のほうだった。
 何しろ、冬場である。
 炭を取りに土間まで行くのも億劫だというのに、なおのこと面倒な姉妹喧嘩を演じるだけの元気もない。
 無駄な労力払うのは止めにして、素直に自分が土間に炭を取りに行くのが自分自身にとっても幸福というものだろう。

 それにまあ、確かに外に繋がる障子には穣子の方が近いし。
 喧嘩するなり無視するなりして、その間に火鉢にくべる炭がなくなってしまえば寒くて困るのはお互い様である。

 せめて、部屋を開けっ放しにしていってやろうかしら。
 カラリと襖を押し開けて、吹き込む寒風に静葉が慌てて首までコタツの中に後退する姿を横目にそんなことを思ってみる。
 いやこれもダメだ、とその悪戯心もすぐに没。
 寒い所に出かけていって、帰って来た部屋が外気と温度が変わらないのでは結局穣子自身も涙目になるじゃないか。

「……真面目に、さっさと炭を取ってこようかな」

 結局、『嫌な事はさっさと終わらせるに限る』、そんなまっとうな結論しか導き出せない自分が恨めしくて。
 カラリと襖を閉じ、首筋を撫でる外気に改めてぶるりと一つ大きく身を震わせて、穣子は小走りに廊下を土間に向かって進み出した。

「……おや?」

 視界の隅に流れ往く、社の庭と鎮守の森。
 降りしきる雪、風にそよぐ葉の落ちた木々の枝、それ以外に動くものの見えないはずの光景の中に少しの違和感がある。
 それが何であるか気付くのがやや遅れたのは、いつもはもっとけたたましいはずの存在であるためだった。

「なんだ……レイパーじゃない」
「……かみさまもわたしをレイパーってよぶの?」

 縁側を降りて、数歩ほどの距離。
 木の根元にわずかに出来た窪みに身を寄せるようにして、一匹のレイパーこと、ゆっくりありすが穣子を見上げていた。
 ありすの評判は、ゆっくりにはそう詳しい訳でもない穣子もよく聞き及んでいる。
 常時発情していて、手当たり次第に見かけたゆっくりを犯す生まれつき真性の強姦魔。
 ありす種として生まれた全てがレイパーとして開花するのだとか、例外もごく稀には生まれるのだとか、色々言われているようだが。

 別に、穣子は伝え聞くゆっくりの生態にちなんでそう呼びかけた訳ではない。

「みんなそう呼んでるもの、その方が通りがいいでしょ」

 その呼び方が、誰にでもわかりやすいから。
 その呼び方が、誰からも使われているから。
 それ以上の理由なんて、あるはずがなかった。

「あんたはそう呼ばれるのは、嫌なわけ?」

 嫌ならば呼び方を正してやろう、なんて配慮は穣子には欠片もなかった。
 ただ、ありすの反応にほんの少し興味を惹かれたから、戯れに問うてみる。
 対するありすの反応も、ゆっくりには珍しくごくごく淡白な代物だ。

「……べつに。ありすは、どうよばれてもありすだもの」
「それは殊勝な心がけだこと」

 悟りきったというか、疲れきったというか。
 ともかく面白みもない反応に、穣子がわずかに抱いた興味は急速に薄れて消えていった。
 もう少し、「どぼぢでぞんな(略)」のごとく、面白おかしい反応をしてくれたらからかいがいもあるものだが。

「多産豊穣、結構なことだと思うけど。饅頭が人間みたいな付け焼刃の倫理振り回してどうすんのかしらね」

 地獄の閻魔の言葉ではないけれど、人が人を裁けると思いあがったり、ナマモノに過ぎない饅頭が人間の倫理に囚われたり。
 いろいろ、昔と変わってしまったものだ。大昔はもっと、地上の生物は純朴だったような気もするのだけれど。
 穣子はつまらなさそうに呟くと、それきりその話題には興味を失い、本来の目的を遂げるべく土間へと向かって数歩歩いた。
 歩いてから、ふと思い出し、「それで?」と動かずじっとこちらを見ているありすに目線を向ける。

「ここが神様の領域だって知ってるって事は、床下を借りに来たわけね?」

 穣子の問いかけにありすは応えず、しかし小さく頷いた。
 どこの神のものであれ、殺生が禁じられる鎮守の森は動植物の聖域ともなる。
 基本的にゆっくりに対してもそれは同じことだ――むろん、図に乗って神域の主を取り違えるほどに愚かな個体は、
 神か、神への畏れを知る個体によって即座に外界に放り出されるが。
 逆に言えば、調子に乗りさえしなければこれほど安全な場所もないだろう。
 この鎮守の森には、冬でも下草やコケが繁茂している。ゆっくりになら食べられる木の皮もそれなりにある。
 贅沢さえ言わなければ、食べ物に困ることもおさおさないはずだ。

 その点、最初からこのありすは穣子を『かみさま』だと認識していた。だから、穣子はありすが問題を起こすことは心配していない。

「いっとくけど、神域じゃ穢れは厳禁だからね。見てなくてもわかるんだから」

 だからありすを軒下に放り込む際、ひとこと注意を与えたのはありすに向けたものではない。
 数家族、すでに入り込んでいた先住者たち。
 ありすという種そのものに、恐怖心や不快感を抱いてるかも知れない彼女たちに向けたものだった。

「むきゅ、わかってるわかみさま。みんな、すっきりやゆっくりごろしはぜったいにやっちゃだめ、ってことよ!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
「わかるよー、おそとにおいだされるとゆっくりできないからねー」
「ゆぅ。ありすでも、レイパーじゃないならいっしょにゆっくりできるよ!」
「かみさまも、ゆっくりしていってね!」

(それはちょっと違うんだけどなー)

 床下から聞こえてくるゆっくりにしては殊勝な返事に、穣子はひとまず安心しつつも心中そんな突っ込みを入れた。
 死に纏わる穢れである黒不浄は確かに日本の神様特有のものだが、出産絡みの赤不浄はヤマトの都がまだヤマト近辺にあった時代に
 人間たちが『血=不浄』と錯覚するに至って勝手に祭祀に取り込んでしまったものだ。
 実のところ、神様の都合は赤不浄(白不浄)に関してはあんまり関係ないのである。
 あのぱちゅりーは、どこかで人間が作り上げた信仰の知識を教えられてしまったものだと思われた。

 その辺の経緯を説明してやれば、『ごほん』と『ちしき』好きのぱちゅりーは喜ぶのだろうが、
 残念ながら穣子は別にゆっくり愛好家というわけでもないのでそんな面倒なことまでしてやらない。
 というより、せっかく暖の確保のために寒さを押して炭を取りに部屋を出たというのに、
 いつまでも薄着でお外に佇んでいては寒くて凍え死んでしまう。いや、神様はそんなに簡単に死ねないけれど。

「だいたい、出産を不浄とされちゃ豊穣の女神の立場がないってのよね」
「なんの話?」

 とりあえずぶつくさいいながら再び歩き出した穣子の背中に、不意にありすのものではない声が掛かる。
 穣子と同じく、気だるさの抜けないその声音が姉の静葉のものだとわかっていたから、穣子は特に振り向かなかった。
 大方、妹一人にやらせるのも悪いかと思いなおして炭運びを手伝いに来たのだろう。

「ううん、ちょっとね」

 歩を早め、狭い廊下を自分の横に並んだ姉に一瞥だけ向けて告げる。

「お気楽お馬鹿に生きても、小難しく考えて生きても、報いがこれっぽっちも用意されてない生き物もいるんだなって思っただけよ」

 だから、春まではせいぜいここでゆっくりしていけばいい、と穣子は思った。
 そこから先は、どうせ彼女たちにはこれっぽっちもゆっくりできないゆん生しか存在しないのだろうから。

本編

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最終更新:2022年05月19日 11:59