ゆっくりレギオン
- 怪談とか嫌いな人はあまりお勧めしません。
- なんか虐待じゃなくなってるような…
- 人間側に被害が出ます
- 他の方の設定が少し出ます
- 東方キャラの話題が出ます
- 人間に名前があります
- ゆっくりを生物と対等に扱う描写があります
これらを見て読めないな、と思った方は回避してください。
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「ゆ!ここはまりさのゆっくりプレイスだよ!
にんげんさんはゆっくりしないででていってれぼ!!」
「ちっ、またゆっくりの野郎。おらの畑さ荒らして…。何がゆっくりじゃ
全然ゆっくりしとらんじゃねえか!」
ある森に囲まれた村の畑、ちょうどまた一匹のゆっくりがまた野菜泥棒+おうち宣言をして、
農家のおじさんの鍬の前にその儚い命を散らしたところであった。
壮年の男は潰したゆっくりを「廃棄場」と呼ばれる場所へと持っていく。
都どころか城下町まで数十里もあるこの村では潰したゆっくりは廃棄場に捨てられるのだ。
「おお、おめえさもゆっくりにやられただか?」
「ああ。全く、こいつらときたら潰しても潰してもどこからか湧き上がってきやがる」
「そんじゃのう。おかげで廃棄場も満杯じゃ」
まりさだった饅頭を投げ捨てた男は近所に住む男性を見つけた。やはり畑荒らしをしたゆっくりを捨てに来たのだろう。
冬がもうそこまで迫っている晩秋、ゆっくりは冬ごもりの為に餌集めに奔走する。
東のドスが住むという妖怪すら近付かないような樹海と違い、規模の小さいこの辺りの森では
冬の食料を集めるといっても当然早い者勝ちとなる。結果、ゆっくりしすぎていて
十分な食料を集められなかったゆっくりたちが畑を襲うので、この時期は特に攻防戦が激しい。
そしてあまりにも大量に手に入る餡子をただ捨てるのはもったいない、小豆も腐れば肥料になるという考えにより
農業を主体としているこの村では廃棄場にゆっくりの死骸を捨てて、ある程度溜まった後畑の肥やしとするのである。
だが、この秋は例年にも増してゆっくりの襲撃が多かった為、この穴も満杯に近くなっていた。
「そろそろ下の方は肥料になってるか?」
「んだな。そろそろ雪も降ってくるし、糞饅頭の泥棒もあと少しじゃろ。来年の春にはいい肥やしになってるべ。」
男達は連れ立って帰って行った。日も暮れてきており、村から漂ってくる夕餉の香りも男たちの鼻腔をくすぐったのだろう。
誰も居なくなった廃棄場に聞こえるは風に揺れるススキの音とカラスの鳴き声のみ。
時折遠くの山の麓にある寺の鐘の音が聞こえてくるこの場所はゆっくりにとっては処刑された遺体の遺棄された場所である。
耳を澄ませば声にならない声でゆっくりの怨念が聞こえてくるような気もする。
「もっどゆっぐぢぢだがっだよぉぉ…」
「どぼぢでごんなごどにぃぃぃ…」
「わがらないよおぉぉ…」
魂の浮かばれないその場所では、故に不思議でなかった。渦巻くその怨念が形を為すという事は。
「ふぁ…そろそろ寝るベや…。明日は長の所に行かないとなあ」
先ほどの農民は眠りに就こうとしていた。
すでに妻と幼い娘は寝ており、男も温かい布団の中意識を手放し掛けていた。
が、その耳に遠くからかすかな声が聞こえてきた。
「……ど……させ……」
「ゆっくりか!」
ゆっくり独特の声調に日々農業で鍛えている男はすぐ目を覚まして起き上がる。
ゆっくりは基本夜になると睡眠欲に負けて寝る事を選ぶ。よって今まで夜襲をかけられた事はなかった。
だが、ゆっくりには頭の良い個体もいるという。恐らく頭の冴えるぱちゅりーなりありすなりが真夜中に
襲撃をかける事を提案する可能性も大いにありえた。
男は村の外れに住んでいる事もありその可能性を常に考慮してきただけに、すぐに鍬を握りしめると
ゆっくりが近づいて来るのを待った。
「ど……で……んな……にぃ…」
「とか…は…あり……も…ゆっくり…」
「べ…ス…」
最初はさざめきのようだった声も近づくにつれ徐々に意味をなす言葉となってゆく。
気のせいか、それらは「そろーりそろーり」などの能天気な声ではなく、苦しみで満ちている気がする。
だが男にとっては構うものではない。饅頭は饅頭であり、それらが意味を為す言葉を喋ってようが全く関係ないのだ。
ついに畑の外側にゆっくりが接触したようだ。静かな夜を鳴子の音が破る。
「貴様らぁ!俺の畑になに……す……」
男は大声をあげて威嚇するとゆっくりの群れに向かって突撃しようとした。だが、何かがおかしい。
ちょうちんの灯りに照らされたゆっくりはどれも潰れている。
べちゃり
男の頭の上に何かが落ちてきた。慌てて引き剥がしたそれはやはり潰れたゆっくりであり、濁った瞳が男を見つめている。
と、死んでいるはずのれいむの口元がゆがんだかと思うと、地獄の底から絞り出したような声で言葉を紡いだ。
「ゆ……ぐり……じねぇ……」
「ぎゃああああああああああああ!!!!!!」
いくら勇猛な男とはいえこの出来事には恐怖を覚え、まりさを遠くへ投げ捨てた。
持っていたちょうちんが地面に落ち、燃えはじめる。
だがどうしたことだろう。まだゆっくりどもの言葉が聞こえてくる。
男は恐る恐る上を見上げた。
今まさに燃え尽きようとするちょうちんの灯りの中、それを男は見てしまった。
星空に浮かぶゆっくりの顔、顔、顔。あるものは目が取れ、ひどいものは体の半分が無くなっている。
ぼとり、ぼとりと地面に落ちたものはゆっくりと起き上がると這ってくる。
種も損傷もばらばらなそれらの口からは絶え間なく呪詛の声が上がっている。
「ゆぎ…ぎ……」
「れいむを…つぶした…じじいはゆっぐり……じね……」
「じに……だぐ……」
「わがら……な…い……」
「む…ぎゅ……」
そして男に気がつくと一斉にこちらを向き、呻いた。
「ゆっ……ぐり…ごろ……ぢ…で…やる……」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!」
声にならない声を上げると男は何度も転びながら家に引き返し、妻女を叩き起こした。
「でろぉ!今すぐこの家からでろぉ!」
「どうしたのあんたぁ!」
「うわぁぁぁん!!」
「バカ野郎!死にたくなかったら早く逃げるんだ!」
文句を言う妻、大声に泣き喚く娘を無理やり起して家から脱出する。直後、空に浮かぶ
ゆっくりの塊に家は押しつぶされた。
その頃になると異変を感じ取った他の村人も起き出し、事態を把握する。
「吾作どん!大丈夫かぁ!」
「ああ…俺の…俺の家が……」
間一髪難を逃れた男であったが、思い出の詰まった家はもうそこにはない。
「貴様ぁぁぁ!!!殺してやるぅぅぅ!!!」
「やめろ!早まるな!」
村人の制止を振り切ると男は近くの家の屋根に上ると近づいてくるゆっくりの塊を竹槍で突きまくる。
「ゆぎゃああああああ!!!!」
「いだいよおおおお!!!!」
断末魔の声をあげながら落ちていくゆっくりだったもの。
「死ねぇぇぇ!!!俺の家を、思い出を奪った糞饅頭どもは一匹残らず死ねぇぇぇ!!!」
男は涙に溢れた目に、鬼のような形相を浮かべてがむしゃらに槍を振るう。
どのくらい突いただろうか、
穴はこの塊が一匹のゆっくりだったら中枢餡にまで到達するであろう深さまで到達していた。
そしてそこには一匹のドスまりさがいた。
「お前は……」
男はそのドスを知っていた。その潰れた片目は男が鍬で突き刺したもの。
だが、どうして。村を襲撃したドスまりさは確かに廃棄場に捨てた。それがなぜここにいる。
「……!」
と、男はドスの口の中が光っているのに気づいた。あれは間違いなくドススパークを発射する時に洩れる光だ。
「逃げろおおお!!!ドススパークがくるぞおおお!!!」
男の叫び声にわっと散っていく村人たち。直後、彼らがいた場所にドススパークが降り注ぐ。
もし男の注意がなかったら多くの人が死んでいただろう。
男は下を見下ろした。村人は際限なく上から落ちてくるゆっくりの対応に追われていた。
このままではこの塊は村を破壊しつくすであろう。
「そうか……」
口の中からつぶやきが漏れる。こいつらは俺たちが潰した廃棄場のゆっくりだったのか、と。
そう、奴らは確かに死んでいた。瀕死のゆっくりも少なからずいたが、放っておけば確実に死ぬであろう傷を負わせていた。
だが、言葉に言い表わせないほどのその無念、怨念、殺意など様々な感情が何らかのきっかけで
様々な餡子と混ぜ合わさって一つとなり、ついに化け物の姿となったのだった。
閻魔様から引き取りを拒否されたゆっくりは安らぎを得る事はなく、絶え間なく続く痛みにもがき苦しみ
死という救いを求めながらもただひたすらに進み続ける。
人間が自分たちから奪ったゆっくりぷれいすを破壊し、自分を殺した人間たちを自分たちと同じ目にあわせようと……
「ふっ……そうだったな」
男はひとりごこちつく。下から危険だ、逃げろという声が上がるが男には聞こえない。
「俺は忘れていた。」
槍を持ちなおす。
「お前達は饅頭だ。だが、生きてもいた。」
ゆっくりとドスに向かって構える。
「その事に気づいてやらなかったのは俺の罪だ。」
ドスの虚ろな眼窩がこちらを見る。
「その事について謝ろう。」
腰を落とす。
「だから今度はついて行ってやる!!」
ドスの口がまた光り輝く。
「共に地獄の閻魔の元へ!!!」
ドススパークが早かったか男の跳躍が早かったか。
塊の中心から閃光が煌めいたかと思うと、ゆっくりの死骸はまとまりを失い、ばらばらと崩れ落ちた。
だが、それを喜ぶ者はいない。篝火が燃え盛る中、男の妻である女性の慟哭の声だけが響いていた。
俺は……死んだのか……
気持ちいいな……
へへへ、柄にもない事をしちまったな……
それにしても…死ぬってこんなにやわらかいのか……
「……い…」
ああ、誰かの声が聞こえる。あれが地獄にいるって噂のヤマザナドゥ様か…
「…お…い…」
美人だといいな…へっ…なに考えてるんだか……
「居たぞ!吾作だ!」
ん?光が……
火傷だらけになりながらも男は奇跡的に生きていた。わずかに男の方が早かったのと大量の餡子が落下の衝撃を吸収したのだろう。
意識不明となっていた男は家に運ばれると、治療の甲斐か数ヵ月後には歩けるまでに回復した。枕元で村長から聞いた話によると、
恐らく奴らは廃棄場の中でドスまりさを核としてこの世への未練や怨念を吸い取り、大きくなっていたのだろう、という事だ。
男は回復すると髪をそり、僧侶となって各地を巡った。そして村では以後このような事が起こらないように
ゆっくりの死体を捨てる時はせめてあの世では幸せになるよう祈ってやるようになったという。
終
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以前腕試しで書いたものを大幅に修正しました。着想は悪魔城ドラキュラに出てくるレギオンです。
悪魔城ドラキュラに出てくるレギオンは「多くにして1なるもの」とされており、人の死体をボロボロ落として攻撃してくる
ドラキュラシリーズ屈指のトラウマ的存在です。
あまりにも死んでくるゆっくりが多いのでこの頃は軽くパニック状態に陥っていました。現在はなんとか持ち直しています。
やや疑問です。最初に書いた時はこいつらを火で燃やしてはいおしまいだったのがなんとなく書き直していくうちによくわからないものに
なってしまいました。最初怪談っぽいのに途中から…orz
全面的に同意します。特に赤ゆっくりは見るだけで潰したく(ry
これまでに書いた話
剣客みょん
合戦
ゆっくり冬将軍
最終更新:2022年05月19日 13:35