「「ゆっくりしていってね!」」
あるわりと晴れた日のこと、山道を歩いていると2匹のゆっくりに出会った。
1匹は黒髪と赤いリボンが特徴のゆっくりれいむで、もう一匹は金髪と黒い帽子が特徴的なゆっくりまりさ。
いわゆるオーソドックスコンビであるが、どちらも通常より大きく、不自然に下膨れていた。
「ゆゆっ! おにーさんはゆっくりできるひと?」
「れいむたちとゆっくりしていってね!」
ここら辺では珍しく、恐らく2匹とも胎生型、いわゆるにんっしんっで子どもを身に宿しているのだろう。
非常に食料の豊富な地域では1か月分くらいの餌を溜めてから2匹同時ににんっしんっすることもある。
が、この山では胎生型の出産すら稀なことであり、2匹同時にんっしんっなんてもってのほか。
「おにーさん、まりさたちにゆっくりできるおかしをちょうだい!」
「れいむたちといっしょにゆっくりしようね!」
つまり、この山の常識に反する子作りを行った2匹はこの山の出身のゆっくりではないということになる。
また、ゆっくりにしては珍しく、お菓子を求めるついでに「一緒にゆっくりしよう」と言っている。
どうやらこの2匹にはギブアンドテイクの観念があると言うことだ。
更に人間という大型の、しかも野生のゆっくりにとってわりと有害な動物にそれを持ちかけている。
以上の点から、彼女達は相当甘やかされて育ったが、ダブルにんっしんっが原因で捨てられたゆっくりなのだろう。
「おにーさん、おねがいだよ! まりさたちにゆっくりしたおかしをちょうだい!」
「れいむたちおなかすいたよ!」
その証拠に、周囲を注意深く見渡してみると数匹のゆっくりが息を潜めて私達のやり取りを見守っていた。
彼女らはこの山に住んでいる野生のゆっくりだと見て間違いないだろう。
恐らく、よそ者の2匹を捨石にして私がゆっくり出来る人間か否かを確かめているのだ。
「おにーさん、むししないでね! れいむおこるよ、ぷんぷん!」
「まりさたちのゆっくりしたあかちゃんみせてあげるから、ゆっくりしていってね!」
ゆっくりの中には下種な個体もおり、なまじ人間が安全だと分かるとそいつらの増徴を招く。
大抵は何の脅威にもならないが小さな子どもやお年寄りが何かの拍子に転んで怪我することがたまにある。
また、野生のゆっくりと人間が関わることで生じる問題と言うのは決して少なくない。
ここは責任を持ってゆっくり達に人間に関わるべきでないことを警告すべきだろう。
「ああ、悪い悪い。 ゆっくりしていってね!」
「「ゆっくりしていってね!」」
という訳で、適当に自分本位な大義名分をでっち上げた私は2匹の傍へ座り込み、「ゆっくりできるね!」と喜ぶ彼女らを押さえつける。
足でまりさを挟み込むと、れいむを抱き上げて彼女の背中に指をねじ込み、産道のある場所までじっくりと突き進んでいった。
「ゆ゛っ!? いぢゃい!いぢゃいよ! ゆっぐぢやべでね゛っ!」
「ゆゆっ! れいむ、どうしたの! おにーさん、やめてあげてね! いたがってるよ!」
2匹の抗議を無視してどんどん掘りすすでいくと、餡子とは違う感触を指に感じた。
一旦掘り進むのをやめて、2度3度その感触のもとを突くと、中からくぐもった声で「ゆぅ?」という返事が返ってくる。
どうやら、これがれいむの胎内の子どもらしい。
「やめ゛でね! あがぢゃんにいだいごどぢないでね!?」
「もうやだ! おうちかえる!?」
幸いにも子どもはれいむの胎内でしっかりと育っているらしい。
この2匹に餌を集める能力があったとは思い難いので、恐らく元飼い主がしばらくの間の食糧を渡していたのだろう。
それはさて置き、一層激しく抵抗する彼女達を抑える力を強めると、今度はあけた穴を拡げるべく、穴を穿り回す。
人も獣もいない、ゆっくりばかりの山道にぬちゃぬちゃと餡子をかき回す音がこだました。
「ゆ゛っ!? いぢゃい! ぢぬうううううう! ぢんぢゃううううううう!?」
「で、でいむーっ! おに゛ーざん、やべでよ! どほぢでごんなごどずるのーーーっ!?」
そうして、指が2本通る程度の大きさの穴が完成したところで、中にいる赤ちゃんの髪の毛を引っ張り出した。
金髪だった。どうやら彼女の胎内にいる子どもはまりさ種らしい。
それを確認した私は、髪の毛を外に出した状態でれいむとまりさを持ち替えると、彼女に対してもれいむと同じ処置を施した。
その間、れいむはずっと痛みに悶え苦しみ、脂汗や涎や涙を撒き散らしながら泣きじゃくっていた。
「ゆびぃ・・・いぢゃい・・・ぢぬぅ・・・・・・!?」
「どほぢで、ごんなごどずるのぉ・・・!?」
まりさの胎内の子どもがれいむ種だったことを確認すると、私は少し衰弱した2匹を背中合わせに地面に置いた。
それから、背中もしくは後頭部に空いた穴からはみ出している子どもの髪の毛をひっぱり、解けないようにしっかりと結ぶ。
以上の作業を済ませたところで私は胎生ゆっくりに出産を促すといわれる頭頂部付近のツボを刺激してやった。
「「ゆ゛っ・・・ゆっくりうばれりゅよっ!」」
効果テキメンにもほどがある。頭頂部を刺激された2匹はあっという間に産気づいた。
産気づいた2匹は痛みを忘れ、至福の笑みを浮かべていた。やはり、2週間も胎内にいた我が子と対面できることが嬉しいのだろう。
が、5分経っても、10分経っても赤ちゃんはいつまで経っても生まれてこない。
至福の笑みは不安に曇り、やがて言葉にならない恐怖に支配されて、2匹は泣き顔になってしまった。
「あがぢゃん! ゆっぐぢぢないでうばれでね!」
「はやぐうばれで、おがーぢゃんとぢゅりぢゅりぢようね!」
胎内の我が子に向かって必死に声援を送るが、やっぱり子どもが出てくる気配が無い。
死んでしまったのではないかという不安も去来するが、声をかけると中で動く気配がするので生きているのは間違いない。
耳を澄ませば小さく「ゆっ!」と赤ゆっくりが踏ん張る声が聞こえてくる。
しかし、20分経っても2匹の赤ちゃんは産まれてこなかった。
「あがぢゃん! ゆっぐぢがんばっでね゛ぇ!!」
「どほぢでうばれでごないのおおおおおおおおお!?」
2匹はそれでも必死になって我が子を励まし続けるが、30分ほど経った時、まりさの胎内のれいむの反応が無くなった。
残念ながら、30分もの長時間にわたる髪の毛の引っ張り合いで体力を消耗し、胎内で力尽きてしまったようだ。
「ば、ばりざのあ゛がぢゃんがあああああああああああああああああああああああああああ!!?」
ひときわ大きな、そしてあまりにも悲痛な叫び声が消した高くは無い山に響き渡る。
が、他のゆっくり達は人間はゆっくり出来ないことを確信した時点で逃げ出しており、誰もやって来ない。
そして、悲嘆にくれる彼女に更なる追い討ちがかけられた。
「いぢゃい! せなががいぢゃいよ!?」
「で、でいうのあがぢゃん!? ゆっぐぢがんばっでね!!」
胎内のれいむが死んだことで、れいむの胎内の赤まりさに対する抵抗が無くなった。
そうなれば、赤まりさは外に出る為に髪の毛で結ばれた赤れいむの死体を引っ張ることになる。
死産に嘆き悲しむ暇も無く、背中にあけられた穴を押し広げられる痛みが彼女を苦しめる。
「いぢゃい!? ぢぬぅ! ぢんぢゃうううううううううう!?」
指に本文の穴から子ゆっくりとさほど変わらない大きさの我が子が引きずり出される際の苦痛は想像を絶するものだろう。
その異常なまでの痛みにまりさは悶え苦しんで暴れ回るが、結果的にそれがまりさの死期を早めてしまった。
まりさの力と赤まりさの力が合わさったことで、赤れいむの亡骸はとうとうまりさの背中を引き裂いて太陽の下へと飛び出した。
「―――――――――――っ!!?」
「ゆ゛ゆ゛っ! ばりざぁ、どほぢだの! へんぢぢでね! ゆっぐぢへんぢぢでね!?」
もはや悲鳴にすらもならない音と餡子をもらしながら振り返ったまりさは大分形の崩れた我が子を視界に収めた。
そして、最後の最後まで涙を流しながら「もっど・・・ゆっぐぢ、ぢだがっだよ・・・」という断末魔を残して我が子の元へと旅立っていった。
小さな山にパートナーを失ったれいむの悲痛な叫び声が響き渡ったが、慰めてくれるものさえ1匹としていなかった。
「い゛・・・い゛ぢゃ、い゛よ゛ぉ・・・」
れいむの最期はあっけなかった。
背中の穴と下あごの産道を同時に開かれる苦痛に耐えかねて気を失い、2度と目を覚ますことはなかった。
そして、1時間以上もの時間をかけて産まれた髪の毛の先で姉妹の亡骸とつながった赤まりさは予想通りに虫の息。
「ゆ・・・ゆっくり、して・・・」
赤まりさはたった一言の短い産声も上げることなく、家族の下に旅立っていった。
‐‐‐あとがき‐‐‐
れいむと赤まりさがあっさりし過ぎかも?
しかし、同じようなことの繰り返しにしからないないしなぁ・・・
髪の毛って焼く、引っ張る、剃る以外の使い方もあって便利だわ
byゆっくりボールマン
最終更新:2022年04月16日 23:13