※既出ネタでごめんなさい








パァン、と乾いた音が響き、一匹の成体ゆっくりれいむの体が吹き飛んだ。
低空を飛んだ後ゴロゴロと体が転がっていき、勢いよく柵に叩きつけられる。
飛ばされたれいむは痛みを堪えて呻きながら起き上がると、ずりずりと這うように元の場所へと戻ろうとした。

そんな鈍い動きのれいむの真横に、バァン、と一つの光弾が勢いよく着弾。その速度は弓で飛ばした矢の如し。
自分の間近で炸裂した圧倒的な暴力にれいむはビクゥ、と跳ね上がると這う移動から即座に死力を尽くした跳躍移動へと移行した。
そうして飛ばされる前の場所へと舞い戻ったれいむは、再び当初の行動に戻り、目の前の物を口に含んで、はもはもとそれを食む。

れいむが食しているのは、雑草だった。とある庭に鬱蒼と生い茂った多量の雑草である。
れいむは苦くて不味いそれを涙と嗚咽を堪えて無理矢理口に押し込んでいきながら、顔はそのままチラリと視線を横に向けた。
その先に居るのは、二人の男。

二人の男は今、家の縁側でのんびりと酒を飲みながら、碁を嗜んでいる。片方は家の主で、もう片方はその友人だ。
今は家の主の方が長考しているようで、うーむ、と手を顎にあてて考え込んでいる。相手の男はその様をのんびりと酒を飲んで待っていた。
この二人こそが、今れいむに雑草を食べる事を強要している者達だった。いや、れいむだけではなく、れいむの家族にだ。

友人の男の方は人間ではなく妖怪だった。妖怪は人間を襲う者ではあるが、中には人間と仲の良い者もいる。
しかしながら、れいむにはその判別はつかない。どちらも恐ろしい人間と映っている。
その恐ろしい人間──妖怪の友人の方が、チラリと視線を庭にいるれいむに寄越した。交錯する視線。

れいむはしまった、と思い、直後ぞっとするようなドス黒い恐怖がせり上がって来て、れいむの全身を支配した。すぐさま視線を前に戻し、雑草喰いをしようとする。
だが、遅い。パァン、と再び乾いた音がすると同時にれいむは再度吹っ飛び、柵にまた叩きつけられた。
れいむが吹っ飛んだ原因は、妖怪の男が放った光弾だった。ノーモーションで放たれた高速の弾丸がれいむの頬を直撃し、れいむに激痛と恐怖を刻み込んだのだ。

相変わらず見事な技といい音だ。人間の方の男がそう言って、パチリと黒石を碁盤に置いた。
その後すぐさま妖怪の男の方は白石を置いた。人間の男が長考している間に打って来る手とそれの反撃手を既に頭の中で展開させており、予想通りの手が来たようだ。
人間と妖怪では寿命が違う。年季が違う。その事を再び痛感しながら人間の男はまた長考に入った。
その一連のやり取りを気に掛ける余裕はれいむには無かった。全身に走る痛みと全身を支配する恐怖を振り払いながら、必死で元の場所に戻ろうとしている。

だが妖怪の男が白石を置いて再び視線を庭に戻す前に辿り着く事は出来なかった。またもや合う視線。
直後、れいむの両脇に高速で弾丸が着弾した。先ほどの痛みと恐怖を呼び起こすそれにれいむは口元まで出かかった悲鳴を堪えた。
堪えて、涙を零しながら跳ねる。

再び元の場所に戻って、雑草喰いを再開する。
この雑草掃除をしているのはれいむだけでは無かった。ラインを割り振られたかのようにれいむの両隣には子ゆっくり達がそれぞれ配置されていた。
子れいむと子まりさ、合わせて五匹。れいむと合わせて計六匹が、この家の庭の草抜きに従事していた。
そのどれもが悲壮感に顔を歪ませており、ボロボロと砂糖水を地面に零している。

声をあげることは許されない。あの弾丸によって制裁を受ける。
手を休めることは許されない。暴力によってそれを理解させられる。
常に全力でなければならない。有無を言わさずに撃たれる。

それはこの仕事を始めた当初に嫌という程妖怪の男に教えられた。
あんな痛い思いはもう嫌だ。そう餡の芯まで叩き込まれた。
なんで、なんでこんな事をしなければならないのか。ゆっくり達はそんな思いで一杯だった。

だが、口答えをすれば痛めつけられる。決して殺されることなく、口を噤んで再び仕事を再開するまで痛めつけられる。
男はゆっくりにそんな苦しみを与えることを、片手間に、楽にやってのける。

そんなゆっくり出来ない思いに満たされたゆっくりとは対照的に、縁側の男たちは実にのんびりとしている。
人間の男がパチリと黒石を碁盤に置いた後、その手を膝に置くことなく、ある物を手にとってそれで何かを食した。
それは餡子だった。しかしただの餡子ではない。れいむの伴侶のまりさの餡子だった。

れいむが子供の頃からずっと一緒だった愛するまりさは今、人間の男の傍らに置かれている。
髪は全て一本も余すことなく抜かれ、頭頂部は丸くくりぬかれて中身の餡子を曝け出している。
底部は二度と動かせぬようにずたずたに破壊されており、雑音を発せぬように口は縫い付けてある。
帽子はとっくに本人の前で燃やして目は砂糖水で床を汚さないようにこれもまた縫い付けてあった。

人間の男は、そんな状態のまりさの頭にスプーンを突っ込んで、グチャグチャとかき回した後一掬いして口に運んだ。
まりさはまだ生きている。生きている証を、動きを表すことは無いが、まだ意識は残っている。
意識を残しつつ痛みを与えることによって、ゆっくりの餡子は美味になることを、この男達はよく知っていた。

妖怪の男はまたもやノータイムで白石を碁盤に置く。人間の男はまたそれに苦笑しつつ、長考に入った。
手に持っていたスプーンをまりさの餡子に突き立つように刺し、手を顎に当てる。スプーンを突き刺した際まりさの体がわずかように妖怪の男には見えた。

本当、丁度良かった。
人間の男が視線を碁盤に注いだまま、嬉しそうにそう言った。ゆっくり一家の事を言っているのだと、友人の男にはすぐに分かった。
今日は酒を飲みながら碁を打つ約束をしていた二人は、一緒にこの家に来た。家の主は酒を買いに行った際に妖怪の男とばったり会って共に来たのだ。

その道すがら、人間の男は庭の雑草が生えすぎで、そろそろ草抜きをしなくてはと愚痴を零していた。
そうして談笑しながら家に着くと、そこには柵を乗り越えて男の家に侵入しようとしていたゆっくりの一家がいたのだった。
野生のゆっくり一家だった。魔法の森に住んでいた一家は、子供が増えて家が手狭になってきたので新居を探していた。

そうして目的地も無く彷徨った末に、ちょうどよく人里の離れにあった男の家を見つけたのだった。
その家の持ち主も、?ちょうどよく?その一家を見つけた。いや、人間の男の方は最初鬱陶しいといった感情を持ったのだが、妖怪の男の方がそれを見て「丁度良いじゃないか」と言ったのだ。

妖怪の男は人間の男に説明する前に、ゆっくり一家を自身の弾幕で痛めつけた。
決して殺すことなく、傷を負って作業効率が落ちる事無きように。
一家を痛めつけた男は親まりさを人間の男に手渡して、残りの一家を庭に放り込んだ。

そして二人揃って玄関から家に入り、縁側に出たところで、男二人を見て威嚇した親れいむとその子供を再び弾幕で痛めつけた。
妖怪の男は痛めつけながら、庭の雑草を食べること。口答えは一切許さぬこと。無駄口、手抜きは絶対許さぬこと。
碁が終えるまでに終わらせることを言いつけて、親まりさに食べるための処置を施した。

他の家族が泣き喚き、許しを乞う目の前で、帽子を燃やして髪を抜き、目と口を縫い付けて底部をボロボロに頭をくりぬいた。
それを人間の男に手渡した後、仕事を始めていない一家を弾幕で叩きのめした。
そうして親れいむがようやく理解し、子ゆっくり達に草を食べるように命じて仕事を始めた。
しばらくは子ゆっくり達は嫌だと言ったり泣いて仕事を放棄したが、その度に男の弾丸がその小さな体を殺すことなく猛威を振るった。
そうする事によって子ゆっくり達もようやく理解して、黙々と雑草を食べる仕事についた。
その後はたまに手を抜いたり手を休めた者を男が片手間に撃つ程度だった。

そうしてゆっくり一家の仕事が安定したのが一時間前。ゆっくり一家はその間ずっと草を食べていた。
そして、そろそろ限界が訪れようとしていた。いや、とっくに限界は超えていた。限界を超えた更なる限界に到達しようとしていたのだった。

子まりさがうぷっ、と草を食べる手を詰まらせた。子ゆっくりの小さい体では、この大量の草を食べることは無理だ。
それにも関わらず、恐怖に怯えて無理矢理詰め込んだ。既に子まりさの体はパンパンに膨らんでおり、いつ皮が破けぬとも分からない。
それでもまだ詰め込むものだから、子まりさはつい吐きそうになった。だが吐いたらまた痛い。
そう思い吐くのを堪えた子まりさだったが、我慢できるわけもなく、エレエレと餡子を庭に吐いてしまった。

エレエレ、と口に出して吐いたことにより、家族も妖怪の男もそれに気付いた。
一通り餡子を吐いた後、子まりさは青ざめた。ガタガタと震え、大粒の涙が目から溢れる。
その子まりさの前に、バッと親れいむが出てきた。男との間に割ってはいるように。

親れいむは額を地面にこすりつけ、子まりさと同じように大粒の涙を零しながら、男に懇願した。
許してくれ。子供には酷いことをしないでくれ。餡子は自分が片付けるから、どうか許して欲しい。
そう言った旨の嘆願を、濁った涙声で喚き散らした。

妖怪の男はそれを聞き、大声を出した事と手を休めた事の二つの罰のため、二発の光弾を撃った。
一発目で土下座のように頭を下げたれいむの体が吹き飛び、二発目が空中にいたれいむの体を更にぶっ飛ばした。
先ほどの比ではない勢いで親れいむが柵に叩きつけられる。地面に落ちたれいむは呻き声をあげて痙攣しだしたが、手加減したのでじきに回復するだろう。

親れいむが痛めつけられた様を目の当たりにした子まりさは自制心と理性などどこかへ吹き飛んでいた。
嫌だ。
その意思を親れいむ以上に濁った声を舌ったらずな口調で喚く。
その直後に子まりさは顔面に弾丸を受けて宙を飛んだ。

体の弱い子ゆっくりに合わせて手加減されたそれは、人間で言うならば思いっきり内臓が潰れかねない勢いで腹を殴られたに等しい。
人間なら内臓が潰れれば酷い負傷だが、衝撃に強い球形で皮も弾力に富み、内臓の無いゆっくりにとっては痛いだけでケガではない。
皮も破れていないし、どこも損壊していない。痛みを堪えれば充分に仕事は可能だ。

親れいむの傍らに落ちた子まりさ。その落ちる音で痙攣から目覚めた親れいむは、酷く怯えた様子で子まりさを咥えると元の仕事位置に戻った。
子まりさに草を食べるように言いつけて、自分は子まりさが吐いた餡を口に詰め込む。
他の子ゆっくり達はそんな様子をガタガタ涙目で見ていたが、恐怖から口は止めてはいなかったので罰は無かった。

碁が終わるまでに仕事を終わらせなければ、全員殺す。
妖怪の男が言ったその言葉を思い返し、親れいむは草と一緒に餡子を体に詰め込んだ。甘い餡子と一緒ならば苦い草も食べられると考えたのだ。

妖怪の男は一家が再び黙って仕事を再開したのを確認すると視線を碁盤に戻した。
戻した時に、人間の男が再び餡子を食していたスプーンをまりさの体内に突き立て、パチリを黒石を置いた。
局面は既にヨセ。庭の雑草掃除はまだ半分も終わっていなかった。






おわり


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あとがきのようなもの

どうやら前回の後書きが迂遠かつ紛らわしく、しかもネタのような文書のために皆様に勘違いを起こさせてしまったようなので、
自分も一度やりたかったネタと共にもう一度言い直しておきます

私はこのSSをもってゆっくり虐待SSを書くのをやめようと思います
理由としましては、リアルの事情、ネタ切れ、それに前ほど面白いと感じなくなってしまったことがあります

こういうSS発表と言うのは、つまるところ「ちょっとこれ書いてみたんだけどさ、これ面白くね? 面白くね?」といった感じであると思っています
それに他の人たちに「面白いな」「やるじゃん」「こうすればもっと面白くならね?」等といった反応をもらって愉しむ
他の人たちは分かりませんが、少なくとも私はそういう愉しみ方でした

なんでわざわざ宣言をするのかと言うと、こうして言わないと自制が効かずにリアルをホッポリ出してまた再開しかねないからです
言いふらしておけばある程度の抑制が効くと思ったのです

それでも読む側、見る側としては今後もゆっくり虐待界隈を覗こうと思っています
皆様が愉しんでいる様を見て、私も愉しんでいきます

それでは皆様方、これまで私のような素人の拙作を見て頂きまして、その上感想まで頂いて、本当に有難うございました




これまでに書いたもの

ゆっくり合戦
ゆッカー
ゆっくり求聞史紀
ゆっくり腹話術(前)
ゆっくり腹話術(後)
ゆっくりの飼い方 私の場合
虐待お兄さんVSゆっくりんピース
普通に虐待
普通に虐待2〜以下無限ループ〜
二つの計画
ある復讐の結末(前)
ある復讐の結末(中)
ある復讐の結末(後-1)
ある復讐の結末(後-2)
ある復讐の結末(後-3)
ゆっくりに育てられた子
ゆっくりに心囚われた男
晒し首
チャリンコ
コシアンルーレット前編
コシアンルーレット後編
いろいろと小ネタ ごった煮
庇護
庇護─選択の結果─
不幸なゆっくりまりさ
終わらないはねゆーん 前編
終わらないはねゆーん 中編
終わらないはねゆーん 後編
おデブゆっくりのダイエット計画
ノーマルに虐待
大家族とゆっくりプレイス
都会派ありすの憂鬱
都会派ありす、の飼い主の暴走
都会派ありすの溜息
都会派ありすの消失
まりさの浮気物!
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ありふれた喜劇と惨劇
あるクリスマスの出来事とオマケ
踏みにじられたシアワセ
都会派ありすの驚愕
都会派ありす トゥルーエンド
都会派ありす ノーマルエンド
大蛇
それでも
いつもより長い冬
おかーさんと一緒
魔理沙とドスまりさと弾幕ごっこ


byキノコ馬

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最終更新:2022年04月16日 23:49