俺とゆうかとゆかりんと
●俺設定が暴れ馬
●現代設定
●懲りずに虐待成分薄め
●人間も酷い目に遭います
「おーい、そろそろいくぞー」
「ゆ!ゆっかり待ちなさい!」
「ゆー、お花さんに水をあげてるからもう少しだけ待ってね!」
朝七時、そろそろ仕事に向かう俺は二人…いや二匹?のパートナーを急かす。
一匹は、ゆっくりゆかりん。この前家に向かう途中で空から降ってきたのを偶然俺がキャッチした。
以来、妙に懐かれて外出先でことごとくコイツに遭遇するようになり、気付けば家で飼っていた。な、何を言ってるのか(ry
もう一匹はゆっくりゆうか。こいつも帰り道で偶然発見したやつだ。
ゆかりと違うのは、最初はかなり嫌われていたことぐらいか。なんせ初めて会ったときは石ぶつけられたしなぁ。
ま、結局コイツともなんだかんだで和解して、今は俺の部屋の植物の世話をしてもらっている。俺がやるとたまに水をやり忘れるからな。
まぁそんな感じで、俺とゆかりとゆうかは時々喧嘩をしつつも、仲良く生活しているわけだ。
おまけにこの二匹、もともと知能は高い固体ではあるが、それより更に賢く、教えたことはすぐで覚えるので、今では字も書けるようになっていた。
で、最近はこの二匹に仕事の方も手伝ってもらったりしている。まぁ仕事といってもたいしたことじゃないんだが…
「って、もうそろそろ出ないとマジでやべぇな。おい!!あんまりゆっくりしてると置いてくぞー!!」
時計を見ながら二匹に催促。すると二匹がぴょこぴょこ跳ねながら俺の足元までやってきた。
「待たせたわね。さぁ、ゆっくり行きましょう」
「いや、ゆっくり行ったら間に合わねぇから走るぞ」
「ゆ…じゃあ、お兄さんの肩に乗せてってね」
「分かってるって。ほら行くぞ」
足元のゆうかを肩に乗せ、俺は駅に向かって全速力で駆け出した。
「ゆー!!私を置いてくなー!!ゆっかり待てぇー!!」
と、ゆかりんの声が後ろからしたかと思うと、すぐに頭にずしっとした重みが。
「おい、どうせスキマ移動するなら先に駅に行ってりゃ良いじゃねぇか」
「いいからきびきび走りなさい!」
その後も俺とゆかりんは口喧嘩を交わしながら駅まで走っていった。
「ふぅ…なんとか間に合ったな」
電車に乗り込み、一息吐いた拍子に、俺の頭からゆかりんが転げ落ちた。
「ゆぴっ!」
奇妙な声を発して地面に落ちるゆかりん。
「あ、悪い悪い。大丈夫か?」
「大丈夫じゃないわよ!気をつけなさい!」
ぷくーっと膨れて怒るゆかりん。そんなゆかりんを見て俺が何か言う前に、ゆうかが口を開いた。
「図々しくお兄さんの頭の上に乗ってる方が悪いんでしょ?おお、無様無様(笑)」
…因みに、何故かゆかりんとゆうかの仲は最悪だ。
「ゆ!言ったわねゆうか!そこからゆっかり降りてきなさい!今日こそ決着を着けるわよ!」
「ふん…ゆうかに勝てると思ったの?なんなの?馬鹿なの?」
俺の肩から飛び降りようとするゆうかの髪を掴んで阻止。こんなとこで暴れられたらお咎めを食らうのは俺だからな。
「ゆぎっ!?痛い痛い!お兄さんゆっくり離してね!」
泣きそうになってるゆうかを肩に乗せなおすと、足元で「ざまぁwww」とか言ってるゆかりんも引っ掴んで反対方向の肩に乗せる。
こいつらは成体にしてはちっこいのでなんとか肩に乗せることができるが、普通の成体ゆっくりだと無理だろうな。重いしでかいし。
「次喧嘩したら当分の間飯は残飯もしくはゆっくりフード(からし生姜味噌味)限定にするからな」
「ゆ゛…ゆっくり理解したよ…」
「ゆっかり理解したよ…もうゆうかと喧嘩はしないよ……」
物凄い嫌そうな顔をする二匹。まぁ残飯はともかくゆっくりフードの方は凄まじい反応だったからなぁ…。
しつけにはこのゆっくりフードを使っているから、あれの味は二匹とも文字通り身に染みているのだろう。
というかあのメーカーは何が目的であんなもん出したんだ?二匹があんまりにも騒ぐから俺も試しに食ってみたが、人間でも相当キツイぞあの味は。
もしやゆっくりフーズの社員に虐待派の人間が紛れ込んでいるんだろうか。でもああいう会社はゆっくりんピースが入社時の面接をしてたような…
「お兄さん、いつもの駅だけど降りないの?」
しょうもないことを考えていたらいつの間にか目的の駅に到着していたようだ。ゆうかの声で我に返った俺は、慌てて電車から降りた。
「ありがと。助かったよゆうか」
そう言って撫でてやると、ゆうかはちょっと恥ずかしそうに顔を背けた。
「ゆ!ゆうかばっかりずるいわ!私も撫でなさいよ!」
その様子を見てなにやら言い出したゆかりん。
「あ?てめーは何もしてないだろ。そんな図々しいこと言う奴にはでこぴんをプレゼントだ」
「ゆぎゅっ!!どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉ!?」
でこぴんされて号泣するゆかりん。泣くな気色悪い。
「ゆかりんもなでなでじでほじいだけなのに゛ぃぃぃぃぃぃ!!」
ショックのあまり普通のゆっくりみたいな話し方になってるゆかりんを鞄に詰め込み、俺は職場へと向かった。
「おはざーっす」
「おうおはよう。あれ?今日はゆかりん連れてねぇの?」
「あー、今日はちょっと騒いだのでこっちに詰め込んできました」
そう言って鞄を渡す俺。今かばんを受け取った人は俺の上司の鬼意さんで、最近強烈な臭いの屁をこくという妙なれいむのせいで冷蔵庫を買い換える羽目になったらしい。
「おー、今日も可愛いねぇゆかりんはー。元気?」
因みに、この人はゆかりん種をやたらと気に入っている。ぶっちゃけゆかりんを職場に連れてくる理由は仕事の手伝いよりもこの上司に頼まれたから、という方が大きい。
「ゆ!気安く触らないで!私に触っていいのはお兄さんだけなんだからね!」
…そして、鬼意さんは毎朝うちのゆかりんに触ろうとして振られている。この流れは最早毎朝の恒例行事となりつつある。
「今日も振られちゃったかー。んじゃ返す。それとこれ、今日の仕事だけど?」
ゆかりんごと鞄を渡すついでに、先輩は今日の仕事内容が書かれた紙を俺に渡した。
「えーっと?…うげ、ドスの始末まで入ってるじゃないスか。後輩にやらせるモンじゃないでしょこれ」
「なぁーにが後輩だ馬鹿。お前もう入社して何年目だ?俺が入ったときから居るから、少なくとも四年はいるよな?」
「なんのことやら…。とりあえず、ドスはそっちでやってくださいよ。俺とゆうかには荷が重いです」
「駄目駄目。こっちも最近人手不足でなぁ。ま、お前らゴールデンコンビなら楽な仕事だろ?万が一怪我したら見舞いにくらいは行ってやるから」
頑張れよ、と俺の肩を叩くと鬼意さんは何処かへ行ってしまった。
「要するに面倒ごとを押し付けられたの?お兄さん」
「ゆうかは賢いな。つまるところそういうことだよ…ふぅ」
溜息を吐きながらゆうかを撫でると、俺は仕事の準備をするために更衣室に向かった。
「あれ、そういえばゆかりんどこいった?」
「がばんがらだじでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「今日の敵は南の森の群れと、同じ森の中にいる別の群れのドスだ。南の群れは最近ドスが熊に襲われて、統制が失われているらしい。
その森の近くにある村に被害が出ているから、なるべく早急に処理してくれとのこと。ドスの方は詳細が来てない。若いドス、としか分かっていない…どうも嫌な予感がしやがる」
目的地に向かう為に鬼意さんに借りてきた車の中、俺は全身をどこぞの傭兵のような装備で固め、ゆうかとゆかりんも馬鹿でかい軍事用ゴーグルを装着している。まぁ俺のマシンガンは改造してあるとはいえモデルガンだが。
何故俺達がこんな格好をしているかというと、それは俺達が加工所の裏組織「ゆっくり駆除部隊」、通称「ゆイーパー」の一員だからだ。
もちろん、最近では愛で過激派やらゆっくりんピースやらが煩いため表向きは普通の加工所の所員として登録されてはいるが。
「ゆぅ…もしかして、ドスの方の情報は過激派の罠じゃないのかしら?」
ゆかりんが渡された資料を見ながら不安そうに言った。
「かもしれん。というか十中八九そうだろ。かといって依頼は依頼。こちとらこれで飯食ってる訳だしな。まー死なない程度に頑張るべ」
そう言って資料を放り出した資料をうまいことキャッチして、ゆうかは溜息混じりに言った。
「ゆふぅ…ドスにせよ過激派にせよ、皆が無事で帰れればそれで良いんだけど」
目的地に到着して俺は依頼主の元へ挨拶に向かった。ゆうかとゆかりんは車で待機。
「おいおい、ひっでぇなこりゃ…」
その村は酷い有様だった。
畑は食い荒らされ、目に付く限りでもほとんどの家が窓を割られている。
「おぉ…ゆイーパーの方ですかな?」
「えぇ、そうです…あなたが、依頼主の?」
村に入った俺達を出迎えたのは、かなりやつれた老人…に見える、男性だった。聞けば彼が村長らしい。
察するに村人からゆっくりに対する苦情やら対策やらをいろいろ言われたりなんだりでストレスがマッハなんだろう。
「いやいや酷いものですよ…。数週間前にあの群れのドスが熊に襲われて死んでからは奴らやりたい放題で…!」
そう言って近くにあったゆっくりの死骸(おそらくおうち宣言をして殺された奴だろう)を何度も踏みつける村長。これはストレスがマッハなんてレベルじゃなさそうだ。
「そうですか…大変でしたね。ですが私達が来たからにはもう大丈夫です。必ずや奴らを殲滅して見せましょう」
「私…「達」?他にもお仲間が居るのですか?」
言ってから俺はしまった、と思った。ここで万が一紹介して欲しいなんて言われたら困る。
ここの村長は様子を見る限りではゆっくりとあらばそれがゲスだろうとそうでなかろうと殺すだろう。そうなるとあの二匹も危ない。
「え、えぇまぁ!今彼らにはこの周辺の地形を調べてもらっています!なのでご挨拶が出来ず申し訳ないのですが…」
なんとか誤魔化そうとする俺。ちょっと苦しいか?普通地形とか先に調べておくもんだしな。
「そうですか…なんにせよ、一秒でも早く奴らを殲滅してください…」
しかし村長は俺にそれだけ伝えると、すぐに何処かへ行ってしまった。精神的にも肉体的にも相当キてるねあれは。
「ただいまーっと」
俺がトラックに帰ってくると、ゆうかとゆかりんが喧嘩の真っ最中だった。床には暴れていて取れたのだろう、あのゴーグルが落ちていた。
「ゆっがぁぁぁぁぁ!いっつもいっつもゆうかばっかり!たまには私も褒められたいのよ!!」
「だったら褒められるようなことすればいいだけでしょ?そんなことも分からないの?何なの?馬鹿なの?死ぬの?」
「ゆぎぃぃぃぃぃぃぃ!!」
車の中を暴れ回りながらゆうかとゆかりんが何やら口論しているようだ。うるさすぎて何言ってるのかは分からんが。
「おいお前らぁ!!喧嘩してねーで仕事だ仕事!とっとと準備しろぉ!!」
車の戸をガンガン叩きながら叫ぶ。すると二人は大慌てでゴーグルを装着すると、車から降りて整列した。
「ではこれより、ゆっくりの群れを殲滅に向かう!手加減、情け一切無用!子供だろうが生まれてなかろうが関係なくぶち殺せ!以上!解散!」
「ゆ、それじゃゆっかり行ってくるわね!」
「…それじゃ、お兄さんも気をつけて」
そう言うと、ゆかりんとゆうかはそれぞれが別々の場所から森に入った。
俺も二匹が入ったのとは別の場所から群れを目指す。これは三方向から攻めてゆっくりを逃がさないようにするためだ。
『こちらY-1。ポイントに到着。そっちは?』
『こちらゆかr…Y-2。こっちも今到着したわ』
『Y-3。とっくに』
全員が指定のポジションに着いた。いよいよ「仕事」開始だ。
『よし、全員突撃!』
その言葉と同時に、俺は群れの広場へ飛び出す。着地と同時に
「ゆっくりしていってね!!!」
と叫ぶ。これで数秒ではあるがゆっくり達の動きが止まる。その隙に一番近いゆっくりを踏み潰し、銃の安全装置を外す。
「「「「ゆ、ゆっくりしていってn」」」
全員が言い終わる前にゆうかが飛び出し、近くに居た子ゆっくりに噛み付き、他のゆっくりが居る場所へ投げる。
「どぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「いぢゃいよぉぉぉぉぉぉ!!みゃみゃぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!」
突然のことに戸惑いながら逃げ惑うゆっくり。しかし俺達は止まらず、着実にゆっくり達の数を減らしていく。
「お兄さん。巣の中はゆうかに任せて」
言うだけ言って巣に駆け込んでいくゆうか。
「はいはいっと…あれ?ゆかりん?」
ゆかりんの姿が見えないと思うと、広場から少し離れた所で叫び声が上がった。
『お兄さん集中しなさい!逃げてくる量が増えてるわよ!』
「あ、あぁすまん…」
どうやら何処かで逃げたゆっくり達を狩ってくれているらしい。取りこぼしはゆかりんに任せて良さそうだ。
「っと、そんなこと言ってる場合じゃないな…」
俺は子ゆっくりを口に入れて逃げようとしたれいむへ向かってフルオートで弾丸…と言ってもBB弾だが。を撃ちこむ。
「ゆぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ!」
みるみるうちに穴だらけになっていく親れいむ。そしてトリガーを引いたまま他のゆっくりに照準を向ける。
「ゆぎゃぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!!」
「やめちぇにぇ!こっちむかにゃいでにぇ!!」
「まりさじゃなくてれいむをうってね!」
「どぼじでぞんなごどいうのぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「いだいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!だずげでぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ありちゅのおべべがぁぁぁぁっぁぁぁ!!みゃみゃどごぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
そのまま自分を中心に円を描くように照準をずらしていく。
「そのままそのままー…って良いところで弾切れかよ」
せっかく餡子サークルを作ろうと思っていたのに、良いところで途切れてしまった。
「あー、これあれみたいだな。ほら、視力検査で使うやつ」
『ランドルト管?』
「多分それ。よく知ってるなゆうか」
『テレビでやってt『ゆぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』…っるさい!』
突然の大声に、俺は思わず顔を顰めた。その直後にぐちゃ、という音が聞こえた。叫んだゆっくりをゆうかが潰した音だろう。
「ゆうか、そっちはどうだ?」
『思ったより数が多い…ちょっと厳しいかも』
「だ、そうだ。ゆかりん、行けそうか?」
『逃げてくるゆっくりも減ったし、あとはトラップだけで大丈夫でしょう。すぐにそっちに行くわ』
会話しながら、俺は逃げようとするゆっくりを踏み潰しながら銃のマガジンを付け替える。
「広場のゆっくりはもうすぐ殲滅完了だ。そしたらアレ使うからすぐに巣から出てこいよ。逃げ遅れたら死ぬぞ?」
『了解』
『ゆっかり了解したわ!』
「ほいほい、それじゃ仕上げに…っとと?」
マガジンの付け替えも終わり、再び円を描こうと思ったら、足に軽い衝撃が来た。
何事かと思って下を見ると、数匹のゆっくりが俺の足に体当たりをしていた。
「ゆぎぃぃぃぃぃぃ!!!!ゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「みんなをがえぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「おちびちゃんをころしたじじいはゆっぐりじねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
しばらく黙って様子を見ていたが、やがて一匹のれいむを掴んで俺の顔の高さまで持ち上げる。
「じねぇぇぇぇぇぇぇ!!じねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
お得意の「おそらをとんでるみたい!!」発言もせず、憎悪に染まった表情で俺に「死ね」と言い続けるれいむ。
「なぁ、どうしてお前達は殺されると思う?」
聞きながら、逃げようとするゆっくりに向かって空いている方の手で銃を撃つ。
「ぞんなごどじらないよっ!!れいむたちはただゆっぐりじでだだけだよっ!!」
「そうか。分からないか。お前達はな、ここでゆっくりしているだけならそれで良かったんだ」
掴み上げたれいむから視線は外さずに、足元で体当たりを繰り返す他のれいむ達を踏み潰し、逃げようとするゆっくりを撃ち殺す。
「もちろん、ドスが居た頃はここでゆっくりしているだけだったんだろう。だがそのドスを失ったお前達は、人間の領域に手を出しちまった。それがいけなかったのさ」
「にんげんさんがおやさいをひとりじめしてるのがわるいんでしょおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?でいぶだぢわるぐないよおぉぉぉぉぉぉ!!」
ここまで言っても駄目か。ゆっくり全部がうちのゆうかやゆかりんくらい賢ければ、俺達みたいな職業が生まれることも、こいつらが殺されることもなかったろうに。
そう思うと、少しだけだがこいつらが不憫に思えてくる。まぁ、殺すことに変わりはないけどね。
「ま、そんな理想を言っても仕方ないし、そろそろお別れだ」
そう言って銃口をれいむの口に捻じ込む。
「やふぇふぇへ!ほふぉふぁふぁふぃふぇふぇ!(やめてね!ころさないでね!)」
さっきまでの憎悪の表情から一変。涙をぼろぼろ溢しながら命乞いするれいむに、俺は微笑むと、
「断る。それじゃ、さようなら」
「ゆぎゃっ…」
れいむがなにか叫ぶより早く、銃口から放たれた弾がれいむの中枢餡を抉り、れいむの背中を突き破った。
「…地獄で会おうぜ、ベイビー」
『お兄さん。似合わない』
ちょっとかっこつけて言ってみたセリフは、ゆうかにばっちり聞かれていた。
「はい、それじゃあ広場のゆっくりは殲滅完了したので、そろそろアレを使いマース」
言いながら、始めの方にゆうかが入っていった巣穴に向かって歩き出す。
『了解。それじゃあゆかりん。よろしく』
『しかたないわねぇ…ほら、もっとこっち来なさい!』
そんなやり取りが聞こえた直後、後ろのほうでドサドサッと音がした。
「おう、おつかれさーん」
「ゆふぅ…ゆうか、いっぱいあいつら潰してきたよ」
「ゆ!私だっていっぱい潰したわ!」
「はーいはいはいはい喧嘩しない。アレ使うんだからもうちょい離れとけよー」
因みに、アレというのは対ゆっくり用手榴弾のことだ。
中は少量の爆薬と大量の唐辛子の粉末が詰め込まれていて、爆発すると中の粉末が広範囲に撒き散らされるというものである。
爆発力は大したことないので人に危険は無いかと言われればそうでもない。とにかく唐辛子の粉末は凄い量なので、それを吸い込めばそれはもう気管が駄目になりそうな勢いで咳き込むのだ。
下手すれば呼吸困難になる。ある意味対人としても使える物騒な代物である。まぁ花粉除けマスクとゴーグルでもいいから装着してれば問題ないんだけどね。
「というわけではい、どーん」
巣穴に手榴弾を二、三個放り込み、俺もすぐに離れる。
数秒後、さっきの巣穴と他の巣穴から真っ赤な煙が出てきたかと思うと、すぐに大絶叫が鳴り響いてきた。
「ゆあ゛あ゛あ゛あ!!おべべがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あづいよぉぉぉぉぉぉ!?みゃみゃぁぁぁ!?」
「いだいよ!!ぐるじいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「けむりさんこっちこないでね!こないで…こないでっていっでるでじょぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
…etc。俺達は最後の仕上げに巣穴にもう何個か手榴弾を放り込むと、巣穴をしっかりと埋め立ててその場を後にした。
「あい、おっつかれさーん…と言いたいところだけど、まだ最後に一つ仕事が残ってます」
車に戻った俺は、二人にオレンジジュースを渡しながら溜息を吐いた。これで何回目だろうか。
「ゆぅぅ…やっぱり行かなきゃ駄目なのかしら?」
「出来れば、なかったことにしたい…」
オレンジジュースを飲みながらそう言う二人の頭を撫でながら、俺はまた溜息を吐いた。
「俺も絶賛そうしたい気分だけど、残念ながらそういうわけにはいかないんだ…」
ドス関係の任務というだけでも憂鬱なのに、それが実は罠だと分かっていれば、尚更憂鬱になる。
大方、ゆっくりんピースか過激派の連中。もしくは両方がガセ情報を流してきたのだろう。それを分かっててこっちに回してくるのは上層部の嫌がらせだ。
どうも加工所のお偉いさん方は俺がゆっくりと組んで仕事をしているのが気に入らないらしい。まぁ分かっててこいつらと一緒に仕事してる俺の自業自得ではあるんだが。
「まぁなんにせよここでグダグダ言っててもはじまらねぇ。そろそろ行こうか」
休憩を終えた俺達は、重い腰を無理矢理持ち上げ任務という名の罠へと向かった。
「…で、案の定こうなる訳ね」
森の中を走りながら、俺は呟いた。
なんでこんな走り回っているかというと、ドスがいるという情報を元に向かった先には案の定俺の改造モデルガンなんてちゃちな物ではない、本物のマシンガンを構えた奴らが待っていたのだ。
「まー、幸いと言えば幸いなのか?どうも過激派だけだったみたいだし」
「くっちゃべってる暇があるなら走りなさい!奴らまだ追ってきてるわよ!」
俺の肩でゆかりんが叫ぶ。その更に後ろでは「愛で」なんて言葉とは程遠いお顔と身体をした屈強なお兄さん達がマシンガンの弾を撒き散らしながら追ってきている。
「というかなんで俺だけ走ってるの!?お前らずるくね!?」
なるべく木の陰に入るようにして走りながら俺は叫んだ。
「だからゆうかが囮になるって言ったのに…」
「気持ちはすっごく嬉しいけど彼らの狙いは俺であってゆうかが囮になっても保護されるだけで意味がないと思われますが!」
その証拠に今俺の顔のすぐ横を弾丸が横切った。奴ら俺の頭だけを狙ってやがるし。もしゆかりんかゆうかに当たったらどうするんだ。
「とにかく今はひたすら逃げなさい!こっちの武器なんてさっきの手榴弾ぐらいしかないんだから!!」
「そーなんですよねー!!ほぼ丸腰相手に酷いよねーあいつら!!ゆっくりが生きてりゃそれでいいのか!?」
そんなこと言ってる間も過激派連中との距離は確実に迫っていく。
「でぇーいチクショー!!これでも喰らいんす!!」
興奮のあまり妙な口調になりながら手榴弾を後ろへ放り投げる。小さな炸裂音の後にさっきのお兄さん達らしき叫び声が聞こえてきた。
「なんだこれ!!目が!目がぁぁぁぁぁ!!」
「いてぇ!あと口ん中が辛い!猛烈に辛い!!」
「ざまぁwwwあいつらマスクもゴーグルもしてなかったのかよwwざまぁwwww」
俺はニヤニヤしながらスピードを上げた。足止めは運良く成功。後は車に乗って逃げてしまえばこっちのものだ。
「よっしゃぁぁぁぁ見えてきたぁぁぁぁぁぁぁ!!」
もう少し、そう思った瞬間、
「っ!!お兄さん、止まって!」
突然のゆうかの大声で俺は思わず足を止めた。その直後、そのまま走っていれば俺の頭に直撃するコースの銃撃で近くの木に大きな穴が開いた。
「あっぶねぇ…助かったよゆうか…」
直ぐにその場から飛び退りながらゆうかに礼を言う。
「気にしないで。それより…これじゃ車に近づけないね…」
木が他より密集していた所に身を隠し、周りの様子を窺う。
「目を擦ってるのはさっきの奴らか…。それと狙撃手、か」
「この様子だとあの連中が追ってきてたのは私達を罠にはめるのが目的だったみたいね」
「いや、多分狙撃手は保険で、ここにくるまでに俺を殺っちゃうつもりだったんだろうな…」
その証拠に、俺を追っていた連中は随分とご立腹のようだ。なにやら叫んでいるが、結構離れているため何を言っているのかまでは聞き取れない。
「ゆかりん。狙撃手の場所分かるか?」
「えぇ。今やってるとこよ」
俺が言うより早く、ゆかりんは目を閉じて集中し始めていた。流石というかなんというか。ゆっくりがこんなことに慣れていくのもどうかと思うが。
まぁ、こんな荒事にばっかり巻き込んでる俺が言えた事ではない。
「見つけた…。悪い子には、お仕置きよっ」
ゆかりんがカッと目を見開くと、近くにあった大きな石が突然現れた裂け目に吸い込まれていった。ゆかりん種でも少ない固体しか使えない能力、スキマでさっきの石を
狙撃手の頭にぶつけたのだ。
「手ごたえは?」
「バッチリよ!」
自信たっぷりに言い切るゆかりんを撫でてやり、俺は隠れていた場所を飛び出した。
「居た!おいこっちだ!!居やがったぞ!!」
一人に見つかるが、気にせず突っ切る。
「うおおおおおおおおおお!!」
なるべく狙いが定めにくいように直線ではなくジグザグに走りながら、俺は車のキーを取り出す。こんなこともあろうかとボタン一つで鍵が開くタイプなのさ!
「ゆかりん!ゆうか連れて先に乗ってろ!!」
「了解!行くわよゆうか!」
「お兄さん、気をつけてね!!」
その言葉とともに、二匹が俺の肩から消える。
「ってうぉ!?銃撃激しくなってません!?」
俺の肩から二匹が消えたからか、後ろの連中からの攻撃の激しさが三割り増しになった。
「負けるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
車まであと五メートル。ゆうかが運転席のドアを開けて待っていた。
「ゆうか!受け取れぇぇぇぇぇぇ!!」
四メートル。俺は全力で車のキーを投げた。
三メートル。ゆうかがキーをキャッチして、車のエンジンを掛ける。
「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ここまできたら諦めてくれても良いようなものなのに、過激派の攻撃が止む気配は一切無い。
しかし、俺の肺も両足もそろそろ限界に近付いてきていた。車まで、あと二メートル。
「やらせねぇぞ!やらせねぇぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」
最後の気合を込めて両足に力を込め、車に駆け込んだ。
「た、助かった…!」
全力でアクセルを踏み込み、車を急発進させる。去り際にバックミラーを見ると過激派の連中が悔しそうに銃を地面に叩きつけていた。
「あー、つっかれたーー…」
帰り道の高速道路。サービスエリア内の食堂的な場所で俺はぐったりと項垂れていた。
「ゆぅ…今回は本当に危機一髪だったね」
ゆうかが心配そうに俺の近くにやってくる。ゆかりんは能力の使いすぎで相当消耗したらしく、車の中で眠っている。
「いやー、お前達も危なかったしなぁ。大丈夫か?弾当たってなかったか?」
ぐりぐり撫で繰り回してやると、ゆうかは気持ち良さそうに目を閉じた。
「大丈夫…当たりそうな弾は全部ゆかりんがスキマで守ってくれた」
「そっかー…なんだかんだで結構仲良いよなお前ら」
それから二十分ほど休憩して、俺達はサービスエリアを出た。
で、鬼意さんへの報告と嫌味と弾痕まみれになった車の返却を済ませて俺達は帰ってきたわけだが。
「質問です。何故居間の窓ガラスが割れているでしょう?」
「高さ的にゆっくりが侵入したみたいね」
「ゆかりん君正解。そして何故家の中からゆっくりの声が聞こえてくるのでしょう?」
「…中で侵入したゆっくりたちが騒いでる」
「ゆうか君正解。それでは俺達が取るべき行動は?」
俺たち三人は顔を見合わせると、無言で頷いた。
そして、鞄から予備の唐辛子手榴弾を取り出すと、俺達は家の中に踏み込んだ。
あとがき
睡魔と大乱闘スマッシュゆラザーズ。
こんな組織があれば面白いなーとか思って書いてしまいました。
しかも主人公がゆっくり二匹に好かれてるとかもうこれ人によってはストレスがマッハですよ村長さんですよ。
更に言えば全然虐待してないよ!
次回こそはもっとしっかりした虐待を…書けるといいなぁ…
これまでに書いた作品
●~プロローグ~
●ゆっくりハッキング
●俺のちぇんに手を出すとは良い度胸だ改
●耳が聞こえない僕とゆっくり
●俺の家にはこんなれいむが居やがりました
最終更新:2022年04月17日 01:13