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生徒会SS



『埴井葦菜の事実』



 「んっ……やだ、すっごくおっきぃ…………こんなに立派だなんて……」
 あたし──────埴井葦菜(はにい・あしな)は両腕を腰に当てると、仁王立ちしながら眼差しを上げた。
 「ここが噂の希望崎学園ね!」
 見上げた先には、大きく立派な威容の建築物──────希望崎学園の校舎があった。
 勿論、その校舎を内に含む敷地全体の広さは言うまでもない。
 腰まで伸びた艶やかな長髪をばさり! と掻き上げながら宣言する。
 「うん! このあたしが通う学校として、及第点にしておいてあげるわ」
 何でも一番が好きなあたしに相応しいのは、やっぱり一番大きな学校。それに生徒数が多ければ多いほど、そこで一番に目立つ価値があるというもの。
 「でも、ところどころ壊れてるのはちょっとマイナス点ね。なんなのかしら、一体……?」
 建物自体は鉄筋コンクリートの頑丈そうな造りなのに、どうした事か至る所に崩落の跡が見られた。
 後で考えてみれば、それも当然──────それは戦闘と破壊の爪痕だった。
 魔人同士の争いが日常茶飯事であるこの学園において、学び舎が戦場へと変じる事に何の不思議もない。
 ただ、その時のあたしはそんな事に思いも寄らなかった。
 「それにしても、なんか人気がないわね……?」
 平日の午後、放課後にはまだ早い時間帯。仮に何らかの事情──────例えば学力考査試験期間のような、何か特別の理由で午前中に授業が終わっているのだとしても、人っ子一人いないというのはいかにもおかしい気がする。
 「修学旅行……とか?」
 自答を口にしてみるものの、それも何か違う気がする。一学年丸々いないのは説明がつくとしても、まさか全学年で揃って修学旅行はないだろう。
 「もう! せっかくこのあたしが見学に来てあげたっていうのに!」
 憤慨しながらどうせなら授業風景や部活動の光景といったような生の学園生活を見たかったのに。
 「まっ、いないのは仕方ないけどこのあたしに無駄足踏ませるなんて、覚えてなさいよね!」
 諦めて出直そうと、踵を返したところで──────。
 「きゃっ!?」
 とすんっ、と柔らかい身体がぶつかると、あたしは無事だったものの、その子は尻餅をついた。
 「ちょっとあんた! 何処に目をつけてんのよ!」
 不機嫌になっていたあたしの鋭い罵声に、自罰感情が染み付いているのか、慌てて立ち上がると反射的に頭を下げた。
 「ご、ごめんなさいっ……」
 未だ初々しい新芽のような柔らかな、あどけなさを残した声。
 気が弱そうな眼差しに、後ろ髪を高い位置で緩く結わえた可愛らしいポニーテール。
 歳は少し下だろうか。背もあたしよりも少し低く、少し大きめのパーカーにショートパンツという服装だった。
 いわゆる保護欲をそそりそうなタイプ、というやつだ。
 くっ、ちょっとかわいいじゃないの……。ま、まぁあたし程じゃないけどねっ! それに、そもそも同性に興味はないしっ!
 「…………どうか、しました?」
 謝罪に対して黙っていたので、少し不安になったのか心配そうに尋ねてくる。
 「べ、別にどうもしないわよ! …………それより…………その、大丈夫?」
 慌てて言い繕ったせいでうまく舌が回らず、つっけんどんな物言いになってしまった。
 「あ、はい…………大丈夫です、ありがとうございます」
 それでもあたしの言葉から少し棘が消えたのが分かったのか、今にも潤みそうだった瞳が明るくなる。なんて単純な子。
 「ならいいけど…………って、別に心配したわけじゃないんだからね! 怪我でもされたら面倒ってだけで! そこのところ、勘違いしないようにっ!」
 びしっ! と人差し指を突き付けて威圧する。
 「あはは…………分かりました」
 曖昧な、まさしく日本人そのもの、という愛想笑いを浮かべてその子は頷いた。
 むぅ、本当に分かってんのかな?
 首を傾げたくなるものの、あたし自身あまり突っ込みたくないのでこの話題はここまでにしておく。
 「それより、こんなところで何してるの?」
 話を変えたあたしに応じて、答えが返る。
 「えっと…………一度、この学園を見学しておこうかな、って……」
 「なーんだ、じゃああたしと一緒じゃない。こっちも見学のつもりで来たのよ」
 ここの生徒にしては幼すぎると思っていたけど、それなら納得できる。それにしたって、まだ早すぎる気もするけど。
 「はい、良かったです。同じ考えの人がいて」
 仲間が居た事に安心したように、にっこりと微笑んだ。
 ずっきゅーんっ!
 「ちょ、ちょっとその顔はやめなさい!」
 「えっ?」
 目覚めちゃったらどうするのよ、まったくもう……!
 なんとなく危険な匂いを感じて、慌てて顔を背けた。
 「と、とにかくっ! あたしはもう少しその辺見て回ってから帰るから! じゃあね!」
 「えっ、あ、あのっ……」
 誤魔化すように早口でまくし立てると、お互い名乗りもせずに別れた。
 まぁ、学年も違うだろうしもう会うことはないだろう。
 「うーん、ポニーテールか…………ちょっといいかもね」
 早足で歩きながら、くるくる、と指先で髪を弄る。
 ストレートロングの髪型も最近少し飽きてきたところだったし、試してみてもいいかもしれない。
 うん、髪の量もあるんだから結構目立ちそうだし!
 一つ収穫を得て、あたしは意気揚々と気勢を上げた。



                               <了>

  • これ一君死んだらタイムパラドックス?葦菜も巻き込まれてるし……w
  • やったー、葦菜だー、やったー!
  • 上でも言われてるけど一君死んだらどうするんだろうwwww

『一一の真実』



 「うわぁ……やっぱり大きいなぁ……」
 僕──────一一(にのまえ・はじめ)は片手を翳すようにして感嘆の呟きと共に見上げた。
 「ここが希望崎学園かぁ…………」
 視線の先には、重々しくも力強い灰色の建築物──────希望崎学園の校舎があった。
 でも、そんな校舎も敷地全体の広さに比べれば霞んでしまいそうだ。
 いたずら好きな姉妹に面白半分に後ろで結ばれた髪を静かに揺らして、呟く。
 「うん、結構良さそうかな。意外に落ち着いた感じで」
 あまり目立つ事が好きじゃない僕にとって、大きな学校なら──────生徒の数が多ければ多いほど、ありがたい。
 「けど……どうしてところどころ壊れてるのかな。歴史がありそうでいいのはいいんだけど……」
 校舎自体は現代的で重厚な造りなのはいいとして、そこかしこにひび割れや欠落が見え隠れするのは何故だろう。
 後で考えてみれば、それも当然──────それは戦闘と破壊の爪痕だった。
 魔人同士の争いが日常茶飯事であるこの学園において、学び舎が戦場へ変わってしまう事に何の不思議もない。
 「それにしても、なんだか人気がないなぁ……」
 平日の午後、放課後にはまだ早い時間帯。仮に何らかの事情──────例えば創立記念日だとしても、部活動してる生徒の一人もいないというのはいかにもおかしい気がする。
 自問を繰り返そうとしたところで、ふと先客の姿に気付く。腰まで届く長髪とすらりとした長い脚が見事な、後ろ姿だけでもそれと分かる眩しいばかりの美少女だった。
 「もう! せっかくこのあたしが見学に来てあげたっていうのに!」
 なんだか憤慨したようにぷりぷりと怒声を上げているけど、ちょっと声を掛けてみようかな。
 その背中に近付こうと、歩みを進めたところで──────。
 「きゃっ!?」
 とすんっ、と柔らかい身体がぶつかると、その子は無事だったものの、僕は尻餅をついてしまった。
 「ちょっとあんた! 何処に目をつけてんのよ!」
 不機嫌そうな面罵の声に、普段から気の強い姉妹に虐げられている僕は、慌てて立ち上がると反射的に頭を下げた。
 「ご、ごめんなさいっ……」
 大地を力強く割って芽吹く新芽のような、きっぱりとした凛々しい声。
 確かな意志を感じさせる、気の強そうなややつり目気味の眼差しに、帳のように隈なく広がる長い髪。
 歳は多分同じくらいだろうか。背は僕よりも少し高く、何処かの中学のセーラー服を着ている。
 そのバイタリティで周囲を振り回し、引っ張ってゆく、いわゆる唯我独尊タイプの女の子だ。
 うん、後ろ姿で分かってたけどやっぱりかなり可愛い。身内の贔屓目を抜きにしても外見レベルの高い姉妹に囲まれて育った僕でもそう思う。
 「…………どうか、しました?」
 見蕩れてしまったのを取り繕う為に、言葉を続ける。うまく誤魔化せたかなぁ……?
 「べ、別にどうもしないわよ! …………それより…………その、大丈夫?」
 まだちょっと機嫌の悪そうな、つっけんどんな物言い。それでも言葉の端には気遣うような響き。どことなく四ちゃんに似ている気もして、少しだけ親近感が持てた。
 「あ、はい…………大丈夫です、ありがとうございます」
 「ならいいけど…………って、別に心配したわけじゃないんだからね! 怪我でもされたら面倒ってだけで! そこのところ、勘違いしないようにっ!」
 びしっ! と人差し指を突き付けて威圧された。でも、多分それはポーズだけ。
 「あはは…………分かりました」
 なんだか微笑ましくなって、つい口元を綻ばせてしまう。
 そんな微妙な空気を払拭するかのように、彼女は話を変える。
 「それより、こんなところで何してるの?」
 疑問に対し、簡単に答える事にする。
 「えっと…………一度、この学園を見学しておこうかな、って……」
 「なーんだ、じゃああたしと一緒じゃない。こっちも見学のつもりで来たのよ」
 同い年くらいだと思ったけれど、やっぱり先ほど聞こえた言葉の通りだった。
 「はい、良かったです。同じ考えの人がいて」
 仲間が居た事に安心して、にっこりと微笑んだ。
 「ちょ、ちょっとその顔はやめなさい!」
 「えっ?」
 危ないものを見てしまったときのように、慌てて顔を背けられる。
 う、うーん、何がいけなかったのかな? 友好的に振舞おうとしたのに、ちょっとショック。
 「と、とにかくっ! あたしはもう少しその辺見て回ってから帰るから! じゃあね!」
 「えっ、あ、あのっ……」
 彼女は誤魔化すように早口でまくし立てると、名前を聞く前に去って行ってしまった。
 まぁ、学年も同じくらいだろうし、ひょっとすると入学すればまた会うことがあるかもしれない。
 そう考えて気を取り直すと、僕は家に帰ろうとして──────。

 「こんなところに居たら、危ないじゃないか!」
 急に声を掛けられる。振り返ると学生服の見知らぬ人だった。明らかに僕よりも年上、高校生だろう。
 ここの学生、だよね。
 「あの…………」
 「もうすぐここはハルマゲドンの戦場になる! くそっ、女の子が残ってるだなんて、封鎖班は何をしてたんだ!」
 「えっ、いや、あの、僕はおと……」
 誤解があるようなので慌てて訂正しようとするが、緊迫した様子で取り合ってくれない。
 「今から一人で帰らせるのも逆に危ないか…………」
 「危ない…………?」
 「あぁ、敵に見つかれば問答無用で攻撃を受けてもおかしくない。やつらだって気が立っているのは間違いないから」
 そんな──────もし、それが本当だったら。
 「あのっ、もう一人、女の子が校内に居るんです!」
 「何だと?」
 「助けないと!」
 駆け出そうとした僕の手は、力強い腕に阻まれる。
 「やめろ、今更手遅れだ! 開戦してしまっては悠長に探し回ってる余裕はない!」
 その言葉はもっともだった。もっともだったけれど──────。
 「じゃあ! 戦いを早く終わらせれば…………いいんですよね」
 なけなしの、あるとは思っていなかった僕のちっぽけな勇気をありったけかき集めて。
 「君は…………君も、魔人か?」
 瞳に宿る力に、意志が伝わったのか、先輩に動揺が走ったのが分かった。
 「はい、大した事は出来ないですけれど…………それでも、何かの役に立ちますから!」
 だから、一刻も早く戦いを終わらせて下さい。あの子が犠牲になる前に。
 「こんな小さな女の子に戦わせるのは正直忍びないが……今は一人でも戦力が欲しい。一緒に来てくれるか?」
 この際、細かいことはどうでも良かった。僕は大きく頷くと、その先輩と一緒に戦場へ赴いた。

 名前も知らないあの子の、いつも怒ったような顔が。
 泣き顔に変わるところなんて、見たくないから。


                               <了>

  • 巻き込まれ型主人公はかくあるべしというような感じですね。戦場に向かう動機がグッときました。

~~社のゆとりGKダンゲロス参戦プロローグSS~~



さて、前方にそびえるのは魔人用の頑丈な建築設計の建物。希望崎学園の校舎。
ところどころ校舎に破壊痕が見受けられるのはさすが戦闘破壊学園といったところですか。
近頃は平和になっていると聞きましたが、それでもこの有様とは大したものです。

――などと外から見て考えていても仕方ないですね。それでは行きましょう。

私、社(やしろ)は本日、ここ希望崎学園に「ゆとり粒子」を集めにやって参りました。
なんでも魔人能力の発動を封じる力のあるもので、最近この学園に充満しているのだとか。
魔人能力が大好きな私のご主人様、夢追中(ゆめさこ かなめ)お嬢様の安全を考えると、
私も能力封印系の力は備えておいたほうが良いですからね。
お嬢様はいつでも魔人能力と見ると全力で突っ込んでいきますから……。


―――


さてさて、校舎の近くまで来ましたが……周囲に漂う剣呑な雰囲気。
事前情報の通り、どうやらここでハルマゲドンが勃発するのは間違いないようですね。
一般生徒は避難済み。残るは魔人ばかり。それならば人ならざる私も動きやすい。
存分に学校見学させていただくといたしましょう。

――おや、なにやら近くで騒がしい声が。

声のするほうへ行ってみれば、お嬢さんが二人、賑やかにおしゃべりしていますね。
見たところここの学生ではなさそうですし、緊張感もない様子。学校見学でしょうか。
よりによってこんな場所へこんな日にやってくるとはまた災難な。
危なっかしいですし、ここはひとつ言葉の話せぬ身であれど、なんとか危険を知らせて……
ああ、一人はさっさと奥へ行ってしまいました。
この体では機敏な動きはできませんから追いかけるわけにもいきません。
仕方ないのでひとまず残ったもう一人だけでも……
と思ったら残ったお嬢さんも学園の生徒に捕まっちゃいましたね。
まあ学生のほうに敵意はなさそうなので大丈夫でしょうか。
おや?なぜかあのお嬢さん、学園生についていってしまいました。
敵意のなさそうな学生でしたがそれでも大丈夫でしょうか。
お嬢様と同じくらいの年頃ですし、少々心配というものです。
後を追って見ましょうか。
いざとなったら先程のもう一人のお嬢さんも含め、
私の能力でここから脱出させることも考えましょう。
では行きますか。

「大きな建物だね」

これって学校かな、などと、聞きなれた声が私のすぐそばから発せられます。
そうですね――ではなくて!なぜご主人様がここにいるんですか!
いつの間にか私のすぐそばに立って声をかけてきた夢追中お嬢様。

「オウワシに頼んでこっそりついてきちゃった」

上空で旋回する大きな鳥の影。
あの鳥!何を危ない場所にご主人様を連れてきているんですか!私の一部も身につけさせず!
あのですねご主人様。ここは大変危険な場所なんです。
理由は後日説明しますので、本日はお帰りください。

「んん?うーん、何だか楽しそうな場所の予感がするけど……わかった」

なんとか説得成功ですね。危ない危ない。
ここで魔人同士の大規模な抗争があるなんてばれたら間違いなくお嬢様は飛び込みますから。
では私の能力でお屋敷まで送りますね。

「うん。あ、でも!危なくなさそうなときはまたこっちに転送しなおして!」

え……

「ここ、凄く楽しい事が詰まってそうな雰囲気だから!」

……分かりました。ご主人様に頼まれたら断れませんね。
危なくなさそうなときを見繕って、ときどき屋敷からこちらに転送いたしましょう。
でも危なくなりそうな雰囲気があればすぐさま帰っていただきますからね。

「うん!ありがとう!」


―――


さあ、お嬢様にもお帰りいただきました。予定外の約束をしてしまいましたが。
こんな物騒な場所へ連れ込むのは気が気じゃないですが、まあ戦闘前ならばいいでしょうか。
しかしここが希望崎学園だとばれないよう注意しないといけないですね。
魔人の巣窟として名高い場所だと知ったら間違いなく居座ってしまうでしょうし。
まあお嬢様の対策は追々考えるとして、まずは先程のお嬢さんを追いますか。

……さて、どちらへいったことやら。


日本家屋の付喪神、社――ゆとりGKダンゲロス参戦!!!

  • 違和感や齟齬なく夢追を紛れ込ませる筆力は流石の一言。ロリ追が目に浮かぶようだ。
  • 前に投稿されたSSを踏襲してるのがいい感じですねー
  • 自分が考えた(ゆとり粒子は借り物ですが)を使ってもらえると嬉しいです。


『ゆとりガールズ!?』


 ここは生徒会室。生徒会陣営の本拠地として選択される、当然の場所である。
 そこに一一(にのまえ・はじめ)は連れて来られていた。
 中に入るように言われ、恐る恐る扉を開けると室内には数人の学生たちの姿。
 その中に、なんたる偶然か一のよく知る人物が一人。
 「あれ? はーきゅんじゃない☆ どしたのっ?」
 眼鏡越しの大きな瞳をまんまるにして、姉──────一 九十(にのまえ・きゅーと)は腰掛けていた机からぴょん♪ とミニスカートを翻して飛び降り、駆け寄ってくる。実際あざとい。
 「九十姉さん、人前でその呼び方はちょっと恥ずかし…………」
 しかし、その台詞は最後まで口にする事が出来なかった。
 「えっ、なにその子? 九十の知り合い?」
  やや明るめの髪色のショートカットの少女──────御照 覧(みてる・らん)がそれに続く。彼女と九十は魔人能力的に言えば共生関係であったが、それを抜きにしても仲良しでよくつるんでいた。今回の争いで同陣営になったのもその縁である。
 「えへへー、はーきゅんはねー、かーいいかーいい妹だよっ☆ 私に似てとっても可愛いでしょー?」
 「!?」
 否定しようとした一だったが、むぎゅーっ、と九十に抱き締められて頭をかいぐりかいぐりされる。押し当てられた胸は残念ながらそこまで柔らかくはない。実際Aカップ。
 (いーじゃん、そっちの方が面白いってー☆)
 甘く囁く九十の声が、耳をくすぐる。
 「ひぁっ……!?」
 「まぁ、似てるかどうかは疑問が残るけど、確かにちっちゃ可愛いかな」
 九十も同年代の少女に比して小柄な方ではあるが、年齢差もあって一はその九十よりも更に頭ひとつ小さい。
 当然、希望崎学園の生徒には見えないだろう。
 「それで、どうして妹さんがこんなところに?」
 やや堅苦しさも感じさせる落ち着いた声で、もう一人の眼鏡少女──────伊藤イト(いとう・いと)が説明を要求する。秩序を重んじる性格の彼女が、異分子の存在に疑問と不審を抱くのもまた、当然だった。
 「えーっと……?」
 流石にその説明は出来かねて、九十は一を漸く解放する。その際にも軽く首を傾げてみたりして、実際あざとい。
 ぷはっ、と大きく息をついた一は向けられた幾つもの視線に少したじろぎつつも、小さな声で答える。
 「あの…………見学しようと思って来たら、なんだか巻き込まれちゃって…………」
 「ちょっと九十、家族なんだったら言っておいてあげなさいよ。今日が危ない日ってことは分かってたでしょうに」
 両手を腰に当て、呆れたように御照が嘆息する。
 「だってぇ…………」
 「だって?」
 伊藤も事実を知ろうと、九十の言葉に耳を傾ける。
 「忘れてた☆」
 てへぺろっ♪ と九十はウィンク&舌出し&自分の頭を片手でこつん。実際あざとい。
 「うわー、殴りたい…………」
 御照と伊藤の感想が綺麗にハモる。
 「まぁ、今から帰るのも逆に危ないしね。ここに居ればとりあえずは安全な筈だし……」
 ここまで踏み込まれる事があるなら、それはもう敗北が決定した時だろう。戦闘の趨勢が決した後なら、素直に降伏勧告に従えば幾ら非情な番長グループとはいえ、生命までは取られないだろう。
 そう考えた御照の発言だったが、それに対して一は異を唱える。
 「いえ、違うんです。実は…………」
 自分も魔人であること。
 校内に一人、名前も知らないけれど少女が取り残されていること。
 そして、その子を救う為に自分も戦うつもりであること。
 ほとんど初対面の相手ばかりの前で、つっかえつっかえながらも説明し、主張した。
 その必死の言葉には、御照も伊藤も、そして九十さえも心打たれるものがあった。
 「えーっ、なにこの健気さ! はーきゅんマジ天使! ぺろぺろしたい!」
 「あっ、馬鹿! そんな事言ったら……!」
 慌てて九十の口を塞ごうとした御照だったが、時既に遅し。
 「話は聞かせてもらいました。天使は実在します」
 がらっ、と扉を開いて新たな人物が顔を出す。透き通るような銀色の長髪をした少女──────白凪 穹(しらなぎ・そら)。
 普段は清楚でお淑やかな好人物である彼女だが、天使に関わる話をするときにはそのヴェールはいとも容易く脱ぎ捨てられてしまう。
 「天使! 天使はどこですか!!」
 その後から、褐色肌の化け猫娘──────シャム・メルルーサも入ってくる。好戦的な性格が、発情期の猫そのままに気勢を上げた。
 「そろそろ出撃だぜーっ! 者共、準備しろってんだ、にゃーっ!」
 「かしこまりっ☆」
 九十は必要以上に踵を鳴らして気をつけ&敬礼ポーズを取る。実際あざとい。
 「それじゃ、準備準備っ♪」
 躊躇うこともなくミニスカートを脱ぎ、おへそが見えるローライズの水色縞ぱん姿になる九十。
 「な、なんで脱いでるのっ!?」
 姉の突然の奇行に、一は思わず突っ込んでしまう。家族とはいえ思春期には目前ストリップは刺激が強すぎる。

 「これから戦闘だからねっ☆ 動きやすい服装に着替えないと♪」
 そう言いながら九十は黒の肉球グローブと猫耳カチューシャを取り出し、アイドルのステージ衣装を用意する。実際逆に動きにくい。
 「そうそう、勝負服ってやつ?」
 他の面々も、必要に応じて着替えを始める。戦いの場に赴く時さえ、乙女にとってお洒落は最重要事項なのである。
 「わわわっ……!?」
 その光景に、今更真実を言い出せなくなってしまう。あからさまに目を背けたりするのも怪しすぎて出来ない。
 結局、顔を真赤にしながら端っこで小さくなり、一部始終を眺めて──────。
 「さ、それじゃみんな、れっつごーっ☆」
 戦闘準備を終え、おーっ! と拳を突き上げる少女たちに混じって、一も控えめに手を挙げたのだった。


 「あれー? 確かにここにたっくさん魔人さんたちが居るって聞いたのに!」
 空室になった生徒会室。そこに飛び込んできたのは夢追中(ゆめさこ・かなめ)。
 「むっ……でも何かの能力の気配! まだ温かい!」
 えっちなハプニングを起こした、という効果までは流石に分からないものの、夢追の魔人嗅覚はその残滓を確かに捉えていた。
 「よーし、追いかけるぞー!」
 勿論、その決心が揺らぐことはなかった。



                                <了>

  • あざとおおおおおおおい!!説明不要ッ!
 でも一番あざといのは九十ちゃんじゃなくて一くんだと思うぜ。
  • 男陣営の生徒会、その中の数少ない女の子全員集合! こういう、たくさんのキャラが動いてるSSは好きだなあ。そして安定のあざとさ
  • あざとい流石(伏字)さんあざとい

戦場に向かう途中


「(ねぇ、一ちゃんは‥‥変態さんじゃないよね?)」
「(え!ち、違いますよ!)」
突然、一に耳打ちをする御照。
対変態となら百戦錬磨である彼女は一の違和感に気づいていた。

(さっき、みんなが着替えている時この子が恥ずかしがりながらも視姦してた気がするんだよね‥‥。
 いや、変態っぽい視線ではなかったけど。レズっ気があるのかな。それとももしかして‥‥オカマ!?)
彼女はこれまでの人生で3回ほどオカマに口内射精されたりぶっかけられたトラウマを思い返していた。

「(は、一ちゃんは、女の子‥だよね‥‥)」
「え」
気まずい沈黙。お互い動揺を隠せない二人。そして奇跡的な偶然で二人の足がもつれて‥‥、
次のコマでは一が下、御照が上の騎乗位チックな体勢に!

「うわっ、ご、ごめんなさい!‥‥あ」
「い、いたた‥‥。ん?」
何枚かの布を隔てて、一の一物が御照の局部に触れていた。

「!!!?!? ――――――変態さんは、死ねっ!」
御照は常に携帯している変態撃退マニュアル(3 kg)を振り上げ、そして――
とん、と九十に首筋を叩かれた。

「きゃっ、はーきゅんとらんちゃん大丈夫!?
 ってらんちゃん気絶しちゃってるよう↓
 もう、これから戦闘だっていうのに仕方ないにゃあ☆」
「(ちょ、ちょっと、何やってるんですか九十姉さん!)」
「(えー、だってこんなすぐにバレちゃつまんないし、はーきゅんも困るでしょ☆)」
「(う‥‥)」
「(じゃぁらんちゃん担いであげてね♪)」
「(え)」

「おい、何やってるんだ。大丈夫か?」
と、伊藤イト
「にゃんだか、はーきゅんとらんちゃんが転んじゃったみたい☆
 ちょっとらんちゃんが気を失ってるけど大丈夫でしょ♪」
「な、なにが根拠なんだ‥‥。御照もこんな大事な時に何をしてるんだ全く
 しかし保健室などによってる余裕はないからこのまま連れて行くしかないか」
「あ、じ、自分が運びます!転んだのも自分のせいみたいなものですし」
「君はそんなに力が無さそうに見えるが大丈夫か?」
「平気です!これでも男の子‥‥なみに鍛えてますから!」
そして心の中でごめんなさいと謝りながらうんしょと御照をお姫様だっこする一。やわらかい。
九十などと比べると目立たないが、間近で見るとこう、何というかムラッとする何かがあった。
(な、なんというか姉さんや妹とはまた違った魅力がある人だな‥‥。フェロモンというか)


【生徒会】戦闘開始前なのに勝手に戦力が一人減る
⇒To be continued

  • あざ(略) 一君が出て来るとどうしてもこうなるのかなw
  • なんで生徒会は男所帯の癖に、こんなあざといのが続くんだ……!?
  • 男の娘やショタがおっきしちゃって恥ずかしがるって萌えますよね。(伏字)さんこういうの書くのか。

~~社応援SS 親心?~~


●その1
「――という訳です。ですので、よろしければすぐに転送できますが……」

「でも、まだ助けないといけない子がいるんです」

学校見学に来て抗争に巻き込まれたお嬢さんを追ってみれば、行き着いた先は生徒会室。
言葉の喋れない私に代わって夢追中(ゆめさこ かなめ)お嬢様に私の能力を説明して頂き、
直にでも脱出をさせてあげようかと思ったのですが……中々胆の据わった人物だったようで。
もう一人抗争に巻き込まれたお嬢さんを助けるまでは帰らないとの言葉。
一一(にのまえ はじめ)さんですか。その小さな体に宿る心は見事な大きさですね。
まあ、遠巻きにお嬢さんかと思っていましたけれど近くで確認すれば……
事情があるのかもしれませんし、害はないでしょうから黙っておきましょう。
――おや、お話は終わりましたか、ご主人様。

「うん。一ちゃんはまだ帰らないって言うから。……だから、社」

分かりました。私も一さんと、もう一人のお嬢さんを助けられるよう生徒会に助力しますね。

「ありがとう!――えっと、一ちゃん!これからこの社も一ちゃんに協力しますので!」

お嬢様の笑顔が見られるならば、お安い御用というものです。

―――

「ところで社、
 一ちゃんを追いかけた理由が私と同い年くらいだったからって言っていたよね?」

はい。

「一ちゃんって、私よりも年下に見えるんだけれど……」

並んでいるところを見ますと……ふーむ。ポニーテールがふたつ……
ではなくて、確かにご主人様より年若く見えますね。

「社って……もしかして初対面の頃の私の印象でずっと私の事を見てる?」

……言われてみればそうだったのかもしれませんね。
不意に想像するご主人様の姿は未だ当時の姿……これはいけませんね。

「私もちょっとは師匠みたいに大人っぽくなっているんだから!」

そうですね。申し訳ありませんでした。
……これはちょっとした人の親の気持ちを味わった気分です。


●その2
「おや、あの子も生徒会の方ですかね?」

「えっ!?僕に聞かれても……ごめんなさい」

生徒会室から少し離れた廊下を歩くお嬢さんが一人。
ショートカットの髪に眼鏡、実に素朴な印象のお嬢さんですね。
現在はどこかにいるであろう一さんの探し人を我々三名で探索中のため、
見知らぬ人物に出会っても生徒会メンバーかどうか分かりません。
ご主人様、危険があるかもしれないので慎重に――

「すみませーん!ちょっと人を探しているのですがよろしいですかー?」

ですからご主人様は全速前進過ぎるというものですよ!一さんもびっくりしてますよ!
……おや、あちらのお嬢さんも不思議そうな顔でこちらにやってきますね。
……思えばお嬢様も一さんも高校生には見えない出で立ち。
例え相手が番長グループだとしても敵と認識されない……と良いですが。
さて、そろそろごく普通に声を掛け合う距離。何かある前に能力発動する準備を――

「あれ、どうしたのかな君達?ここは危ないからすぐに避難したほうが……きゃっ!?」

いやいきなり何を転んでるんですかお嬢さん!
そして何をいきなりお嬢様ともつれ合ってとんでもない体勢で倒れているんですか!
と言いますか今これ一さんが能力発動してましたよね!?何のパッシブ能力ですか!

「いたた……ご、ごめんなさい」

「(ご、ごめんなさい……僕のせいで……)」

「いえ、こちらこそごめんなさ……ひゃあっ!!??」

そしてそこのお嬢さんはなんでお嬢様を撫で回しているんですか!
今の手つき明らかに変な方向性を感じさせるものでしたよ!

「あ、ご、ごめんなさい!私、女の子を見ると指が妙に動く癖があって」

いやその癖、明らかにおかしいでしょう!

―――

いいですかご主人様。ご主人様もいつまでも子供ではないのです。
ああいった手つきをする輩には十分な注意をですね――

「でも迷い込んだ子を探してくれるって言ってたし、いい人だよきっと!」

いえ、確かに人柄は良いと思いますが――そうではなく――

「そういえば社って、昔からそういう話のときはいつも私を大人扱いするよね」

むう……
……これはまた、ちょっとした人の親の気持ちを味わった気分です。

――先程の害意の無い能力発動を見てすら、これからはもう少し厳重にお嬢様の警護をしましょうかなどと思ってしまう私は、そもそも大概な親馬鹿なのかもしれませんね。

  • これまたあざとい。しかし子供の成長というのは大人が思うよりも遥かに早いものですね。
  • 夢追と逆砧……この組み合わせはいいですな。いいですな!(強調)

~プロローグ・菜園場果樹丸の場合~


園芸部―――
それは、希望崎学園において決して敵に回してはいけない「七芸部」の一つである。

七芸部。
希望崎における部活動のうち、規模・思想・実力等において密かに危険視される七つの部活動のことである。
「希望崎最悪の組織」とまで呼ばれる手芸部を筆頭に、園芸部・文芸部がその名を連ねる―――
という所までは、希望崎に通うものなら誰でも知っていることである。

しかし。七芸部の名の通り、他にも四つあるはずなのだが―――その四番目以降を生徒に尋ねると
「曲芸部とか怪しくね?」「武芸部とか武芸だし間違いなくやべぇ」「いや案外サバゲー部という変化球かも」などと
今ひとつハッキリしない回答しか出てこない。どころか、教師すらも把握していないのだ。
そのため「七芸部を四つ以上知ると死ぬ」という学園伝説がいつからか生まれ、そして未だに信じられている。
事実、七芸部を全て明らかにしようとした報道系の生徒が何人も失踪している―――という事実と共に。

だが、恐るべき「七芸部」もゆとりの波には―――勝てなかった。

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「……ふあ、ぁ」

園芸部所有の、巨大温室『世界樹』―――併設の即売所レジ内にて。
一人の男子生徒が、欠伸をしながら眼前の光景をぼんやりと眺めていた。

やたらとツバの広い、特徴的な麦藁帽子。
モスグリーンの生地に、所々土汚れのついた作業着。
何のために装着しているか解らない、ライダーゴーグル。

彼の名は、菜園場 果樹丸。
この温室内―――否、園芸部内の植物の管理を行う『ファーマー』である。

園芸部で収穫した作物やその加工品を、通常なら安価で販売しているこの施設だが―――
今は、販売すらしていなかった。

「ヒャッハー。この白菜うまそうだぜぇ~~~」
「ニョロー(こっちのアロエローションもセックスのとき便利ニョロよ)」

モヒカンザコと触手が、思い思いの品を手に取り―――そのまま即売所を後にする。
しかし、それを咎める者は誰もいない。園芸部員の菜園場も、他の客も。
それもそのはず、なにしろ即売所入口には―――

『無料配布』

この四字熟語がでかでかと、掲げられているからである。
ゆとりは、園芸部から『部費の獲得』という大義名分を奪い。
園芸部の実りを狙う侵略者から『力ずくの強奪』という選択肢を奪っていたのだ。

「……暇、ですねえ……」

無料配布なので会計の必要もなく、万引き等の撃退の必要もない。
やることといえば作物の補充くらいなのだが、皆がゆとりに満ちた状況では品切れもそうそう起きない。
結果として、即売所の当番はこうして暇を持て余すこととなるのが通例だった。

「しかし……いけませんね、どうにも。
 平和は喜ばしいことですし、平穏は得がたいものなのに。
 ……どうも、馴染めませんねえ」

温室の天井を見上げながら、ぼそりと独り言を呟く。
どのみち何も起きないだろうし、農園の方の様子を見に行こうかと考えた、その時だった。

「なんだねなんだね、物憂げな顔をしているじゃあないか」
「あ、紳士部の…… 珍しいですね、こんな所に来るなんて」

紳士部。
紳士の紳士による紳士のための部活動―――なのだが、実体は今ひとつよく解っていない。
その謎の中心に位置するのが、紳士部部長・Mr.ディレクションその人である。
黒い燕尾服にシルクハット、そしてモノクルにステッキ。
典型的な紳士を絵に描いたような姿は、園芸部の即売所に来る格好としては若干不適切ではあるのだが
彼の紳士度によって、その違和感は打ち消されていた。

「恥ずかしい話だが、ティータイムの為の紅茶を切らしてしまってね。求めに来た次第だよ」
「そうですか、良ければ好きなだけ持っていって下さい。どうせ無料配布ですから」
「いやいや、紳士たるものタダで物を受け取るわけにはいかないよ」

そう言うと、懐から銀貨を1枚取り出し、カウンターに置くディレクション。

「相変わらず紳士的ですね……ですが受け取ってしまうと、他の皆が困惑するでしょうから」
「……そうか、確かにその通りだ。私としたことが気を遣わせてしまったようだ、申し訳ない」
「いえ、こちらこそ折角の心遣いを申し訳ありません…… お詫びといっては何ですが、ジャムも良かったら是非」

紳士らしいお辞儀で詫びるディレクションに対して菜園場も頭を下げて応じ、銀貨を返却する。
これもまた、ゆとりがもたらす紳士的なやりとりと言えなくもなかった。

数分後。
幾つかの紅茶とジャムを手にし、紳士スマイルを浮かべながら
ディレクションが菜園場に封筒を差し出した。

「今度のティーパーティーの招待状だ、日頃の礼に受け取ってくれたまえ」
「おや、ありがとうございます……楽しみにさせていただきますね」

招待状を受け取り、去っていくディレクションを見送る。
こういう平和も、たまには悪くないか―――と思いながら。


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しかし結局―――その招待状は使われることはなかった。
ゆとりのひろゆきの死、そして勃発したハルマゲドンによって。
ティーパーティーは中止せざるを得なくなったのだった。

時を同じくして。
牧歌的だった園芸部は再び「七芸部」としての凶暴な一面を見せ―――
『ファーマー』たる菜園場もまた、七芸部の一員としての手腕を振るうことになるのだった。

  • 園芸部すら無力化するとはゆとり恐るべし……
  • ゆとってる状態ではすごい穏やかな菜園場くんも、今はサツバツモードなんだろうか。コワイ!