手に持った鏃(やじり)の存在をも忘れて、思わず握り込んでしまった手の平から血が流れ出た。だけど、その程度の傷が、どれだけの痛みをもたらそうか。今のアンデルセンの心には、それを遥かに凌ぐ激情が渦巻いているのだから。
「おのれおのれおのれえェッ、悪魔(サタン)! 大魔王バーン!! 我らが主を差し置いて、何様のつもりだああぁッッ!! ふざけるなよ、糞虫が!! 貴様にカトリックの采配を振る資格はない!! 我らの命は、全て神のもの!! 然らば、その傲慢、その勘違い、その罪、全てを正してやらねばならん!!!」
命を弄ぶ大魔王バーンの姿勢は、敬虔なるカトリックであるアンデルセンの許せるところではない。生死を司るのは神であり、その御心を託された法皇庁(ヴァチカン)だけであるのだ。それは例えこのような地獄でも変わらない。だからこそ、アンデルセンの顔は憤怒で彩られる。そして奥歯が砕けるのでないかというぐらい歯噛みして、アンデルセンは自分に言い聞かせるように呟いた。
「プロテスタントォォ、異教徒どもォォ、貴様らの命などに価値はない。だがさりとて、化け物どもの贄となるほど、救いようのないものではない。貴様らを裁くのは、この神罰の代行者たる俺だぁ。故にこの地獄で悪魔の手にかかり、再び命を落とすことなど、断じて許さん…………」
それが本音と言っていいのか、アンデルセン自身分からない。カトリック以外は、どうせ地獄に行くことは確定しているのだ。今更この地獄で怨嗟や苦痛の声を漏らしたところで、心に響くものなどない。だが、この身を救ってくれたプロテスタント――
ニコラス・D・ウルフウッドの献身を、そのままにしとくというのは、アンデルセンにとって、どうにも歯がゆいものだった。
それならば、とアンデルセンは思案した。プロテスタントがカトリックを助けるというのは理解不能な行動だ。両者にはそれほどの隔絶があり、それは歴史が何よりもの証左となっている。しかし、プロテスタントたるウルフウッドはこの地獄の釜の底で、その命をカトリックに差し出したのだ。それは荒唐無稽の出来事であり、そしてそれ故に一種の奇跡とも呼べるものだった。
そう、奇跡。
ならば、そこには神の意思が内在していたのではないか。アンデルセンはそう結論付け、その御心を推量し、先程の言葉を口走ったというわけだ。
「これでいいだろう……プロテスタント?」
目の前の誰かに語りかけるように、アンデルセンは静かに一人呟いた。そこにアンデルセンを許すような返答はない。だけど、不思議と今の彼の心には、さっきまであったもどかしさは無くなっていた。そしてそれを確認したアンデルセンは、意を決したように座っていた図書館のソファーから、立ち上がった。
ハドラーから受けた傷は全快した。海から上がり、図書館へ向かう道中で拾った鏃で負った先の傷も、もうない。まるで神が祝福するかのように再生能力の復活を与えてくれた。その知らせは、アンデルセンの背中を押すのに十分なものだ。
「さて、そろそろ服を渇いた頃でしょう。早速、化け物とダイ……と言いましたか、マーダーのクソカス共をブチ殺しに行きましょうか」
窓から照らし出される陽光に、惜しげもなくすっぽんぽんの身体を晒しだしたアンデルセンは、満面の笑みで口を開いた。
【一日目 朝】
【現在地 D-2 図書館】
【
アレクサンド・アンデルセン@ヘルシング】
【状態】健康、素っ裸
【装備】銃剣@ヘルシング(残り90本)
【道具】スタンドの矢@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 化け物とマーダーは皆殺し
1. 化け物とマーダーを殺す
2. バーンを殺す
【備考】
※ウルフウッドの献身の対価として、この場で異教徒を殺すことはやめました
※異教徒が明らかな罪を犯せば、すぐに神罰を下すつもりです
※ダイ@DRAGON QUEST-ダイの大冒険 をマーダーとして認識しました
※スタンドの矢で、身体を傷つけました
【支給品情報】
ポルナレフに支給され、それをニャンコ先生が奪い、道端に捨てたものを、アンデルセンが拾った。
この矢に射抜かれた者(ただし人間に限らない)は、スタンド使いの素質があれば、死なずにスタンド使いとなる。
素質のないものは、命を落とすことになる。またこの矢をスタンドに突き刺すと、進化したスタンド――レクイエムとなる。
最終更新:2013年03月08日 23:06