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アンデルセンは高所から海に真っ逆さまとなって、叩きつけられた。屈辱である。ここまでされたなら、どんな危機的状況だろうと、黙っている道理など、どこにもない。溢れ出る激情を抑えるどころか、寧ろ助長するように心の枷を取り外し、アンデルセンは鬼のような表情を作り出した。そして海の流れに翻弄されながらも、復讐の刃を剥き出しにして後ろを振り返り、アンデルセンは先ほどまであった顔を一瞬にして驚愕へと変貌させた。突如、自分を投げたであろう浜辺から、大地そのものを壊しかねない爆発が起きたのだ。立ちのぼる炎と煙は空まで届き、白んだ空を赤黒く染め上げる。そして衝撃波は遠く離れたアンデルセンの元までやってきて、爆発におけるエネルギーの大きさを知らせてくれた。


「クッ……あのプロテスタントはこの俺を助けたというのか!? 血が煮えくり返るようなこの地獄の釜底で、プロテスタントの糞虫はカトリックの俺を助けたというのかッッ!!?」


爆発を起こしたのが、プロテスタントか化物かは知らない。だがどちらにしろ、両者共に生存を絶望視してしまう中で、間違いなく自分は生きている。その事実に、アンデルセンの心はひどく揺れ始めていた。



     ――

   ――――

     ――――――――



時は戻って、爆発前。ウルフウッドとアンデルセンがハドラーから逃げることに成功した頃、二人はあることに気がついた。アンデルセンの受けた傷が治らないのである。どんな傷だろうと、例え致命傷であろうと、たちどころに治るそれが遅々としてか進まないのだ。リジェネレーター(再生者)と呼ばれ、不死身を誇るアンデルセンであれど、さもありなん。何故ならアンデルセンが受けた傷は、ハドラーの放つ暗黒闘気によるもの。暗黒闘気は回復呪文を受け付けないダメージを、相手に与えることが出来るのだ。


アンデルセンは生物工学の粋を凝らした自己再生能力(リジェネレーション)と回復法術(ヒーリング)を治癒の拠り所とする。その内の一つである後者を無効化されては、致命的とまではいかないが、戦闘の続行が困難になると言えた。しかし、そんな現状を確認しても、アンデルセンの覇気は微塵も萎えることなどはなかった。


「放せよ!! プロテスタント!!」


アンデルセンは首根っこを掴まれた手を強引に振りほどきながら、、ウルフウッドに向かって吼えた。先の逃亡から森の茂みに身を隠すことになったが、そんなことなどアンデルセンは露ほど望んだ事はない。アンデルセンにとって、化物は絶対に滅ぼすべき敵なのである。故に、森の上空でしきりに自分たちを探して回っているハドラーから、このままげ隠れ通すことなど、アンデルセンに許容できるはずもなかった。とはいえ、重傷の身であるアンデルセンを、ウルフウッドもそう易々と放っておけなどはしない。


「ちょ、待ちいな。そんな怪我で、どないするつもりや? 治らへんのやろ?」

「貴様には関係ない!」


にべもなくアンデルセンは切り捨てたが、百戦錬磨のウルフウッドはそんなものは効かん、とすぐさま切り返した。


「関係あるわ、アホ!」

「ナニィッ?」

「ワイの名前はウルフウッドや。ニコラス・D・ウルフウッド。どうや、聞き覚えあらへんか?」

「ねえよ! クソが!」

「そうか。ほな、メラニィおばさんにリヴィオはどうや?」

「……さっきから何を言っている、プロテスタントッッ!?」

「孤児院や、孤児院。その確認。同じところとは、またちゃうみたいやけど、まあワイと同じ系列出身やな。そんなんやから、他人やあらへん。関係大アリや。どうや、自殺を止めに入るぐらいの絆があるやろ?」

「カトリックと糞のような貴様らプロテスタントが同じだとッッ!!?」


カトリックとプロテスタント。その言葉の意味するところは、正確には分からないが、彼我を区別する名称というのは、ウルフウッドにも分かる。そしてアンデルセンの表情から、そこに何か許せぬ決定的なものがあるということも同様に悟れる。だけど、そこにどんな確執があろうと、その程度のことでウルフウッドは大切な「孤児院の子ども」を見捨てるつもりにはなれなかった。


「自分とは殺し合いなんぞ、しとうないねん。お互いアホなことに巻き込まれたみたいやけれど、こないなようけ分からんところで、また血を流すことはないやろ。もっと気をラク~にしようや。あの上にいる鬼さんなんか、放っておいてな」


同じキリスト教同士で殺し合いはしたくない、と言っているのだろうか。カトリックとプロテスタントを同じ括りにするなど、アンデルセンにとって憤慨もの。即座に神罰を下す必要あるほどの不敬である。しかしさりとて、こちらに敵意を向けるわけでもなく、逆に心配して命を助けんとする者に対して、いまいち食指が動かないというのも事実であった。それならば、どうするか。


「貴様との闘いは興が削がれた。だが、次は殺す。必ず殺す」


結局、アンデルセンがウルフウッドに対して出した答えは先送りであった。どの道、不倶戴天の敵である化物が、近くにいるのだ。そちらを悠長に放っておけはしない。だけど、アンデルセンが僅かに見せたそんな優しさに、すかさずウルフウッドは唾を吐きかけた。自分の脇を通り抜ける際に、ウルフウッドは嫌がるアンデルセンの首根っこを再び掴んだのだ。


「糞が!! 放しやがれ、プロテスタント!! 殺されてえのかあぁっ!!?」

「やかましいわ、ドアホ!! ワイかて、こないなおっさんと肩を寄せ合うなんて、堪忍や!! それにな、安心せえ!! すぐに手ェ放したるわ!!」


そうアンデルセンの耳元で怒鳴り返すや否や、ウルフウッドは全力で駆け出した。さっきから隠れるつもりはないとばかりに二人で叫び合い、自分たちの居場所を宣伝していたのだ。それでハドラーに気がつくなというのが、土台無理な話だ。そして案の定、ハドラーは二人の存在に気がつくと、何ら容赦のない攻撃を放ってきた。


「逃がすか、人間!! 極大閃熱呪文(ベギラゴン)!!」


それは全てのものを焼き払わんとする超高熱の炎。猛り狂うような火が帯となって敵に向かい殲滅するギラ系最強の呪文だ。そしてそのベキラゴンの炎は、森の木々を瞬時に灰燼へと変え、そのままウルフウッド達へと真っ直ぐ迫っていった。


「何やねん!! さっきから魔法みたいなヘンテコな攻撃ばっか、しくさりよってからにッッ!!」


ウルフウッドは、堪らず愚痴を吐き捨てた。言葉のようにハドラーの常識外の攻撃もそうだが、森の中ということもあって、木が邪魔して真っ直ぐに走れないのだ。それとは引き換えに炎は、障害物を丸きり無視してやってくる。その理不尽さは、どうしようもないことだと分かっていても、やはり納得できない。


とはいえ、理不尽さを語るのなら、ウルフウッドも大概なものだった。大の大人であるアンデルセンを片手で持ち上げ、もう反対の手では重さ数百キロもある超重兵器を担ぎ上げ、更には縫うような道のりでも、矢より早く駆けているのだから。その証拠にと、ハドラーは空からウルフウッドたちを見下ろしながら、あんぐりと口を開け、驚きを露にしていた。


「よっしゃー!! 森を抜けたで!!」


既に尻を焦がす所まで炎が接近していたところで、ようやく森を脱出。ウルフウッドは炎を引き離すべく、森の中で加減していた力を全て足に注ぎこんだ。そして弾丸のような勢いで進むウルフウッド達の目の前には、ほどなく広大な海が見えてきた。


「無駄だ! 俺のベギラゴンの炎は、そう簡単には消えんぞ!!」


ウルフウッドの目算を見て取ったハドラーは、即座に吼えた。自らが最強と誇る呪文故に、その程度のことでは無効化できないという自信がハドラーにはあったのだ。だけど、ウルフウッドがしようとしていたことは、海に逃げるというそんな陳腐なものではなった。


「ほなな、アンデルセン! こないな地獄で言うことやあらへんけど、よう生きや!!」

「貴様ァ!! 何をするつもりだ、プロテスタントォォ!!??」


アンデルセンの疑問をよそに、ウルフウッドは投擲態勢に入った。走ることによって得た慣性を、そのまま右肩、右腕と伝え、更には「ミカエルの眼」によって施された超人的な筋肉を血管が浮き出るほど隆起させ、全力で右手に持ったものを投げる。


「おらあああああぁぁあぁぁぁーーーー!!!」

「ぶるぅぅらあああぁぁぁわああぁぁぁぁぁーーーーー!!!」


投げられたのは、勿論アンデルセンだった。人外の身体能力を持つウルフウッドの全身全霊の投擲。それによって体現されるものは、生半可なものではない。投げられたアンデルセンは超音速という文字通り桁外れの速度で、空気の壁をぶち壊しながら、海の彼方へ突き進んでいったのだ。


そしてウルフウッドはそれを見届けると、すぐにその場を逃げ出そうとした。しかし、その一歩を踏み出したところで、悲しいかな、彼の逃走は終えてしまった。迫るベギラゴンの猛火は龍の顎門(あぎと)となって、ウルフウッドを飲み込んでいったのだ。


猛り狂う紅蓮の炎は、それだけにとどまらない。胃に収めたウルフウッドを丹念に消化するようにトグロを巻き、旋風となって吹き荒れたのだ。更にその龍は周囲にある空気を貪欲に飲み込み、鉄の沸点をも超える超々高温の炎を、内部に作り出す。咄嗟にパニッシャーを盾にしたウルフウッドだったが、全方位から迫る炎と熱を防げるはずもなく、その身を容赦なく劫火に焼かれていった。


やがて炎の竜巻が海上へと逃げ出した後に残ったのは、全身を炭化させたウルフウッドの姿と墓標のように地面に突き刺さった赤熱したパニッシャーであった。もう彼にに命を感じさせる瑞々しさはどこにもあらず、あるのは確かな喪失を感じさせる黒々とした軋む身体だけ。その惨状に誰よりもハドラー自身が驚いたが、それよりも目を見張るものが、そこにはあった。


「見事だ……人間よ」


己が身を省みずに他者を救ったウルフウッド。その自己犠牲の精神は、ハドラーの宿敵ダイを思わせるほどの眩しい輝きだった。しかもそれを闘気を纏わない人間がやってのけのだ。なればこそ、そこには心よりの尊敬と惜しみない賞賛を送らずにはいられない。


「今からもう一人を追うことも可能だが、この人間が命を掛けて救ってみせたもの。それを蔑ろにするのは無粋というものだ」


ハドラーはウルフウッドの死体に近づき、その戦果を述べてやった。決して無駄死にではない。その意味を冥府に昇る魂に教えてやるために。そしてだからこそ、ハドラーは心底驚いた。その手向けの言葉に、返礼が送られてきたのだ。


「そいつは、おおきに」

「なッ!! 貴様、生きてい……ッッ!!?」


ハドラーの言葉は最後まで発せられなかった。次の瞬間、ウルフウッドがパニッシャーでハドラーを地面に強かに叩きつけたのだ。


「捕まえたで、鬼さん」


パニッシャーの頭部先端をハドラーの胸部へめり込ませながら、ウルフウッドはかすれた声で呟いた。喉は炎で焼きつき、ろくに声が出せないのだ。それは依然と確かな形でウルフウッドが満身創痍であることを告げていた。そこには身が悶えるような痛みと、狂いだしてしまいそうな熱さが一体となって、ウルフウッドを苛んでいたであろう。だけどそれでも炭化した皮膚組織が零れ落ちる中で、ウルフウッドはニヤリと笑ってやった。これで大切なものが守れるのだから、と。


自分の命は尽きた。いつものように回復が行えれば、まだ生きる目をあるのだろうが、それは既にアンデルセンが否定してくれていた。ハドラーの攻撃は再生が利かないのだ。であるのならば、ここまで重傷を負った今、生きるのは不可能だろう。ウルフウッドは、それを否応なしに悟った。


(難儀なこっちゃ)


自らの現状を省みて、ウルフウッドは心中溜息を漏らした。本来なら、アンデルセンを逃がした後は、ウルフウッド自身も無事に逃げおおせるはずだったが、いかんせん、しくじってしまった。ハドラーと闘うという手段もあったが、アンデルセンがこちらを敵視している中で、共闘はできない。またアンデルセンのハドラーへの苛烈な敵意がある限り、自分一人で戦闘を担うということもできない。そしてあのまま闘っていたら、きっとアンデルセンは自らの傷をものともせずハドラーに突っかかり、死んでいったであろう。それを防ぐには、ああした逃がし方がベストだったのだ。


尤もその後は、到底喜ぶ気になれない結末を迎えてしまったが、それでも最悪にはさせない、とウルフウッドは最後の気力を振り絞る。この化物を放置していては、アンデルセンが、「大切な子ども」が、殺されてしまうのが目に見えているからだ。なればこそ、ここで確実に敵を殺す必要がある。


勿論、この地獄では、他にもナイブズを筆頭とする危険性を無視できない化物がいるだろう。そんな奴らと対峙したら、アンデルセンは死んでしまうかもしれない。だけど、ウルフウッドはその不安を笑い飛ばすことができた。何故なら、ここにはヴァッシュとリヴィオがいるのだ。彼らなら、自分のようなヘマなどはせずに、アンデルセンを諭し、守ってくるれだろう。それを確信したウルフウッドは、死を前にして、誰よりも穏やかな気持ちで、最後の言葉を呟くことができた。


「一人や寂しいさかい、一緒に行こか?」


そしてウルフウッドはパニッシャーのロケットランチャーをハドラーに向けて全弾放った。



    ――

   ――――

     ――――――――




大地を構成する地面が吹き飛び、そこに海水が渦巻く所で、一人の男が息も絶え絶えに浮かび上がってきた。


「人間とは、ここまで強くなれるものなのか……」


やっとのことで言葉を吐き出すことができたのは、ハドラーであった。地形を変えるほどの大爆発。それに耐えられたのは、ひとえにハドラーの特性にあった。即ち、炎と熱に対する圧倒的な耐性である。彼の身体は、人間を骨も残さずに塵と変えるほどの威力がある魔界の炎を、完全に無効化できる程のものなのだ。


しかし、それでも完全にダメージを免れたわけではない。炎と熱を防いだとしても、ありあまる爆発のエネルギーは健在。それは頑健を誇る超魔生物ハドラーの身体すらも、破壊するのに十分なものだった。結果として、ハドラーの胸には大きな穴が開き、更にはそこを中心として身体の組織のほとんどが吹き飛んでしまったほどだ。それは死を予感させるような惨憺たる有様だったが、それでもハドラーは執念によって、立ち上がってみせる。


「だが、ダイよ……貴様と闘うまでは、俺はまだ……まだ死ねんのだ……」


ハドラーの呟きに呼応するように、露になった胸にある蒼い宝石が瞬き、ハドラーの身体を再生させていった。



【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム 死亡】



【一日目 早朝】
【現在地 E-5】
【ハドラー@DRAGON QUEST-ダイの大冒険】
【状態】身体超ボロボロ(回復中)、疲労(大)、魔力消費(中)
【装備】覇者の剣@DRAGON QUEST-ダイの大冒険
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 ダイと決着をつける
 1. 回復に専念
 2. ダイを探す
【備考】
※回復能力を有しています
※呪文の威力が向上しています
※身体に蒼い宝石が埋め込まれています
※D-5南西部とE-5北西部が爆発により、跡形もなく吹っ飛びました
※パニッシャーは、壊れずにどこかに吹っ飛びました


【現在地 E-3】
アレクサンド・アンデルセン@ヘルシング】
【状態】肌露出部分(顔、首、両手)に火傷(回復中)、肩から胸に切傷(回復中)
【装備】銃剣@ヘルシング(残り90本)
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 化け物と異教徒は皆殺し?
 1. プロテスタントォォォ!
 2. 化け物を殺す
【備考】
※傷の回復は暗黒闘気により、遅れています
※ウルフウッドの行動、存在にひどく困惑しています


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44:I Will Get There アンデルセン 70:You Raise Me Up
44:I Will Get There ハドラー :[[]]
44:I Will Get There ウルフウッド Game Over



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最終更新:2013年03月08日 23:07