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阿部さんほどのいい男なら、万事上手く解決してしまうのではないか。



思わずそんな考えを抱いてしまった自分を、道下正樹は激しく嫌悪した。確かに阿部高和という男は、頼りがいのある人間だった。身体は軟弱という言葉とはかけ離れた頑健な肉体も持っており、顔も瞳も何ら臆することなく前を向いている。気弱な人が見たら、目を逸らしてしまうほど威圧感もそこに伴っていたが、その内面は至って優しく、清濁併せて受け入れる包容力もあった。しかも、それでいて男の道を踏み外すようだったら、相手の為に迷わず叱ってくれる厳格な面もある。同性でも図らず見惚れてしまう。阿部高和はそんな理想的な男性だった。


だけど現実的に考えて、たった一人の人間による力で全ての物事が上手くいくわけではない。それは例え道下正樹が思う阿部高和でも、変わらない事実だ。しかも、道下たちが今直面している問題は、十把一絡げにできるようなものではない。己の全身全霊を賭しても、なお光明すら見えない難事なのだ。



殺し合い



それを嘘と断じることができたら、どれほど楽になるだろう。しかし、現に人の命が失われるのを目撃してしまった今では、確かな反証もできない。勿論、そこには現実を否定し得る不可思議な要素が満載していた。先ほどの皆の前で繰り広げられた殺人における手段、いつの間にか違う場所に行き来している移動手段。そのどちらも現実に則して不可能なことであるし、そこには何かしらトリックの種があって然るべきだ。だけど、それでもそういった異様な出来事を、何ら縁のない人間を前に実演し、強要させること自体が、殺し合いという言葉を並べ立てる者たちの力の強大さを証明し得ることでしかない。


「やるしかない……のか」


結局、それが道下の出した結論だった。既に反逆など、不可能な段階だ。だとしたら、少しでも芽が出る可能性に賭ける。それは当然の考え方だった。だけど道下の考えには、普通の人の当然とは、ほんの少しだけ違う形があった。


「こんなことをしたら、きっと阿部さんは怒るだろうな。でも……それでも阿部さんには生きていてもらいたいんです」


道下正樹にとって、阿部高和という人間は、自分の命以上に大切な存在だったのだ。自らの道に戸惑いを抱えている時に、颯爽と現れて温かい光を与えてくれた人生の、そして男の師。阿部高和がいたからこそ、今の自分がある。阿部高和は笑ってそれを否定するだろうが、当の道下にとっては、紛れもない事実だった。だから、今度は自分が彼のために存在しよう。感謝の念と共に表された道下の決意は、愛する人のモノのように固く、揺るぎないものだった。



【一日目 深夜】
【現在地 D-6】
【道下正樹@くそみそテクニック】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】武器支給品、ランダム支給品、支給品一式
【思考】
 基本 阿部高和を最後の一人にさせる
 1. 阿部さん……
 2. 阿部さん…………
 3. うほ



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道下 36:Lessons in Love



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最終更新:2012年03月04日 03:04