「はー、やっぱり許されへんちゅうことなんやろうなあ」
パニッシャーと呼ばれる十字型の兵器に寄りかかりながら、
ニコラス・D・ウルフウッドは溜息を吐いた。死んだと思ったなら、そこに安らぎあるわけでもなく、更に殺しあえだ。孤児院にいる子どもたちのため、というのはどうやら殺人の贖罪にならなかったらしい。
とはいえ、そのくらいのことはウルフウッド自身も分かりきっていた。全てを抱え込んで前へ愚直に進もうとするあの盟友の姿に比べたら、自分など諦念に満ちた存在でしかない。人の命を簡単に見限る。それはやはり神様からしたら、どうしようもないアホということなのだろう。だからウルフウッドは自分が地獄に落ちたことも、そこで自分が苦しむのというのも受けれいれることができた。
さて、その地獄でこれからどうしようか。そんなことを何となく考えながら、手に持った紙面を眺め、ウルフウッドはまた盛大に溜息をもらした。
「……何でトンガリがおるねん。アイツ、ひょっとしてシクったんか?」
バカでアホな平和主義者までもが地獄に堕ちてくる。ソイツの救いようのないマヌケさ具合に、これまた溜息が口から出てしまった。とはいっても、ロストジュライと呼ばれる事件で、本意ではなかったにせよ、大量殺人を行ってしまったのだから、ここにいるのはしょうがないのかもしれない。それでももっと生きてやることがあったんじゃないかと、アイツに詰め寄らずにはいられない。
「まあ、でもナイブズもここにおるみたいやし、ハッピーエンドになれへんかったけど、最悪のバッドエンドは免れたっちゅうことか」
やれやれ、とウルフウッドは頭を掻く。ヴァッシュ・ザスタンピードの死亡。その結末には納得はいかないが、そこに至るまで彼が精一杯頑張ったというのは想像ができた。血が流れ、肉が裂かれ、骨が砕かれても、アイツは最後まで諦めずナイブズにラヴ・アンド・ピースを唱えていたのだろう。全くもって笑わせてくれる。そしてだからこそ、アイツの隣に居て、肩を支えてあげたくなってしまう。
「そやな、折角やし、トンガリに会いにいこか。どうせこないな地獄でも、ようけアホやっとるやろうしな。あとはリヴィオやな。こないな早く死におってからに。何の為にワイはあんな苦労したと思ってんねん。おんどれらはヒネらな、ワイの気がすまん」
そう言うと、ウルフウッドはパニッシャーを担ぎ上げ、とぼとぼと道を歩き始めた。
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教会の前で二人は出会った。
お互いが目に入るのは十字架。
一人は首にかけ、一人は背に負う。
「何や、同業者かいな」
「そうか? ワイはニコラス・D・ウルフウッドや。まあ、同じ牧師同士なかよしとこか」
二人共ここが地獄とは思えないように、にこやかに会話を始める。そこに争いの気配はない。これこそ神に仕えるものの在り方。しかし、ウルフウッドが牧師と言葉にした途端、アンデルセンは袖から銃剣を神速で抜き出し、それをウルフウッドの顔目掛けて横に薙いだ。
「エイメンッッ!!!」
キリスト教徒の祈祷とは全くかけ離れた怒声と共に放つ鬼神の如き鋭き斬撃は、漆黒の殺意に塗り固められたもの。ついさっきまでアンデルセンに浮かんでいた温和な表情からは全く想像できない怒りの形相が、そこにはあった。その急な豹変にウルフウッドは度肝を抜かれるが、咄嗟に上体を反らし回避。アンデルセンの銃剣を見事にやり過ごす。しかし、驚きによりその行動が遅れたのか、ウルフウッドの前髪は銃剣に切られ、短く横に一直線にならんでしまった。
「って、いきなり何さらしとんねん!! おんどれのせいで前髪パッツンってなってしもうたやないかっ!!!」
「うるせえよ、異教徒が!! この俺が、この神罰の地上代行イスカリオテの第13課が、貴様と同業者だと~!!? ふざけるなよ、クソ雑巾が!! 貴様ら汚らわしいプロテスタントと我々カトリックを一緒にするな!!!」
ウルフウッドの必死の抗議も、アンデルセンの憤怒の顔と声によって、虚しく上から塗りつぶされてしまった。その尋常ではない様相に、ウルフウッドも思わず気おされてしまう。
「何や、ジャンキーの類か……」
「エイメンッ!!」
ウルフウッドの言葉によって、再び火に油が注がれ、烈火のような激しい攻撃がアンデルセンから繰り出される。しかし、今度の攻撃はウルフウッドに十分に予想できたもの。ウルフウッドはそれに合わせて、自らが持つ超重量兵器パニッシャーを力一杯振り切った。そしてたちまち金属音としては似つかわしくない鈍い音が響き渡る。ウルフウッドの力とパニッシャーの重量によって、アンデルセンの銃剣は堪らず悲鳴を上げて、粉々に砕け散ってしまったのだ。
そのアンデルセンもパニッシャーにより、木っ端のように吹き飛んでいく。銃剣による緩衝があったとはいえ、そのダメージは計り知れない。これでしばらくは動けないし、無事に大人しくなるだろう。空中をすべるアンデルセンを見て、ウルフウッドは暢気にそんなことを思った。だけど悲しいかな、それもすぐさま浅はかな考えであることをウルフウッドは否応なしに気づかされた。アンデルセンは何と衝撃に翻弄されながらも、再び袖から銃剣を取り出し、その投擲態勢に入ったのだ。
「チッ、このアホンダラが!!!」
ウルフウッドは罵声を浴びせながら、パニッシャーの拘束衣を瞬時に取り外し、その底部を開かせる。そこに現れたのは僅か一発でコンクリート塀に一メートルもの風穴を開ける機関砲。ウルフウッドはその超重量兵器を片手で軽々と持ち上げ、照準を固定。そして躊躇いなくそれをアンデルセンに向けて発射した。
空気を震わせ、そのまま逃亡させてしまかのような轟音が幾つも続く。口径20ミリをも超えるその射撃を受けて無事な物などないし、まして無傷で済む人間もいない。アンデルセンが投擲した銃剣は一つ残らず粉々になり、それでも僅かに威力を減衰させることない銃弾はアンデルセンに残らず直撃した。
「堪忍な。せやけど、自分が悪いんやで」
血だるまになったアンデルセンにウルフウッドはぶっきらぼうに呟く。ウルフウッドは元々好んで人殺しをするような性格でもないし、またアンデルセンのことも当初は殺す気はなかった。だけど、それでも振りかかる火の粉を嬉々として身にかぶってなどはいられないし、その余裕もない。だから、ウルフウッドは一切の呵責なくパニッシャーでアンデルセンを撃ち貫いた。
それでもアンデルセンに生きていてもらいたいと思うのは、ウルフウッドの傲慢だろうか。
射撃はアンデルセンの正中線を外した。ほんの少しでも生の可能性を上げるために。しかし、パニッシャーの威力はウルフウッドは一番良く知っている。生きていたとしても、それは万に一つの確率だ。それほど桁外れの威力をパニッシャーは有しているのだ。伊達で最強の個人兵装という看板をぶら下げているわけではない。だから、ウルフウッドはアンデルセンが何事もなかったかのように平然と立ち上がり、雨のように銃剣を投擲してきたことに喜ぶよりもまず驚愕した。
咄嗟にウルフウッドはパニッシャーを盾にして、その篠突く雨をやり過ごす。だけど、幾ら巨体を誇るパニッシャーといえど、成人男性の身体全体を隠せるほどのものではない。アンデルセンの銃剣は、ウルフウッドの四肢に幾つもの裂傷を加えていった。そのことに舌打ちしながら、アンデルセンの様子を窺う。自分のとは違って、アンデルセンの傷は立つことを可能とするものではないのだから。
そしてウルフウッドは絶句した。そこには、多大な出血を強いる重傷をまるで時間を遡らせているかのように回復させているアンデルセンがいたのだ。ウルフウッドには、その現象に飽きるほど見覚えがったあった。自分が、そしてリヴィオが持つ「ミカエルの眼」によって施された生体強化手術による超再生力。アンデルセンが見せたのは、まさにそれだった。
「ホンマもんの同業者っちゅうわけか!! ったく、あのクソジジイッ!! またエライもん、拵えよってからにッ!!!」
「おのれ、まだ嬲るか!! 糞虫が!! プロテスタントがッ!!」
大上段から振り下ろされる銃剣をパニッシャーで受け止め、ウルフウッドは顔を歪めた。その威力はパニッシャー越しですら、骨身に染みるものだ。だけど、ウルフウッドが表情を変えたのは、それが理由ではない。もしかしたら、目の前で憤怒の形相を浮かべるアンデルセンが、自分が守ろうとしていた大切な人間の一人ではないか、ということに気がついてしまったからだ。
「ミカエルの眼」が施す瞬時に傷を治す超再生力は、異常なほどの代謝機能促進によるものだ。確かにそれは戦闘において、何よりものアドバンテージを生み出す。だが、それは無償で手に入るものではない。人よりも早い老化を犠牲として、ようやく成り立つものなのだ。事実、ウルフウッドもリヴィオも20を優に超える顔つきだが、実際はそれよりも遥かに若い。
そして自分を、もしかしたらリヴィオをも凌駕するかもしれない回復を見せるアンデルセンも、当然の如くそれ相応の代価を支払う。つまり、自分以上の早い老化だ。アンデルセンの姿形はオッサンなれど、その実、自分やリヴィオより幼い子どもかもしれないのだ。
そして「ミカエルの眼」に引き抜かれたということは、アンデルセンは自分と同じ孤児院にいたかもしれない可能性を発生させてしまうものだ。更に言うのなら、アンデルセンはその時に自分が世話してやった子どもの中の一人かもしれないなのだ。そのことに思い至ると、ウルフウッドはどうしても苦渋の表情が浮かぶのを、止めることができなかった。
「ホンマ、どないせーっちゅうねん!!!」
おおよそ説得などという言葉とは無縁の目つきを見せるアンデルセンに、ウルフウッドは盛大なにツッコミを涙ながらに入れざるをえなかった。
【一日目 深夜】
【現在地 E-5 教会前】
【ニコラス・D・ウルフウッド@トライガン・マキシマム】
【状態】手足に裂傷(回復中)、前髪パッツン
【装備】パニッシャー@トライガン・マキシマム(残弾95%)
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 トンガリとリヴィオをヒネる
1. アンデルセンを説得……できるんかいな!!?
2. トンガリとリヴィオを探す
【備考】
※死んで、皆仲良く地獄に落ちたと思っています
※アンデルセンを「ミカエルの眼」の暗殺者だと思っています
※アンデルセンを自分より年下の子どもかもしれないと思っています
※アンデルセンを自分と同じ孤児院出身かもしれないと思っています
※上記二つのことから、アンデルセンを殺す気はありません
【アレクサンド・アンデルセン@ヘルシング】
【状態】健康、怒りMAX
【装備】銃剣@ヘルシング(残り90本)
【道具】ランダム支給品、支給品一式
【思考】
基本 化け物と異教徒は皆殺し
1. 牧師を殺す
2. 化け物を殺す
3. 異教徒を殺す
【支給品説明】
ウルフウッドが使用する、2mほど十字架の形をした『最強にして最高の個人兵装』。弾丸の破壊力は大口径の機関砲以上あり砲弾一発一発が厚さ1m以上コンクリに1mほどの風穴を空け、発射速度は秒間100発以上はある。ロケットランチャーの方は数百mの爆風と衝撃を起すほどでロケット砲は自動装填があされるので連射が可能。またパニッシャー×3の一斉射撃を防ぎきる異常な堅牢さもあり盾としても利用可能。
銃の先端部に装着して、槍のような戦い方ができるように工夫された武器。出血大サービスの100本セット。
最終更新:2012年04月07日 02:12