ジェネリック医薬品とは
- ジェネリック医薬品とは先発医薬品(新薬)の独占的販売期間の終了後に発売される、先発医薬品と同じ有効成分で効能・効果、用法・用量が原則として同一とされており、先発医薬品に比べて低価格な医薬品である。
用語について
- ジェネリック医薬品という呼び名のほかに後発医薬品という呼び名もある。これは、新薬(以下参照)を先発医薬品と呼んだ時に対になる表現である。
- これは、あくまで日本独自のものと思われる(Wikipediaの後発医薬品のページの別言語を見ると、英語と韓国語はジェネリック医薬品、中国語も漢字を見るにその訳語である)ので、このページではジェネリック医薬品と呼ぶことにする。
- 公式な文書だと後発医薬品の使用頻度が多い。
概要
(筆者は医学や生物学への造詣など無いので、有識者の方がチェックしていただけると助かります。)
- 新薬の創薬には多大な開発経費がかかるため、その知的財産権は特許(日本では期間満了まで原則20年、最大25年)と再審査(日本では原則6年、最大10年)により保護されている。要は、費用回収が認められた期間であり、再審査が終わるまでジェネリック医薬品の承認申請はできない。
- ところで、費用回収が終われば安価な薬を手に入れられた方がみんながうれしい。という期待に応えて作られるのがジェネリック医薬品である。
- ジェネリック医薬品とは、この新薬(先発医薬品)と「同一の有効成分を同一量」含み、「同一経路」から投与する製剤で、「効能・効果、用法・用量が原則的に同一」であり、先発医薬品と「同等の臨床効果・作用が得られる」医薬品である。
- 以下ではジェネリック医薬品の特徴を簡単に整理した上で、この2つを詳しく考える。
新薬との違い
新薬と同じ部分
- 有効成分の種類と量
- 投与経路(のみぐすり、注射、皮膚に塗る、など)
- 使用量・使用方法
- 効き目・安全性
異なる部分
- 適応症:原則として同じでなければならない。ただし先発医薬品が適応疾患を追加した場合、追加した適応疾患が再審査期間内であれば、この疾患を除いて申請することができる。
- 剤形:例えば「のみぐすり」という点では同じならよく、粉薬、錠剤、カプセル剤などの形状の変化は認められている。
- 添加物:有効成分以外の、たとえば錠剤の形を作るために添加する成分なども異なる。
- 製造方法:医薬品の特許の一部(下記)が残っているため製造方法も異なることが多い。
- 剤形、添加物、製造方法については、大きさの改善や、苦みの軽減なども含まれる。
- ジェネリック医薬品の開発研究の結果、新薬に対する付加価値を持たせることが可能となっているのである。
医薬品の特許について
- 先発医薬品に与えられている特許は、主に4種類。
- 新しい化学物質に与えられる「物質特許」
- 特定の物質に対する新しい効能・効果に与えられる「用途特許」
- 新しい製造方法に与えられる「製法特許」
- 製剤上の新しい工夫に与えられる「製剤特許」。
- ジェネリック医薬品を開発・販売するためには、物質特許と用途特許の期間が満了している必要がある。ただしこの時点では、まだ製法特許と製剤特許の特許有効期間が残っている場合も多い。
効き目・安全性は同等か
- ジェネリック医薬品は効き目が新薬と同等であることが前提なので、同じ効き目が得られることが大半である。
- 新薬で安全性が認められている成分のみ、ジェネリック医薬品として許可される。つまり、ジェネリック医薬品の安全性は新薬によってある意味担保されている。
承認申請
- 新薬の承認申請には、発見の経緯や外国での使用状況、物理的化学的性質や規格・試験方法、安全性、毒性・催奇性、薬理作用、吸収・分布・代謝・排泄、臨床試験など数多くの試験を行い、26の資料を提出する必要がある。
- これに対して、ジェネリック医薬品では「規格及び試験方法」「安定性試験」「生物学的同等性試験」の3つの資料と、添付文書記載事項(添付文書案)の提出によって、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)により審査され、製造承認が下りる。
- これだけ簡単になっているのは、有効成分が同一なので、有効成分に関する有効性・安全性は新薬で確認されており、あとは添加物による影響を確認できればいいだろうという考え方からである。
- この理屈は新薬(先発医薬品)が添加剤を変更する際などにも用いられる。要は、ジェネリック医薬品の基準で流通する新薬も存在していることになる。
生物学的同等性試験
- 新薬に必須な臨床試験をジェネリック医薬品がパスできる根拠が生物学的同等性試験である。
- ジェネリック医薬品が先発医薬品と同等の薬効・作用を持つことを証明するために、後発医薬品の承認申請には、生物学的同等性試験のデータが必要になる。
- 生物学的同等性試験では原則として、被験者にクロスオ-バ-法という手法で先発医薬品・ジェネリック医薬品を交互に服用してもらい、両者の血中濃度がほとんど一致することを確認する。
- 倫理的な面や、製剤特性等の理由から、被験者としてヒト以外の動物での試験が認められることもある。
- 因みに、注射剤に関しては、直接血液に薬が届くため、血中濃度は新薬とジェネリック医薬品で変わらない、だからこの試験は施行されない。
安定性試験など
- 製品の品質や性状、安定性を証明する試験および溶出試験が行われる。
- 安定性試験は薬の使用期限に関する試験である。
- ジェネリック医薬品は既に臨床現場で使用されている先発医薬品の置き換えとなるため、最近は、医薬品の流通段階だけではなく、患者さんが服薬するまでの期間内までも品質が安定であることを、ある程度保証することも求められている。
- そのため安定性試験は特に重要である。
- 安定性試験は先発医薬品でも行っているが、試験法の指針(ガイドライン)は異なる。
- 例えば、先発医薬品の安定性が長期保存試験によって3年以上であることが確認されている場合、ジェネリック医薬品については加速試験が実施される。
- 加速試験は、「長期保存試験の保存条件の温度よりも高い温度の保存条件を設定して、品質の劣化を加速するもので、6ヵ月間以上の安定性が確認された場合には、長期保存においても3年以上安定であることが推定される」とするもの。
薬効に対する意見
- 実際に使用した患者や医師からは、効果に違いがあるとの意見がある。
- これに対してプラシーボ効果だという反論もある。
- 統計的には「本質的な効果に大差はない」というのが結論である。
- また、薬の添加物や剤形が変わることにより、例えば薬の溶出速度が変化したり、有効成分が分解されやすくなったり、溶解速度が若干遅くなっている。
- 先発品には無い副作用やアレルギー反応が疑われた事例がある。
- 現時点でジェネリック医薬品による重大事故は発生していない。
製造方法に問題はないか
品質管理
- 新薬、ジェネリック医薬品問わず、GMP(Good Manufacturing Practice)基準(医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準)等に適合した工場でしか製造が許されていない。
- ジェネリック医薬品は医薬品の一部である。新薬と同様の厳しい製造基準が設けられている。
健康被害の事例
イトラコナゾール錠50「MEEK」
- 2020年(令和2年)12月5日、小林化工が製造し2020年9月28日から2020年12月3日に出荷された、経口抗真菌薬『イトラコナゾール錠50「MEEK」』において、睡眠作用のあるリルマザホン塩酸塩水和物の混入が確認され、使用停止と自主回収となった。
- 水虫治療飲み薬に睡眠成分が混入していた事例である。
- 成人の一日量である4錠を服用した場合、混入したリルマザホンの量は最大投与量の10倍となる。単純に、医薬品として論外である。
- この事例はジェネリック医薬品特有の事件ではなく、薬物全般に置いて製造過程のミスが重大事故につながりかねない事例である。
まとめ
- ジェネリック医薬品に適応される基準は新薬でも適用される基準である。
- 安全性に関しては新薬と同等とみなすのがよいだろう。
- 有効成分については殆ど影響ないように試験がなされている。副成分は先発品と異なるが、薬を使いやすくする程度で、原則安全だろう。
- ジェネリック医薬品独自の工夫が施されることも多い。
- 副成分が加わったことによる安全性については、ひとまずは個々の事例とみなすべきだろう。
- 製造面に関しては、先発医薬品にしろ何にしろ、人間が指さし確認して作っている上でのリスクは避けられないのだろう。
出典(2021/05/03 取得)
ジェネリック医薬品をもっとよく知っていただくために(日本ジェネリック株式会社) 平成27年2月版
ジェネリック医薬品への疑問に答えます(厚生労働省) 平成27年2月版
ジェネリック医薬品関連で発生している各種回収事案についての緊急声明文 令和2年12月18日版
安定性試験(日本ジェネリック製薬協会) 2019年2月1日版
ジェネリック医薬品をもっとよく知っていただくために(日本ジェネリック株式会社) 平成27年2月版
ジェネリック医薬品への疑問に答えます(厚生労働省) 平成27年2月版
ジェネリック医薬品関連で発生している各種回収事案についての緊急声明文 令和2年12月18日版
安定性試験(日本ジェネリック製薬協会) 2019年2月1日版
経緯
- ある日の配信で、ぷーれリスナーはAGA(男性型脱毛症)の話題で盛り上がっていた。
- その流れで「ジェネリック医薬品が安全かどうか」という白熱した議論がリスナー間で行われた。