ファミコングランプリ F1レース

【ふぁみこんぐらんぷり えふわんれーす】

ジャンル レース
対応機種 ファミリーコンピュータ ディスクシステム
発売・開発元 任天堂
発売日
()内は書換開始日
1987年10月30日(1987年11月14日)
プレイ人数 1人
定価 3,500円
判定 良作
ポイント ファミコン初のリアルタイムで順位変動レースゲーム
マシンコンディションのリアルさとシンプルさを両立
ターボと自然吸気それぞれに強み
高くても使い勝手の悪いマシンに注意
マリオシリーズ・関連作品リンク
ディスクファクスイベントシリーズ


概要

1987年に任天堂が発売したレースゲーム。
『ディスクファックス』イベント用の青ディスクカードソフト第3弾。
当該イベントは第1弾『ゴルフJAPANコース』第2弾『ゴルフUSコース』ともゴルフゲームで行われたが、それから一転レースゲームでの開催となった。

1984年にROMカセット用ソフトで発売された『F1レース』とは別物*1で、トップビューでのレースゲームになっている。
ゴルフシリーズ同様本作でもマリオが登場し、マシンドライバーとピットクルーを務めている。


内容

  • レース中の見た目としては翌年1月にナムコが発売する『ファミリーサーキット』に似たトップビュー方式。
    • 上記作品と違う点として自分のマシンが走る向きに合わせてゲーム画面が回転する。
  • 全レースは4周で、そのタイムだけでなく、リアルの順位を競う合う方式。
    • サーキットは全部で10種類。
    • レベルが4段階に分かれており、それぞれで4レースを行う。
      レベル1・コース1~4
      レベル2・コース3~6
      レベル3・コース5~8
      レベル4・コース7~10
    • 6位以内に入ると賞金が獲得できる。
      レベル1・2ならば9位まで、レベル3・4ならば6位までに入れば次のレースには進めるが、入れなかった場合は完走でもリタイアと同等の扱いになる。
    • 4レースを突破し、ベストタイムの場合記録され(レベル毎に)、ディスクファクスイベントに応募できた(1987年12月15日まで)。
  • ライバルのマシンに二度ぶつけると、そのマシンはリタイアとなりその跡にはオイルだまりが最後まで残る。またレース終了後にペナルティで罰金を取られてしまう。
    • オイルだまりにマシンが突っ込むとスピンして横滑りし停止するまで操作できなくなる。
    • 特定の6人(基本的に上位を走っている)は、対象外でいくらぶつけてもリタイアしない(オイルだまりにならない)。彼らのマシンは色が特別なので、ひと目でそれとわかる。
  • マシンは3台まで所有できる。
    • リタイアまたは上記の順位以内に入れなかった場合、そのマシンは以降のレースで使えなくなるので、別のマシンでリトライすることになり使えるマシンが無くなるとゲームオーバー。
    • レース中にスタートでポーズをかけ、その状態でセレクトを押すことで意図的なリタイアも可能。
  • マシンにはタイヤ耐久度、ボディ耐久度、ガソリン残量というステータスがある。
    • タイヤ耐久度
      走れば走るほど摩耗しスリップしやすくなる。コース脇のラフゾーンでは摩耗しやすい(もちろんスピードも落ちる)。
    • ボディ耐久度
      ライバルのマシンやコース壁にぶつかると減少し、ゼロになるとリタイアとなる。
    • ガソリン残量
      そのまま燃料で、これが尽きるとリタイアとなる。
      • これらはピットに入ることで全回復する。ボタンを連打すると、その作業速度を速めることができる。
  • Aボタンで「LOW」、Bで「HI」ギアでの走行。
    • ターボエンジンのマシンはターボ非発動中の最高速走行中に上を押すことでターボを発動させ最高速を出せる。
      • つまりターボエンジンは実質3段変速のようなものになっている。
    • AB同時押しでブレーキ。
+ マシンの詳細
No エンジン区分 タイヤタイプ 馬力 ボディ耐久度 タイヤ耐久度 燃費 最高速 価格
1 自然吸気 DRY 500 99 50 3.5km/l 336km/h 10万$
2 自然吸気 DRY 500 75 75 3.5km/l 336km/h 10万$
3 ターボ DRY 600 60 50 3.2km/l 360km/h 10万$
4 ターボ DRY 600 99 50 3.2km/l 360km/h 30万$
5 ターボ DRY 600 75 75 3.2km/l 360km/h 30万$
6 自然吸気 DRY 800 60 50 2.8km/l 360km/h 30万$
7 ターボ DRY 600 99 99 3.2km/l 360km/h 100万$
8 自然吸気 WET 800 60 50 2.8km/l 360km/h 100万$
9 ターボ DRY 800 50 50 2.1km/l 384km/h 100万$
10 ターボ DRY 800 75 75 2.1km/l 384km/h 300万$
11 ターボ WET 800 60 75 2.1km/l 384km/h 300万$
12 自然吸気 DRY 800 60 99 2.8km/l 360km/h 300万$
13 ターボ DRY 800 99 99 2.1km/l 384km/h 500万$
14 自然吸気 DRY 1000 50 50 2.3km/l 360km/h 500万$
15 自然吸気 DRY 1000 35 99 2.3km/l 360km/h 500万$
16 自然吸気 DRY 1000 75 75 2.3km/l 360km/h 1000万$
17 自然吸気 WET 1000 60 99 2.3km/l 360km/h 1000万$
18 ターボ DRY 1200 35 75 1.5km/l 384km/h 1000万$
19 ターボ DRY 1200 60 75 1.5km/l 384km/h 2000万$
20 自然吸気 DRY 1000 75 99 2.3km/l 360km/h 2000万$
21 ターボ WET 1200 50 75 1.5km/l 384km/h 2000万$
22 ターボ WET 1200 60 99 1.5km/l 384km/h 5000万$
23 ターボ DRY 1200 75 99 1.5km/l 384km/h 5000万$
24 自然吸気 DRY 1500 35 99 1.3km/l 384km/h 5000万$


  • 売値は買値の半分となる。
  • ボディの色は、タイヤタイプが「WET」ならば緑、「DRY」ならばタイヤ耐久度によって色分けされており50が青、75が黄、99が赤(つまり金さえあれば青や黄を買う必要はなくなる)。
    • ターボマシンのターボ非発動時の最高速は発動時360km/hのマシンなら312km/h、発動時384km/hのマシンなら336km/h。
  • 4レベルそれぞれタイムが記録されているがディスクファクスの応募はその中から1つのみ。
    • 本作のイベント賞品として有名なのが『スーパーマリオブラザーズ』のゲームウォッチであった(上位1500人+「ラッキー賞」で合計10,000名)。
      また上位100人にはトロフィーも贈呈された。

評価点

  • お手軽な操作性。
    • AとBでローとハイ、ステアリングは左右でそれぞれ22.5°(360°の1/16)曲がる。
      • 画面も進行方向に合わせて回転する。
    • ブレーキはAB同時、エンジンブレーキもアクセルを離すのみとお手軽で飲み込みやすい。
  • 豊富なマシンのラインナップ。
    • 24通りと非常に多くのマシンが顔をそろえている。進行度合いによってラインナップは変化するので全部を一気に使えないが、それでも12通りとラインナップとしては充分豊富。
    • ターボと自然吸気の最高速のバランスも取れており、それぞれの強みがある。
      • 自然吸気は基本360km/hマックスながらスピードを適度に緩めたりできる。片やターボは336km/hから一気に384km/hに持っていける分、その間が飛ばされるので微調整が効かない。
        自然吸気ながら最高速384km/hのNo24に関しては後述の通り。
  • ステータスはシンプルながらも要点は捉えておりガソリン残量、タイヤやボディのコンディションもわかりやすい。
    • ここでも技術介入があり、連打することでピットの作業を速めることができる。
    • そのため、いかにピットをムダなく利用するかも重要なポイントとなる点は現実のF1の特性が巧みに取り入れられている。
      • 一応ツッコミどころで言えば、当時のF1はレース中の給油は禁止されていた。
  • ちゃんと「レース」している
    • 当時のレースゲームとはモチーフがレーシングカーなだけで、他車は単なる動く障害物でしかないという実質障害物回避ゲームだった。しかし本作ではちゃんとライバルマシンと「競争」してリアルタイムに順位が変動およびゴール時には順位がつく。また周回タイムも計測されているため言葉通り「レースゲーム」に仕上がっている。

賛否両論点

  • 最速マシンNo24のクセの強さ。
    • 自然吸気エンジンながらターボマシンのターボ発動時のスピードを出せるので理論上最速だが、かなりクセが強くスピードのコントロールが難しい。
    • 最速を出すのに上を押さなくていいので、十字ボタンをコーナーなどで操作に専念しやすく、ABボタンのみで微妙な速度が調整できる利点というのもあるが、ターボに慣れてしまえばそんなに弊害の出るものではない。
    • 何よりボディの耐久度の低さのせいで回避テクを非常に要求されるので相当な上級者でなければ使いこなせず、うかつに買うと大金をムダにすることになりかねない。
  • 逆走ピットインが可能。
    • 実は本作はピットを出口から入ってきても有効だったりする。
      • そのため、うっかりピットをパスしてしまった場合に取り返しがきく上に、ミスはミスなのでムダに走った分タイムロスになるというマイナスは受けるのでゲームとしてはバランスが取れている。
      • もちろん、細かなルールが実装できない当時の事情では仕方がない面はあるとしても実レースでは当然ご法度の行為である。
  • 本作のラジコン操作は合わない人にはとことん合わない。コーナーの度に左右どちらのキーを押すかで大混乱させられ、そのようなプレイヤーは一番単純なトライアル6のコースを完走するのが精一杯という事態になりかねない。
    • むしろ、トライアル6のコースはレイアウトが単純で壁を気にする必要がない作りになっているため明言はされていないもののここで練習を積むことができる。

問題点

  • マシンのコスパが釣り合わないものが多々ある。
    • 特にNo14のマシンはタイヤもボディも耐久度が貧弱でかなり使い勝手が悪い。
      • これを買うぐらいならNo13を買った方が完全に上位互換だし、自然吸気を好むにしてもNo12の方が完全に上位互換。
      • 駄目なスカマシンを見分けるのも実力のうちと言うことか?(一応数値で見える部分が圧倒的に多いので分かりやすいが)
  • レベルクリアを繰り返していくと、下位のマシンが買えなくなる。
    • 最終的にはNo1~No12が入手できなくなる。
      • 基本的に上位マシンの方が高性能になるには違いないが、下位のマシンは燃費の良さという強みを持っている。
      • また、No10~12のマシンは安価な割に性能自体は良いので、これが買えないのは痛手に思えるかも。
  • やり方が少々難しいがコース壁の囲いの中に入り込めてしまうバグがある。

総評

ファミコン初期に発売された『F1レース』とは一転、このようなトップビューのスタイルを用いた点に関しては好みは多少分かれるだろうが、レースゲーム初のリアルタイムで順位が変動する方式や、ピットインのタイミングなどまさしく本物のF1レースの感覚を再現し、それをお手軽な操作に落とし込めている。
コース構成は上記と同じ10種類ながら、レベルをクリアすればするほど性能の高い新しいマシンが入手でき、再び前のレベルで更なる高みを目指すタイムアタックのスタイルはやり込み要素にもなっており、イベントが終了した現在でもやりごたえは充分。
任天堂らしく操作性もスムーズで非常に馴染みやすくエントリー層の間口の広さも見所の一つであり、そのスタイルは現在の任天堂にも通ずるものがある。


その後の展開

  • 同年12月1日にディスクファクスイベント第4弾ソフト『アイドルホットライン 中山美穂のトキメキハイスクール』を発売。
    • これまでのようなスコアアタックから一転、「恋愛シミュレーション」と称したマルチエンディング方式のアドベンチャーゲームになっている。
      • サービスデータも本作やそれまでのゴルフシリーズとは全く異なり、ゲームの進行状況などとリンクした中山美穂や登場キャラのメッセージ、中山美穂自身のレコードリリース等のものになっている。
  • 『ファミコングランプリ』として続編は翌1988年4月に『ファミコングランプリII 3Dホットラリー』を発売。
    • ディスクファクスイベント第5弾でもあり、最終作となった。
    • 本作ではレベル4段階で選択してエントリーができたが結果的にはレベル1にかなり偏ったこともあってか、この時のイベント用のコースは最も簡単なコース1のみとなった。

余談

  • 本作ではマリオがドライバーとピットクルーとして出演している。
    • 現在なら「マリオ何人いるの?」とツッコミが出そうだが、当時はさほど出なかった。
  • 1989年のターボ禁止に向けて、自然吸気マシンとの差を埋めるべく、この年から実際のF1世界選手権ではレギュレーションでターボにも制限が設けられ、翌年は更にそれが強化された*2
    • これにより翌年はターボと自然吸気の差はほとんど互角となる見方もされていたので、本作のようなターボと自然吸気のバランスはそれを見越した節もある。
      • しかし、実際には1987年に自然吸気エンジンで臨んだ中で最上位はティレルの6位(11ポイント)に対し1988年はベネトンが3位(39ポイント)と幾ばくか縮まったとはいえ、焼け石に水でまるで相手にならないレベルだった。
  • 賞品として配布された『スーパーマリオブラザーズ』のゲーム&ウオッチは、後に海外の翌年で発売されたニューワイド版*3をベースに強制スクロールの上下3段の迷路で足場のない部分を通ると水に落ちて1ミスというとことんシンプルなゲームになっている。
    • 後のゲームボーイソフト『スーパーマリオランド』のようなものを期待したプレイヤーもいたようだが、さすがに当時の技術でそれを求めるのは無理というものだろう。
    • 33年後となる2020年11月13日、『スーパーマリオブラザーズ』35周年記念の一環として本当に『スーパーマリオブラザーズ』のゲーム&ウオッチが発売された。
      嘗てのファンが期待したことが現実となり、ゲーム&ウオッチでそのまま『スーパーマリオブラザーズ』ができるだけでなく『スーパーマリオブラザーズ2』もプレイできる。ただしこの賞品版のゲームはできない。
  • 本作発売から約半年後にカプコンがリリースした『F1ドリーム』というレースゲームはこのタイトルと画面構成などがとても似ているのだが、関係性は不明である。

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最終更新:2024年01月06日 07:52

*1 ハード/メーカー/ジャンルが共通しているためか、1991年に小学館から出版された『スーパーマリオワールド』任天堂公式ガイドブック冒頭のマリオが登場するゲームタイトルを紹介するページでは、本作品はROMカセットとディスクで同時発売されたという誤った情報が掲載されていた。

*2 具体的には自然吸気エンジンなら排気量に対して3,500ccに対して、ターボエンジンは1,500cc且つブースト圧は4バールまで、更にターボ搭載車は燃料の積載量も195リットルまで。1988年シーズンはブースト圧が2.5バールまで、燃料の積載量が150リットルに減らされた。

*3 クリスタルスクリーン版ではキャラクターグラフィックが異なる