ネクルーエル

ネクルーエル・クロディエナ(Nekruel Xrodiena)とは、八霊神の一柱にして、死を司る冥霊神(めいれいしん)である。
他の精霊神とは異なりネクルーエルという名に性は無い。現れるのが男体であろうが女体であろうが名前は変わらない。
愛称はネク




概要

 八霊神の一柱で、そのには7つの霊素が完全に均等に含まれている。
宇宙の始まりから存在し、他の全ての八霊神を生み出したとされている。すべてのグリシーの中で最も古くから存在し、"本体"は宇宙全域に渡って存在しているらしい。地球に居るのはいわば"地球分体"である。

「冥」という言葉の意味するところは「暗いこと」であるが、同様の字義を持つ「闇」とは異なる。闇が指すのは夜や影の暗さであって、冥の指すそれは宇宙の深淵のような暗さである。闇が本能的な恐怖を暗示するのに対し、冥は老いと死を暗示する。ネクルーエルは時間そのものの化身である。

八霊神の祖だけあって性格は聡明にして老獪。単一の霊素から成るゆえの長所と短所を持つ他の精霊神とは異なり、性格上の欠点も特長も存在しない。



外見

 腰までより長い純白の髪、ハイライトの無い真紅の虹彩を持ち、目はティヴァーチェのように見開いている場合が多いが、まぶたを少し下げいわゆる半目状態になっていることも多い。口元はだいたいにやけている。一見アルビノのようだが肌はそこまで白くない。顔に紋章とは異なる刺青が刻まれている場合もある。
服装は実に簡素で基本的に真っ白なワンピースなどを着ている。
眉間に冥の紋章(霊素参照))がある。

 他の八霊神がほとんど一定の外見を持つのに比べて、ネクルーエルは個体差が大きい。見た目10歳前後の少女の姿で現れることもあれば、壮年の女性、あるいは老婆の姿で現れることもある。外見年齢は差異に富む反面男性の体で現出することはほとんど無い。表情はティヴァーチェのそれによく似ている。実際には、ティヴァーチェが最初にネクルーエルから分化した八霊神であったため、ネクルーエルに近い特徴を持つようになったものと思われる。

半神態になっても外見上の変化はほとんどないが、周囲の空間が歪んだように見える。
神獣態は巨大な白蛇。こちらも銀色の体と赤い眼を持つ。古くから幸運あるいは不吉の象徴として扱われるそれに等しい。



性格

 ネクルーエルは八霊神としては唯一人類の魂を素材としておらず、外見上の素体も存在しない。しかし、人類の魂から自分の同類を作り出したり、自分の姿も人類に似せるなど、基本的に人類を特別視している。本人は八霊神が人類の姿を基準にしていることについて「地球上で最も精神的に大きな影響力を持っているのが人類だから」と説明している。

 飄々として楽観的で、自分が面白いと思えば積極的に人類の歴史に介入する。人類その他生物の進化と絶滅に強い興味を持っており、しばしば特定個人に力を与えて遊んでいる。ティヴァーチェ以降の八霊神が一個の人間として化身となるのに対し、ネクルーエルは根本的に異なる立ち位置にある。
しかしながら、例えばティヴァーチェが人間とは大きく異なる思考パターンを持ち常に"無表情"なのに対し、ネクルーエルはむしろ表情豊かで実に人間臭い。ネクルーエルのには全ての霊素が含まれるため、人が持ちうる全ての性格の要素を併せ持つのである。

口調は外見に依らず老人的、しばしば変化するが一人称は「儂」二人称は「汝(なれ)」。



能力

 ネクルーエルの末端分体は人間として平凡で、他の八霊神にあるような優れた五感や身体能力を持っているわけではない。魔法も後述の能力を除けば、全属性を使える代わりに、単一の霊素に特化した精霊神たちと比べると平々凡々とした威力にしかならない。しかしながら魔法に限らずあらゆる技術を一定の水準で使えるので、万能ともいえる。

 冥霊神の固有能力としてリメンバー(追憶)という特殊な魔法を使う。大まかにいえば記憶を過去に送る魔法である。
この術を施される本人から見ると、記憶を保ったまま過去に戻ることになるため、未来に起こることを知った状態で過ごすなり改変するなりできるということになる。要するに過去をやり直す魔法である。
 対象は脳を持つ生物に限られる。その対象の記憶を過去のある時点へ送り、それ以降"現在"に至るまでの全ての時間は消滅する(観測結果が未確定の状態になる)。いわゆるタイムトラベルではなく記憶のみの移動であるためタイムパラドックスは生じない。そもそも巻き戻った時点で未来は不確定になるため、記憶と全く同じ行動を取ったとしても結果は違うものになりうる。はたから見ればこの魔法は限定的な未来予知といえる。なお逆向きの(記憶を未来に飛ばす)魔法は無い。
 リメンバーは(ネクルーエルが飽きない限り)無制限に何度でも使え、対象(過去に戻る人)の死をトリガーとした発動も可能。つまり、望む未来を得るために何度も過去をやり直すことができる。またこの魔法の副次効果として記憶力が強化され、一度見た未来の情報を忘れることはない。
この魔法はネクルーエル自身には効かないが、対象人数には特に制限がないため、やろうと思えば同日同時刻に複数の"追憶者"をあらすこともできる。
 この魔法の本質は観測結果の初期化にあるため、"冥魔法"は波動世界そのものに干渉する魔法といえる。理論上はあらゆる事象を任意に改変できるというとてつもない能力だが、それではつまらないのか、単純に霊力が足りないのか、ネクルーエルは「リメンバー」を使う以外に波動世界への干渉は行わない。

突然現れては無造作に選んだ誰かに過去をやり直すチャンスを与える。その理由は不明だが、特に大切な誰かを失った者に対する「リメンバー」の行使が伝説となり、死憶の神霊の異名を取る。



神霊具

 ネクルーエルの神霊具は。理由は異なるが闇の神霊具と同様「クローウィップ」の1形態のみが存在する。もし他にも神霊具が存在すれば「クロー(Xro)」が付くであろう。

初段階能力:必中
鞭の先端が対象を自動追尾し、相手が超音速で動いたり間に障害物が出現したりしない限りは必ず当たる。ただし、一度にロックオンできる対象は1体で、追尾の際に物理的に強い負荷がかかるため、使用者の高い熟練度を要する。
二段階能力:反復攻撃
ある地点への攻撃を、それより後のある時点で再現する。Aという場所に対して空振りしたあと、この能力を"Aという場所への攻撃"を対象に発動すると、他の場所、例えばB地点に攻撃しつつ、同時にA地点への攻撃も行うことができる。予め仕込んでおく必要はあるが、この能力によって実質的に複数対象への攻撃を行うことが可能になる。ただし再現する対象の時間が離れるほど、同時に再現する数が増えるほど、消費される霊力は増大するため、無制限に攻撃回数を増やせるわけではない。
三段階能力:時流変動
打ち据えた対象固有の時間を進めたり戻したりする。記憶は"現在"のを保ったままであり、「リメンバー」の亜種ともいえる。少し戻せば傷や疲れを無かったことにできる。大きく戻せば子供や胎児の姿に、大きく進めれば老いさせたり衰弱死させたりできる。ただし変動は過渡的なものであり、使用者の霊力にもよるが数分から1時間程度で元に戻る。この能力の発動中に死亡した対象は肉体だけが戻り、命()は失われる。必中必殺の武器ではあるが、そのぶん必要とされる霊力も膨大であり、不用意に使えば自分が死ぬことになる。もちろん生物以外にも使えるが、最終的に元に戻るのは同様である。

 冥の神霊具は適合に必要な霊素が他と違い全種類なので、適合者は特に少ない。さらに数自体も少ないため、人間がネクルーエルの鞭を使う機会はほとんど無い。
最終更新:2020年03月20日 01:23