第2回「DEATH RACE G.P.編」
参加者一覧
青空火炎(あおぞらかほ
設定: 正義感に満ち溢れた少女。『DEATH RACE G.P.』を知って、そんな非人道的なこと、あたしが許さない!となって深く考えずに参戦した。思い込みの激しい一面も。
【魔人能力】:『ジャスティス・バーナー』 熱い想いを火に変えて放出する能力。手のひらを向けた方向に火を放出する。 自身の想いが昂ぶるほど火力が上がる。
[成功要素]
身体スキル:【運動神経Lv.3】【超回復Lv.3】
知的スキル:【正義感Lv.2】【他人に信頼されやすいLv.2】
固有スキル:【ジャスティス・バーナー[魔]】
コダワリ
設定: 42歳男性既婚者。言葉を神とする「コトノハ教」の一員。宗教内役職は「言使」、かなり偉い。 「男は14歳まで、女は婚姻するまで喋ってはならない」という規律を作り、自身の権力下でそれを強いている。 コダワリの発言には思想統制や女性蔑視が見られるが、それは彼がはるか高みに自分を置いているが故の「誤解」であり、本意は彼なりの優しさである。それを汲み取れないものは不勉強の不寛容だと判断し、親切心で教示・教育を試みることもある。
【魔人能力】:『王里虫角』 任意の諺を唱えると効果発動。 コダワリの現在状況がまさにその唱えた諺のようであればあるほど、コダワリはパワーアップする。 逆に、現在状況が唱えた諺とかけ離れていればいるほど、コダワリの脳天に落雷が降り注ぐ。
[成功要素]
身体スキル:【厚い顔の皮LV.1】【被雷経験LV.3】
知的スキル:【神聖LV.1】【先導者LV.1】【煽動者LV.1】
固有スキル:【王里虫角[魔]】
アイテム :【コトノハ教の経典LV.3】
クロス・ロードラン
設定: 数々の分野でその最前線に立つ人材を輩出している名門ロードラン家の長男。18歳。 己の進むべき道を見付ける為に齢6歳にして実家から離れ、世界各国を巡り五感全てで世界のあるがままを体験する生活をしている。 他者へのリスペクト精神に溢れ、歴史的偉業を成し遂げた人物から料理が上手いと言う庶民的な内容など、あらゆる分野で自身より優れていると感じた人物を年齢に関係無く『師』と仰ぎ、いつか越えてみせたいと自身を震え立たせている。 このレースには娯楽と言うジャンルの1つとして人々を楽しませる手段を学びに来たのと、己の力が今どれ程かを試す為、そしてレース参加者から自身を震え立たせてくれる『師』となる人物を見付ける為に参加している。
【魔人能力】:『栄光へと続く三叉路(ビックトリニティーロード)』 『王道』は己を信じ、己の力で道を切り開く道。 定められたルールを最大限に活用するその姿は、人々からの称賛と敬意を集める。 『覇道』は眼前の敵を打ち倒し、傷付き傷付けられる事を恐れない道。 持てる力全てを掛けて挑むその姿に、人々は畏怖と尊敬の念を抱く。 『邪道』は常識を棄て、あらゆる可能性を知らしめる道。 予想を裏切り、ルールの裏をかくその姿に、人々は驚愕と信仰心に支配される。 何かを始める際に上記3つの道から1つを選ぶと、選んだ道に応じた最善の結末に向かう為の行動や選択を自然と行えるようになる因果率操作能力。 なお、選ぶ前にどの道が自分に最も有意義なのかは分からず、選んだ後はやり遂げるまで道を変える事は出来ない。
[成功要素]
身体スキル:【覇道Lv3】
知的スキル:【邪道Lv3】
固有スキル:【栄光へと続く三叉路(魔)】【王道Lv3】【カリスマLv1】
高萩依織(たかはぎ いおり)
設定: それなりの人気を誇る魔人アイドル。歌唱力には定評があるものの、ここ最近所属グループの解散があり、アイドルとして崖っぷち。 そんな状況を打破するために『DEATH RACE G.P.』に出場した。勿論優勝はしたいが、それ以上に知名度が欲しい。
【魔人能力】:『Awaken Now』 自分が致命的なダメージを負ったとき、持ちこたえ、更にダメージを負う前よりも高い身体能力を得る能力。 高い身体能力は10分程度で元に戻る。また、身体能力が高くなっている間に致命的なダメージを負った時、持ちこたえることはできない。
[成功要素]
身体スキル:【可愛さLv.3】【持久力Lv.2】
知的スキル:【諦めの悪さLv.1】【あざとさLv.1】
固有スキル:【Awaken Now[魔]】【歌唱力Lv.2】
アイテム :【マイクLv.1】
鬼姫 狂騒(オニヒメ ノイズ)
設定: 多岐に拡がり無限に存在する並行世界、その中で"鬼"が存在する世界からの来訪者にして鬼姫一族の一人。 趣味は色々な人との雑談、好きな事はカラオケとエロいこと、嫌いな事は勉強とルール等の堅苦しもの、部活ではないが慈善活動の一環として懺悔部屋と言った生徒や教師が自分の犯した『あやまち』を告白し魂を浄化する手助けを行っている。 噂では、狂騒にあやまちを告白した者はとても恍惚とした表情で懺悔部屋から出てくるらしい、中には熱狂的なリピーターもおり、男女問わず人気が有るらしい。 基本的に善人属性なのだが、絶望的壊滅的破滅的な音痴であり、その良く通る美声が台無しになるほどに酷く、彼女の歌を聴く者の精神と肉体を蝕み破壊してしまう悪癖がある。 本人は自分が音痴とは思ってないらしく、自分の歌によって発狂死する者が居ても原因が自分だとは理解出来てないらしい。 性格は超ポジティブで明るいのに、歌う曲が割と暗かったり、歌詞の内容が重たかったり、聴いてる人間が不安になるような楽曲を好んで熱唱する。
【魔人能力】:『CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"』 ダウナー系の曲を綺麗な声で音痴に歌います。 聴いた人の精神に変調を来して集中力を削いだり、体調を崩させたり、鬱を悪化させます。 本人に悪気は無く、自分が壊滅的な音痴だとは微塵も思ってません、声が綺麗なのに残念な能力です。 曲は『呪い』や『樹海の糸』、『沈む街』を愛唱してます。
[成功要素]
身体スキル:【怪力:Lv.3】
知的スキル:【善人:Lv.3】
固有スキル:【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"(魔)】【音痴:Lv.3】
アイテム:【ハイパワー大型メガホン:Lv.1】
姚 静梅(ヤオ・ジンメイ)
設定:魔都上海に拠点を置くチャイナマフィアの幹部、ジャニス・チャンの部下の一人。20歳 才能を見出され。若くして武を修めた中国武術の達人。 武術家としての号名は「大仁大勇」。 普段は表向きの肩書としてジャニスがオーナーを中華料理店の看板娘を務めている。 礼節を重んじ、慈悲深い性格。忠義心が高く、自分や仲間への侮辱に対しては寛容ではない。 特に上司であるジャニスに対する侮辱はNG。
【魔人能力】:『観察眼』 目で見た相手の弱点である部位を見抜く能力。 過去の古傷、怪我をした場所など物理的な弱点が分かる能力である。
[成功要素]
身体スキル:【チャイナ美少女Lv1】【マフィアLv1】
知的スキル:【忠義心Lv2】【威圧Lv2】
固有スキル:【観察眼[魔]】【中国武術Lv3】
アイテム :【チャイナドレスLv1】
『DEATH RACE G.P.』 オープニング
『さァさァさァ! 全世界のテレビの前の暇人ども! そして今まさに、その有り余る才能をドブに捨て、命をゴミのように散らす覚悟を決めた、愛すべきクズども! 聞こえているかァ!?』
人工島『クレイジー・アトランティス』上空。
漆黒のヘリコプターのオープンハッチに立ち、下界を見下ろす一人の男がいた。
ギラつく純金のタキシード、血のように赤いシャツ、油で固められたオールバック。その手に握られた黄金のマイクが、男の狂的な絶叫を世界中へとブロードキャストしていく。
彼こそが、世界征服放送(WCB)が誇る狂乱の実況アナウンサー、ジャック・ポット。
究極のエンターテイメントのためならば、出演者の命すら最高のコンテンツとして消費する、視聴率の悪魔である。
『実況は俺、ジャック・ポットだァ! 今宵もまた、お前たちの血と汗と涙と断末魔で、視聴率のうな重をかっ喰らわせてもらうぜェ! 賞金100億! 地位! 名誉! その全てを手に入れるのは、たった一人! 残りのゴミどもには、理不尽で壮絶な死が待っている! ハッハァー! 最高のショーの始まりだぜェ!』
ジャックの視線の先には、常軌を逸した巨大人工島が広がっている。
東京23区を丸ごと飲み込むその土地には、天を突くWCB本社ビル、砂漠、雪山、ジャングルといったありとあらゆる環境を再現したレースステージが、さながら神の悪趣味な箱庭のように配置されていた。
その一角、雲を突き抜けるほどの高さにそびえる断崖絶壁。
二つの崖の間には、今にも切れそうなロープと朽ちかけた板で作られた、一本の吊り橋がかかっている。
そのスタート地点に、今回の『DEATH RACE G.P.』にその身を投じた、6人の魔人たちが集められていた。
「こんな非人道的なレース……あたしが絶対に終わらせてみせる! WCBをぶっ潰すんだから!」
白のセーラー服に身を包んだ小柄な少女、
青空火炎が拳を握りしめ、憤りを隠そうともせずに叫ぶ。その青い瞳の星型瞳孔は、正義の炎に燃えていた。豊満な胸が、怒りの呼吸に合わせて大きく上下している。彼女のまっすぐな正義感は、この狂った舞台ではあまりにも異質で、それゆえに格好の「おもちゃ」だった。
その隣で、能面を被った和装の男が、不快そうに息を吐いた。
『……口を開けば騒々しい。女の浅知恵は、場の穢れにしかならぬというのに』
コダワリ。42歳、既婚。脂汗でじっとりと濡れた和装が、彼の異様さを際立たせる。その慇懃無礼な呟きは、彼なりの「教示」のつもりなのだろうが、火炎の耳には届いていない。彼はただ、神聖なる言葉を汚す低俗な存在を憐れむように、静かに佇んでいた。
「フン。WCBを潰すか。大した気概だ、小娘。その道が『王道』か『覇道』か、あるいは『邪道』か。いずれにせよ、見届けさせてもらおう」
彫刻のように美しい肉体を持つ青年、
クロス・ロードランが、威風堂々と腕を組む。彼の鋭い眼光は、火炎を、コダワリを、そしてこの場にいる全ての者たちを射貫き、己を震え立たせる「師」たる器かを見定めていた。
「みんな、見ててね! 私、
高萩依織! このレースで絶対優勝して、トップアイドルになってみせるんだから!」
アイドル衣装に身を包んだ高萩依織は、まるでそこに観客がいるかのように、空中に向かってキュートなポーズを決める。彼女を追う不可視のカメラ《オーヴィジョン》の存在を、彼女は本能で感じ取っているのかもしれない。崖っぷちの状況、知名度への渇望が、彼女をこの死地へと駆り立てていた。
「あはは! いいねいいね、みんな元気いっぱいだ! こういう出会いって最高! よかったらレースが終わったら、あたしの懺悔室にも遊びに来てよ? なんでも聞いちゃうよ?」
金髪ロングヘアの巨乳女子高生、
鬼姫狂騒が、修道服姿に似つかわしくない屈託のない笑顔を振りまく。その底抜けの明るさと善人オーラは、場違いなほどの安心感を周囲に与える。だが、彼女がもしここで歌い出せば、その場の全員が肉体と精神を蝕まれ、地獄を垣間見ることになるのを、まだ誰も知らない。
そんな喧騒をよそに、一人静かに呼吸を整える者がいた。
緑のチャイナドレスを纏ったスレンダーな美女、
姚静梅。彼女はマフィア幹部の部下であり、中国武術の達人。その双眸は、まるで獲物を定める猛禽のように、目の前の吊り橋、そしてライバルたちの僅かな隙をも見逃すまいと、鋭く細められていた。彼女の魔人能力【観察眼】は、すでに数人の「弱点」を捉えているのかもしれなかった。
正義、思想、探求、野心、善意、忠義。
六者六様の思惑が、スタートライン上で火花を散らす。
その時、虚空からジャック・ポットの哄笑が再び響き渡った!
『さぁ、自己紹介は済んだか、クズども! それではお待ちかね! 記念すべき第1ステージの発表だァ!』
ゴゴゴゴゴ……と地響きのようなSEと共に、参加者たちの眼前に巨大なホログラムが出現する。
『第1ステージは……【奈落の空中回廊(スカイ・コリドー)】!』
ジャックの声が、ステージの概要を告げる。
『貴様らの目の前にある、そのボロっちい吊り橋が舞台だ! 全長1km! ゴールゲートを最初にくぐった奴から順にポイントくれてやる! 順位ポイントは1位100pt、2位80pt、3位70pt、4位60pt、5位50pt、6位40ptだ!ビリにはやらん!』
参加者たちの視線が、改めて吊り橋に向けられる。
谷底からは不気味な風が吹き上げ、ギシギシと頼りない音を立てて橋を揺らしていた。床板は腐り、所々が抜け落ちている。一歩踏み外せば、奈落の底へ真っ逆さまだ。
『だが、それだけじゃ面白くねェよなぁ!? そこで、エンタメポイントだ! 俺の心を、そして視聴者の心を揺さぶるような面白い動きを見せた奴には、ボーナスでGPPくれてやる! ライバルを蹴落とす見事な妨害! 絶体絶命からの奇跡の生還! ド派手な能力の使い方! なんでもアリだ! お前たちのクズっぷりを存分に見せつけて、ポイントを稼ぎやがれェ!』
ジャックはそこで一度言葉を切り、ニヤリと笑う。
『さらにィ! スペシャルボーナスだ! 橋のど真ん中に、WCBのロゴが入ったイカしたフラッグが一本だけ立ってるのが見えるかァ? アレをゲットしてゴールした奴には、特別に50GPPを追加でくれてやる! ただし! あの辺りは橋が一番不安定だからな! フラッグに目が眩んで、そのまま谷底のクソ野郎になるのも一興だぜェ! ハッハァー!』
彼の言葉通り、橋の中ほどに、風に煽られてはためく巨大なフラッグが見える。
ハイリスク・ハイリターン。参加者たちの欲望を試す、悪魔の誘惑だ。
『ルールは単純! 殺し合いも、裏切りも、なんでも許可する! 視聴者がドン引きするようなクソつまんねえ殺し方じゃなけりゃ、減点もねえ! ただし、明確に死んだらそこで終わりだ! 次のステージには参加できねえから、そのつもりでな!』
ジャック・ポットは黄金のマイクを天に突き上げた。
彼の背後で、巨大なカウントダウンタイマーのホログラムが浮かび上がる。
【10】
『さぁ、才能の使い道を間違えた素晴らしいクズ共! 走るコンテンツ! 使い捨てのスター候補どもよ!』
【9】
青空火炎は両の掌に意識を集中させる。正義の怒りが、炎となって滾る。
【8】】
コダワリは懐から経典を取り出し、口元で何事かを呟き始めた。
【7】
クロス・ロードランは目を閉じ、己が進むべき3つの道を天秤にかける。
【6】
高萩依織はスタートダッシュで最高の表情をカメラに見せるべく、唇を舐めた。
【5】
鬼姫狂騒は「一番乗りでゴールしたら、みんなに歌をプレゼントしちゃお!」ととんでもないことを考えていた。
【4】】
姚静梅は腰を低く落とし、最も効率的に、最も速く駆け抜けるための最適解を導き出す。
【3】
『お前たちの持てるすべてを! 欲望! 才能! 憎悪! そして命!』
【2】
『その全てをこのショーにブチ込んで、最高のエンターテイメントを完成させやがれェェェーーーッ!!』
【1】
世界が息を呑む。
【0】
『『『DEATH RACE G.P.! スタートォォォォォォッ!!!』』』
号砲と共に、6人の魔人たちが一斉に、奈落へと続く破滅の回廊へと飛び出した!
第1ステージ:奈落の空中回廊(スカイ・コリドー)
『スタートォォォォォォッ!!!』
ジャック・ポットの絶叫が号砲となり、6人の魔人が一斉に奈落の吊り橋へと殺到した。
その刹那、場に響いたのは銃声でも怒号でもない――甘く、しかし芯のある歌声だった。
「みんなに届け、私の歌! 見ててね、今日の私は、誰よりも輝くんだから!」
【マイクLv.1】を握りしめた
高萩依織が、スタートダッシュの出鼻を挫くように歌い始めたのだ!【歌唱力Lv.2】によって増幅された歌声は、確かに数瞬、参加者たちの意識を惹きつけた。だが、この死地において、その甘い罠に掛かる者は少なかった。
「フン、小賢しい!」
「くだらんな」
チャイナドレスの裾を翻し、姚静梅が地を蹴る。隣ではクロス・ロードランが微動だにせず、ただ前だけを見据えていた。彼らのような手練れにとって、アイドルの歌は路傍の石以下の障害でしかない。
だが、その一瞬の躊躇いが、明暗を分けた。
「もらったぁ!」
【運動神経Lv.3】。青空火炎の肉体は、すでにトップスピードで橋の半ばへと到達していた。彼女の視線はただ一点、悪の組織WCBの象徴たる、あの忌まわしきボーナスフラッグに注がれている。
彼女に続くのは、同じく【中国武術Lv.3】の練達者である姚静梅。彼女は無駄のない体捌きで、腐った床板を的確に見抜き、最短距離を駆け抜ける。
そして、クロス・ロードラン。彼は『栄光へと続く三叉路』の中から、最も確実な勝利への道――【王道Lv.3】を選択していた。彼の目には、無数に存在する床板の中から、最も安全で、最も速くフラッグへと至る「黄金の道筋」が光って見えていた。
三人がデッドヒートを繰り広げる後方。能面の男、
コダワリが、聖典を片手に甲高い声で叫び始めた。
『聞けい、愚民ども! 特に女! そのような浅ましき足の競い合いに何の意味がある! 真の道とは、此方(こなた)が示す道! それに続くことこそが、汝らの救済となるのだ!』
【神聖Lv.1】を帯びた【煽動者Lv.1】の言葉。だが、あまりにレベルが低く、あまりに彼の思想が独りよがりであるがゆえに、誰の心にも響かない。それはただの騒音として、谷風に流されていくだけ……のはずだった。
その時、レースを揺るがす天変地異が起こる。
ゴウッ! と、これまでとは比較にならないほどの強烈な突風が、渓谷の底から吹き上げた!
「うわっ!?」
「きゃあ!」
吊り橋が、巨大な蛇のようにのたうつ。先頭集団すら、その場に足を止めざるを得ない。後方の高萩依織は、今にも振り落とされそうだ。
この絶望的な状況で、誰よりもポジティブな少女が、とんでもない解決策を思いついてしまった。
鬼姫狂騒。彼女はにぱっと笑うと、【ハイパワー大型メガホンLv.1】を口元に構えた。
「風が強いなら、吹き飛ばせばいいんだよね! みんな、ちょっと耳塞いでてー!」
忠告は、あまりに遅すぎた。
彼女は、自慢の【怪力Lv.3】から生み出される、常軌を逸した肺活量で、息を吸い込む。そして――
「んんんんんんんんんんーーーーーーーっ!!!!」
それは、声ではなかった。
音の津波。音響兵器。
メガホンによって指向性を持たされた絶叫は、不可視の衝撃波となって吊り橋を直撃した!
突風は、確かに一瞬、その勢いを削がれた。
だが、その代償はあまりにも大きかった。
バキィッ! ギャギャギャギャッ!!
鬼姫狂騒の超絶ボイスは、脆弱な吊り橋そのものを揺さぶり、無数の床板を粉々に砕け散らせたのだ!
「なっ!?」
「うわあああ!?」
先頭を走っていた火炎と静梅の足元が、突如として消失する。二人は咄嗟にロープに掴まり、落下こそ免れたが、大幅なタイムロスを余儀なくされた。
後方でなんとか堪えていた依織も、衝撃で体勢を崩し、橋の縁から滑り落ちかける。
「落ちる……! でも、こんなところでっ……!」
【諦めの悪さLv.1】。彼女は泥臭く、必死にロープに指を引っ掛け、奈落への転落をすんでのところで回避する。
混沌。阿鼻叫喚。
だが、その地獄絵図の中、ただ一人、笑みを浮かべた者がいた。
クロス・ロードラン。
「フ……面白い!」
彼の選んだ【王道Lv.3】は、単なる最短ルートではない。あらゆる障害、アクシデントを織り込み、それでもなお勝利へと至る「最適解」を示す道。狂騒の衝撃波で橋が崩壊することすら、彼の「王道」の想定内だったのだ!
彼は崩れゆく足場をまるで飛び石のように駆け抜け、無人の荒野と化した橋の中央、ボーナスフラッグへと悠々と到達する。
「させないっ!」
ロープから復帰した青空火炎が、その光景に吼えた。
「悪の旗なんて、あたしが燃やし尽くす! 食らいなさい! 『ジャスティス・バーナー』!!」
正義の怒りが炎となり、その掌から灼熱の奔流が放たれる!
だが、クロスの方が一枚上手だった。彼は火炎の攻撃を予測していたかのように、フラッグを引っこ抜くと同時に身を翻す。轟々と唸りを上げる炎は、彼の背後を空しく舐め、フラッグの布地をわずかに焦がすに留まった。
『ウッヒョオオオオオオ!! 見たか今のをォ!? 鬼姫狂騒のクレイジーシャウトが橋を半壊! だがクロス・ロードラン、それを読んでいたかのような神ムーブでフラッグをゲットォ! さらに青空火炎の正義の炎を紙一重で回避ィ! これだ! これが見たかったんだよ俺はァァァ!!』
ジャック・ポットの興奮が最高潮に達する。
そして、この混沌は、もう一人の男に好機を与えていた。
コダワリである。
彼は、狂騒が作り出した惨状と、自らが撒き散らした「教示」が無価値とされたこの状況を前に、能面の下でほくそ笑んだ。
「――『出る杭は打たれる』」
諺が、彼の唇から紡がれる。
まさに今、目立とうとした者(狂騒、火炎)が悉く状況を悪化させ、結果的に失敗している。彼のいる状況は、この諺と完全にシンクロしていた。
その瞬間、
コダワリの魔人能力【王里虫角】が発動!
ゴッ!
彼の全身から、黒いオーラが立ち上る。
「おお……力が、力がみなぎる……! これぞコトノハの神髄!」
能面の男は、常人離れした速度で、崩れた足場をものともせずにゴールへと猛進を開始した!
レースは最終局面へともつれ込む。
先頭は、巨大なフラッグを抱え、その重さにやや速度を落としたクロス・ロードラン。
それを猛追するのは、中国武術の体捌きで驚異的なリカバリーを見せた姚静梅。
三番手は、怒りで我を忘れ、【ジャスティス・バーナー】を足元に噴射してジェット推進で突き進む青空火炎。
そしてその後ろから、不気味なオーラを纏った
コダワリが、地を揺るがす勢いで迫る!
ゴールテープが目前に迫る。
クロスが、抱えたフラッグのせいでわずかにバランスを崩した。
その一瞬の隙を、姚静梅は見逃さない。
シュッ!
彼女の身体が、緑色の閃光となってクロスの横をすり抜ける!
「なにっ!?」
一番にゴールテープを切ったのは、チャイナドレスの少女、姚静梅!
僅差でクロス・ロードランがフラッグを抱えたままゴール!
続いて、炎を撒き散らしながら青空火炎が飛び込み、不気味な足音を立てて
コダワリがゴールイン。
その後、命からがら橋を渡り切った
高萩依織と、自分の行いの結果に気づいていない鬼姫狂騒が、へとへとになりながらゴールゲートをくぐった。
『フィニーーーーーッシュ!! なんというレース! なんという結末だァ! 1位は姚静梅! 驚異の追い上げで見事トップを勝ち取ったァ! だが、ボーナスフラッグを手にしたクロス・ロードランも高得点間違いなし! そして、このクレイジーなステージを作り出した鬼姫狂騒! 悪の旗を燃やそうとした青空火炎! お前らのエンタメっぷり、俺は高く評価するぜェ! ハッハァー! 次のステージも、この調子で殺し合えよ、クズどもォ!』
ジャック・ポットの哄笑が、勝者と敗者の入り乱れるゴールエリアに、いつまでも響き渡っていた。
▼獲得ポイント
クロス・ロードラン: 130点 (2位: 80pt + ボーナスフラッグ: 50pt)
姚 静梅: 100点 (1位: 100pt)
青空 火炎: 90点 (3位: 70pt + エンタメポイント: 20pt)
鬼姫 狂騒: 70点 (6位: 40pt + エンタメポイント: 30pt)
コダワリ: 60点 (4位: 60pt)
高萩 依織: 50点 (5位: 50pt)
インターバル ~ 第2ステージ課題発表
第1ステージの激闘が終わると、参加者たちは瞬く間にWCBのスタッフによって回収され、白一色で統一された無機質な待機室へと個別に収容された。先ほどのレースで負った擦り傷や打撲、精神的な疲労は、WCBが誇る超速医療技術によって瞬く間に治療され、肉体的には完璧な状態へと戻されていく。
だが、心の傷はそう簡単には癒えない。
【クロス・ロードランの待機室】
クロスは壁に映し出された第1ステージのリプレイ映像を、静かに見つめていた。フラッグを掲げゴールする自身の姿。しかし、その寸前に緑の閃光が彼を追い抜いていく。
「姚静梅……か。見事な体捌きだ。あの状況から逆転するとは」
悔しさはない。むしろ、その胸には新たな好敵手を見つけたことへの歓喜が燃え盛っていた。
「君もまた、我が『師』の一人。次こそは、我が『覇道』の前にひれ伏させてみせよう」
彼の瞳は、すでに次なる戦場を見据えていた。
【姚静梅の待機室】
静梅は、目を閉じ瞑想していた。勝利の余韻に浸るでもなく、ただ静かに呼吸を整えている。彼女の脳裏に浮かぶのは、主であるジャニス・チャンの顔。
「(まだ、足りない。この程度の勝利で満足していては、ジャニス様のお役には立てない。次も、その次も、勝ち続けなければ……)」
彼女にとってこのレースは、己の武を示すと同時に、組織への忠誠を示すための試練なのだ。1位という結果にも驕ることなく、彼女の闘志はより鋭く研ぎ澄まされていた。
【青空火炎の待機室】
「くっそー! あの旗、あとちょっとで燃やせたのに! しかもあのクロスって奴、なんかスカしててムカつくー!」
火炎は待機室の床をドカドカと踏み鳴らし、怒りを露わにしていた。彼女の正義は、悪の象徴たるフラッグを燃やすことにも、それを手にしたクロスを打ち負かすことにも失敗したのだ。
「次は絶対負けない! ああいう奴こそ、あたしの正義の炎で心を入れ替えさせてやるんだから!」
【超回復Lv.3】のスキルは、彼女の有り余る体力だけでなく、そのポジティブな精神力も瞬時に回復させていた。
【鬼姫狂騒の待機室】
「いやー、みんな速かったなー! あたし、応援で声出しすぎちゃったかも! ちょっと喉ガラガラだよー」
狂騒はケラケラと笑いながら、備え付けのミネラルウォーターを飲んでいた。自分の絶叫が橋を半壊させ、大混乱を引き起こしたなどとは夢にも思っていない。むしろ、自分の応援でみんなが頑張れたとさえ思っている節がある。
「次はもっとちゃんと応援歌、歌ってあげなきゃ! 『呪い』か『樹海の糸』か、どっちがいいかなー?」
彼女の【善人Lv.3】の思考は、あまりにも純粋で、それゆえに恐ろしかった。
それぞれの思惑が渦巻く中、待機室の壁面モニターが突如としてノイズを発し、あの忌々しい顔が映し出された。
『ヘイヘイヘーイ! 休憩は終わりだ、クズども! 第1ステージの無様な姿、全世界の視聴者が腹を抱えて笑っていたぜェ! 特に鬼姫狂騒! お前のシャウトは最高だった! まさか橋をぶっ壊すとはな! おかげで視聴率がハネ上がったぜ!』
ジャック・ポットの煽りに、狂騒は「えへへ、そうかな?」と照れ笑いを浮かべる。他の参加者たちは、苦々しい表情でモニターを睨みつけた。
『さて、傷も癒えたところで、早速次の地獄へご招待だ! 第1ステージで稼いだポイントなんて、あっという間にひっくり返る可能性があるからな! 油断してんじゃねえぞ!』
ゴゴゴゴゴ……と再び地響きのようなSEが鳴り響く。
モニターに映し出されたのは、無数の車が猛スピードで行き交う、巨大なハイウェイだった。
『第2ステージは……【地獄のデス・ロード】!』
ジャックの声が、次なる死のゲームのルールを解説していく。
『見ての通り、片側8車線のクソデカいハイウェイだ! 貴様らはこの鉄の棺桶がビュンビュン行き交う道路を、己の足だけで横断してもらう! 反対側に見えるゴールゲートを最初にくぐった奴から、順位ポイントくれてやるぜ!』
モニターには、CGで作成された参加者アバターが、巨大なダンプカーに撥ねられミンチになる映像や、暴走タクシーに弄ばれ、スポーツカーの爆発に巻き込まれるシミュレーション映像が、悪趣味なBGMと共に流される。
『もちろん、ただの車じゃねえ! 鈍重だが当たれば即死の【ダンプカー】! 予測不能な動きで翻弄する【暴走タクシー】! 最速だが爆発しやすい【スポーツカー】! そして……』
ジャックはそこで一度言葉を切り、悪魔のようにニヤリと笑った。
『目玉はコイツだ! 時々走ってくる【タンクローリー】! コイツを上手いこと爆発させりゃあ、広範囲のライバルをまとめてお掃除できるぜェ! 最高の花火を打ち上げてみやがれ!』
さらに、ジャックはボーナス要素についても言及する。
『今回は特別ボーナスがもう一つ! 頑丈な【現金輸送車】も走ってる! コイツをこじ開けて、中の現金をゴールまで運べば、1000万円につき1GPPをくれてやる! 上限は50GPP、つまり5億円分だ! 腕力に自信のあるクズは、一攫千金を狙ってみるのも一興だな!』
金と暴力。人間の最も原始的な欲望を、ジャックは巧みに煽り立てる。
『ただし! 空も安全だと思うなよ! このステージでは、一定時間ごとにゲリラ豪雨が発生する!』
モニターの映像が切り替わり、空から無数の鉄骨や金ダライが雨のように降り注ぎ、飛行するアバターを叩き落とす様子が映し出される。
『WCBが誇る気象兵器が、お前らの頭上に死の恵みを降らせてやるぜェ! 高みの見物を決め込もうなんて甘い考えは、スクラップになって後悔するがいい!』
ジャック・ポットは黄金のマイクを握りしめ、最後の言葉を叩きつけた。
『さぁ、準備はいいか? 才能はあるが頭のネジがぶっ飛んだ魔人ども! 次の舞台は、アスファルトに刻むお前らの血と涙の物語だ! 誰が最初にゴールテープを切り、誰が最初に鉄の塊とキスをするのか! 全世界が注目してるぜェ!』
モニターが暗転し、待機室の壁がスライドして開く。
その先には、排気ガスとタイヤの焦げる匂いが充満する、地獄のハイウェイが広がっていた。
轟音を立てて走り去る車、車、車。
その向こう側に、微かにゴールゲートの明かりが見える。
六人の魔人たちは、それぞれの覚悟を胸に、新たな死地へと足を踏み出すのだった。
第2ステージ:『地獄のデス・ロード』
『さぁ、ショータイムだクズども! 鉄と硝煙の地獄を、その自慢の足で渡りきってみやがれ! スタートォォォォ!』
ジャック・ポットの号令と共に、6人の魔人が一斉に片側8車線のハイウェイへと身を投じた。
その瞬間、最も純粋で、最も狂った行動に出たのは、シスター服の少女、鬼姫狂騒だった。
「はーい、渡りまーす!」
彼女はなんと、交通ルールを守る小学生のように、ぴんと右手を挙げたのだ! 【善人Lv.3】から放たれる、あまりにも場違いで純粋なオーラ。それに気圧されたのか、あるいは単なる気まぐれか、先頭の数台のスポーツカーが急ブレーキを踏み、彼女の前で停止した。
「ありがとうございまーす!」
屈託なく礼を言う狂騒。だが、後続のダンプカーや暴走タクシーが、そんな聖人ムーブに付き合うはずもない。クラクションの嵐が鳴り響く。
「もう、危ないなあ。ちゃんと止まってくれないと!」
彼女は【ハイパワー大型メガホンLv.1】を構えると、大きく息を吸い込んだ。
「みんなー! あたしのためにー! とーまーあってーくーれーないとー! 『呪い』をかけちゃうぞぉぉぉぉぉぉっ!!」
――それは、歌ではなかった。
【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"】。彼女の【音痴Lv.3】の美声がメガホンを通じて増幅され、指向性を持った精神汚染の波動となってハイウェイに放たれた。
キキィィィィィィッ!! ドッゴオオオオオン!!!
歌を聴いた運転手たちが、次々と心身に変調をきたす!
ある者は激しい頭痛に顔を歪め、ある者は突然の吐き気に襲われ、またある者はハンドル操作を誤り、隣の車線の車に激突した!
狂騒の前方、数車線に渡って玉突き事故が発生。車が折り重なり、黒煙が上がる。
それは、偶然にも、彼女が渡るための「道」を切り開いていた。
さらに運の良いことに、衝突した現金輸送車のドアが衝撃で歪み、中からおびただしい数の札束が宙を舞う!
「わー、お空からお金が! きっとあたしの日頃の行いが良いからだ!」
舞い散る現金を浴びながら、狂騒は無邪気に喜んだ。
『ハッハァー! なんだ今の!? 歌か!? 歌なのか!? 鬼姫狂騒のデスボイスが、ハイウェイを地獄絵図に変えたァ! しかも現金輸送車までクラッシュ! こいつはとんでもねえエンターテイナーだぜェ!』
ジャック・ポットが絶叫する。
この混沌を、好機と見た男がいた。クロス・ロードランである。
「フン、面白い余興だ。だが、その道は我が『覇道』が切り開く!」
彼は姚静梅に襲い掛かるフェイントをかけつつ、真の目的――【邪道Lv.3】による道路封鎖を実行する。
狂騒が作り出した事故現場。その手前の車線を走るタンクローリーのタイヤへ、彼は寸分の狂いもなく小石を蹴り込んだ!
ドッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
バランスを崩したタンクローリーは横転し、ハイウェイを滑走!
そこに後続の暴走タクシーが突っ込み、巨大な火柱が天を焦がした!
大爆発は、狂騒が作り出した事故のバリケードをさらに強固なものとし、後続の参加者を完全に分断する巨大な炎の壁を作り上げた。
だが、クロスの狙いはそれだけではない。爆風は、宙を舞っていた大量の現金を彼の元へと吹き寄せたのだ!
「いただくぞ」
彼は爆風で集まった約5000万円分の札束を素早く回収すると、炎上するハイウェイを悠々と渡り始めた。
この大惨事に巻き込まれたのが、アイドル・高萩依織だ。
「きゃああああああっ!」
爆風に煽られ、吹き飛ばされる依織。彼女の身体はアスファルトに叩きつけられ、そこに猛スピードのスポーツカーが迫る! 絶体絶命!
――だが、彼女は死ななかった。
轢かれる直前、彼女の身体が淡い光を放つ。
魔人能力【Awaken Now】。致命的なダメージを負うことで、彼女の身体能力は限界を超えて覚醒したのだ!
「いっ……たい……! でも、こんなことで、私の夢は終わらせないんだから!」
全身打撲の激痛も、【諦めの悪さLv.1】の根性で捻じ伏せる。覚醒した身体能力で、彼女は炎と煙の中を、ゴール目指して走り出した!
一方、炎の壁の向こう側では、残された三人の魔人が立ち往生していた。
「なんてことを……! 一般人を巻き込むなんて、絶対に許さない!」
青空火炎の正義の炎が燃え上がる。彼女は現金輸送車を襲う(ように見えた)クロスを撃退すべく、炎の壁を突っ切ろうとする。
「食らいなさい! 『ジャスティス・バーナー』!」
炎が炎を相殺し、火炎は強引に道をこじ開ける!【運動神経Lv.3】で爆発四散した車の残骸を飛び越え、先行する者たちを追う!
姚静梅は、冷静だった。
彼女は【中国武術Lv.3】の技で、迫りくる車の流れを紙一重で見切り、最も安全なルートを瞬時に判断する。彼女の【観察眼】は、炎の壁の中で最も強度が低く、突破可能な箇所を正確に捉えていた。彼女は燃え盛る車体を足場に、アクロバティックに炎の海を越え、火炎に続く。
そして、能面の男、
コダワリ。
彼は炎上する現金輸送車と、舞い散る札束を前に、不気味に呟いた。
「――『濡れ手で粟』」
まさに今の状況。他者(狂騒)が起こした騒動に乗じて、何の苦労もなく大金(粟)を得ようとしている。彼の状況は、この諺と完全にシンクロした。
魔人能力【王里虫角】が発動し、彼の肉体が再び黒いオーラを纏う!
「フンヌッ!」
パワーアップした彼は、なんと炎上する現金輸送車の残骸の扉を怪力でこじ開け、中に残っていた札束をごっそりと掴み出した!およそ3000万円。それを懐に詰め込むと、彼もまた猛然とゴールへと走り出した。
レースは最終盤。
先頭は、5000万円を抱えたクロス・ロードラン。
それを、覚醒した身体能力で猛追する高萩依織! 彼女の瞳には、トップアイドルへの執念が燃えている。
三番手、四番手は、正義の怒りに燃える青空火炎と、冷静沈着な姚静梅のデッドヒート!
そして、大金を抱えて笑う
コダワリと、何が起こったのかよく分かっていない鬼姫狂騒が、それに続く!
ゴールテープが目前に迫る!
クロスが、抱えた札束の重みでわずかに失速する。
その隙を、覚醒した依織は見逃さない!
「私の……邪魔を……しないでっ!」
アイドルの可憐な姿からは想像もつかない、鬼気迫る表情で、彼女はクロスを抜き去った!
一番にゴールテープを切ったのは、満身創痍のアイドル、高萩依織! まさかの大逆転劇だ!
僅差でクロス・ロードランが5000万円と共にゴール!
続いて、火炎と静梅がほぼ同時にゴールイン。
その後、3000万円を抱えて満足げな
コダワリが、そして最後に、首をかしげながら鬼姫狂騒がゴールした。
『ウッヒョオオオオオオオオ!!!!! なんだこのレースは! なんだこの結末はァ! 鬼姫狂騒がハイウェイを破壊し、クロス・ロードランがそれを戦略に組み込み、高萩依織が死の淵から蘇って大逆転勝利だァーーッ! これだ! これこそがエンターテイメント! これこそが
DEATH RACE G.P.だァァァ! 視聴率も爆上がりだぜェ! ハッハァー!』
ジャック・ポットの絶叫が、黒煙の立ち上る地獄のハイウェイに、狂ったように響き渡っていた。
▼獲得ポイント
クロス・ロードラン: 130点 (2位: 80pt + 現金ボーナス: 50pt)
高萩 依織: 130点 (1位: 100pt + エンタメポイント: 30pt)
コダワリ: 100点 (5位: 50pt + 現金ボーナス: 30pt + エンタメポイント: 20pt)
姚 静梅: 70点 (4位: 60pt + エンタメポイント: 10pt)
青空 火炎: 70点 (3位: 70pt)
鬼姫 狂騒: 70点 (6位: 40pt + エンタメポイント: 30pt)
インターバル ~ 第3ステージ課題発表
『ハッハァー! 見たか、全世界の視聴者ども! これぞDEARH RACE G.P.の真骨頂! 予測不能! 理不尽! そして、最高にエキサイティングな結末だァ!』
第2ステージを終えた参加者たちが個別の待機室に戻ると、再びモニターにジャック・ポットの興奮しきった顔が映し出された。彼はまだ、先ほどのレースの余韻に浸っているようだった。
『まずは、今回のMVP、いや、MVQ! モスト・ヴァリアブル・クズは文句なしに高萩依織ィ! お前だ!』
指を突きつけられ、依織はビクッと肩を震わせる。
『一度は完全に死んだかと思ったぜ! だが、そこからの【Awaken Now】! 執念の復活劇! 最後にゃあ、トップを走ってたクロス・ロードランをぶち抜いてのゴール! 崖っぷちアイドルが見せたあの根性! あの気迫! 視聴者の心をガッチリ掴んだ! 文句なしのエンタメポイント30ptくれてやる! よくやったぜ、走るコンテンツ!』
突然の賛辞に、依織は戸惑いながらも頬を赤らめる。視聴者の人気が上がっているという実感は、彼女に【自信】を与えていた。
『そして、このステージの主役をもう一人挙げるとするなら……鬼姫狂騒! お前の歌声はもはや災害だ! まさかハイウェイを機能不全に陥らせるとはなァ! 予期せぬトラブル! 大規模な破壊! これぞエンターテイメントの華! お前にも30ptだ! 次はWCB本社ビルをぶっ壊してくれよなァ!』
「えへへ、歌を褒められると照れるなあ」と、狂騒はやはりズレた感想を漏らす。
『さらに! 濡れ手で粟、漁夫の利を地で行った男、コダワリ! お前のその諺能力、実に面白い使い方をするじゃねえか! 混沌の中からちゃっかり大金せしめてんじゃねえぞ! その抜け目のなさに20ptだ!』
『最後に、姚静梅! お前の冷静な状況判断と、炎の中を舞うような美しい動きは、一部の玄人視聴者にバカウケだったぜ! おまけで10ptくれてやる!』
ジャックは一息つくと、にやりと笑った。
『それにしてもクロス・ロードランよぉ。お前の【邪道】は見事だったぜ。タンクローリーを爆破して道を塞ぎ、現金をせしめる……完璧な作戦だったのになァ。最後の最後で、死んだはずのアイドルに足元を掬われるとは! だが、安心しろ。お前のその完璧な計画と、無様な敗北のコントラストは、最高のドラマになったぜ! ボーナスポイント50ptと合わせて、トップの座は守れたんだから感謝しろよな!』
クロスはモニターを静かに見つめ、口元に笑みを浮かべた。
「フ…高萩依織、か。我が『覇道』を打ち破るとはな。面白い。実に面白い」
彼は敗北を糧に、さらに闘志を燃やす。
『青空火炎! お前は今回、完全に蚊帳の外だったな! 正義だなんだと叫んで炎をぶっ放すだけじゃ、このレースじゃ勝てねえってこと、そろそろ学んだかァ? ま、お前みたいな真っ直ぐなバカがいるからこそ、他のクズのダーティなやり口が光るんだがな! ご苦労さん!』
「なっ……! 次こそは、あんたたちの悪事をあたしが止めてみせるんだから!」
火炎の悔しそうな声が、待機室に響いた。
ジャックは一通り参加者を煽り終えると、満足げに頷き、本題に入った。
『さて、傷も癒え、懐も温まったところで、お次のお遊戯の時間だ! 第3ステージへとご招待するぜ!』
モニターの映像が切り替わり、上空から撮影された巨大な迷宮が映し出される。それはまるで生き物のように、不気味な棘の茨で形成されていた。
『第3ステージは……【貪食の迷宮庭園(グリード・ラビリンス)】!』
『貴様らには、この悪趣味な茨の迷宮を攻略してもらう! スタート地点は全員バラバラ! 迷宮の外周に設けられた、それぞれの専用ゲートから入場だ! ゴールは、あの中央に見える不気味な塔だぜ!』
カメラがズームし、迷宮の中心にそびえる石造りの塔を大写しにする。塔には扉があるが、鍵穴のようなものは見当たらない。
『だが、ただゴールすりゃいいってもんじゃない。あの塔の扉は、一筋縄じゃ開かねえ。扉を開けるには、この迷宮のどこかに自生している【三日月草】って植物が必要だ』
モニターに、淡い光を放つ三日月型の美しい花の映像が映し出される。
『この【三日月草】を手に入れて、中央塔に到達すること。それが今回のクリア条件だ。もちろん、最初にゴールした奴から高ポイントなのは言うまでもねえな』
ジャックは、指を立てて注意を促す。
『だが気をつけろよ。この庭園は、お前らをディナーのメインディッシュだと思ってる、腹を空かせた連中でいっぱいだからな!』
映像が切り替わり、庭園に潜む「人喰い植物」たちの生態が紹介されていく。
『音や振動に反応して、侵入者を丸呑みにする巨大アゴ【スナップ・ドラゴン】!』
CGアバターが、地面から突き出た巨大な顎に一瞬で噛み砕かれる。
『触れた者の感覚を麻痺させる毒を持つ美しい蔦【ポイズン・アイビー】!』
アバターが壁の蔦に触れた途端、ふらふらと足元がおぼつかなくなり、スナップ・ドラゴンの餌食になる。
『甘い香りで獲物を誘い、幻覚を見せる【ブラッド・リリー】!』
アバターが美しい花に近づくと、花粉を浴びて酩酊状態になり、自ら茨の中に突っ込んでいく。
『そして、近くで衝撃を与えると、周囲の生き物を金縛りにする絶叫を放つ【スクリーム・マンドラゴラ】! こいつの近くでドンパチやらかすと、自分も敵もまとめて動けなくなるから気をつけな!』
悪趣味な紹介映像が終わり、ジャック・ポットが悪魔的な笑みを浮かべた。
『【三日月草】は、そう簡単には見つからねえ。だが、他人の持ってるものを奪うのは、いつだって一番手っ取り早い解決策だよなァ? 探し出すか、奪い取るか。お前たちの本性が試されるってわけだ!』
彼は黄金のマイクを握りしめ、最後の言葉を叩きつけた。
『さぁ、頭脳と運と、そして欲望が試される迷宮探索の始まりだ! 誰が最初に光る草を見つけ、誰が最初に植物の餌食となるのか! 今回はどんなドラマを見せてくれるのか、楽しみにしてるぜェ!』
モニターが暗転し、待機室の壁が再び開く。
目の前には、不気味な静寂に包まれた、巨大な茨の迷宮の入口が口を開けていた。
六人の魔人たちは、それぞれ異なるゲートから、次なる試練の舞台へと足を踏み入れるのだった。
第3ステージ:「貪食の迷宮庭園」(グリード・ラビリンス)
茨の迷宮に足を踏み入れた参加者たちを、不気味な静寂と、むせ返るような植物の匂いが包み込む。それぞれが異なる入口からスタートし、孤独な探索が始まった。
その静寂を、最初に、そして最も派手に破ったのは、やはりこの男だった。
クロス・ロードラン。
「フン、小賢しい罠だ。だが、我が『覇道』の前には無意味!」
彼は迷うことなく【覇道Lv.3】を選択。その闘争本能は、迷宮のギミックやゴールへの最短ルートではなく、この地に巣食う全ての「敵」――人喰い植物へと向けられた。
ゴウッ! と音を立てて通路を塞ぐ【スナップ・ドラゴン】の巨大な顎。クロスはそれを意にも介さず、正面から突撃! 鋼のような拳を叩き込み、その顎を根元から粉砕する!
壁を覆う【ポイズン・アイビー】は、彼が放つ覇気そのものに畏縮するように枯れ落ち、甘い香りで誘う【ブラッド・リリー】は、その花弁を無造作に踏み潰されていく。
彼の進む道は、文字通り「覇道」となり、後には植物たちの無残な骸だけが残された。疲労を知らぬその肉体は、まさに破壊の化身だった。
このクロスの破壊行脚は、他の参加者に予期せぬ影響を与えていた。
その一人、高萩依織。
彼女は【持久力Lv.2】と【諦めの悪さLv.1】を武器に、地道に【三日月草】を探していた。だが、彼女の進む先は、なぜか安全な道ばかり。人喰い植物の姿はほとんど見当たらない。
「あれ……? なんだか、拍子抜けするくらい静かね……」
それは、先行するクロスが、彼女の進路上の人喰い植物を粗方刈り取ってしまっていたからだった。この幸運に気づかないまま、依織は探索に集中する。そして、クロスの破壊の巻き添えを免れた茨の影に、淡い光を放つ一輪の花を見つけた。
「あった! 【三日月草】!」
幸運な発見に喜び、依織は慎重にそれを摘み取ると、中央の塔を目指して走り出した。
一方、その頃。別のエリアでは、もう一つの混沌が生まれようとしていた。
鬼姫狂騒である。
「わー、綺麗な植物がいっぱい! みんな、あたしの歌、聴きたいよねー?」
彼女は上機嫌で【ハイパワー大型メガホンLv.1】を構え、自慢の歌を披露し始めた。
【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"】が、迷宮に響き渡る。
植物に音楽を聴かせると良い効果がある、という生半可な知識と、彼女の【音痴Lv.3】の歌声、そして【善人Lv.3】の純粋な善意が混ざり合った結果、とんでもない化学反応が起きた。
ギギギギギ……! ズズズズズ……!
狂騒の歌を浴びた人喰い植物たちが、一斉に変異を始めたのだ!
スナップ・ドラゴンの顎はさらに巨大化し、ポイズン・アイビーは毒の濃度を増し、ブラッド・リリーはより強力な幻覚作用を持つ花粉を撒き散らし始める!
彼女の歌は、植物たちにとって最高の栄養剤兼成長促進剤となってしまったのだ!
「あれ? みんな元気になったみたい! よかったー!」
自分の行いの結果に気づかず、狂騒は満足げに頷く。そして、活性化した植物がうごめく茨の茂みの中に、ひときわ強く輝く【三日月草】が数本、新たに生えているのを発見した。
「あ、光るお花! きっとあたしの歌へのお礼だ! やったー!」
彼女は【怪力Lv.3】で邪魔な茨をなぎ払い、無邪気に【三日月草】を数本手に入れた。
この「狂騒ゾーン」に迷い込んでしまったのが、姚静梅だった。
彼女は【中国武術Lv3】と【観察眼[魔]】を駆使し、慎重に迷宮を進んでいた。だが、突如として周囲の植物が異常な活性化を始め、襲い掛かってくる。
「何だ、この気配は……!?」
甘い【ブラッド・リリー】の香りが、彼女の思考を鈍らせようとする。
「(このような幻惑、ジャニス様への【忠義心Lv2】を持つ私には通じぬ!)」
気合で幻覚を振り払うが、活性化した植物の猛攻は凄まじい。彼女は【チャイナドレスLv1】の裾を翻し、舞うように戦いながらも、苦戦を強いられていた。
そして、能面の男、
コダワリ。
彼はスタート地点からほとんど動かず、懐から取り出した【コトノハ教の経典LV.3】を広げていた。彼の狙いは、近くのスタート地点から迷宮に入ったであろう、クロス・ロードランへの布教だった。
『聞くが良い、覇道を謳う若者よ。真の強さとは、破壊にあらず。言葉にこそ宿る……』
しかし、当のクロスはすでに迷宮の奥深く。彼の【神聖Lv.1】の説法は、誰の耳にも届かず、虚しく風に消えるだけだった。布教が空振りに終わったと悟った彼は、次の行動に移る。
「……『時は金なり』」
彼は懐から、前のステージで手に入れた【現金3000万円】を取り出し、諺を唱えた。
【王里虫角】が発動。しかし、「時間」という概念と「金」という物質を消費するこの諺は、彼の状況と完全にはシンクロしなかった。
結果として、彼の身体能力がわずかに向上するに留まり、3000万円は砂のように消えていった。大した利益もないまま大金を失い、彼は呆然と立ち尽くす。
その頃、青空火炎は怒りに燃えていた。
「クロス・ロードラン! あなたのやり方は間違ってる! そんなのは正義じゃない!」
彼女はジャック・ポットに煽られた悔しさをバネに、【ジャスティス・バーナー】の炎を滾らせていた。その炎は、行く手を阻む人喰い植物を焼き払いながら、クロスの痕跡を追う。やがて、彼女は植物の残骸が散らばる道を進み、ついにその背中を捉えた。
「見つけたわね、クロス・ロードラン! その【三日月草】を渡しなさい!」
丁度その時、クロスは無造作に生えていた【三日月草】を一本、手に入れたところだった。
「フン、来たか、正義の小娘」
クロスが振り向く。二人の間を、緊張が駆け抜ける。
だが、その対決に水を差す、第三の絶叫が響き渡った。
「キィィィィィィィィィィィーーーーーーーッ!!!!」
火炎が植物を焼いた衝撃と、二人の対峙が放つ闘気が、近くに潜んでいた【スクリーム・マンドラゴラ】を刺激してしまったのだ!
強烈な音波が二人を襲い、その動きを数秒間、完全に停止させる!
「しまっ……身体が……!」
「うぐっ……!」
金縛りにあう二人。
その時、近くの通路からひょっこりと顔を出したのは、姚静梅だった。彼女は狂騒ゾーンから命からがら脱出し、偶然この場所にたどり着いたのだ。
彼女の目に映ったのは、金縛りで動けないクロスと火炎。そして、クロスの手に握られたままの【三日月草】。
彼女は一瞬逡巡したが、【マフィアLv1】としての冷徹な判断が勝った。
「……好機」
静梅は動けないクロスの手から、音もなく【三日月草】を抜き取ると、一礼もなくその場を去り、中央の塔へと走り去った!
やがて金縛りが解けた二人。
「あっ! 【三日月草】が!」
火炎が叫ぶ。クロスの手は空を握っていた。
「……姚静梅か。またしても、やられたな」
クロスは悔しげに、しかしどこか楽しそうに呟いた。
レースは、誰も予想しなかった形で決着した。
一番に中央塔の扉に【三日月草】をかざしたのは、漁夫の利を得た姚静梅!
続いて、幸運にも【三日月草】を早期発見した高萩依織がゴール。
その後、自らの歌で強化した植物たちと戯れながら、のんびりと鬼姫狂騒がゴール。
そして、互いにライバル心を燃やしながらも、手ぶらのままゴールせざるを得なかったクロスと火炎。
最後に、大金を失い、失意のままゴールした
コダワリだった。
『フィニーーーーーッシュ!! 勝者、姚静梅! まさかまさかの大逆転! クロスと火炎の頂上決戦(?)の隙を突く、見事なハイエナムーブだァ! これぞレース! これぞサバイバル! 依織の幸運も、狂騒の自業自得も、全てが最高のスパイスになったぜェ! ハッハァー!』
ジャック・ポットの哄笑が、不気味な迷宮庭園にこだましていた。
▼獲得ポイント
姚 静梅: 120点 (1位: 100pt + エンタメポイント: 20pt)
鬼姫 狂騒: 90点 (2位: 80pt + エンタメポイント: 10pt)
高萩 依織: 80点 (3位: 70pt + エンタメポイント: 10pt)
クロス・ロードラン: 10点 (失格: 0pt + エンタメポイント: 10pt)
青空 火炎: 0点 (失格: 0pt)
コダワリ: 0点 (失格: 0pt)
インターバル ~ 第4ステージ課題発表
『フィニーーーーーッシュ! いやー、今回も最高のドラマを見せてもらったぜェ!』
白亜の待機室に戻った参加者たちを、ジャック・ポットの歓声が迎える。しかし、その声色には、勝者への賛辞だけでなく、敗者への嘲笑が色濃く滲んでいた。
『まずは、今回のルールを正しく理解し、見事ゴールした3名に拍手を送ろう!』
モニターに、姚静梅、高萩依織、鬼姫狂騒の三人が映し出される。
『そして、残念なお知らせだ! クロス・ロードラン! 青空火炎! コダワリ! お前ら三人は、クリア条件である【三日月草】を手に入れられなかったので、失格だァ! 順位ポイントはゼロ! ゼロだぜゼロ! ハッハァー! 無様だなァ!』
ジャックの無慈悲な宣告に、三者三様の反応が返ってくる。
クロスは静かに目を伏せ、火炎は悔しさに唇を噛みしめ、コダワリは能面の下でわなわなと震えていた。
『さて、気を取り直してエンタメポイントの発表だ! まずは今回の勝者、姚静梅! お前のあの動き、最高だったぜ! クロスと火炎が睨み合ってる隙を突いて、スッと三日月草をかっさらう! まさにハイエナ! まさにマフィア! その狡猾で美しいムーブに20ptだ!』
静梅は静かに一礼する。その表情は変わらないが、内心では勝利の確信を強めていた。
『次に、鬼姫狂騒! お前の歌はもはや予測不能の環境兵器だな! 人喰い植物をパワーアップさせて、迷宮をさらなる地獄に変えるとは! おかげで姚静梅が苦戦する面白い絵が撮れたぜ! その功績に20pt!』
「えへへ、みんな元気になってよかった!」と、狂騒はやはり何もわかっていなかった。
『そして、高萩依織! お前は今回、ただただ運が良かっただけだな! だがな、運も実力のうちって言うだろう? クロスのおかげで安全な道を進み、あっさり三日月草を見つける! そのシンデレラストーリーっぷりに、同情票ならぬラッキーポイントで10ptくれてやる!』
「ら、ラッキー……」
依織は複雑な表情を浮かべる。実力で勝ち取った勝利ではないという自覚が、彼女の心に影を落としていた。
ジャックは一通り勝者を称えると、愉悦に満ちた表情で失格者たちに視線を向けた。
『さて……失格者どもよ。お前らにはエンタメポイントなんざくれてやる義理もねえんだが……クロス・ロードラン、お前の覇道は実に見応えがあったぜ。人喰い植物を片っ端からなぎ倒していく様は、まさに破壊神! ま、そのせいで他のプレイヤーを助けちまったり、最後の最後で油断して獲物を横からかっさらわれたりと、詰めの甘さが目立ったがな! その無駄な破壊活動に、お情けで10ptくれてやる! 次はちゃんと頭を使えよな!』
「……フン。感謝する」
クロスは短く応じる。ポイントよりも、姚静梅への雪辱の機会を失ったことの方が、彼にとっては大きな屈辱だった。
『さぁ! 気分は最悪か、敗者ども! だがレースは続くぜ! いつまでもメソメソしてんじゃねえ! 次のステージで挽回するチャンスは、まだ残されてるからな!』
ジャックが指を鳴らすと、モニターの映像が切り替わる。映し出されたのは、どこまでも広がる紺碧の海と、太陽に照らされて輝く水面だった。
『第4ステージは……【ポロリもあるよ! 海中のプレッシャー・ハント】!』
『舞台は、このクレイジー・アトランティスの外海だ! 貴様らには、この美しい海に潜り、海底に眠る【真珠】を手に入れて、無事に水面まで戻ってきてもらう!』
モニターには、CGアバターが美しいサンゴ礁の間を泳ぎ、きらきらと輝く真珠貝を見つける映像が流れる。しかし、その雰囲気はすぐに一変する。
『もちろん、ただの海水浴じゃねえ! 深く潜れば潜るほど、お前らの身体には強烈な【水圧】がかかる! 動きは鈍り、体力は奪われる! さらに、予測不能な【海流】がお前らを奈落の底へと引きずり込もうとするだろう!』
『そして最も重要なのが【酸素】だ! 支給されるボンベの酸素には限りがある! 激しく動けばそれだけ消費も早い! 特に深海での活動は、面白いように酸素ゲージが減っていくぜ! 酸素が尽きれば、あとはブクブクと泡を吹いて海の藻屑だ! もちろん、リタイアってことでスタッフがすぐに回収はしてやるが、ポイントはゼロだぜ!』
さらに、ジャックは悪趣味な笑みを浮かべた。
『海の中には、可愛いお魚だけじゃねえ! 毒を持つ【クラゲ】の群れ! 飢えた【サメ】! そして、お前らを触手で絡めとる【ダイオウイカ】! 海の仲間たちが、お前らを心から歓迎してくれるぜェ!』
映像には、アバターが次々と危険生物に襲われ、無残に散っていく様子が映し出される。
『ボーナスポイントは、手に入れた【真珠】1つにつき10GPP! 最大5つ、50GPPまで加算される! 欲をかいて深くまで潜り、真珠を探し回るか、安全策で早々に浮上するか……お前らのチキンっぷりが試されるな!』
そして、ジャックはひときわ声を大きくし、下卑た笑みを浮かべた。
『そして、今回のスペシャル・エンタメポイント! それはズバリ、【ポロリ】だ!』
モニターに、水着姿の女性参加者のアバターが、サメに襲われたり海流に揉まれたりして、水着がずれたり破れたりする映像がデカデカと映し出される。
『激しい海中での活動や、クリーチャーとのバトルで、支給された水着がどうなるか……! 世界中の視聴者が固唾をのんで見守ってるぜ! 健康的なお色気から、まさかのハプニングまで! 素晴らしいポロリを見せてくれた参加者には、俺の独断と偏見で、超高額のエンタメポイントをくれてやる! 男もだ! 筋肉美を見せつけろ!』
ジャック・ポットは黄金のマイクを握りしめ、最後の言葉を叩きつけた。
『さぁ、準備はいいか? 次の舞台は、恐怖と欲望と、ほんの少しのお色気が渦巻く青い地獄だ! 誰が最も多くの真珠を手にし、誰が最初に魚のエサになるのか! そして、誰が最高のポロリを披露してくれるのか! 楽しみでちんちんが爆発しそうだぜェェェーーーッ!!』
モニターが暗転し、待機室の壁が開く。
その先には、太陽が照りつける桟橋と、どこまでも広がる青い海。
そして、それぞれのサイズに合わせた水着と、心許ない大きさの酸素ボンベが置かれていた。
六人の魔人たちは、それぞれの覚悟と、ほんの少しの羞恥心を胸に、新たな死地へと足を踏み出すのだった。
第4ステージ:『ポロリもあるよ! 海中のプレッシャー・ハント』
『スタートォォォォ! さあ、自慢の肉体を全世界に晒しやがれ! そして、魚のエサになる前に真珠を持って帰ってこい!』
ジャック・ポットの号令と共に、水着姿の参加者たちが一斉に海へと飛び込んだ。
だが一人、青空火炎だけがその場に留まり、天を仰いだ。
「……もう、空回りはしない」
彼女は両手を空に掲げると、溜め込んだ正義の激情のすべてを、無人の空へと解き放った!
『ジャスティス・バーナー』!
轟音と共に巨大な火柱が天を突き、彼女の心から熱と焦りが消えていく。残ったのは、氷のような冷静さ。瞳から星型の輝きが消え、静かな闘志を宿した彼女は、音もなく海へと入っていった。
水中では、すでに各々の戦いが始まっていた。
クロス・ロードランは、驚くべき行動に出る。彼は【王道Lv3】を選択すると、自らの心肺機能を極限まで低下させ、仮死状態となって海底へと沈んでいく。生命活動を最小限に抑えることで、彼は危険生物に「死体」と誤認させ、酸素消費をほぼゼロに抑えていたのだ。まさに、王者の潜水。
姚静梅は、水中でもその実力を遺憾なく発揮していた。黒の競泳水着が、彼女の引き締まった肉体を際立たせる。【中国武術Lv3】の体捌きは、水の抵抗を最小限に抑え、流れるように彼女を深海へと導く。彼女の【観察眼】は、サンゴの影や砂地に隠れた真珠貝を的確に見つけ出し、すでに2つの真珠を手にしていた。
高萩依織は、堅実だった。派手な【可愛さLv.3】の水着に身を包みながらも、彼女は【持久力Lv.2】を活かし、比較的浅い場所でじっくりと真珠を探す。やがて一つの真珠貝を見つけると、彼女は深追いせず、すぐに浮上を開始した。トップ争いよりも、着実にポイントを稼ぐことを選んだのだ。
そして、この静かな水中戦に、いつもの混沌をもたらす者がいた。
鬼姫狂騒である。
「海の中でも、あたしの歌は届くよねー!」
水中であるにもかかわらず、彼女は【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"】を発動!
ごぼごぼという気泡と共に放たれた彼女の【音痴Lv.3】の歌は、音波となって海中を伝播していく!
その結果は、凄まじかった。
ギョギョギョギョッ!?
周囲を回遊していたサメの群れが、狂騒の歌(超音波)に脳を焼かれ、パニック状態に陥った!
彼らは方向感覚を失い、無差別に周囲の動くものへと襲いかかり始める!
「きゃあああ!?」
運悪く、そのパニックに巻き込まれたのが、浮上を開始した高萩依織だった。
興奮したサメの一匹が、彼女に猛然と突進! その鋭い歯が、彼女の【可愛さLv.3】の水着の肩紐を食いちぎった!
『ポロリきたぁぁぁぁぁぁっ! 高萩依織、サメのナイスアシストで片乳ポロリだァ! いいぞサメ! もっとやれ! 視聴率がうなぎ登りだぜェ!』
ジャック・ポットの興奮した声が、オーヴィジョンを通じて全参加者のゴーグルに響き渡る。
「なっ……!?」
依織が羞恥に顔を赤らめた、その時。
青い影が、サメと依織の間に割って入った!
冷静さを取り戻した、青空火炎である。彼女はWCBの思惑通りにさせまいと、自らの身を挺して依織を守ったのだ!
【運動神経Lv.3】でサメの突進をいなすと、彼女は依織の体を庇うように立ち、ずれた水着を素早く直してやる。
「大丈夫! WCBの好きにはさせない!」
その毅然とした態度に、依織は一瞬、見惚れた。
だが、この騒動は、別の悲劇を生んでいた。
能面の男、
コダワリ。彼は失格の絶望から、やけっぱちの行動に出ていた。
彼は海中で、わざと状況に適さない諺を叫んだ。
「――『焼け石に水』!!」
水中で火に関する諺。これ以上ないほどのミスマッチ。
その瞬間、【王里虫角】が発動し、彼の真上……海面に、天罰の如き巨大な落雷が突き刺さった!
ズッッッッドオオオオオオオオオオオオオオン!!!!
強力な電流が海中を走り、周囲にいた者たちを感電させる!
特に、パニックになっていたサメの群れは、電流をまともに浴びて白目を剥き、次々と気絶していった。
そして、この落雷の最大の被害者が、コダワリ自身だった。
【被雷経験LV.3】をもってしても、海中での大電流は致命的だった。彼は全身を痙攣させ、意識を失い、ブクブクと泡を吹きながら沈んでいく……。
『おーっと! コダワリ、自爆テロでリタイアだァ! だが、そのおかげでサメの群れが全滅! 青空火炎と高萩依織は九死に一生を得たぞォ! なんて美しい自己犠牲なんだ! ありがとうコダワリ! お前の死は無駄にはしねえぞォ!』
その頃、海底ではクロス・ロードランが目覚めの時を迎えていた。
仮死状態から復帰した彼は、温存した体力をフルに使い、無人の海底で悠々と5つの真珠を回収する。
「さて、帰るとするか」
目標を達成した彼の思考は、【王道】から【覇道】へと切り替わる。
彼は海底を蹴り、驚異的な速度で急浮上を開始! 水圧による肉体への負荷すら、【覇道Lv3】の闘志で踏み倒す!
その途中で、巨大なダイオウイカが彼の前に立ちはだかった。
「邪魔だ」
クロスは一瞬でイカの懐に潜り込むと、その巨大な頭部を手刀で切り裂いた!
ドバァッ! と大量の墨が海中に広がり、彼の肉体美あふれる上半身を黒く染め上げる。
『ウッヒョオオ! 見ろ! クロス・ロードラン、ダイオウイカの頭をポロリ(物理)だァ! 返り墨を浴びたその姿、まさに海の覇者! これはこれで最高のエンタメだぜェ!』
墨のカーテンが晴れた時、すでにクロスの姿はなかった。
彼は猛烈な勢いで海面へと到達していた。
レースの結果は明白だった。
一番に海面に到達したのは、5つの真珠とダイオウイカの墨をまとったクロス・ロードラン。
続いて、2つの真珠を手にした姚静梅。
そして、火炎に助けられながらも、1つの真珠を手にゴールした高萩依織。
火炎は、依織を守ることを優先したため、真珠は0個。
狂騒は、サメを追い払った(と思っている)後、のんびりと1つだけ真珠を拾ってゴール。
そして、コダワリは海の底へと消えた……(スタッフにより即座に救助された)。
▼獲得ポイント
クロス・ロードラン: 150点 (1位: 100pt + 真珠ボーナス: 50pt)
高萩 依織: 120点 (3位: 70pt + 真珠ボーナス: 10pt + ポロリボーナス: 40pt)
姚 静梅: 100点 (2位: 80pt + 真珠ボーナス: 20pt)
鬼姫 狂騒: 70点 (4位: 60pt + 真珠ボーナス: 10pt)
コダワリ: 20点 (リタイア: 0pt + エンタメポイント: 20pt)
青空 火炎: 0点 (失格: 0pt)
インターバル ~ 第5ステージ課題発表
『最高だ! 最高だぜお前ら! ポロリあり! 自己犠牲あり! 物理ポロリ(頭部)あり! 第4ステージは、俺の予想を遥かに超える極上のエンターテイメントだったぜ!』
熱狂冷めやらぬジャック・ポットが、待機室のモニターでがなり立てる。その顔は興奮で紅潮していた。
『まずは、残念なお知らせからだ! 青空火炎! お前は今回、クリア条件である【真珠】を1つも手に入れられなかったので、またしても失格だ! ハッハァー! 二連続失格! 正義ごっこも大概にしろよなァ!』
モニターに大写しにされた火炎は、しかし、以前のように悔しさを露わにはしなかった。ただ静かに、モニターの向こうのジャックを睨みつける。その瞳には、WCBへの揺るぎない敵意が宿っていた。
『というわけで、順位が繰り上がり、4位は鬼姫狂騒だ! おめでとう! さて、気を取り直してエンタメポイントの講評だ!』
ジャックは咳払いを一つすると、ニヤニヤと下品な笑みを浮かべた。
『今回のトップ・オブ・ザ・ポロリは、もちろん高萩依織! お前だ! サメに水着を食いちぎられ、全世界の視聴者の前にその美しい胸を晒した! あの瞬間の視聴率、過去最高を記録したぜ! その素晴らしい貢献に、ボーナス40ptだ! 火炎の野暮な横槍がなけりゃ、もっとくれてやったんだがな!』
「うぅ……」
依織は顔を真っ赤にしてうつむく。だが、隣の待機室にいるであろう火炎の行動を思い出し、少しだけ胸が温かくなるのを感じていた。
『そして、自爆テロで散ったコダワリ! お前の死に様は実に見事だった! あの壮絶な落雷がなければ、依織と火炎はサメのエサになっていただろう。結果的にライバルを助けるというクソ面白え展開を生み出した、その美しい散り様に20ptくれてやる! 地獄で達者でな! ま、すぐに治療して次のステージには出てもらうがな!』
能面の下で、コダワリはただ虚空を見つめていた。もはや彼の心には、何の感情も浮かんでいなかった。
『さて、今回のレースは全6ステージ! つまり、次がセミファイナルだ! ここまでの累計ポイントを振り返ってみようじゃねえか!』
モニターに、最新のランキングが表示される。
クロス・ロードラン: 420点
姚 静梅: 390点
高萩 依織: 380点
鬼姫 狂騒: 290点
青空 火炎: 160点
コダワリ: 180点
『トップ3の三つ巴! それを追う狂騒! そして、崖っぷちどころか谷底に突き落とされた火炎とコダワリ! 面白え! 実に面白え展開になってきたじゃねえか! 次のステージの結果次第で、最終決戦を前にランキングがひっくり返る可能性も大いにあるぜ!』
ジャックは期待に満ちた目で参加者たちを見回すと、次なる舞台の幕を開けた。
『さぁ、お前たちを招待する第5ステージは……欲望がウイルスとなって蔓延する地獄! 【セクシャル・ハザード・シティ】だ!』
モニターの映像が切り替わり、廃墟と化した都市が映し出される。しかし、その雰囲気は不気味なだけではない。どこか官能的で、倒錯した空気が漂っていた。
『この街は、特殊なウイルスが蔓延し、住民全員が理性を失った【性欲ゾンビ】と化している! 奴らはお前たちのような新鮮な獲物の匂いを嗅ぎつけ、その尽きることのない欲望をぶつけるため、四方八方から群がってくるだろう! もちろん、コミュニケーションは不可能だ!』
映像には、虚ろな目でよだれを垂らしながら、CGアバターにじりじりと迫る住民たちの姿が映る。彼らの手は、何かを貪るように蠢いていた。
『貴様らのゴールは、この街の中心部から市街地へ脱出すること! 最短ルートでも5kmはある! 事故車で道は塞がれ、乗り物は使えねえ! 己の足だけで、この欲望の迷宮を駆け抜けてもらう!』
『だが、慈悲深いWCBは、お前たちに一つの救済策を用意してやった』
カメラが、街の一角にある、ガラス張りの近代的な研究所を映し出す。
『スタート地点の近くにあるあの研究所。その中には、住民の欲望の対象から外れることができる【ワクチン】が保管されている。これを手に入れ、自分に注射すれば、奴らに襲われることなく、安全に街を脱出できるだろう。……まぁ、見つけられればの話だがな』
ジャックは意地悪く笑う。
『研究所は厳重なセキュリティで守られているし、中にはもちろん、ウイルスに感染した研究員たちが、新たな研究対象(お前ら)を待ち構えているぜ? ワクチンを探して時間をロスするか、危険を承知でゾンビの群れに突っ込むか。選ぶのはお前らだ』
さらに、ジャックは追い打ちをかけるように、新たなギミックを説明する。
『そして、この街にはもう一つの厄介な仕掛けがある。【媚薬ミスト】だ!』
映像の中で、街の噴水やマンホールから、ピンク色の妖しいミストが噴き出す。それを浴びたアバターは、顔を赤らめ、足元がおぼつかなくなる。
『このミストを浴びると、ゾンビどもの誘惑に対する抵抗力が著しく低下する! 理性で抑え込もうとしても、身体が言うことを聞かなくなるだろうなァ! ゾンビに捕まって、あんなことやこんなことをされちまう前に、とっととゴールしやがれ!』
ジャック・ポットは黄金のマイクを握りしめ、最後の言葉を叩きつけた。
『さぁ、セミファイナルだ! 力か、知恵か、それとも運か! 己の全てを賭けて、この性的なる地獄を駆け抜けろ! 誰が最初に理性のタガを外し、誰が最初に無事にゴールするのか! 全世界の視聴者が、お前たちのハレンチな姿を期待してるぜェ!』
モニターが暗転し、待機室の壁が開く。
その先には、甘くむせ返るような匂いと、遠くから聞こえる不気もい喘ぎ声に満ちた、ゴーストタウンの入口が広がっていた。
六人の魔人たちは、それぞれの決意を胸に、最終決戦の地へと繋がる、欲望の街へと足を踏み出すのだった。
第5ステージ:「セクシャル・ハザード・シティ」
甘く、それでいて腐臭の混じった空気が、参加者たちの鼻腔を突く。四方から聞こえる不気味な喘ぎ声と、虚ろな視線でこちらを伺う住民たち。欲望の街は、静かに、しかし確実に新たな獲物を品定めしていた。
「――面白い。ならば我が『邪道』、存分に見せてくれよう」
クロス・ロードランは、この狂った街を見て不敵に笑うと、躊躇なく【邪道Lv3】を選択した。彼はワクチンには目もくれず、一体の性欲ゾンビへと歩み寄る。
ゾンビが涎を垂らしながら彼に手を伸ばした瞬間、クロスの瞳が妖しく輝いた。
「ひれ伏せ、我が肉欲の奴隷よ」
彼の【邪道Lv3】は、単なる奇策ではない。常識を覆し、因果を捻じ曲げ、人心(あるいは本能)すら掌握する力。性欲という純粋な本能で動くゾンビは、クロスの圧倒的なカリスマの前に、いともたやすく「調教」されてしまった。
ゾンビはうっとりとした表情で彼の前に跪くと、忠実な下僕と化した。クロスは同じ手順で次々とゾンビを手駒に加え、屈強な男女5体の「親衛隊」を作り上げる。
「行け。我が道を阻む者どもを、その欲望で足止めせよ」
命令一下、親衛隊は他の参加者が進むであろうルートへと散っていく。クロス本人は、ゾンビたちが道を譲る中、悠々とゴールを目指し始めた。
一方、スタート地点近くの研究所では、別のドラマが始まっていた。
「依織さん、こっち!」
「火炎ちゃん!」
青空火炎と高萩依織は、互いの存在を確かめ合うと、示し合わせたように研究所を目指していた。火炎の【他人に信頼されやすいLv.2】のオーラと、依織が彼女に抱く【恩義】が、二人の間に強固な協力関係を築かせたのだ。
研究所の扉は電子ロックで固く閉ざされていたが、火炎が【ジャスティス・バーナー】で蝶番を焼き切り、依織が【Awaken Now】で覚醒した(させるためにわざと壁にぶつかった)身体能力で扉をこじ開けるという、荒業のコンビネーションで内部への侵入に成功する。
中は、白衣を着た研究員ゾンビたちが徘徊する地獄だった。
「ひっ……!」
「私が前に出る!」
火炎は【正義感Lv.2】ゆえに元人間を攻撃できず、依織を庇う盾に徹する。依織は覚醒した力で研究員たちを突き飛ばし、二人は必死にワクチンを探した。そして、薬品棚の奥で、数本のアンプルを発見する。
二人は互いにワクチンを注射し合うと、ゾンビたちに見向きもされなくなり、安堵の息をついた。
その頃、街の中心部では、二人の狂人が大暴れしていた。
一人は、鬼姫狂騒。
「みんなー! あたしのリサイタル、始まるよー!」
彼女は【ハイパワー大型メガホンLv.1】を構え、欲望の街に【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"】を響き渡らせる!
「ボエ~~~~~ッ!!!」
ジャイアンも裸足で逃げ出すほどの破壊的な歌声は、性欲ゾンビたちの脆弱な脳を直撃!
ゾンビたちは頭を抱えて苦しみだし、中には泡を吹いて気絶するものまで現れる。彼女は【怪力Lv.3】で邪魔なゾンビを文字通り吹き飛ばしながら、まるで凱旋パレードのように街を突き進んでいった。
そして、もう一人の狂人。
コダワリ。
彼は【完全な自信喪失】から、倒錯した自己肯定の道を選んだ。
「そうだ……此方(こなた)が……此方こそが、真の支配者……!」
彼はゾンビたちの前に立つと、経典を放り投げ、狂ったように叫んだ。
「――『色即是空、空即是色』!」
彼が選んだのは、仏教の教えの中でも特に有名な一節。だが、彼の口から放たれたそれは、聖なる響きではなく、欲望を肯定し、煽り立てる邪悪な言霊と化していた!
【王里虫角】が発動。彼の絶望と狂気が、この街のウイルスと奇妙なシンクロを果たし、彼自身が新たな「性欲の王」として覚醒してしまったのだ!
「ひれ伏せ! 我が信者どもよ!」
彼が【煽動者LV.1】の力で叫ぶと、周囲のゾンビたちが彼を崇めるようにひれ伏す。彼は、クロスとはまた違う形で、ゾンビの軍勢を手に入れてしまった。
この混沌の中、ただ一人、己の力のみを信じて突き進む者がいた。
姚静梅である。
「下らぬ。この程度の誘惑に、我が武が揺らぐものか」
【忠義心Lv2】と【マフィアLv1】としての矜持が、彼女を性欲から完全に切り離していた。
彼女は最短ルートを突き進む。群がってくるゾンビたちを、【中国武術Lv3】で的確にいなし、急所を打って昏倒させていく。
だが、その進路上に、クロスの「親衛隊」が立ちはだかった。
「……邪魔だ」
静梅は冷たく言い放つが、親衛隊はクロスの命令に忠実だ。彼らは静梅に襲い掛かる。
さらに悪いことに、近くのマンホールからピンク色の【媚薬ミスト】が噴出!
「くっ……!」
さすがの静梅も、ミストを吸い込み、わずかに身体の自由が利かなくなる。その一瞬の隙を突かれ、彼女はゾンビたちに組み伏せられてしまった……!
レースは終盤。
ワクチンを手に入れた火炎と依織は、安全な道を並んでゴールを目指していた。
「ありがとう、火炎ちゃん。また助けられちゃった」
「いいんだ。WCBの思惑通りになるのが、一番許せないから」
二人の間には、友情とも、それ以上ともつかぬ空気が流れていた。
ゴールゲートが見えてきたその時、二人は信じられない光景を目にする。
ゲートの周辺が、クロスの命令を受けた親衛隊ゾンビによって、ピンク色の【媚薬ミスト】がもうもうと立ち込める「快楽の罠」と化していたのだ!
そして、その罠にまんまと嵌ってしまった者がいた。
鬼姫狂騒である。
「あれー? なんだか、身体がふわふわするー……」
歌いながら進んでいた彼女は、無防備にミストを吸い込み、抵抗する間もなくゾンビたちに取り押さえられていた。彼女のポジティブシンキングも、薬物には勝てなかったようだ。
「依織さん、下がって!」
火炎は依織を庇うと、最後の力を振り絞り、【ジャスティス・バーナー】を放つ!
炎がミストを焼き払い、ゾンビたちを怯ませ、わずかな活路を開いた!
「今だ、行って!」
「でも!」
「早く!」
火炎に背中を押され、依織は涙をこらえながらゴールへと駆け込んだ。
最初にゴールしたのは、邪道の限りを尽くしたクロス・ロードラン。
続いて、火炎の自己犠牲によってゴールを果たした高萩依織。
火炎は、依織をゴールさせた後、力尽きてゾンビの群れに……。
鬼姫狂騒と姚静梅もまた、ゾンビたちの饗宴の贄となっていた。
そして
コダワリは、自らが作り出したゾンビの王国で、恍惚の表情を浮かべたまま、ゴールすることなくレースを終えた。
『フィニーーーーーッシュ!! 勝者、クロス・ロードラン! なんという邪悪! なんという外道! だが、最高だ! 最高のエンターテイメントだぜェ! そして、火炎と依織の友情物語! まるで安っぽいメロドラマだが、視聴者はこういうのが大好きなんだよォ! さぁ、残すは最終ステージ! この狂乱のレースを制するのは誰だァ!』
ジャック・ポットの絶叫が、欲望の残り香漂う街に響き渡った。
▼獲得ポイント
クロス・ロードラン: 130点 (1位: 100pt + エンタメポイント: 30pt)
高萩 依織: 90点 (2位: 80pt + エンタメポイント: 10pt)
青空 火炎: 30点 (リタイア: 0pt + エンタメポイント: 30pt)
鬼姫 狂騒: 10点 (リタイア: 0pt + エンタメポイント: 10pt)
姚 静梅: 10点 (リタイア: 0pt + エンタメポイント: 10pt)
コダワリ: 10点 (リタイア: 0pt + エンタメポイント: 10pt)
インターバル ~ 最終ステージ課題発表
『ハッハァー! 見たか、全世界の視聴者ども! これぞ人間の本性! これぞ欲望の坩堝! 第5ステージは、実に実に、実にィ! エロティックで、バイオレンスで、そして最高にエキサイティングだったぜェ!』
最後のインターバル。待機室のモニターに映るジャック・ポットは、もはや恍惚の表情すら浮かべていた。彼のテンションは、この狂乱のレースと共に最高潮に達していた。
『まずは、この地獄を制した男、クロス・ロードラン! お前の邪道、天晴れだ! ゾンビを調教し、ライバルを罠に嵌める! その外道っぷり、まさに王者の風格だぜ! エンタメポイント30ptくれてやる! 文句なしのトップで最終ステージ進出だ! 素晴らしいぜ、クズの中のクズ!』
クロスは静かにモニターを見つめるだけだったが、その瞳の奥では、勝利への確信が炎のように燃え盛っていた。
『そして、高萩依織! お前もよくやった! ワクチンを手に入れるまでは良かったが、最後は火炎との友情ごっこか! チッ、つまらん! だがな、視聴者はそういう薄っぺらい感動が大好きなんだ! お涙頂戴のエンタメポイントで10ptだ!』
「……火炎ちゃん」
依織は、火炎の自己犠牲を思い出し、唇を強く噛みしめた。彼女の心は、勝利の喜びよりも、罪悪感と無力感で満たされていた。
『そして、リタイア組! まずは青空火炎! お前、最後の最後でカッコつけやがって! 依織を助けるために自分を犠牲にするとはな! バカか! お前は正真正銘のバカだ! だがな……そのバカ正直な自己犠牲が、視聴者の涙腺を破壊しちまった! チクショウ、俺もちょっと感動しちまったじゃねえか! 特別サービスでエンタメポイント30ptだ! ありがたく受け取りやがれ!』
待機室で、火炎は静かに拳を握った。ポイントなどどうでもいい。彼女の脳裏には、依織を救えたという事実と、WCBへの怒りだけが渦巻いていた。
『鬼姫狂騒! 姚静梅! コダワリ! お前らは揃いも揃って無様だったなァ! ゾンビに捕まって、あーんなことや、こーんなことを……おっと、コンプライアンス的にこれ以上は言えねえな! だが、お前らのその無様な喘ぎ声が、一部の熱狂的な視聴者を生み出した! その功績に、それぞれお情けの10ptだ!』
静梅は、目を閉じ、屈辱に耐えていた。狂騒は「みんなと仲良くなれて楽しかったなー」と首を傾げ、コダワリは能面の下で不気味な笑みを浮かべたまま、虚空を見つめていた。
ジャックは大きく息を吸い込むと、最終決戦の号砲を告げた。
『さぁ! 長かったこのDEATH RACE G.P.も、次が遂にファイナルステージだ! 100億円と、世界一のクズという栄光を手に入れるのは誰なのか! 全てが、このステージで決まる!』
ゴゴゴゴゴゴゴ……! と、これまでで最も重々しいSEが鳴り響く。
『そして、最終ステージは特別ルール! 全ての獲得ポイントが……2倍になるぜェ!』
その言葉に、参加者たちの間に緊張が走る。
現在のトップ、クロス・ロードランですら、安泰ではない。下位の者にも、まだ逆転のチャンスが残されているのだ。
『最終ステージは、原点にして頂点! 小細工なしのガチンコ勝負! その名も……【栄光への道(ロード・トゥ・グローリー)】!』
モニターに、一直線に伸びる、禍々しい障害物コースの全景が映し出された。
『貴様らには、この全長1kmの地獄の直線コースを、己の肉体と能力だけで突破してもらう!』
カメラが、最初の障害を映し出す。
『第一の障害! 【反り立つ壁】! 高さ10mのクソデカい壁だ! 表面はツルッツルで、ほとんど取っ掛かりはねえ! 腕力に自信のない雑魚は、地面がせり上がってくるのを待つんだな! ま、その間にライバルは遥か先に行っちまうがな! ハッハァー!』
次に、コース中盤の、おぞましいギミックが大写しになる。
『第二の障害! 【ギロチンロード】! 天井からは巨大な刃の振り子が、地面からは丸鋸が、お前らをミンチにするためにお出迎えだ! リズムは不規則! タイミングを誤れば、手足の一本や二本、簡単にお陀仏だぜ! ここで無様に死ぬのも、また一興だな!』
そして、最後の関門。
『第三の障害! 【灼熱の油風呂】! 煮えくり返った油の池に、不安定な足場が点在している! 固定された足場と、乗った瞬間に沈むダミーを見極め、飛び越えてもらう! 凄まじい熱気で、立ってるだけで体力はゴリゴリ削られるぜ! 油に落ちれば、お前らの自慢の肉体も、こんがりキツネ色のフライドチキンだ!』
ジャックは、満足げにコースを見渡し、最後の言葉を叩きつけた。
『この三つの地獄を乗り越えれば、あとは100mのウイニングランだ! 力、技、スピード、そして運! お前たちの持てる全ての力をぶつけ、栄光への道を切り開け!』
彼は黄金のマイクを天に突き上げた。その声は、もはや実況ではなく、神の宣告のようだった。
『さぁ、これが最後の戦いだ! トップを走るクロス・ロードランか! それを追う姚静梅、高萩依織か! 大逆転を狙う鬼姫狂騒か! それとも、崖っぷちの火炎、コダワリが奇跡を起こすのか!』
『100億円は誰の手に! 史上最強のクズの称号は誰の頭上に輝くのか! その答えは、この道の先にある!』
『DEATH RACE G.P.! 最終ステージ! スタートォォォォォォッ!!!』
モニターが暗転し、待機室の最後の扉が開く。
その先には、巨大な壁がそびえ立ち、その向こうには、栄光へと続く一本の道が、静かに横たわっていた。
六人の魔人たちは、それぞれの因縁と覚悟を胸に、最後の戦場へと、その一歩を踏み出した。
最終ステージ:『栄光への道(ロード・トゥ・グローリー)』
『スタートォォォォォォッ!!!』
ジャック・ポットの絶叫が、最後の戦いの火蓋を切った。
六人の魔人が、栄光へと続く地獄の一本道へと走り出す。
その瞬間、世界が、歪んだ。
「フン……道は、すでに見えている」
クロス・ロードラン。彼の全身から、もはやオーラと呼ぶのもおこがましい、空間そのものを捻じ曲げるほどの威圧感が放たれる。最終ステージの名『栄光への道』は、彼に最後の天啓を与えた。彼の魔人能力は、この最終決戦において、新たな次元へと覚醒したのだ!
『栄光へと続く三叉路』は、もはや道を選ぶものではない。彼自身が「道」そのものとなる力へと昇華していた。
最初の障害、【反り立つ壁】。
他の参加者がその高さに息を呑む中、クロスは迷わず【外道】を顕現させる。
その肉体は、物理法則を無視したかのように壁に吸い付くと、まるで蜘蛛のように、あり得ない速度で垂直の壁面を駆け上がっていく!
『なっ……なんだァありゃあ!? 人の動きじゃねえぞ!』
ジャックですら、その光景に絶句した。
だが、その壁には、もう一つの「異常」が発生していた。
「フフ……フフフ……此方(こなた)が……壁になるのだ……」
能面の男、
コダワリが、壁と同化していた。いや、彼の狂気が、壁そのものを変質させていた。そそり立つ壁は、彼の倒錯した欲望を映し出し、巨大な男根の如きおぞましい形状へと変貌していく!
「な、なによアレ……気持ち悪い……」
高萩依織が顔をしかめる。
その時、壁を破壊しようと拳を振り上げた鬼姫狂騒の【怪力Lv.3】の一撃が、コダワリ壁に炸裂した!
ドゴォン!
壁は砕け、確かに取っ掛かりはできた。しかし、その衝撃は、コダワリの狂気をさらに増幅させた!
「あぁ……! もっと、もっとだ……!」
壁は蠢き、粘液のようなものを垂れ流しながら、登ろうとする者を捕らえようと触手を伸ばし始めた!
「依織さん、ここは私が!」
青空火炎が叫ぶ。彼女の目標はただ一つ、依織を勝たせること。
「ロードランの好きにはさせない! 行くわよ!」
彼女は【ジャスティス・バーナー】を最大出力で噴射! 壁に道を焼き切り、依織の手を引いて強引に突破する!
姚静梅は、冷静だった。
「(クロス・ロードラン……!)」
彼女は【観察眼】で、クロスが駆け上がったルート、そして狂騒が破壊した箇所を瞬時に分析。最も効率的なルートを導き出すと、【中国武術Lv3】の身軽さで、まるで鳥のように壁を駆け上がっていった。
第二の障害、【ギロチンロード】。
先行するクロスは、ここで【修羅道】を解放した。
「――滅」
彼の全身から血の霧のような闘気が立ち上る。振り下ろされるギロチンを、彼は手刀で打ち砕き、地面から突き出す丸鋸を、足蹴りで粉砕する!
彼の進む道は、破壊された刃の残骸が転がる、まさしく修羅の道と化した。
この破壊は、後続の者たちに恩恵と、そして新たな脅威をもたらした。
ギロチンの数が減り、通路は幾分安全になった。だが、砕け散った刃の破片が、予測不能なタイミングで飛び散り、新たなトラップと化していたのだ!
「きゃあっ!」
依織の頬を、刃の破片が掠める!
「危ない!」
火炎が依織を庇う。彼女の背中を、ギロチンの刃が浅く切り裂いた。
「(依織さんを、勝たせる……! そのためなら……!)」
静梅は、クロスの破壊を冷静に利用する。砕けた刃のリズムを読み、最小限の動きで、その間をすり抜けていく。彼女の視線は、ただ前を走るクロスの背中だけを捉えていた。
そして、このギロチンロードにも、コダワリの狂気が及んでいた。
「切れ味……切れ味とは……言葉の鋭さ……」
彼は【コトノハ教の経典】から、最も辛辣で、最も人を傷つける言葉を引用し、残ったギロチンの刃に宿らせていた。
その刃は、もはや物理的な切れ味だけでなく、触れた者の精神をも切り刻む、呪いの刃と化していた!
「あははは! なんだかチクチクするけど、神様が見ててくれるからへっちゃらだよー!」
鬼姫狂騒だけは、その呪いを【善人Lv.3】の根拠なき自信で弾き飛ばし、マイペースに鼻歌交じりでギロチンロードを突破していく。
第三の障害、【灼熱の油風呂】。
クロスは、ここで最後の切り札、【正道】を発動した。
彼の瞳が、神々しい光を宿す。
「道は、ここにある」
彼の前では、もはや不安定な足場など存在しなかった。彼が踏み出す一歩一歩が、絶対的な「正しさ」となり、まるで何もない平地を歩くように、悠々と油風呂を渡り切る。
後続の者たちは、その光景に息を呑んだ。
だが、その時、油風呂の中から、コダワリが顔を出した。
「熱い……熱いぞ……! この熱情を、雷(いかずち)に変える!」
【王里虫角】発動! 煮えたぎる油風呂と、彼の狂った熱情がシンクロし、油の池そのものが帯電! バチバチと火花を散らし、足場に飛び乗る者たちに、感電の追撃を与える地獄へと変貌させていた!
「こうなったら……!」
狂騒が【ハイパワー大型メガホン】を構え、絶叫を放つ!
「みんなー! このお風呂、あたしが冷ましてあげるねーーーーっ!!」
音の衝撃波が、煮えたぎる油を吹き飛ばし、周囲一帯に熱い油の雨を降らせる!
「ぎゃあああ! 熱い! 熱いよぉ!」
依織が悲鳴を上げる。その肌に、熱い油がかかる。
「(これなら……!)」
火炎は、この好機(?)を逃さなかった。
「依織さん、ごめん!」
彼女は依織の背後に回ると、【ジャスティス・バーナー】の炎を、わざと依織の背中に向けて放った!
「きゃあああああああああああっ!!」
熱油と炎。致命的なダメージを受けた依織の身体が、淡い光を放つ!
【Awaken Now】発動!
「火炎……ちゃん……?」
「行きなさい! あなたが、勝つのよ!」
覚醒した身体能力を得た依織は、火炎の想いを背負い、帯電した足場をものともせずに駆け抜けた!
静梅は、油の雨を浴びながらも、歯を食いしばり、最後の足場へと到達する。
その視線の先には、最終ストレートへと走り出すクロスの背中。
「……待て!」
彼女は最後の力を振り絞り、中国武術の奥義、縮地の如き歩法でクロスを猛追する!
最終ストレート100m!
先頭は、神の如き威厳を放つクロス・ロードラン!
それを、復讐の鬼と化した姚静梅が驚異的な速度で追いかける!
さらにその後ろから、友情の炎を宿した高萩依織が、覚醒した力で迫る!
ゴールテープが目前に迫る!
三人が、横一線に並ぶ!
クロスか! 静梅か! 依織か!
『ウオオオオオオオオオッ! 誰だ! 誰が勝つんだァーーッ!』
ジャック・ポットの絶叫と、全世界の視聴者の歓声が、スタジアムに響き渡る。
三人の魔人が、それぞれの想いを胸に、最後のゴールテープへと、その身を投げ出した。
その結末は――。
最終結果発表
ゴールテープの向こう側で、三つの影がもつれ合うように倒れ込んだ。
写真判定。
スローモーションで再生される映像を、全世界の視聴者が固唾をのんで見守る。
最初にテープに触れたのは、ほんの数センチの差で、その美しい指先を伸ばしたチャイナドレスの少女――姚静梅だった。
しかし、彼女の身体がテープを切るよりもコンマ数秒早く、覚醒した力で驚異的な加速を見せた高萩依織の胸が、ゴールラインを通過していた。
そして、その二人を嘲笑うかのように、天を衝くほどの覇気を放つクロス・ロードランのつま先が、最も早くゴールラインを越えていた。
『……決まったァァァァァァァァァァッ!!!』
ジャック・ポットの絶叫が、スタジアムに響き渡る。
モニターに、最終ステージの結果がデカデカと表示された。
【最終ステージ:『栄光への道』リザルト】
1位:クロス・ロードラン
2位:高萩 依織
3位:姚 静梅
4位:鬼姫 狂騒
5位:青空 火炎(リタイア)
6位:コダワリ(リタイア)
『勝者、クロス・ロードラン! 最終ステージを制したのは、やはりこの男だったァ! だが、依織と静梅の追い上げも凄まじかった! 最後まで目の離せない、最高のデッドヒートだ!』
ジャックは興奮冷めやらぬ様子で、最終的なポイント計算へと移る。
『さぁ、お待ちかね! ポイント集計の時間だ! 最終ステージはポイント2倍! 果たして、総合優勝の栄冠は誰の手に輝くのかァ!?』
ドラムロールの音が鳴り響き、一人、また一人とポイントが確定していく。
6位:コダワリ
最終ステージ獲得ポイント: 0 pt (リタイア) × 2 = 0 pt
累計:190 pt
『コダワリィ! 最終的にはただの変態だったな! だが、お前の狂気はレースを大いに盛り上げてくれたぜ!』
5位:青空 火炎
最終ステージ獲得ポイント: (順位点0pt + エンタメポイント30pt) × 2 = 60 pt
累計:250 pt
『青空火炎! お前は正義を貫き、友情に散った! 結果はビリから二番目だが、その生き様は、誰よりも輝いていたぜェ!』
4位:鬼姫 狂騒
最終ステージ獲得ポイント: (4位順位点60pt + エンタメポイント10pt) × 2 = 140 pt
累計:440 pt
『鬼姫狂騒! お前の歌は常にカオスの中心にあった! 最後まで何もわかってねえその顔、最高だぜ!』
3位:姚 静梅
最終ステージ獲得ポイント: (3位順位点70pt + エンタメポイント10pt) × 2 = 160 pt
累計:560 pt
『姚静梅! 最後の追い上げ、実に見事だった! だが、あと一歩及ばず! その悔し涙、実に美しいぜ!』
2位:高萩 依織
最終ステージ獲得ポイント: (2位順位点80pt + エンタメポイント30pt) × 2 = 220 pt
累計:690 pt
『高萩依織! 崖っぷちアイドルが、まさかの準優勝だァ! 最後の覚醒、火炎との友情! お前は、このレースでスターになったんだ!』
そして、ついに、総合優勝者が発表される。
『DEATH RACE G.P.! 栄えある初代チャンピオンは……この男だァァァッ!!!』
1位:クロス・ロードラン
最終ステージ獲得ポイント: (1位順位点100pt + エンタメポイント30pt) × 2 = 260 pt
累計:810 pt
ファンファーレが鳴り響き、紙吹雪が舞う。
スタジアムの中央に立ったクロス・ロードランに、スポットライトが降り注いだ。
彼は静かに立ち上がり、天を仰ぐ。その表情に、慢心はない。ただ、次なる道を見据える者の、静かな闘志だけが宿っていた。
『おめでとう、クロス・ロードラン! お前が最強のクズだ! 賞金100億円と、世界中からの名声(あるいは悪名)! その全てがお前のものだ! さぁ、最後に一言、全世界の視聴者に向けてコメントをどうぞ!』
ジャックがマイクを向ける。
クロスは、ゆっくりと口を開いた。
「この世に道があるのではない。我が歩んだ跡に、道はできる。我が名はクロス・ロードラン。この勝利は、次なる道への始まりに過ぎない」
その言葉は、絶対王者の宣言として、全世界へと配信された。
かくして、血と硝煙と欲望に満ちた狂乱の宴、『DEATH RACE G.P.』は、その幕を閉じたのだった。
エピローグ
数日後。
【クロス・ロードラン】
彼は賞金100億円に見向きもせず、すでに次の旅へと出発していた。彼の求めるものは金や名誉ではない。彼を震え立たせる、新たな「師」との出会い、そして、己が踏みしめるべき、まだ見ぬ道。彼の旅は、まだ始まったばかりだ。
【高萩 依織 と 青空 火炎】
依織は、このレースでの活躍によって、一躍トップアイドルの仲間入りを果たした。しかし、彼女は多忙なスケジュールの合間を縫って、一つの小さな探偵事務所を訪れていた。
「……火炎ちゃん」
「依織さん」
そこには、レースの時とは打って変わって、落ち着いた雰囲気の私服に身を包んだ火炎がいた。彼女は、このレースで得た知名度を利用し、WCBのような巨悪を挫くための情報収集機関を立ち上げたのだ。
「私、歌でみんなを笑顔にしたい。でも、そのためには、火炎ちゃんみたいな正義が必要だと思うの。だから……私も、手伝わせて」
「……ありがとう、依織さん」
二人は、固く手を取り合った。一人は光の舞台で、一人は影の世界で。それぞれの戦いが、今始まる。
【姚 静梅】
彼女は、主であるジャニス・チャンの元へと戻っていた。
「申し訳ありません、ジャニス様。優勝を、逃しました」
「いいえ、よくやったわ、静梅。貴女は、我が組織の力を、そして中国武術の奥深さを、世界に知らしめてくれた。それで十分よ」
主の労いの言葉に、静梅は静かに頭を垂れる。彼女の胸には、クロス・ロードランへの雪辱の炎が、まだ静かに燃え続けていた。
【鬼姫 狂騒】
彼女は、いつものように学校の懺悔室で、生徒たちの悩みを聞いていた。
「いやー、この前のレース、すっごく楽しかったなー! みんなでゴールできて、本当によかった!」
レースで何が起こったのか、彼女は最後まで理解していなかった。だが、彼女の【善人】としての行いは、知らず知らずのうちに、多くの人々の運命を狂わせ、そして救っていたのかもしれない。
【コダワリ】
彼は、自らが作り出した倒錯した王国の記憶から抜け出せずにいた。現実に戻った彼は、コトノハ教からも破門され、全てを失った。今は、とある精神病棟の一室で、壁に向かってひたすら意味不明な諺を呟き続けているという。その能面の下の表情を、知る者は誰もいない。
【そして、WCBでは――】
「ハッハァー! 今回のレースも大成功だったぜェ!」
ジャック・ポットは、莫大な利益の報告書を前に、高笑いをしていた。
「さーて、次はどんなクズどもを集めて、どんな地獄を見せてやろうかァ? 『DEATH RACE G.P. シーズン2』! 今から楽しみでちんちんが爆発四散しそうだぜェェェーーーッ!!」
狂乱の宴は終わらない。
新たな参加者を、新たな地獄を求め、世界征服放送の悪意は、今日もまた、全世界へと向けられている。
彼らの狂気が尽きない限り、物語は、またどこかで幕を開けるだろう。
―― The End?
行動提出
1ターン目
コダワリ ・【コトノハ教の経典LV.3】を諳んじる【神聖LV.1】を帯び、参加者特に女を煽動【煽動者LV.1】、先導【先導者LV.1】する。 ・好きなタイミングで【王里虫角[魔]】を発動し、なんらかの諺を大音声で唱える。パワーアップする場合はゴールに猛進し、雷が落ちる場合は【被雷経験LV.3】を活かす ・他の妨害は【厚い顔の皮LV.1】で耐える。
—-
クロス・ロードラン 高得点を狙い【王道Lv3】で脆くなった床板を瞬時に判断し安全第一最速でフラッグを回収、妨害や戦闘などに無駄な時間は使わずゴールを目指す
—-
名前:姚静梅(ヤオ・ジンメイ) クンフーを積んだ【中国武術Lv3】により巨大な吊り橋の不安定な足場を駆け抜けていきます。 【マフィアLv1】の【威圧Lv2】により、周囲の参加者達を牽制します。 戦闘になれば【観察眼[魔]】により適切に相手の弱点を武術により倒し、速やかに切り上げます。 【忠義心Lv2】により、誘惑などには揺らぐことはないでしょう
—-
プレイヤー名:高萩依織 ・スタート直後、【マイクLv.1】を使い、【歌唱力Lv.2】で歌い、参加者の目を引き、その間に一足早くスタートを切る。 ・他参加者が近くに来たら【可愛さLv.3】と【あざとさLv.1】で気を引き、その間にリードを取る。 ・落ちそうになったら【諦めの悪さLv.1】で何が何でも吊り橋に残ろうとする。 ・攻撃を受けたら【Awaken Now[魔]】で身体強化し、逃げる。
—-
プレイヤー名:青空火炎(あおぞらかほ) 基本的に、火炎(かほ)移動方法は足場の良いところでは【運動神経Lv.3】を用いた疾走、 足場がなかったり飛行が必要な場合は【ジャスティス・バーナー[魔]】 をジェット噴射のように用いての飛行となります。 まず、上空のジャック・ポットを倒そうと試みます。しかし、さすがに火炎(かほ)の能力もさすがに全然届かない。 続いて、WCBの旗を見て、この旗を燃やしつくそうと突撃します。(悪の組織の旗を燃やすのは、正義の行動なため) また、基本的に他の参加者に対しては友好的で、特に危機に陥っている人間に対しては積極的に助けます。 ただし、WCB運営と火炎(かほ)が認識した参加者に対しては、容赦なく能力や身体能力を用いて攻撃をします。
—-
■鬼姫 狂騒■ 鬼姫狂騒ことシスターノイジーは渓谷に架けられた巨大な吊り橋の前で腕を組んで悩んでいた 「風ぇ………強いなぁー、ふむぅ~」 奈落の渓谷から吹き上げる突風は架け橋を激しく揺らしていた、他参加者も各々どうにかゴールへ向かっていた 「………………っし!!」 シスターノイジーは【ハイパワー大型メガホンLv.1】を構え、大きく息を吸うと同時に途轍もない大声で突風を弾き返した!!
2ターン目
名前:姚静梅(ヤオ・ジンメイ) 【中国武術Lv3】により、猛スピードで自動車が走り抜ける片側8車線の巨大なハイウェイを適切な体捌きで駆け抜けていきます。。 【忠義心Lv2】により誘惑などには乗ることはないでしょう。 周囲の参加者を【威圧Lv2】することで怯んだ参加者が轢かれるかも知れません。 戦闘になれば、走り抜ける自動車に対応しながら【観察眼[魔]】により弱点を見ながら武術で倒します。奪えるなら自分が持てる範囲の現金は奪う。
—-
プレイヤー名:青空火炎(あおぞらかほ) ゴールを目指しつつ、下記の優先順位で、【運動神経Lv.3】や【ジャスティス・バーナー[魔]】を用いながら行動を行う 1.死にかけている参加者を助ける(正義のため) 2.現金輸送車を襲っている参加者を撃退する(正義の行動ではないので) 3.暴走タクシーを止める(暴走はよくないので)
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中継で使うと宣言した【覇道Lv3】を彷彿とさせる闘争本能剥き出しの強襲を姚静梅に仕掛ける だが、その強襲は視聴者に使うと聞かせた【邪道Lv3】の戦術だった 戦うと見せ掛けて走り抜けようとする車種全てをクラッシュさせることでバリケードを作成 道路をモーゼの海割りを思わせる絶対安全な道を作り出したと相手に勘違いさせる事で、途中まで進んでしまった者はバリケードが崩壊し閉じ込めて足止めをさせる その間に現金輸送車から回収した五千万円を運びゴールに向かう
—-
プレイヤー名:高萩依織 ・轢かれる事を恐れずに【持久力Lv.2】でハイウェイを走る。 ・念のため【マイクLv.1】と【歌唱力Lv.2】で車の運転手に対し「轢かないで!」とアピールする。 ・もし轢かれたり爆発に巻き込まれたりしても【Awaken Now[魔]】で復活し、【諦めの悪さLv.1】でゴールを目指す。
—-
■鬼姫 狂騒■ 「え〜っと、この8車線を渡れば良いのかな?」 シスターノイジーは右手を挙げ、横断歩道を渡る様な仕種をしていた、【善人Lv.3】人徳によって数台の車が停まってくれた 「ありがとう!!」 それでも止まらない車に対して【ハイパワー大型メガホンLv.1】を構え【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"(魔)】を使い運転手へ止まって下さいアピールをした 彼女の【音痴Lv.3】も相まり、運転手達は心身の不調を来し、あれだけ激しい交通量の車が尽く止まったのは、まるでモーゼの十戒の様相だった!? ちなみにタンクローリーと現金輸送車がぶつかって大事故を起こし、詰んでた大金が空に舞っていた 「これは普段の行いかなぁー?」
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プレイヤー名:コダワリ ・【神聖LV.1】で僅かな奇跡を発揮できるかもしれない。 ・善意で、いいルートを案内するも【先導者LV.1】の格が低い。 ・現金輸送車から現金を得るために【王里虫角[魔]】でなんらかの諺を唱える。それでパワーアップするなら輸送車ごと運ぶ、落雷ならショートさせる。
3ターン目
プレイヤー名:コダワリ ・王道、覇道、邪道ではなく神道の一派であるコトノハ教を、クロス・ロードランに布教する。【コトノハ教の経典LV.3】を読み聞かせ教育・洗脳を試みる。 ・【神聖LV.1】で大したことない、偶然のような、心温まるささやかな奇跡を起こす。 ・【王里虫角[魔]】で「時は金なり」と唱え、3000万円を消費する
—-
■鬼姫 狂騒■ ・【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"(魔)】と【音痴Lv.3】で植物に歌を聴かせる、植物にも音楽を聴かせると何か効果が有るらしい ・【怪力Lv.3】と【ハイパワー大型メガホンLv.1】で衝撃波をブッ放す ・【善人Lv.3】人徳で何か良い事が起こるかも? 「いやぁ〜、歌声褒められちゃったよ私〜(照)」
—-
名前:姚静梅(ヤオ・ジンメイ) 【中国武術Lv3】と【観察眼[魔]】により「三日月草」を探しながら、「人喰い植物」や遭遇した他の参加者達を倒していきます。 【忠義心Lv2】により幻惑や誘惑に負けません。 【マフィアLv1】 の【威圧Lv2】 により相手を怯ませます。 【チャイナドレスLv1】を着た【チャイナ美少女Lv1】であることを生かした戦闘をし、視聴者にも魅力をアピール。
—-
名前:青空火炎(あおぞらかほ) 前回インターバルでジャック・ポットに煽られた悔しさで、【ジャスティス・バーナー[魔]】の火力は以前よりも上がっています。 前回現金ボーナスを得たコダワリ、事故を巻き起こした鬼姫 狂騒、その両方のクロス・ロードランの3人を危険人物と見なします。 特に、クロス・ロードランとは積極的に接触を試みます。 クロス・ロードランが【三日月草】を持っている場合は、積極的に奪取を狙います。(不意打ちはせず、奪うぞ宣言はきちんとする) また、人食い植物は正義の敵なので、積極的に焼きます。
—-
プレイヤー名:高萩依織 ・【持久力Lv.2】と【諦めの悪さLv.1】で、「三日月草」を根気強く探し、見つけた後ゴールを目指す。 ・誰かかが「三日月草」を奪おうとしたなら、【可愛さLv.3】と【あざとさLv.1】で注意を反らし、逃げる。 ・致命傷を負った時は【Awaken Now[魔]】で身体強化し、引き続き「三日月草」を探すなりゴールを目指す。
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クロス・ロードラン 迷宮内にいる全ての人食い植物を他の参加者の仮想敵として【覇道Lv3】倒しに回る。 覇道の道を進むクロス・ロードランはその闘争心と体力は尽きる事がなく疲労によるデバフなく活動する。 人食い植物を狩りながら三日月草を見付けたら全て回収しておきゴールを目指す。
4ターン目
プレイヤー名:コダワリ ・手に入れた真珠は【厚い顔の皮LV.1】に溜め込む ・【王里虫角[魔]】で全く適さない諺を唱え落雷を呼び妨害を試みる
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■鬼姫 狂騒■ ・【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"(魔)】と【音痴Lv.3】が合わさる超音波になるし海中でも使えるんじゃね? ・【怪力Lv.3】どっかのオーガみたいにとんでもないスピードで泳げるかも? ・【善人Lv.3】これまた人徳で何か良い事が起きんじゃね? ・【ハイパワー大型メガホンLv.1】海に落っこちたら危ないよ?
—-
名前:姚静梅(ヤオ・ジンメイ) 【中国武術Lv3】により強い水圧がかかる水中でも適切に動きます。【観察眼[魔]】で真珠を探しながら、【威圧Lv2】 で他参加者や危険生物に対応する。 羞恥心より【忠義心Lv2】の方が優先。ポロリは気にせず活動します。 コレまでのバトルでは【チャイナドレスLv1】を着ていた【チャイナ美少女Lv1】の水着です。新しい魅力に視聴者へのアピールは強いでしょう。
—-
名前:青空火炎(あおぞらかほ) これまで自身が空回りしていたことを認め、海に入る前に【ジャスティス・バーナー[魔]】を使用し何もない空に向けて炎を出し切る。 想いを火に変える能力は、こう使うことで火炎(かほ)に冷静さをもたらすことができる。 火炎(かほ)からこれまでの騒がしさはなくなり、なんだか目も座っている。クールな立ち回りが出来るだろう。 冷静になった火炎(かほ)はWCB運営が最大の敵、ということを思い出し、今回は静かに真珠を取ることを目指す。 【運動神経Lv.3】は海中生物を退けながら真珠を多くとることに役立つはずだ。 そして、WCBが目指す盛り上がりに利さないように、自他含めて【ポロリ】を防ぐことも意識する。 特に、一番ポロリが求めてられているであろうアイドル「高萩 依織」のポロリは、自分の身を犠牲にしてでも防ぐ。
—-
クロス・ロードラン 無駄な体力と酸素を使わないよう【王道Lv3】で仮死状態になり海中生物を刺激する事なく海底を目指す。 海底では温存した酸素を利用し真珠を5個集める。 海底で真珠を集めた事で【王道Lv3】の効果は終わり、急上昇による肉体への負担すら【覇道Lv3】で踏み倒しながら行きでは無視した海中生物の頭を切り落とし(ポロリ)しながら海上に戻る。
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プレイヤー名:高萩依織 ・できるだけ酸素の消費を抑えつつも、【持久力Lv.2】と【諦めの悪さLv.1】で真珠を探す。真珠を1つ探したらすぐに海上に上がる。 ・致命的なダメージを受けた時は【Awaken Now[魔]】で復活するが、それでも無駄な動きをしない。 ・もし他参加者や海中生物から危ない事をされたら、【可愛さLv.3】と【あざとさLv.1】でちょっとだけ視聴者にアピールする。
5ターン目
■鬼姫 狂騒■ ・【ハイパワー大型メガホンLv.1】を使って【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"(魔)】と【音痴Lv.3】でジャイ◯ンリサイタルさながらの騒音を撒き散らしながらマイペースに歩く ・【怪力Lv.3】で邪魔な有象無象を破壊しちゃうぞ♡ ・【善人Lv.3】徳の高いシスターは驚異的な幸運を持ってるかも?
—-
名前:姚静梅(ヤオ・ジンメイ) 性欲ゾンビどもを【観察眼[魔]】によって弱点を探しながら【威圧Lv2】 し、【中国武術Lv3】でぶちのめします。 【マフィアLv1】 が性欲に抑えられないようでは問題がある。そして【忠義心Lv2】により、性欲には負けない。 危険を承知で最短距離を強引に突っ切ります。
—-
クロス・ロードラン 【邪道Lv3】の選択で襲われる前に性欲ゾンビを襲う事で知性ではなく性欲と言う本能で行動する性欲ゾンビを男女関係無く調教し自らの手駒にする。 調教性欲ゾンビを5体用意したら、調教性欲ゾンビそれぞれに各参加者達を襲うよう命令し、脱出の道すがら後ろから来るであろう他の参加者を足止めする更なる【邪道Lv3】として媚薬ミストの流れる道をゴール周辺に集まるよう誘導して自分は我先に脱出する。
—-
プレイヤー名:コダワリ ・【完全な自信喪失】状態のため、女から尊厳を奪うことで自信を取り戻そうとする。男でもいい。性欲ゾンビと何が違うのか分からない。彼らの【先導者LV.1】【煽動者LV.1】となる。 ・もっともエロい諺を【王里虫角[魔]】で叫ぶ。
—-
名前:青空火炎(あおぞらかほ) ・性的なことが苦手な火炎(かほ)は、このステージに絶望しつつ、WCBへの怒りを再び強く盛り上がらせる(【正義感Lv.2】)。 ・【ワクチン】を優先して探す。【ワクチン】を求めている場合はできるだけ他の参加者(特に依織)とも協力する。 (【他人に信頼されやすいLv.2】があるので協力は得やすいだろう) ・【性欲ゾンビ】は元々人間なので、正義感の強い火炎(かほ)には攻撃できない。 ・【ワクチン】が打てていない際の移動は【ジャスティス・バーナー[魔]】を用いてできるだけ空中を通ることを試みる
—-
プレイヤー名:高萩依織 ・【諦めの悪さLv.1】で「ワクチン」を探し、注射をする。手伝ってもらえそうな参加者がいるなら一緒に手伝う。 ・ゾンビに襲われた時は【Awaken Now[魔]】で身体能力を強化し、ゾンビを追い払う。 ・ワクチンを見つけた後は【持久力Lv.2】でゴールまで向かう。
最終ターン
プレイヤー名:コダワリ ・障害となって参加者を阻む。そり立つ壁になる、反り立っているのは男性器である。ギロチンロードになる、凄まじい切れ味の文言を【コトノハ教の経典LV.3】から引用する。煮えたぎる油風呂に【王里虫角[魔]】の落雷を加える。最終100mの直線で【厚い顔の皮LV.1】の唇にキスするよう懇願し泣く。誰にも愛されなければ【神聖LV.1】な自決する。
—-
クロス・ロードラン 【揺るぎない自身】と最終ステージ名が『栄光への道』であることにクロス・ロードランは確信した。 『既に【王道Lv3】はなった』と この瞬間、【王道Lv3】展開の覚醒がクロス・ロードランに起こる 【王道Lv3】は【正道】に 【正道】は常に正しく、クロス・ロードランの行動の絶対を確定させ、それを見た者はいかなる行動も絶対に正しい行動だと認識する 【覇道Lv3】は【修羅道】に 【修羅道】はまさに阿修羅を彷彿とさせるクロス・ロードランの戦いぶりに、それを見た者の本能を爆発的に増幅させ、本能のままに行動させる 【邪道Lv3】は【外道】に 【外道】は既に人の道にあらず、その道を進むクロス・ロードランを見た者は、畏怖や狂気に支配されやがて人としての尊敬を失う 3つの道の先にある新たな道をクロス・ロードランは見付けたのだ 反り立つ壁を【邪道Lv3】を超えた【外道】で人ならざる動きでなんなく乗り越える ギロチンロードは【覇道Lv3】を超えた【修羅道】で全て打ち砕く 油風呂の飛び石地帯は【王道Lv3】を超えた【正道】で最早何もない道のように進む
—-
■鬼姫 狂騒■ ・【怪力Lv.3】で壁を破壊して取っ掛かりをつくり登る、または壁を破壊しながら進む ・【善人Lv.3】自分は神様に愛されてると言う根拠の無い自信でギロチンロードをマイペースに渡り歩く、自分は人の為に活動していると言う自負はシスターノイジーから一切の恐怖心も欠落させた ・【CRAZY☆NOISY☆GOS"HELL"(魔)】と【音痴Lv.3】を【ハイパワー大型メガホンLv.1】で増幅させて他参加者を激励しつつ油風呂を吹き飛ばす 「みんな頑張れ〜〜〜」
—-
名前:姚静梅(ヤオ・ジンメイ) 現在のトップであり自分に屈辱を与えたクロス・ロードランを【観察眼[魔]】で弱点を探しながら【威圧Lv2】し、【中国武術Lv3】の多彩な技で叩き潰す。 屈辱への報復は【マフィアLv1】の掟だ。 【忠義心Lv2】により、栄光をもたらすため優勝を目指し、中国武術の力を生かしながら、ゴールに向かいます。
—-
プレイヤー名:高萩依織 ・【持久力Lv.2】と【諦めの悪さLv.1】であくまで安全策を取りつつもゴールを目指す。 ・妨害によりギロチンや油風呂等の罠に嵌っても【Awaken Now[魔]】で持ちこたえる。 ・最後までアイドルとして【可愛さLv.3】と【あざとさLv.1】を失わないように走る。 ・結果がどうであれ、ゴール後は【マイクLv.1】を使い、【歌唱力Lv.2】で歌い、その後青空火炎に感謝の言葉を伝える。
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名前:青空火炎(あおぞらかほ) 邪道を極めるクロス・ロードランがこのまま優勝することを防ぐのを第1優先に動く。 このことは、ロードラン本人に最初に宣言する。 また、参加差の中で一番まともであり、友情もうまれている依織を助けることも強く意識する。 依織を優勝させることはロードランの優勝を阻止することにも繋がるだろう。 機会があれば、まだ能力を使っていない依織を後ろから【ジャスティス・バーナー[魔]】で全力で「押して」支援することも狙う。 依織に大怪我をさせてしまうだろうが、それが彼女の能力のトリガーになるはずだ。 きっと、火炎(かほ)の意図も依織に伝わるに違いない。
最終更新:2025年07月11日 01:56