あにまん民のオリキャラ同士をAIの力を借りて戦わせるスレ @ ウィキ
《猫又幻(ねこまた・まぼろし) VS 七曜 ナナビ》
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aioricharabattle
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《猫又幻(ねこまた・まぼろし) VS 七曜 ナナビ》
何もない平原。空は雲に閉ざされ、光は乏しく、風も息を潜めていた。
ただ、そこに二つの影が向かい合っていた。
猫又幻。その銀灰の髪が微かに揺れ、鋭い双眸は一切の油断を許さない静謐を帯びていた。
両手に構えた「蒼月双牙」が、月なき空の下でもかすかに青く煌く。その立ち姿は、まるで時間そのものが止まったかのような緊張を孕んでいる。
対するは七曜ナナビ。
浮遊する足元に影はなく、薄布のようなローブが無風の中にそよぐ。その目は感情の色を宿さず、まるで精巧な人形のような無機質さ。
「戦います。」
ナナビの声は、まるで誰かに用意された台詞をなぞるようだった。
平坦で、感情の波など一切感じさせない。彼女の言葉は、ただその場に音として落ちた。
平坦で、感情の波など一切感じさせない。彼女の言葉は、ただその場に音として落ちた。
カッ。
乾いた音が平原に響いた。幻が一歩、前へと踏み出す。
その足取りには迷いがなく、五百年の旅を経て研ぎ澄まされた静謐な殺意が滲む。
その足取りには迷いがなく、五百年の旅を経て研ぎ澄まされた静謐な殺意が滲む。
その双眸はただ一つの標的を捉えて離さず、風すら動きを止めたかのような張り詰めた空気が辺りを支配する。
「――始めようか。」
低く、静かな声。それだけで風景が一変した。空気の密度が増し、皮膚に刺さるような緊張が走る。
次の瞬間、彼らの距離が消える。
幻の一太刀が風を裂き、目に見えぬ速さでナナビへと迫る。
幻の一太刀が風を裂き、目に見えぬ速さでナナビへと迫る。
刃が放つ青白い残光は、夜の欠片のように揺らめきながら尾を引き、分裂する。
三つ、五つ、七つ、十、そして――十六。
幻の姿が分身のように広がり、まるで群れをなす幻獣のようにナナビを取り囲む。
「幻影の孤影。」
その声と同時に、全ての幻が同時に斬撃を放った。
「日術……防壁展開。」
ガキィィン!!
眩い光が炸裂する。 ナナビの前に展開された防壁が、怒涛の双剣を受け止めたのだ。
光が螺旋を描いて拡がり、巻き起こる波動が周囲の空気すら震わせた。
その光は物理的な照度を超え、霊的な領域にまで作用する高密度な魔力の干渉波だった。
「次は……月。」
その囁きと共に空間の性質が変化する。光が消え、熱が消え、音すら吸い込まれたかのような静寂の帳が広がった。
月術による魔法的現象は、感覚遮断の闇を生成することで対象の認識力に干渉し、位置把握や動作予測といった戦術判断を鈍化させる。
その影の中、動いていたはずの幻影すら沈黙し、幻の感覚は完全に孤立する。
「ならば……祟り目。」
今度は、静謐の中から幻の声が低く響いた。声というよりも、闇そのものがナナビの思考領域へと侵入してくるような、そんな異質な感覚だった。
浮かび上がったのは、深紅に光る二つの瞳――精神干渉型呪術『祟り目』の発動による兆候だ。
この視線は、魔力的干渉を用いた精神侵蝕。対象の記憶や思考の構造に揺らぎを与え、徐々に自我そのものを侵していく構造を持っていた。
「……。」
相変わらず無感情そうな表情をしているナナビだが、彼女の中の魔力循環は乱れ、術式の中核である精神の安定が揺らぎ始める。
細い意識の糸が絡まり、術者としての集中が削られていく。
だが、ナナビは気合いで冷静を装い、薄く目を開けて次の術式を告げる。
「次は……火。」
炸裂音と共に炎が暴れ出す。火の渦は猛り狂い、辺りの霧や幻影を焼き尽くすように渦巻く。
燃え盛る炎の中で、幻影の一部が焼かれて崩れ落ちていくが、幻の本体はなおもその姿を見せない。
幻と現実の境界が溶け合い、視覚・聴覚・触覚といったすべての感覚が混線し始める。
周囲の輪郭が滲み、地面の硬さすら曖昧になり、認識の基盤そのものが揺らいでいく。
「幻視共鳴。」
低く紡がれたその言葉が引き金となった。
ナナビの視界に、意味を持たないはずの風景が歪みを伴って重なり合う。
ナナビの視界に、意味を持たないはずの風景が歪みを伴って重なり合う。
幻影は単なる視覚的イメージではない。 それは精神の奥底に直接干渉する魔力の楔。
数百もの幻影がナナビの脳裏へと流れ込む。
数百もの幻影がナナビの脳裏へと流れ込む。
かつて見た記憶、経験の欠片、ありえない未来像……。それらが混在し、正否の判断すら奪っていく。
「……?」
ナナビの瞳が僅かに揺れた。幻影はただ見せるのではない。
それに抗う思考そのものに『幻』を刻みつけ、拒絶の意志すらも幻へと塗り替える。自我の堤防が、音を立てて崩れ落ちていく。
「……水。」
ナナビの唇が震えながらも、かすかに開いた。その一言のあと、彼女は両手を掲げ、自らの頭上に水球を出現させる。
直径二十センチを超える水の球体が、十数個も浮かび上がったかと思うと、ナナビはそれらを一点に集束させるように合図する。
バシャァッ。
集まった水が一気に降り注ぎ、自身の頭から全身へと叩きつけるように浴びせた。
薄布のローブが肌に張りつき、濡れた髪が額に垂れる。冷水が一瞬で神経を刺激し、ナナビの呼吸が乱れる。
薄布のローブが肌に張りつき、濡れた髪が額に垂れる。冷水が一瞬で神経を刺激し、ナナビの呼吸が乱れる。
「……思考の混濁、沈静。」
まるで自らに冷水を浴びせることで意図的に幻の精神干渉から逃れようとしているかのようだった。
冷気を帯びた水が蒸気と霧となって舞い上がり、戦場全体に漂い始める。
冷気を帯びた水が蒸気と霧となって舞い上がり、戦場全体に漂い始める。
シュウゥ……ッ。
白濁とした霧が空気を満たし、視界は遮断される。それは、ナナビにとって“頭を冷やす”手段であり、同時に彼女の意志の回復を示す儀式のようでもあった。
しかし、その濃霧は皮肉にも幻の『幻視共鳴』の効果を強調してしまう。
霧の中に紛れる幻影たちはますます判別困難となり、現実と幻想の境界が一層曖昧になるだけだった。
霧の中に紛れる幻影たちはますます判別困難となり、現実と幻想の境界が一層曖昧になるだけだった。
「蒼炎の舞。」
突如、龍の咆哮の如き音が霧を震わせた。青白い炎が円を描いて奔り、霧を焼き払うように広がる。
水分を含んだ空気が蒸発し、視界が一瞬だけクリアになる。その中心に――猫又幻の姿があった。
だがそれは、まるで湖面に映る月のように曖昧で、次の瞬間には輪郭が滲み、細波のように揺らぎながら崩れていく。
だがそれは、まるで湖面に映る月のように曖昧で、次の瞬間には輪郭が滲み、細波のように揺らぎながら崩れていく。
「……また幻?」
ナナビの呟きは、焦燥とも困惑ともつかない色を含んでいた。
だが、その声には確信が欠けていた。彼女の直感は警鐘を鳴らしていたが、理性は確たる実感を得られずにいた。
だが、その声には確信が欠けていた。彼女の直感は警鐘を鳴らしていたが、理性は確たる実感を得られずにいた。
霧が濃く立ち込める中で、幻の存在はまるで霧と一体化したかのように溶け込んでいる。魔力探知すらすり抜け、感覚の全てを欺く存在。
ナナビはわずかに眉をひそめながら、視線を空間の隙間に滑らせるように泳がせた。
(このままでは、感覚が麻痺するだけ……どこかで突破口を)
自らの思考を押し留めるように、ナナビは短く息を吐いた。そして、新たな術式を紡ぐ。
「木。」
低く紡がれた言葉と共に、大地から生えるように草が一斉に伸び、枝がまるで生き物のようにしなる。それらはまっすぐ幻の気配へと向かい、絡め取るように襲いかかる。
しかし、幻の姿はその枝の隙間を音もなくすり抜けた。枝に捕らえられる寸前で、その姿はまるで煙のように霧散する。
形があったはずのものが、触れる寸前で存在をやめる――その異様な挙動に、ナナビは内心で苛立ちを覚えていた。
幻はそんな彼女の焦燥を見透かしたかのように、静かに口元を緩めた。
「九幻化。」
低く響いたその言葉と同時に、幻の尾が九つに分かれた。
それぞれが独立した生命のようにゆらりと揺れ、龍気と月光がその体を満たしていく。
一瞬にして気配が掻き消える。
まるでこの場に存在すらしていないかのように、猫又幻はナナビの知覚から滑り落ちた。
まるでこの場に存在すらしていないかのように、猫又幻はナナビの知覚から滑り落ちた。
それはただのステルスではない。
五感すべての把握を拒絶し、霊的な感知すら通じぬ完全なる『空白』。
五感すべての把握を拒絶し、霊的な感知すら通じぬ完全なる『空白』。
ナナビの心がわずかに揺れる。冷静を装いながらも、内心では危機の色が滲んでいた。
(まずい、この状態では……見つけられない。)
彼女の緊張は高まり、術者としての直感が脈打つように危険を告げていた。
ザッ。
ナナビの前に一閃。気づいたときには、双剣が己の頬を掠めていた。それはまさしく死の兆しだった。
「金。」
岩の盾が立ち塞がる。だが、それすら幻の刃は通過した。重厚な防御も、幻想に浸食されて機能を失う。
「…終わらせよう。」
九尾・幻影終幕斬。
分身と九尾が渾然一体となり、時の流れすら歪む剣舞が炸裂する。すべてが幻想の中の現実、あるいは現実に刻まれた幻想。その一閃が、未来をも断ち切る。
一振りごとに、ナナビの背後に爆ぜるような幻像が展開され、過去の記憶、未来の可能性、今という断面――すべてを斬撃に乗せて断ち切っていく。
「……っ!」
ナナビがわずかに呻く。もはや防ぐ術はない。
九尾が舞い、双剣が時間の狭間を縫う。最後の斬閃が彼女の目前で止まった。
九尾が舞い、双剣が時間の狭間を縫う。最後の斬閃が彼女の目前で止まった。
「……。」
ナナビのローブが、音もなく裂けていた。その身がふらつき、足元の浮遊すら不安定になる。
「……つ…ち…。」
最後の術を紡ぐ前に、ナナビは崩れ落ちた。その瞳にはまだ淡い光が宿っていたが、もはや術式を繋ぐ力は残っていなかった。
幻は静かに双剣を収め、空を見上げた。
雲間から微かに漏れる月光が、その身を淡く照らす。
「まだ、旅の途中か……。」
夜の気配が、静かに平原を包み始めていた。
「勝者――猫又幻。」