あにまん民のオリキャラ同士をAIの力を借りて戦わせるスレ @ ウィキ
《クレッシェンドハート VS イオ》
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aioricharabattle
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《クレッシェンドハート VS イオ》
風が鳴り、何もない平原がどこまでも続いていた。
乾ききった大気が肌を撫で、砂塵がかすかに舞う。遠くには何一つ障害物のない地平線。その中心で、ふたりの異能の存在が対峙していた。
白衣の裾が風に翻り、イオの紫の髪がわずかに揺れる。
「見逃してくれそうに無いな。……はぁ。」
彼女はわずかに息を吐きながら、タバコを唇から抜いた。
親指と人差し指でそれをつまむと、指先で火を押し潰す。
ジッ……。
かすかな焦げる音とともに煙が途切れた。
「実験体になる覚悟はできてるな?」
その目は、冗談の色もなく冷静そのものだった。
そして、その視線の先には——
ぱっと咲いたように立っている少女、クレッシェンドハート。
その身を包むのは、光り輝く音符と色彩。
風にそよぐ髪とスカート、そして何より、眩しいほどの笑顔。
「ドキドキしてきた……今日の実験は、私のトキメキが勝つよっ♪」
ピンッ!!
彼女の指が弾かれたその瞬間、足元から金色の音符が浮かび上がった。
その音符は一瞬で弾け、空中にスパークのような軌跡を描く。
「ハート、チャージ開始♪ ビート、響け――!」
ズバババババッ!!
彼女の高らかな歌声が平原に響くや否や、音符が無数に弾け飛ぶ。
赤、青、金、緑――目を奪うカラフルな旋律が形を取り、弾幕と化してイオを取り囲んだ。
「歌が……実体化している?」
イオはつぶやき、口元に皮肉めいた笑みを浮かべる。
「なるほど、音による弾幕か……データは取った。」
イオの右目が風に煽られた前髪の隙間から露わになる。
紫色の鱗が目元にびっしりと浮かび、虹彩の奥で螺旋を描くように回転する異形の瞳――龍の眼が、鋭く敵を捉えていた。
ギィンッ!!
瞳が閃光のように輝いた瞬間、彼女の腕が軋む音とともに異形へと変貌する。
皮膚が粘性を帯びて伸び、筋繊維が絡みつくようにしなり、蛇のように長くなった右腕が、鋭く弾かれた音符へと打ち込まれた。
バシュッ!!
「ほいっと。」
その軽い声とは裏腹に、イオの視線は徹底的に計算され、精密機械のような正確さでビートを撃ち落としながら後退していく。
「トキメキは止まらないッ!」
クレッシェンドハートの声が空に弾けた。彼女の足元に音符が湧きあがり、瞬時に空中へと連結していく。
巨大な音符たちは空間に階段を作り、その頂を駆けるようにして彼女は舞い跳んだ。
巨大な音符たちは空間に階段を作り、その頂を駆けるようにして彼女は舞い跳んだ。
スッ、タン、タンッ!!
リズムに乗って跳躍するたびに、金色の光が衣服と髪に反射する。その姿はまるで、天上から舞い降りる祝福の使徒のようだった。
「ド・レ・ミ・ファ・ソーーッ!!」
歌声が高まり、空を震わせる。その旋律と共に、一つ一つの音符が急激に肥大化し、まるで流星群のように輝きを放って空間を覆った。
ズゴォォンッ!! ドガァァン!!
爆音と共に炸裂する音符たち。イオは機敏に身体を捩じって跳ねるも、肩をかすめた一撃が白衣を裂き、布が舞う。
ビリィィッ!!
露わになった肩の鱗が光を反射し、閃く――それでも彼女の表情は崩れない。
「チッ……ならば薬S。」
彼女が小瓶を噛み砕いた瞬間、イオの肉体は空間から音もなく掻き消えた。
ビュンッ!!ビュンビュンビュンッ!!!
一拍置く間もなく、クレッシェンドハートの目の前に風が突風のように吹き抜けた。
「っ!?どこ!?」
その問いの直後、背後から一撃、さらに横合いから更に拳、肩へ、腹部へ、足元へと、嵐のような打撃が次々と襲いかかる。
「くぅっ……!」
クレッシェンドハートは急ぎ音符を展開しガードを張るが、イオの速度はそれすら上回る。
「一秒あれば、百は叩ける。」
彼女の声が空間を滑るように響く。
ズバッ!ズバッ!ズババッ!!
拳が、爪が、異形の腕が、ビートの壁を切り裂きながらクレッシェンドハートの周囲を翻弄する。
だが——その中でも、ハートの鼓動は確かに加速していた。クレッシェンドハートの目がきらりと輝き、彼女の胸元で心臓が早鐘のように高鳴る。
ドクン、ドクンッ!!
そのたびに付点音符がひとつ、またひとつと輝きを帯びてチャージされていく。
光るリズムが身体を駆けめぐり、指先に力が宿る。
「ビートラッシュッ!!」
彼女の周囲から放たれた音符は、まるで怒涛の旋律そのもの。高密度の音符弾幕が放物線を描いて降り注ぎ、地表を穿つ。
ビシビシッ!!ズガァン!!
イオはその光と音の暴風の中を疾走する。身体が残像を残して移動するたび、空間に風の裂け目のような軌跡が残る。
しかし、その速さにもかかわらず、次々と押し寄せる音符の軌道はまるで未来を予測したかのように絡みつく。
「動体視力が……試されるな……。」
ギリリ、とイオの眼がさらに鋭く狭まり、龍の瞳が回転する。
右手が瞬時に変異を強める。先ほど以上に皮膚が割れ、うねる筋繊維の中から猛禽の鉤爪が飛び出し、風を裂いて振り下ろされる。
バギィィン!!バシュッ!!
音符の一群を鋭く切り裂くと同時に、後方から迫っていた高威力の付点音符が続けざまに襲いかかる。
ドゴォンッ!!バシュゥゥンッ!!
光の尾を引くそれらは、空気を焼きながら爆ぜ、さらに戦場を加速させていった。
「クッ……薬O……いいね、じゃあ見せてあげようか。幻獣変化、"リミットオーバー・レジェンド"。」
その肉体が、うねりとともに凶兆めいた変化を見せる。骨のあたりから鳳凰のごとき炎の羽根が咲き、空を灼くように広がっていく。
両腕は次々と枝分かれし、ヒュドラの頭のようにうねる触手状の腕へと変貌する。その一本一本が独立して動き、まるで意思を持つ蛇のように唸りを上げる。
蛇の鱗が胴体を覆い、クラーケンのような巨大な触手が腰から蠢く。 胸元には獣のような眼が瞬きをし、牙のような突起が肩口に現れる。
その姿は、神話の断片が現世に顕現したかのようだった。
「わっ……まさに伝説級……!」
クレッシェンドハートの目が、畏怖と興奮の入り混じる輝きを放つ。
「でも、こっちも最高潮だよッ!」
心臓の鼓動が爆音のように鳴り響き、チャージされた付点音符たちが黄金の光を放ちつつ、彼女の全身に纏わりつくように旋回する。
ピカピカピカッ……!
「ドキドキ、最高潮――!」
その声が風に乗った瞬間、空間の温度が一気に変わる。
歌声が風を震わせ、平原そのものが彼女のステージと化す。
歌声が風を震わせ、平原そのものが彼女のステージと化す。
地平線の果てまで音符の光が満ち、色彩の奔流が世界を染めていく。
「いっくよーーーッ!! クレッシェンド・フィナーレ!!」
バシュウウウンッ!!ドッガァァァン!!ビシィィィンッ!!
まばゆい閃光と爆発する旋律の渦が重なり合い、すべての音符が一斉に放たれる。
その奔流は、まるで星を砕くかのごとき光と音の嵐。
だが――その中央で、イオが動いた。
「……舐めるなよ。」
幻獣の咆哮が轟くと同時に、翼が展開し、触手と鱗が旋律の渦を巻き返すように暴れ出す。イオの全エネルギーが解放され、音の奔流と衝突する。その瞬間、空間が軋み、光と音が反転したかのように世界が明滅する。
イオは全ての力を使ってクレッシェンド・フィナーレの音符を受け止め、一斉に弾き返す。
バリィィィィンッ!!バシュウウウンッ!!
「ぐっ……お前の"ドキドキ"……確かに受け止めたよ……っ!」
だが、相殺に成功したその瞬間、イオの身体が僅かに震えた。鱗が砕け、羽根が炎と共に崩れ落ち、無数の腕が形を保てず空へと解けていく。全てを受け止めた代償――限界を超えた身体が音もなく膝をついた。
「くっ……力の……使いすぎ……か……。」
イオの視界が滲む。その対面に、変わらぬ笑顔で立つクレッシェンドハート。
「うんっ♪ すごかったよ!でも、勝負は……いただきっ☆」
「はは……すごいね……これが、ドキドキ……か。」
クレッシェンドハートはにっこりと笑い、手を差し出す。
「うんっ♪ 心が動けば、まだまだ戦えるよっ!」
そして風が再び吹き抜け、戦場を包む。その風の中で、確かに響いた。
「勝者――クレッシェンドハート。」