野道-fieldpath-
いつからわたしはここにいたんだろう。
一面の青を視界に映したまま、神尾観鈴はそんなことを思っていた。
一面の青を視界に映したまま、神尾観鈴はそんなことを思っていた。
夢から醒めたときの感覚に似ている。気が付けばそこにいる、あやふやな気分。
それともこれは夢の続きなのだろうか。あまりにも全てが曖昧とし過ぎていている。
それともこれは夢の続きなのだろうか。あまりにも全てが曖昧とし過ぎていている。
殺し合い。最後のひとりになるまで。褒美。爆発――
断片的な事象が次から次へと浮かんできたものの、自分は当事者ではなく傍観者だった。
この頃見る夢に似ている。遡ってゆく夢を遠くから見る自分。ひとりきりの女の子を見ている自分。
この頃見る夢に似ている。遡ってゆく夢を遠くから見る自分。ひとりきりの女の子を見ている自分。
……ちがう。そうじゃない。
関わる気がないのだ。何かが崩れるのを恐れて、伸ばしかけた手を途中で止めてしまう。
あらゆることに関して自分はそうだった。
家族の温もりが欲しくても『晴子さん』の生活を崩してしまうのが怖く、
友達が欲しくても癇癪を起こし迷惑をかけてしまうのが怖く、
恐れていることを知られてしまうのすら怖い。
だから笑うことに努めた。いくじのない自分を誤魔化すために。
或いは己を保つために。或いは逃避のために。
希望が信じられず、ただ傷つくのを怖がって目を背けてきた。
あらゆることに関して自分はそうだった。
家族の温もりが欲しくても『晴子さん』の生活を崩してしまうのが怖く、
友達が欲しくても癇癪を起こし迷惑をかけてしまうのが怖く、
恐れていることを知られてしまうのすら怖い。
だから笑うことに努めた。いくじのない自分を誤魔化すために。
或いは己を保つために。或いは逃避のために。
希望が信じられず、ただ傷つくのを怖がって目を背けてきた。
だって、わたしは誰も信じていないから。
助けを求めれば嫌な顔をされるに決まっている。
みんなといても居心地の悪さが敷衍し、邪魔だと思われるに決まっている。
そんな自分は何もかもを諦めて当然のはずだった。
助けを求めれば嫌な顔をされるに決まっている。
みんなといても居心地の悪さが敷衍し、邪魔だと思われるに決まっている。
そんな自分は何もかもを諦めて当然のはずだった。
……でも。
それではダメだ、とあの日に思った。
もう何度迎えるか分からない夏休み。結局は何も言い出せず、ひとりで帰っていた終業式。
ちょうど今自分がいる場所と同じ、海沿いに長く広がる堤防と陽光に染まった浜辺。
そこでひとつ影を作る見かけないひと。目に留めた瞬間、薄ぼんやりとした過去の憧憬が思い出された。
遠い昔。いつ、どこだったか分かりもしない、自分の記憶かどうかさえ分からない昔。
それでも、ずっと感じていたことがあった。海を見ながら繋いでいた手。
手のひらから感じるお互いの温かさ。どんな記憶かさえ分からない、それでも覚えている温もり。
おかあさん……誰にでもなく、その言葉を呟いていた。
嫌だよ。ひとりきりの長い休みは、もう……
なにか強い力に引かれるようにして足を進めていく。まるで、親が子の手を引いていくように。
もう何度迎えるか分からない夏休み。結局は何も言い出せず、ひとりで帰っていた終業式。
ちょうど今自分がいる場所と同じ、海沿いに長く広がる堤防と陽光に染まった浜辺。
そこでひとつ影を作る見かけないひと。目に留めた瞬間、薄ぼんやりとした過去の憧憬が思い出された。
遠い昔。いつ、どこだったか分かりもしない、自分の記憶かどうかさえ分からない昔。
それでも、ずっと感じていたことがあった。海を見ながら繋いでいた手。
手のひらから感じるお互いの温かさ。どんな記憶かさえ分からない、それでも覚えている温もり。
おかあさん……誰にでもなく、その言葉を呟いていた。
嫌だよ。ひとりきりの長い休みは、もう……
なにか強い力に引かれるようにして足を進めていく。まるで、親が子の手を引いていくように。
勝手に過ぎる。我侭に過ぎるなんて分かりきっていた。
誰かと過ごせる価値もない人間だということは、自分が一番知り抜いていた。
だが、それでも……
がんばれば、弱さから逃げ出さずに、すこしでも向き合えば良くなるかもしれないという思いがあった。
そうすれば、きっとあの温もりを忘れずに済むだろうから……
こんにちはっ。でっかいおむすびですねっ――この声を始まりにして。
誰かと過ごせる価値もない人間だということは、自分が一番知り抜いていた。
だが、それでも……
がんばれば、弱さから逃げ出さずに、すこしでも向き合えば良くなるかもしれないという思いがあった。
そうすれば、きっとあの温もりを忘れずに済むだろうから……
こんにちはっ。でっかいおむすびですねっ――この声を始まりにして。
……今も、同じだよね。
無限のように広がる青から、どこまでも続く浜辺と海と、堤防。
夜でありながら穏やかさを失わない潮鳴り。髪を撫でるやさしい風。
ここは同じ。自分がいたあの街と同じだ。
自分の弱さも、いくじなさも全て凝縮した世界。
だから逃げ出すのは、ひとりきりで夏休みを過ごすことと一緒だ。
夜でありながら穏やかさを失わない潮鳴り。髪を撫でるやさしい風。
ここは同じ。自分がいたあの街と同じだ。
自分の弱さも、いくじなさも全て凝縮した世界。
だから逃げ出すのは、ひとりきりで夏休みを過ごすことと一緒だ。
もう一度がんばろう。
信じられるようにがんばろう。
観鈴ちん、ふぁいとっ、おー。
信じられるようにがんばろう。
観鈴ちん、ふぁいとっ、おー。
片手を高く空へと掲げ、神尾観鈴は夢から、目覚めた。
取り敢えず、往人さんを探さなくっちゃ。
くるりと振り向いて、堤防から飛び降りる。その先には街があった。
多少様式は違うものの、基本的にありふれた日本の住宅であり、街の作りも同じだ。
どこから行こう……目をきょろきょろさせているとひとつ、目立つ建物があった。
くるりと振り向いて、堤防から飛び降りる。その先には街があった。
多少様式は違うものの、基本的にありふれた日本の住宅であり、街の作りも同じだ。
どこから行こう……目をきょろきょろさせているとひとつ、目立つ建物があった。
「教会だ……」
日本式の建物が並ぶ中に浮くようにして存在する教会は、十分な異彩を放っている。
自分の着ている制服のタイについている十字架と同じものが正面に掲げられている。
こんな目立つところになら、往人だっているかもしれない。
何の確信もなかったが、行ってみなければ始まらない。
足早に扉の前まで歩き、ドアをノックしようと思って――やっぱりやめた。
自分の着ている制服のタイについている十字架と同じものが正面に掲げられている。
こんな目立つところになら、往人だっているかもしれない。
何の確信もなかったが、行ってみなければ始まらない。
足早に扉の前まで歩き、ドアをノックしようと思って――やっぱりやめた。
ここには参加者の誰かがいるかもしれない。往人だけがいるとは限らない。
つまり、音に反応して隠れられてしまうかもしれない。
自分より幼い人もいたのだし、怖がってしまうかもしれない。
というより、自分も怖い。見知らぬ誰かと会うのは今だって緊張する。
だが立ち止まるわけにはいかないと精一杯のきりっとした表情を浮かべ、観鈴はゆっくりと扉を開けた。
往人さんがいますようにっ、と淡い願いを抱きながら。
つまり、音に反応して隠れられてしまうかもしれない。
自分より幼い人もいたのだし、怖がってしまうかもしれない。
というより、自分も怖い。見知らぬ誰かと会うのは今だって緊張する。
だが立ち止まるわけにはいかないと精一杯のきりっとした表情を浮かべ、観鈴はゆっくりと扉を開けた。
往人さんがいますようにっ、と淡い願いを抱きながら。
* * *
どうすればいいんだろうな、とこの場においてはありきたりと思われる疑問を、河野貴明は投げかける。
見上げた先には自分の背丈よりも大きな十字架と、イエス・キリストの像。
けれども当のイエス様は沈黙を寄越すばかりで、神託の一つも授けはしない。
自分で考えろということか。まだ俺は学生でしかないのに……
見上げた先には自分の背丈よりも大きな十字架と、イエス・キリストの像。
けれども当のイエス様は沈黙を寄越すばかりで、神託の一つも授けはしない。
自分で考えろということか。まだ俺は学生でしかないのに……
中々に厳しいと嘆息して、貴明はデイパックから支給されたものを取り出す。
予想よりも遥かに軽い、まるで玩具のような――拳銃。
しかし独特の質感、ざらざらとした触感は正しく本物だということを証明していた。
予想よりも遥かに軽い、まるで玩具のような――拳銃。
しかし独特の質感、ざらざらとした触感は正しく本物だということを証明していた。
正式名称はグロック19。
グロック17のコンパクトモデルであり、弾薬は9mmパラベラム弾を使用する。
重量は595グラム。拳銃の中では非常に軽く、その小ささから携帯性も高い。
日本でもSATが採用しているとされ、信頼性も高い拳銃である。
グロック17のコンパクトモデルであり、弾薬は9mmパラベラム弾を使用する。
重量は595グラム。拳銃の中では非常に軽く、その小ささから携帯性も高い。
日本でもSATが採用しているとされ、信頼性も高い拳銃である。
と、付属の説明書にご丁寧に記されてあった。
さらに説明書の最後には、
『安全装置を外して、両手で握り、しっかり固定してから撃つこと。銃を撃つときの約束だぞ☆』
なんてふざけた調子で使い方も書かれていた。
馬鹿馬鹿しいと思いながらも、しっかり読み込んでしまっている自分は早くも順応しようとしているのだろうか。
さらに説明書の最後には、
『安全装置を外して、両手で握り、しっかり固定してから撃つこと。銃を撃つときの約束だぞ☆』
なんてふざけた調子で使い方も書かれていた。
馬鹿馬鹿しいと思いながらも、しっかり読み込んでしまっている自分は早くも順応しようとしているのだろうか。
人を殺すという覚悟も、想像さえ出来ない癖に?
そう、まるで何も分かっていない。一方的に説明を受け、
どうなっているのか理解する暇もなく、気付けばここにいた。
ただ確かなのはここには友人達がいるということと、あまりに生々しい銃の感触だけだ。
覚えている限りではこのみ、雄二、環の姿は確認しており、このみに至ってはその場で会話していたほどだ。
その他にも配られた名簿とやらには愛佳と由真の名前もあった。
どうなっているのか理解する暇もなく、気付けばここにいた。
ただ確かなのはここには友人達がいるということと、あまりに生々しい銃の感触だけだ。
覚えている限りではこのみ、雄二、環の姿は確認しており、このみに至ってはその場で会話していたほどだ。
その他にも配られた名簿とやらには愛佳と由真の名前もあった。
彼ら、彼女らと殺しあう……まるで漫画の中の出来事のようで、しかしこれは紛れもない現実なのだと思う。
説明を受ける横でひたすら怯えていたこのみの表情。
怖い、怖いとひたすら囁き続けていたあの声色は決して夢の中の出来事などではない。
説明を受ける横でひたすら怯えていたこのみの表情。
怖い、怖いとひたすら囁き続けていたあの声色は決して夢の中の出来事などではない。
だが、だからといって俺が戦えるのか? 俺は普通の高校生なんだぞ?
映画のヒーローなんかじゃない。自衛隊の人間でもない。どこにでもいるありふれた学生の一人でしかない。
誰かを助けるために火の中に飛び込めるような度胸もなければ、
冷酷になりきって友人達を見捨てる覚悟もない。
映画のヒーローなんかじゃない。自衛隊の人間でもない。どこにでもいるありふれた学生の一人でしかない。
誰かを助けるために火の中に飛び込めるような度胸もなければ、
冷酷になりきって友人達を見捨てる覚悟もない。
ただひとつ、自分に殺し合いに適したものがあるとすれば、それは周りに無関心ということだ。
遠くで何があっても興味を持たず、テレビのニュース報道を見るような気持ちにならなれる。
現に次々と人の首が吹き飛ばされていくところを見させられても、
自分に害がなければ正直なところどうでもよかったし、
今この瞬間どこかで人が殺しあっているのだとしても自分に関係なければどうでもいい。
寧ろ人が死ぬというなら毎日のようにテレビの向こうで誰かが死んでいるではないか。
遠くで何があっても興味を持たず、テレビのニュース報道を見るような気持ちにならなれる。
現に次々と人の首が吹き飛ばされていくところを見させられても、
自分に害がなければ正直なところどうでもよかったし、
今この瞬間どこかで人が殺しあっているのだとしても自分に関係なければどうでもいい。
寧ろ人が死ぬというなら毎日のようにテレビの向こうで誰かが死んでいるではないか。
――現実も、仮想も含めて。
では、そのテレビの中にこのみや環がいたとしたら?
現場ならずとも誰かに殺されそうになっていたら、それでも無関心を貫けるのか。
或いは本当に殺され、殺した人間はさも当然という様子でいるのだとしても何も感じないというのか。
現場ならずとも誰かに殺されそうになっていたら、それでも無関心を貫けるのか。
或いは本当に殺され、殺した人間はさも当然という様子でいるのだとしても何も感じないというのか。
結局分からない。
無関心になりきれず、だからといって自分が戦おうという気持ちにもなりきれない宙ぶらりんの自分。
それが今の俺なのだと、河野貴明はため息をつくしかなかった。
無関心になりきれず、だからといって自分が戦おうという気持ちにもなりきれない宙ぶらりんの自分。
それが今の俺なのだと、河野貴明はため息をつくしかなかった。
「えーと……ごめんくださーい」
閃光のように届いた声に、貴明は己の心臓が跳ね上がる感触を味わった。
誰かが現れたのだという事実に頭が混乱し、様々な言葉が脳を飛び交う。
誰だ。女の子? 一体何故。武器は。目的は。殺し合い。参加者。俺も参加者――
誰かが現れたのだという事実に頭が混乱し、様々な言葉が脳を飛び交う。
誰だ。女の子? 一体何故。武器は。目的は。殺し合い。参加者。俺も参加者――
体を芯から硬直させながらも、それでも銃だけは手放さなかった。
自分の身だけは守らなくては。本能が直感的に働き、武器であるそれを強く握らせたのだった。
平静を装いきれず、顔をひきつらせ腕や足が震えるのを感じながらも貴明は声のする方へ向いた。
だが別の意味で、貴明の思考は再び停止することになる。
自分の身だけは守らなくては。本能が直感的に働き、武器であるそれを強く握らせたのだった。
平静を装いきれず、顔をひきつらせ腕や足が震えるのを感じながらも貴明は声のする方へ向いた。
だが別の意味で、貴明の思考は再び停止することになる。
長い髪を後ろで結った、いわゆるポニーテールの髪型。
制服、なのだろうか。特徴的な長く黒いスカートと、対になるようなクリーム色の上着。
そしてアクセントのようにつけられた赤いタイと、首の根元で光る小さな十字架。
制服、なのだろうか。特徴的な長く黒いスカートと、対になるようなクリーム色の上着。
そしてアクセントのようにつけられた赤いタイと、首の根元で光る小さな十字架。
まるで天使だ。教会が醸し出す荘厳な雰囲気のせいか、貴明はそんなことを思った。
凍りきっていた体の芯が温まり、徐々に元の熱量を取り戻してゆく。
それは相手が女の子ということもあるからだろうか、とも思う。
可笑しな話だった。俺は女の子とろくに話もできず、緊張してしまう性質なのに。
思わず苦笑が漏れ、それを見たらしい女の子も微笑を浮かべた。
凍りきっていた体の芯が温まり、徐々に元の熱量を取り戻してゆく。
それは相手が女の子ということもあるからだろうか、とも思う。
可笑しな話だった。俺は女の子とろくに話もできず、緊張してしまう性質なのに。
思わず苦笑が漏れ、それを見たらしい女の子も微笑を浮かべた。
「えっと、こんにちは」
まるでクラスメイトに会ったかのように挨拶される。
一瞬、今の状況を忘れそうになるくらい彼女の挙動は自然体のように見えた。
一瞬、今の状況を忘れそうになるくらい彼女の挙動は自然体のように見えた。
「何か、用かな?」
それにつられてか、貴明もよく考えれば間抜けな返答を寄越してしまった。
用も何も、ここでは殺し合いをするか、そうでないかの選択肢しかないじゃないか。
無論後者が許されているわけもなく、自分達は殺し合いをするしかないわけなのだが、
目の前の女の子にはそのそぶりがないように思えた。
用も何も、ここでは殺し合いをするか、そうでないかの選択肢しかないじゃないか。
無論後者が許されているわけもなく、自分達は殺し合いをするしかないわけなのだが、
目の前の女の子にはそのそぶりがないように思えた。
今はやり合うだけの気概がないのかもしれないし、何か意図があってのことかもしれない。
振り向きながらも咄嗟に後ろ手に隠したグロックの銃把を強く握りながら、貴明は言葉を待った。
女の子はたどたどしい様子ながらも身振り手振りを交えて言葉を続ける。
振り向きながらも咄嗟に後ろ手に隠したグロックの銃把を強く握りながら、貴明は言葉を待った。
女の子はたどたどしい様子ながらも身振り手振りを交えて言葉を続ける。
「えっと、ゆき……じゃなくて、知り合いを探してるんです。あ、えと、国崎往人って人なんですけど」
「ごめん、俺もまだ誰にも会ってないんだ」
「そ、そうなんですか……」
「ごめん、俺もまだ誰にも会ってないんだ」
「そ、そうなんですか……」
明らかに落胆したような表情になり、もごもごと口ごもってしまった。
話題を失くし、これ以上の言葉をどう続ければいいのかと困っているように見える。
まるで入学式の初日、必死に隣の席の人間と仲良くなろうとしているみたいだ。
よく観察してみれば視線はせわしなく動き、少しでも話の種を見つけようとしている風だ。
話題を失くし、これ以上の言葉をどう続ければいいのかと困っているように見える。
まるで入学式の初日、必死に隣の席の人間と仲良くなろうとしているみたいだ。
よく観察してみれば視線はせわしなく動き、少しでも話の種を見つけようとしている風だ。
「……逆に聞くけど、君は誰にも会っていないの?」
だからだろうか、これ以上言葉を返す必要性がないと分かっていながらもそんなことを訊いていた。
目を上げ、話題にぱっと喜びの表情を示しかけた女の子だったが、すぐに元の表情に戻る。
目を上げ、話題にぱっと喜びの表情を示しかけた女の子だったが、すぐに元の表情に戻る。
「あ、はい、わたしも同じで、誰にも……」
「そっか……」
「そっか……」
よく考えれば、自分達がここに来てから数時間と経っていない。
どれほど広大な土地なのかは知るべくもないが、
少なくとも人とかち合わせている人間はほぼいないように思われた。
それ以上会話が続くことはなく、貴明と女の子の間には気まずい空気が流れる。
どれほど広大な土地なのかは知るべくもないが、
少なくとも人とかち合わせている人間はほぼいないように思われた。
それ以上会話が続くことはなく、貴明と女の子の間には気まずい空気が流れる。
訊くべきことはいくらでもあるような気はしたが、目の前にいるのは所詮赤の他人であり、
長話をしても得になるかどうか分かったものではない。何も知らなさそうだから、尚更。
どうやら無関心なのは目の前で会話している相手でも同じことらしいと嘆息し、
その場から去ろうと思いかけていた貴明に、意を決したかのように「あのっ」と女の子が呼びかける。
長話をしても得になるかどうか分かったものではない。何も知らなさそうだから、尚更。
どうやら無関心なのは目の前で会話している相手でも同じことらしいと嘆息し、
その場から去ろうと思いかけていた貴明に、意を決したかのように「あのっ」と女の子が呼びかける。
「か、神尾観鈴っていいます、わたしの、名前」
必死に自分を指差し、名前を告げる女の子……いや、神尾観鈴。
はあ、と生返事をするだけの貴明に対して、観鈴は一生懸命に続ける。
はあ、と生返事をするだけの貴明に対して、観鈴は一生懸命に続ける。
「い、一緒に行きませんかっ」
ぐっ、と親指を天にかざし腕をこちらへと伸ばしてくる。
ヒッチハイクかなにかか、これは? ぽかんと間抜けに口を開けたまま、貴明はどうしたものかと思った。
確かに誰かに襲われるかもしれない可能性がある以上、一人より二人……というのは正しい。
だが相手は知り合いでもない、たった今この場で出会ったばかりの人間だ。
一緒に行動できるような理由があるか? 責任は自分自身に降りかかってくるんだぞ?
大体、自分に誰かを助けられるだけの力があるのか。関わりあうことが出来るのか。ないはずだろ?
ヒッチハイクかなにかか、これは? ぽかんと間抜けに口を開けたまま、貴明はどうしたものかと思った。
確かに誰かに襲われるかもしれない可能性がある以上、一人より二人……というのは正しい。
だが相手は知り合いでもない、たった今この場で出会ったばかりの人間だ。
一緒に行動できるような理由があるか? 責任は自分自身に降りかかってくるんだぞ?
大体、自分に誰かを助けられるだけの力があるのか。関わりあうことが出来るのか。ないはずだろ?
否定する理由ばかりが持ち上がり、頭が却下という答えを導き出す。
俺なんかといないほうがいい。その方がお互いにいい選択になるはずだ……
そう断じて、返事をしようと観鈴の顔を見た。
観鈴も貴明をずっと見ていたのか、ばっちりと視線が合ってしまう。
突然のことに頭の中身が空白になり、言葉を失ってしまった貴明。
観鈴はぎこちない風ながらも、にこっと笑った。若干、不安をたたえたようにして。
俺なんかといないほうがいい。その方がお互いにいい選択になるはずだ……
そう断じて、返事をしようと観鈴の顔を見た。
観鈴も貴明をずっと見ていたのか、ばっちりと視線が合ってしまう。
突然のことに頭の中身が空白になり、言葉を失ってしまった貴明。
観鈴はぎこちない風ながらも、にこっと笑った。若干、不安をたたえたようにして。
「あ、ああ……わかった」
これでいいのか、俺は。
笑顔につられ、思わず了承の返事をしてしまった貴明は、自分に失望していた。
優柔不断の一語が持ち上がり、さりとてぱあっと喜びの笑顔をみせる観鈴に、
「ごめん嘘」なんて言えるわけもなく。精々が悟られないようにため息を出すのが一杯だった。
笑顔につられ、思わず了承の返事をしてしまった貴明は、自分に失望していた。
優柔不断の一語が持ち上がり、さりとてぱあっと喜びの笑顔をみせる観鈴に、
「ごめん嘘」なんて言えるわけもなく。精々が悟られないようにため息を出すのが一杯だった。
「良かったー……にはは、観鈴ちん大勝利っ」
何がそんなに嬉しいのか、ステップを踏むようにして外へと歩き出した観鈴を見て今度は苦笑する貴明。
……この子だったら、特に危険はないか。
だから承諾してしまったのだろうと言い訳のように理由をつけ、観鈴に続くようにして貴明も歩き出す。
……この子だったら、特に危険はないか。
だから承諾してしまったのだろうと言い訳のように理由をつけ、観鈴に続くようにして貴明も歩き出す。
……でも、いつかは、彼女だって。
不意に黒い予感が鎌首をもたげ、俺達は殺し合いをしているんだぞという声が聞こえる。
未だ握り締めて離さない、グロックの重量が、軽いはずなのにずんとした感触を示す。
すっ、と銃口が持ち上がり、観鈴の背中へとポイントされた。撃てば、彼女は死ぬ――
不意に黒い予感が鎌首をもたげ、俺達は殺し合いをしているんだぞという声が聞こえる。
未だ握り締めて離さない、グロックの重量が、軽いはずなのにずんとした感触を示す。
すっ、と銃口が持ち上がり、観鈴の背中へとポイントされた。撃てば、彼女は死ぬ――
「無理、だな」
思いながらも、指は頑として動かず震えてさえいた。
まだ自分に人は殺せない。そうする理由がないからだ。
結局俺は中途半端でしかない……
まだ自分に人は殺せない。そうする理由がないからだ。
結局俺は中途半端でしかない……
「あ、そういえば……名前はなんていうんですか?」
グロックをデイパックに仕舞った直後、思い出したかのように振り向いた観鈴が尋ねてくる。
観鈴の様子は少し緊張を解いたようで、これが本来の彼女なのかと思いながら、貴明は口を開いた。
観鈴の様子は少し緊張を解いたようで、これが本来の彼女なのかと思いながら、貴明は口を開いた。
「河野、貴明だ」
【A-6 教会/一日目 深夜】
【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(1~3)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:逃げ出さずにがんばる
1:貴明と一緒に行動
2:往人さんを探す
【装備:なし】
【所持品:支給品一式×1、不明支給品(1~3)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:逃げ出さずにがんばる
1:貴明と一緒に行動
2:往人さんを探す
【備考】
DREAM編、共通ルート(往人がまだ居候しているころ)からの登場
DREAM編、共通ルート(往人がまだ居候しているころ)からの登場
【河野貴明@ToHeart2】
【装備:なし】
【所持品:グロック19(15+1/15)、予備弾薬15×5、支給品一式×1、不明支給品(0~1)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いに乗れるか、乗れないかまだ分からないが死にたくはない
1:観鈴と行動
2:出来れば友人達を探す
3:戦える覚悟はない……
【装備:なし】
【所持品:グロック19(15+1/15)、予備弾薬15×5、支給品一式×1、不明支給品(0~1)】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本方針:殺し合いに乗れるか、乗れないかまだ分からないが死にたくはない
1:観鈴と行動
2:出来れば友人達を探す
3:戦える覚悟はない……
【備考】
時期未定
時期未定
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