さて、最後の話だね。
今回で全ての真実を明らかにできるはずだ、そして真実に辿り着いたならば、どうか頼みたい。
彼女を救ってほしい、僕の友人の為にも。
"先生"と名乗ったが、そろそろ気付いているだろう、その通りだ。
僕はかつて"J"と名乗っていた、Venomは確かに全滅したが、僕はVenomではない、そして僕は一部の再生していないLordのアンプルがあった、その一つを使い空間を超え、異世界に飛んだというわけだ。
誰かがこの物語を見ていると信じて──
今回で全ての真実を明らかにできるはずだ、そして真実に辿り着いたならば、どうか頼みたい。
彼女を救ってほしい、僕の友人の為にも。
"先生"と名乗ったが、そろそろ気付いているだろう、その通りだ。
僕はかつて"J"と名乗っていた、Venomは確かに全滅したが、僕はVenomではない、そして僕は一部の再生していないLordのアンプルがあった、その一つを使い空間を超え、異世界に飛んだというわけだ。
誰かがこの物語を見ていると信じて──
さぁ、最後の問題だ、意味もわかってきただろう、今から始まる悲劇が何故起きたのか、その答えでもある。
『世界を救い、何を「得て」、何を「失った」?』
今は意味がわからないだろうが、すぐにわかる。
物事には順序があるんだ、覚えておいてくれ──
『世界を救い、何を「得て」、何を「失った」?』
今は意味がわからないだろうが、すぐにわかる。
物事には順序があるんだ、覚えておいてくれ──
それでは、話をしよう、一人の女の話だ。
全ての原因である女が、何を願ったのか。
世界を救いたかった女が何故"そう"なったのかという話だ。
全ての原因である女が、何を願ったのか。
世界を救いたかった女が何故"そう"なったのかという話だ。
結論から言おう、彼女は幸せになりたかったのだ、ただそれだけが理由で、それだけが全ての原因だ。
彼女は幸せだった、少なくとも隕石が落ちるその日までは、いや、戦いが始まったその日までだろうか。
しかし、夢を見るのだ、「あの日」掴めなかった手が己の首を絞める夢を、「どうして」と泣く息子の夢を、自分が選んだ結果であるとしても、それを夫に殺させたことが何よりの後悔だった。
取り戻したいと願った、失った全てをもう一度手にしたいと願った、しかし死んだ生物は生き返らない、当然の世界のルールがその願いを一蹴する。
だから妥協した、「誰もが幸せな世界 」に「争いの無い世界 」を重ねて、その上にもう一つ「自分の大切なものを失わない世界 」を重ねた。
そうやって理想を描かねば、女は立ち上がれなかった、過去に潰されてしまいそうだった、それでも自分が立たねばと人々を信じて抗った。
早乙女涼雅を「英雄」と呼び助けを求めた市民。
早乙女涼雅が戦えないとわかれば「役立たず」と罵った市民。
早乙女涼雅が戦えるようになれば「英雄の復活だ」と自分が英雄にでもなったかのように勇む市民。
それでも信じた、人は救うべき価値のある存在なのだと、だから戦わねばならないと。
救われることに慣れ「もっと早く助けに来い」と喚く愚民。
再び早乙女涼雅が戦えなくなれば「使えない」と嘆く愚民。
それでも信じた、人間の善性を、戦う力を与えれば皆で手を取り脅威に立ち向かえると、コアドライバーを量産して人々に配布しようとした。
それを、「なぜ自分が戦わなくてはいけないのか」と拒絶した豚。
許せなかった──
憎かった──
殺してやりたかった──
何故、こんな弱い生き物を守らなければならないのか。
何故、守られることを当たり前だと思う家畜の為に生命を掛けねばならないのか。
何よりも、悔しかった──
人を救うことが正しいのだと育てられた。
人は美しいのだと信じようと命を削らされた。
そうして守ったものの価値を目の当たりにして。
──世界なんて救わなければ良かった。
彼女は幸せだった、少なくとも隕石が落ちるその日までは、いや、戦いが始まったその日までだろうか。
しかし、夢を見るのだ、「あの日」掴めなかった手が己の首を絞める夢を、「どうして」と泣く息子の夢を、自分が選んだ結果であるとしても、それを夫に殺させたことが何よりの後悔だった。
取り戻したいと願った、失った全てをもう一度手にしたいと願った、しかし死んだ生物は生き返らない、当然の世界のルールがその願いを一蹴する。
だから妥協した、「
そうやって理想を描かねば、女は立ち上がれなかった、過去に潰されてしまいそうだった、それでも自分が立たねばと人々を信じて抗った。
早乙女涼雅を「英雄」と呼び助けを求めた市民。
早乙女涼雅が戦えないとわかれば「役立たず」と罵った市民。
早乙女涼雅が戦えるようになれば「英雄の復活だ」と自分が英雄にでもなったかのように勇む市民。
それでも信じた、人は救うべき価値のある存在なのだと、だから戦わねばならないと。
救われることに慣れ「もっと早く助けに来い」と喚く愚民。
再び早乙女涼雅が戦えなくなれば「使えない」と嘆く愚民。
それでも信じた、人間の善性を、戦う力を与えれば皆で手を取り脅威に立ち向かえると、コアドライバーを量産して人々に配布しようとした。
それを、「なぜ自分が戦わなくてはいけないのか」と拒絶した豚。
許せなかった──
憎かった──
殺してやりたかった──
何故、こんな弱い生き物を守らなければならないのか。
何故、守られることを当たり前だと思う家畜の為に生命を掛けねばならないのか。
何よりも、悔しかった──
人を救うことが正しいのだと育てられた。
人は美しいのだと信じようと命を削らされた。
そうして守ったものの価値を目の当たりにして。
──世界なんて救わなければ良かった。
だから女は、「悪人」になった。
ある日Venomが盗み出されたと騒ぎになった日、フォックスVenomを選び、騒ぎに乗じて自身もそれを盗み出し自身に投与した。
解放軍とバグズ、その両方に「自分」がいれば戦況を操れると考えた、その手段もあった、だから実行に移した。
最早人類など守る価値に値しない、だから家畜のように管理してやろうと考えた、こんな残酷な世界など壊してやろうと考えた、自分の大切なものだけ抱えて他の全てを捨ててやろうと決めたのだ。
そして計画は上手く進んだ、解放軍の女と、バグズの怪物、同一人物であったが故に思考は手に取るようにわかる、勝つも負けるも自由だ、戦況を完全に掌握し、解放軍を壊滅させるだけだった。
しかし、問題が発生した。
女は殺されたのだ、狂った怪物に。
「そこは自分の居場所なのに」と涙を流す自分に。
こうして計画は頓挫した、当初の目的など忘れ去り、残ったのは人類に対する憎しみのみ。
ある日Venomが盗み出されたと騒ぎになった日、フォックスVenomを選び、騒ぎに乗じて自身もそれを盗み出し自身に投与した。
解放軍とバグズ、その両方に「自分」がいれば戦況を操れると考えた、その手段もあった、だから実行に移した。
最早人類など守る価値に値しない、だから家畜のように管理してやろうと考えた、こんな残酷な世界など壊してやろうと考えた、自分の大切なものだけ抱えて他の全てを捨ててやろうと決めたのだ。
そして計画は上手く進んだ、解放軍の女と、バグズの怪物、同一人物であったが故に思考は手に取るようにわかる、勝つも負けるも自由だ、戦況を完全に掌握し、解放軍を壊滅させるだけだった。
しかし、問題が発生した。
女は殺されたのだ、狂った怪物に。
「そこは自分の居場所なのに」と涙を流す自分に。
こうして計画は頓挫した、当初の目的など忘れ去り、残ったのは人類に対する憎しみのみ。
こうして悲劇は起きる。
全てを諦めた女の前に、これまでの努力に慈悲を与えるかのように希望が与えられた。
「誰もが幸せになれる世界」
「死者を取り戻す奇跡」
「人類を滅ぼす力」
女を止めるものは何も無い──
神城夏希、全ての始まりの女は今、嘘を吐くのを辞めたのだ。
全てを諦めた女の前に、これまでの努力に慈悲を与えるかのように希望が与えられた。
「誰もが幸せになれる世界」
「死者を取り戻す奇跡」
「人類を滅ぼす力」
女を止めるものは何も無い──
神城夏希、全ての始まりの女は今、嘘を吐くのを辞めたのだ。