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不穏の前触れ ◆w9XRhrM3HU
花京院の死体が火に包まれ、燃えてゆく。
肉が焼かれる不快な匂いは、不思議としない。コンサートホール内に充満する、煙の匂いに消されているのだろうか。
あるいは、承太郎にそこまでの余裕がないだけなのか。
仲間の死と、その遺体が焼かれる様に苛立ちと空しさを覚えながらも、承太郎は傷口を押さえながら意識を繋ぎとめる。
既に足立とほむら、そしてまどかの死体は何処にもなく、コンサートホールには承太郎しかない。
今ここで気絶すれば、花京院と同じく灰になるだけだ。
「花京院……」
かつて救い、そしてもう一度救える筈だった仲間。
思えば中々に気の合う奴だった。
戦いを終え、日本に帰国した後。相撲の雑談をしながら、一緒に登校をするという穏やかな日常もあったのかもしれない。
だが、それは決して起こり得ないと否定されてしまった。
「……広川の野郎、この落とし前はきっちり付けねえとな」
下手人はまどかだが、元々の元凶は広川だ。
花京院との話の食い違いから推測するに、あの花京院は『承太郎とまだ出会っていない時』から呼ばれた可能性が高い。
広川があえて時間をずらし花京院を呼んだのも、このような惨劇を引き起こすのが狙ってのことと考えられる。
だとすれば、他の参加者にも同様、呼ばれた時期による
すれ違いが起こる可能性は高い。
今頃、それを眺めながら広川は何処ぞでふんぞり返り、ほくそ笑んでいるのだろう。
(…………待て、“今”の花京院はどうなってる?)
ふと、承太郎の脳裏に疑問が沸いた。
過去の花京院が死んだとして、現在の花京院は無事なのか。
単純に考えれば、過去を改変したことにより、現在の花京院は死んでいることになっているはずだ。
(仮に今の花京院も死んじまってるとしてだ……。この場合、歴史ってのはどうなっちまうんだ?)
エジプトへの道中、様々なスタンド使いと戦い撃退してきた。特に灰の塔、吊られた男、恋人、死神13の戦いは花京院による活躍が大きい。
灰の塔はその性質上、狭い飛行機内で星の白金や魔術師の赤では対抗は難しく。吊られた男は花京院が救援に来なければ、ポルナレフは死んでいた。
恋人戦も同じく、花京院が居なければジョセフは死亡している。
死神13は伝聞での把握ではあるが、花京院の気転がなければ全滅していたかもしれないらしい。
花京院の死亡は間違いなく、歴史に大きな歪を残す。下手をすれば、殺し合いを終え帰還したはいいが、そこでジョースター一行は既に全滅、という可能性もある。
(……タイムパラドックスって奴か。これじゃまるでバック・トゥ・ザ・フューチャーの世界だぜ)
タイムパラドックスには幾つか解釈があるが、正直なところは誰にも分からない。
そもそも、承太郎には時間を越える術がないのだから、確かめようもない。
案外元の時代では何も変わらないのかもしれないし、大幅な変化がもたらされている事も否定できない。
(どっちにしろ、禄でもない事をしやがる。予測できないってのが一番性質が悪いぜ)
バック・トゥ・ザ・フューチャーのクリストファー・ロイド演じるドクが慌てふためくシーンが容易に目に浮かぶ。承太郎も同じ気分だ。
そんな憂鬱な気分で、更に痛み出す傷を抑えながら、星の白金で承太郎は炎の中の花京院の首輪を回収した。
先行きは暗いが、まだ生憎とここで死ぬつもりもない。
知り合いの首輪を解析用のサンプルにするのは気が引けたが、この先サンプルが確実の手に入る保障もない。
(……? 熱くねえ。炎の中にぶち込まれていたのにか?)
スタンドを介して、熱さが手を伝わるだろうと思ったが、思いのほか首輪に熱は通っていなかった。
首を傾げながら、承太郎は懐に首輪を仕舞う。
そして燃え盛る炎を眺めて、息を大きく吸い込んだ。
タイムパラドックスや花京院に対しての感傷で少し、行動が遅れてしまった。
傷の治療もして、足立も追跡しなければならない今、無駄なことで足を止めるわけにはいかない。
「……やれやれだぜ」
これからのハードスケジュールを思い承太郎は辟易しながら何時もの口癖を呟いた。
□
(―――私は弱い……)
セリューはブラッドレイとの戦闘で改めて自らの弱さを自覚した。
帝具もあり万全セリューと帝具無しとはいえ、イェーガーズの一員である
ウェイブ。そして国家錬金術師
ロイ・マスタングの三人掛かりでも止められない、ブラッドレイという化け物。
強すぎる。実力は
エスデスと同等。考えたくはないが、あの二人が争った結果、エスデスが負ける可能性も十分にある。到底セリューでは勝てない相手だ。
(勝てない……私は正義なのに……勝たなくちゃいけないのに……!)
弱さは罪だ。
断罪せねばならない相手であっても、力が及ばなければ意味がない。
だが、今のセリューには力がない。強さが足りない。
セリューの正義では、ブラッドレイという悪を裁くことが出来ない
「せ、セリュ―さん……?」
「……あっ? 卯月ちゃんどうしたの?」
恐る恐る、卯月がセリューに話し掛けて来る。
様子を見るに、何度か呼びかけていたらしいが、考え事に夢中で気が付かなかったらしい。
「あの、ウェイブさんが……
アカメって人と手を組むみたいです……」
「…………? 何言ってるの……ウヅキちゃん?」
「私、クローステールをウェイブさんに巻きつけておいたんです。それで糸電話みたいに声も聞けるかなって思ったら上手くいって」
「と、取り合えずクローステールは早く回収して! 気付かれる前に!」
「は、はい!」
それから卯月から話を聞く限り分かったのは、ウェイブに対してセリューは悪だと思わされているかもしれないという事だった。
しかもそれを話していたのが、セリューを撃ったあのスーツの男らしい。
自らの行為を正当化させ、さもセリューを悪だと断定させる行動は見事だとしか言い様がない。
そして何より、スーツの男は
高坂穂乃果が寄越した援軍という事実。
その目的は
小泉花陽の回収及び、仲間を増やす事だろう。既に高坂穂乃果は何人もの参加者を抱き込み、軍団を結成している可能性が高い。
高坂勢力だとでも呼ぶべきだろうか、ウェイブもそれに組み込まれようとしている。
(高坂勢力……。厄介なのは、自らが正義だと名乗っていること。勢力の首領が表向きは弱者を装っていること。
こうして信用を得る事で勢力に引きずり込み、手駒を増やしていく悪質さ。アカメすら引き込もうとするその貪欲さ、ナイトレイド以上か……)
高坂勢力が今どれほどの力を持っているか知らないが、セリューが正面から戦って勝てるか分からない。
もしかしたら、ブラッドレイですら高坂勢力の一員であるかもしれない。
敵の戦力は未知数だ。エスデスと合流でもしない限りは、直接的な戦闘は避けなければいけない。
だが、それは悪を黙って見逃すという事だ。本当ならば今すぐにでも特攻して、悪を一人でも滅ぼさねばならない。
(でも……今の私には守らなきゃいけない人が居るから……!)
ここで死ねば、卯月を守る者が誰一人として居なくなる。それだけは絶対に避けなければいけない。
もう絶対に失いたくない。彼女だけは何があっても守る。
卯月の存在がセリューの激情を抑え、冷静さを取り戻させた。
(こうなると、当初の予定だった図書館襲撃も止めるべきか? しかしアカメが……だけどウヅキちゃんと私だけで……)
セリューが選んだのは後退だった。一度引き返し体制を立て直す。
ブラッドレイ戦で気付かされたセリューの弱さ。それが未だに尾を引きセリューに根付いている。
「悪を……見過ごさなければいけないなんて……!」
「セリューさん……」
「ご、ごめんねウヅキちゃん。声に出ちゃった……。でも私、絶対にウヅキちゃんだけは守るから」
「……はい」
向かうのはコンサートホールか病院辺りになるだろう。
最初イェーガーズ本部に戻ろうかとも考えたが、図書館に集まった高坂勢力がセリュー討伐に乗り出すとすれば真っ先にイェーガーズ本部が狙われる。
向こうからは、セリューが死んだと認識されているのだろうが、放送を超えればすぐにばれる。何よりクローステールでの盗聴に気付かれているかもしれない。
何にせよより安心した場所に行って損はない。
だが、セリューはそこでコンサートホールから上がる煙に気が付いた。
「セリューさん、あれ……」
「火事ですね」
大して寒くもない、この島の環境で暖を取るものなどそうはいない。料理を作ろうとして火の扱いを誤るようなものも早々居ないだろう。
セリューはあの火事は戦闘による二次的な被害であると即座に直感した。
「た、助けて……くれ!!」
「止まって下さい。何があったんですか?」
「あ、頭のおかしい女子中学生に追われてるんだ……。は、早く逃げないとヤバイ!!」
それを証明するかのようにスーツの男―――セリューを撃ったのとはまた別人―――が走ってきた。
□
市庁舎に寄ったのは失敗だと足立は痛感した。
市庁舎に辿り付き中を散策してから、数分も経たない内にほむらに発見されてしまった。
(クソが! 他にも施設なんていくらでもあったろうが、なんでわざわざ市庁舎にクソ!)
マスティマの襲撃を受け、マガツイザナギで迎撃しながら足立は市庁舎を飛び出す羽目になる。
本来なら、ここに潜伏しながら後の方針を考えるつもりだったのが、台無しだ。
やはり世の中クソだと内心で何度も毒を吐きながら、足立は走り続け前方に人影を見つけた。
一人はただの女子高生だが、もう一人は片目が潰れているものの、ごつい義手を付けて強そうな雰囲気を醸している。
ただのコスプレ野郎かもしれないが、この際何でもいい。事態の好転に賭け、足立はこの二人組みを巻き込む事にした。
「足立、貴方だけは……!」
遅れて辿りついたほむらの前に足立を下がらせながら、セリューが前に出る。
足立を庇おうとするセリューに苛立ちながら、それでも理性で騙されている事を考慮し、攻撃の手を止めた。
「退きなさい。そいつは……」
「一体何があったか、話してくれませんか? 私こう見えても警察で……」
「……警察」
足立の前例もあり、ほむらは相手が警察であってもそう簡単には信用できなかったが、戦えない一般人を連れていることも考えると、まだ足立よりはマシに見えた。
自分を落ち着かせる意味も含め、ほむらは今までに起きた出来事を全てセリューに説明する。
当然、足立はそれを否定。まどか殺害には関与していないと言い張る。
話を聞いたセリューはその全てに納得はしないものの、足立に疑惑の目を向けながら、卯月と共に距離を置く。
「
足立透、
暁美ほむら。……残念ながら、二人とも殺人者名簿に載っていましたね……。すみませんが、ほむらさんの話を全面的に信用することは難しいです。勿論足立さんも」
「殺人者名簿?」
「は? え? 何それ……」
名簿は一人に付き一つ。それも名前しか載っていない簡素なものだった。
それをセリューはまだ名乗ってもいない、ほむらと足立の名前まで当ててみせる。
(殺人者名簿ってことは、俺の今までの殺人がばれてるって事か? ふざけんなよ広川!
俺は、ただテレビに放り込んだだけで殺したのはシャドウじゃねえか、何で俺にばかりこんな……! 支給品と言いペルソナ制限と言い、クソ主催過ぎるだろ!!)
「そうね。私は人を殺したことがある。でも、それは必要な事だった」
「必要、ですか?」
「ええ、そうよ」
動じる足立とは打って変わりほむらは殺人について自ら認めた。
これがセリューの受けた印象に大きく影響したのは言うまでもない。
「お、俺も刑事だからさ……。その、場合によってはそういうこともさ……」
「……」
(信じてねぇって面だ。ふざけんなよクソアマが! 何が殺人者名簿だ、クソクソクソ! 広川のクソ野郎、俺ばかりに不利なモン押し付けやがって!)
咄嗟に良い言い訳を思いつけなかった足立は、その苛立ちも含め広川への殺意を高める。
今更、警察がどうこう言っても、最初に付いた悪印象を拭うのは難しい。
それもこれも殺人者名簿なんてものさえなければ、こんなことにはならなかった。
実際、セリューに警察であると明かし警戒を解かせる予定だったのだ。それが殺人者名簿の話を聞いてから切り出しては、体のいい言い訳にしか聞こえない。
「足立さん、貴方が警察ならそれを証明できるものはありますか?」
「え? 証明……ああ、証明ね……」
足立としては逆にセリューに対して警察であるか証明して欲しいところだったが、自分を信用させる前に相手を疑うのも逆効果だ。
渋々、懐から警察手帳を取り出した。
「どう? これ警察手帳なんだけど」
「……玩具じゃありませんかこれ? 私はこんなもの持ち歩いてませんけど」
「はあ? 何言ってるのさ、警察なら手帳ぐらい持ち歩くでしょ。ドラマなんかじゃ嵩張るから持ち歩かないとか言う、馬鹿な刑事が居るけどさ」
武器と見なされなかったのか、没収を免れた警察手帳を見せる足立だが、当然セリューには見覚えがない。
とはいえ、セリューは足立が異国か異世界の警察である可能性も考慮し、卯月へと視線を向けた。
名前の響きが近い卯月なら、これが警察手帳なる警察の証明になるか分かるかもしれないからだ。
「なんか大きくないですかそれ……」
「本物はこういう大きさなんだよ。ドラマのあれは偽物でさ」
「でも、セリューさんが違うって言うなら。違うと思います、それ」
「なっ、さっきからドラマと違うって言ってるだろ!!」
ここに来てからの足立の行動にミスはあれど、それでも明確な失敗は殆どないだろう。
少なくとも警察手帳を見せた点は正解だ。
ただ、足立の不運はこの場に呼ばれた参加者は異世界の住人達であること。更に言えば、ほぼ同質の世界の住人である卯月が冷静な判断力を持たず、結局はセリューの判断に従ってしまったということだ。
幾重にも重なる不運の連続はつい足立の声を荒立たせ、卯月を威圧してしまう。
セリューが卯月を庇うように前に出ながら、敵意を持った目で足立を睨む。
「分かったかしら? これでこの男を庇う理由はないわ」
「……いえ、確かに怪しいです。ですが、まだ完璧な証拠がありません。
彼女は一般人ですから、その警察手帳を知らないだけかもしれませんし」
「あれは……」
「わ、分かってくれたかい!? そうだよ、俺は……」
「証拠ならあるぜ? “足立さん”」
この場に新たに響く第三者の声、皮肉を込めてさん付けで呼んだ声の主は学ランを羽織った巨漢。
「じょ、承太郎……くん」
「よぉ、足立さん。てめえにやられた腹が随分と痛むぜオイ。
こいつを塞ぐ為に、炎で焼いた時の痛みは忘れられねえ。
俺はこう見えても陰湿な性質でな、やられた分はやり返さなきゃ気がすまねえ」
承太郎の乱入は更にセリューの疑惑を高めていく。
「しょ、証拠ってなんだい? その傷だって俺のせいだとは……」
「俺のデバイスに付いていた参加者追跡機能。俺の支給品らしい。
そいつを見れば、お前の今までの行動が容易に把握出来るぜ」
「なっ……」
「俺が出てくと言った時、妙だとは思わなかったのか? 何故、エスデスが能力研究所に向かうと俺が分かっていたのか?」
「あの時の……」
『ちょ、承太郎君!? 君さ、いや何してんの』
『俺はエスデスの野郎からアヴドゥルを引っこ抜いて別行動だ。アンタとはお別れだ足立さん』
『何処に居るか分かってるの!?』
『あいつらは能力研究所に向かってる』
エスデスの行き先を足立が知っていたのも、元を辿れば承太郎から聞き出していたからだ。
では、その承太郎は一体何処からその情報を仕入れていたのか?
「これ以上ない証拠だよな? 足立さんよ……」
「……」
言い逃れは出来ない。
開き直った足立は演技を止め、以前承太郎に見せた邪悪な笑みを浮かべた。
「このクソガキ……何度も何度も白々しくさん付けで……。もういい、お前ら纏めて死ね。
利用できると思ったけど、お前ら広川も全員クソだしさぁ、死体全部トイレに流してやる」
タロットカードを握りつぶす。足立の背後から巨大な人影、マガツイザナギが姿を見せる。
ほむらとセリューは即座に距離を取り、マガツイザナギを警戒。
だが、承太郎は対照的に帽子の唾を人差し指で持ち上げ、不敵な笑みを浮かべていた。
「やーれやれだぜ。証拠ってのは最後まで見てから判断するものだぜ? お陰でマヌケは見つかったがよ」
「あぁ? 承太郎……マガツイザナギに手も足もでねえくせに……」
「そいつはちと厄介だが、使い手の頭脳がひたすらマヌケらしいからな。そこまで脅威じゃあねえな」
「何、強がっちゃってるわけ? 今更凄んでも怖くなんかないんだよねぇ。ペルソナさえあればさぁ」
「おめー、俺が参加者追跡機能の話を出した時、俺のデバイスを確認しなかったよな。
アレが嘘って事を少しも考えなかったのか?」
「まさか……!」
あの状態で、まだ挽回の余地はあった。今の話が全て承太郎の嘘であったのなら、セリューへの心象も傾く。
しかし、足立は話を早とちりし、早々に見切りをついてしまった。
あの時、まだ思考を止めず事態の好転に賭けていれば、セリューを味方に付けられていた可能性も残されていた。
「このクソガキ!!!」
承太郎の狙いは最初からこれだ。足立の本性を暴くこと、これこそが何よりの証拠になる。
元より、参加者追跡機能など存在していない。そもそもあれば、花京院が偽物かどうかで揉める事などない。
少し考えれば分かるはずのこと。それを承知で承太郎は賭けに出て、そして勝った。
嵌められた怒りに任せ足立がマガツイザナギを承太郎にけしかける。
だが、その瞬間左腕に激痛が走った。
「ガッ、な、何だ……」
「だから言ったんだ。使い手がマヌケだってな」
既に横方に回ったほむらのマスティマに貫かれた左腕。
白い羽は血に染まり、赤い紅翼となって足立に振るわれる。
マガツイザナギを引き戻し、剣で受けるが左腕のダメージの影響か力が入らず、後退する。
「足立!!」
「うるせえ! 愛しのまどかちゃんの仇ってか? どうせあのガキはただの殺人鬼だろうが!!」
「話は全て掴めました。―――正義閻魔槍!!」
そこへ加え変形を済ませたコロとセリューが踊り掛かる。
コロの拳をマガツイザナギで裁くが、本体である足立に対してセリューの攻撃が迫った。
腕にドリルを着けたセリューの義手は、生身で受ければ一瞬でミンチへと変わり果てる。
コロの相手で手一杯なマガツイザナギを一旦消す。そしてもう一度タロットカードを握りつぶしマガツイザナギを展開。
「一緒にぶっ飛んでろ!!」
マガツイザナギが野球のバットのように剣を振りセリューを薙ぎ払う。
ドリルでガードするも勢いを止めきれず、コロの方向へと吹っ飛ばされる。
コロがセリューを受け止め、一時的に隙が出来たのも束の間。いつの間にか距離を詰めたほむらが眼前に立っている。
(コイツ、本当にどうやって移動してんだよ!?)
足立の頭蓋を叩き潰す為、マスティマが振るわれたその瞬間、ほむらに限界が訪れる。
「こんな、時に……!」
疲労の蓄積に加え、ソウルジェムの濁り、マスティマの使用での限界が同時にほむらへと圧し掛かる。
体が動かず膝を付き、マスティマでの防御も出来ない。
足立はこの好機を笑みを以って迎えた。
「やーと俺にも運が向いてきたって事か。アハハッハハ!!!」
「くっ……」
「残念だったねぇ。悪者の俺を倒せなくってさ、ほむらちゃーん。ていうか、勝った俺のほうが正義か」
刃が落とされる。時を止めたところで動けなければ意味がない、羽があっても羽ばたけなければただの飾りでしかない。
まどかの敵も討てないまま。ここでこの男に殺され、生涯を閉じる。
それがほむらに決定付けられた運命。
「ごめん……まどか……」
「!? ぐええ!」
虫の潰れたような悲鳴をあげながら、地面を転がっていく足立。
マガツイザナギが横から叩きつけられた鉄球によって、足立と同じく吹き飛ばされている。
その鉄球に付いた鎖の先に居るのはセリュー。
「クソッ痛ェ……」
「お前は正義なんかじゃない……!」
鉄球を取り換え、コロの口から取り出したのは大砲。
間髪入れず、砲弾が射出されマガツイザナギを襲う。
一発目は剣で弾くが、二撃、三撃目が足立の周囲に降り注ぎ砂煙によって視界が潰れていく。
その隙に卯月がセリューが予め指示した通りにクローステールでほむらを回収する。
「クソックソックソッ!! 何なんだよ、あのビックリ人間は……!」
「オラァ!」
怒りが冷める間もなく、星の白金の拳がマガツイザナギの顔面に叩き込まれる。
ペルソナのダメージが本体にフィードバックし更に宙を舞う。
直接殴られるよりは衝撃は抑えられたが、それでも直接顔面に星の白金の拳を貰ったのは大打撃といっていい。
顔を抑えて体制を直しながら、追撃の拳をぶちかます星の白金をマガツイザナギでいなす。
二者の拳と剣の応酬が砂煙を晴らし、視界をクリアにしていく。
「大したスタンド、いやペルソナか。持ってる割には、やっぱり本体がなってねえな」
「チィ……。3対1で調子乗ってんじゃあ―――」
「てめえは、いくらでも状況を好転出来たんだ。あの参加者追跡機能の嘘は俺にとっても賭けだった。
だが、てめえはそれを諦めた。自分で道を切り開けもしない雑魚ってことさ」
「……!!」
視界が晴れ、承太郎のにやけた顔を見た足立は更に激情を増す。
マガツイザナギが大きく剣を振り上げる。
その瞬間、開いた横腹に向けて星の白金の拳が減り込んだ。
「ぐぅ……!」
先のマガツイザナギの攻撃は、今までにないほど単調で読みやすい。
怒りに任せたその太刀筋は、星の白金の目ではっきりと見切っていた。
怯んだマガツイザナギに対し、承太郎はそのまま胴に拳を連続でぶち込み続ける。
胴への攻撃を無視し、マガツイザナギは強引に剣を承太郎に向け振るうが、更に頬を殴り飛ばされる。
ダメージが足立にも伝わり、頬に強い衝撃が走る。折れた頬の骨にも激痛を誘発し、足立の顔が苦痛に悶えた。
承太郎は駆け出し、激痛で操作を手放したマガツイザナギの横を走りぬけ、足立の間合いへと突っ込む。
数秒も経たず、承太郎は星の白金の射程距離内へと距離を縮める。
マガツイザナギの迎撃と防御は間に合わない。消して出すにも、その動作の内に殴られる。それも恐らくは全力のオラオラを喰らう羽目になってしまう。
いくら足立が警察としてある程度鍛えたとしても、あんなものを喰らえば再起不能。最悪死ぬ。
「何!?」
次の瞬間、承太郎の前に爆炎が舞い上がり、粉々に飛び散った破片が降り注ぐ。
星の白金の脚力で爆発から遠ざかり、破片を拳で打ち落とす。
足立が手榴弾を使ったと分かった時、既にマガツイザナギを下がらせ自身を爆発から守らせていた。
「誰が手榴弾は一つって言った、バーカ!!!」
まどかを殺害した際に足立はまどかの手榴弾をスっていた。
ペットボトルについて気を取られていたせいか、まだ足立を疑っておらず星の白金を発現させていなかったせいか、承太郎はその事に気づけなかった。
故に承太郎は手榴弾をコンサートホールを焼いた一発のみだと思い込み、二発目を想定していない。
承太郎が想定外の攻撃に足止めを食らっている隙に足立は離脱する。
(クソッ三人相手じゃ分が悪い。殺人者名簿さえなきゃあの化け犬女を味方に付けて、クソガキ共を……。
肝心なとこで広川の奴……!!)
怒りは次から次へと沸いてくる。まだまだ暴れたりないが、これ以上あの三人に構って反撃を貰うのはご免だ。
特に承太郎は侮れない。非常にイラつく相手だが、絶対に勝てる保障がない限り戦わない方が良い。
怒りを抑えながら、足立は戦場を後にした。
□
まどかとの出会い。マミを初めとした魔法少女達との思い出。
頭を駆け巡る記憶の奔流は、普通の人間で言う走馬灯というものなのだろうと、他人事のようにほむらは思った。
(案外、悪くないものね)
あまり良い記憶といえるものは数少ない。それだけの戦場を何度も何度も繰り返してきたのだから。
それでも、過ぎた記憶を振り返ってみると案外悪くないものもある。
考えてみれば、過去には何度も戻ったが、こうして過去を振り返って事はあまりなかったからかえって新鮮だ。
「ごめんね、まどか……。私もまどかと同じところに行けるか分からないけど……これで一緒に……死ねる……」
ソウルジェムが穢れきり、円環の理に導かれるより早くソウルジェムを破壊すれば、あるいは死ねるかもしれない。
あくまでかもしれないであって、試したこともない方法だ。何より、まどかが喜ぶはずもない自己満足に過ぎない。
それでも、目の前でまどかを死なせ、足立を殺せもしなかったほむらにはこれが唯一の救いでもあり、罰でもあった。
「……駄目、死ぬなんて言わないで!」
「?」
手を強く握られた。その手はとても冷たかったが、その手の主は涙ぐんで、とても優しい顔をしていた。
「グリーフ……シード……?」
「これで、魔法少女の穢れとやらは浄化できるんですよね。ほむらちゃん!」
元から穢れを随分溜め込んでいたのか、ほむらのソウルジェムの穢れを全て浄化は出来なかったが、それでもまだ活動可能な程度には回復した。
ほむらにとって不幸中の幸いだったのが、承太郎がグリフシードグリーフシードを持っていたことだ。
いくら魔法少女に疑念を持っている承太郎も、死に掛けたほむらを見れば人命を第一に優先する。
三つのグリーフシードは完全に穢れ、使い物にならなくなったが、ほむらの命を繋ぎとめる事には成功した。
承太郎は複雑な心境のまま、帽子を深く被りほむらに視線を向けている。
「……一つ貸しになるのかしら?」
「返さなくていいぜ。もう、お前らとはあまり関わりたくねぇ」
素っ気無い態度でそう言い残し、背中を向けた。どうやら、一人別行動を取るらしい。
ほむらの意識が虚ろな間に、最低限の情報交換は済ませたのだろう。
承太郎はそのまま去っていった。
「良かった。ほむらちゃんが無事で……」
「えーと……貴女は……」
「名乗り遅れましたね。私はセリュー、
セリュー・ユビキタスです!」
セリューは満面の笑顔で涙を拭い、そう答えた。
「貴女、泣いてたの……?」
「え? ああ、すいません。何だろう、私ほむらちゃんがあまり他人に見えなくて……それで」
セリューとしても、ここまで感情的になったのは久しぶりだ。
ほむらに対しては何かの親しみを感じている。
それは彼女の正義。その根っこにある復讐心だろう。
セリューにとって正義とは復讐である。幼い頃に父を悪に殺された恨み、オーガを殺された恨み、スタイリッシュを殺された恨み。
その恨みを悪にぶつけ、復讐を果たす事がセリューの正義だ。
ほむらも同じだ。まどかを殺され、足立を殺したいと思う復讐心。
セリューは本人も知らない内に、その同属に惹かれたのかもしれない。
「……そう」
ほむらも自分の為に誰かが泣くのは、少し悪くない気分だ。
泣くことはあっても、泣かれることはあまりない。気遣うことはあっても、気遣われることは少ない。
そんなほむらにとって、セリューの涙はまどかを喪ったほむらに温かい救いのようにも感じられた。
「ありがとう。セリューさん。
けれど、私のソウルジェムはまた穢れてしまうわ。だからその前に足立を……」
「こう言っては何ですが、あの様子では足立に追いつく前にまた……。
そこで、ほむらちゃん。グリフシードグリーフシードと言いましたっけ? 実は心当たりがあるんです」
「心当たり?」
「ええ、一つはヒースクリフさんという人が持っているらしいんですけど。距離が遠すぎるんで、これはあまり現実的じゃありません。
ただ私の荷物にグリーフシードというアイテムが入ってて、それを近くに居る知り合いが持ってるんですよ」
セリューのランダム支給品の一つはグリフシードグリーフシードだった。
セリューからすると、何の使い道のないそれはディバックの底で眠るだけのガラクタではあったが、今のほむらには何物よりも変えがたい命綱だ。
だが、不運なことにセリューは荷物をウェイブに任せてしまっている。グリーフシードの回収をするには、ウェイブ及びスーツの男などの高坂勢力とも接触する必要がある。
そのことをセリューはほむらに説明した。
「―――こ、高坂勢力って……。少し飛躍し過ぎなんじゃ……」
「そう思われるのも無理はありません。でも、信じて下さい。高坂穂乃果は非常に危険です。
足立透のように人を欺く天才なんです」
まどかが死んだショックが抜け切れないせいか、この時ほむらは判断力が落ちていた。
加えて、ほむらはセリューに対して警戒を解いて、若干信頼し始めている。
自分の為に泣いてくれた少女が嘘を言っているようには見えず、ほむらの中ではセリューは純粋で優しく真っ直ぐな女性という印象を植え付けていた。。
「……そうね。足立みたいな参加者が他にも居ないとも限らないものね」
「そこでです。逆に言えば、高坂勢力は来る者を拒まずなんですよ」
「?」
「私の同僚のウェイブも懐柔されました。まだ、上手く立ち回れば何とかなるかもしれません」
貪欲に勢力を増やす高坂勢力。それ故に正義を名乗り、誰もが加わりやすいよう表向きは振舞っている。
そこへセリュー達が今までの行為を反省し、改めて共に戦わせて欲しいと願えばどうなるか。
あくまでセリューは殺し合いには乗っていない。改心しただの敵意がないことを示せばウェイブは確実に擁護してくれる。スーツの男も早々、断ることはないだろう。
そこへほむらや卯月の擁護が入れば尚更だ。
こうして勢力内に紛れ込み、内部から潰していったり。勢力を誘導してブラッドレイなどの巨悪と潰し合わせるのもいいかもしれない。
最悪、乱戦が予想される図書館に遅れて乗り込み、漁夫の利を得ると言う方法もある。
その際にウェイブとグリーフシードも回収できれば万々歳だ。
「……協力してくれるのならありがたいわ。確かに、このままでは足立を追うどころじゃない。
でも、セリューさんは良いのかしら? 私は殺人者よ。足立と同じ。そしてまた殺人を犯そうとしている。手助けをする義理は……」
「違いますよ! 私、人を見る目には自信があります! 貴女は悪に落ちるような人じゃない。足立も殺すのではなく、裁いているんです。ただの殺人ではありません!
私はほむらちゃんを信じてますから!! 同じ正義の志を持っているのなら、私は誰であろうと見捨てられません!」
セリューの言葉は、媚薬のようにほむらに染み渡り、心地よい。
今まで一人で時を繰り返し、戦ってきたせいか。四人の魔法少女以外とは殆ど関わりを持たなかったせいか。
「……分かったわ。セリューさん、貴女が信じるなら私も貴女を信じようと思う。
それ以外にグリフシードグリーフシードを手に入れる方法がないようだし」
「ほむらちゃん……。はい! 一緒に頑張りましょう!!」
何より、セリューの正義を貫こうとする頑なな意志が、あの「茶番」の世界でしていた正義の魔法少女達のように見えて。
もう一度、あの「ごっこ遊び」を続けられればと。僅かにでもほむらは願っているのかもしれない。
だが、ほむらは知らない。セリューの正義の正体が復讐であることも、その狂気さえも。
何より、ほむらが信頼を置く
巴マミを悪と断定していることすら、知らされていない。
この脆く薄い、絆のような勘違いが、どのように破綻していくのだろうか。
まだ誰にも知る由はない。
「私も……私も頑張ります……」
「ウヅキちゃん。うん、みんな一緒ならきっと大丈夫だよ。絶対、悪をやっつけましょうね!」
「私も、もっともっと、頑張りますから……。セリューさん」
「ウヅキちゃん!」
(まどかが生きてたら、私も……)
卯月を強く抱きしめるセリューを見て、ほむらは自分とまどかを重ね合わせてしまう。
ああ、違う。これは友情とは違うというのを何処かで理解しながらも、今のほむらにそれを否定するほどの気力は起きない。
ただ目の前のハリボテだけを見つめて、裏側を見ようともしない。
(お父さん……私、仲間が出来たよ……!)
そして、セリューも気付かない。
彼女にとって真の仲間は今までに存在しなかった。
ウェイブですら、セリューの狂気を目にし距離を置いている。エスデスも決して、セリューに心の底から共感もしない。
彼女は常に孤独だった。けれど、ここにきてから
島村卯月だけはセリューのそばに居てくれる。
だから、もう一人じゃない。
□
「足立の野郎を逃がしちまったのはかなり不味いぜ」
承太郎は傷の痛みを無視しながら走り続ける。
足立は狡猾にして、殺人に逃避もなく、度胸がある。敵に回せば非常に厄介だ。
承太郎から逃げて、安全を確保した後は恐らく承太郎の悪評を流し始めるだろう。
それだけでも面倒だが、セリューとの情報交換で分かったが、この周辺には厄介な連中が多い。
疑心暗鬼の人間火炎放射器ロイ・マスタング、爆弾魔と変身能力を持つ化け物。驚異的な実力を持つブラッドレイ。そして、後藤。
特にマスタングは殺し合いに乗っていないのが尚、性質が悪い。足立が一番付け込み易いタイプだ。
騙されて、こちらが消し炭にされるなんて堪った物ではない。前例があるだけに、警戒度はこの中である意味一番高い。
「野郎が連中を利用する前にケリをつけてえが。やれやれ、クレイジーな連中が多すぎだぜ」
足立はただでさえ、強力なペルソナであるマガツイザナギも使役している。
傷のハンデもあったが、恐らく正面からの真っ当な戦闘では勝ち目は薄いと承太郎は分析する。
だからこそ、足立を煽り冷静さをなくして戦いを優位に進めていた。
出来れば、足立が冷静さを取り戻す前に仕留めたいところだ。
「それに、ここに来てから後手後手に回ってばかりだ。アヴドゥルには悪いが、当面は再合流できねえな」
セリューとの情報交換で分かったことだが、参加者は南の方角に密集しているらしい。
後藤があえて、南下した辺りからもそれが伺える。
つまり、北側に居た承太郎は情報についてかなりの遅れを取っていることになる。
アヴドゥルを連れたいところだが、待っている暇も無い。何より魔術師の赤ならば、そう易々と殺されることもないはずだ。
一先ずは他参加者との積極的な接触と、足立を仕留める事が当面の方針か。
(コイツに関しても心当たりが出来たしな)
懐から取り出した首輪。未だにひんやりと金属特有の冷たさが残っている。
懐に財布などを入れると温かくなることがあるが、この首輪は熱を弾いている。
(まだ、この首輪は生きてやがる。熱を通さねえのも、スタンドの干渉を阻んでるのと同じ機能なのかもしれん。
正直なとこ、サンプルにされるのを恐れて死者の首輪は機能停止して解析不能なんて事になってねえか心配だったが、そうでもないらしい。
とにかく、コイツはまだ使える)
出来れば専門家に任せたいが、最悪の場合はスタンドも弾く首輪を素手で解体することになるかもしれない。
「足立といい、首輪(コイツ)といい。ヘヴィなスケジュールになってきやがった。……やれやれだ」
□
『自分で道を切り開けもしない雑魚ってことさ』
「クソッ!!」
承太郎の台詞が何度も何度も足立の中で反響していく。
気に入らない台詞だ。聞いてて苛立つ。あの台詞は持っている奴だけが吐けるクソのような台詞。
道を切り開く、才能(チケット)を持っている奴だけが、上から目線でさも自分の力のように吐くクソ下らない台詞だ。
「承太郎……!!」
足立は怒りに任せて歩を進ませる。幸い、ほむらのソウルジェムや承太郎が怪我人なのもあって、追ってはすぐは来ない。
休息も兼ね、徒歩で歩んでいくと目の前に人が倒れているのは発見した。
「うえっ……」
より正確には人であった物だ。
均整の取れた女性らしいスタイル。服装は見るからに今風な女子高生。
殺し合いなど起きなければ、今頃は恋などして青春を楽しんでいたのだろう。
首から上が、砕けた肉片にさえなっていなければ。
「……ティバック?」
その死体の横に土や血に汚れたティバックが落ちている。それも何個もだ。
ここで戦闘があり、何人か手放したのを回収せずに去って行ったのだろう。
後ろの追っ手を確認しながら、バックを回収し中身を改める。
「これアサルトライフル……いやショットガンか?」
先ず手にしたのは銃だ。足立が欲しがっていた念願のまともな武器。
一般人からすれば、使うのが躊躇される代物だが足立は銃が撃てるという理由で、警察を選ぶぐらいには銃に詳しい。
拳銃に比べ、慣れてるとは言い難いが、扱えないことはないだろう。
そしてもう一つがフォトンソード。SFチックな玩具のようなものだったが、恐る恐る試してみるとビームの刃が飛び出し地面に鋭い切れ込みを入れた。
威力は十分だが、足立が扱うには少しハードルが高いかもしれない。
「殺人者名簿……?」
あったのは散々苦汁を味合わされた殺人者名簿だった。
「そういやあの化け犬女、名簿を取り出してなかったな。……全部暗記してんのか」
ページを開けば、多くの参加者の顔写真だ。同時にそれらが人殺しであることも書かれている。
足立はページを捲り続け、自分の名が記されているページで止めた。
そのまま片方の手で名簿を押さえ、もう片方の手でそのページを破る。破ったページはクシャクシャにし握りつぶす。
残ったページの痕跡もまた丁寧に消去していく。
「工作はこれぐらいでいいか」
足立の顔に怒りはなく、そこには満面の笑みがある。新しい玩具を見つけた子供のような無邪気で、だが邪悪な大人の笑顔だ。
市庁舎に向かうはずが、気付けばイェーガーズ本部まで来てしまったが、結果から見れば大正解だった。
武器も補充でき、こんな面白い玩具が手に入ったのだ。これを使わない手はない。
「疑われてもこいつを見せておけば、俺はただの刑事って証明できるしな。しかも、予めヤバイ奴も予想できる。
最高の道具だよこれ」
名簿をティバックの中に入れ、急ぎ足で足立はこの場を離れる。
一先ず目的地は使えそうな参加者の居そうな場所だ。利用できる参加者が居なければ名簿も意味を成さない。
そうなると、人通りが多そうな図書館を目指すことになるか。だが、乱戦に巻き込まれるのも面倒だ。
いっそ南下して、駅から電車を使うのも良いかもしれない。
「さーて、どっちに行こうかね……」
【D-5/一日目/昼】
【足立透@PERSONA4】
[状態]:
鳴上悠ら自称特別捜査隊への屈辱・殺意 広川への不満感 、右頬骨折
[装備]:MPS AA‐12(残弾6/8、予備弾層 5/5)@寄生獣 セイの格率、フォトンソード@ソードアート・オンライン
[道具]:基本支給品一式、水鉄砲@現実、鉄の棒@寄生獣、ビタミン剤or青酸カリのカプセル×7、毒入りペットボトル(少量)、
ロワ参加以前に人間の殺害歴がある人物の顔写真付き名簿 (足立のページ除去済み)
[思考]
基本:優勝する(自分の存在価値を認めない全人類をシャドウにする)
0:対主催に紛れ込んで承太郎の悪評を流す。
1:ゲームに参加している鳴上悠・
里中千枝の殺害。
2:自分が悪とバレた時は相手を殺す。
3:隙あらば、同行者を殺害して所持品を奪う。
5:エスデスとDIOには会いたくない。
6:殺人者名簿を上手く使う。
7:図書館か、電車か……。
8:承太郎死ね! 広川死ね!
[備考]
※参戦時期はTVアニメ1期25話終盤の鳴上悠に敗れて拳銃自殺を図った直後
※ペルソナのマガツイザナギは自身が極限状態に追いやられる、もしくは激しい憎悪(鳴上らへの直接接触等)を抱かない限りは召喚できません
※支給品の鉄の棒は寄生獣23話で新一が後藤を刺した物です
※
DIOがスタンド使い及び吸血鬼であると知りました。
※ペルソナが発動可能となりました。
【D-4/一日目/昼】
【
空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:出血(絶大)腹に斬傷(炎で止血済み)疲労(絶大)精神的疲労(絶大)
[装備]:DIOのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[道具]:デイパック、基本支給品、手榴弾×2、グリーフシード(使用不可)×3、『このラクガキを見て うしろをふり向いた時 おまえは 死ぬ』と書かれたハンカチ
[思考・行動]
基本方針:主催者とDIOを倒す。
0:早急に足立を追いぶちのめす。
1:アヴドゥルとまどかの件は時間がないので後回し。
2:情報収集をする。
3:首輪解析に役立つプロを探す。
4:後藤とエルフ耳の男、マスタング、キンブリー一味、ブラッドレイ、魔法少女やそれに近い存在を警戒。
【備考】
※参戦時期はDIOの館突入前。
※後藤を怪物だと認識しています。
※会場が浮かんでいることを知りました。
※魔法少女の魔女化以外の性質と、魔女について知りました。
※まどかの仲間である魔法少女4人の名前と特徴を把握しました。
※DIOのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダースが一本近くに落ちています。
※エスデスに対し嫌悪感と警戒心を抱いています。
※セリューと軽い情報交換済みです。少なくともマスタング、キンブリー一味、ブラッドレイは知ってます。
【セリュー・ユビキタス@アカメが斬る!】
[状態]:疲労(絶大)、精神的疲労(大)、左目損失(止血済み)、切り傷(それなり)、ほむらに親近感、自分の弱さを痛感
[装備]:日本刀@現実、肉厚のナイフ@現実、魔獣変化ヘカトンケイル@アカメが斬る!
[道具]:なし
[思考]
基本:会場に巣食う悪を全て殺す。
0:島村卯月を最後まで守る。
1:悪を全て殺す。
2:エスデスとも合流したいが……。
3:
エンブリヲと会った場合、
サリアの伝言を伝えて仲間に引き入れる。
4:ナイトレイドは確実に殺す。
5:図書館に向かい上手く立ち回る。
6:方法を選ばず、勢力を潰す。ウェイブはグリフシードと一緒に回収する。
7:ウェイブは何とか説得したいが、応じない場合は……。
8:都市探知機が使用可能になればイェーガーズ本部で合図を上げて、サリアを迎え入れる。
9:ほむらは正義だと思うので手助けする。
[備考]
※十王の裁きは五道転輪炉(自爆用爆弾)以外没収されています。
※他の武装を使用するにはコロ(ヘカトンケイル)@アカメが斬る!との連携が必要です。
※殺人者リストの内容を全て把握しました。
※都市探知機は一度使用すると12時間使用不可。都市探知機の制限に気付きました。
※他の参加者と情報を交換しました。
友好:エンブリヲ、エドワード
警戒:
雪ノ下雪乃、
西木野真姫
悪 :後藤、
エンヴィー、ラース、プライド、キンブリー、魏志軍、
アンジュ、槙島聖護、泉新一、
御坂美琴
※穂乃果が勢力を拡大しているのではと推測しています
※承太郎と軽い情報交換をしています。少なくともヒースクリフとエスデスの居場所は掴んでいます。
※クローステールでウェイブ達の会話をある程度盗聴しています
※ウェイブの未確認支給品のひとつはグリフシードです。
【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:悲しみ、セリューへの依存、自我の崩壊(小)、精神疲労(極大)、『首』に対する執着、首に傷
[装備]:千変万化クローステール@アカメが斬る!
[道具]:ディバック、基本支給品
[思考]
基本:元の場所に帰りたい。
0:セリューに着いて行く。
1:セリューと行動を共にする。
2:セリューに助けてもらう。
3:凛ちゃんを殺した人をセリューに……?
4:死にたくない。
5:未央ちゃんは図書館に居る……?
[備考]
※参加しているμ'sメンバーの名前を知りました。
※
渋谷凛の死を受け入れたくありませんが、現実であると認識しています。
※服の下はクローステールによって覆われています。
※自分の考えが自分ではない。一種の自我崩壊が始まるかもしれません。
※『首』に対する異常な執着心が芽生えました。
※無意識の内にセリューを求めています。
※クローステールでウェイブ達の会話をある程度盗聴しています
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ(新編 叛逆の物語)】
[状態]:疲労(大)、ソウルジェムの濁り(絶大と大の間ぐらい) 全身にかすり傷、精神的疲労(絶大)、まどかの死に対する哀しみ(測定不能)
足立を殺す決意、まどか死亡のショックによる判断力低下、セリューに親近感
[装備]:見滝原中学の制服、まどかのリボン
[道具]:デイパック(中にまどかの死体)、基本支給品、万里飛翔マスティマ@アカメが斬る!
[思考]:
基本:足立を殺す。
0:今はグリフシードの入手。足立追跡はその後。
1:一先ず今はセリュー達と行動しグリフシードを手に入れる。
2:高坂勢力は良く分からないが、一応警戒しておく。
3:足立を殺した後、ソウルジェムを浄化する方法も、まどかを生き返らせる方法も無ければ自分も死ぬ。
[備考]
※参戦時期は、新編叛逆の物語で、まどかの本音を聞いてからのどこかからです。
※まどかのリボンは支給品ではありません。既に身に着けていたものです
※魔法は時間停止の盾です。時間を撒き戻すことはできません。
※この殺し合いにはインキュベーターが絡んでいると思っています。
※時止は普段よりも多く魔力を消費します。時間については不明ですが分は無理です。
※エスデスは危険人物だと認識しました。
※花京院が武器庫から来たと思っています(本当は時計塔)。そのため、西側に参加者はいない可能性が高いと考えています。
※この会場が魔女の結界であり、その魔女は自分ではないかと疑っています。また、殺し合いにインキュベーターが関わっており、自分の死が彼らの目的ではないかと疑っています。
最終更新:2015年11月02日 10:53