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お前がまどかを殺したんだな ◆BEQBTq4Ltk


残された三人は言葉を交わすよりも先に行動を開始していた。
承太郎は頭部を木っ端微塵に粉砕された花京院の身体へ近付いている。
鹿目まどかは虚ろな目を抱えたまま倒れそうなぐらいふらふらな状態で後退している。
その彼女を追うのが暁美ほむらであった。

何が起きたかわからない。三人が抱いている偽りない感情である。
花京院の襲撃があったのは事実だ。DIOに操られている状態での交戦となった。
事前に肉の芽らしき情報が手に入っていた承太郎は昔と同じようにその芽を毟り取った。

これにより花京院はDIOの支配下から開放され本来の自分を取り戻すはずだった。
しかし承太郎達に訪れたのは頭部を粉砕された花京院だった者の死。
肉の芽を取り除いた後に放たれた一筋の光の矢が花京院を殺した。

何が起きたか解らない。

花京院を殺した人物が鹿目まどかな点も相まって現場は混沌と化している。
エスデスに同行した方がまだマシだったかもしれない。思いたくもない現実が待っているかもしれないのだ。

さて、承太郎は花京院の死体に近付きその顔を見るが当然の如く頭部は粉砕されている。
倒れている身体についていない、床を見ても赤い血しか付着していない。
DIOを倒す仲間だった男はまた操られ、そして死んだ。
過去からやって来た線もあるが今は関係ない。そんなことはどうでもいい。
仲間が死んだ、花京院典明という男が死んだ事実に何も変わりはないのだから。


「……おい」


過去から現実へ向き直した承太郎は後ろに居るまどかと乱入者に声を掛ける。
まどかの仲間である暁美ほむらという名前らしいが重要なことではない。

「なんで殺した、言え」
「まどかだって混乱している。今は触れないであげて」
「テメェには聞いてねえ。なんで花京院を殺したんだ」
「……………………」
「承太郎さん、だから今はまどかを――」
「黙れって言ってんだよこのアマ」

承太郎の横に浮かび上がるスタンドに警戒するほむらは盾に手を伸ばす。
何時でも時間停止を発動出来る状態に。どんな事態でも動けるように、まどかを守るように。
ラッシュの応酬を見るに承太郎の戦闘能力は一級品と見て間違いない。
スタンドと呼ばれる未知の力に対し自然と恐怖を覚え、魔法で勝てるか危うい。
視線だけは承太郎から逸らさず、黙って立っているまどかを守るようにほむらは数歩前に出た。

「まどかは殺しなんてする子じゃないわ」
「そいつはどうかな。まどかはついさっきも人を殺そうとしていたぜ」
「そんな……!? 適当な嘘をつくんじゃない!」

「なら花京院を殺したのは何でだって俺は聞いている」

誰も答えない。
ホール一帯を緊迫感が包み込み、ほむらの頬を汗が伝う。

「――訳は知らないけれどまどかは貴方と友好関係を築いていた。
 仲間である貴方が襲われているのは助けた――うん、これが一番妥当じゃないかしら?」

「都合の良い解釈過ぎんぜ。そいつは俺に攻撃もして来たし俺は別行動を取るつもりだった。
 仮に俺を助けたとしても頭を矢でぶっ飛ばすなんざ度が過ぎてんだよ。まどかは――その女は確実な殺意を持って花京院を殺した」

「まどかがそんなこと」「する訳無いって言うつもりらしいが実際に起きてんだ」「何が理由が」「あるなら教えろ」

言葉の応酬は続く。

「お前も魔法少女って奴なんだろ」「だったらどうしたって言うの」「赤い槍のガキもそうだが人を襲うことに躊躇しねえガキ共だ」

佐倉杏子――気の強い彼女なら有り得るわね、余計なことを)「まどかも例外なく何人か襲っている……殺人鬼じゃないのは一緒に行動して解ってるつもりだった」

「ならまどかがそんなことをしない子だって貴方も解っているはずよ!」

「仲間が殺されてたんじゃテメェの口から吐かせるしか無えんだ。お前も『俺が今鹿目まどかを殺した』らキレるに違い無え」

言葉を返さず、場を見極めようと思考を張り巡らせるほむら。
承太郎はまどかに対し警戒しているよりも魔法少女という存在自体に警戒している。
赤い槍のガキは佐倉杏子で間違いない。まどかを含め承太郎は二度、魔法少女に悪い印象を持っているようだ。
ほむら自身まどかが花京院を殺した理由など知らない。寧ろ現実から逃げたいぐらいである。
放心状態のまどかを庇うように承太郎と論戦しているが彼が有利なのは当たり前である。

それでなくても承太郎に味方したい――大切な仲間が目の前で殺されればほむらも同じだ。


承太郎の発言には筋が通っている。そしてほむらの発言はまどかを守る一心で脆い。
突かれれば粉々に砕け散ってしまう程には芯の無い供述であり、まどかは優しい子だ。と強引に進めるしか無い。
承太郎が言う通りこの場でまどかが殺されればほむらは彼を殺す。それも徹底的にこの世から排除する。
故に花京院が殺された承太郎の気持ちは痛いほど解る――それでも。

「キレるどころか殺すわよ。
 今はまどかを安静にさせたいの。会話も荒れ事も後にしてもらえるかしら」

まどかを最優先にする。



「ヤバイヤバイハライタァイ……いやートイレ長くてごめんね承太郎君。
 さっきから物音凄いし取り込み中みたいだったけど……この死体、僕がトイレに行っている間に何があったの?」





とっくに火が点いて導火線がみるみるうちに減っていく状況に救世主が現れた。

「うげ……ちょっとグロ」

救世主がどうかは不明だが承太郎とほむらの衝突を遅らせることに貢献している。
トイレに行っていた足立は戦闘と思われる音と二人の言い争いを聞いて歩いて来た。

何故彼が戦闘中に来なかったかは不明である。長時間トイレに篭っていたのだろうか。
空条承太郎、鹿目まどか、花京院典明、暁美ほむら。
エスデス達が去ったコンサートホールに残った役者達が演じる劇に何故足立は居なかったのか。
まるで彼だけが物語から切り取られたように不自然な未登場である――しかしほむらには関係ない話だ。

「どなたでしょうか……?」

「あっ僕? 足立透、名簿見れば一発で解るからねよろしく。
 一応刑事なんだけど銃とか全部没収されててさ……面目ないってのが現状、君は……まどかちゃんの友達かな?」

「暁美ほむら……まどかの友達の」

「ほむらちゃん、ね。燃え上がれ―って感じでかっこいい名前だけど……承太郎君、説明いい?」

謎の少女の名前も解ったところで足立は承太郎に状況説明を求めた。
足立の中で承太郎はかなりレベルの高い話しかけたくない存在である。
出会った瞬間に解る年齢からは想像出来ない威圧感、一緒に居れば心苦しい。
足立のスタンス的にも離れたいのだが――この話は別に関係ない。
年下、それも子供しかいない面子の中で一番年上でしっかりしているのが承太郎だ。
故に足立は承太郎から説明を聞く――そして遅れた役者を主役に禍い物のストーリーが幕を開ける。


「簡単だ足立さん、まどかが花京院――俺の仲間を殺した」




「ふむふむ……いや、殺しは駄目でしょ常識的に考えなくても駄目だよまどかちゃん」



一通り説明を聞いた足立は客席に座り、顎に手を付けながら黙っているまどかに注意をする。注意なんて優しい内容ではないが。
承太郎の説明中にほむらが「それは違うわ」と根拠が無いことばかり間に挟んで来ていた。大切な友達を庇うためだろう。
響きなら感動的だが現実は優しくない。受けるべき罰は存在しており、鹿目まどかを守る法律は存在しない。

元を辿れば殺し合いを開いた広川が悪いのだが、手を殺しに染めた人間全員お咎め無し、なんて上手い話は存在しない。
それならばどこかの犯罪者も同じように人を殺して、樂しんで、広川に責任を押し付けるだろう。

(どこかの犯罪者も……ね。
 トイレ行ってる間にクソ面倒いことになってんじゃねぇよクソ……ま、籠もってた訳じゃないけど)

胸の中で毒を泥の中へブチ込むと足立の視線は自然とほむらへ移る。
花京院と一緒に現れた彼女。承太郎に襲いに掛かったことを考えれば彼女も『悪』の仲間と考えられる。
正義だから悪を倒す。そんな簡単に物事を解決出来る状況ではないため、無駄な記号は考えない。

友達を殺された男子高校生空条承太郎。
花京院を殺した女子中学生鹿目まどか。
その友達である女子中学生暁美ほむら。


「あ、だちさん……ほむらちゃん、承太郎さん……私、わた……っ!」


涙を流し呼吸が乱れたまままどかは頑張って言葉を発せようとしている。
今まで黙っていたが心の整理でも出来たのだろうか。しかし過呼吸気味となっており、パタンと客席に座ってしまう。
背中をさすり大丈夫と声を掛け続けるほむらとそれを睨む承太郎。溜息をつく足立。
エスデスが去り混沌とは無縁になる予定だったコンサートホール、何故こうなってしまったのか。

「まどかちゃん……い、今はとりあえず落ち着こっか! ほらこの水でも飲んでさ」

目の前の少女は殺人犯であり魔法少女である。
現行犯として逮捕し事情聴取を行うのが適当な場面ではあるがこの状況で法が万全を成すというのか。
足立はまどかを落ち着かせるためにバッグから自分に支給されているペットボトルを差し出した。


まどかをペットボトルを握ると少しだけ頭を下げて礼を述べる。まだ言葉を発するには呼吸が乱れている。
その光景を彼女の背後から睨む暁美ほむら。眼光が鋭く、足立は困ったように嗤っていた。

「はは……そんな睨まなくても」

「睨んでいるつもりはありませんでした。すいません足立さん」

「あ、そう? そんな風には見えねえんだよ……おっとなんでもないからね」

手を振り、引き攣った笑みを浮かべると足立は彼女達に背を向け承太郎の方へ歩き出す。
一連の流れを説明してもらったが、承太郎視点の情報が一番真実味を帯びていた。
暁美ほむらの供述は無意識に鹿目まどかを庇っている、云わば使いものにならない情報。
スタンド能力を含め承太郎から話を聞き出したいところだが彼は外に出る準備をしていた。


「ちょ、承太郎君!? 君さ、いや何してんの」

「俺はエスデスの野郎からアヴドゥルを引っこ抜いて別行動だ。アンタとはお別れだ足立さん」


バッグを担ぎ、客席を畳んだ承太郎は少ない言葉だけを残し歩き始める。
それを止めようと足立は慌てて承太郎の前に飛び出し腕を大きく広げて、進路を妨害する。

「いや君が居なくなったら誰がまどかちゃん達を守るのさ」
「もう一人の魔法少女がいるだろ」
「そうじゃなくてさ、まどかちゃんは君の友達を殺したんだろ? だったらその友達であるほむらちゃんも危険人物じゃないの?」
「……逆に聞くが友達を殺した奴と一緒に居たいと思うか?」
「……………………」
「じゃあな。俺がアヴドゥルを連れて此処に戻って来た時、足立さんが居ないことを祈るぜ」


足立の静止も気にせず承太郎は歩き続ける。
本来ならば鹿目まどかを問い正し状況と返答によっては――喋れない状態ならば自分が抑えるしか無い。
エスデスからアヴドゥルを連れ戻し、再びコンサートホールに来た時、喋れる状態にはなっているだろう。
その時こそが真実を知る時だ。死んだ花京院、魔法少女。
何故彼が死ななくてはならなかったのか。その全てを明かす時が必ず訪れるはずだ。





「まどか……? ま……ッ!? まどか!! ねえまどか!! しっかりして!!」





けれど承太郎がコンサートホールを出ることは無かった。




私はあの人を殺そうと思って弓を引きました。

偶然とかじゃなくて、確実に仕留めようとしていました。

前に襲って来た男の人と同じように――今度は成功……なんて言いたくない。

私はもう大切な人を失いたくない。

マミさんは死んだ。名前を呼ばれていたからもうマミさんには会えない。

誰がマミさんを殺したかなんて私には解らないです。

解ることは人を殺す悪魔が存在していることだけ。

もうマミさんみたいに悲しいことが起きないようにするには――私ってこんな考え出来たんだなって。


殺し合いに巻き込まれてから自分が自分じゃないような気がずっとしていました。

思えば最初からとんでもない幕開けで。花京院さん――承太郎さんの友達に襲われました。

あの時は解らなかったけど今なら解る、あれはスタンドによる攻撃だって。

魔法少女じゃなければ私は死んでいました。思いたくはないけどやっぱりこの身体は人間じゃないみたい。


その次に出会ったのが承太郎さんでした。

私が傷を再生している間に後藤と言う怪物と戦っていました。

承太郎さんはスタープラチナのスタンドを使って怪物と対決、退けることに成功しました。

ちょっと怖い見た目だけど、威圧感通りの強さを持っている人。

話を聞けば赤い槍の魔法少女……杏子ちゃんに襲われたと言っていました。

気の強い杏子ちゃんなら有り得そうで、私が止めなきゃ。変な意思が生まれました。

時間が経って私達はエスデスさんと出会いました。

とっても美人で、色っぽくて、大人なお姉さんで憧れちゃうかも……なんて。

エスデスさんはほむらちゃんと承太郎さんの友達であるアヴドゥルさんと知り合いでした。

私を襲った花京院さんが偽物かもしれない……そうだったらどれだけ良かったのか。


コンサートホールでは計六名のグループが結成されたんです。

新しく承太郎さんの友達であるアヴドゥルさん。それに足立さんとヒースクリフさんを加えて。

多くの人が一緒で私は安心していました――そこを狙うように放送が始まってマミさんの死を知りました。

その時のことはあまり覚えていません。覚えていたのはソウルジェムが濁っていたことぐらい。

錯乱していた私はヒースクリフさんからソウルジェムを貰って何とか穢れを浄化することが出来ました。

そして魔法少女の事を話したんです……怖かったけど受け入れてもらえて良かった。


一人で涙を流している時、私を襲って来た――魏志軍さん。

あの人はどんな能力を使ったかは不明ですが私の首を一部吹き飛ばしたんです。

語弊がある言い方かもしれないけど……私は反射的に拳を突き出していました。

自分らしくもなくて、慣れていない拳は簡単に避けられて承太郎さん達の加勢が無ければ本当に死んでいたかもしれません。

魏志軍さんが逃げようと閃光弾を投げた時――私は弓を引いていました。

何でかは解りません。ただ、死にたくなかった。そう、私は死にたくなかった。

此処で殺さなければ私もマミさんみたいに死んじゃう、そんなの嫌だ、死にたくない。

きっとこれが正解だと思います。自分のことなのによく解りません。


だから私は花京院さんにも弓を引いた――殺される前に殺せば死ぬこともないから。


……なんて皆に説明することなんて弱い私には無理でした。

こんなことを言えば軽蔑されてしまう。それが怖い。私は悪くない、いや、悪いのに。言いたくない。

どうすればいいの。こんな状況じゃ、殺し合いに巻き込まれてる中、正しい判断何て出来ません。

私は死にたくなかった。それだけなんです。

なのに、なのに。

どうして涙が溢れでるんだろう。




ほむらの叫び声に足立と承太郎は振り返る。
なんだなんだと覗き込んでみるとほむらが血相を変えて苦しんでいるまどかに近付いている。
その距離は密着に近く、まどかの肩を掴んで必死に訴えていた。

「どうしたのまどか!? 急に苦しみだして……ねぇ!」

首を自らの手で押さえ込んでいるまどかの表情は何かに苦しんでいた。
床には足立から受け取ったペットボトルが転がっており、落としてしまったのだろうか。水が零れている。
呼吸が更に荒くなっており言語の発音も通常通りとはいっていなく、聞き取るだけで精一杯な状況であった。

「まどかちゃんどうしたの……僕が解るかい、まどかちゃん!」

ほむらを押しのけて足立はまどかの瞳を覗き込む。
目と目が重なり、まどか自身に意識があることを確認する。どうやら此方からの声は聞こえているようだ。
何度も大丈夫か、と声を掛けるがまどかからまともな返事は返ってこず、事態には何の進展も訪れていない。
押し退けられたほむらは何度か足立を睨むが、流石にこの状況でまどかに触れるな! などと言えるはずがない。
刑事である彼なら自分よりも人体には詳しいはずだ。魔法少女絡みで無ければ任せた方がいいだろう。

(魔法少女絡み……ソウルジェムは……穢れているわね)

元から色が芳しくないまどかのソウルジェムであったが、やはり穢れている。
この会場で何があったか聞いてはいないが、相当な苦労を経験したのだろう。巴マミの死の件もある。
精神的弱さを持ちながら頑張って、振る舞って、意地を張っていた先輩魔法少女の巴マミ。
彼女の存在は後輩魔法少女であるまどかに――ほむら達にとってとても大きな存在だ。その背中を見て彼女達は生きて来た。
故に彼女の死はまどかにとってもほむらにとってもさやかにとっても杏子にとっても――無視することの出来ない件である。

ほむらは一瞬戸惑うが、視線を承太郎に移した。まどかをずっと視界に捉えていたいのだが、彼をノーマークにするのは危険過ぎる。
現状まどかに対して敵対意識を持っていると思われるのが彼――空条承太郎である。
彼がもしまどかに対して危害を加えるようであれば魔法を使うことに一切の躊躇いを持たない。

その本人である承太郎はゆっくりと此方に近付いている。
逆に言ってしまえばそれだけであり、スタンドも発動していなかれば武器の類も持ち併せていない。

「まどかちゃん、とりあえず水でも飲んで……くっ、どうすりゃいいんだよッ!」

彼女を落ち着かせようと足立は落ちているペットボトルを拾い上げ、彼女の口に水を注ぎ込む。
しかし当然のように逆効果であり、彼女は水を吐き散らしてしまう。足立は律儀に蓋を閉めていた。


その瞬間を空条承太郎は見逃さずに捉えていた。


足立は頭を抱え込み「どうしよう」「どうすれば」と狼狽えていた。
刑事とは思えない光景であるが、彼にとってもこの状況はイレギュラーであることは確かだ。
こんな無差別殺し合いを経験したことのある人間がどれだけ存在するのだろうか。それこそ概念を超えた先にある並行世界まで話を広げなくては。


誰もまどかに対する有用な治療が見当たらない中、時間だけ過ぎていき、悪魔の審判は呆気無く訪れることになる。
彼女の震えが止まった時、承太郎の動きも止まった。足立の動きも止まっている。ほむらだけが絶望の表情を浮かべていた。
まどかの顔は足立と重なっているため、その表情が見えているのは彼だけであり、ほむらからまどかの顔は見えていない。

止まる彼女の身体を目撃した時、ほむらは活動が停止したように輝きが止まったソウルジェムを見てしまっていた。
それが示す答えは一つの時が止まり、この世界線に留まる意味を消失させる暁美ほむらにとっての『世界の終わり』。









「私……わ……」

まどかの口から零れる言葉はとても弱い。ちょっとした物音で掻き消されるぐらいには響いていない。
お腹ではなく必死に喉元から絞り出したその声はまるで最後の灯火を連想させる。

人の死とは呆気無いものである。
流れ弾一発で死んだり、寿命で死ぬ者がいる。戦争でその身を焦がしたり、世界のために死ぬ者だっている。
宿命の相手と拳を重ねてその果てに息絶える者。邪悪の支配から開放された直後に頭部を撃ち抜かれて死んだ者。
人間の人生に死は憑物である。それがまどかの人生に訪れた、それだけの話しである。

まどかが最後に見たのは目の前に居る足立であった。

殺し合いに巻き込まれてから自分の精神は可怪しくなっていたかもしれない。
死にたくない一心と巴マミのような犠牲者を出したくなかった。まどかは思う。
何が正しい選択だったかなんて今となっては何一つ解らない。巻き込まれた時点で人生は終わっていたのかもしれない。

鹿目まどかは人を殺している。何れ裁きは訪れる。それが今な、だけ。

まどかが最後に見たのは目の前に居る笑みを浮かべた足立であった。




「死にたくない――死にたくないよ、ぉ……」




【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】




糸が切れたマリオネットのように倒れたまどかの身体を見てほむらは上を見上げた。
その瞳からは絶え間なく涙が溢れ、心ここにあらずと謂わんばかりに何かを呟いている。
聞き取ろうと承太郎が後ろから耳を澄ました時、一種の狂気を感じてしまった。

「まどか、まどか、まどか……まどかまどかまどかまどかまどかまどかまどかまどかまどかまどかまどか……あぁ」

死を受け入れることが出来ず、現実から逃げるように彼女は死んだまどかの名前を壊れた玩具のように何度も呟く。
承太郎は関わることを諦め、哀しみを持った瞳で彼女を見た後、足立に近付いた。
足立もまどかの身体に触れ脈や息、瞳孔を確認し死を確かめた後に承太郎の元へ歩み出す。

「ねえ承太郎君……花京院って奴はこんな能力も持ってるのかな」

「俺の知っている花京院にはそんな能力は……そもそもアイツが死んでいるならスタンドだって動かねえと思う」

「じゃあ! 誰がまどかちゃんを殺したんだ! あの苦しみ方は尋常じゃない、身体の中に干渉してる!
 それこそ毒とかスタンド能力? そんなところだろ!」

足で大地を踏み締めると同時に荒げた声で怒りを露わにする足立。刑事である自分が無力だったことに怒りを覚えているのだろうか。
対処出来ていない現実、何もなかった自分。狭間など存在するはずもなく、残ったのは鹿目まどかが死んでしまった事実のみだ。
一番年長者である足立は自分の不甲斐なさに怒りを……そうかもしれないが、そうじゃないかもしれない。

「――じゃあ、もう一度整理しようか足立さん。
 まず俺たちはエスデス達と別れた後コンサートホールに残った」

「そうさ、それで僕がトイレに行っている間、ほむらちゃん達が来たんだろ?」


承太郎が冷静に状況整理を始める中、ほむらはまどかの名前を呟きながら彼女に近付いていた。
足元に横たわっている身体を持ち上げ、膝を付きながらほむらの意思は一度止まってしまう。
抱えたまどかの身体は冷たい。魔法少女であれど死んでしまえば死体は人間と変わらない。
この現実を受け入れることなど――彼女に出来るのだろうか。

「そうだ。俺達は花京院とほむらの襲撃にあった。ついでにほむらは花京院の野郎に操られていたが自力で振り解いた」

「操る……それでまどかちゃんを」

「いや、まどかには何もやっていねえ。それは俺が保証するぜ足立さんよぉ」

足立は花京院のスタンド能力を見ていなければ、彼がどんな人間かも解っていない。
未知の能力で襲撃があったと聞けば犯人は花京院、彼がまどかを殺したと考えても可怪しくない。

「じゃあまどかちゃんは何で死んだんだ……外見に目立った傷跡は無いから身体の中で何かがあったはず」

「何でってついさっきアンタも言ったよな足立さん……『それこそ毒とかスタンド能力』てっな」

「だからそのスタンド能力でまどかちゃんを……んだよ承太郎君、その目は」

「何でもない、俺は何でもないって目をしている」

足立を睨む承太郎。その眼光に足立は難色を示し承太郎に問い正そうとするが彼は之を流す。
何でもないと告げた後、再び状況生理のために言葉を紡ぎだした。


「俺は花京院をDIOの支配から開放した。アイツの頭に埋まってる肉の芽を取り出した後にまどかが殺した」

「正当防衛……って擁護出来る範囲を飛び越えているけど、自分達を守るためにやったんだよねぇ」

「それは知らねえが、アイツが花京院を殺したのは事実だ……なぁ足立さん、疲れてないか?」

「はぁ……承太郎君、君が何を言いたいかは知らないけど僕だって黙ってる訳にもいかないんだよ。
 まどかちゃんの死体を安全な場所に移してほむらちゃんを支えたりってやることはたくさんあるの、解る?」

「……そうか。俺は疲れているなら手に持っているペットボトルでも飲んでくれ。そう言おうとしただけだが……まぁいい。
 まどかは花京院を殺した後、禄に会話が通じない程度には混乱していた。その時に足立さんが来て落ち着かせるために水を飲ました」

「……………………」


承太郎が淡々とこれまでの経緯を説明していく。
彼も喋り続けて疲れたのか、バッグからペットボトルを取り出し水を飲み始める。
喉音を大きく鳴らしながら減っていく水。承太郎は足立を見つめながら水を飲んでいる。
相手を威圧するように眼力を込めて彼を見つめており、その視線は彼の目線と交差している。

「足立さんもその水、飲んだ方がいいんじゃあないか?」

「……へぇ、気遣いどうも」

「いいのか? なら話しを進める。
 まどかはその後苦しみだして……これは足立さんも知っているよな。
 その後アンタはまどかに水を飲ませて落ち着かせようとするが、失敗。丁寧にキャップを閉めた。
 苦しみが止まらないまどかは死んじまった。死因は足立さんが言っている通り身体内部がヤラれたからだろう」




さて、ここまで話した承太郎の説明だが足立は一つの確信があった。
しかしそれに気付くとはつまり、だ。承太郎は解っていてこの茶番を行っている。
あからさまに強調されるとある単語は確実に足立を追い詰めている、それも精神的に、だ。

――このガキ……あぁクソ野郎だ。

まどかの状況を語るに当って足立はスタンド能力による干渉を指摘した。
だが、同じスタンド使いである承太郎は花京院のスタンドにそんな能力は存在しないと吐き捨てる。
彼女が死んだ理由を押し付けるには充分過ぎる能力だったが……失敗に終わる。

――あんなあからさまに水飲みやがって……あぁクッソ!
  何処でバレた……あのガキ、ご都合主義だってんならぶっ殺すぞ!

承太郎はまどかの死因を否定し、長丁場の中で足立に水分補給を促した。
確かに大事な行動ではあるが、死者が出て、その親友が居る中で提案するには悪ふざけが過ぎている。

――お前も今直ぐこの水、口ん中に注ぎ込まれてえのかよぉ……なぁ承太郎ぉ……。






「なぁ承太郎君……何処で俺が殺したって気付いたんだい?」


「俺が見た時、アンタはまどかが落としたペットボトルを大事にしてたよな? あの状況で。
 まどかが苦しみだした直前はアンタが持って来た水を飲んだ……その事に気付いちまったんだよ足立さん……いや足立。
 テメェは俺が飲めって言ってもその水を飲まねえ――これで黒だ。まどかはテメェが殺したんだろ、その水に毒か何かを仕組んでな」


――見ていただけ……? 
  このガキは、本当に――


「ご都合主義もいいとこ過ぎんだろこのクソガキがああああああああああああああああああ!
 たまたま見てただけで俺が殺した、しかも毒まで解った? 冗談じゃねえ、人生ナメてんのか、アァ!?」


「それがテメェの本性か……足立」




「足立さん、貴方が……ッ。


 お前がまどかを殺したんだな」





まどかを殺したのはお前か。

私が意識を取り戻したのはその瞬間であった。

承太郎さんが暴いた足立透の真実――毒殺の言葉を聞いて私は正気に戻った。

そう、大丈夫――私は正気に戻ったのよ。

まどかが死んだ時、私はまったやってしまったと後悔をした。
けれどこの空間に彼女が居ることは異端な状況であり、概念となった彼女は何故此処に居るのか。
会場が魔女の結界に包まれている可能性も考えたけれど、まどかが死んだ事実に変わりはない。
時間軸を跨げなくなってしまった私にとって、幻であろうとまどかと触れ合える時間を大切にしたかった。


             だけど足立透はまどかを殺した


あの男は許せない。
インキュベーターが絡んでいるとしか思えないこの状況何て今はどうでもいい。
まどかを殺したのはあの男、目の前に居るこの男。
まどかを殺した、まどかを殺した、まどかを殺したこの男が。

憎い。あぁ憎くて、殺したい程に憎んでいる。
許す必要など無い、神が審判を下さないならば私が今此処でこの男を殺してやる。私が正義だ。
殺し合いの黒幕何て後回しだ、今此処でこの男を殺さなければまどかが報われない。

だから私は時を止めた。
次に銃弾――所有していないからマスティマを発動し羽を射出する。
足立透の目の前には無数の羽がお前を殺すために構えている――時が動けばお前は羽に貫かれて死ぬ。

私が盾に触れた時、お前は死ぬ。
血を浴びたくないから私は足立透と軸をずらした場所に立って時を動かす。

まどかを殺したこの男、私の力で殺してやる。




「――は?」


気付けば俺の目の前には無数の尖った羽がめっちゃ並んでた。

意味解かんねえよなぁ。

俺はこの羽に貫かれて死ぬ?
そうだよな、それしか想像出来ないって話しだよなぁ。クソ、クソ、クソ。

何で急にこんな羽があんだよ……斜めの方でほむらが笑ってやがる。
あのガキも魔法少女って言ってたな……じゃあこれは魔法の力です、ってか?
ナメやがって、そんなモン認められっかよ、でもあのガキは俺を恨んでるよな。

愛しのまどかちゃんを殺した悪、って感じだよな。
何が悪で何が正義だか理解もしてねえこのガキに俺は殺されんのか?
冗談じゃねえ……どの世界にもクソガキが溢れていやがんのかよ、おい誰か答えろよ。

ふざけやがって、何が殺し合いだ。強要したらはいやります、って話になんねえだろうよ。
広川も相当頭がイカれてやがる……承太郎もだよ。
あぁ……死にたくねえなぁ……走馬灯みたいにクッソ長え時間だなぁ……。

死ぬ……? 俺が死ぬ……はは、ありえねえよなぁ。
どうせ戻っても……あの世界に戻ってもクソな未来しか見えねえしな。
あぁ死にたくねえなあ……へっ堂島さんの小言が懷かしい。

此処で死ぬってよぉ……つまんねえ人生だよな。
死にたくねえ……死にたくねえ!
何で俺が死ななきゃならねえんだよ、おい、有り得ねえだろ。
俺が何をしたっていうんだよ……殺人犯したガキ一人殺しただけだぜ?
意味も解かんねえ魔法に殺される……冗談もいいとこだよなぁ。あのガキ共みたく理不尽な奴らだよなぁ!
神様何て存在しねえけど一回ぐらい俺に微笑んでもいいんじゃねえか!?
どうせ俺は此処で死ぬんだよぉ、なら――ちょっとぐらいいい夢見させろよ現実でさぁ!
死にたくねえんだよ、しつこいけど俺は死にたくねえんだよ。願い叶えてくれんなら今直ぐ叶えろクソ――例えばよぉ。




「ペ――ペルソナァァァァアアアアアアアア!!」




俺は掌にあったカードを無我夢中で握り潰した。









突如足立の目の前に現れたスタンド――ペルソナは禍々しい闘気を纏っていた。
近寄りたくない、近くに居るだけで気分や体調が悪くなる。そんな気を放っている。
手にしている得物を振るうと足立に向けられていた無数の羽を簡単に相殺していた。

「な……それはいったい」


「マガツイザナギィ……お前らを殺す俺のペルソナだよォ!! アハハハハッハハハハハハハハ!!」


腕を広げ高笑いの足立、勝ちを確信した表情で己のペルソナの名を告げる。
マガツイザナギ。
殺し合いに参加している鳴上悠が持つペルソナ・イザナギに酷似している禍津の力。
全体的な色調は紅であり、連想するのは血液や地獄といった禍津そのもの。

殺し合いに巻き込まれた時点では使用不可能だった力が足立の危機に応えた。
突然現れた――足立は知らないが時間停止によって放たれた羽。
自らに迫る生命の危機に応じて現れたペルソナは足立にとって救世主であり、起死回生の瞬間である。

「テメェもスタンド使いだったの――ッッッ!?」

「おっと余計なことはすんな……って聞こえてないかなぁ承太郎くぅん?」


ペルソナの発言に合わせ承太郎はスタンド――スタープラチナを展開するがその拳は足立に届かない。
行動するよりも先にマガツイザナギの斬撃が彼の腹を斬り裂いており、その場に倒れてしまう。
スタンドも消えてしまい、コンサートホールには足立の笑い声だけが響いていた。

「アハハハハハハ! ざまあないねえ……お前が気付かなきゃ用心棒としてもうちょっと生きれたのに残念だなぁ」

追い詰められていた足立だったが今は承太郎を彼が追い込んでおり、精神的ではなく物理的に逆転している。
マガツイザナギはまだ全ての能力を明かしていない。見たところ承太郎のスタンドは近接戦闘型である。
今のように遠距離や空間に干渉する方法ならば一方的に嬲れる。逆転ホームランは存在しない。

「アハハハハハハ……笑い止まんないよ……っああ?」

腹を抱えて笑っている足立の肩に何者かが手を置いていた。
承太郎は倒れている。ほむらはまどかの死体を回収して遠くで此方を睨んでいる。
この場に居るとすれば他は花京院の死体であり、誰も居ない筈である。
何者かがやって来た可能性も在るが、流石に足立・承太郎・ほむらの三人が揃って気付かないことはないだろう。


「誰だよ……って!? へぶぅ!」


振り向いた先には拳を後ろへ目一杯引いて一撃に備えるスタープラチナ。
足立が危機を察したと同時に拳は放たれ足立の顔面を捉え、彼を大きく殴り飛ばした。

コンサートホールの壁にぶち当たり、余りの衝撃からか辺りは砂煙が巻き上がり、彼を確認出来ない。
死んではいないが足立から目を離すのは危険過ぎる。
承太郎は何とか立ち上がるが己の出血量は想像以上であり、今直ぐにでも意識を手放したい程の痛みである。
気力だけで動いており、治療を受けなければ生命は長くない――以って数時間だろうか。

彼は足立に止めを刺すために砂煙が晴れるのを待つ。
斬撃による奇襲に備え自分の正面はスタープラチナで客席を攻撃し即席の壁を創る。
しかし承太郎の目に飛び込んできたのは足立が投げた手榴弾であった。
距離が離れているため自分に害はないが――問題は其処ではない。

コンサートホールは爆発音が響いた後、火の海となり舞台は地獄へと変わり果てる。

「あの野郎……ッ……待ちやがれ」

溢れ出る鮮血を無視して承太郎は足立を追い掛ける。
その生命――このままでは潰えてしまう現実を感じながら。




【D-2/コンサートホール・大ホール/一日目/昼】
※手榴弾によって大ホールは火の海となっています。
※※アヌビス神@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダースが落ちています。


【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:出血(絶大)腹に斬傷(致命的)疲労(絶大)精神的疲労(絶大)
[装備]:DIOのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース
[道具]:デイパック、基本支給品、手榴弾×2、穢れがほとんど溜まったグリーフシード×3、『このラクガキを見て うしろをふり向いた時 おまえは 死ぬ』と書かれたハンカチ
[思考・行動]
基本方針:主催者とDIOを倒す。
0:足立を追い掛ける
1:まどかの件は後でほむらに問い正す。
2:アヴドゥルと合流して、更にエスデスと別れて行動する。
3:情報収集をする。
4:後藤とエルフ耳の男、魔法少女やそれに近い存在を警戒。 まどかにも一応警戒しておく。
【備考】
※参戦時期はDIOの館突入前。
※後藤を怪物だと認識しています。
※会場が浮かんでいることを知りました。
※魔法少女の魔女化以外の性質と、魔女について知りました。
※まどかの仲間である魔法少女4人の名前と特徴を把握しました。
※DIOのナイフ@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダースが一本近くに落ちています。
※エスデスに対し嫌悪感と警戒心を抱いています。


足立が承太郎の相手をしている間にほむらはまどかの死体を回収しバッグに仕舞い込んでいた。
死体とは云えバッグに人体を収納するのは気が引けるが仕方がない。まどかをあのまま放って置く訳にもいかない。

(あの男……時間停止の後に反応出来るなんて)

時間を止められたその『世界』は暁美ほむらと彼女が許した存在しか概念を知覚出来ない。
現に足立は時間停止の中一切動かず、彼はあの『世界』を認識していなかった。
故に開放された『世界』の理の中で彼はペルソナを瞬時に発動しマスティマを防いだことになる。

信じられないが目の前で起きているこの現実を受け入れるしか無い。頭を切り替える。
手榴弾の爆発から逃れた彼女は裏口までその身を避難させていた。
承太郎のことは気になるが……其処まで気に掛けるような存在でもない。
彼はまどかを殺そうとしていた……非情ではあるが此処で死んでもほむらは何も思わない。

(何も思わない訳無いじゃない……殺し合いに巻き込まれてから自分が自分ではないみたい、ね)

更に頭を切り替える。
これからの方針は――まどかを殺した足立を殺すこと。
殺人は駄目だとか倫理とか道徳は関係ない。大切な存在を殺した足立を殺す。
その後できっとソウルジェムも限界を迎えるだろう――足立を殺した時、それが暁美ほむらの人生に幕を降ろす時かもしれない。

まどかの死に耐えられる程、精神は安定していない。
今までは死んでも世界線を移動すれば『別の鹿目まどか』に出会えた。
しかし彼女が概念となり、自分の軸移動の魔法が失われた今――もうまどかに会えることはない。
これが魔女の結界ならば最後まで踊らされていたことになるが、まどかを殺した足立を殺せれば本望である。

マスティマを使用し天へ昇ったほむらは辺りを見渡す。
帝具の発動時間は残り多く見積もっても五分程度であろう。

その間に足立を見つけ出し、どんな方法を用いてでも殺す。

まどかの仇は私が――絶対に足立を殺す。





【D-2/コンサートホール・上空/一日目/昼】


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ(新編 叛逆の物語)】
[状態]:疲労(大)、ソウルジェムの濁り(絶大) 全身にかすり傷、精神的疲労(絶大)、まどかの死に対する哀しみ(測定不能)、足立を殺す決意
[装備]:見滝原中学の制服、まどかのリボン
[道具]:デイパック(中にまどかの死体)、基本支給品、万里飛翔マスティマ@アカメが斬る!
[思考]:
基本:足立を殺す
0:足立を殺す。
1:足立を殺した後、ソウルジェムを浄化する方法も、まどかを生き返らせる方法も無ければ自分も死ぬ。
[備考]
※参戦時期は、新編叛逆の物語で、まどかの本音を聞いてからのどこかからです。
※まどかのリボンは支給品ではありません。既に身に着けていたものです
※魔法は時間停止の盾です。時間を撒き戻すことはできません。
※この殺し合いにはインキュベーターが絡んでいると思っています。
※時止は普段よりも多く魔力を消費します。時間については不明ですが分は無理です。
※エスデスは危険人物だと認識しました。
※花京院が武器庫から来たと思っています(本当は時計塔)。そのため、西側に参加者はいない可能性が高いと考えています。
※この会場が魔女の結界であり、その魔女は自分ではないかと疑っています。また、殺し合いにインキュベーターが関わっており、自分の死が彼らの目的ではないかと疑っています。




「ほんっっとうにクソなガキだな……あー、殴られた所これ骨折れてんじゃねえか?」


時は遡りスタープラチナに殴り飛ばされた足立はホールを飛び出し入り口付近で顔を触っている。
殴り抜かれた右頬は確実に骨が折れており、痛みが顔から全身に広がっている。
我慢出来ない訳でもないが、痛みは痛みであり原因である承太郎へは怒りが込み上げてくる。

「これでお前も死ねッ!」

ピンを引き抜き、ホール目掛けて手榴弾を放り投げる。
その後自分は歩き始めコンサートホールから脱出し心地良くもない日差しを浴びる。

「どっかぁ~ん……黙って死んどけや」

爆音が響く中、足立はポケットに手を入れながら能力研究所へ――歩かない。

「エスデスいんだろ? あのクソ女に会いに行くんだなんて御免だね。アイツは身体だけの女、あとはクソ」

ならば足立が目指すのは――市庁舎である。
南下すればイェーガーズ本部。エスデスがトップを務める部隊だ、近寄りたくない。
無視して更に南へ向かえばDIOの館。吸血鬼(笑)が潜んでいると思われる館へ誰が行くものか。

北にある病院へ近付けば仮に承太郎が生きていれば治療に向かうだろう。
つまり目ぼしい建物を目印にするならば元より選択肢は限られていた。

「さぁて……この傷はお前だからな承太郎」

足立は殴られた痕跡を承太郎に襲われたと言いふらすつもりでいる。
彼の悪評を流し自分は悲劇のヒロインへ仕立てあげ、正義(笑)の集団へ紛れ込む。
失敗してもその時にはペルソナを駆使しその場を切り抜け、敵を殺せばいいだけだ。


「俺にもやっと出番が……って言ってもペルソナが使えるようになっただけか。
 マイナスがゼロになっただけだろ……めんどくせえし本当に世の中――クソだな」


禍津の名を冠する男。
その目に光は映らず、映っていても刺激のない灰に覆われていた。



【D-2/コンサートホール・入口(外)/一日目/昼】


【足立透@PERSONA4】
[状態]:鳴上悠ら自称特別捜査隊への屈辱・殺意 広川への不満感 、右頬骨折
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、水鉄砲@現実、鉄の棒@寄生獣、ビタミン剤or青酸カリのカプセル×7、毒入りペットボトル(少量)
[思考]
基本:優勝する(自分の存在価値を認めない全人類をシャドウにする)
0:対主催に紛れ込んで承太郎の悪評を流す。
1:ゲームに参加している鳴上悠・里中千枝の殺害。
2:自分が悪とバレた時は相手を殺す。
3:隙あらば、同行者を殺害して所持品を奪う。
5:エスデスとDIOには会いたくない。
[備考]
※参戦時期はTVアニメ1期25話終盤の鳴上悠に敗れて拳銃自殺を図った直後
※ペルソナのマガツイザナギは自身が極限状態に追いやられる、もしくは激しい憎悪(鳴上らへの直接接触等)を抱かない限りは召喚できません
※支給品の鉄の棒は寄生獣23話で新一が後藤を刺した物です
※DIOがスタンド使い及び吸血鬼であると知りました。
※ペルソナが発動可能となりました。


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099再会の物語 鹿目まどか GAME OVER
空条承太郎 113:不穏の前触れ
暁美ほむら
090:足立透の憂鬱 足立透
最終更新:2018年11月28日 19:52