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The ETERNAL SOLDIERS



この会場に連れてこられてから私はなにが出来た。

あろうことか、ヒューズを生き返らせようなどとバカげたことを考えた。
エンヴィーにまんまと騙されて左天涙子を殺された。
黒子たちと共にエンヴィーの見分け方を決めていたのに、いざとなったら冷静さを失い怒りに身を任せてしまった。
挙句の果てに天城雪子を誤って殺し、名も知らぬ犬を犠牲に生き延びた。



―――私は救える人間は全員救う……いや、この手が届く範囲で全ての人間を救ってやる。

―――死んだ者達の分も生き抜いてこの殺し合いを破壊すると言っている。私はもう止まることは許されない。そして愚かな行為を行うことも、な

だから私は、デイパックの中で見た疑似・真理の扉で、シャドウとやらに向けてそう決意した。
だが、その後の私になにが出来た。

ほむらを死なせ。
承太郎を死なせ。
セリューを死なせ。
未央のアイドルとしての生命を死なせ。
西木野真姫を死なせ。


何一つ救えやしなかった。
私の力が及ばず、みんな取り零してしまった。


...本当にそうか?



例えば、空条承太郎

彼は瀕死の身にも関わらず、足立透という男を追いかけた。
どういう状況だったかはわからないが、暁美ほむらが加わり、且つセリューが駆け付けてもなお逃げられてしまった相手だ。
仮に足立に追いつけたとしても、承太郎の勝算は低い。いや、勝ったところで承太郎が死ぬのは確定していただろう。
無謀だ。自殺行為だ。ただの意地張りだ。
いまにして思えば、彼はただ己の死に場所を探していただけなのかもしれない。
自分が取り返しのつかないことをしてしまって。あわよくば足立を道連れにできれば。
そんな自暴自棄に陥ってしまっていたのかもしれない。

...皆を逃がすという大義名分で、一人で勝ち目のない戦いに挑んだ何処ぞの大馬鹿者と同じだ。

その大馬鹿者はなぜ生きている。
簡単なことだ。傍に居た者たちがその自暴自棄な決意を否定してくれたからだ。


そして、彼が生きていれば自ずと状況が変わってくる。

いくら傷ついているとはいえ、それでもあれだけの動きができた男だ。
卯月が彼を掻い潜って未央に手をかけるのは不可能だ。
承太郎を卯月と未央と共に逃がし、セリューと私でキンブリーと戦うことが出来れば勝率はかなりあがっていたはずだ。
そうすれば、キンブリーの虚言に惑わされることも無く、奴を殺し、セリューと共に生還できたはずだ。
そうすれば、卯月が単独行動に出ることもなく、西木野真姫もまた死ぬことはなかったはずだ。

私が一人を救えば、その者が誰かを救い、やがて犠牲者はいなくなる。
まさに私がかつて抱いた理想論じゃないか。


...だが、現実は違う。

―――あの類の男に何を言っても無駄なことは心得ているつもりだ。本人のやる気を削ぐことにしかならない

そう判断し、彼を止めなかったために承太郎は死んだ。
...そう判断したのなら、なぜ身を挺してでも護ってやらなかった。
本人の気持ちを削ぐから止めない?そうやって彼が死んだ時の保険でもかけていたつもりか。
彼を生かしたいのなら、彼の無謀な意地を否定し、セリューと協力して無理にでもデイバックに叩き込めばよかったんだ。
足立を追うのは治療してからでも十分に間に合ったはずだ。



例えその先に死が待つのみだとしても。民が望むのなら戦場に送り出すことが軍人の役目か。私が師匠の墓前で誓った錬金術師の在り方か。


―――王は民の為に在るもの。民無くして王は在りえなイ。


そうだな、リン・ヤオ。目の前の民を見捨てて生き延びて、それでもなお大総統を目指すなどと、よくもまあ言えたものだ。


―――我が名は鉄血の錬金術師バスク・グラン!すなわち兵器と兵士!この身こそ戦の先駆けにならんでなんとする!


そうだな、グラン。先だって戦場に立ち、敵の恨みもなにもかもを背負うのは、私たち国家錬金術師の役割だ。
承太郎を力づくで抑え込んだ先にあるのが彼からの糾弾だったとしても。彼から一生恨まれることになったとしても。
私が生き延びた先に待つのが今まで殺してきた者たちの恨みでも。
それを受け止めなければいけないのが、国家錬金術師の役目だ。


―――軍人ってのはよ、逃げちゃいけねえんだ。命令に従うってのも大事だがよ、俺たちは守るべき誰かのために力を持つことを許されたんだ。お前の錬金術、俺の剣術や体術、それに帝具……そういう全部、自分じゃない誰かのために使う。そのために鍛えてきたものじゃないのかよ

―――俺たちに、簡単に死を選ぶ権利なんてねえぞ。俺たちは戦って戦って……死にかけたって何度でも立ち上がって、戦い続けなきゃいけねえんだ

そうだな、ウェイブ。死ぬまで戦い続けるというのは私たち軍人の役目だ。決して、承太郎に背負わせるべき責務ではない。


...結局のところ、私はまだ己の身が可愛かったのだろう。

かつて、鋼のやスカー、中尉たちに諭されたことによって残された大総統への道にしがみ付いていただけなのだろう。


―――私と出会ったことが原因で死んでしまった彼女達――私が殺してしまった天城雪子君。その罪と彼女達の証を背負って私はこの殺し合いを潰して生き抜いていくしかないんだ

そう思うのなら、救うための手段を選ぶな。殺し合いを潰すというのなら、優先して守るべきは命だ。守るべきものをはきちがえるな。

セリューを見ろ。彼女は確かに手段こそは誤っていた。失ったものも多かった。
しかし、それは結果として卯月や未央の命を守った。守れたものは確かにあった。私とは違う。
悲劇が続くのは私の責任だ。
彼女から全てを託されたこのロイ・マスタングの責任だ。


目の前の女はセリューの尊敬する上司だ。
セリューの意思を踏みにじる少女は未央の仲間だ。

もう、そんなことは考えるな。

軍人であるならば覚悟しろ。

周囲の一切合切から恨まれようとも戦い続けろ。

目の前の民を見捨てなければ大総統になれないのなら。

そんなものに固執して守るべきものを護れないのなら。

私はもう、そんなものはいらない。



パチン。



指を鳴らし、迫りくる氷柱を焼き尽くす。


―――鏡で手前のツラよく見やがれ!んなツラでこの国のトップに立つつもりか!

―――他人の復讐を止める資格は己れには無い。ただ、畜生の道に堕ちた者が人の皮を被りどんな世を為すのか見物だなと思うだけだ。

―――お願いです、大佐。貴方はそちらに堕ちてはいけない...!


わかっている。これは、未央を助けることを名目とした、復讐にしかすぎないことは。
だが、それでも。
それで道を切り開けるのなら。
それで守るべき者の命を救うことができるのなら。
私は喜んで怒りの焔に身を委ねよう。


「もう喋らなくていいぞ、エスデス

セリュー。きみはこんなことを望まないのかもしれない。

「邪魔をするのなら、貴様も」

だが、例えきみの仲間がきみをいくら無力だと、弱者だと罵ろうとも。

「あの女も」

例え、守った者がきみの意志を踏みにじろうとも。

「その舌の根から―――いや」

私はきみが守ろうとしたものを忘れない。だから。




「後悔する暇も無く、骨の髄まで焼き尽くしてやる」



私は、悪魔にだってなってやる。


「―――ハッ」

溶かされた氷柱の向こう側のあいつを見て。
思わず笑いが込み上げてくる。


実に面白い。
これなら退屈せずに済みそうだ。
煽った甲斐があったというものだ。

私は楽しめて、卯月も経験を積むことができる。
一石二鳥というやつだ。

卯月。
お前の初経験としてこれ以上ない相手を用意してやった。
もう本田未央はお前を敵とみなし、生き残るためにどんな手段も用いるだろう。
下手に躊躇えばお前が食われるが、そうでなくては実戦経験とはいえまい。
ここまでお膳立てしてやったのだ。私の期待に応えてくれよ。



パチン。

マスタングの指が鳴り、私へ向かって炎が走る。

それを氷で防御すると、瞬く間に氷はその形を無くす。


「中々の火力だ。本気ではないとはいえ私の氷をk「黙れ。どく気がないならさっさと死ね」

...普通、私と戦うのならより慎重にいこうとするものだがな。
こうもぞんざいに扱われたのは初めてだぞ。


セリュー、お前は本当に面白いものを遺してくれたよ。
卯月だけじゃない。
奴のあの目、敵への憎しみに、怒りに全てを委ねたあの目。
お前にソックリじゃないか。



「楽しませろよ、ロイ・マスタング。お前の全てを私にぶつけてこい」



さあ、お楽しみはこれからだ!


【D-6/一日目/夜】


【ロイ・マスタング@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST】
[状態]:疲労(極大)、精神的疲労(絶大)、迷わない決意、過去の自分に対する反省、全身にダメージ(極大)、火傷、骨折数本 、激しい怒りと殺意
[装備]:
[道具]:即席発火手袋×10 タスクの書いた錬成陣のマーク付きの手袋×5。暁美ほむらの首輪、鹿目まどかの首輪
[思考]
基本:この下らんゲームを破壊する。
0:殺し合いを破壊するために仲間を集う。救える命を救うためには手段は択ばない。
1:卯月とエスデスを殺して未央の命を救う。もう躊躇わない。
2:ホムンクルスを警戒。ブラッドレイとは一度話をする。
3:エンヴィーと遭遇したら全ての決着をつけるために殺す。
4:鋼のを含む仲間の捜索。卯月とエスデスを殺したらすぐに北上し田村を探しに行く。
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後。
※学園都市や超能力についての知識を得ました。
※佐天のいた世界が自分のいた世界と別ではないかと疑っています。
※並行世界の可能性を知りました。
※バッグの中が擬似・真理の扉に繋がっていることを知りました。
※田村と情報交換をしました。
※怒りに身を任せていますが、思考は冷静です。




【エスデス@アカメが斬る!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、全身に打撃痕(痛みは無し)、高揚感、狂気、欲求不満(拷問的な意味、ちょっぴり解消)
[装備]:なし
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品1~3
[思考]
基本:殺し合いを愉しんだ後に広川を殺す。
0:亡き友アヴドゥルの宿敵DIOを殺す。
1:電車で南に向かい、セリューを弔う。...が、その前にマスタングとの戦闘と現在の状況を愉しむ。
2:島村卯月に実戦と殺人を経験させたい。とりあえずは本田未央だ。
3:御坂美琴と戦いたい。卯月に戦わせるのも面白いかもしれない。
4:クロメとセリューの仇は討ってやる。
5:殺し合いを愉しむために積極的に交戦を行う。殺してしまったら仕方無い。
6:タツミに逢いたい。
7:ウェイブを獲物として認め、次は狩る。
8:拷問玩具として足立は飼いたい。
9:アカメ(ナイトレイド)と係わり合いのある連中は拷問して情報を吐かせる。
10:後藤とも機会があれば戦いたい。
11:もう一つ奥の手を開発してみたい。
[備考]
※参戦時期はセリュー死亡以前のどこかから。
※奥の手『摩訶鉢特摩』は本人曰く「一日に一度が限界」です。
※アヴドゥルの知り合い(ジョースター一行)の名前を把握しました。
※DIOに興味を抱いています。
※暁美ほむらに興味を抱いています。
※暁美ほむらが時を止められる事を知りました。
※自分にかけられている制限に気付きました。
※DIOがスタンド使い及び吸血鬼であることを知りました。 また、DIOが時間停止を使えることを知りました。
※平行世界の存在を認識しました。



そびえ立つ氷の壁を何度も叩いて。
しまむーに気付かれないように、心の中でマスタングさんの名前を何度も呼んで。
それでも、現実はあまりにも無情で。

(いやだ...)

このままでは、死ぬ。しまむーに、殺される。
いやだ。逃げ出したい。でも、壁の向こうにはエスデスがいる。
どうすればいいの。どうすれば、私は。

恐怖でいっぱいの私には、ただあてもなく不様に這いつくばることしかできない。
それでなにをしようというのか。いっそ、このまま一思いに殺されてしまえば...

「あ...」

ふと、目が合った。

生気を灯していない、虚ろな目。




「ほむらちゃん」

先程まではそれに恐怖を覚えていた
しかし、いまは違う。

「泣いてる、の?」

床に転がるほむら【まどか】ちゃんの目からは、一筋の雫が伝っていた。
おそらくは、エスデスの氷の水滴が付着しただけなのだろうが。
それでも、私には彼女達が涙を流しているように見えた。

「...私の、せいだ」

私があの時しまむーを叩いたから。
何も考えずに、セリューを否定したから。

ほむらちゃんとまどかちゃんがこんな目に遭ってるのは、私のせいなんだ。

「ごめんね」

気付けば、私は思わず【二人】を抱きしめていた。
その、半分程で異なる感触が、私の身体全体を通して伝わってくる。
彼女たちが魔法少女だとか、そんなものは関係ない。
私より年下で、身体つきだってまだ子供だ。
まだまだ将来溢れる子供だ。
その芽を摘まれたのなら、もっと悼まれるべき子供だ。
こんな仕打ちを受けていい子たちじゃなかった筈だ。

「ごめんねぇ...」

私は流れる涙を抑えられなかった。。
掠れ、しわがれた声で、何度も何度も【二人】に謝って。
やがて、私は【二人】を床にそっと寝かせて、涙を拭う。

「...もう、終わりにしよう」

ぽつりと、誰にも聞こえない程の小さな声で、私は呟いた。




「も、もうそろそろ...」

マスタングの攻撃に吹き飛ばされ、しばらく様子を窺っていたところ、次いでエスデスの攻撃が散弾銃のように放たれ、駅員室をズタズタに破壊した。
更に、氷の壁がそびえ立ったと思えば、やがてエスデスの攻撃はピタリと止んで。
しばらくしない内に、今度は壁の向こう側で爆発音が鳴り響き始めた。

「...やらなくちゃ」

エスデスが未央をああまで煽り、マスタングの介入を防ぐように取り計らった理由。
それが現す答えは一つしかない。
エスデスは、卯月に未央と戦い殺せと命じているのだ。

「わたしが、今度こそ未央ちゃんを」

殺さなくちゃ。
殺して強くならなければ、エスデスに見捨てられる。

―――この世で最も価値があるのは強さだ。決して、忘れるな

エスデスの言葉が、頭から離れない。
強くなければ、エスデスに見捨てられる。
見捨てられれば、卯月は必ず誰かに殺される。

嫌だ。
承太郎のように戦場で息絶えるのは。
イヤだ。
南ことり由比ヶ浜結衣のように無残な屍を晒すのは。
いやだ。
【二人】と一緒のゴミ箱に入るのは。

「...殺さなくちゃ」

もう、決別もしてしまったのだ。
こちらから一方的に殺しかけるという、決定的な決別も。
卯月の仲間と言える人たちはみんな死んでしまった。
後は、卯月が殺しかけた未央だけだ。
もう、あの輝きへは戻れない。
ガラスの靴はもう砕けてしまって、二度と履くことはできない。

「殺さな...殺すんだ」

もう、クローステールを握る手は震えていない。
彼女の『困惑』が『怒り』へと形を変える前に。
彼女の全てに終わりを告げなければならない。

「いるのは―――あそこ」

未央が、壊れた駅員室から抜け出したことは確認していない。
こうまでお膳立てしたエスデスが未央をそのまま殺すとは思えない。
おそらくは、あの瓦礫の山を影にして、その身を隠しているだろう。


ヒュッ


暗闇の中を、右手側に何かが舞った。

(きたっ!)

卯月は、クローステールを振るい、それを両断。
中に詰まっていたものは飛び散り、ボタボタと地面を濡らす。

「...!?」

妙な感触を得て、卯月は気づく。
これは未央ではない。彼女に比べて小さすぎる。

それに気が付いたその瞬間。

「ッ!?」

卯月が切り裂いた『何か』とは逆の方向から現れた未央が、卯月に駆け寄ってくる。

それに気が付いた卯月は慌てて腕を横なぎに振るい、そして―――


田村怜子とマスタング達が別れる前のこと。


「ひとつ助言しておくわ。...本田さん。あなた、もし彼女にもう一度襲われたらどうするつもり?」
「え?」
「殺したはずの相手であるあなたを見て、彼女がなにもしないと?」

言われてみて、今さら気付く。
殺したはずの相手がいまもこうして歩いていることを知れば彼女はどうするのだろうか。

「仮に殺されなくても、あなたが人質にでも使われればマスタングも困る。そうでしょう?」
「...ああ」
「しかし、マスタングも常に守り続けられるわけじゃない...今回の私たちのように」

私は、後ろめたさから思わず目を伏せてしまう。
しかし、田村さんはさして気にする様子もないようにほんの僅かに微笑みながら話を続ける。

「あなたを責めているわけじゃない。ただ、あなたが私に死んでほしくないと言ったように、私もあなたに死んでほしくない。だから、さわりだけでも憶えておいてほしいことがあるだけよ」


「糸というものは、様々な使い方があり、それを見切るのは至難の業かもしれない。けれど、何かを斬ろうとするなら、使い方は限られてくる。どうやらあの糸は特殊なものらしいけれど、その根本は変わらない」



私が投げたのは、ボートの船外機に入れるために使った油が入っていたガソリンタンク。
量は既に半分程度だったけれど、それが逆に幸いして、派手に投げることができた。

おかげで、しまむーには隙が出来たのはよかったけれど。

(ここからだ...ここからが、田村さんから教えて貰った...!)

『糸で何かを斬ろうとしようものなら、その糸は必ず直線でなければならない。弛んでいる状態では、相手を捉えることはできるが、切断は難しいだろう』
『加えて、島村卯月は戦いにおいては素人だ。殺しそこなったお前を再び殺そうとする時は、今度こそと思い、切断しようとするはず。ならば、攻撃は奴の腕の直線、加えて掌の幅だけだ』
『つまり、いくらあの糸が強力であろうと、奴の腕の動きを見ていれば、それなりに反応はできるはず』

そして、しまむーは田村さんの予想通りに私を斬るために腕を振るった。
縦か横か。その二択は運任せだったけれど、その賭けには勝てたみたいで。
糸はあまり見えないけれど、それが私の顔を斬ろうとしているのかはわかった。

私はしゃがみつつも走る勢いを殺さないようにそれを回避しようとする。
が、しかし。
傾けていた顔の一部が間に合わず、私の右耳が切り裂かれる。

「――――!!」


激痛が走る。
痛い。泣きたい。耐え切れない。逃げたい。
それらを、全て歯を食いしばって噛みつぶす。

怯むな。


真姫ちゃんはもっと痛かったんだ。


怯むな。


あんなに辛い状態で、それでも鳴上くんは守ろうとしてくれたんだ。

プロデューサーは、あんなにも怖い男を相手にして、それでも皆を護るために立ち向かったんだ。

マスタングさんは、あれだけ傷ついているのに、それでも壁の向こうで戦っているんだ。

狡噛さんやタスクくん、花陽ちゃんやウェイブさん―――みんな、いまもどこかで戦ってるんだ。



そして。


―――生きろ。


あれだけ傷ついていても、承太郎さんは最期まで泣き言を言わなかった。


だから。


「う」


ひる、むな!!



「う、あ、あ、ああああああああああああああ―――――!!」

吼える。
アイドルの要素なんて欠片も見当たらないくらい、不様に、みっともないくらいに。ただがむしゃらに。
そうでもしなくちゃ、痛みに負けてしまう。

私を切断する筈の糸を躱されたことに驚いたのか、しまむーは動きを止めた。

いまだっ!

しまむーの身体には、糸が巻き付いていて攻撃しても意味は無い。だったら

私は走る勢いのまま、しまむーの顔へと頭突きをする。

ガツン、と鈍い音がして、私もしまむーも地面に倒れる。

「―――!!」

それと同時に、失った右耳の痛みが私を襲う。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいイタイいたいいたい―――

頭の中を支配する『痛み』に耐えながら、私は立ち上がる。
それと同時に、倒れたままのしまむーが手を振り下ろそうとしたので、私は慌てて後ろに下がる。
危機一髪、といったところか、辛うじて私の服を破いただけで、身体が斬られた訳じゃない。


「しまむー」

視界が滲む。
私の頬を流れる涙がなにを意味するのかは解らない。

「しまむーは、もう止まれないんだね」

今まで、私はずっと誰かに護られてきた。
ずっと誰かに頼りっぱなしだった。

「だったら、私が無理やりにでも止めてやる。叩かれるのが嫌なら、何発叩いても止めてやる」

だから、今度は私が戦う番だ。
それが、此処に連れてこられた最後のニュージェネレーションの一人として―――ううん。

「もう、あなたに誰も傷付けさせはしない!」

『島村卯月』の仲間として。彼女を、絶対に止めるんだ。


覚悟は決まった。


もう、逃げることは、私自身が許さない。



【D-6/一日目/夜】

※駅員室がエスデスの氷で破壊されました。
※まどかとほむらの縫い合わされた遺体が近辺に安置されています。
※ゴミ箱にあった残骸が付近に散らばっています。


【本田未央@アイドルマスター シンデレラガールズ】
[状態]:深い悲しみ、吐血、喉頭外傷、セリューに対する複雑な思い。卯月に対する怒り。右耳欠損
[装備]:
[道具]:デイバック×2、基本支給品、小型ボート、魚の燻製@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース、万里飛翔マスティマ@アカメが斬る!
[思考・行動]
基本方針:卯月を止める。殺したくはない。
0:どんな手段を用いてでも卯月を止める。
1:勝てるか勝てないかじゃない―――やるんだ。
[備考]
※タスク、ブラッドレイと情報を交換しました。
※ただしブラッドレイからの情報は意図的に伏せられたことが数多くあります。
※狡噛と情報交換しました。
※放送で呼ばれた者たちの死を受け入れました
※アカメ、新一、プロデューサー、ウェイブ達と情報交換しました。
※田村と情報交換をしました。




【島村卯月@アイドルマスターシンデレラガールズ】
[状態]:正義の心、『首』に対する執着、首に傷、疲労(中)、精神的疲労(大)、セリューに逢いたい思い、精神不安定、鼻血
[装備]:千変万化クローステール@アカメが斬る!、まどかの見滝原の制服、まどかのリボン
[道具]:デイバック、基本支給品×2、不明支給品0~2、金属バット@魔法少女まどか☆マギカ、今まで着ていた服、まどかのリボン(ほむらのもの)
[思考]
基本:島村卯月っ、笑顔と正義で頑張りますっ!!
0:エスデスさんの下で強くなりたい。セリューさんに会いたい。
1:線路の修復が完了次第、セリューのもとへと向かう。
2:高坂穂乃果の首を手に入れる。
3:高坂勢力、及びμ'sを倒す。
4:強くなるために未央を殺す。
[備考]
※参加しているμ'sメンバーの名前を知りました。
※服の下はクローステールによって覆われています。
※クローステールでウェイブ達の会話をある程度盗聴しています
※ほむらから会場の端から端まではワープできることを聞きました。
※μ's=高坂勢力だと卯月の中では断定されました。




※まだ極限まで追いつめられていない者や意識がある者がデイバックの中に入った時は、宇宙の中に漂っているような場所に入れられます。
この状態だと、デイバックへの出入りは己の意思でできます。




161:それでも彼女は守りたかったんだ ロイ・マスタング 175:激情の赤い焔
本田未央
167:Over the Justice エスデス
島村卯月
最終更新:2016年03月17日 21:59