「三つの心が一つにならない」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
三つの心が一つにならない - (2022/09/05 (月) 22:31:29) の1つ前との変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
**三つの心が一つにならない ◆DNdG5hiFT6
『――エドワード・エルリック、キャロ・ル・ルシエ、――枢木スザク』
その名前が呼ばれた瞬間、名簿片手に放送を聴いていたルルーシュは自分の耳を疑った。
(スザクが……死んだ……?)
脳裏に浮かぶのは、はにかむ様に笑う親友の笑顔。
「何故だ……どうしてお前が死ななければならない……!」
最高の親友。
多少甘いところもあるがいずれは最も大切な妹すら任せようと思っていた男。
幼少の頃の出会い、互いに世界を変えようと誓い合ったこと、そして時を経ての再会。
それらがフラッシュバックし、
そのたびにその身を削られるような悔恨の念が自分を責め立てる。
まるで半身を失ったかのような感覚――ああ、これが“絶望”でなくて何というのだろう。
「そこにいるのは誰だっ!」
だからそんな声がかけられてから初めて
ルルーシュは自分が地面にへたり込んでいることに気付いたのであった。
「出て来い! 10秒数える間に出てこなければ撃つ!」
***
放送を聞き終えた糸色望は大きく息をつく。
とりあえずは自分の知り合いの名前が呼ばれなかったからである。
が、カレンの表情が僅かに曇っていることに気付く。
この状況でそんな表情の意味するところは一つ。
「……お知り合いの名前が呼ばれたのですね」
「はい……」
「こういう場合どういっていいのか分かりませんが……ご愁傷さまです」
「……いえ、いつかは倒さなければいけなかった相手です」
「? それはどういう……」
望が詳しく聞こうとしたその時、近くのトイレの裏から何かが崩れ落ちるような音がした。
「そこにいるのは誰だっ!」
今までとはうって変わった機敏な動作でカレンがディパックから取り出したのは黒い鉄塊――ワルサーP99だ。
「出て来い! 10秒数える間に出てこなければ撃つ!」
硬直する“ゼロ”を尻目にカレンは鋭い視線を物陰に向けたまま銃を構える。
糸色望は絶望した。
背後で物音がしたと思ったらいつの間にかカレンさんが銃を構えているではないですか!
しかもどう聞いても物騒なこと極まりない台詞を口にしながら!
ハッ、いけませんよこの状況は!
・出てきたのが凶悪な殺人鬼⇒カレンさんがやられる⇒私の監督責任
・出てきたのが無害な一般人⇒カレンさんが誤射する⇒私の監督責任
どちらにしろ私の監督責任になってしまうではないですか!
教育者の責任問題が取りざたされている昨今、そんな時事問題に巻き込まれたくありません!
「ま、待ってくださいカレンさん!」
「何を悠長な! あそこに隠れているのが
この殺し合いに乗った輩だった場合どうするんですか!」
「(監督責任を追及されたくないので)私は貴女を危険な目に遭わせたくはないのです!」
「え……」
カレンさんの体から力が抜けたのをいいことに、後ろに追いやります。
カレンさんの顔が何やら赤いようですが風邪でしょうか。
まぁずぶ濡れですからね。この問題を素早く解決して着替えないといけません。
「……私たちはこの争いには乗っていません。
貴方も乗っていないのであれば姿を現してはいただけないでしょうか。
いえ、姿を現さなくともかまいません。
それならば私たちがここから去るまでの間――そうですね5分ほどでいいので
大人しくしてはいただけないでしょうか」
そして待つこと数秒。
反応がないのでこの場所から離れようかと思い始めたときでした、物影から少年が出てきたのは。
一見普通の少年……ですが彼を見たカレンさんが驚きの表情に変わりました。
「お知り合いで?」
「はい、学校の……クラスメイトです」
「なるほど。カレンさんのご学友の方ですか。
はじめまして。一応今は色々あってゼロと名乗らせていただいてます」
とはいってもルルーシュ君はこちら――というか私を怪しんでいるようです。
まぁ目の前に怪しい仮面とマントの男がいたら不信でしょうしね。
ええ、その気持ちは十分に分かります。
そんな彼と私の間にカレンさんが庇うように立ちはだかります。
「ルルーシュ……これは、その……」
「俺だって馬鹿じゃない。“ゼロ”と親しげに話しているってことは“そういうこと”なんだろう?
まさか黒の騎士団に参加していたとは予想外だったがな」
少し苛立たしげに言うルルーシュ君。
しかしまさかカレンさん以外にも“ゼロ”とやらを知っている人物がいらっしゃるとは。
もしかして若者の間では流行っている人物なのでしょうか?
私も教師という職業柄、時事には敏感なほうだと思ったのですがそうでもないようです。
しかしそれにしてもひどい顔色です。こちらも風邪でも引いたのでしょうか。
「大丈夫ですか? その、顔色が優れないようですが」
私の言葉に反応したのはルルーシュ君よりもむしろカレンさんでした。
先ほど以上に沈痛な表情を浮かべ、ルルーシュ君に話しかけます。
「ルルーシュ、その、放送は……」
「ああ、聞いたよ……くそっ!
こんなところで死んでいい人間じゃなかったはずだ、あいつは!」
そう言って拳を握り締めるルルーシュ君。
話から察するに先ほど放送で呼ばれた人間とは相当親しかったのでしょう。
「……ルルーシュはこれからどうする予定?」
「……まだ決めていないな。まずはスザクと合流するつもりだったから」
「……なら、私たちといっしょに来ないか。
私たちはこれからゲームを倒す同志を集めて回るつもりだ。それに協力して欲しい」
――はい?
ちょっと待ってください。それは初めて聞いたのですが
ルルーシュ君も訝しげな目でこっちを見ているじゃありませんか。
「……それはその……ゼロがそう言ったのか?」
「いえ、私は「ああ、ゼロはそう言ってくれた!!」」
いえ、言ってません! 言ってませんよそんなこと!
何なら前回を読み直して頂いても結構です!
「ゼロは言ってくれた。『貴女の目的に力をお貸しすることにしましょう』と。
私の――いや、黒の騎士団は『すべての武器を持たないものの味方』だ。
だからこのゲームに巻き込まれたお前みたいな人々を助けるために私たちは活動しようと思っている!」
……どうやら彼女の中で最早それは決定事項のようです。
こちらも『貴女の目的に力をお貸しすることにしましょう』と言ったことと
『ゼロを演じきる』と決めたことは事実なので下手に反論出来ないじゃあないですか!
ルルーシュ君も何か考え込んでないで異論や反論の一つでも言ってくれればいいのですが……
「……そうだな、悪くない考えかもしれない。
どちらにしろこのゲーム中で確実に信用できる人間はカレンぐらいしかいないしな。
って、ちょっと待ってください! 貴方も何故賛成しているのですか!
「それじゃあ……」
「ああ、“何の力もない”学生だが
スザクの敵を討つため……このふざけたゲームを潰すために協力させてくれ、ゼロ」
そう言って右手を差し出してくるルルーシュ君。
ああ……ここで今更断れるわけもありません。諦めて大人しく右手を差し出すこととしましょう……
「はい……よろしくお願いします……」
流されるままに他人を演じることになったと思ったら、いつの間にか勝手に期待される始末。
しかもその期待が偶然の出会いによって2倍に増えてしまいました。
ああっ、期待が、期待が重い!
大体この世の中は期待されるとろくなことがないのです!
・『出来る新人』というレッテル
・『ここでボケて!』というネタ振り
・好きな作品のアニメ化(つ○き○、デ○ンベ○ン……etc)
・好きなシリーズの続編(Gダ○ガイオー、スター○ーシャ○3……etc)
・サッカー日本代表(急にボールが来たので)
嗚呼、絶望した!
過度な期待を背負わせる少年少女たちに絶望した!
* * *
一人頭を抱えるゼロの隣でカレンは決意する。
その発端となったのは放送で『枢木スザク』の名が呼ばれたことだった。
放送で名前を呼ばれた枢木スザク。
名誉ブリタニア人にして軍の新型KMFのパイロット。
自分たち黒の騎士団にとっては目下最大の障害の一つであった。
その男が死んだのだ。
ゼロの――黒の騎士団の目的からすれば喜ぶべきことに他ならない。
事実、放送でスザクの名前が呼ばれた瞬間、どこか安心した気持ちがあった。
これでゼロの障害が一つ減った、と。
だが自分にとっては敵でも目の前のルルーシュにとってはそうではない。
何時も何処か飄々としていた彼が人前であそこまで激しい感情を露にしたことがあっただろうか?
――いや、ない。つまりそれだけ大きかったのだ。
ルルーシュ・ランペルージにとって枢木スザクという存在は。
そう、自分にとっての母やゼロのように。
そう考えると心のどこかとはいえ喜んだ自分がひどく醜く感じてしまった。
だから決意する。この闘いに巻き込まれた力なき人々を私が守ろう。
そして出来うる限り行動を共にして、ルルーシュを守ろう。
彼をあの平和な学園生活に返すことがせめてもの罪滅ぼしになると信じて。
* * *
ルルーシュは思考する。
落ち着け。冷静になれルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
期せずして偽ゼロと合流してしまったが
考えようによってはこれで堂々と常時監視下におけるということでもあるのだ。
状況は悪いと言わざるを得ないがまだ最悪ではない。
あの時、出て行かずに二人が離れるのを待ち、別行動を取るという手はあった。
だが多少のリスクを犯してでも“ゼロの衣装”を手に入れておきたい理由がある。
漆黒の仮面にマントといったゼロの出で立ちは初めて見た者に強い猜疑心を抱かせる。
だが最初の猜疑心が大きければ大きいほど自身の指揮が成功したときの信頼も強まる。
それは黒の騎士団で実証済みだ。
また、反主催のシンボルとしても有効に働いてくれるに違いない。
だが不安要素も勿論ある。
最も大きいのが目の前の“偽ゼロ”だ。
実際に会話を交わしても目の前のゼロを名乗る男の真意は読めない。
とりあえずスタンスは反主催のようだが、仮面の裏側で何を考えているか分かったものではない。
その証拠に仮面の下からでも俺の目を決して見ようとはしなかった。
ギアスのことを知っているとは思えないが、予想以上に用心深い相手ではあるようだ。
そしてもう一つの不安要素が“時間”である。
もし仮にこれから先、このまま誰か他人に出会ってしまえば
その他人にとっては『ゼロ』=『袴にマント姿のあの男』と認識されるのである。
その後、自分がマントと仮面を奪い返し、ゼロを名乗ったとしても
不信の目で見られるのが関の山だ。
ゼロに心酔しているカレンならばともかく他の人間ではそううまくはいくまい。
つまりそれはこれから先、何としても他人に会うまでに偽ゼロの正体を暴き、
――場合によってはギアスを用いてでも――その真意を問いただし、
ゼロの衣装を奪い返すことが最優先事項ということだ。
だがここで人気のない方向へ誘導するのは明らかに不自然だ。
まずは二人の要求を聞き出し、それをかなえた後、すかさず適当な理由をでっちあげ人気のない方向
――ここからすれば南の方角にある森だろうか――に誘導し、行動に移す。現状ではこれがベストな選択だろう。
「……ところで、二人はこれからの具体的な行動案は?」
「特には決めていないのですが。まぁこの服を乾かさないと。
ええ、二人が別々のところに衣服が干せるぐらいの場所がベストですね」
仮面の下をカレンには見せたくないと言うことか。
フン、予想以上に用心深い男だ。やはり油断は出来ない。
だがそれならばここからでもいくつか民家が見える。
適当なところに侵入し、着替えさせればいいだろう。その後、適当な理由をつけて南下すれば良いだけだ。
――スザク、お前さえいればゼロの衣装など見切りをつけて行動を共にしたのにな。
だがスザクは死んだ。それは何故か。
誰か弱者を庇って死んだか、それとも誰かに騙され後ろからやられたか。
どちらにしろここで出会った“誰かのために”戦って死んだのだろう。
甘い――だがそれでも、
(でも俺はお前のそんなところに憧れていたし、好きだったんだ)
自分たちに負けず劣らずの生い立ちでありながら真直ぐに育った彼がまぶしかった。
『ブリタニアを内部から変えていく』などという自分以上の夢物語を大真面目に話す彼が腹立たしくもどこかで好ましかった。
だがスザクはもういない。このふざけたゲームに連れて来られたばかりに。
故にこんな馬鹿げたゲームを主催するロージェノムには相応の報いを受けさせねばなるまい。
俺はこの殺し合いを破壊し、ナナリーの元へ戻ってみせる!
(見守っていてくれスザク。お前の仇は俺が討ってみせる……!)
***
その決意は苛烈にして強靭。
ルルーシュ・ランペルージの主催者打倒の決意は親友の死に発端を発する怒りによってより一層強まったと言えるだろう。
だが、かつてあるガンダムファイターは言った。
怒りは人間から冷静な心を奪い去り、敵に多くのスキを与えてしまう事になるのだと。
その証拠が一つある。
この時点でルルーシュは“早くゼロの衣装を取り戻す”ということに拘るあまり、
『すでに民家に誰かがいる可能性』と『この時点で学校のほうから誰かが向かってくる可能性』を考慮していないのである。
静かな“怒り”に囚われたルルーシュ。
このことがどのような意味を持つのか、この時点ではまだ、誰も知りようがない。
【G-5/河川敷-川のほとり/一日目-朝】
【糸色望@さよなら絶望先生】
[状態]:絶望(デフォルト)、ずぶ濡れ
[装備]:ゼロの仮面とマント
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品(0~2個)
[思考]:1、カレンがあまりに不憫なので、ゼロとして支えながら正しい絶望へ導く
2、服を乾かしたい
【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:ずぶ濡れ
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、ワルサーP99(残弾16/16)@カウボーイビバップ、不明支給品(0~2個)
[思考]:1、ゼロを守る
2、ルルーシュも守る(ただしゼロが最優先)
3、服を乾かしたい
4、その後、仲間を集め、このゲームの主催者に立ち向かう
[備考]:スザクがランスロットの搭乗者であることを知っている時期(17話以降)からの参戦です。
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:精神的疲労(大)、頭部及び手先・足首に痒み
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、メロン×11@金色のガッシュベル!!
[思考]1:人に出会う前に“ゼロ”の衣装を奪い返す
2:このゲームをぶっ壊すための駒と情報を集める
[備考]:参戦時期は第13話以前。スザクがランスロットの搭乗者であること、マオの存在を知りません
偽ゼロ(糸色望)を警戒しています。
*時系列順で読む
Back:[[何が彼女を壊したか?]] Next:[[オトメのS・O・S]]
*投下順で読む
Back:[[何が彼女を壊したか?]] Next:[[オトメのS・O・S]]
|060:[[その名は絶望]]|糸色望|125:[[ミー君怒りの鉄拳]]|
|060:[[その名は絶望]]|カレン・シュタットフェルト|125:[[ミー君怒りの鉄拳]]|
|060:[[その名は絶望]]|ルルーシュ・ランペルージ|125:[[ミー君怒りの鉄拳]]|
**三つの心が一つにならない ◆DNdG5hiFT6
『――エドワード・エルリック、キャロ・ル・ルシエ、――枢木スザク』
その名前が呼ばれた瞬間、名簿片手に放送を聴いていたルルーシュは自分の耳を疑った。
(スザクが……死んだ……?)
脳裏に浮かぶのは、はにかむ様に笑う親友の笑顔。
「何故だ……どうしてお前が死ななければならない……!」
最高の親友。
多少甘いところもあるがいずれは最も大切な妹すら任せようと思っていた男。
幼少の頃の出会い、互いに世界を変えようと誓い合ったこと、そして時を経ての再会。
それらがフラッシュバックし、
そのたびにその身を削られるような悔恨の念が自分を責め立てる。
まるで半身を失ったかのような感覚――ああ、これが“絶望”でなくて何というのだろう。
「そこにいるのは誰だっ!」
だからそんな声がかけられてから初めて
ルルーシュは自分が地面にへたり込んでいることに気付いたのであった。
「出て来い! 10秒数える間に出てこなければ撃つ!」
***
放送を聞き終えた糸色望は大きく息をつく。
とりあえずは自分の知り合いの名前が呼ばれなかったからである。
が、カレンの表情が僅かに曇っていることに気付く。
この状況でそんな表情の意味するところは一つ。
「……お知り合いの名前が呼ばれたのですね」
「はい……」
「こういう場合どういっていいのか分かりませんが……ご愁傷さまです」
「……いえ、いつかは倒さなければいけなかった相手です」
「? それはどういう……」
望が詳しく聞こうとしたその時、近くのトイレの裏から何かが崩れ落ちるような音がした。
「そこにいるのは誰だっ!」
今までとはうって変わった機敏な動作でカレンがディパックから取り出したのは黒い鉄塊――ワルサーP99だ。
「出て来い! 10秒数える間に出てこなければ撃つ!」
硬直する“ゼロ”を尻目にカレンは鋭い視線を物陰に向けたまま銃を構える。
糸色望は絶望した。
背後で物音がしたと思ったらいつの間にかカレンさんが銃を構えているではないですか!
しかもどう聞いても物騒なこと極まりない台詞を口にしながら!
ハッ、いけませんよこの状況は!
・出てきたのが凶悪な殺人鬼⇒カレンさんがやられる⇒私の監督責任
・出てきたのが無害な一般人⇒カレンさんが誤射する⇒私の監督責任
どちらにしろ私の監督責任になってしまうではないですか!
教育者の責任問題が取りざたされている昨今、そんな時事問題に巻き込まれたくありません!
「ま、待ってくださいカレンさん!」
「何を悠長な! あそこに隠れているのが
この殺し合いに乗った輩だった場合どうするんですか!」
「(監督責任を追及されたくないので)私は貴女を危険な目に遭わせたくはないのです!」
「え……」
カレンさんの体から力が抜けたのをいいことに、後ろに追いやります。
カレンさんの顔が何やら赤いようですが風邪でしょうか。
まぁずぶ濡れですからね。この問題を素早く解決して着替えないといけません。
「……私たちはこの争いには乗っていません。
貴方も乗っていないのであれば姿を現してはいただけないでしょうか。
いえ、姿を現さなくともかまいません。
それならば私たちがここから去るまでの間――そうですね5分ほどでいいので
大人しくしてはいただけないでしょうか」
そして待つこと数秒。
反応がないのでこの場所から離れようかと思い始めたときでした、物影から少年が出てきたのは。
一見普通の少年……ですが彼を見たカレンさんが驚きの表情に変わりました。
「お知り合いで?」
「はい、学校の……クラスメイトです」
「なるほど。カレンさんのご学友の方ですか。
はじめまして。一応今は色々あってゼロと名乗らせていただいてます」
とはいってもルルーシュ君はこちら――というか私を怪しんでいるようです。
まぁ目の前に怪しい仮面とマントの男がいたら不信でしょうしね。
ええ、その気持ちは十分に分かります。
そんな彼と私の間にカレンさんが庇うように立ちはだかります。
「ルルーシュ……これは、その……」
「俺だって馬鹿じゃない。“ゼロ”と親しげに話しているってことは“そういうこと”なんだろう?
まさか黒の騎士団に参加していたとは予想外だったがな」
少し苛立たしげに言うルルーシュ君。
しかしまさかカレンさん以外にも“ゼロ”とやらを知っている人物がいらっしゃるとは。
もしかして若者の間では流行っている人物なのでしょうか?
私も教師という職業柄、時事には敏感なほうだと思ったのですがそうでもないようです。
しかしそれにしてもひどい顔色です。こちらも風邪でも引いたのでしょうか。
「大丈夫ですか? その、顔色が優れないようですが」
私の言葉に反応したのはルルーシュ君よりもむしろカレンさんでした。
先ほど以上に沈痛な表情を浮かべ、ルルーシュ君に話しかけます。
「ルルーシュ、その、放送は……」
「ああ、聞いたよ……くそっ!
こんなところで死んでいい人間じゃなかったはずだ、あいつは!」
そう言って拳を握り締めるルルーシュ君。
話から察するに先ほど放送で呼ばれた人間とは相当親しかったのでしょう。
「……ルルーシュはこれからどうする予定?」
「……まだ決めていないな。まずはスザクと合流するつもりだったから」
「……なら、私たちといっしょに来ないか。
私たちはこれからゲームを倒す同志を集めて回るつもりだ。それに協力して欲しい」
――はい?
ちょっと待ってください。それは初めて聞いたのですが
ルルーシュ君も訝しげな目でこっちを見ているじゃありませんか。
「……それはその……ゼロがそう言ったのか?」
「いえ、私は「ああ、ゼロはそう言ってくれた!!」」
いえ、言ってません! 言ってませんよそんなこと!
何なら前回を読み直して頂いても結構です!
「ゼロは言ってくれた。『貴女の目的に力をお貸しすることにしましょう』と。
私の――いや、黒の騎士団は『すべての武器を持たないものの味方』だ。
だからこのゲームに巻き込まれたお前みたいな人々を助けるために私たちは活動しようと思っている!」
……どうやら彼女の中で最早それは決定事項のようです。
こちらも『貴女の目的に力をお貸しすることにしましょう』と言ったことと
『ゼロを演じきる』と決めたことは事実なので下手に反論出来ないじゃあないですか!
ルルーシュ君も何か考え込んでないで異論や反論の一つでも言ってくれればいいのですが……
「……そうだな、悪くない考えかもしれない。
どちらにしろこのゲーム中で確実に信用できる人間はカレンぐらいしかいないしな。
って、ちょっと待ってください! 貴方も何故賛成しているのですか!
「それじゃあ……」
「ああ、“何の力もない”学生だが
スザクの敵を討つため……このふざけたゲームを潰すために協力させてくれ、ゼロ」
そう言って右手を差し出してくるルルーシュ君。
ああ……ここで今更断れるわけもありません。諦めて大人しく右手を差し出すこととしましょう……
「はい……よろしくお願いします……」
流されるままに他人を演じることになったと思ったら、いつの間にか勝手に期待される始末。
しかもその期待が偶然の出会いによって2倍に増えてしまいました。
ああっ、期待が、期待が重い!
大体この世の中は期待されるとろくなことがないのです!
・『出来る新人』というレッテル
・『ここでボケて!』というネタ振り
・好きな作品のアニメ化(つ○き○、デ○ンベ○ン……etc)
・好きなシリーズの続編(Gダ○ガイオー、スター○ーシャ○3……etc)
・サッカー日本代表(急にボールが来たので)
嗚呼、絶望した!
過度な期待を背負わせる少年少女たちに絶望した!
* * *
一人頭を抱えるゼロの隣でカレンは決意する。
その発端となったのは放送で『枢木スザク』の名が呼ばれたことだった。
放送で名前を呼ばれた枢木スザク。
名誉ブリタニア人にして軍の新型KMFのパイロット。
自分たち黒の騎士団にとっては目下最大の障害の一つであった。
その男が死んだのだ。
ゼロの――黒の騎士団の目的からすれば喜ぶべきことに他ならない。
事実、放送でスザクの名前が呼ばれた瞬間、どこか安心した気持ちがあった。
これでゼロの障害が一つ減った、と。
だが自分にとっては敵でも目の前のルルーシュにとってはそうではない。
何時も何処か飄々としていた彼が人前であそこまで激しい感情を露にしたことがあっただろうか?
――いや、ない。つまりそれだけ大きかったのだ。
ルルーシュ・ランペルージにとって枢木スザクという存在は。
そう、自分にとっての母やゼロのように。
そう考えると心のどこかとはいえ喜んだ自分がひどく醜く感じてしまった。
だから決意する。この闘いに巻き込まれた力なき人々を私が守ろう。
そして出来うる限り行動を共にして、ルルーシュを守ろう。
彼をあの平和な学園生活に返すことがせめてもの罪滅ぼしになると信じて。
* * *
ルルーシュは思考する。
落ち着け。冷静になれルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
期せずして偽ゼロと合流してしまったが
考えようによってはこれで堂々と常時監視下におけるということでもあるのだ。
状況は悪いと言わざるを得ないがまだ最悪ではない。
あの時、出て行かずに二人が離れるのを待ち、別行動を取るという手はあった。
だが多少のリスクを犯してでも“ゼロの衣装”を手に入れておきたい理由がある。
漆黒の仮面にマントといったゼロの出で立ちは初めて見た者に強い猜疑心を抱かせる。
だが最初の猜疑心が大きければ大きいほど自身の指揮が成功したときの信頼も強まる。
それは黒の騎士団で実証済みだ。
また、反主催のシンボルとしても有効に働いてくれるに違いない。
だが不安要素も勿論ある。
最も大きいのが目の前の“偽ゼロ”だ。
実際に会話を交わしても目の前のゼロを名乗る男の真意は読めない。
とりあえずスタンスは反主催のようだが、仮面の裏側で何を考えているか分かったものではない。
その証拠に仮面の下からでも俺の目を決して見ようとはしなかった。
ギアスのことを知っているとは思えないが、予想以上に用心深い相手ではあるようだ。
そしてもう一つの不安要素が“時間”である。
もし仮にこれから先、このまま誰か他人に出会ってしまえば
その他人にとっては『ゼロ』=『袴にマント姿のあの男』と認識されるのである。
その後、自分がマントと仮面を奪い返し、ゼロを名乗ったとしても
不信の目で見られるのが関の山だ。
ゼロに心酔しているカレンならばともかく他の人間ではそううまくはいくまい。
つまりそれはこれから先、何としても他人に会うまでに偽ゼロの正体を暴き、
――場合によってはギアスを用いてでも――その真意を問いただし、
ゼロの衣装を奪い返すことが最優先事項ということだ。
だがここで人気のない方向へ誘導するのは明らかに不自然だ。
まずは二人の要求を聞き出し、それをかなえた後、すかさず適当な理由をでっちあげ人気のない方向
――ここからすれば南の方角にある森だろうか――に誘導し、行動に移す。現状ではこれがベストな選択だろう。
「……ところで、二人はこれからの具体的な行動案は?」
「特には決めていないのですが。まぁこの服を乾かさないと。
ええ、二人が別々のところに衣服が干せるぐらいの場所がベストですね」
仮面の下をカレンには見せたくないと言うことか。
フン、予想以上に用心深い男だ。やはり油断は出来ない。
だがそれならばここからでもいくつか民家が見える。
適当なところに侵入し、着替えさせればいいだろう。その後、適当な理由をつけて南下すれば良いだけだ。
――スザク、お前さえいればゼロの衣装など見切りをつけて行動を共にしたのにな。
だがスザクは死んだ。それは何故か。
誰か弱者を庇って死んだか、それとも誰かに騙され後ろからやられたか。
どちらにしろここで出会った“誰かのために”戦って死んだのだろう。
甘い――だがそれでも、
(でも俺はお前のそんなところに憧れていたし、好きだったんだ)
自分たちに負けず劣らずの生い立ちでありながら真直ぐに育った彼がまぶしかった。
『ブリタニアを内部から変えていく』などという自分以上の夢物語を大真面目に話す彼が腹立たしくもどこかで好ましかった。
だがスザクはもういない。このふざけたゲームに連れて来られたばかりに。
故にこんな馬鹿げたゲームを主催するロージェノムには相応の報いを受けさせねばなるまい。
俺はこの殺し合いを破壊し、ナナリーの元へ戻ってみせる!
(見守っていてくれスザク。お前の仇は俺が討ってみせる……!)
***
その決意は苛烈にして強靭。
ルルーシュ・ランペルージの主催者打倒の決意は親友の死に発端を発する怒りによってより一層強まったと言えるだろう。
だが、かつてあるガンダムファイターは言った。
怒りは人間から冷静な心を奪い去り、敵に多くのスキを与えてしまう事になるのだと。
その証拠が一つある。
この時点でルルーシュは“早くゼロの衣装を取り戻す”ということに拘るあまり、
『すでに民家に誰かがいる可能性』と『この時点で学校のほうから誰かが向かってくる可能性』を考慮していないのである。
静かな“怒り”に囚われたルルーシュ。
このことがどのような意味を持つのか、この時点ではまだ、誰も知りようがない。
【G-5/河川敷-川のほとり/一日目-朝】
【糸色望@さよなら絶望先生】
[状態]:絶望(デフォルト)、ずぶ濡れ
[装備]:ゼロの仮面とマント
[道具]:デイパック、支給品一式、不明支給品(0~2個)
[思考]:1、カレンがあまりに不憫なので、ゼロとして支えながら正しい絶望へ導く
2、服を乾かしたい
【カレン・シュタットフェルト@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:ずぶ濡れ
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、ワルサーP99(残弾16/16)@カウボーイビバップ、不明支給品(0~2個)
[思考]:1、ゼロを守る
2、ルルーシュも守る(ただしゼロが最優先)
3、服を乾かしたい
4、その後、仲間を集め、このゲームの主催者に立ち向かう
[備考]:スザクがランスロットの搭乗者であることを知っている時期(17話以降)からの参戦です。
【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:精神的疲労(大)、頭部及び手先・足首に痒み
[装備]:なし
[道具]:デイパック、支給品一式、メロン×11@金色のガッシュベル!!
[思考]1:人に出会う前に“ゼロ”の衣装を奪い返す
2:このゲームをぶっ壊すための駒と情報を集める
[備考]:参戦時期は第13話以前。スザクがランスロットの搭乗者であること、マオの存在を知りません
偽ゼロ(糸色望)を警戒しています。
*時系列順で読む
Back:[[何が彼女を壊したか?]] Next:[[オトメのS・O・S]]
*投下順で読む
Back:[[何が彼女を壊したか?]] Next:[[オトメのS・O・S]]
|060:[[その名は絶望]]|糸色望|125:[[ミー君怒りの鉄拳]]|
|060:[[その名は絶望]]|カレン・シュタットフェルト|125:[[ミー君怒りの鉄拳]]|
|060:[[その名は絶望]]|ルルーシュ・ランペルージ|125:[[ミー君怒りの鉄拳]]|
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: