矛盾螺旋◆PV.nOaaCrQ
私――
福路美穂子――はゆれる車の中で後ろを振り返る。
「おぉ…この笛吹いてみてもいいムギちゃん!」
「ここだと駄目だと思うわ唯ちゃん」
「うぅ~」
平沢さん達は本当に楽しそうに話している。
それは私がこのゲームの中で守らなければいけないもので、それを見て私はさらに決意を固める。
あんな悲しみを味わうのは私だけでいい…。これ以上誰かを失って傷つくのは誰であろうと嫌だから。
そして次に私は運転席へと視線を移す。
「………」
何も喋らずに運転している船井さん。
私の考えは多分、いや絶対あってるだろう。
この人は信用できない…。私たちを道具としてか見てない船井さん。
もし、この人が唯ちゃんや紬ちゃんを傷つける真似をしたなら…その時は。
そう思い私は自分のバックの中に入っている魔法のビンを思い浮かべる。
そう、その時は…私が魔法を手に入れて船井さんを殺す。
昔の私では絶対思わなかった殺すって事を、普通に考えるようになった今の私は本当に変わったと思う。
だけどそれは仕方ないこと。
それに、その変化は悪いことじゃない。
きっと前までの私だったらこの狂気にただ呑まれていただろうから。
だけど今の私は違う。この狂気を力に変えて前へ前へと進んでいく。
こんな私をみたら華菜や上埜さん、小十郎さんはどう思うかな…。
きっと喜んだりはしないと思うけど。狂気に呑まれるよりは、完璧に狂うよりは、3人に恥じない生き方ができるはずだから。
私はもう……立ち止まらない。
そして、また平沢さん達の方を見ると平沢さんが何か辛そうな顔をして顔を赤らめながらこう言ってきた。
「と、止めてください!」
★★★★★★★★★★★★
私――
琴吹紬――は隣に座っている唯ちゃんと支給品を見せ合っていた。
私の支給品の中にはあの笛のほかにはティーセットしか無かった。
だけど、そのティーセットは私たちにとっては思い出のあるもので少し元の場所について考える。
そういえば……私たちが居なくなって皆心配してるわよね……。
梓ちゃんやさわちゃん先生はどうしてるのかしら…。
「おぉ…この笛吹いてみてもいいムギちゃん!」
私がそう考えていると私の隣で、支給品を見ていた唯ちゃんのツボにはまったのかあの笛に興味を示してきた。
その笛を見たとき私は多分悲しい顔をしただろう。
私にとっては苦く悲しい思い出がある笛。
私の命を救ってくれた笛で、私の手から命が零れおちたこと思い出させられる笛。
撫子ちゃんには謝りたいのに、…もう謝れない。
私は覚えている、撫子ちゃんの最期を。撫子ちゃんが最期になにを願ったかを…。
暦お兄ちゃんと呟いた時の顔を。だんだん小さくなっていく撫子ちゃんの体を。会いたかったのに会えなかった撫子ちゃんの悲しみを。
だけど私はきっとここで泣いちゃいけない。
それは撫子ちゃんに失礼だから。
そして…唯ちゃんに悪いから。
唯ちゃんは私を元気づけようとしていつも以上に元気に話しかけてくれる。
それが分かっているから私もいつも通りを演じて唯ちゃんと話す。
唯ちゃんは一人生き残った、ううん違う。生き延びてしまった私に対して意味があるといってくれた…。
あの
浅上藤乃の狂気に満ちた殺戮劇から一人生き延びた私を。
最初に加治木さんが死んで、撫子ちゃんが撃たれて。その後、あの小さな子が……そういえばあの子はどうしたんだろう。会えたらお礼を言いたい。私が助かったのはあの子のおかげだから。
でも、その後撫子ちゃんを殺してしまった私。
そんな私を唯ちゃんは意味があると言ってくれた。
その時、私は思った。
唯ちゃんは、軽音楽部の皆はこの島でもきっと変わらない…。
唯ちゃんは私を殺そうとしない。絶対裏切らない。
そう思った私はちょっと不安だったけど船井さんも信じることにした。
美穂子さんは見たとおりのいい人だと信じることにした。
そう…私は信じている。
そう考えていた私の隣で急に唯ちゃんが辛そうな感じにしていたので、私はいつも通り どうしたの? と言おうすると
「と、止めてください!」
と唯ちゃんが言う方が早かった。
急にどうしたんだろう…。
船井さんもそう思ったのか唯ちゃんに聞いてくる。
「あ、どないしたんや?」
「そそ、そ、その……」
顔を赤らめてモジモジしている…。
あぁ、なるほどそういうことね。
きっと、唯ちゃんは…
「と、トイレ!」
に行きたかったのね。
唯ちゃんがそう言ったのがちょうど円形闘技場の近くだったので、きっとあるだろうと言うことで私たちは円形闘技場まで行くことになった。
「ついでに調べておくか。エンジンは…かけたままでいいやろ」
そう船井さんが言って美穂子さんも一緒に調べるらしく、皆で車を降りて中に入りました。
「ヤッホー!…木霊が来ないねムギちゃん」
「ふふ。ここは確かに広いけど山じゃないから」
観客席の通路を歩いている私の隣で唯ちゃんが、まるで山にいるかのように大声でそう叫ぶから私は少し笑った後唯ちゃんに突っ込みをいれる。それに、そんな大声で叫ぶより今はまず。
「トイレにいかなくて平気なの?」
「うおーっと、そうだったトイレ、トイレっと」
「もう、唯ちゃんったら」
そんないつもの唯ちゃんらしい行動に私はまた笑う。
そうして、私と唯ちゃんはトイレの方に向かいながらそんなことをいつも通り話していた。
船井さんと美穂子さんは何かないか調べてくるらしくどこかへ行ってしまった。
「あ、あれじゃない?」
「おぉー本当だ!」
円に沿って歩いていると、トイレを発見したので唯ちゃんがこう聞いてきた。
「ムギちゃんは?」
「私は……いいわ」
そう、紬は唯の誘いを断った。
一緒にトイレに行かない?という日常において何回もあるその誘いを。
自分は用がなくても友達とお話しするために、実際に自分もしたいときなど色々と理由はあるだろうが、紬は断った。
もちろん日常なら断ることなど何度もあるだろう。
それは当り前だ。しかしここは日常とは一番かけ離れた場所。
狂気と疑心暗鬼が渦巻く悪魔の島。
しかし、トイレ1つで何が変わるのか?
いくら非日常でもそんなことはそうそう起きはしないだろう。
そう…そうそうは起きはしないだろう。
「分かった!あ、じゃあバック持っててくれる」
元気よく言って唯ちゃんは私にバックを手渡しトイレへとはいって行った。
私はというとそんなにしたいわけでもなかったし。
ちょっと疲れたからここで座ってようかなと思ったのも理由だ。
それにしても、唯ちゃんが出てくるまでなにしてようかしら。
特にこれと言ってすることはないし……。
悪いけど……勝手に唯ちゃんのじゃんけんカード見ても平気かな。
見せ合いっこした時は特に気にならなかったけど、なんか変わった材料みたいだし…。
後から気になってきちゃった。
そう思った私は唯ちゃんのバックの中身を見てみることにした。
「えっと…カードは」
バックの中からカードを出そうと私は手さぐりに探してみるけど、なかなか見
つからない。
どこにあるのかしら…もしかして意外と下の方?
なかなか見つからないし、逆さにしてみようかしら…。
なら、一度手を出さなきゃだめね。
そう思い手を出してみると一緒に名簿も落ちてきた。
「あ、そういえば禁止エリアって…」
そう、禁止エリアって言うのがあったはず。
知らないで行動して皆の足をひっぱちゃいけないものね。
禁止エリアかいてあるかしら。
そうして私は拾った唯ちゃんの名簿を見てみる。
「あ、あった」
名簿の後ろに書かれていた禁止エリアを覚えた私は、バックに戻す。
違う、正確に戻そうとした。
だけどその前にとても見知った名前が目の端に映った。
なんであの子の名前が……?
そして、私はとっさに私は禁止エリアの方に名簿を裏返す。
何故だろう…自分の心臓がとても煩いのが分かる。
まさかきっと見間違いよ。
なのに、なんでこんなに緊張しているんだろう…。
こんな大事なこと唯ちゃんが隠しているはずがない。
ね、だからその名簿を見て私。
だって船井さんや美穂子さんも、何も死亡者の数にたいして言わなかったじゃない。
まさか皆がグルで私を……。
殺そうとしている?
そ、そんなはずはない。唯ちゃんは裏切らない。信じなきゃ!
そ、そう。私は…ゆ、唯ちゃんを信じている!
本当にそう言い切れる?
言いきれる!
だから、この名簿も見れるわ。そうでしょ私?
「はぁ、はぁ」
息遣いが自然に荒くなってくる。
だけど、これは確かめないといけないことだから…。
そして私はこう思うの。あぁ、やっぱり見間違いだったって。
覚悟を決めた私は思い切って名簿を裏から表に返す。
そう見間違いだったって思いたかったの。
きっと、見間違い。そうに違いない。
そんな希望は、幻想は打ち砕かれて。
「どうして…唯ちゃん?なんで……梓ちゃんの事を隠していたの……?」
だってそこには、希望や甘い幻想を打ち砕く真実があったから。
何でよ…唯ちゃん。どうして隠していたの……。
ねぇ?どうしてよ……。
もしかして、唯ちゃんはまだなにか隠している…?
いや、唯ちゃんだけじゃない…船井さんや美穂子さんも?
きっとそうだ。そうに違いない…。
そう思った私の行動は自分でも驚くほど早かった。
「唯ちゃんが何か隠しているかもしれない」
そう言って私はバックを逆さにして黙々と中の物を確認する。
「じゃんけんカード…違う。これは全部全員に配布される支給品だから違う。薬品は特に怪しく……えっ」
唯ちゃんこんなの持ってきてたっけ?
そういえば、何か薬局出る時何かバックに入れてたけど……何で睡眠薬なの。
これで、誰を眠らせるつもりだったの?ねぇ、唯ちゃん…。
唯ちゃんはこんなの使わないし、私も使わない。
もしかして、船井さんたち?ううん、それなら自分で持ってくはず。
なら、なんで唯ちゃんは持ってたの!
もしかして、私を眠らせるため?
何のために…。
そんなの分かっている。それは……。
唯ちゃんに限ってそれは無い……。
ねぇ、私?本当にそう言い切れる?
そういえば、唯ちゃんはいつもと変わってなかった。
でも、いくら唯ちゃんでも全く変わらないなんておかしい……。
もしかしてあの時もう唯ちゃんは変わってた?
そう、きっとそうに違いない。そして、3人で私を…私を…殺す気だったんだ。
梓ちゃんの名前を言わなかったのは、聞いて驚いた私が逃げ出さないため?
そうか…そうだったの?
本当にそうなの…。でも、きっとそうだ!
あぁ、でもそうするとどうしよう。
私はどうすればいいの…。
「と、とにかく逃げなきゃ!」
そう、このまま居たら殺されてしまうから。
逃げなきゃ。逃げなきゃ、逃げなきゃ。
でも、どうやって。走っても私じゃ追いつかれてしまうかもしれない…。
あ、そうだ車がある。
あれに乗ればいいんだ。詳しいことは分からないけどアクセルを踏めばいい。
そうだ、なら…急がなきゃ。嘘つきの唯ちゃんが…私を殺しに来る前に。
そして、紬は全速で車まで駆けていく。
いつもの彼女ならこんなことを思わないだろう。
だけど彼女の精神はすり減っていた。
唯に癒された心は、唯自身が紬の為についた嘘によってまた傷ついた。
そして追いつめられた心は、唯が持ってきた睡眠薬によってさらに追いつめられる。
唯自身は単に紬がよく眠れるようにと、ただ紬を気遣っただけなのに。
しかし紬の心は負のスパイラルへと陥っていた。そんな紬にそう判断できなかったのは仕方がないだろう。紬は徐々に精神を蝕まれていたのだから……この会場に仕掛けられた狂気を促進させる力によって。
車を動かすにはアクセルを踏めば良いのよね?
あぁ、良く分からないけどとにかく踏まなきゃ。
ここから……逃げなきゃ!
そうして車は動き出す。
元来た道を逆走しながら最高速で走っていく。
その先に待つものは希望か絶望か……。
今はただただ動いていく。
★★★★★★★★★★★★★★
彼――魔術師
荒耶宗蓮――は今、宇宙開発センターから薬局へと来ていた。
荒耶は現在まで動く予定がなかったのだが、そうもいかなくなっていた。
そうそれは少し前の話。
「さて私はどうするか…」
積極的に殺しあいを行うつもりはない。
ならここで大人しくしているか…。
「むっ……」
後ろに振り向くとそこには鳴り響く電話があった。
この電話…出るべきか出ないべきか…。
どちらでも構わないのだが…。
ん、そういえば電話と言えば。
遠藤が言っていたな。
伝えたいことがあるときは電話するから、なるべく電話がある施設にしろだったか。
そうなるとこれはその電話か…。
なら出るか。
そう思い私は鳴り響く電話をとった。
『おはようございます荒耶宗蓮』
電話越しからは機械的に喋る少女の声が聞こえてきた。
インデックスか…。そういえば彼女の世界から連れてきた者が二名死んでいたな。
しかし今の彼女にはそれを悲しむことはないだろうが。
世界が違くとも魔術に対する秘匿義務は同じということか…。
少々余計なことを考えすぎか。
「挨拶はいい。用件はなんだ?」
私はなぜ電話してきたかを彼女に尋ねる。
『はい。あなたに頼みたいことがあります』
「何だ?」
『この殺しあいに積極的になってください。今このゲームでは乗っているものが少なくなっています。このままだとゲームの進行が妨げられる恐れがあります。だから私たちは貴方に殺してもらいたい、もしくは上手く殺しあいに乗るものを作り上げてください』
要するに私に参加者たちを殺すか、殺しあいに乗るように扇動しろということか……。
早く
両儀式の元へと向かいたいものだが…。
『貴方の死の観察と蒐集という目的にも合うと思われます』
ふむ…。
やはり…な。主催者側にその理由で通している以上私は従うしかないか。
「しかしどうすればいい」
『貴方の支給品。いえ、
中野梓の支給品の中にパソコンが入っています。そちらにその場に適したデータを送りますのでそれ利用してください。それに簡単なご褒美ぐらいならこちらで用意します』
「分かった。が、ここまでするならお前たちがやった方が早いのではないか」
『私たちはあの方との約束でゲームを自分たちの手で直接動かしてはいけないことになっています。なので、こうして貴方に頼んで間接的に介入しています』
「そうだったな…。了承した」
『では、今度から連絡はパソコンにしますのでくれぐれも電力と紛失・故障などに気を付けてください』
切れたか…。
さて頼まれた以上はその通りに動かなくてはな。
両儀式は今のところは大丈夫だろう。
なら…………今は南だ。北へ向かうとしよう。
そして現在へと戻る。
インデックスに言われた荒耶は北へと向かい薬局へとついたというわけだ。
「参加者がどこに居るかでも探すか」
彼だけに許されたこの会場における能力を使う準備に入る。
いや、入るつもりだったと言うべきか。
「この音は…」
そう、どこからともなく聞こえてくる爆音。
その音はだんだんこちらに向かってきている。
「あれか」
荒耶が見据える先には猛スピードで走ってくる一台の車。
そして、減速することもなくそれは荒耶へと近づいていく…。
★★★★★★★★★★★
「何で、何で唯ちゃんが…何で…」
アクセルだけを踏みながら紬は車を動かしていた。
前を見ずに下を向きながら、何でと繰り返しながら…。
何で、本当にどうして…?
唯ちゃんに何があったの。あの、唯ちゃんが誰かを、友達を殺そうとするまで追いつめられるなんて…。
分からない…分からないわ。
そう考えてたからだろうか、紬が前を向いたときすぐ目の前に荒耶が立ってたことに気付かなかったのは。
「あ……」
このままじゃぶつかっちゃうな…………。
その時の私はそれを他人事みたいに感じていた。
そして私はそのまま反射的に目をつぶる。
車が何か固いものにぶつかる音がして私はようやく自分がなにをしたかに気付く。
そして私が目を開けるとそこには吹き飛ばされた
「え…」
男が居なかった。
いや男はいたのだ。
居なかったのは“吹き飛ばされた”男だ。
そして居たのは“車がへこんでいるのに何ともなく立っている”男が居た。
それを見たとき紬は思った。
この男は危険だ。浅上藤乃以上に危険だ。
「い、嫌…」
この人は怖い。絶対私を殺そうとしている。
逃げなきゃ、死にたくない、逃げなきゃ。
紬の頭にはその2文字だけが浮かびあわてて車を出る。
そして、そのまま走って逃げようとすると…。
「きゃっ!」
こけた。
それはもう盛大に。
何で、何でこんな時にこけるの?
早く、早く逃げなきゃいけないのに。
立って、早く、そして逃げなきゃ!
そうしてもう一度立ち上がり逃げようとする彼女に魔術師はやっと口を開く。
「どこへ行く。琴吹紬」
その声は私がいままで聞いたどの声よりも無機質で、私の足は恐怖のあまり体を支えるという事を放棄して、私の体はもう一度地面についた。
「あ、あぁ…。や、いや。嫌、来ないで来ないで来ないで」
もう汚れたって構わない。
私は目の前の男の方に手を振り回し、後ろへと下がる。
なのに目の前の男は普通に近づいてきて。
とても怖くて。
もういつの間にか下がる事さえもできなくて。
私はこれから何が起きるかなんてどうでもよくなってきた。
そういえば…何で私の名前を知ってたんだろう。
でも、今ではもう良いかな…。
そして、私は目を閉じる。
自分が何で殺されるかなんて、もうどうでも良いことだから。
……………あれ?
まだ私死んでない……。
どうして?もしかして殺さずに居なくなった?
そう不思議に思った私は目を開ける。
「ひっ!」
だけどそこにはやっぱり変わらず男が居た。
なんで居なくなってないの。
いや、私はまだ死にたくない…。
「琴吹紬」
「は、はい」
本当になんで私の名前を知っているの。
何で、何で。
その言葉が頭を埋め尽くす。
本当にこの島に来てから何でつづきだ…。
何で私たちがこんな殺しあいに巻き込まれなくちゃいけないの?
何で私があんな怖い目にあわなきゃいけなかったの?
何で私の力がもう少し強くなかったの?
何で梓ちゃんが死んじゃったの?
何で……唯ちゃんは私を殺そうとしたの
「一度しか聞かん。琴吹紬」
この人は私に何か聞くために殺さなかったんだ…。
この人は何を聞くつもりなんだろう。
私が知っている事なんて大したことないのに…。
「生きたいか?」
いきたいか?
生きたいか?って事。
そんなの決まっている。
「い、生きたいです」
そう、生きたい、死にたくない。
死ぬって事がとても痛いことだって事を私は加治木さんの断末魔で知っている。
死ぬって事が願いが、希望が無くなるって事を私は撫子ちゃんの最期で知っている。
死ぬって事はもう会えないって事を私は浅上藤乃の殺しに乗る理由から知っている。
だから……私は死にたくない!
何があっても絶対。死ぬのだけは嫌。
そうよね…やっとわかった。唯ちゃんが何で私を殺そうとしたか。
そんなの簡単だ……。唯ちゃんはただ死にたくなかった。
一緒に殺そうとした船井さんや美穂子さんも死にたくなかった。
だから私を殺そうとした。
すごい簡単な事だったんだ。
なんだろ私すごい馬鹿みたい。そんな簡単な事に気づかないなんて。
そうよね皆死にたくないもの。
きっとりっちゃんや澪ちゃんもそう、皆死にたくないから殺す。
そんなの誰でもわかる当たり前の事じゃない…。
あぁ……私、本当に何で今まで気付かなかったんだろう。
「それが答えか。琴吹紬」
「はい。私は死にたくありません」
だってこの人は私をいつでも殺せるんだから。
嘘をついても仕方がないもの。
「ならお前は今から……5人いや4人殺せ。お前はもう1人殺していた」
殺せ。死にたくないというなら殺せ。うん、すっごい当たり前の事。
だけど私にできるのかしら。なんも力がない私が4人も。
ねぇ、それに唯ちゃん達を私は殺せるの?
殺されそうになったからって殺せるの?
大事な大事な友達を……。
「そんなの無理です。私じゃ無理です。友達を殺せません……」
そう、私じゃ無理…。
死にたく無いけど、なんも力が無い私が4人も殺せるはずがない。
それにもう皆に二度と会えなくなるなんて無理。
「もし、このノルマが達成できたら30億ペリカでどうだ。それに殺すと考えなければいい。救うと考えるんだ」
「す、救う…」
私が…皆を救う?
「そうだ。お前は他の奴を救うんだ。この苦しみから。そして後で蘇らせればいいだろう」
あ、そっか…。30億ペリカが貰える……。
ということは10億ペリカと合わせて40億ペリカ!
私が殺す4人に撫子ちゃんに唯ちゃん、りっちゃん、澪ちゃん、梓ちゃん、憂ちゃん。
全員が生き返る。なら……私は殺しても何も悪くない。
だって私は皆が狂ってしまっても、辛くても殺すことで助けてあげるんだから。
そう他の皆はきっと私を殺すだけで終わるわ。
でも、私は違う。皆を生き返らせる!
凄いわ…。ただ自分だけが生き残りたいから殺すんじゃなくて皆の為に殺す!
唯ちゃんや船井さん、美穂子さんや浅上藤乃とは違う。
私は……皆の為に殺すの。
皆を生き返らせるために殺すの!
私は……皆を救うの!
「あ、ありがとうございます!私、頑張りますね。きっとみんなを救ってみます。あ、そういえば貴方の名前は?」
そうして紬はさっきまで怖がってたと思えなくらいの笑顔で魔術師に答え問いかける。
そしてその問いに魔術師はこう答える。
「私は魔術師荒耶宗蓮。このゲームの主催者の1人だ」
この人はこのゲームの主催者…。私たちがこんな目にあった原因……。
ふふふ、でももうどうでもいいわ。私にはやるべきことがあるもの。
これで撫子ちゃんにも謝れる…。これで私はなんも悪くなくなる…。
あ、でも……
「私は殺すものを持っていないのですが…」
「ならこれをやろう」
そう言って荒耶さんが出してきたのはただのスティックシュガーだった。
この人は私をなめているのだろうか?
「あの…これでどうすれば」
「それの中身はシアン化カリウム。分かりやすいうと青酸カリだ」
青酸カリ……ってよくテレビで出る毒物よね。
あのアーモンド臭がするとかっていう。
「そのシュガーに入っている量は350mg。主に成人で致死量は100~300mg。それ10本全部渡そう。それだけあれば足りるだろう」
確かに毒薬なら私でも人を殺せる。
この人はなんて親切なんだろう。
私が皆を助けるのに協力してくれるなんて…。
「ありがとうございます荒耶さん」
私はスティックシュガーの型の青酸カリを受け取り頭を下げる。
「あぁ、では行け琴吹紬」
「はい!」
そして私は歩いていく。
唯ちゃん達の元へと、嘘つきの皆の元へと。
この毒薬でこの狂ったゲームから解放してあげるために。
紬はこれから自分が行う事に一つの使命感をもち歩き出す。
だからだろうか紬は気付かなかった。
後ろで魔術師が喋っている言葉に。
「哀れ…だな、琴吹紬。自分が抱いている矛盾にも気付かずに」
もし生き残って皆を生き返らせてもどうやって生還するのか?
そもそも生き返らせるために殺すという前提が間違いか…。
しかしこの巨大化した小川マンションと言える場所で正気を保つ方が難しかったか。
そう考え魔術師は紬から視線を外す。
もう興味の対象から外れた紬の行く先など魔術師には関わりのない事だから。
そして魔術師は今度は東へと足を進める。
★★★★★★★★★★★★★
「ふ、船井さん。ムギちゃんを追いかけなきゃ」
円形闘技場にて唯の声が響く。
「ちょい待てや。今はここで待つのが得策や」
それを抑えるかのように船井が喋る。
「どうしてですか船井さん」
唯を援護するかのように美穂子は船井へと問いかける。
「よう考えてみい。嬢ちゃんは車に乗ってたんやろ。追いつくはずがないわ」
この言葉を聞いて美穂子は思う。
一件正論だけどこの人の言葉の裏には無駄足を踏みたくない。
逆に足手まといが減って良かったってにじみ出ている。
だけど多分平沢さんはどこか流されやすい感じがあるから…。
「そ、そうですよね…」
「そうやろ。それにもう会えんとも限らんし今は城へ行こうや」
「は、はい…」
このままじゃここからはなれちゃう。
琴吹さんが帰ってくるかは分からないけど、でも少しでも可能性があるんだから。
「待ってください。ここで昼まで待ちませんか?」
「昼まで?帰ってくるかも分からんのにか」
やっぱり反対してきた。
だけど平気船井さんの案と私の案ならきっと平沢さんは。
「平沢さんはどうしたい」
「わ、私は待ちたいです」
頷いてくれるはず。
船井さんもここで私たちとわかれて大事な『駒』を失うのは避けたいはず。
だから船井さんはこれを承諾するしかない。
「…昼までやな」
「はい」
それに私は笑顔で答える。
さてと、これで何とか時間は稼げたけど琴吹さんは帰ってくるのかしら…。
帰ってこなかったら…平沢さんを連れて探しに行けばいい。
とにかくこの人にさえ気を付けていれば大丈夫なんだから。
矛盾はつづく何処までも。
螺旋のように何処までも。
平沢唯は皆を探したい生還したいと言いながら、誰かに任せっきりという矛盾を抱え。
福治美穂子は自分と同じ悲しみを味あわせないから殺人者を殺す、だけどその人を殺して悲しむ人がいるのを考えないという矛盾を抱え。
琴吹紬は誰か生き返らせるために殺すという矛盾を抱え。
とても似ていて、対極にある二つの考えを抱く少女たちは矛盾の螺旋の果てに何処へ向かう……?
【D-4/円形闘技場/一日目/午前】
【平沢唯@けいおん!】
[状態]:健康、紬が心配、テンション↓
[服装]:桜が丘高校女子制服(夏服)
[装備]:ジャンケンカード(チョキ)@逆境無頼カイジ
[道具]:デイパック、基本支給品(+水1本)、ジャンケンカード×十数枚(グーチョキパー混合)、不明支給品x0-2(確認済み) 、薬局から持ってきた薬品多数@現地調達(内一つは睡眠薬)
[思考]
基本:みんなでこの殺し合いから生還!
1:ムギちゃん……
2:あずにゃん……
2:船井さんを頼りにする。
3:友人と妹を探す。でもどんな状況にあるかはあんまり考えたくない……
4:魔法かあ……アイスとかいっぱい出せたらいいよね……
[備考]
※
東横桃子には気付いていません。
※ルルーシュとの会話の内容や思考は後の書き手さんにお任せ
※浅上藤乃と眼帯の女(
ライダー)の外見情報を得ました
【
船井譲次@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor】
[状態]:健康
[服装]:私服
[装備]:ナイフ、コンパス。他にも何かあるかは後続にお任せ
[道具]:デイパック、基本支給品、不明支給品x0-2 遠藤のベンツの鍵@逆境無頼カイジ Ultimate Survivor
リフレインx4@コードギアス 睡眠薬@現地調達 ブラッドチップ(オリジナル)x1@空の境界
[思考]
基本:優勝か別の手段か、ともかく生還を目指す。
1:昼までか……
2:『城』と『敵のアジト』を経て『ギャンブル船』に辿り着き、自衛の為の力を手に入れる。手段は選ばない。
3:唯の友人らを探す方法を考える。利用できそうなら利用する。
4:仲間を勧誘し、それらを利用して生還の道を模索する。
5:絶対に油断はしない。また、どんな相手も信用はしない。
6:ルルーシュの話す施設X群にも少し興味がある。
[備考]
※東横桃子には気付いていません。
※登場時期は未定。
※ルルーシュとの会話の内容や思考は後の書き手さんにお任せ
※名簿のカタカナ表記名前のみ記載または不可解な名前の参加者を警戒しています
※浅上藤乃と眼帯の女(ライダー)の外見情報を得ました
【福路美穂子@咲-Saki-】
[状態]:健康 、前向きな狂気、恐怖心の欠如
[服装]:黒の騎士団の服@コードギアス、穿いてない
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品(0~1)(確認済み)、六爪@戦国BASARA 、薬局から持ってきた薬品多数@現地調達、
『魔法』と書かれたラベルの貼ってあるビン(中身未確認)@現地調達
[思考]
基本:これ以上誰も傷つかない為に主催者を殺す、殺し合いに乗った者も殺す
1:琴吹さんが帰ってくると良いんだけど…
2:ひとまずこのチームについて行って、魔法と主催の影を追う
3:力を持たない者たちを無事に元の世界に返す方法を探す
4:対主催の同志を集める
5:船井に対して油断はしない。
6:
伊達政宗を探し出して六爪を渡し、小十郎の死を伝える
7:
阿良々木暦ともし会ったらどうしようかしら?
8:
張五飛と会ったらトレーズからの挨拶を伝える
9:トレーズと再会したら、その部下となる?
[備考]
登場時期は最終回の合宿の後。
※ライダーの名前は知りません。
※トレーズがゼロの仮面を被っている事は知っていますが
ゼロの存在とその放送については知りません
※名簿のカタカナ表記名前のみ記載または不可解な名前の参加者を警戒しています
※浅上藤乃の外見情報を得ました
【黒の騎士団の服@コードギアス】
黒の騎士団発足時に井上が着ていたコスチューム
超ミニスカ
【E-4/薬局周辺/1日目/午前】
【琴吹紬@けいおん!】
[状態]:撫子への罪の意識、『制服を着た女子生徒』に対する軽いトラウマ、
[服装]:ブラウス、スカート
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、忍びの緊急脱出装置@戦国BASARA×2、軽音楽部のティーセット、シアン化カルシウム入りスティックシュガー×10
桜が丘高校女子制服(血濡れ) 、薬局から持ってきた薬品多数@現地調達
[思考]
基本:この島にいる皆を殺して生き返らせる事によって救う
0:まずは唯ちゃん達から
1:次はだれにしようかしら
2:誰にも勿論殺されたくない。
3:阿良々木暦に会ったら、撫子ちゃんの事を伝えようかしら
[備考]
※浅上藤乃の殺人を目の当たりにしたトラウマで、『制服を着た女子生徒』を見ると彼女の姿がフラッシュバックします。
精神的に回復かなり持ち直しました。トラウマの効果は薄くなっています。
※名簿のカタカナ表記名前のみ記載または不可解な名前の参加者を警戒しています
※E-3北部~E-4北部間の何処かに千石 撫子の死体があり、すぐそばに彼女のディパック(基本セット、ランダム支給品1~3入り)が落ちています。
※名簿のカタカナ表記名前のみ記載または不可解な名前の参加者を警戒しています
※眼帯の女(ライダー)の外見情報を得ました
【荒耶宗蓮@空の境界】
[状態]:健康
[服装]:黒服
[装備]:ククリナイフ@現実
[道具]:デイパック、基本支給品、S&W M10 “ミリタリー&ポリス”(6/6)、.38spl弾x53、鉈@現実、パソコン、荒耶の不明支給品(0~1)、
[思考]
基本:式を手に入れ根源へ到る。しかし今は参加者たちを扇動する
1:殺し合いが動きやすなるように東へ向かう。
2:必要最小限の範囲で障害を排除する。
3:利用できそうなものは利用する。
※首輪はダミーです。時間の経過と共に制限が緩んでいきます。
※久の支給品はシアン化カルシウムです
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最終更新:2009年12月18日 23:28