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タイプ:ワイルド(前編) - (2007/05/22 (火) 18:58:19) の編集履歴(バックアップ)
タイプ:ワイルド ◆wlyXYPQOyA
C-4上空。
その制空権をいつ強奪したかは知らないが、奇妙な未確認飛行物体が我が物顔で飛んでいた。
その制空権をいつ強奪したかは知らないが、奇妙な未確認飛行物体が我が物顔で飛んでいた。
あれは誰だ。鳥か、飛行機か。いや、スーパーマンか。
それとも強欲の渦巻く街の悪を制裁する蝙蝠の姿の英雄か。
違う。この飛行物体はそのどれにも当てはまりはしない。
鳥でも飛行機でもない。その名はカズマ。シェルブリットのカズマだ。
そしてそれを「自分の新しい足だ」と言わんばかりに制御(?)しているのが、二挺拳銃(トゥー・ハンド)のレヴィ。
空を飛んでいるのはこの二人の暴れん坊である。
それとも強欲の渦巻く街の悪を制裁する蝙蝠の姿の英雄か。
違う。この飛行物体はそのどれにも当てはまりはしない。
鳥でも飛行機でもない。その名はカズマ。シェルブリットのカズマだ。
そしてそれを「自分の新しい足だ」と言わんばかりに制御(?)しているのが、二挺拳銃(トゥー・ハンド)のレヴィ。
空を飛んでいるのはこの二人の暴れん坊である。
止まらない男と止まらない女。
この二人の進行は最早誰にも止められることは無い。
この二人の進行は最早誰にも止められることは無い。
「しかし本当にクレイジーだ! メイドインジャパンにここまで有難味を感じる日が来るとはな!」
「俺の生まれはロストグラウンドだ! 大体テメェは俺に乗ってるんじゃなくて「俺に乗せられてる」んだ! 勘違いすんな!」
「おーっと、妙にうるさいエンジンだな。ここが訴訟大国ならお前はリコールされてたところだ」
「うるせぇ、落とすぞ! ……出来る限りスピードアップしてやるから黙ってろッ!」
「いいねぇいいねぇ! ”最高にハイってやつ” だ!」
「俺の生まれはロストグラウンドだ! 大体テメェは俺に乗ってるんじゃなくて「俺に乗せられてる」んだ! 勘違いすんな!」
「おーっと、妙にうるさいエンジンだな。ここが訴訟大国ならお前はリコールされてたところだ」
「うるせぇ、落とすぞ! ……出来る限りスピードアップしてやるから黙ってろッ!」
「いいねぇいいねぇ! ”最高にハイってやつ” だ!」
相も変わらず罵りあうが、それでも二人は仲良く(?)空を飛び続ける。
それは以前の二人ではありえない光景であったが――今となっては不思議ではない。
何せ今は、お互い共通の目的と意思を持っている。しかも、それはとてつもなく強く、固い。
おまけにここまで色々あったが、幸運にも現在は互いの機嫌は良い方だ。
カズマは思うが侭に暴れたことで気分も良好。
レヴィは今現在のこのクレイジーな状態で気持ちが高ぶっている。
そのおかげか、たとえ軽い罵りあいになろうとも相手を蹴落としたくなるような心地になることは無かったのだ。
それは以前の二人ではありえない光景であったが――今となっては不思議ではない。
何せ今は、お互い共通の目的と意思を持っている。しかも、それはとてつもなく強く、固い。
おまけにここまで色々あったが、幸運にも現在は互いの機嫌は良い方だ。
カズマは思うが侭に暴れたことで気分も良好。
レヴィは今現在のこのクレイジーな状態で気持ちが高ぶっている。
そのおかげか、たとえ軽い罵りあいになろうとも相手を蹴落としたくなるような心地になることは無かったのだ。
――だが、この境地に至るまでには本当に色々な事があった。
始まりは突然の邂逅。そしてそれによって生じた真剣勝負。
二度に渡る衝撃の再会。更にそのまま再戦という名の大暴れのおまけ付き。
遂には「仕事」を遂行するエージェントとしての共同戦線。
カズマとレヴィは、そうした時間を積み重ねてここまで来ているのだ。
二度に渡る衝撃の再会。更にそのまま再戦という名の大暴れのおまけ付き。
遂には「仕事」を遂行するエージェントとしての共同戦線。
カズマとレヴィは、そうした時間を積み重ねてここまで来ているのだ。
振り返ってみると、壮絶だ。
『絶対にィィィィィィィィィ!!! 許さねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!』
『Fuck it all! なんだってんだあのバケモノ野郎は!? 腕に爆薬でも仕込んでんのか!?』
『Fuck it all! なんだってんだあのバケモノ野郎は!? 腕に爆薬でも仕込んでんのか!?』
――考え得る限り、最悪の出会い方だった。
『さぁボウヤ、素敵な素敵な血祭り(ブラッド・パーティー)の始まりだ。せいぜい上手にダンスを踊ってくれよ』
『撃滅の――――セカンドブリットォォォォォォォォォ!!!』
『撃滅の――――セカンドブリットォォォォォォォォォ!!!』
――考え得る限り、最悪の開戦だった。
『ケッ、言われなくても出てくつもりだったさ! テメェらなんかとチマチマやってちゃ日が暮れるんだよ!!』
――考え得る限り、最も煮え切らない別れだった。
『よぉ、やっと起きたか大将。随分とご機嫌な頭してるな』
『テメェは――』
『テメェは――』
――考え得る限り、最も煮え切らない再会だった。
『そこのテメェ、レヴィっつったな! テメェの名前も刻んだからな! さっきの借りはいつかぜってェ返す! 覚えとけ!』
『あーウルセー。腰抜けのボウヤはさっさとどこかへ行っちまえタコ。
もしノコノコとあたしの前に姿見せてみろ。そんときは、今度こそその脳天に鉛弾ブチ込んでやるよ』
『あーウルセー。腰抜けのボウヤはさっさとどこかへ行っちまえタコ。
もしノコノコとあたしの前に姿見せてみろ。そんときは、今度こそその脳天に鉛弾ブチ込んでやるよ』
――考え得る限り、今までで最も穏やかな別れだった。
『はん、またてめえに会えるとは思わなかったな。いいツラになったじゃねえか』
『そりゃあこっちのセリフだ』
『そりゃあこっちのセリフだ』
――考え得る限り、今までで最も穏やかな再会だった。
今になって考えると、あまりにもお騒がせだった。もし誰かがこの話を聞けば、とんだ笑い話だと処理されるだろう。
だが本人達にとっては必死に今日までを生きてきた中で生まれた騒動なのであり、当人達にとっては笑えない話である。
だが本人達にとっては必死に今日までを生きてきた中で生まれた騒動なのであり、当人達にとっては笑えない話である。
だがカズマは思う。
レヴィと組むのも悪くは無い。
気に食わない奴だがなぜか今はそう思えてしまう。
――当然、共闘している状況が故にそう考えないと「やってられない」部分はある。
ほんの少しの心の亀裂が、共闘を強制終了させる火種になりかねないからだ。
だがそういった義務的なものを一切跳ね除けて考えたとしても
カズマはレヴィにこれ以上の反発を起こす気にはならなかった。
気に食わない奴だがなぜか今はそう思えてしまう。
――当然、共闘している状況が故にそう考えないと「やってられない」部分はある。
ほんの少しの心の亀裂が、共闘を強制終了させる火種になりかねないからだ。
だがそういった義務的なものを一切跳ね除けて考えたとしても
カズマはレヴィにこれ以上の反発を起こす気にはならなかった。
やはりあの大暴れが効いたのだろうか。
自分を今突き動かしているほとんどは、固い意志と目的への執念だ。
己を突き通したい。自分の我侭を真っ直ぐと貫き通したい。それだけだったはずだ。
だが今では「レヴィと共に大暴れをしたい」という欲求で動いている部分も少なからずある。
己を突き通したい。自分の我侭を真っ直ぐと貫き通したい。それだけだったはずだ。
だが今では「レヴィと共に大暴れをしたい」という欲求で動いている部分も少なからずある。
本気で戦った相手だからだろうか。
何故だろう。レヴィには背中を預けてしまっても良いと思い始めている。
腹が立つ言い草ばかりで鬱陶しいだけのこの女が、妙に頼もしく思える。
腹が立つ言い草ばかりで鬱陶しいだけのこの女が、妙に頼もしく思える。
今なら何でも出来そうな気がしてしまう。
そしてレヴィも思う。
カズマとの共闘もまんざらではないと。
相手は直球馬鹿のオタンコナスベイビーであり、気に食わない相手のはずだ。
だが今は何故だかカズマと共に戦ってみたいという欲求が生まれてしまっている。
敵がどんなクソッタレであろうとも、カズマと共に戦ってみたい。
何故だろう。何故なのだろう。
相手は直球馬鹿のオタンコナスベイビーであり、気に食わない相手のはずだ。
だが今は何故だかカズマと共に戦ってみたいという欲求が生まれてしまっている。
敵がどんなクソッタレであろうとも、カズマと共に戦ってみたい。
何故だろう。何故なのだろう。
やはりあの大暴れが効いたのだろうか。
今の自分はあくまで「仕事」をしているだけの筈だった。
さっさと仕事をして帰りたかっただけの筈なのに、今は謎の高揚感が自分を包んでいる。
何故だかカズマを頼もしく思い、彼と共闘をしたいと思い始めている。
さっさと仕事をして帰りたかっただけの筈なのに、今は謎の高揚感が自分を包んでいる。
何故だかカズマを頼もしく思い、彼と共闘をしたいと思い始めている。
本気で戦った相手だからだろうか。
よくは解らない。だがこんな気分もたまには良い。
空を飛ぶなんていう不思議パワーまで持ったこのカズマに、背中を預けたくなるのも悪くは無い。
空を飛ぶなんていう不思議パワーまで持ったこのカズマに、背中を預けたくなるのも悪くは無い。
今なら何でも出来そうな気がしてしまう。
「なぁ、カズマ」
「あ? なんだよ……?」
「あ? なんだよ……?」
突然、トーンダウンした声でレヴィが口を開いた。
それに対してカズマは、怪訝そうな表情でその言葉の続きを促く。
それに対してカズマは、怪訝そうな表情でその言葉の続きを促く。
「色々、あったな」
感慨深そうに呟いたレヴィに、カズマはその言葉を肯定する。
確かに色々あった。ありすぎて頭がパンクしそうなくらいだった、と思う。
確かに色々あった。ありすぎて頭がパンクしそうなくらいだった、と思う。
「なんだかんだで気に食わねェ奴の所為で、もう ”残ってる人間も10人とちょっと” 。
本当に色々あった所為で、たった二日で ”こう” なっちまった。
しかもあげくに”あたしらの周りですら” 色々と状況が移り変わっちまってる.
こうなるとここから先に ”まだ何かあっても” おかしくない。いや、”絶対に色々ある” はずだ」
本当に色々あった所為で、たった二日で ”こう” なっちまった。
しかもあげくに”あたしらの周りですら” 色々と状況が移り変わっちまってる.
こうなるとここから先に ”まだ何かあっても” おかしくない。いや、”絶対に色々ある” はずだ」
珍しく、真剣な面持ちで語るレヴィ。
だがカズマはそれを見てもそれをからかう事をしなかった。
だがカズマはそれを見てもそれをからかう事をしなかった。
「そうだな。名前を刻んだ相手が死んだり、何の因果か手前と空飛んでたり……色々あった。
変わらねぇモンもあるが……やっぱり今は色々と変わっちまうことの方が多い。手前の言うとおりだ」
「そこで提案なんだが……」
変わらねぇモンもあるが……やっぱり今は色々と変わっちまうことの方が多い。手前の言うとおりだ」
「そこで提案なんだが……」
カズマの親身な答え。それを聞いたレヴィは一旦言葉を止め、右手の人差し指をピンと立てる。
そしてニヤリと邪悪な笑みを浮かべながらはっきりと口にした。
そしてニヤリと邪悪な笑みを浮かべながらはっきりと口にした。
「後でボコりたい奴がいる。手伝ってくれねぇか?」
「……はぁ?」
「だからさっき言っただろ? ”あたしらの周りでも色々移り変わった” し、”これからも色々ある可能性が高い” わけだ」
「なるほど……だからその前にそいつをさっさと殴っておきたいって事か」
「……はぁ?」
「だからさっき言っただろ? ”あたしらの周りでも色々移り変わった” し、”これからも色々ある可能性が高い” わけだ」
「なるほど……だからその前にそいつをさっさと殴っておきたいって事か」
カズマの表情がその言葉と共に綻んだ。
それは、久しぶりに見せる「戦い以外での笑顔」だ。
それは、久しぶりに見せる「戦い以外での笑顔」だ。
「勝手にやってろって言いてェが……今ならテメェの提案、呑んでやるよ。そいつの名前は?」
「ゲイナーだ。しっかし困ったもんだ。”てめえと一緒に行動してると、やけにあの坊やが殴りたく” なっちまった」
「へぇ……寂しくなったのか?」
「ハッ! 坊やがいないせいであたしが寂しいって? 馬鹿言うなよカズマ。そんな事より約束、頼んだぜ」
「オッケェ、じゃあ刻んだ! それじゃあ……さっさと仕事にカタつけて来ないとなァァァッ!!」
「ゲイナーだ。しっかし困ったもんだ。”てめえと一緒に行動してると、やけにあの坊やが殴りたく” なっちまった」
「へぇ……寂しくなったのか?」
「ハッ! 坊やがいないせいであたしが寂しいって? 馬鹿言うなよカズマ。そんな事より約束、頼んだぜ」
「オッケェ、じゃあ刻んだ! それじゃあ……さっさと仕事にカタつけて来ないとなァァァッ!!」
叫びと共に、満面の笑み――そう、それもまた邪悪な――を浮かべながらカズマはスピードを上げた。
「おいおいまだまだスピード出るんじゃねぇか! やっぱクレイジーだぜ!」というレヴィの言葉を風の音で掻き消す程に。
「おいおいまだまだスピード出るんじゃねぇか! やっぱクレイジーだぜ!」というレヴィの言葉を風の音で掻き消す程に。
そんな事を考えていた頃だろうか。
二人が突然、”巨大な何か” に出会ったのは。
二人が突然、”巨大な何か” に出会ったのは。
”巨大な何か”――それは蒼い壁のように見えた。
「ぁあ!?」
「オイオイなんだよあの巨大な蒼いの!」
「俺が知るか!」
「オイオイなんだよあの巨大な蒼いの!」
「俺が知るか!」
蒼く、透明なそれは人の形をしていた。
だがそれは人と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きくぶ厚く重く、そして大雑把すぎた。
それはまさに壁だった。
だがそれは人と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きくぶ厚く重く、そして大雑把すぎた。
それはまさに壁だった。
いくら距離が遠いと言えど、そんな巨大な驚愕物体が現れてはひとたまりも無い。
カズマは進行を急停止。空中で静止して様子を見ることにした。
レヴィも黙って――否、何も言えずにカズマの背中でそれを眺める。
カズマは進行を急停止。空中で静止して様子を見ることにした。
レヴィも黙って――否、何も言えずにカズマの背中でそれを眺める。
だが数秒程そうしていると、巨大な半透明人間は消えてしまった。
「…………」
「…………」
「…………」
多少の間と静寂。
それを体感した後、二人は口を開いた。
それを体感した後、二人は口を開いた。
「おい、見たか?」
「ああ、見たよ。あれがアルターなら相当ヤバいだろうな」
「ああ、見たよ。あれがアルターなら相当ヤバいだろうな」
カズマとレヴィは半ば呆然としながら呟く。
だがあれを見たのだ。 ”こう” なっても仕方が無いだろう。
だがあれを見たのだ。 ”こう” なっても仕方が無いだろう。
「ありゃどう見てもヤバい。あたしの勘と理論が ”全身全霊でそれを呼びかけて” やがる」
二人が見た物――神人と呼ばれてた蒼い巨大な物体――の存在。
そして更に、その巨大な物体が一瞬で姿を消すというおまけ付き。明らかに異常な状況だった。
士気が高揚していた二人の出鼻を挫くには十分だ。
そして更に、その巨大な物体が一瞬で姿を消すというおまけ付き。明らかに異常な状況だった。
士気が高揚していた二人の出鼻を挫くには十分だ。
「一瞬で解けやがったのが妙だがな……だが推測は出来る」
「そうか、じゃあ言ってみな」
「簡単だ。ただ一時的に解いたか、それとも使い手が倒れやがったか……とにかくえらい状況だってのは確かだ!」
「そうか。じゃあ急ぐしかねぇな!」
「そうか、じゃあ言ってみな」
「簡単だ。ただ一時的に解いたか、それとも使い手が倒れやがったか……とにかくえらい状況だってのは確かだ!」
「そうか。じゃあ急ぐしかねぇな!」
だがそれでも彼らは止まらない。止まるわけには行かない。
止まってはいけなかった。止まるべき状況ではないのだ。
止まってはいけなかった。止まるべき状況ではないのだ。
――だが信じられないことに、出鼻を挫く様な出来事は再び起こる。