「紅のブタ」(2007/02/23 (金) 00:01:05) の最新版変更点
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*紅のブタ ◆S8pgx99zVs
峰不二子の劉鳳への応急手当が終わった後、二人は午後六時の放送までの僅かな時間を
狭い薬局の中で過ごすことにした。
劉鳳はこの殺戮ゲームが始まって以来一度も採っていなかった食事の時間に当て、
その一方で峰不二子はカウンターの奥に並んだ薬棚を漁っていた。
「何を探しているんですか?」
口の中のパンを飲み込み劉鳳が彼女に尋ねる。
「何って、色々よ。鎮痛剤とか解熱剤とか……」
返ってきた答えに劉鳳は商品棚を指し問いを繰り返す。
「薬だったら、こちらにもあるようですが……」
再びの問いに峰不二子は棚を漁る手を止めずに答えを返す。
「そちらは一般用のでしょ。こっちにあるのは処方が必要な医療用医薬品。
同じ薬ならより効果の高い方を探して持っていくべきだわ」
劉鳳をなるほどと肯く。
劉鳳が食事を進めながら見ている前で、彼女はいくつかの種類の薬を紙袋に小分けにし
それぞれに何か記しながらてきぱきと作業を進めている。
「薬に詳しいんですね」
劉鳳のその問いを峰不二子は軽く否定した。
「そんなことないのよ。もし、私に医者並の知識があればここにあるものを全部持っていくわ」
と、無限に物を収めるデイバッグを指差す。
「今集めているのは、職業柄よく世話になるよく知ったものだけよ」
答えながら、また一つ薬を紙袋の中に収める。
「そういえば、聞いていませんでしたね。不二子さんの職業は?」
「探検家。世界中のお宝を求めて旅をしているの。トレジャーハンターと言ってもいいわ」
真顔でしれっと嘘をつく。それが峰不二子だ。
だが、劉鳳はそれを信じたようだ。彼女の冷静な振る舞いに合点がいったという顔である。
彼はこの殺戮ゲームの舞台に降り立ってからその後、幾人もの他の参加者と出会いながらも
そのたび恐れられ逃げられ裏切られた。そして激しい闘い。心身ともに疲労していた。
そこで出会った、彼にとっては初めてまともなやり取りのできる人間――峰不二子。
彼女を頼れる仲間と錯覚し、嘘に振り回され利用されようとも彼を責めることはできないだろう。
なにしろ相手は人を利用することに関しては人一倍長けている峰不二子である。
一通りの作業を終えた峰不二子が、劉鳳の方へといくつかのアンプルを投げる。
「これは?」
劉鳳の問いに彼女は目の前で彼に渡した物と同じ物を開け、飲みながら答えた。
「ビタミン剤に滋養強壮剤。そんなパンよりはよっぽどエネルギーになるわ」
なるほどと、劉鳳も手にしたアンプルを口にする。
そして、二人がそれを飲み終えた時、ちょうど午後六時の――三回目の放送が流れ始めた。
――桜田ジュン。そして真紅。
その二人の名が呼ばれたところで劉鳳は強く拳を握った。
劉鳳は自身の不甲斐なさに憤る。
どちらも自分が殺してしまったと言っても過言ではない。
両者とも一度は接触できたのだ。ならば自分には彼らを保護する責任があった。
そして、長門有紀。彼女の名前は呼ばれなかった。どうやらまだ生き延びているらしい。
弱者を装って自分を襲い、そして桜田ジュンの命を奪った。絶対に許せない悪。
劉鳳は再び心の内に激しい怒りの炎を吹き上がらせる。
そして、猛る劉鳳とは逆に冷静なのは峰不二子。
今回は彼女が知る人間――と言っても次元大介ただ一人であるが――は死んでいない。
それよりも気になるのは禁止エリアで死亡した人間が出たということか。
放送だけでは詳しくは解らないが、実際に禁止エリアで人が死んだというのは重要なことだろう。
放送を聞き終わり心身共に奮い立たせた二人は薬局を出て次の目的地へと足を運んだ。
そして程なくして二人は真紅の亡骸が横たわるその場所へと到着した。
わざわざここまで足を運んだのは劉鳳の提案だ。戦闘があったと言うのなら、そこで要救助者が
発生している可能性がある。また、戦闘が持続していればそれを止めなければいけない。
だが、そのどちらもここにはいなかった。ただ一つの壊れた人形が転がっているだけ。
「本当に普通の人形だったのね」
峰不二子が半壊した真紅の頭部を覗き込んで感想を漏らす。
動かなくなった彼女は最早ただの人形と変わる所は無い。だが首に嵌った枷が彼女が参加者の
一人であったことを証明している。
「で、これはなんなのかしら?」
峰不二子は視線を人形の頭から胴体の上へと移す。
そこには淡く光る何かが浮かんでいた。
「さあ? 僕が前に会った時は見ませんでしたが……」
劉鳳は真紅との出会いを思い出すが、確かにその時にはこの光は見なかった。
峰不二子は考える。
この人形――真紅のデイバッグがここに置き去りにされており、他の人間も全くいなくなって
いると言う事は、戦闘がどこかへと移行したと考えるのが妥当か?
「これは支給品かしら?」
とりあえずはそれぐらしか思いつかない。
「アルター化もできませんし、おそらくはそうでないかと」
劉鳳も消極的だが賛同する。
「だったら、私達が貰っちゃいましょうか。ただ捨て置いても勿体無いわ」
これが残された罠。そうである可能性は低いとして峰不二子はその光を手に取った。
それは重さも暖かさも無いただの光だった。その光が何なのかは全く解らない。
「本当に、何なのかしら?」
峰不二子はとりあえずその光をデイバッグへとしまい込んだ。
光の正体はこの場所で戦っていた連中と出会った時に聞けばよい。そう考えて。
残されたデイバッグも回収すると、二人は再び次の目的地を目指してその場を離れた。
「そうあなたの出会った少年が言ってたのね?」
「ええ、ホテルに人を集めている人物がいると」
二人は渡った橋を戻ると、今度はホテルへと足を向けていた。
進路の途中にあるE-4エリアは禁止エリアと指定されているので、その北側を迂回しようと
今は線路に沿って北東へと歩いている。
「集まっているかしら?」
「少なくとも、ホテルに人を集めようとしている何人かはそこにいるはずです」
人を集める……。
自殺行為だと峰不二子は考える。確かに人は集まるかもしれないが、無差別に集めてしまっては
どんな化け物がやってくるかわからない。
正直、彼女一人だったら決してホテルには近づかなかっただろう。だが、劉鳳は他の参加者との
接触に積極的だ。無理に水を差して気分を――……?
「どうかしましたか?」
足を止めた峰不二子に劉鳳が問いかける。
「……いや、アレは?」
峰不二子が指差した先、一つ通りをはさんだ向こう側をブタが歩いていた。
「……豚ですか?」
「……豚、よねえ」
先程、真紅の亡骸を見てこのゲームには人間以外の者も参加していると実感したばかりだが、
ブタとは二人共予想外だった。しかも二本の足で歩くブタだ。
「……アレも参加者でしょうか?」
「……でも、何も持ってないわよ」
ブタの方は二人に気づいてないらしい。短い足でテクテクと歩いている。
とても害のある存在には見えないが……。
「とりあえず声をかけて見ましょう。――おい。そこの豚ッ!!」
そんな声のかけ方はないでしょう。峰不二子がそう思った時には遅かった。
ブタは二人に気づくと頭に湯気を立ててこちらへと走ってくる。
「誰が豚だッ!!」
いや、ブタには違い無いと思うんだけど。と、心の中で峰不二子はツッこんだ。
「で、あなたの名前はぶりぶりざえもんなわけね」
「そうだ。正確には救いのヒーロー、ぶりぶりざえもんと言う」
立って歩くだけでなく、喋りもする目の前のブタはやはり参加者だった。その首にそれを示す輪が
嵌っている。
「で、あなた荷物はどうしたの? なくしちゃった?」
「む。……あ、あんなものはこのわたしには必要ないからな。捨ててしまったのだ」
要領を得ない相手に峰不二子と劉鳳の二人は質問を繰り返し、時には彼からの問いに答える。
「で、病院に怪我をした仲間がいて。あなたは風という女の子を捜しているわけね」
「そういうことだ。やっとわかったか」
ブタによると、途中で出会った仲間の中に怪我人がおり、それを治すために彼が以前世話になった
”魔法”が使える少女を探している途中だと言う。その少女は今は禁止エリアに指定されている
E-4エリアへと向かっていたらしく、このブタはそのE-4エリアの周りを探していたらしい。
彼の言う病院へと向かった仲間は、おそらくその特徴から峰不二子があの橋の近くで見た者達だ。
彼女の予想とは違い、どうやら逃げおおせていたらしい。
「……では」
話が一段落つくと、ぶりぶりざえもんは歩き出して行ってしまおうとする。
峰不二子はその後頭部をむんずと掴むと彼を持ち上げて引き止めた。
「な、なにをする!?」
峰不二子は喚くブタを無視して隣の劉鳳へと話しかける。
「劉鳳。あなたこの豚と一緒に行ってあげてくれる?」
「「な、なんだって!!」」
ぶりぶりざえもんと劉鳳の言葉がハモる。
「お前、何を言ってるんだ?」
「不二子さん。どういうことですか?」
二人が一緒に峰不二子へと質問を投げかける。
それに対し、彼女は子供にそうするようにわかりやすく答えを返した。
「この豚だけで風という子を見つけられると思う? だから劉鳳には彼を手伝って欲しいの。
私は一人で病院の方へと向かうわ。いくら病院と言っても医者がいるわけじゃないんだから
怪我人達だけでは治療もままならないでしょう。
だから、そこには私が行くの。私の手当ての腕は劉鳳も知っているわよね?
それに、腕を切断しているというならこっちは急を要するわ。
私の言いたいこと解った?」
劉鳳は少し考え、そしてブタの顔を見て決心した。
「そうですね。この豚が嘘をついているようには見えませんし、それがベストでしょう」
そして彼女からブタを受け取る。
「私はその風という少女を探してみます。不二子さんは病院の方をお願いします」
その手の中でブタが暴れる。
「おいこら! ちょっと痛いぞ。もっとやさしくしろっ!」
劉鳳はそれを無視すると絶影を顕現化し跳躍、通りに面するビルの壁面を登っていく。
「それでは病院で落ち合いましょう」
そして、その言葉を残して峰不二子の前から姿を消した。
劉鳳が姿を消すと、残った峰不二子は一人ほくそ笑んだ。
うまくあの青いタヌキと接触できるチャンスがめぐってきた。しかも、相手側は重症だと言う。
ならば、治療して恩を売るもよし。情報を引き出して殺してしまうのもよし。
生殺与奪の権利はこちら側にあると言えるだろう。
峰不二子は踵を返すと病院へ向かい、道を北へと駆けた。
【E-3/市街地(北東)/1日目-夜】
【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:健康
[装備]:コルトSAA(弾数:6/6発/予備弾:12発)
[道具]
デイバック(×2)/支給品一式(×2、(パン×1、水1/10消費))/ダイヤの指輪
銭型変装セット/ローザミスティカ(真紅)/くんくんの人形
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/睡眠薬/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
[思考]
基本:ゲームからの脱出。
1.D-3の病院へ向かいぶりぶりざえもんの仲間と会う。
2.そして彼らから情報を得る。(特にドラえもんの話と謎の光について)
3.利用できそうなら彼らを治療して恩を売り印象をよくする。
4.病院で劉鳳とぶりぶりざえもんの帰りを待つ。
5.F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグはいつか回収したい。
6.ルパンが本当に死んでいるか確認したい。
[備考]:E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。
立ち並ぶビルの上を、劉鳳は真の形態へと発展させた絶影の背に乗り飛翔する。
彼の背の上にはさらにぶりぶりざえもんだ。
峰不二子と別れた場所からぶりぶりざえもんが向かっていた方角――つまりは南に向かい
その後、E-4エリアとの境界に沿って東へと進路を取っていた。
眼下に広がる道や建物に目を走らせながら劉鳳が背中のブタに話しかける。
「救いのヒーローと言ったなッ!?」
「ああ、そのとおりだ。困っている人を見つけてはおたすけしている」
劉鳳はその答えに満足すると話を続ける。
「俺は劉鳳。対アルター特殊部隊HOLYの隊員だ」
「HOLY?」
「いたずらに世を乱す悪を排し、絶対正義の秩序を築くための組織だ」
「……正義」
大仰な物言いの劉鳳にぶりぶりざえもんは少したじろいだ。
「お前もおたすけしているのか……?」
「そうだ! 貴様は正義かっ!?」
「正義? ああもちろんだ。なんと言っても救いのヒーローだからな!」
ぶりぶりざえもんの回答に劉鳳は大いに満足し、この舞台で出会った初めて自分と同調する
仲間ができたことに高揚した。相手はブタかもしれないが大切なのは志だ。
「俺達二人で悪を断罪するぞぶりぶりざえもん!」
「ああ! そしてみんなをおたすけする!」
沈む夕日を背に二つの正義が空を翔る。
【F-4/市街地(北)/1日目-夜】
【劉鳳@スクライド】
[状態]:少し高揚している/軽い疲労/全身に中程度の負傷(手当て済)
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ/支給品一式/斬鉄剣/SOS団腕章『団長』/真紅似のビスクドール
[思考]
基本:自分の正義を貫く。
1.ぶりぶりざえもんと共に鳳凰寺風を探す。
2.風を見つけたら病院へと戻る。
3.悪を断罪する。(※現在確認している断罪対象)
※赤いコートの男(アーカード)、長門有希(朝倉涼子)、ポニーテールの女(シグナム)
※老人(ウォルター)を殺した犯人
4.ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから開放する。
5.ホテルに向かう。
[備考]
※朝倉涼子のことを『長門有希』と認識しています。
※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。
※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。
【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】
[状態]:頭部にたんこぶ/ヤマトとの友情の芽生え/正義に対する目覚め
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:困っている人を探し、救いのヒーローとしておたすけする。
1.鳳凰寺風、高町なのはを捜して病院(太一たちのもと)へ連れて行く。
2.ヤマトたちとの合流。
3.救いのヒーローとしてギガゾンビを打倒する。
*紅のブタ ◆S8pgx99zVs
峰不二子の劉鳳への応急手当が終わった後、二人は午後六時の放送までの僅かな時間を
狭い薬局の中で過ごすことにした。
劉鳳はこの殺戮ゲームが始まって以来一度も採っていなかった食事の時間に当て、
その一方で峰不二子はカウンターの奥に並んだ薬棚を漁っていた。
「何を探しているんですか?」
口の中のパンを飲み込み劉鳳が彼女に尋ねる。
「何って、色々よ。鎮痛剤とか解熱剤とか……」
返ってきた答えに劉鳳は商品棚を指し問いを繰り返す。
「薬だったら、こちらにもあるようですが……」
再びの問いに峰不二子は棚を漁る手を止めずに答えを返す。
「そちらは一般用のでしょ。こっちにあるのは処方が必要な医療用医薬品。
同じ薬ならより効果の高い方を探して持っていくべきだわ」
劉鳳をなるほどと肯く。
劉鳳が食事を進めながら見ている前で、彼女はいくつかの種類の薬を紙袋に小分けにし
それぞれに何か記しながらてきぱきと作業を進めている。
「薬に詳しいんですね」
劉鳳のその問いを峰不二子は軽く否定した。
「そんなことないのよ。もし、私に医者並の知識があればここにあるものを全部持っていくわ」
と、無限に物を収めるデイバッグを指差す。
「今集めているのは、職業柄よく世話になるよく知ったものだけよ」
答えながら、また一つ薬を紙袋の中に収める。
「そういえば、聞いていませんでしたね。不二子さんの職業は?」
「探検家。世界中のお宝を求めて旅をしているの。トレジャーハンターと言ってもいいわ」
真顔でしれっと嘘をつく。それが峰不二子だ。
だが、劉鳳はそれを信じたようだ。彼女の冷静な振る舞いに合点がいったという顔である。
彼はこの殺戮ゲームの舞台に降り立ってからその後、幾人もの他の参加者と出会いながらも
そのたび恐れられ逃げられ裏切られた。そして激しい闘い。心身ともに疲労していた。
そこで出会った、彼にとっては初めてまともなやり取りのできる人間――峰不二子。
彼女を頼れる仲間と錯覚し、嘘に振り回され利用されようとも彼を責めることはできないだろう。
なにしろ相手は人を利用することに関しては人一倍長けている峰不二子である。
一通りの作業を終えた峰不二子が、劉鳳の方へといくつかのアンプルを投げる。
「これは?」
劉鳳の問いに彼女は目の前で彼に渡した物と同じ物を開け、飲みながら答えた。
「ビタミン剤に滋養強壮剤。そんなパンよりはよっぽどエネルギーになるわ」
なるほどと、劉鳳も手にしたアンプルを口にする。
そして、二人がそれを飲み終えた時、ちょうど午後六時の――三回目の放送が流れ始めた。
――桜田ジュン。そして真紅。
その二人の名が呼ばれたところで劉鳳は強く拳を握った。
劉鳳は自身の不甲斐なさに憤る。
どちらも自分が殺してしまったと言っても過言ではない。
両者とも一度は接触できたのだ。ならば自分には彼らを保護する責任があった。
そして、長門有紀。彼女の名前は呼ばれなかった。どうやらまだ生き延びているらしい。
弱者を装って自分を襲い、そして桜田ジュンの命を奪った。絶対に許せない悪。
劉鳳は再び心の内に激しい怒りの炎を吹き上がらせる。
そして、猛る劉鳳とは逆に冷静なのは峰不二子。
今回は彼女が知る人間――と言っても次元大介ただ一人であるが――は死んでいない。
それよりも気になるのは禁止エリアで死亡した人間が出たということか。
放送だけでは詳しくは解らないが、実際に禁止エリアで人が死んだというのは重要なことだろう。
放送を聞き終わり心身共に奮い立たせた二人は薬局を出て次の目的地へと足を運んだ。
そして程なくして二人は真紅の亡骸が横たわるその場所へと到着した。
わざわざここまで足を運んだのは劉鳳の提案だ。戦闘があったと言うのなら、そこで要救助者が
発生している可能性がある。また、戦闘が持続していればそれを止めなければいけない。
だが、そのどちらもここにはいなかった。ただ一つの壊れた人形が転がっているだけ。
「本当に普通の人形だったのね」
峰不二子が半壊した真紅の頭部を覗き込んで感想を漏らす。
動かなくなった彼女は最早ただの人形と変わる所は無い。だが首に嵌った枷が彼女が参加者の
一人であったことを証明している。
「で、これはなんなのかしら?」
峰不二子は視線を人形の頭から胴体の上へと移す。
そこには淡く光る何かが浮かんでいた。
「さあ? 僕が前に会った時は見ませんでしたが……」
劉鳳は真紅との出会いを思い出すが、確かにその時にはこの光は見なかった。
峰不二子は考える。
この人形――真紅のデイバッグがここに置き去りにされており、他の人間も全くいなくなって
いると言う事は、戦闘がどこかへと移行したと考えるのが妥当か?
「これは支給品かしら?」
とりあえずはそれぐらしか思いつかない。
「アルター化もできませんし、おそらくはそうでないかと」
劉鳳も消極的だが賛同する。
「だったら、私達が貰っちゃいましょうか。ただ捨て置いても勿体無いわ」
これが残された罠。そうである可能性は低いとして峰不二子はその光を手に取った。
それは重さも暖かさも無いただの光だった。その光が何なのかは全く解らない。
「本当に、何なのかしら?」
峰不二子はとりあえずその光をデイバッグへとしまい込んだ。
光の正体はこの場所で戦っていた連中と出会った時に聞けばよい。そう考えて。
残されたデイバッグも回収すると、二人は再び次の目的地を目指してその場を離れた。
「そうあなたの出会った少年が言ってたのね?」
「ええ、ホテルに人を集めている人物がいると」
二人は渡った橋を戻ると、今度はホテルへと足を向けていた。
進路の途中にあるE-4エリアは禁止エリアと指定されているので、その北側を迂回しようと
今は線路に沿って北東へと歩いている。
「集まっているかしら?」
「少なくとも、ホテルに人を集めようとしている何人かはそこにいるはずです」
人を集める……。
自殺行為だと峰不二子は考える。確かに人は集まるかもしれないが、無差別に集めてしまっては
どんな化け物がやってくるかわからない。
正直、彼女一人だったら決してホテルには近づかなかっただろう。だが、劉鳳は他の参加者との
接触に積極的だ。無理に水を差して気分を――……?
「どうかしましたか?」
足を止めた峰不二子に劉鳳が問いかける。
「……いや、アレは?」
峰不二子が指差した先、一つ通りをはさんだ向こう側をブタが歩いていた。
「……豚ですか?」
「……豚、よねえ」
先程、真紅の亡骸を見てこのゲームには人間以外の者も参加していると実感したばかりだが、
ブタとは二人共予想外だった。しかも二本の足で歩くブタだ。
「……アレも参加者でしょうか?」
「……でも、何も持ってないわよ」
ブタの方は二人に気づいてないらしい。短い足でテクテクと歩いている。
とても害のある存在には見えないが……。
「とりあえず声をかけて見ましょう。――おい。そこの豚ッ!!」
そんな声のかけ方はないでしょう。峰不二子がそう思った時には遅かった。
ブタは二人に気づくと頭に湯気を立ててこちらへと走ってくる。
「誰が豚だッ!!」
いや、ブタには違い無いと思うんだけど。と、心の中で峰不二子はツッこんだ。
「で、あなたの名前はぶりぶりざえもんなわけね」
「そうだ。正確には救いのヒーロー、ぶりぶりざえもんと言う」
立って歩くだけでなく、喋りもする目の前のブタはやはり参加者だった。その首にそれを示す輪が
嵌っている。
「で、あなた荷物はどうしたの? なくしちゃった?」
「む。……あ、あんなものはこのわたしには必要ないからな。捨ててしまったのだ」
要領を得ない相手に峰不二子と劉鳳の二人は質問を繰り返し、時には彼からの問いに答える。
「で、病院に怪我をした仲間がいて。あなたは風という女の子を捜しているわけね」
「そういうことだ。やっとわかったか」
ブタによると、途中で出会った仲間の中に怪我人がおり、それを治すために彼が以前世話になった
”魔法”が使える少女を探している途中だと言う。その少女は今は禁止エリアに指定されている
E-4エリアへと向かっていたらしく、このブタはそのE-4エリアの周りを探していたらしい。
彼の言う病院へと向かった仲間は、おそらくその特徴から峰不二子があの橋の近くで見た者達だ。
彼女の予想とは違い、どうやら逃げおおせていたらしい。
「……では」
話が一段落つくと、ぶりぶりざえもんは歩き出して行ってしまおうとする。
峰不二子はその後頭部をむんずと掴むと彼を持ち上げて引き止めた。
「な、なにをする!?」
峰不二子は喚くブタを無視して隣の劉鳳へと話しかける。
「劉鳳。あなたこの豚と一緒に行ってあげてくれる?」
「「な、なんだって!!」」
ぶりぶりざえもんと劉鳳の言葉がハモる。
「お前、何を言ってるんだ?」
「不二子さん。どういうことですか?」
二人が一緒に峰不二子へと質問を投げかける。
それに対し、彼女は子供にそうするようにわかりやすく答えを返した。
「この豚だけで風という子を見つけられると思う? だから劉鳳には彼を手伝って欲しいの。
私は一人で病院の方へと向かうわ。いくら病院と言っても医者がいるわけじゃないんだから
怪我人達だけでは治療もままならないでしょう。
だから、そこには私が行くの。私の手当ての腕は劉鳳も知っているわよね?
それに、腕を切断しているというならこっちは急を要するわ。
私の言いたいこと解った?」
劉鳳は少し考え、そしてブタの顔を見て決心した。
「そうですね。この豚が嘘をついているようには見えませんし、それがベストでしょう」
そして彼女からブタを受け取る。
「私はその風という少女を探してみます。不二子さんは病院の方をお願いします」
その手の中でブタが暴れる。
「おいこら! ちょっと痛いぞ。もっとやさしくしろっ!」
劉鳳はそれを無視すると絶影を顕現化し跳躍、通りに面するビルの壁面を登っていく。
「それでは病院で落ち合いましょう」
そして、その言葉を残して峰不二子の前から姿を消した。
劉鳳が姿を消すと、残った峰不二子は一人ほくそ笑んだ。
うまくあの青いタヌキと接触できるチャンスがめぐってきた。しかも、相手側は重症だと言う。
ならば、治療して恩を売るもよし。情報を引き出して殺してしまうのもよし。
生殺与奪の権利はこちら側にあると言えるだろう。
峰不二子は踵を返すと病院へ向かい、道を北へと駆けた。
【E-3/市街地(北東)/1日目-夜】
【峰不二子@ルパン三世】
[状態]:健康
[装備]:コルトSAA(弾数:6/6発/予備弾:12発)
[道具]
デイバック(×2)/支給品一式(×2、(パン×1、水1/10消費))/ダイヤの指輪
銭型変装セット/ローザミスティカ(真紅)/くんくんの人形
【薬局で入手した薬や用具】
鎮痛剤/解熱剤/睡眠薬/胃腸薬/下剤/利尿剤/ビタミン剤/滋養強壮薬
抗生物質/治療キット(消毒薬/包帯各種/鋏/テープ)/虫除けスプレー
※種類別に小分けにしてあります。
[思考]
基本:ゲームからの脱出。
1.D-3の病院へ向かいぶりぶりざえもんの仲間と会う。
2.そして彼らから情報を得る。(特にドラえもんの話と謎の光について)
3.利用できそうなら彼らを治療して恩を売り印象をよくする。
4.病院で劉鳳とぶりぶりざえもんの帰りを待つ。
5.F-1の瓦礫に埋もれたデイバッグはいつか回収したい。
6.ルパンが本当に死んでいるか確認したい。
[備考]:E-4の爆発について、劉鳳の主観を元にした説明を聞きました。
立ち並ぶビルの上を、劉鳳は真の形態へと発展させた絶影の背に乗り飛翔する。
彼の背の上にはさらにぶりぶりざえもんだ。
峰不二子と別れた場所からぶりぶりざえもんが向かっていた方角――つまりは南に向かい
その後、E-4エリアとの境界に沿って東へと進路を取っていた。
眼下に広がる道や建物に目を走らせながら劉鳳が背中のブタに話しかける。
「救いのヒーローと言ったなッ!?」
「ああ、そのとおりだ。困っている人を見つけてはおたすけしている」
劉鳳はその答えに満足すると話を続ける。
「俺は劉鳳。対アルター特殊部隊HOLYの隊員だ」
「HOLY?」
「いたずらに世を乱す悪を排し、絶対正義の秩序を築くための組織だ」
「……正義」
大仰な物言いの劉鳳にぶりぶりざえもんは少したじろいだ。
「お前もおたすけしているのか……?」
「そうだ! 貴様は正義かっ!?」
「正義? ああもちろんだ。なんと言っても救いのヒーローだからな!」
ぶりぶりざえもんの回答に劉鳳は大いに満足し、この舞台で出会った初めて自分と同調する
仲間ができたことに高揚した。相手はブタかもしれないが大切なのは志だ。
「俺達二人で悪を断罪するぞぶりぶりざえもん!」
「ああ! そしてみんなをおたすけする!」
沈む夕日を背に二つの正義が空を翔る。
【F-4/市街地(北)/1日目-夜】
【劉鳳@スクライド】
[状態]:少し高揚している/軽い疲労/全身に中程度の負傷(手当て済)
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ/支給品一式/斬鉄剣/SOS団腕章『団長』/真紅似のビスクドール
[思考]
基本:自分の正義を貫く。
1.ぶりぶりざえもんと共に鳳凰寺風を探す。
2.風を見つけたら病院へと戻る。
3.悪を断罪する。(※現在確認している断罪対象)
※赤いコートの男(アーカード)、長門有希(朝倉涼子)、ポニーテールの女(シグナム)
※老人(ウォルター)を殺した犯人
4.ゲームに乗っていない人達を保護し、ここから開放する。
5.ホテルに向かう。
[備考]
※朝倉涼子のことを『長門有希』と認識しています。
※ジュンを殺害し、E-4で爆発を起こした犯人を朝倉涼子と思っています。
※例え相手が無害そうに見える相手でも、多少手荒くなっても油断無く応対します。
【ぶりぶりざえもん@クレヨンしんちゃん】
[状態]:頭部にたんこぶ/ヤマトとの友情の芽生え/正義に対する目覚め
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:困っている人を探し、救いのヒーローとしておたすけする。
1.鳳凰寺風、高町なのはを捜して病院(太一たちのもと)へ連れて行く。
2.ヤマトたちとの合流。
3.救いのヒーローとしてギガゾンビを打倒する。
*時系列順で読む
Back:[[WHEN THEY CRY]] Next:[[]]
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Back:[[WHEN THEY CRY]] Next:[[]]
|201:[[上手くズルく生きて]]|峰不二子||
|201:[[上手くズルく生きて]]|劉鳳||
|198:[[Infection of tears]]|ぶりぶりざえもん||
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