弓兵と使い魔、そして皇 ◆FbVNUaeKtI
「なんなんだよ、いったい!」
長い防波堤の一角で少年の叫びがこだまする。あまりにも無警戒な、大声。
そんな声を打ち消すように無数の風切り音がその場に響く。
別に彼―平賀才人は特別、無警戒なわけではない。
突然襲い掛かってきた赤い服の男。彼への対応に精一杯なだけだった。
「おいあんた、本気で殺し合いなんてやる気なのか!?」
才人の質問に答えることも無く、ただただ無言で二刀を振るう。
恐怖で歪んでいるわけでもなく、狂気に染まっているわけでもなく・・・
あくまでもその行為が当然の責務だというかのような無表情。
剣閃の激しさも相まって、その姿はまるで赤い悪魔のようだった。
打ち下ろし、切り上げ、叩きつけ・・・
稀に入ってくる蹴りも何とかかわしつつ、陸地へと向かって走る。
なにか武器でもあれば、また違っていたのだろうが・・・
鞄の中身を確認する間もなく襲われたため、才人はいまだ無手の状態だった。
回避に専念しているため、かする程度で済んでいるものの・・・
このままでは両断されるのは時間の問題である。
殺されるという恐怖の中、才人はなんとかしなければという焦燥感に駆られていた。
長い防波堤の一角で少年の叫びがこだまする。あまりにも無警戒な、大声。
そんな声を打ち消すように無数の風切り音がその場に響く。
別に彼―平賀才人は特別、無警戒なわけではない。
突然襲い掛かってきた赤い服の男。彼への対応に精一杯なだけだった。
「おいあんた、本気で殺し合いなんてやる気なのか!?」
才人の質問に答えることも無く、ただただ無言で二刀を振るう。
恐怖で歪んでいるわけでもなく、狂気に染まっているわけでもなく・・・
あくまでもその行為が当然の責務だというかのような無表情。
剣閃の激しさも相まって、その姿はまるで赤い悪魔のようだった。
打ち下ろし、切り上げ、叩きつけ・・・
稀に入ってくる蹴りも何とかかわしつつ、陸地へと向かって走る。
なにか武器でもあれば、また違っていたのだろうが・・・
鞄の中身を確認する間もなく襲われたため、才人はいまだ無手の状態だった。
回避に専念しているため、かする程度で済んでいるものの・・・
このままでは両断されるのは時間の問題である。
殺されるという恐怖の中、才人はなんとかしなければという焦燥感に駆られていた。
しかし、焦燥感に駆られているのは追われている才人だけではなく。
そう、焦っているのは追っている男―アーチャーも同じだった。
当初、防波堤で才人を発見したアーチャーは、
こちらに気づいた様子も無い彼を奇襲同然に仕留めるつもりだった。
しかし彼を蹴り飛ばしながら、干将・莫耶を投影しようとして・・・失敗した。
いや、正確には失敗したわけではなく、いつものような速度で具現化しなかったのだ。
そこで制限に気づき、慌てて支給品・・・補助程度には使えるだろうと腰につけていた二本の刀を抜く。
その一瞬の間に少年は全速力で逃亡を開始していたのだった。
そしてアーチャーの誤算はもう一つ。それは少年が予想以上に実戦慣れしていたこと。
背後から奇襲を受けてから逃亡を選択するまでの決断の早さからは、
彼が普通一般の日本人ではなく、何らかの形での戦闘経験があることが感じられた。
だが、しかし・・・それでも少年を仕留めるのは、もはや時間の問題だった。
いつもとは違う二刀をいつものように振るう。煌く剣閃は徐々に少年を追い詰めていく。
数十分後、陸地が視認できるようになった頃には・・・少年の命はもはや風前の灯火といった状態だった。
息を切らせ、ふらつく少年に蹴りをいれる。衝撃で地面を転がる少年。
這い蹲り、なおも逃げようとする彼に目掛けて刀を振り下ろし・・・
当初、防波堤で才人を発見したアーチャーは、
こちらに気づいた様子も無い彼を奇襲同然に仕留めるつもりだった。
しかし彼を蹴り飛ばしながら、干将・莫耶を投影しようとして・・・失敗した。
いや、正確には失敗したわけではなく、いつものような速度で具現化しなかったのだ。
そこで制限に気づき、慌てて支給品・・・補助程度には使えるだろうと腰につけていた二本の刀を抜く。
その一瞬の間に少年は全速力で逃亡を開始していたのだった。
そしてアーチャーの誤算はもう一つ。それは少年が予想以上に実戦慣れしていたこと。
背後から奇襲を受けてから逃亡を選択するまでの決断の早さからは、
彼が普通一般の日本人ではなく、何らかの形での戦闘経験があることが感じられた。
だが、しかし・・・それでも少年を仕留めるのは、もはや時間の問題だった。
いつもとは違う二刀をいつものように振るう。煌く剣閃は徐々に少年を追い詰めていく。
数十分後、陸地が視認できるようになった頃には・・・少年の命はもはや風前の灯火といった状態だった。
息を切らせ、ふらつく少年に蹴りをいれる。衝撃で地面を転がる少年。
這い蹲り、なおも逃げようとする彼に目掛けて刀を振り下ろし・・・
仮面の男―トゥスクル皇、ハクオロがその光景を目にしたのはこの場所に降り立って三十分程後。
支給品である変わった形の物体を手に岸辺を歩いていたときの事だった。
それは長い橋の上で、二刀流の男が黒髪の少年を襲っている姿。
襲っている方と襲われている方・・・二人とも知り合いというわけではなく、
赤い服の男がこちらに気づいていない以上、関わりあいになるのは無益な事のように思えた。
だがしかし・・・男の持つ刀を確認し、ふらついていた少年が蹴り飛ばされたとき・・・
若き皇は思わず手に持った物体―同封されていた紙によると魔法の杖らしい―を握り締めた。
そして、紙に書かれていた通りに杖を展開し、叫ぶ。
「やめろぉぉぉ!!」
同時に、ハクオロの手によって“杖”に宿った力が解放された。
支給品である変わった形の物体を手に岸辺を歩いていたときの事だった。
それは長い橋の上で、二刀流の男が黒髪の少年を襲っている姿。
襲っている方と襲われている方・・・二人とも知り合いというわけではなく、
赤い服の男がこちらに気づいていない以上、関わりあいになるのは無益な事のように思えた。
だがしかし・・・男の持つ刀を確認し、ふらついていた少年が蹴り飛ばされたとき・・・
若き皇は思わず手に持った物体―同封されていた紙によると魔法の杖らしい―を握り締めた。
そして、紙に書かれていた通りに杖を展開し、叫ぶ。
「やめろぉぉぉ!!」
同時に、ハクオロの手によって“杖”に宿った力が解放された。
突然聞こえた叫び声に、才人は力を振り絞って顔を上げる。
そして、物凄い勢いで飛んでくる見覚えのある何かを確認した。
「げ・・・!」
才人が慌てて伏せるのとほぼ同時、赤服の男が右手に持った刀を投げる。
男の投げた刀は飛来した物体・・・ロケットランチャーの弾に衝突し爆発、相殺する。
しかし、近距離での爆発に立った状態で晒され、男の体が軽く揺らめく。
そして・・・その隙ともよべる瞬間を、才人は見逃さなかった。
鞄に手を突っ込みながら、立ち上がる。そして、支給品を掴み・・・
「当たりだ!」
左手の輝きと共に、玩具にしか見えない刀を取り出す。
そこまでの時間、僅か数秒。しかし、その一瞬の間に悪魔も体勢を立て直していた。
そして、物凄い勢いで飛んでくる見覚えのある何かを確認した。
「げ・・・!」
才人が慌てて伏せるのとほぼ同時、赤服の男が右手に持った刀を投げる。
男の投げた刀は飛来した物体・・・ロケットランチャーの弾に衝突し爆発、相殺する。
しかし、近距離での爆発に立った状態で晒され、男の体が軽く揺らめく。
そして・・・その隙ともよべる瞬間を、才人は見逃さなかった。
鞄に手を突っ込みながら、立ち上がる。そして、支給品を掴み・・・
「当たりだ!」
左手の輝きと共に、玩具にしか見えない刀を取り出す。
そこまでの時間、僅か数秒。しかし、その一瞬の間に悪魔も体勢を立て直していた。
しかし・・・左手に輝くガンダールヴの紋章、それを目にした男の表情がはじめて変わる。
それは困惑と躊躇。それはほんの一瞬の事。
その僅かな空白で間合いを詰め、才人は剣閃一つで男の左腕を斬り捨てた。
そして、もう一撃を加えようとして、男に三度目の蹴りを食らい、弾き飛ばされる。
地面を転がり、体勢を立て直した時には・・・盛大な水音と共に、男は姿を消していた。
それは困惑と躊躇。それはほんの一瞬の事。
その僅かな空白で間合いを詰め、才人は剣閃一つで男の左腕を斬り捨てた。
そして、もう一撃を加えようとして、男に三度目の蹴りを食らい、弾き飛ばされる。
地面を転がり、体勢を立て直した時には・・・盛大な水音と共に、男は姿を消していた。
「無事だったか・・・」
防波堤に佇む才人のもとに、仮面をつけた男が駆け寄ってくる。
その右手には見覚えのある物体。どうやら、あれを撃ったのはこの男らしい。
「助けてもらって、ありがとうございます」
「いや、むしろこちらは謝りたい・・・私もあれほどの威力とは思わなくてね」
本当に申し訳なさそうに言う男に才人は苦笑する。
確かに、あの爆発で左耳が聞こえにくい感じだが、それでも助かったのは彼のおかげである。
仮面の青年が落ちている物体を拾うのを眺めながら、才人は己が幸運に感謝した・・・
「って・・・何を拾ってるんですか!」
彼が拾っていたのは襲撃者の左腕・・・正確には左腕の肘から先と、その手が握っている刀だった。
「いや、これは私の知り合い―仲間の刀でね。一応回収しておこうかと・・・
・・・それより、この腕。血がまったく出てないようなんだが・・・」
「ああ、それはこの道具の特殊な効果ですよ」
そう言って、才人は手にした刀を持ち上げる。
仮面の男は『そうか・・・』と呟くと、首を傾げて刀を見つめた。
防波堤に佇む才人のもとに、仮面をつけた男が駆け寄ってくる。
その右手には見覚えのある物体。どうやら、あれを撃ったのはこの男らしい。
「助けてもらって、ありがとうございます」
「いや、むしろこちらは謝りたい・・・私もあれほどの威力とは思わなくてね」
本当に申し訳なさそうに言う男に才人は苦笑する。
確かに、あの爆発で左耳が聞こえにくい感じだが、それでも助かったのは彼のおかげである。
仮面の青年が落ちている物体を拾うのを眺めながら、才人は己が幸運に感謝した・・・
「って・・・何を拾ってるんですか!」
彼が拾っていたのは襲撃者の左腕・・・正確には左腕の肘から先と、その手が握っている刀だった。
「いや、これは私の知り合い―仲間の刀でね。一応回収しておこうかと・・・
・・・それより、この腕。血がまったく出てないようなんだが・・・」
「ああ、それはこの道具の特殊な効果ですよ」
そう言って、才人は手にした刀を持ち上げる。
仮面の男は『そうか・・・』と呟くと、首を傾げて刀を見つめた。
【H-2陸地よりの防波堤 1日目 深夜】
【平賀才人@ゼロの使い魔】
[状態]:全身にかすり傷、疲労困憊、左耳が聞こえにくい
[装備]:チャンバラ刀@ドラえもん
[道具]:チャンバラ刀専用のり@ドラえもん、支給品一式(配給品残数不明)
[思考・状況]
1:とりあえず仮面の青年と情報交換
2:鞄の中身などを確認する
基本:殺し合いには乗らない
※参加者名簿を確認していないため、自分以外に誰かいるのかわかっていません
※地図を確認していないため、現在地もわかりません
※赤い服の男(アーチャー)を危険人物だと認識しました
【平賀才人@ゼロの使い魔】
[状態]:全身にかすり傷、疲労困憊、左耳が聞こえにくい
[装備]:チャンバラ刀@ドラえもん
[道具]:チャンバラ刀専用のり@ドラえもん、支給品一式(配給品残数不明)
[思考・状況]
1:とりあえず仮面の青年と情報交換
2:鞄の中身などを確認する
基本:殺し合いには乗らない
※参加者名簿を確認していないため、自分以外に誰かいるのかわかっていません
※地図を確認していないため、現在地もわかりません
※赤い服の男(アーチャー)を危険人物だと認識しました
※チャンバラ刀とのり
未来の子供がちゃんばらごっこに使う道具
実際に斬れるが血は出なく、専用のりでくっつけると治る
未来の子供がちゃんばらごっこに使う道具
実際に斬れるが血は出なく、専用のりでくっつけると治る
【ハクオロ@うたわれるもの】
[状態]:健康
[装備]:破壊の杖(M72ロケットランチャー)/残弾0@ゼロの使い魔、
オボロの刀(1本)@うたわれるもの
[道具]:支給品一式、アーチャーの左腕
[思考・状況]
1:少年と情報交換をする
2:エルルゥ達との合流
基本:降りかかる火の粉は払うが、殺し合いはしない
※赤い服の男(アーチャー)を危険人物だと認識しました
※もう1本のオボロの刀はロケットランチャーの弾と相殺しました
[状態]:健康
[装備]:破壊の杖(M72ロケットランチャー)/残弾0@ゼロの使い魔、
オボロの刀(1本)@うたわれるもの
[道具]:支給品一式、アーチャーの左腕
[思考・状況]
1:少年と情報交換をする
2:エルルゥ達との合流
基本:降りかかる火の粉は払うが、殺し合いはしない
※赤い服の男(アーチャー)を危険人物だと認識しました
※もう1本のオボロの刀はロケットランチャーの弾と相殺しました
防波堤での戦闘から一時間以上も後・・・遊園地の岸部付近にアーチャーの姿があった。
周囲を軽く見回した後、アーチャーはすぐ近くにあった建物――管理事務所らしき場所に入る。
「・・・・・・」
そして、その場にあったソファーに座り、軽く息をついて・・・彼は忌々しげに自らの左腕を見つめた。
一瞬の油断から奪われたそこは、肘から先が失われ、痛々しい姿を晒している。
何故か痛みや出血は無かったが片腕を失ったのは大きかった。思わず舌打ちをしながら目を閉じる。
らしくもない油断・・・その原因は少年の左手。そこに光り輝いた紋章。
「あれは・・・令呪、だったのか?」
一瞬だったため確認は出来なかったが・・・明らかに魔術的な印象を受けた。
ならばあの少年は・・・魔術師、なのだろうか?
そして、この地には彼のサーヴァントもいるのだろうか?
意図しない迷宮に踏み込みそうになって、アーチャーは頭を振って目を開く。
・・・あの少年が何者にせよ、自分が行うことは変わらないのだ。
アーチャーは背もたれに身体を預け、休息を取りつつ・・・干将・莫耶の投影を開始した。
周囲を軽く見回した後、アーチャーはすぐ近くにあった建物――管理事務所らしき場所に入る。
「・・・・・・」
そして、その場にあったソファーに座り、軽く息をついて・・・彼は忌々しげに自らの左腕を見つめた。
一瞬の油断から奪われたそこは、肘から先が失われ、痛々しい姿を晒している。
何故か痛みや出血は無かったが片腕を失ったのは大きかった。思わず舌打ちをしながら目を閉じる。
らしくもない油断・・・その原因は少年の左手。そこに光り輝いた紋章。
「あれは・・・令呪、だったのか?」
一瞬だったため確認は出来なかったが・・・明らかに魔術的な印象を受けた。
ならばあの少年は・・・魔術師、なのだろうか?
そして、この地には彼のサーヴァントもいるのだろうか?
意図しない迷宮に踏み込みそうになって、アーチャーは頭を振って目を開く。
・・・あの少年が何者にせよ、自分が行うことは変わらないのだ。
アーチャーは背もたれに身体を預け、休息を取りつつ・・・干将・莫耶の投影を開始した。
【G-3遊園地内の建物 1日目 黎明】
【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]:疲労、左腕喪失
[装備]:無し
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:干将・莫耶の投影
2:参加者を全員殺す
3:ギガゾンビを殺す
※先程の少年(平賀才人)は魔術師かも知れないと考えています
【アーチャー@Fate/stay night】
[状態]:疲労、左腕喪失
[装備]:無し
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
1:干将・莫耶の投影
2:参加者を全員殺す
3:ギガゾンビを殺す
※先程の少年(平賀才人)は魔術師かも知れないと考えています
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平賀才人 | 57:有機生命体の耐久度調査 | |
ハクオロ | 57:有機生命体の耐久度調査 | |
12:守護者 | アーチャー | 93:Unknown to Death. Nor known to Life |