のこされたもの(相棒) ◆WwHdPG9VGI
立ち寄った民家のソファーに横たわりながら次元は天井を睨んでいた。
(クーガーって奴の名前が呼ばれて、シグナムとかいうルパンを殺した女の名前が呼ばれてねえってことは、っと……)
改めて自己問答する必要もない。その女が勝ち残ったということだ。
聞いた話では、クーガーという男は相当の手練らしい。
あの化け物染みた力を持つ劉鳳ですら、クーガーという男には一目置いているように感じられた。
そんな男ですら、敗れた。
(ルパンが殺られたのも無理はねえ……。か?)
ちっと次元は心の中で舌打ちした。
長年の相棒がくだらない相手に殺られたのではないと知って、どこか安堵している自分に気づいたからである。
共闘した人間達の仲間が倒されたことを知って喜ぶとは何事か。
(すまねえ……。嬢ちゃん)
心配そうに顔をしかめ、クーガーがいるであろう方角を見つめていた碧色の髪の少女に
――確か魅音とかいった――次元は心の中で詫びを入れた。
(しかしまあ、そこまでの奴となると、気を入れてかからねえと返り討ちにされかねえな)
ミイラ取りがミイラになっては笑い話にもならない。
(頼むぜ、相棒)
.454カスールカスタムオート。
とんでもないじゃじゃ馬であるが、人外を相手にするには丁度いい。
ぽんとシャツの上から銃を叩き、次元は隣の『相棒』に視線を移した
「どうした? 相棒」
返事はなかった。
放送の中で高町なのは、八神太一の名が呼ばれて以来、ぶりぶりざえもんは明らかに元気がない。
知り合って間もないがそのくらいは分かる。
「……カズマやヤマトにあわせる顔がない」
しばらくたってから、出会った頃の威勢のよさが嘘のような声音で、ぶりぶりざえもんが言った。
なのはを見つけられなかったこと、そして大切な仲間であるヤマトの友達を『おたすけ』できなかったことは、
ぶりぶりざえもんにとって大きなショックだったようだ。
(こりゃ結構重症だな……)
大きくため息をつき、少し考えた後、
「あのよ、人を『おたすけする』ってのはそんなに簡単なことか?」
蒼星石、前原圭一、竜宮レナ、ソロモンの顔が次元の脳裏に浮かぶ。
圭一とレナの戦いを、ソロモンの馬鹿な真似を、止めたかった。
だが。
(クーガーって奴の名前が呼ばれて、シグナムとかいうルパンを殺した女の名前が呼ばれてねえってことは、っと……)
改めて自己問答する必要もない。その女が勝ち残ったということだ。
聞いた話では、クーガーという男は相当の手練らしい。
あの化け物染みた力を持つ劉鳳ですら、クーガーという男には一目置いているように感じられた。
そんな男ですら、敗れた。
(ルパンが殺られたのも無理はねえ……。か?)
ちっと次元は心の中で舌打ちした。
長年の相棒がくだらない相手に殺られたのではないと知って、どこか安堵している自分に気づいたからである。
共闘した人間達の仲間が倒されたことを知って喜ぶとは何事か。
(すまねえ……。嬢ちゃん)
心配そうに顔をしかめ、クーガーがいるであろう方角を見つめていた碧色の髪の少女に
――確か魅音とかいった――次元は心の中で詫びを入れた。
(しかしまあ、そこまでの奴となると、気を入れてかからねえと返り討ちにされかねえな)
ミイラ取りがミイラになっては笑い話にもならない。
(頼むぜ、相棒)
.454カスールカスタムオート。
とんでもないじゃじゃ馬であるが、人外を相手にするには丁度いい。
ぽんとシャツの上から銃を叩き、次元は隣の『相棒』に視線を移した
「どうした? 相棒」
返事はなかった。
放送の中で高町なのは、八神太一の名が呼ばれて以来、ぶりぶりざえもんは明らかに元気がない。
知り合って間もないがそのくらいは分かる。
「……カズマやヤマトにあわせる顔がない」
しばらくたってから、出会った頃の威勢のよさが嘘のような声音で、ぶりぶりざえもんが言った。
なのはを見つけられなかったこと、そして大切な仲間であるヤマトの友達を『おたすけ』できなかったことは、
ぶりぶりざえもんにとって大きなショックだったようだ。
(こりゃ結構重症だな……)
大きくため息をつき、少し考えた後、
「あのよ、人を『おたすけする』ってのはそんなに簡単なことか?」
蒼星石、前原圭一、竜宮レナ、ソロモンの顔が次元の脳裏に浮かぶ。
圭一とレナの戦いを、ソロモンの馬鹿な真似を、止めたかった。
だが。
4人とも死んだ。
沈黙したままのぶりぶりざえもんに向かって次元は続けた。
「人間ってのはしょうもねえ生き物でな。大体の奴は、てめえ1人のことで精一杯だ。
人の世話なんぞ焼いてる暇はねえ。そういうもんだ」
「だが、わたしは――」
「だからよ」
俯いたまま力なく言い返そうとするぶりぶりざえもんの言葉を、低い声で次元は遮った。
「人を助けるなんてのは、普通の人間じゃ無理だ……。普通の人間には、な」
次元の言葉に、ぶりぶりざえもんは何かを考えるかのように腕組みをした。
ややあって、俯き加減だったその顔が傲然と引き上げられた。
ぶりぶりざえもんの瞳がどこか不敵なものを宿しているように見えたのは、次元の気のせいだろうか?
「次元よ。おまえの言うことにも一理あるかもしれん。だが、わたしにはあてはまらないな」
「ほう? 何でだ?」
ニヒルな笑みを口の端に上らせ、次元は問い返す。
するとぶりぶりざえもんは、
「わたしが、救いの『ヒーロー』だからだ。
ヒーローにできないことはない! なぜならば、ヒーローにできないことはないからだ!」
胸を張って言い放った。
数瞬の間があって、くっと次元の口から笑い声が漏れた。
「なるほど。そりゃ道理だな」
肩を震わせながら、それでもどこか嬉しげに次元は言った。
「うむ! ところで、これからどうするのだ? 次元」
「もうちょい休んだら、劉鳳がクーガーって男と別れた場所に行ってみるさ。どうせもう、目と鼻の先だしな」
急ぐ必要はなくなったが、行ってみても損はないだろう。
劉鳳とクーガーという男が別れた時間を考えると、シグナムという女はとうに移動しているだろうが、
ひょっとすれば何か手がかりが残されているかもしれない。
もっとも、そんな物を残すようなヌケサクにルパンがやられるハズもないから、望みは薄いだろうが……。
(つまんねぇことを考えちまった詫びだ。あの嬢ちゃんに、形見の一つでも、持って帰ってやっかな)
「人間ってのはしょうもねえ生き物でな。大体の奴は、てめえ1人のことで精一杯だ。
人の世話なんぞ焼いてる暇はねえ。そういうもんだ」
「だが、わたしは――」
「だからよ」
俯いたまま力なく言い返そうとするぶりぶりざえもんの言葉を、低い声で次元は遮った。
「人を助けるなんてのは、普通の人間じゃ無理だ……。普通の人間には、な」
次元の言葉に、ぶりぶりざえもんは何かを考えるかのように腕組みをした。
ややあって、俯き加減だったその顔が傲然と引き上げられた。
ぶりぶりざえもんの瞳がどこか不敵なものを宿しているように見えたのは、次元の気のせいだろうか?
「次元よ。おまえの言うことにも一理あるかもしれん。だが、わたしにはあてはまらないな」
「ほう? 何でだ?」
ニヒルな笑みを口の端に上らせ、次元は問い返す。
するとぶりぶりざえもんは、
「わたしが、救いの『ヒーロー』だからだ。
ヒーローにできないことはない! なぜならば、ヒーローにできないことはないからだ!」
胸を張って言い放った。
数瞬の間があって、くっと次元の口から笑い声が漏れた。
「なるほど。そりゃ道理だな」
肩を震わせながら、それでもどこか嬉しげに次元は言った。
「うむ! ところで、これからどうするのだ? 次元」
「もうちょい休んだら、劉鳳がクーガーって男と別れた場所に行ってみるさ。どうせもう、目と鼻の先だしな」
急ぐ必要はなくなったが、行ってみても損はないだろう。
劉鳳とクーガーという男が別れた時間を考えると、シグナムという女はとうに移動しているだろうが、
ひょっとすれば何か手がかりが残されているかもしれない。
もっとも、そんな物を残すようなヌケサクにルパンがやられるハズもないから、望みは薄いだろうが……。
(つまんねぇことを考えちまった詫びだ。あの嬢ちゃんに、形見の一つでも、持って帰ってやっかな)
■
F-7エリアの民家の薄暗い台所にゲインはいた。
何をしているのかといえば、休息と栄養補給である。
悠長なことを、と言う事無かれ。
腹が減っては戦が出来ない、これはまごうことなき真実なのである。
それに、目覚めて以来ずっと走りどおしだったため、疲れがピークに達している。
休息は必要だった。
「ゲイナーの奴、ちゃんと食ってるかな?」
フライパンの中の肉と野菜に塩コショウを振りかけでの粘り強さもかなりのものだ。
(オーバーマンがなければ何にもできない、って奴ではないよな)
しかし決して、荒事に長けているわけではない。
にもかかわらず、これだけの人間が死んでいる中で生き残っていることを考えるに、
(誰か頼りになる人間と行動を共にしている可能性が高い)
そしてそれは『のはらしんのすけ』にも言えることだ。
いくらあの美しく気高かった『のはらみさえ』の子息であろうと、5歳児が生き延びるには、ここの状況は過酷過ぎる。
単独か複数かは分からないが、とにかく力のある何者かに保護されているのだろう。
だが彼らの行方はようとして知れなかった。
(まあ、それについては俺の責任でもあるんだが)
キャスカに殺されかけて一日中眠っていたせいで、光、みさえ、セラス以外の人間には――
光の名を思い浮かべた瞬間、ゲインの眉間に皺が寄った。
(すまん、ひかる。命を救われたというのに、君には何も返すことはできなかったな)
友達思いの輝くような笑顔を持った勇敢な少女だった。
後5年もすれば、口説き甲斐のある素晴らしい女性になっただろうに。
ひかるが話していた彼女の友、ほうおうじふう、を保護することもできない。
彼女の命もまた、既に失われてしまったからだ。
(君達の無念は俺が背負う。背負っていって君達の分も必ず、あの外道に鉛弾を叩きこんでやる。
どうか安らかに眠ってくれ)
しばらくして、ゲインは火を止めると、フライパンの中の食材を一気に掻き込んだ。
(体の中に血が足りん……。毛長象の肉が欲しい所だな。
美味な上に栄養満天でお得だゾウ……。なんてな)
それでもほぼ一日ぶりの食事はつかれきった体に活力を与えてくれた。
空になったフライパンを流しに放り込み、ゲインは地図を広げた。
残る亜空間破壊装置の場所は3箇所。
(今の所、俺の行動はバレちゃいない)
それは自分が今生きていることと、禁止エリアの場所が証明している。
しかし、自分がこれから亜空間破壊装置を破壊し続けていけば、露見する可能性が高い。
この空間は多くの手段で監視されているし、亜空間破壊装置のある場所から次々と送信が途絶えていけば不審に思うだろう。
しかも、特定の人物がその場所を訪れた後に必ず、となれば怪しさ爆発だ。
今は『参加者がたまたま亜空間破壊装置を壊した』、という事例が二つもあったから見過ごされていると考えた方がいい。
(最悪なのは、俺が頭を吹き飛ばされ、その上俺の書いたメモが誰にも発見されないことだ)
自分の死体を見つけた人間が見落とすことがないように、トイレの中でメモをもう1セットつくり、
ゲインの服にも忍ばせ、地図にも赤丸をつけ詳細を書いてある。
とはいえ、ゲインの死体がある場所を禁止エリアにすることもギガゾンビには可能だ。
(というか、誰だってそうする。俺だってギガゾンビの立場だったらそうする)
いきなり禁止エリアが追加されれば不自然に思う人間もいるだろうが、「殺し合いのペースが落ちた」とでも何とでも放送すればいい。
疑う人間は更に減る。
それに、だ。
亜空間破壊装置の正体と所在を突き止めたときには考え付かなかったが、
(もし仮に全ての亜空間破壊装置を破壊したとしても、それに気づいたギガゾンビが全員の首輪を爆破する可能性がある。
古今東西、犯罪者が恐れるものの一つは官憲への通報だからな。
助けが来るのが先か、ギガゾンビが首輪を爆破するのが先かだが、そんなベットの高い賭けはあんまりやりたくないもんだ)
自分の命より高い掛け金などありはしない。無論、他にどうにもならなくなれば話は別だが……。
「やはり、仲間が必要だな……」
薄暗い天井を仰いだ後、ゲインは立ち上がった。
今持っている知識の拡散を手伝ってくれる仲間、首輪を外せる仲間、亜空間破壊装置を壊して回ってくれる仲間……。
だが、接触する人間が善人とは限らない。
猛烈なジレンマをゲインは感じた。
優勝狙いの参加者に殺されてしまえば、全てはご破算。
そんなミスは許されない。
自分の命はもう、自分の物だけではない。
ひかるに、そしてみさえに救われたこの命、むざむざ散らせるわけにはいかない。
そしてもう一つ。
何をしているのかといえば、休息と栄養補給である。
悠長なことを、と言う事無かれ。
腹が減っては戦が出来ない、これはまごうことなき真実なのである。
それに、目覚めて以来ずっと走りどおしだったため、疲れがピークに達している。
休息は必要だった。
「ゲイナーの奴、ちゃんと食ってるかな?」
フライパンの中の肉と野菜に塩コショウを振りかけでの粘り強さもかなりのものだ。
(オーバーマンがなければ何にもできない、って奴ではないよな)
しかし決して、荒事に長けているわけではない。
にもかかわらず、これだけの人間が死んでいる中で生き残っていることを考えるに、
(誰か頼りになる人間と行動を共にしている可能性が高い)
そしてそれは『のはらしんのすけ』にも言えることだ。
いくらあの美しく気高かった『のはらみさえ』の子息であろうと、5歳児が生き延びるには、ここの状況は過酷過ぎる。
単独か複数かは分からないが、とにかく力のある何者かに保護されているのだろう。
だが彼らの行方はようとして知れなかった。
(まあ、それについては俺の責任でもあるんだが)
キャスカに殺されかけて一日中眠っていたせいで、光、みさえ、セラス以外の人間には――
光の名を思い浮かべた瞬間、ゲインの眉間に皺が寄った。
(すまん、ひかる。命を救われたというのに、君には何も返すことはできなかったな)
友達思いの輝くような笑顔を持った勇敢な少女だった。
後5年もすれば、口説き甲斐のある素晴らしい女性になっただろうに。
ひかるが話していた彼女の友、ほうおうじふう、を保護することもできない。
彼女の命もまた、既に失われてしまったからだ。
(君達の無念は俺が背負う。背負っていって君達の分も必ず、あの外道に鉛弾を叩きこんでやる。
どうか安らかに眠ってくれ)
しばらくして、ゲインは火を止めると、フライパンの中の食材を一気に掻き込んだ。
(体の中に血が足りん……。毛長象の肉が欲しい所だな。
美味な上に栄養満天でお得だゾウ……。なんてな)
それでもほぼ一日ぶりの食事はつかれきった体に活力を与えてくれた。
空になったフライパンを流しに放り込み、ゲインは地図を広げた。
残る亜空間破壊装置の場所は3箇所。
(今の所、俺の行動はバレちゃいない)
それは自分が今生きていることと、禁止エリアの場所が証明している。
しかし、自分がこれから亜空間破壊装置を破壊し続けていけば、露見する可能性が高い。
この空間は多くの手段で監視されているし、亜空間破壊装置のある場所から次々と送信が途絶えていけば不審に思うだろう。
しかも、特定の人物がその場所を訪れた後に必ず、となれば怪しさ爆発だ。
今は『参加者がたまたま亜空間破壊装置を壊した』、という事例が二つもあったから見過ごされていると考えた方がいい。
(最悪なのは、俺が頭を吹き飛ばされ、その上俺の書いたメモが誰にも発見されないことだ)
自分の死体を見つけた人間が見落とすことがないように、トイレの中でメモをもう1セットつくり、
ゲインの服にも忍ばせ、地図にも赤丸をつけ詳細を書いてある。
とはいえ、ゲインの死体がある場所を禁止エリアにすることもギガゾンビには可能だ。
(というか、誰だってそうする。俺だってギガゾンビの立場だったらそうする)
いきなり禁止エリアが追加されれば不自然に思う人間もいるだろうが、「殺し合いのペースが落ちた」とでも何とでも放送すればいい。
疑う人間は更に減る。
それに、だ。
亜空間破壊装置の正体と所在を突き止めたときには考え付かなかったが、
(もし仮に全ての亜空間破壊装置を破壊したとしても、それに気づいたギガゾンビが全員の首輪を爆破する可能性がある。
古今東西、犯罪者が恐れるものの一つは官憲への通報だからな。
助けが来るのが先か、ギガゾンビが首輪を爆破するのが先かだが、そんなベットの高い賭けはあんまりやりたくないもんだ)
自分の命より高い掛け金などありはしない。無論、他にどうにもならなくなれば話は別だが……。
「やはり、仲間が必要だな……」
薄暗い天井を仰いだ後、ゲインは立ち上がった。
今持っている知識の拡散を手伝ってくれる仲間、首輪を外せる仲間、亜空間破壊装置を壊して回ってくれる仲間……。
だが、接触する人間が善人とは限らない。
猛烈なジレンマをゲインは感じた。
優勝狙いの参加者に殺されてしまえば、全てはご破算。
そんなミスは許されない。
自分の命はもう、自分の物だけではない。
ひかるに、そしてみさえに救われたこの命、むざむざ散らせるわけにはいかない。
そしてもう一つ。
――あなたはそれをやってくれるんでしょう?
死に行くのはらみさえが残した言葉がゲインの頭に響いた。
(当然だ)
請負人の誇りにかけて、エクソダスへの道を必ず開いてみせる。
のはらみさえの依頼を完遂してみせる。
一人でも成し遂げてみせるという覚悟はある。
それでも……。
(ゲイナー。本当にお前、どこで何やってるんだ?)
ゲインはここにはいない相棒に向かってそう語りかけた。
(当然だ)
請負人の誇りにかけて、エクソダスへの道を必ず開いてみせる。
のはらみさえの依頼を完遂してみせる。
一人でも成し遂げてみせるという覚悟はある。
それでも……。
(ゲイナー。本当にお前、どこで何やってるんだ?)
ゲインはここにはいない相棒に向かってそう語りかけた。
■
「――遅いではないか」
小用をすませて戸口から現れた次元に、ぶりぶりざえもんが怒ったように言った。
「すまんすまん」
「まったく。出発してすぐにトイレとは何事だ! 出る前にしてこないからそうなるのだ!
大体、男なら黙って立ちションだろう!」
「生憎と俺は紳士なんでな。そんなはしたない真似はおできになりません、と」
もっとも、理由はそれだけではなかったが、いちいち説明するのも面倒くさい。
ふと、次元はぶりぶりざえもんの尻のポケットに目を止めた。
ぶりぶりざえもんの尻からは相変わらず翠色の光がこぼれている。
「一体全体、お前さんの尻のそれは、なんなんだ?」
どうにも気になる。
「だから、これはもうわたしのものだと――」
言いかけてぶりぶりざえもんは足を止め、しばらく腕を組んで考える仕草をした後、
「特別に見せてやる。お前はわたしの相棒だからな」
「そりゃどうも……」
次元は軽く肩をすくめた。
ぶりぶりざえもんがポケットに手をいれ、翠色の光輪を幾重にもまとった宝石をつかみ出した。
次元の目が細められた。
ディパックの中から赤い光輪をまとった宝石を取り出し、ぶりぶりざえもんの物と見比べてみる。
やはり両者は非常に良く似ていた。
「おまえさん……。それをホテルのどこで見つけたって?」
「翠星石という人形の首輪の近くに落ちていたのだ……。次元こそ、どこで見つけたのだ?」
驚いたように次元の宝石を見ながら、ぶりぶりざえもんが尋ね返してくる。
「……蒼星石って人形の残骸の近くさ」
偶然にしては出来すぎている。
(こりゃ巡り合わせってやつかねえ?)
チラリと横目でぶりぶりざえもんを見ると、自分の宝石を大事そうに抱えていた。
大きく嘆息をもらし、次元は赤い宝石をぶりぶりざえもんに差し出した。
「なあ、相棒。一つ条件を守ってくれるんなら、こいつをお前さんにやってもいい」
ぶりぶりざえもんは驚いたように、目をしばたたかせた。
「後で返せって言っても返さんぞ?」
「言わねえよ」
「そ、そうか……。で、その約束とはなんなのだ?」
「大したこっちゃねえさ」
帽子に手をやりながら次元は言った。
「その二つをずっと一緒にしといてやってくれ。片方だけを誰かにやっちまったりとか、そういうのは無しだ」
「……そんなことでいいのか?」
次元が頷くと、ぶりぶりざえもんはヒヅメを伸ばして赤い宝石を受け取り、嬉しそうに二つともポケットにしまいこんだ。
「わけを聞いてもかまわんか?」
「……俺の会った蒼星石って人形は、翠星石って人形に会いたがっててな。
だから、その……なんだ。その持ち物同士だけでも、一緒にいさせてやりたくて、な」
意味の無い行為だと思いもするが、それでもそうしてやりたいと、思う。
(俺もついにヤキがまわったかねぇ……)
自分はいつからこんなにセンチになったのかと、次元は自嘲気味に笑う。
「その蒼星石という人形は、翠星石という人形の相棒だったのか?」
「ん? ああ、そうだったかな」
確か姉妹と言っていたような気もしたが、これ以上突っ込まれるのも面倒だと思い、次元はそう返事をした。
「うむ! 次元、お前は正しいことをしたぞ。相棒ってのはいつも一緒にいるもんだ」
うんうんと頷くぶりぶりざえもんに、
「……いつも一緒にいたら、飽きちまうんじゃねぇのか?」
なんとなく背中がむずがゆい気がして、韜晦するように次元は言った。
「何を言うか。お前だって、ルパンとかいう男と長いこと一緒だったのだろう?」
「まあ……。そりゃ否定しねえがな」
言わなければ良かった、と次元はため息をついた。
まあ、目的地へ行く理由が理由であるから、話さなければならなかったのだが。
「そう言えば詳しく聞いてなかったが……。そのルパンという奴はどんなやつだったのだ?」
「そうだな……」
ぶりぶりざえもんの問いかけに、次元は首を捻った。
「スケベでがめつい上に、やたらと人に厄介な仕事を押し付けやがる奴だったよ」
実際、厄介という言葉で片付けたくないほどの厄介ごとがルパンと一緒にいると降りかかってきた。
「う~む……」
次元の答えにぶりぶりざえもんは唸り声を上げた。
「そんなやつと、どうして一緒にいたのだ?」
「そりゃよ……」
まいったな、というように次元は帽子に手をあてた。
「暇つぶしには事欠かなかったから……。かもなぁ」
「……よくわからん」
「そうかい」
次元は苦笑を浮かべた。
「だが、一つ分かった」
「……何が分かったって?」
「おまえとルパンは友達だったのだな。わたしとヤマトのような」
思わず次元は立ち止まり、ぶりぶりざえもんの顔を直視する。
次元の視線とぶりぶりざえもんの真っ直ぐな視線が交錯した。
「おともだち……ね」
肩をすくめ、次元は帽子を深く被り直した。
(まいったね、こりゃ……。おともだち、ときたもんだ)
茶化すような言葉を胸の中で呟きながらも、次元は歩を進める。
どうにもこの二足歩行する豚といると調子が狂う。
だが、不思議と悪い気分はしなかった。
むしろ――
小用をすませて戸口から現れた次元に、ぶりぶりざえもんが怒ったように言った。
「すまんすまん」
「まったく。出発してすぐにトイレとは何事だ! 出る前にしてこないからそうなるのだ!
大体、男なら黙って立ちションだろう!」
「生憎と俺は紳士なんでな。そんなはしたない真似はおできになりません、と」
もっとも、理由はそれだけではなかったが、いちいち説明するのも面倒くさい。
ふと、次元はぶりぶりざえもんの尻のポケットに目を止めた。
ぶりぶりざえもんの尻からは相変わらず翠色の光がこぼれている。
「一体全体、お前さんの尻のそれは、なんなんだ?」
どうにも気になる。
「だから、これはもうわたしのものだと――」
言いかけてぶりぶりざえもんは足を止め、しばらく腕を組んで考える仕草をした後、
「特別に見せてやる。お前はわたしの相棒だからな」
「そりゃどうも……」
次元は軽く肩をすくめた。
ぶりぶりざえもんがポケットに手をいれ、翠色の光輪を幾重にもまとった宝石をつかみ出した。
次元の目が細められた。
ディパックの中から赤い光輪をまとった宝石を取り出し、ぶりぶりざえもんの物と見比べてみる。
やはり両者は非常に良く似ていた。
「おまえさん……。それをホテルのどこで見つけたって?」
「翠星石という人形の首輪の近くに落ちていたのだ……。次元こそ、どこで見つけたのだ?」
驚いたように次元の宝石を見ながら、ぶりぶりざえもんが尋ね返してくる。
「……蒼星石って人形の残骸の近くさ」
偶然にしては出来すぎている。
(こりゃ巡り合わせってやつかねえ?)
チラリと横目でぶりぶりざえもんを見ると、自分の宝石を大事そうに抱えていた。
大きく嘆息をもらし、次元は赤い宝石をぶりぶりざえもんに差し出した。
「なあ、相棒。一つ条件を守ってくれるんなら、こいつをお前さんにやってもいい」
ぶりぶりざえもんは驚いたように、目をしばたたかせた。
「後で返せって言っても返さんぞ?」
「言わねえよ」
「そ、そうか……。で、その約束とはなんなのだ?」
「大したこっちゃねえさ」
帽子に手をやりながら次元は言った。
「その二つをずっと一緒にしといてやってくれ。片方だけを誰かにやっちまったりとか、そういうのは無しだ」
「……そんなことでいいのか?」
次元が頷くと、ぶりぶりざえもんはヒヅメを伸ばして赤い宝石を受け取り、嬉しそうに二つともポケットにしまいこんだ。
「わけを聞いてもかまわんか?」
「……俺の会った蒼星石って人形は、翠星石って人形に会いたがっててな。
だから、その……なんだ。その持ち物同士だけでも、一緒にいさせてやりたくて、な」
意味の無い行為だと思いもするが、それでもそうしてやりたいと、思う。
(俺もついにヤキがまわったかねぇ……)
自分はいつからこんなにセンチになったのかと、次元は自嘲気味に笑う。
「その蒼星石という人形は、翠星石という人形の相棒だったのか?」
「ん? ああ、そうだったかな」
確か姉妹と言っていたような気もしたが、これ以上突っ込まれるのも面倒だと思い、次元はそう返事をした。
「うむ! 次元、お前は正しいことをしたぞ。相棒ってのはいつも一緒にいるもんだ」
うんうんと頷くぶりぶりざえもんに、
「……いつも一緒にいたら、飽きちまうんじゃねぇのか?」
なんとなく背中がむずがゆい気がして、韜晦するように次元は言った。
「何を言うか。お前だって、ルパンとかいう男と長いこと一緒だったのだろう?」
「まあ……。そりゃ否定しねえがな」
言わなければ良かった、と次元はため息をついた。
まあ、目的地へ行く理由が理由であるから、話さなければならなかったのだが。
「そう言えば詳しく聞いてなかったが……。そのルパンという奴はどんなやつだったのだ?」
「そうだな……」
ぶりぶりざえもんの問いかけに、次元は首を捻った。
「スケベでがめつい上に、やたらと人に厄介な仕事を押し付けやがる奴だったよ」
実際、厄介という言葉で片付けたくないほどの厄介ごとがルパンと一緒にいると降りかかってきた。
「う~む……」
次元の答えにぶりぶりざえもんは唸り声を上げた。
「そんなやつと、どうして一緒にいたのだ?」
「そりゃよ……」
まいったな、というように次元は帽子に手をあてた。
「暇つぶしには事欠かなかったから……。かもなぁ」
「……よくわからん」
「そうかい」
次元は苦笑を浮かべた。
「だが、一つ分かった」
「……何が分かったって?」
「おまえとルパンは友達だったのだな。わたしとヤマトのような」
思わず次元は立ち止まり、ぶりぶりざえもんの顔を直視する。
次元の視線とぶりぶりざえもんの真っ直ぐな視線が交錯した。
「おともだち……ね」
肩をすくめ、次元は帽子を深く被り直した。
(まいったね、こりゃ……。おともだち、ときたもんだ)
茶化すような言葉を胸の中で呟きながらも、次元は歩を進める。
どうにもこの二足歩行する豚といると調子が狂う。
だが、不思議と悪い気分はしなかった。
むしろ――
(やれやれ。いい年こいてよ……)
もう一度苦笑をもらすと、次元は口を開いた。
「もう少しだぜ、相棒」
その声を不二子や五ェ門が聞いたなら、100回に1回はこういったかもしれない。
「もう少しだぜ、相棒」
その声を不二子や五ェ門が聞いたなら、100回に1回はこういったかもしれない。
まさかその豚にルパンが変装しているのではなかろうな、と。
■
(来ないか……)
未だ立ち尽くしたままのストレイト・クーガーの死体を見下ろしながらシグナムは呟きをもらした。
クラールヴィントにも反応は無い。
窓から離れ、シグナムは壁にもたれかかった。
ひょっとしたら、あの場から去った、金髪の女、眼鏡の少女、クーガーが背負っていた少女、
彼らのうちの誰かが死体を埋葬しようとやってくるかもしれない。
その際に劉鳳が一緒ならば手出しはしない。劉鳳がいないのならば、不意打ちで片をつける。
そう方針を立てて戻ってきたのだが――
(徒労に終わるかもしれんな)
それならそれでいい、とシグナムは思う。殺せる相手を殺せる時に殺せばいい、焦る必要はない。
来ないなら回復に専念するまでのこと。
(それにしても、なのはが死ぬとはな……)
先ほどの放送を思い出しながら、シグナムは思わずにいられなかった。
未だ立ち尽くしたままのストレイト・クーガーの死体を見下ろしながらシグナムは呟きをもらした。
クラールヴィントにも反応は無い。
窓から離れ、シグナムは壁にもたれかかった。
ひょっとしたら、あの場から去った、金髪の女、眼鏡の少女、クーガーが背負っていた少女、
彼らのうちの誰かが死体を埋葬しようとやってくるかもしれない。
その際に劉鳳が一緒ならば手出しはしない。劉鳳がいないのならば、不意打ちで片をつける。
そう方針を立てて戻ってきたのだが――
(徒労に終わるかもしれんな)
それならそれでいい、とシグナムは思う。殺せる相手を殺せる時に殺せばいい、焦る必要はない。
来ないなら回復に専念するまでのこと。
(それにしても、なのはが死ぬとはな……)
先ほどの放送を思い出しながら、シグナムは思わずにいられなかった。
――『あの』、高町なのはが、と。
とはいっても、実の所それほど驚いているわけでもなかった。
なのはには弱点がある。『不殺』の強固な信念がそれだ。
そこを突かれて負けたのだろう、とシグナムは推測していた。
(このゲームは、多くを望んで勝ち残れるほど甘くはない)
騎士の名だの、誇りだの、仲間だの、信念だの、情だの、そんなものを持ち続けながら勝ち残れるほど甘くはない。
それを自分は、あの最速だった男と戦って悟ることが出来た。
自問自答を繰り返し、誓いを建て直し、ヴィータの形見を捨て、それでも捨てきれていなかったものを捨てることが出来た。
(礼を言うぞ、ストレイト・クーガー。お前のおかげで私は全てを捨てることができた)
シグナムの願うものは、求めるものは唯一つ。
なのはには弱点がある。『不殺』の強固な信念がそれだ。
そこを突かれて負けたのだろう、とシグナムは推測していた。
(このゲームは、多くを望んで勝ち残れるほど甘くはない)
騎士の名だの、誇りだの、仲間だの、信念だの、情だの、そんなものを持ち続けながら勝ち残れるほど甘くはない。
それを自分は、あの最速だった男と戦って悟ることが出来た。
自問自答を繰り返し、誓いを建て直し、ヴィータの形見を捨て、それでも捨てきれていなかったものを捨てることが出来た。
(礼を言うぞ、ストレイト・クーガー。お前のおかげで私は全てを捨てることができた)
シグナムの願うものは、求めるものは唯一つ。
八神はやての復活のみ。
鋼鉄の意志をその瞳に宿したまま、シグナムは獲物を待ちつづける。
どれくらいたったろうか?
どれくらいたったろうか?
クラールヴィントに反応があった。
(生命反応が二つ……。それに……。これは!?)
参加者の命の他に、思わぬ副産物も手に入るかもしれない。
シグナムは立ち上がり、急ぎ足で階下へと向かった。
参加者の命の他に、思わぬ副産物も手に入るかもしれない。
シグナムは立ち上がり、急ぎ足で階下へと向かった。
■
突然次元が足を止めた。
どうした、と尋ねようとして、ぶりぶりざえもんは慌てて次元の後ろに避難する。
彼ら二人の行く手に、人の形をしたものがある。
(妙だな……)
次元の瞳に困惑の色彩が浮かび上がった。
よくよく見れば、その人影は背中を向けている。そしてまったく動かない。
意を決して次元は間合いを詰め始めるが、その人影はまったく反応しない。
(さては!?)
頭に閃くものがあり、次元は足早に近づき、自分の予想通りであると知って、
多分に驚きの成分を含有した息と共に、言葉を吐き出した。
「……立ち往生、とはな」
月明かりの中で、立ったまま事切れている男の髪は緋色。
聞かされたストレイト・クーガーの特徴と合致している。
「おたすけできなくて、残念だ」
ようやく近づいてきたぶりぶりざえもんが、クーガーを見上げながら言った。
その手がクーガーの体をあちこち触っているのは、まあご愛嬌といった所か。
「仕方ねえさ。死人を助けることはできねえ、それこそ閻魔さまでもなけりゃあな。
死人に生者がしてやれることといったら……」
落ちていたサングラスをディパックにしまい、よっこらせと次元はクーガーの体を抱え上げた。
「墓を作ってやることぐらいだ」
次元の言葉に、こくりとぶりぶりざえもんは頷いた。
穴を掘る道具がないため、時間はかかったがなんとか埋葬が終わった。
「何をするつもりだ? 次元」
近くに落ちていた木を盛り土に突き刺し、ディパックからコンバットナイフを取り出した次元を見て、
ぶりぶりざえもんは怪訝そうに眉を潜めた。
「ん? 俺が生まれたとこじゃ、こうやって墓標に名前を刻んでやるのさ。ストレイトクーガーここに眠る、ってな」
そう言って、次元は木をナイフで削り始めた。
どうした、と尋ねようとして、ぶりぶりざえもんは慌てて次元の後ろに避難する。
彼ら二人の行く手に、人の形をしたものがある。
(妙だな……)
次元の瞳に困惑の色彩が浮かび上がった。
よくよく見れば、その人影は背中を向けている。そしてまったく動かない。
意を決して次元は間合いを詰め始めるが、その人影はまったく反応しない。
(さては!?)
頭に閃くものがあり、次元は足早に近づき、自分の予想通りであると知って、
多分に驚きの成分を含有した息と共に、言葉を吐き出した。
「……立ち往生、とはな」
月明かりの中で、立ったまま事切れている男の髪は緋色。
聞かされたストレイト・クーガーの特徴と合致している。
「おたすけできなくて、残念だ」
ようやく近づいてきたぶりぶりざえもんが、クーガーを見上げながら言った。
その手がクーガーの体をあちこち触っているのは、まあご愛嬌といった所か。
「仕方ねえさ。死人を助けることはできねえ、それこそ閻魔さまでもなけりゃあな。
死人に生者がしてやれることといったら……」
落ちていたサングラスをディパックにしまい、よっこらせと次元はクーガーの体を抱え上げた。
「墓を作ってやることぐらいだ」
次元の言葉に、こくりとぶりぶりざえもんは頷いた。
穴を掘る道具がないため、時間はかかったがなんとか埋葬が終わった。
「何をするつもりだ? 次元」
近くに落ちていた木を盛り土に突き刺し、ディパックからコンバットナイフを取り出した次元を見て、
ぶりぶりざえもんは怪訝そうに眉を潜めた。
「ん? 俺が生まれたとこじゃ、こうやって墓標に名前を刻んでやるのさ。ストレイトクーガーここに眠る、ってな」
そう言って、次元は木をナイフで削り始めた。
■
(反応は、あれか……)
シグナムは、二足歩行する豚のズボンからこぼれている翠と赤色の光を凝視した。
(アーティファクトや昼間に見つけた赤いハートのペンダントと似たような反応だ。
しかもこの反応の強さ……。かなりの魔力を秘めていると見ていいだろう。しかも二つ)
望外の結果だ。
傷を完全に癒すため、まだ見ぬ高町なのはを倒したほどの相手と戦うため、是が非でも手に入れておきたい。
しかも、相手は一人。
二足歩行する豚は、何処からどうみても隙だらけだ。論外と言っていい。
(落ち着け……)
もう一人の男の方は、纏っている空気からして、決して侮っていい相手ではない。
隙をうかがうシグナムの視線の先で、男と豚が墓堀りを始める。
どうやら、二人は自分が隠れているとは少しも思っていないようだ。
当然だ。犯行現場に残る殺害犯はいない。
シグナムは、二足歩行する豚のズボンからこぼれている翠と赤色の光を凝視した。
(アーティファクトや昼間に見つけた赤いハートのペンダントと似たような反応だ。
しかもこの反応の強さ……。かなりの魔力を秘めていると見ていいだろう。しかも二つ)
望外の結果だ。
傷を完全に癒すため、まだ見ぬ高町なのはを倒したほどの相手と戦うため、是が非でも手に入れておきたい。
しかも、相手は一人。
二足歩行する豚は、何処からどうみても隙だらけだ。論外と言っていい。
(落ち着け……)
もう一人の男の方は、纏っている空気からして、決して侮っていい相手ではない。
隙をうかがうシグナムの視線の先で、男と豚が墓堀りを始める。
どうやら、二人は自分が隠れているとは少しも思っていないようだ。
当然だ。犯行現場に残る殺害犯はいない。
――普通ならば。
(その心理を逆手に取る)
気配を完全に絶ち、シグナムは男との間合いを詰めていく。
昼間のメイドの例もある。
慎重に細心の中の細心を払って殺気を消し、気配を消してシグナムは近づいていく。
魔力を込めた弓ならば既に届く間合い。しかし、シグナムは更に間合いを詰めていく。
考えてみれば、自分は相手が人間であれば常に矢を標的の手足に向けてはなっていた気がする。
気配を完全に絶ち、シグナムは男との間合いを詰めていく。
昼間のメイドの例もある。
慎重に細心の中の細心を払って殺気を消し、気配を消してシグナムは近づいていく。
魔力を込めた弓ならば既に届く間合い。しかし、シグナムは更に間合いを詰めていく。
考えてみれば、自分は相手が人間であれば常に矢を標的の手足に向けてはなっていた気がする。
――物陰から射殺する。それは騎士のすることではない
どこかでそう思っていたのか。
――何と甘い。
シグナムは心の中で嘲笑を浮かべる。
(甘い……。砂糖菓子より甘い)
クーガーの言うとおりだ。
自分には速さが足りなかった。余計な物を抱えたまま走ろうとして速度を落とした。
常に最速で結果を求めねばならなかったにもかかわらず。
それ故、取り返しのつかない物を失った……。
銃を構える。弓では、引き絞る際に弦の音が聞こえてしまう。
隙を窺う。男の決定的な隙を。
狩人の目で男を見つめるシグナムの視線の先で、男が背を向け、ナイフで木を削りだした。
ナイフがきらり、きらりと輝く。
シグナムは集中力を一気に高めた。刹那が永遠に引き伸ばされる。
殺気を極限まで消し、照準。
(甘い……。砂糖菓子より甘い)
クーガーの言うとおりだ。
自分には速さが足りなかった。余計な物を抱えたまま走ろうとして速度を落とした。
常に最速で結果を求めねばならなかったにもかかわらず。
それ故、取り返しのつかない物を失った……。
銃を構える。弓では、引き絞る際に弦の音が聞こえてしまう。
隙を窺う。男の決定的な隙を。
狩人の目で男を見つめるシグナムの視線の先で、男が背を向け、ナイフで木を削りだした。
ナイフがきらり、きらりと輝く。
シグナムは集中力を一気に高めた。刹那が永遠に引き伸ばされる。
殺気を極限まで消し、照準。
――殺った
指に力を込めようとした瞬間、シグナムは氷の冷徹さで確信した。
「うぐぁっ!?」
轟いた銃声が、シグナムの確信を打ち砕いた。
左腕からつんざくような痛みと出血。
あらぬ方向を向いたシグナムの銃から弾丸が今頃飛び出し、発射音を響かせた。
痛みと混乱がシグナムの思考を揺るがす。
驚愕を込めて見つめた先には、右手に銃を構えた男と慌ててその場から離れていく豚の姿。
豚のことは意識から一時削除し、シグナムは男に意識を集中させた。
驚くべきことに、男の顔は削っていた木の方を向いたままであった。
シグナムに顔を向けぬまま、男が声を放つ。
「なるほど……。不意打ちがお前さんの、得意技ってわけだ」
おどけたような口調の中には、抑えきれぬというような深い殺意の片鱗があった。
「貴様……」
ようやく向きなおった男にシグナムが憎悪の視線を叩きつけた。
男は自分の接近に気づき、その上でわざと後ろを向いてみせたのだろう。
そこまではいい。
(だが、どうやって?)
こちらの考えを読み取ったのか、男はニヤリと笑うと左手を開いて見せた。
男の掌の中にはナイフと共に手鏡があった。その二つが同時にきらりと光を放つ。
「こういうのはどっちかっつーと、俺の相棒が使うような手なんだが……。
やってみるもんだな。待たせるなと文句を言われた甲斐があったってもんだ」
シグナムは無言で剣を引き抜いた。
主の心を映し、剣が紅蓮をまとい、シグナムの殺気と剣気が暴風となって男を襲う。
だが、男は飄然とその全てを受け流し、笑みを浮かべ続ける。
「なるほどそういうカラクリか……。どうりで妙な傷だと思ったぜ」
男の呟きが風にのってシグナムの耳に届いた。
どこか確認するような男の声音に小さな疑問を抱きつつも、シグナムは思考する。
(あの銃、信じがたい威力だ。ヘタに食らえば騎士甲冑の上からでも致命傷になりかねない)
加えて先ほど見せた神速の早撃ち。
飛び道具の勝負では、まったく勝機がないだろう。
(ならば斬り倒して進むだけのこと!)
上段に振り被り、シグナムは烈火の眼光を男に向かって叩きつける。
男の目は、シルククハットに隠れて見えない。
(視線を隠すか)
やりづらい、とシグナムは心の中で舌打ちする。
しばし、二人の間に見えない糸が張り詰めた。
(血が止まらん……)
体内の魔力を使用したクラールヴィントによる処置程度ではふさがらなかったようだ。
長引けば不利。
あらぬ方向を向いたシグナムの銃から弾丸が今頃飛び出し、発射音を響かせた。
痛みと混乱がシグナムの思考を揺るがす。
驚愕を込めて見つめた先には、右手に銃を構えた男と慌ててその場から離れていく豚の姿。
豚のことは意識から一時削除し、シグナムは男に意識を集中させた。
驚くべきことに、男の顔は削っていた木の方を向いたままであった。
シグナムに顔を向けぬまま、男が声を放つ。
「なるほど……。不意打ちがお前さんの、得意技ってわけだ」
おどけたような口調の中には、抑えきれぬというような深い殺意の片鱗があった。
「貴様……」
ようやく向きなおった男にシグナムが憎悪の視線を叩きつけた。
男は自分の接近に気づき、その上でわざと後ろを向いてみせたのだろう。
そこまではいい。
(だが、どうやって?)
こちらの考えを読み取ったのか、男はニヤリと笑うと左手を開いて見せた。
男の掌の中にはナイフと共に手鏡があった。その二つが同時にきらりと光を放つ。
「こういうのはどっちかっつーと、俺の相棒が使うような手なんだが……。
やってみるもんだな。待たせるなと文句を言われた甲斐があったってもんだ」
シグナムは無言で剣を引き抜いた。
主の心を映し、剣が紅蓮をまとい、シグナムの殺気と剣気が暴風となって男を襲う。
だが、男は飄然とその全てを受け流し、笑みを浮かべ続ける。
「なるほどそういうカラクリか……。どうりで妙な傷だと思ったぜ」
男の呟きが風にのってシグナムの耳に届いた。
どこか確認するような男の声音に小さな疑問を抱きつつも、シグナムは思考する。
(あの銃、信じがたい威力だ。ヘタに食らえば騎士甲冑の上からでも致命傷になりかねない)
加えて先ほど見せた神速の早撃ち。
飛び道具の勝負では、まったく勝機がないだろう。
(ならば斬り倒して進むだけのこと!)
上段に振り被り、シグナムは烈火の眼光を男に向かって叩きつける。
男の目は、シルククハットに隠れて見えない。
(視線を隠すか)
やりづらい、とシグナムは心の中で舌打ちする。
しばし、二人の間に見えない糸が張り詰めた。
(血が止まらん……)
体内の魔力を使用したクラールヴィントによる処置程度ではふさがらなかったようだ。
長引けば不利。
――少し遠いが。
「はあぁ!!」
地面に叩きつけられたシグナムの剣先から衝撃波が走り、男に向かって殺到していく。
シュテルングウィンデを目くらましに、一気に間合いを詰めんとシグナムは脚に力を込めた。
次の瞬間、爆発的な推進力を得たシグナムの体が弾けるようにして前方に加速。
シグナムの体が一本の矢となって巻き上げられた土煙から飛び出した瞬間、
轟音。
「がっ!!」
右脚の大腿部に衝撃と激痛が走った。
シグナムの体は強制停止に追い込まれ、行き場を失った運動エネルギーと相まって、シグナムの体がゆれる。
地面に叩きつけられたシグナムの剣先から衝撃波が走り、男に向かって殺到していく。
シュテルングウィンデを目くらましに、一気に間合いを詰めんとシグナムは脚に力を込めた。
次の瞬間、爆発的な推進力を得たシグナムの体が弾けるようにして前方に加速。
シグナムの体が一本の矢となって巻き上げられた土煙から飛び出した瞬間、
轟音。
「がっ!!」
右脚の大腿部に衝撃と激痛が走った。
シグナムの体は強制停止に追い込まれ、行き場を失った運動エネルギーと相まって、シグナムの体がゆれる。
怖気がシグナムの全身を駆けた。
無傷の左足で地を蹴り、横っ飛び。シグナムの体が地面と衝突。
痛みに顔をしかめつつ素早く身を起こしたシグナムの視線の先、男がちっと舌打ちをする。
(後一瞬遅れたら、撃たれていたな……)
冷たい汗が背筋を流れるのをシグナムは感じた。
(遠い……。恐ろしく遠い)
男との距離が遥か彼方に感じられる。
ここにおいて、シグナムは己の判断が誤りであったことを悟る。
この拳銃使いは強い。今の武装では、勝てるかどうか分からない。
喉から手が出るほど欲しい魔力の塊を2つも前にして、無意識の内に、相手を弱いと思い込みたい心理が働いていたか。
(1発でいい、カートリッジさえあれば!)
だが無い物はない。
それどころか、右脚の治療のためにまたも体内の魔力を消費してしまった。
無論完治するはずもなく、痛みもそのままであるし血も完全には止まらない。
焦燥を募らせながら、シグナムは奥歯を噛んだ。
痛みに顔をしかめつつ素早く身を起こしたシグナムの視線の先、男がちっと舌打ちをする。
(後一瞬遅れたら、撃たれていたな……)
冷たい汗が背筋を流れるのをシグナムは感じた。
(遠い……。恐ろしく遠い)
男との距離が遥か彼方に感じられる。
ここにおいて、シグナムは己の判断が誤りであったことを悟る。
この拳銃使いは強い。今の武装では、勝てるかどうか分からない。
喉から手が出るほど欲しい魔力の塊を2つも前にして、無意識の内に、相手を弱いと思い込みたい心理が働いていたか。
(1発でいい、カートリッジさえあれば!)
だが無い物はない。
それどころか、右脚の治療のためにまたも体内の魔力を消費してしまった。
無論完治するはずもなく、痛みもそのままであるし血も完全には止まらない。
焦燥を募らせながら、シグナムは奥歯を噛んだ。
■
(あぶねえ、あぶねえ)
爆煙の流れの変化を読み取っておおよそを見極め、体が現れた瞬間に弾丸を叩きこむ。
言葉で言うのは楽だが、実行するのはすさまじく難易度が高い。
成功するには成功したが、女のあのスピード……。一瞬遅かったらと思うと寒気がする。
(ったく、じゃじゃ馬が……)
チラリと次元は、手元の銃に目を落とした。
反動がありすぎて、どうしても一発目と二発目の間に間隔ができてしまう。
お陰で二発目を発射する前に、敵に逃げられてしまった。
だが、首尾よく脚を奪うことができた。これで、あの女は逃げることができない。
(ルパン……。今、仇を取ってやるぜ)
心の中でルパンに語りかけながら、次元は氷点下の殺意を女に向けた。
爆煙の流れの変化を読み取っておおよそを見極め、体が現れた瞬間に弾丸を叩きこむ。
言葉で言うのは楽だが、実行するのはすさまじく難易度が高い。
成功するには成功したが、女のあのスピード……。一瞬遅かったらと思うと寒気がする。
(ったく、じゃじゃ馬が……)
チラリと次元は、手元の銃に目を落とした。
反動がありすぎて、どうしても一発目と二発目の間に間隔ができてしまう。
お陰で二発目を発射する前に、敵に逃げられてしまった。
だが、首尾よく脚を奪うことができた。これで、あの女は逃げることができない。
(ルパン……。今、仇を取ってやるぜ)
心の中でルパンに語りかけながら、次元は氷点下の殺意を女に向けた。
「その勝負、しばし待て!!」
凛としたぶりぶりざえもんの声に、次元は思わずそちらに視線を送ってしまう。
ハッとなり、慌てて女の方に神経を戻すが、どうやらそれは女も同じだったらしい。
ハッとなり、慌てて女の方に神経を戻すが、どうやらそれは女も同じだったらしい。
――何だってんだ?
困惑する次元を他所に、ぶりぶりざえもんの声が高らかに響いた。
「女、お前に聞きたいことがある!」
返答は無かった。
かまわずぶりぶりざえもんは言葉を続ける。
「女、お前は勝ち残って何をしたいのだ? 世界征服か?」
またも沈黙が満ちたが、ぶりぶりざえもんの視線に根負けしたようで、女は一つため息をつき、口を開いた。
「……世界などいらん。私が欲しいものは一つだ。それ以外は何も求めない」
淡々とした声音で女が言う。ぶりぶりざえもんが大きく頷いた。
「そうか! ならば話は早い! 女、いますぐこんなことはやめるのだ! そして、わたしと共にみんなをおたすけしよう!」
「……おたすけ?」
「そうだ、おたすけだ。人をおたすけするものは、また人におたすけされる。
お前が誰かをおたすけすれば、きっとその誰かがお前を、おたすけしてくれる。
一人では無理なことでも、誰かの力を借りればできる。そういうもんだ!」
女の口から嘆息が漏れた。
「――無理だ。私の望みは誰にもかなえることはできん。できるとしたら、それこそ悪魔ぐらいだろう。
しかも最高に悪趣味の、な」
「やってみなければ分からんではないか!」
「分かっているのだ……。これ以上ないほどな」
次元の眉間に皺が寄った。
(殺し合いやってる相手の事情なんぞ聞くもんじゃねえなぁ)
この女の望むものとやらの見当がついてしまった。
だから、この女が絶対に止まらないであろうことも分かってしまう。
次元は拳銃を握り直し、女の瞬き一つも見逃すまいと女に神経を集中させた。
次元の視界の中で、女とぶりぶりざえもんの会話は続く。
「私もお前に聞きたいことがある」
「何だ?」
「何故お前は、おたすけとやらをしようとする? この殺し合いのゲームの中で」
女の質問に、ぶりぶりざえもんが大きく胸を張った。
「わたしが、救いのヒーローぶりぶりざえもんだからだ!!」
流石にこの答えは予想していなかったのだろう。
きょとん、としたように女は目を見開いた後、小さく微笑んだ。
おりよく吹いた風が女の桃色の髪をなで上げ、秀麗な鼻先と顔立ちを月光の下にさらけ出す。
月の女神ですらたじろぐのではないかというその美しさに、次元ですら一瞬心を奪われた。
「救いのヒーローか……。なるほどな」
花のような笑みを浮かべたまま女が言う。
「そうだ! しかも今は貧血大サービスで助け賃は無料だ!」
女はしばらく考えるそぶりを見せ、
「――なら、1つ頼みをきいて欲しい」
「うむ。言ってみろ」
「女、お前に聞きたいことがある!」
返答は無かった。
かまわずぶりぶりざえもんは言葉を続ける。
「女、お前は勝ち残って何をしたいのだ? 世界征服か?」
またも沈黙が満ちたが、ぶりぶりざえもんの視線に根負けしたようで、女は一つため息をつき、口を開いた。
「……世界などいらん。私が欲しいものは一つだ。それ以外は何も求めない」
淡々とした声音で女が言う。ぶりぶりざえもんが大きく頷いた。
「そうか! ならば話は早い! 女、いますぐこんなことはやめるのだ! そして、わたしと共にみんなをおたすけしよう!」
「……おたすけ?」
「そうだ、おたすけだ。人をおたすけするものは、また人におたすけされる。
お前が誰かをおたすけすれば、きっとその誰かがお前を、おたすけしてくれる。
一人では無理なことでも、誰かの力を借りればできる。そういうもんだ!」
女の口から嘆息が漏れた。
「――無理だ。私の望みは誰にもかなえることはできん。できるとしたら、それこそ悪魔ぐらいだろう。
しかも最高に悪趣味の、な」
「やってみなければ分からんではないか!」
「分かっているのだ……。これ以上ないほどな」
次元の眉間に皺が寄った。
(殺し合いやってる相手の事情なんぞ聞くもんじゃねえなぁ)
この女の望むものとやらの見当がついてしまった。
だから、この女が絶対に止まらないであろうことも分かってしまう。
次元は拳銃を握り直し、女の瞬き一つも見逃すまいと女に神経を集中させた。
次元の視界の中で、女とぶりぶりざえもんの会話は続く。
「私もお前に聞きたいことがある」
「何だ?」
「何故お前は、おたすけとやらをしようとする? この殺し合いのゲームの中で」
女の質問に、ぶりぶりざえもんが大きく胸を張った。
「わたしが、救いのヒーローぶりぶりざえもんだからだ!!」
流石にこの答えは予想していなかったのだろう。
きょとん、としたように女は目を見開いた後、小さく微笑んだ。
おりよく吹いた風が女の桃色の髪をなで上げ、秀麗な鼻先と顔立ちを月光の下にさらけ出す。
月の女神ですらたじろぐのではないかというその美しさに、次元ですら一瞬心を奪われた。
「救いのヒーローか……。なるほどな」
花のような笑みを浮かべたまま女が言う。
「そうだ! しかも今は貧血大サービスで助け賃は無料だ!」
女はしばらく考えるそぶりを見せ、
「――なら、1つ頼みをきいて欲しい」
「うむ。言ってみろ」
――ん?
次元の目が細められた。
「死んでくれ」
女の手から缶のようなものが滑り落ち、閃光が辺りを埋め尽くした。
時系列順で読む
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237:「エクソダス、しようぜ!」(後編) | ゲイン・ビジョウ | 244:のこされたもの(狂戦士) |
229:Take a good speed. | シグナム | 244:のこされたもの(狂戦士) |
235:孤城の主(後編) | 次元大介 | 244:のこされたもの(狂戦士) |
235:孤城の主(後編) | ぶりぶりざえもん | 244:のこされたもの(狂戦士) |