女神のもとにアンデッドは集う ◆QkyDCV.pEw
驚きはあったものの、人間以外の存在を知っていた金木研にとって、その化物との邂逅は他の化物と遭遇した人間達程には驚きは無かったし、それなりにではあるが冷静な対応も出来た。
「クソッタレが、何で俺がこんな事につき合わされなきゃなんねえんだ。なあ、おい人間! めんどうくせえからよお! さっさと皆殺しにして終わらせちまう事にするわ! なあおい!」
見上げんばかりの巨体を持つ、真っ黒な獣がこちらを見下ろしながらそう凄んで来ているのを見ても、カネキは怯え震えを見せる事なく、どうすべきかを静かに考えていた。
そんなカネキの動じぬ態度が、紅煉の神経を逆なでする。
「てめえは生きたまま食らってやるよ!」
紅煉の言葉にカネキは少し驚き目を見開いた後、ぷっと小さく吹き出した。
「そんなにおいしそうかな、僕」
なめられた、そう感じた紅煉の怒りの爪撃がカネキの頭部を真横から薙ぎ払う。
今度は本気で驚くカネキ。紅煉の一撃の鋭さが、その粗暴な口調からは想像も出来ぬ程であったせいだ。
何とか低くしゃがみこんでかわしたが、紅煉の続く蹴りにカネキは大きく跳躍して後退するしか出来なかった。
追いかけてくるかと思ったのだが、紅煉は余裕を見せたままゆっくりと歩み寄ってくる。
「ほう、妙な臭いがすると思ったが、お前普通の人間じゃねえな」
「君程じゃないさ」
今度は紅煉が大笑いする番であった。
「ガハハハハハハッ、そりゃそうだ。歯応えがあるのも偶には良い。いつもやわらかい肉ばかりじゃ顎が弱っちまう」
カネキは気の進まない様子で紅煉に訊ねた。
「君は、赫子を持ってるかい?」
「あん? かぐね? 何だそりゃ」
「……いや、いいんだ。知らないんなら」
持っていたら、コイツのも食べなきゃならんと思うと少し気が重くなっていた所なので、無いというのならそれに越した事はない。めちゃくちゃ硬くてマズそうであるし。
カネキはこの化物を相手に、まずはその手の内を見てやろうと距離を取って、フットワークで紅煉の仕掛けを捌きにかかる。
ねぐらからそれと気付かぬ内に連れて来られて、右も左もわからない間に何時の間にか川だか海だかの側に立っていて、横を向いたら黒い巨体が。
そのまま、オレサマオマエマルカジリ、と来たもんだ。とにかく今は、状況把握に努めるのが一番だとカネキは考えていた。
海に面した港湾部。巨大船が停泊出来るだけの作りになっているここは、港らしく側にコンテナが幾つか並んでおり、クレーンも二機程が備え付けられている。
この場所で、ナザリックの支配者、偉大なるアインズ・ウール・ゴウンは、同行者である少女、恵飛須沢胡桃に、骸骨らしいまるで表情の出ぬ声で問うた。
「で、その重機は持っていくつもりか?」
少し驚いた顔で胡桃。
「え? 駄目かな?」
「ふむ……持っていく事の利点は理解出来るし君もしていると思うが、では持っていく事の不利益に関してはどうだ?」
「えっと、何かマズイ事あるの?」
胡桃の返事にアインズは僅かながら失望するも、この娘はまだ学生であると考えればそれも無理からぬかと不利益に関して説明してやる事にした。簡潔に一言で。
「目立つだろう」
「あー……そっか。うん、そっか……目立つのは、良くないか」
アインズの一言を、色々と思考をこらしながら咀嚼していく胡桃。その様子を兄のように見守るアインズ。
自分で考える事が大切なのだ。さらにアドバイスを一つ。
「考える事があるのなら口に出してみるのも良いぞ。自分で口にしてみる事で思考が整理されていくし、その考えを他人に伝えなければならない場合は、どうすればより伝わり易いかの確認も出来る」
ましてや、と続ける。
「今は共に考えるべき仲間も居るわけだしな」
胡桃はアインズの言葉に、にかっと笑い返す。
「うん、そうだね。そうするよ」
まず、と人差し指を立てる胡桃。
「図体が大きくて遠くからでも良く見える。その上音も大きいからコレに乗ってると、こちらが気付くより先に相手がこちらに気付いちゃう。見つけてもらうには良いけど、見つかりたくない相手が居るかもしれないのなら、これは良く無い」
うむ、と一つ頷くアインズ。胡桃は伺うような上目遣いで続ける。
「居る……よね、多分。見つからない方が良い人」
「十中八九居るな。それこそ人間の姿を見つけるなり襲い掛かってくるようなのが」
「そ、そこまでかな? どうしてそう思う?」
「そうでもなければ、殺し合いを企画した者の意図が果たされないからだ。皆が皆武力行使を躊躇するような者ばかりであったならこの企画は成立しないだろう。なら、そういった躊躇無く人を殺して回るような存在を、連中は必ず入れてくる」
胡桃の表情に怯えが見えたが、アインズはこれは必要な事だと言葉を止めない。
「そうでないかもしれない。もしかしたら殺し合いをさせようと企図した者達にメンバーの選択権なんて無かったのかもしれないし、口ではああ言っておきながら殺し合いをしない事が彼等の望みだなんて事もあるかもしれない。だが、備えるべきは最悪に、だ。そうだろう?」
「うん」
人を見つけたらまずは観察し、その上で接触するかどうか決める。そう出来れば随分と有利に立ち回れるだろう。そしてそれはこの企画に参加させられた全員の共通認識でもあろう、とアインズは言う。
「だから最初の勝負所は、どちらが先に見つけるか、になるだろう」
あはは、と笑いながら胡桃。
「じゃあ私もアインズさんも最初のアレはダメダメだったんだ」
ふっ、と小さく息を吐くアインズ。
「そうだな、ダメダメだったんだ」
お互いに笑い合う。そして、慎重に動こうという事で意思の統一が図れた所で、ではどう慎重に動くかに議論は移って行く。
そんな話をしていた所で、二人は小さな物音に気付く。
足音だ。二人は互いに目配せしあいながら、重機の影に隠れる。
足音、階段を下りて来る音。かんかんかん、とプレハブ二階建ての建物から、外付けの鉄の階段を下りて来る人影があった。
アインズはまだ慣れたものであったが、胡桃は驚きに目を丸くする。その女性は、胡桃がこれまで見た事もない程に、そして美人を見慣れているアインズですら文句無しと断定する程に、美しい容姿をしていた。
その女性は、口に手を当て、残る手を上に伸ばし、大きく欠伸をしながら階段を下りて来る。
だが、これはおかしい。アインズがすぐに、続いて胡桃も気付けた。小声でアインズに問う胡桃。
「あの人、あそこに居たっておかしくない? あんな近くなら重機の音絶対聞こえてたはず」
「ああ、その通りだ。となれば重機の音が聞こえない遠くからきてあのプレハブを通って今姿を現したか、もしくは誘っているか……」
その女性は階段を降りきると、周囲をきょろきょろと見回した後、不機嫌そうに表情を歪め、地団駄を踏み喚きだした。
「もーーーーーー! 何でまだ来てないのよ! カーーーーーズーーーーーマーーーーーーー! 私が困ってるんだからさっさと探しに来なさいよ! アンタ最近私の下僕としての自覚足りないわよっ!」
アインズが、私はアレと同じだったのかと密かにヘコみだした。
「大体ねえ! 女神の私を呼びつけておいて! 殺し合いしろってどういう事よ! こらーーーー! 聞いてるの!? あんまり調子乗ってると私のゴッドブローが火を噴くわよ! いいの!? ほんっとーにやっちゃうわよー!」
再び周囲を見渡す女性。
「おーい、カーズーマー。どこー? ホントにいないのー? 怒らないから出ておいでー? めぐみんー? だくねすー? ねー、ねーってばー」
たたたと駆け出し、コンテナの横とかを覗いてみる女性。
「お、おーい、かずまー、めぐみんー、だくねすー……こ、ころしあいって、なによー……」
声のトーンが小さくなっていく。
「……べ、別にっ、私一人でも怖くないし……でも、すぐに来てくれたらもうすっごい褒めちゃうわよ。そ、それと、今日の晩御飯ほんのちょこっとなら、分けてあげてもいいかなーなんてー……ねー、ねー、だれかー……」
胡桃がアインズに目で問いかける。言いたい事はわかる。見ているこっちがやるせなくなってくるのはアインズも一緒だ。
何かあってもすぐに対応出来るよう備えながら、アインズは胡桃にゴーサインを送る。本来なら圧倒的に戦力の高いアインズがそうすべきだろうが、アインズは自分の外見が他人からどう見えるかに関して、ほぼ正確な認識を持っているのでそんな真似はしないのである。
「あ、あのー……」
重機の陰から姿を現し、遠慮がちに声をかける胡桃。女性は、突然足元を黒い悪魔で埋め尽くされたかのような勢いで飛び上がった。
「うひゃいっ!?」
そして恐る恐る振り向き、胡桃の姿を見るともうあからさますぎて笑えるぐらいに、ほっと安堵したのがわかった。目下の女の子が相手ならば、怖い目に遭う事も無いだろうという事か。
「あ、あんたはその、えっと……」
「私、恵飛須沢胡桃。その、こんな所に無理矢理連れてこられて困ってる口だけど、貴女も?」
そうそう、と勢い良く食いつく女性。
「私もそうなの! あ、いや、私は何せ女神様だし、こんなぐらいでどうこうなったりしないけど? でもほら、ちょっと危ないっていうか? 仲間っていうか下僕っていうかも私とはぐれて迷子になっちゃったみたいで、仕方ないから探してあげないとなって感じなのよ」
色々と文脈が通っていない部分があったり意味がわからない単語があったりもするが、言いたい事は一応通じるので胡桃は大人にスルー。
「そっか、私も友達が来てるみたいで探そうって思ってたんだ。良かったら一緒にどう?」
ぱーっと顔中が輝かん勢いで身を乗り出してくる女性。
「そ、そうなの!? ちょうど私も……あ、いえ、ま、まあどうしてもって言うんなら仕方が無いわね。私も人探ししなきゃならないんだけど、そんなに一人が不安なら、私も女神だし? 一緒に居てあげてもいいわよっ!」
つっこみたい、心からつっこみたい、と思った胡桃であるが、胡桃にはこの後越えなければならないハードルが控えているので自重する。
「そっか、良かった。えっと、名前は……」
「アクアよ。よろしくね、クルミ…………ん? クルミの方が名前よね?」
「うん」
「もしかしてクルミって、日本人?」
「そうだよ。アクアは何処出身?」
「だから私は女神だってば。日本はちょっと前まで私の担当だったんだから」
「へー」
メガミとは、何処かの国の略称なのだろうか、と小首を傾げる胡桃であったが、その件の追求より先に胡桃はやるべき事がある。
気を取り直して胡桃は言う。
「そ、それでさ。実は私一人じゃないんだ。もう一人居るんだけど……」
「そうなの? まあ人数は多い方がいいでしょ」
「そう言ってくれる? ありがとう。でもね、その人ちょっと外見が特徴的で。本当に良い人なんだよ? でも見た目で凄く驚くだろうし、事によったらいきなり攻撃仕掛けるなんて事したくなっちゃうかもしれなくて……」
あははは、と笑うアクア。
「何言ってんのよ、クルミの友達なんでしょ? ならそんな真似しないわよ。それに私は女神だって言ったでしょ? 向こうじゃ私、慈悲深い神様で通ってるんだから大丈夫大丈夫」
「そ、そう? じゃあ……えっと、アインズさーん、出てきてもいいですよー」
うむ、と重機の奥から姿を現すは、顔は骸骨の全身ローブ男、アインズ・ウール・ゴウンその人である。
アクアは、びしっとアインズを指差して吼えた。
「アンデッドですってーーーーーーーー!? この私の前に出て来るとは良い度胸ね! いいわすぐに即座に速攻で! あの世に送り返してあげる! たあああああああん!」
胡桃さんはすぐ側に居るのだが、止める暇もあらばこそ。
「あんでっどおおおおおおおおお!!」
胡桃と女との会話を隠れて聞きながら、早速拾った甲斐というものがあってくれたようだな、とアインズは満足気に頷く。
相手の女は少し、というかかなり、マイペースな人間のようだが、こうした所に連れてこられていながら問答無用で友好的だという事だけでも評価に値する。不安に怯え警戒するのではなく、情報を入手すべく前向きに行動するのは現状では適切な選択であると言えよう。
そうこうしていると女と胡桃とで話がまとまってきたようで、呼ばれたアインズは姿を現した。
「こんにちわ。私は……」
「たああああああああん! あんでっどおおおおおおおおお!」
いきなり攻撃された。
とはいえ100レベルオーバーロードのアインズにターンアンデッドなど効くはずも……。
「ぐああああああああああああ!?」
全身を焼き尽くすような炎に包まれるイメージ。アインズが予想だにしない不意打ちに思わず悲鳴を上げてしまう。
『ば、馬鹿な! この私にターンアンデッドを通すだと!? い、いや、即死は免れてはいるが……にしても、このダメージは座視出来ん!』
仕方なく反撃に出ようとしたアインズだったが、魔法はすぐに止まり、女、アクアは驚愕の表情でアインズを見ている。
「そんな!? 私のターンアンデッドが効かないなんて!?」
『いやいやいやいや、この上なく効果的でしたよ!? ていうかこの人何? もしかして女神って本当に女神なの!?』
思わず思考が素の鈴木悟に戻ってしまう程の驚きである。
大慌てで胡桃が間に割って入っている。
「ちょ、ちょっと待ってよ! いきなり攻撃しないって言ったじゃん!」
「何言ってるのよクルミ! アンデッドなんてみんなどうせロクでもない事しかしない害虫なんだから即座に退治しなきゃ!」
「そんな事無いって。アインズさんはあんなナリだけどきちんと私の話も聞いてくれたし……」
「あー! もうっ! カズマがリッチー庇う時みたいな事言わないでよ! それに! ほらっ! 見てみなさいあの凶悪そうな顔! あれは千人単位で人殺してるわよ~、女神の私が言うんだから間違いないわ!」
後に、千人どころではない人間ぶっ殺して平然としているアインズであるが、現時点ではそこまではしていない。していないだけでしても別に気にしないし、リザードマン集落とか粉砕するつもりでもあるけど。
もちろんそんな事など想像だにしない胡桃は、この発言に本気でキレた。
「は? 今なんて言った? ねえ、アンタさ。まだ全然アインズさんと話した事もないよな? なのに何でそんな事言えるのさ? 私はアインズさんに本当にヒドイ事して迷惑かけたのに、この人そんな私の事も気遣ってくれて、心配してくれるような人なんだぞ? なのに何? 良く、聞こえなかったんだけどさ、もしかしてアインズさんの事、害虫って言った? 言ってなかった? ねえ? ねえ!」
その剣幕に、アクアは数歩後ずさる。後、顔がもう負け犬顔になっている。
「え、あ、それは、その、そんなに怒ると思ってなかったっていうか……」
「怒るに決まってるだろ!? アインズさんって私にとって恩人みたいな人なんだぞ! その人馬鹿にされたら当たり前に怒るだろっ!?」
「あ、はい。その、すみませんでした……」
胡桃の怒りは収まる気配すらない。
「私じゃないよな!? 謝る先は!?」
アインズの方を向き、しおしおと頭を下げるアクア。
「す、すみませんでした」
アインズは準備していた魔法を収める。
「い、いや。わかってくれればいい。それより、アクアと言ったか。その強力な魔法は……」
怒鳴られて完全に萎縮していたアクアだったが、それでもアンデッドは嫌いなのか、アインズの質問に対し眉根を寄せてガンをくれる。胡桃に睨まれて即座に答えるが。
「わ、私は女神なんだもの。魔法が強力なのは当たり前でしょう」
アインズは思いつくままに疑問をぶつける。
「その女神というのは、誰にでもなれる、もしくは条件を満たせばなれる職業や種族みたいなものか?」
「はあ!? そんな訳ないじゃない! アンタ頭おかしいんじゃないの? 骸骨になって頭の中どっかに落としてきたんじゃ……」
勢い良く突っかかっておいて、胡桃に睨まれるとすぐに大人しくなるアクア。
少し慌てたアインズが胡桃に言ってきかせる。
「い、いや、今のは私の方が礼を欠いた質問だった。すまない、アクア」
「ふん、アンデッドに礼なんてこーとーなものがあるなんて……」
やっぱり胡桃に睨まれる。アインズは、コイツは学習能力が著しく低いのだなと、学習した。
ただ同時に、アインズにターンアンデッドを通すだけの魔力を持ちながら、胡桃には低姿勢である事に好感を覚える。
この魔力の高さと態度の大きさから察するに、アクアはかなり地位の高い人間なのだろう。
それが、実力的に遥か下であろう者の言葉にも、正しさを認めれば頭をたれて従うというのは、なかなか出来そうで出来ない事なのだ。
恐らくはそのカズマという者も、アクアの世話係のようなものか、と漠然とだが考えていた。
「なあ、アクアよ。女神の貴女がアンデッドの私を嫌うのは良くわかる話だ。だが、私はこれでもそれなりに力のあるマジックキャスターでな。私の魔法はきっと貴女の友人を見つける役に立つと思うんだが、どうかね? 私達と共に行かないか?」
疑わしげな目でアインズを見るアクア。
「本当に役に立つんでしょうねぇ……どーもアンデッドって信用ならないのよ。あのリッチーもそうだったし」
「リッチーに知り合いがいるのか?」
「ふん、カズマが駄目って言うから仕方なく生かしておいてあげてるのよ。って、アンデッドで生かしておくってのも変な話だけど」
「そうか、では一刻も早くそのカズマと言う者を探し出し、私との仲も取り持ってもらわねばな」
「あー! アンタもカズマに取り入る気ね!? そうはいかないわよ! カズマにごたごた言われる前に今ここで……」
もう何度目になるか、胡桃に睨まれてターンアンデッドの叫びを引っ込めるアクア。
ふてくされながらだが、アクアは同行を認めてくれた。それなりに話がまとまった所でアインズは胡桃に微笑みかけた。骸骨顔で笑えてるかどうか自信は無かったが。
「ありがとう胡桃。私の為に怒ってくれて」
え? と驚いた顔の胡桃。自分がやった事が、そういう類の事だと今の今まで気付いていなかったようだ。
急にわたわたと焦りだし、何やらしどろもどろに言い訳らしき事を言い出すが、まあ照れているのだろうとすぐにわかったのでアインズはそれに関してはリアクションはしないでおいてあげた。
カネキは自身の読みが甘かった事を悟る。
コレは、カネキの手に負える化物ではなかった。
「おいおいどーしたよ。逃げてばっかじゃ勝てねえぜ? ほら、攻撃攻撃。してこねーと俺がつまんねえだろうが」
紅煉と名乗ったこの化物は、力はもちろん、そのスピードもカネキを越えている。カネキが今捕まらないでいるのは、カネキが紅煉より体が小さいからだ。
また最高速度はあちらが上だが、加速度だけは辛うじて勝っている。体重はあればあるほど加速度は落ちる道理なのだから。それ以外は全部負けだ。
カネキの嗅覚は、この紅煉の性質を嗅ぎ取っていた。だからこそ、カネキは必死にコレに抗う。
人を嬲り痛めつける事を楽しみとする歪んだ性根が、言葉の端々、戦い方の随所に見え隠れしている。途中から戦い方に変化が見られたのは、カネキを甚振るつもりであるからだろう。
カネキの心中奥底に眠る、拭いがたい恐怖の記憶。地獄という言葉すら生ぬるい、あの時間が、カネキの前に蘇らんとしている。
最早余裕なんてない。紅煉から伸びる腕、そのあまりの速さから伸びたとしか形容しようのない腕とその先端部の爪。
これはグールのカネキですら見てから避けたのでは間に合わない。それでも避けられたのは、紅煉は人間をなめているせいか、挙動を隠すといった事をしないからだ。
人間であろうと獣であろうと、動き出そうと力を込めれば体の何処かに力が入る。右腕を前に振ろうとしたなら、左腕は同時に後ろに振った方が力が入りやすく、何も考えなければ自然と体はそう動く。
またその右腕だが、動くのは通常まず肩だ。そこから肘、手首となっていくのが普通だ。もっと体を動かす事に慣れている者ならば、脚や腰を連動させたりもする。
カネキは武術を学んだわけではないので、こういった人の体の挙動から次の動きを読むといった事を体系的に学んではいない。経験則として、体に染み付いているのだ。
並の武術家ならば、いやさ並のグールであってもとっくの昔に死んでいるような、濃密にすぎる経験を山と積む事で。
そんなカネキの素早さと経験が、紅煉の相手を単独で受け持つといった偉業を支えている。この上で、回避と再生に長けるという特徴と相手の強さを感じ取り徹底的に逃げに徹しているおかげで、彼はまだ命を永らえている。
もう、二時間以上、紅煉と戦い続けているというのに、だ。
「ハハーッハハア! すんげぇ面白いなお前! もうぜんっぜん諦めねえの! 弱っちいくせにしぶてぇし、いやいやいやいやいやいやいやいや、いいじゃねえか! 特にその顔! もう絶望のどん底だぜーみたいな顔しておきながら、そっからが本当に長ぇ! いいぜ、いいよなおい! その顔ほんっとうに好きだぜ俺ぁよう!」
逃げる。それが出来るなら最善であろう。だが、カネキはもう二時間も、逃げようとし続けてそれが為しえていないのだ。
これは実に面白いバランスである。紅煉も既に何度か、カネキを仕留めたと確信した瞬間があった。
それはカネキが逃亡を望んでいるのがわかっており、ならば敢えて隙を見せ逃げに歩を進ませておいて、その進んだ先一歩目を刈り取るといった手を打っていたからだ。
逃げるだけしか考えていない相手ならば、これでそのほとんどを殺せる。だがカネキは、その心が逃げる先を撃つといった動きすら、読みきっているようで。
ただそのせいで、見せてやった隙を突く事も出来ず、二時間も戦えば何度かはどうしてもやらかしてしまう紅煉のミスに付け込む事も出来なかった。
これでは時間と体力を浪費するだけだ。紅煉が特に手も変えず攻め続けているのはそれがわかっているからで、後は弱っていくカネキをじわじわといたぶってやればよい。
カネキ自身にもそれがわかっていても、どうにもしようがない。それでも折れないのは、その先に死よりも恐ろしい絶望を見ているからだ。必死さも、折れぬ心も、全ては恐怖より生まれていた。
荒い息で肩を怒らせたまま、紅煉の一挙手一投足から目を離さず、もう先先を考えた戦術ではなく、ただ次の瞬間を生き残る為だけの集中を見せる。
紅煉の雄叫びが轟く。
直後、腕でも足でもない、全身にての体当たりに虚を突かれたカネキは、勢い良くその身を宙へと投げ出すハメになった。
アインズは至高のアンデッド、オーバーロードではあるが、知覚能力を上げるスキルや魔法を使わない限り、あくまで並程度のそれしか持ち合わせていない。
それにナザリックでの日々、冒険者モモンとしての経験を積んではきているものの、自らを脅かす何者かを警戒して過ごす、といった日常からは無縁であった。
なので、危機感知能力に関してだけは、ゾンビに囲まれ常に警戒を強要されてきた恵飛須沢胡桃に一歩を譲る事となる。もちろん、そもそも警戒する気が皆無なアクアは論外である。
「アインズさん! 右!」
少し遅れてアインズも気付く。港のコンテナに異常があった。風切り音と衝突音。風切り音の段階で気付いた胡桃は、行ってみようと目でアインズに問いかける。
衝突音直前で気付いたアインズは一つ頷きこれを認める。結構な衝突音があったのだが、まるで気にしていなかったアクアは二人の初動に盛大に遅れた。
「へ? 何? どうかしたの……って、何!? 何処行くのっ! 置いてかないでよー!」
三人はコンテナが並ぶ区画に向かい、そこで、対峙する人間と黒い化物を見つけた。
黒い化物の威容に驚きのあまり声も出ない胡桃。何度かカネキに喰らいついた事で口元が血に塗れていたのも、その恐怖を助長していただろう。
アインズは胡桃の前に立ち、正面を見据えたまま言った。
「君は隠れていろ。アクア、お前が彼女を……」
ふと気付くと、アクアの気配が無い。
何処だ、と振り返ったアインズは、多分紅煉の姿を見てマジビビリしたと思われるアクアの、全力疾走でこの場から逃げ去る後姿が見えた。
『……確かに、危機に瀕した生命体の取るべき反応としては最上に近いものだが……』
女神設定は何処に行ったのだろうとか考えつつ、アインズは気を取り直して、黒い化物と赤い目をした人間に訊ねる。
「戦闘中の所、失礼する。私の名はアインズ・ウール・ゴウン。もし良ければ二人には争いの理由を訊ねたいのだが」
まずは紅煉がお返事。
「あ? お前何処の化物だ? 化物が人間狩るのは当たり前だろうが。何を今更抜かしてやがる」
「……すまないが、私の所ではそういった当たり前とやらは存在しない。もし、人間が狩られるとしたらそれは相手が化物だからではなく、人間が弱いからだろう」
アインズの落ち着き払った物言いに、黒い化物、紅煉は眉根を寄せる。
「同じ意味だろ?」
「まあ、そうかもしれんな。お前にとっては。だが、この場でそうした弱肉強食に身を委ねるのは危険極まりない行為だとは思わんか?」
やはり怪訝そうな顔の紅煉。
「俺にはお前が何を言いたいのかさっぱりわからねぇ。それともそいつは俺の知らないド田舎に伝わるユイショタダシキ命乞いとかか?」
「その首元についている首輪を、つけたまま何をどうした所で我々は死を免れ得ぬという事だ。それは、連中が言うように全てを殺してたった一人生き残ったとしても同じだろう」
更に眉根を深くひそめる紅煉。
「あん? お前も化物だろうに、首が飛んだ程度で死ぬのか?」
「仮にも五体のある生物の姿をしてるんだから、首が飛んだらそこは潔く死んでおけ。まあそれはともかく、ただ首を飛ばすだけではないだろう、その首輪は。その程度の力しか無い者であったなら、そもそも私もお前もこの地に招かれてすらいないだろうに」
アインズの言う事ももっともだ。それを理解出来る程度には、紅煉にも知恵はある。
だが、紅煉とアインズでは決定的に、情報量に差があった。
「なるほど、お前の言う通りだ、お前の立場ならな。だがな、俺には、こいつを仕掛けて来た奴に心当たりがあるのさ」
「何っ!?」
「って訳だ。そいつは、俺が役に立ってる間は信用出来る相手でな。更に言うなら、この手の人が苦しむ話が好きで好きで仕方がねえ奴なんだよ。だからその下に居るオレサマとしてはだ、ここは一つ派手に祭りを盛り上げてやろうって思うわけよ!」
紅煉をそれと気付かぬ間に拉致し、殺し合いを強要出来る者なぞこの世に白面の者以外に居るまい。光覇明宗が絡んでいるようでもあるが、連中ではこうした人倫にとる行為は出来ない。ならば尚更、白面が何かしでかしたと考える方が妥当だろう。
少なくとも紅煉にとってはそうであるし、であるのならそれが紅煉にとっての真実となる。
この問答で、アインズの中に幾つかのプランが同時に浮かび、その中で最も現状に即していると思われるものを選び取る。
「どうやら私とお前とでは持つ情報量に明らかな格差があるようだ。ならば私は、お前に戦力を提供する事でその情報格差の是正を試みたいのだが」
ほほう、と面白そうに片眉を上げる紅煉。
「そりゃああれか。俺の手下になるって話か」
「同盟だ。立場上、誰かの軍門にはそう容易く下れぬのでな。だが、戦闘要請は快く受け入れるつもりだし、もちろんそれ以外の魔法的な手段も提供しよう。悪い取引ではなかろう?」
紅煉は凄みの効いた睨みを見せる。
「良いか悪いかは俺が決める。なら骸骨よぉ、そこの小僧ぶち殺してみせろや。その程度出来ない雑魚じゃあ、取引も何もありゃしねえぜ」
良かろう、と答えようとした所で、影に隠れるよう言っておいた胡桃が、アインズの側まで来ているのに気付いた。
一体何を、と思ったが振り向きその表情を見て察する。どうやら胡桃は、この黒い化物との同盟に反対であるようだ。
アインズは優しく言って聞かせてやる。
「情報の重要性は今更述べるまでもないだろう。我々は共に仲間を見つけ出さなければならないし、その先の事も考えなければならない。もし、そこの青年に同情しているというのなら、良く考えてみてくれ。彼がそこの黒い獣以上に残忍でないと、どうして言い切れるのだ? すぐに決断を下すべき我々が今手にしている情報では、この戦闘でどちらに否があるかなど判別しようがないのだぞ?」
ならば当然、より利益の大きいほうを選ぶべきだろう、と優しく子供に言い聞かせるように述べるアインズ。
胡桃は混乱する。アインズは、間違いなく胡桃に対しては真摯で親切な態度で接してくれている。なのに彼の言葉は人の感情では受け入れ難いもので。
誰がどう見ても、悪いのはあの黒い獣の方であろうに。いや、よしんば両方が悪かったとしても、黒い獣と手を組むという発想は絶対に出て来ない。
混乱する胡桃。そこに、更なる混乱の元が舞い込んできた。
「遂に尻尾を出したわねアンデッド! やっぱりあなたは人間の敵よ! この女神アクア様が今から退治してあげるから神妙にしなさい!」
コンテナの上に立ち、偉そうに仁王立ちでふんぞり返っているのは、つい先ほど紅煉にビビって逃げていった女神アクアであった。
必死になって逃げたあとで、一人っきりが怖くなって恐る恐る戻って来たのである。最後までヘタレきる事すら出来ぬ、正にヘタレの中のヘタレであろう。
そこで、怖いはずの紅煉が残ったままなのに、アインズの言葉を聞いてそれ見た事かと勢いで飛び出したのである。
そこまでを一瞬で見抜いたアインズは、それまで築いてきたアクア評を全て改め、一言でまとめた。
『ああ……コイツ……馬鹿なんだ。ただただ、馬鹿なだけなんだ』
一瞬ではあったが、アインズ・ウール・ゴウンをして、全ての対応をもうどうでもいいやと放棄させる偉業を成し遂げたアクアは、今度こそと気合いと自信を込めて、吼え叫んだ。
「喰らいなさい外道アンデッド! セイクリッドーーーーーーーー! ターーーーーーンアンデッドーーーーーーー!」
今度は、骨の髄にまで響く、体内から湧き出てくるような灼熱感に全身を振るわせるが、二度目なので流石に悲鳴だけは堪えた。この点だけ見ても、これをもらった何処ぞの魔王軍の首無し騎士とは格が違うとわかろうものだ。
そして、もう一人のキーパーソン。恵飛須沢胡桃は、アクアがコンテナ上に出てきたことで自分がなすべき事をはっきりと自覚する。
とりあえず持ってきていたバッグから、500mlペットボトルの飲料水を取り出し蓋を開いて一気に喉へと流し込む。半分以上飲み干した所で、目測よし、角度よし、と狙いを定めて、コンテナ上のアクア目掛けて放り投げた。中身飲料マックスでないのは胡桃の優しさである。
スコーンと妙に軽い命中音。
「いたー!? な、何すんのよ!」
アクアの抗議に即座に声を被せる胡桃。
「何すんのじゃない! いい加減懲りろ! 後アインズさん!」
魔法でどうにかするつもりだったのだが、胡桃が何とかしてくれたので慌てて詠唱キャンセルしたアインズは、少し慌てた調子である。
「あ、ああ、助かったよ。で、何だ?」
胡桃はアインズを強く睨み付ける。
「やっぱり私はあの黒いのと協力するのは反対だ。アレは信用出来ない! 言ってる事も何もかも! それにアレが本当にこの殺し合いを考えた奴と繋がっているっていうんなら、そもそもアレは、私達が殺し合いを逃げ出せる程の情報を提示してまで、この殺し合いの中で私達の協力を必要としないだろ!」
ちなみにその黒いのは現在、この騒ぎの隙にここぞと逃げようとしたカネキを、逃がすかぼけーと回り込んで激戦の最中である。別に、こいつ等の三馬鹿時空に巻き込まれるのが嫌でそうしてるわけでもないだろうが。
なるほど、なるほど、と二度頷くアインズ。
「一理ある。いや、胡桃よ。その言や良しだ」
ならば胡桃よ、と続けるアインズ。
「アレとは敵対するとしようか。出来れば口を割らせたい所だが、そこはまあ、期待しないで待っていてくれ」
後、と厳しい口調で告げる。
「今すぐ、アクアを連れてコンテナ群の陰に隠れるんだ。最低でも三ブロックは離れるんだぞ。それと絶対に顔は出すな、巻き込まれて死ぬぞ」
「う、うん。その、えっと……頑張ってっ」
「ああ、任せておけ」
アインズは駆け出していく胡桃を見送った後、特に焦るでもなくゆっくりと、紅煉とカネキの戦いの場へと赴く。
ちょうど、カネキが紅煉の連撃を凌ぎきって大きく後退し、紅煉が逃がすかばーかと追撃を仕掛けたその時だ。
「すまないな、こちらの話は終わった。そこの人間の方、君に味方する方が我等に理があると思われる為、今から助太刀しよう」
真っ先に、敵につくのか、と思わず構えたカネキであったが、眼前の黒いのと比べれば自分の方がずっと人間していた。
そんなグールに染まった自分を少し悲しく思うも、今はそんな感傷どうでもいい。
「……僕を、助けてくれるんですか?」
「まだ動けるだろう? あくまで助太刀だ。私はマジックキャスターだからな、君には私の前に立ちアレが接近するのを一分程防いでもらいたい。それさえ出来れば、私が最後まで詰んで見せようじゃないか」
アインズは彼の能力なら紅煉を圧倒出来る自信もあったが、今の自分は装備が無いのだ。アインズ含むナザリックメンバーは皆、そのステータスもスキルも装備品ありきで組まれている。
それが全ての装備品を剥ぎ取られてしまったとなれば、失った装備品自体の価値以上の弱体化を余儀なくされていよう。また常にある装備品が失われている事に、体や感覚を慣れさせるのにも一手間が必要だ。もし、遭遇した敵が元々装備品に頼らぬ相手であったなら、その一手間の分で差異が生じる。
アインズがあまり己を過信すべきではない、と考えているのはただ用心してるだけではなく、理由あっての事なのだ。
紅煉はけっとつまらなそうな顔だ。
「何だよ何だよ、面白くなると思ったのによぉ。まあいいさ、まだ人数は山程いるんだろうし、お前等はさっさと殺しちまうとしようか」
堂々とフォーメーションを口にしたアインズであるが、その言葉を、カネキに証明して見せる必要がある。なのでアインズはまず、紅煉に対し魔法を唱えた。
「キサマに私と戦うに相応しい資格があるか、試してやろう《ヘルフレイム/獄炎》」
小さな黒炎がアインズの指先に生じ、これが紅煉へと襲い掛かる。極めて小さい炎だが、紅煉は獣の感性でその場を飛びのき、何とアインズの魔法を敏捷性のみでかわしてみせた。
流石に驚くアインズ。そして外れた小さい黒炎がコンテナに命中、あっという間もなくコンテナが黒炎に包まれるのを見て、カネキが度肝を抜かれる。
本当は黒い獣に当てる事で証明としたかったのだが、アインズはこれも当然わかっていた結果だと言わんばかりの顔をする。
「人間。これで私の実力、その片鱗がわかったか? 一瞬であれなら、時間をかければもっと面白くなると思わんか?」
カネキは頷く。どの道、追い詰めれらたカネキに選択肢なぞ他に無いのだ。カネキは、逃げから攻めへと、思考を切り替える。
紅煉も流石に面倒だと思ったか、アインズの前に立つカネキを蹴散らし、もし今まで通りカネキが避けに徹するなら先にアインズを潰そうと動き出す。
その鼻っ面に、カネキの腰より伸びた赤黒い鱗赫が叩き込まれた。刺しを狙ったのだが、硬くて弾かれるあたり紅煉も並大抵ではない。
「んなあ!?」
さんざ追い詰められていたカネキであったのに、彼はこれまで一度も赫子を出していなかった。
それは一重に、負けて捕まっても、赫子の存在さえ隠しおおせれば逃げるチャンスはあるはずだ、と考えていたからだ。紅煉はカネキが赫子を使わない事をまるで疑問に思っていなかった事から、カネキがギリギリで用意した策であった。
腰から触手のように伸びるカネキの鱗赫は二本。これを鞭のようにしならせ、棍棒のように殴打する。
先を取られ有効打を許した紅煉であったが、彼もまた歴戦の化物。即座に建て直し、伸びる鱗赫を口から上に伸びた刃で切り落とす。
これは白面より紅煉に与えられた霊剣の類で、化物に対して特に効果を発揮する強力な呪物だ。だが。
「何ぃ!? コイツで切っても再生すんのか!?」
カネキの鱗赫は霊だのなんだのといったものとは一切関係ない、Rc細胞によるもの。であるのなら、如何な高位霊剣だろうと普通の刃物と大差ない。もちろん、べらぼうに硬く鋭いので斬るだけならガンガンに斬れるのだが。
反撃を一切考えなくて良かった逃げに徹していた頃のカネキと比べて、明らかに紅煉を押している時間が増えていた。当たり前と言えば当たり前だが、では何故カネキはこれまでの長時間そうしなかったのか。
それは、攻撃に出るという事は、カネキもまた紅煉の攻撃への警戒が落ちる瞬間があるという事。そういったリスクを鑑みれば、倒す気が無いのなら変な色気を出さずに逃げに徹して正解なのだ。
だが、今は。か細い糸ながら生き残る道が見えて来た。
背後で盛り上がっている気配の正体を、振り向いて確認する余裕はカネキにはない。だが、大気の音が、流れ込んでくる臭いが、背後で尋常ならざる事態が発生していると教えてくれる。
また対峙している紅煉からも焦った様子が見てとれ、それほどの何かが、カネキの背後で渦巻いているのがわかる。そんな紅煉の表情はカネキのいい加減もう心もとなくなってきた気合いを引き出してくれる。
カネキは紅煉は焦り必死になっている、と思っていた。だが、その後ろで術を唱えるアインズはというと、いぶかしげな表情を隠せなかった。
『何故来ない?』
アインズの唱えている術、その正体を知らなかったとしても並大抵ではない事ぐらいはわかろう。ならばもっとなりふり構わず飛び込んで来る、少なくともアインズはそう思っていた。
そこで飛び込んで来た所をディレイをかけた上で唱えておいたカウンターで、と考えていたのだが、どうも無駄に終わりそうだ。ディレイのスペルはキャンセルし、アインズは今唱えている魔法、一発で戦況を引っくり返しうる超位魔法の詠唱に集中する。
『私の魔法を侮っているのか? いや、警戒はしている。だがその上で、魔法の威力を見て私の底を計ろうという事か。ク、クックック……』
知らないとは幸せなものだ、とアインズはほくそ笑む。これをもらったら一発でほぼ勝負が決まるような術だからこそ、敵を引き寄せる餌たりえるのだろうに。
また前衛の人間モドキは、アインズですら思わず真顔になってしまう程の動きの速さを持つ。紅煉と比べても遜色無い程で、ならば手負いとなった紅煉の足止めぐらいは出来よう。その間に、アインズがトドメを刺して決着である。
つまり、これで互いの有利不利は逆転する。
「超位魔法《フォールンダウン/失墜する天空》」
これはただ敵を倒すのみが目的ではない。アインズには今後の為、最上位魔法の威力を確認しておく必要があった。
アインズの放った魔法により、紅煉を中心とした空間に光が集まる。
もちろん、近接していたカネキも巻き込まれる場所だし、カネキにそれを察する事は出来ない。なので、
「人間! 掴まれ!」
背後からカネキを抱き抱えるアインズ。飛行の魔法を超低空で使用し、発動を遅らせた魔法が炸裂する前に、カネキを連れて安全域へと逃げ出す。当然、追いすがる紅煉であったがアインズの高速移動を初めてみた紅煉は反応が遅れ、そして。
目もくらむ閃光、耳をつんざく轟音、全身を砕く衝撃、吹き上がる爆煙、飛び散る土砂瓦礫。ほんの一瞬で、紅煉が居たそこは地獄の釜の底となる。
さっきの黒炎の比ではない。グール歴もそれなりになってきたカネキでも、こんな破壊を単身で行うというのは見た事が無かった。
アインズはカネキを抱えたまま静かに訊ねる。
「実際に戦った者として君に聞きたい。アレはこれでも無事だと思うかね?」
本来の超位魔法からは明らかに制限された威力であったが、それでもあのサイズを微塵も残さず消し飛ばすには充分な威力だろう。
カネキはぶんぶんと勢い良く首を横に振る。爆心地から離れた場所に着地した二人は、特にカネキは、心底からの安堵で弛緩しきってしまっていた。
「いかん!」
咄嗟にカネキの前に立つアインズ。
まだ爆煙覚めやらぬ中、閃光の中心部からの怒鳴り声が轟く。
「骸骨風情がなめるんじゃねえええええええええ!!」
アインズが片手を中空へと上げかざす。
『間に合えよ!』
怒声に合わせ、天空から無数の稲光が降り注ぐ。
それは雷雲の最中に突入した無知で無謀な航空機のようで。
周囲を煌びやかな閃光が舞い踊り、世界の景色を夢幻のそれへと変貌させる。
雷の檻に封じ込め、この世のものとも思えぬ壮麗な景色の中で、その美しさ故に確かなる死を観劇者へともたらす。
アインズの呻き声。かざした防御魔法を、紅煉の電が突き抜けその身に刺さっているのだ。それでも背後のカネキへは通さない。
怪我はそれほどでもなく、再生済みのものがほとんどだが、彼は既に消耗しすぎている。これ以上のダメージは認められない、と判断したアインズが庇いに入ったのだ。
全ての雷撃が収まった後、アインズは計算違いが過ぎた強烈極まりない攻撃を喰らっても、それが顔に出ないで済む骸骨面の自分に感謝しつつ、背後のカネキを振り返って言った。
「どうだ、怪我は無いか?」
「骸骨! てめぇの面覚えたぞ! 次は圧倒的な戦力で踏み潰してやるから楽しみに待ってるんだな!」
相手にする気すら起きないような捨て台詞も、稀代の怪物紅煉が放ったとなるとそれだけでとんでもなく恐ろしいものに聞こえて来る。
アインズはそんな紅煉を愉快げに見送る。
「そうだな。次はもっと頭の良い奴を連れてきてくれ。でないと情報を聞き出そうという気すら起きないからな」
偉そうに語っちゃってるが、まあつまるところ強がりである。あれだけの雷術を惜しげもなく逃走の煙幕代わりに使うという事は、あの黒い獣にはまだ他にも切り札が控えていると考えるべきだろう。ならば、下手な追撃は藪蛇を招きかねない。
もう一度やっても負けるつもりはないが、奴も次は充分準備してから来るであろう。それを迎え撃つのはしんどそうだ、と気が滅入る。
カネキは、アインズの側で何と声をかけたものか悩んでいたのだが、やはりまずはこれだな、と。
「ありがとうございました」
最初は敵に回ろうとしていたとか色々あったが、それでもこうして、彼はカネキを我が身を呈してまで守ってくれたのだ。
それは、お礼を言い、そして恩義を感じるに充分な理由であろうと、カネキは思うのだ。
アインズとカネキはこちらから胡桃とアクアの元に行こうと思っていたのだが、先ほどの爆発に驚いた二人が、恐る恐るだがこちらに来る方が先であった。
「あ、アインズさーん、大丈夫ー?」
「ちょ、ちょっとクルミ。そんな大声出さないでよ、黒いのに見つかったらどうするのよっ」
「あれ、さっきあっち飛んでたの見えただろ」
「見間違えって事もあるじゃない。もう、大体なんだってあんなアンデッドに……」
カネキは、この僅かなやりとりだけで全てを判断するのは早計だとも思ったが、さきほどのコンテナ上でのやりとりとかも聴いていたので、やっぱり、アクアに高評価を付ける事は難しかった。
四人が揃うと、では改めて、とアインズはカネキに対して自己紹介を行う。
「アインズ・ウール・ゴウン。見ての通りのアンデッドだ」
カネキは、相手は恩人であるのだが流石に即座のリアクションは出来なかった。
「ぼ、僕は金木研です。えっと、その、アンデッドってのは……グールって意味ですか?」
「グール? いや、私はオーバーロードという種でグールではないぞ。というかグールがこんなに話が出来るわけがないだろう」
「え?」
「ん? 何かおかしな事を言ったか?」
では、その骸骨マスクの奥の赤い輝きは何なんだろう、とかカネキは思うが、カネキの疑問をアインズはすぐに感じ取ってくれたようだ。
「そうか、そこから始めねばならんか。なら、良く見ておくといい」
そう言ってアインズがフードを外すと、しゃれこうべヘッドがカネキの前に姿を現す。
流石にここまでやればわかる。仮面なんかじゃない、本物だと。ていうか、目の奥の赤い輝きは何かが反射してるとかではなくそのまんま輝きであった。
絶句するカネキに、ほれ見た事かと何故か得意気なアクア。
「やっぱりねぇ、何処の世界にアンデッドなんかと一緒に居たい人なんているのよ。ねえ、貴方も人間ならアンデッドなんて大嫌いよねー?」
そうカネキに聞くのだが、カネキにはアンデッドがそもそも何かわからないし、グールの赤眼を晒した相手に人間呼ばわりされるのも意外に過ぎて答えられない。
服装からその辺がわからないのだろうとあたりをつけたアインズは、カネキに胡桃にしたような説明、現代社会に暮らす者へファンタジーな自分達の存在を語ってやる。
あまりに突飛な話であるが、カネキはアインズの力を直接目にしている。全てをいきなり受け入れるのは無理でも、常識外の何かであるのだけは理解出来た。
そして説明を聞く中で、この三人の関係性もカネキはそれなりに把握出来てきた。
胡桃はどうやらカネキ同様、アインズの言うファンタジーなお話とは縁が無かったようで。それでも、彼女が一番アインズを受け入れ、信用していた。それを少し羨ましいとも思えた。後、残るもう一人の女性アクアさんはまあ、いいか、と思った。
話が進むと、今度はカネキの話をする番になる。カネキは、悩んだが隠しきれるとも思えず、素直に素性を明かす事にした。
「僕は、この赤い目でわかるようにグールなんです」
反応は、カネキの想像したものとは少し違っていた。
アインズは無言、アクアは凄い変な顔をして、胡桃は普通に驚いた顔であったが怯えた人間のそれではない。
まずアインズ。
「いや、君はどう見てもグールには見えないぞ?」
次にアクア。
「そんなフレッシュなグール居たら怖いんだけど」
最後に胡桃。
「グール? それってゾンビと何か関係があるのか?」
全く話が通じてない。
まあいいわ、とアクアがやる気無さそうに言った。
「ならターンアンデッドしてみればすぐわかるわよ。ほら、たーんあんでっどー」
すんげぇやる気無さそうにカネキを指差すと、白い光がカネキを包むが何も反応は無い。
「でしょ? はい、アンタあんでっどじゃない、けってー」
そこではたと、何かに気付いたようにアクアは目を輝かせる。
「そ、そうね! でも確認の為もう一度やってみましょう! 今度は気合いを入れて、一発であの世飛び越えて来世まで突き抜ける勢いで! はあああああああああ!」
両足で踏ん張り、気合いのポーズを取るアクア。
「行くわよ! セイクリッド!」
そこで、きらーんとアクアの目が光る。
「あー、足が滑っちゃったー」
よろよろとよろめき、指先をカネキではなくアインズへと向ける。
「地獄へ落ちろやああああ! たーーーーーんあんで……」
背後に回りこんだ胡桃に、両のこめかみを拳で押さえつけられる。
「ア・ン・タ・は・ね~~~」
「いたいいたいいたいー! やーめーてーよー! ごーめーんーなーさーいー!」
騒いでる二人を置いておき、アインズはカネキに訊ねる。
「その、目が赤くなるのと、先ほど腰から伸ばしていたアレが、君が言う所のグール云々と関係しているのか?」
「あ、はい、そうです」
「君には悪いんだが私は君の言うグールを知らないし、多分胡桃もアクアもそうだろう。君はそのグールだという事を、あまり人に話したくなさそうだな」
「…………はい」
小声で、カネキにだけ聞こえる声でアインズ。
「……グールという名称から推察するに、君のその能力、他者の人体を利用し続ける事で成立しているのではないか?」
そこで話題を切り替えるアインズ。
「っと、すまない。君を追及する事が目的ではないんだ。ただ、もしそうだとしても私はさして気にはしないと言っておきたかったのだよ。……さて、まずはお互いの現状を出来る限り正確に把握すべきだろう」
アインズはファンタジーな話に加え異世界移動云々といった話をカネキにしてやる。アインズが異世界に飛ばされた事、胡桃が居る世界は更にアインズが元居た世界でもない可能性がある事を。
そこから、カネキの居たグールが居る世界もまた別世界なのではないか、と。
カネキはその話を聞き、自分の世界の事をありったけアインズに説明する。これを聞き、アインズは更に確信を深めた。
もっと話を聞きたい、そう思ったアインズだったが、その前にやらねばならない事があったとカネキに小声で話す。
「後だな、あの女、アクアの事だが……」
「あ、はい」
「その、アレは、何というか、非常に礼を逸した態度を取るが、当人悪気があるわけではないのだろう。単に愚かなだけだ。それもちょっとありえない程の愚かさだが。まあ、そこをどうか汲んでやってはくれまいか」
カネキも苦笑するしかない。アインズは説き伏せるように続ける。
「それにだな、性格はアレだがその持てる魔力は尋常ではない。私にターンアンデッドを通す事といい、神聖系魔法ならもっと色々と出来るのではないかと思っている」
確認はしていないが、あれだけの力ならば蘇生も出来るのではないか、とアインズは見ている。それをどうやってアレに確認し、使わせるかは目下検討中だが。
「いっそだなカネキ君。あれは所持に様々なペナルティがかかるワールドアイテムとでも思えばいい。持てる能力の高さとレアリティを考えれば、生じる不利益も多少は我慢しようという気になるだろう?」
「あ、あはははは。流石にそこまでは……」
アインズは、ちょっと遠くを見つめながら呟く。
「私は……そうする事にしたよ……」
カネキも何といったものか。
「それは、その、ごくろうさま、です。本当に」
こうして男同士で話が進んでいる間に、胡桃とアクアとの女同士でも話が行われていた。
最初に会った時から気になっていた事をアクアに問う胡桃。
「そういえばさ、アクアってずっとあのプレハブに居たの? 私あの近くで重機動かしてたから、居たんなら絶対音聞こえたと思うんだけど」
「あー! あのうるさいのクルミだったの!? まったく、何してくれてんのよ、人が気持ちよく寝てるってのに」
「いやだからそれ以前に……って寝てたの? え? でも殺し合いしろって話は、聞いてたよな?」
「そうよ。あの後私港の側に放り出されたのよ。それで、まだ夜も遅かったし、何処か寝る所無いかなーって探したらちょうどあそこがあって、中見たらベッドもあってちょうど良いやーって」
「いやいやいやいや、だって、殺し合いしろって言われたよな? そんな所で寝るとか怖くなかった!?」
口を尖らせるアクア。
「だってー、眠かったんだもん。でも、外騒がしいしであんまり眠れなかったのよっ。くるみー、あんた等が騒いでたせいなんだからね!」
アカン。これが胡桃の思った感想全てを凝縮した単語だ。コイツを一人にさせてほっておいたら、絶対とんでもない事になる。
アクアからは絶対目を離さないようにしないと、と考える胡桃の心中も知らず、アクアはぶつぶつと安眠妨害の文句を垂れている。
しばらくはほっておいた胡桃だが、流石に鬱陶しくなったので反撃する事にした。
「それ言うならアクアはさ、さっき凄い勢いで逃げたよな。アインズさんも私もほっぽっといて」
ちぃ覚えていたか、と舌打ちしながら更なる反撃を試みるアクア。
「いや、だって、ほら、私居たら邪魔かもしれないし? あ、危ない事は避けなさいって、私、いつも言われてるから……」
「ふーん」
ものっそいじと目で見られて、忍耐力の無いアクアはあっという間に逆ギレを始める。
「だってしょうがないでしょ! あんな怖いの初めて見たんだから! ねえ、クルミも見たでしょあのすっごい鼻ピアス!」
「あれは鼻でもピアスでもねえよ」
男同士の話し合いの方で、勢い良く噴き出す声が二つ。
まずは一つ目カネキ君。
「は、鼻ピアスって……あの口に刺さってる剣だよね? く、くっくっくっく……いや、鼻ピアスはないよ、何であれをピアスって……」
俯き加減に笑いをこらえている。そしてもう一人のアインズだ。
「く、くるみっ。そのつっこみはリズムが良過ぎだ。くっくっく……いや確かに、鼻でもピアスでもないしそのまんまなんだが、呼吸が合うとこうも耐えられんのか……」
少しの間笑っているとすぐに平静を取り戻すのだが、思い出すと再び笑いがこみ上げてくるようで。
とりあえず、四人の前で名乗ることをしなかった紅煉のこのパーティーでの名称は、たった今『鼻ピアス』で確定したのであった。
【H-2 学園艦前の海岸/黎明】
【恵飛須沢胡桃@がっこうぐらし!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、MINIMI軽機関銃(200発マガジン。残弾6割ほど)
[思考・行動]
基本方針:
1:友達を捜し出して守るためにアインズとカネキとアクアと同行する。
2:愛用していたシャベルを探す。
3:アクアは一人でほっといたらエライ事になる。
※双腕仕様油圧ショベル「アスタコNEO」@現実? は港に置いておきます
【アインズ・ウール・ゴウン@オーバーロード】
[状態]:健康、魔力消費(小)超位魔法一回消費(一日四回)
[装備]:なし(装備は全没収。モモンガ玉も機能停止)
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3(確認済み)
[思考・行動]
基本方針:
0:ナザリック及びギルド:アインズ・ウール・ゴウンに害するものを許さない。
1:アルベド、シャルティア、デミウルゴスが気がかりなため一刻も早く合流したい。
2:他のNPCも心配。様々な情報を得る意味でも地図上のナザリック大墳墓に向かう。
3:ナザリックを優先した上で、胡桃、カネキ、アクアは保護。他の参加者とも理由なく争うつもりはなく友好的に接したい
4:分からないことだらけなので慎重に行動し、情報を得たい
※自身への制限は大体理解しています。
※容姿はアニメとかでお馴染みの基本スタイルですが、アイテムとしての防御力は持ちえません。
※アニメ終了後時期からの参戦です。(対リザードマン準備中)
【金木研@東京喰種トーキョーグール】
[状態]:怪我は治ったが消耗は激しい
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:
1:アインズ、胡桃、アクアと同行する。
※開始直後からずっと紅煉と戦闘しっぱなしであった為、まだバッグの中身すら確認していません。
【アクア@この素晴らしい世界に祝福を!】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:
1:アインズ、胡桃、カネキと一緒に行ってあげる。
2:カズマとめぐみんとダクネスを探す。
※開始直後からずっと寝てた為、まだバッグの中身すら確認していません。
【G-2 学園艦前の海岸から離れた場所/黎明】
【紅煉@うしおととら】
[状態]:結構痛かった。
[装備]:
[道具]:支給品一式、不明支給品1~3
[思考・行動]
基本方針:
1:片っ端から殺して回る。
2:後で戦力整えたら骸骨野朗を殺しに行く。
※この殺し合いは白面の者の差し金だと思っています。開始直後からずっとカネキと戦闘しっぱなしであった為、まだバッグの中身すら確認していません。
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最終更新:2016年09月18日 23:15