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  • anko1517 ゆっくり愛護法改正案可決 完結編 2

ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー

anko1517 ゆっくり愛護法改正案可決 完結編 2

最終更新:2011年01月22日 00:50

ankoss

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管理者のみ編集可
●メガネお兄さんの場合●





 時間は少し遡る。
 ふとっちょお兄さんがスニッカーズをゆっくり達に与えている頃、メガネお兄さんはある大学へと公開講座を聞きにきていた。
「えー、このようにして日本に突如として現れた新種の生物ゆっくりでありますが、その特徴は今までの生物進化の輪から完全に外れたものでありました」
 その講座のテーマは「ゆっくりとは何か?」である。
 担当する教授は、先日の学会で「ゆっくりは生物である」との結論を出した大物生物学者、由井博士の助手を務めていた人物だった。
 ゆ愛法改正の根の一つは由井博士の発言にあった。
 そこで、改正反対のヒントを得られるかもしれないと思いメガネお兄さんはこの公開講座に参加しているのだった。
 しかしこれまでの所の講座内容はゆっくりが現れてからの一般的な歴史に触れるばかりで、あまり目新しいものではなかった。
「ご存知のようにゆっくりは人語を解し、話します。しかしわれわれ人類の歴史を見ても、言葉を話すためには大変長い進化の道のりを歩んできたわけです。例えば我々の直接の祖先であるクロマニョン人のような新人と同時期には、ネアンデールタール人のような旧人も存在していました。旧人の方が力に優れていたものの、どうして彼らは滅び、新人は残ったのか。それは口蓋の形の違いによって生まれた、発音できる音の多様さの違いが一つの大きな事由でありました。クロマニョン人は、仲間同士、もしくは親から子へと狩りの方法や様々な危険など、多様な情報を伝えうる手段を有していたわけです。対してネアンデールタール人は口蓋が狭く、発音できる音が少なかったために、情報の伝達が不完全であり、それによって滅び去る運命を迎えます……。えー何が言いたいのかといいますと……」
 段々と教授の話が脱線していくのを聞いて、メガネお兄さんは今日ここに来たのは失敗だったと思うようになっていた。ふとっちょお兄さんの誘いに乗って、大量ゆ虐にいくべきだったか、それとも民社党のホズミ議員について調べるべきだったか。
「さて、多くの皆さんが疑問に思っていることかもしれませんが、どうして餡子によって構成され、小麦粉に覆われたゆっくりが、考え、動くことができるのか。それに対しては東都大学教授であり、私の師である由井博士がひとつの仮説を提唱しています」
 由井博士の名前が出たことで、メガネお兄さんの意識は教授の話へと引き戻される。
「一言で申すなら『考える餡子』、これです!」
(考える餡子、ねぇ。やつらてんで考え無しだけどな) 
 メガネお兄さんが胸中で突っ込みも入れている間にも、教授は饒舌に語っていた。
「彼らは餡子で思考し、そして餡子を蠕動させて動きます。それだけにとどまらず、ゆっくりの餡子は動物でいう所の神経や内臓器官の役割も担っていいます。その中でも特に異様なのが彼らが思考力を有するということなのですが、脊椎動物の思考は脳で生まれます。そして脳における思考というものはニューロンネットワークの活動によって生み出されたものです」
 教授はホワイトボードに思考、ニューロンネットワークと書き、線で繋ぐ。
「ゆっくりにおいてはニューロンネットワークは構成されていません。しかし何か代わりになるものは存在しているはずです。そこで登場する仮説が、このスクロースネットワーク仮説です。彼らは体内の餡子の中の糖分、つまりスクロースの過多や分布等で、ある種のネットワークを構成しており、それが脊椎動物の脳機能と同じような働きをしているのではないか、という仮説です。ゆっくりを食したとき、幸せなゆっくりは不味く、不幸なゆっくりは美味であるというのはよく聞く話ではありますが、これは不幸な状態、生存の上で不利な状態に置かれた際、ネットワークの働きが活発化するためにスクロース濃度が高まるからであると考えられます。まだ発見されていませんが、ゆっくりの中枢餡と呼ばれる部分に、餡子を思考体たらしめる何かが存在するのではないかと考えられています」
 教授はスクロースネットワークと書きニューロンネットワークと≒で繋ぐ。
 ゆっくり研究は生物学界では鬼門である。なぜなら解明できない可能性が高すぎるからだ。だれが好んで自分のキャリアを汚そうと考えるだろうか? しかしどうやらこの教授や由井博士は違うようだった。メガネお兄さんが聞いたこともないようなゆっくりに関する仮説を興奮した様子で語っている。その調子は公開講座の域を超えて白熱していく。
「また、ゆっくりが食したものを全て餡子と砂糖水に変えるという特性についてですが、これに関しては皆さんよくご存知の生命工学を足場にして説明させていただきます」
(よくご存知じゃねえっての)
「『遺伝子組み換え』という言葉はバイオテクノロジーの発展著しい昨今、さかんに使われるようになったわけですが、これはウィルスの世界、ファージなどをご覧になればおわかりのように、自然界おいてごく日常的に行われていることであります。生命工学の規範となったものがこうした自然現象であることは皆さんもよくご存知の通りですが……」
(知らねってんだよ)
「しかしゆっくりが己の本能に従い、それこそごく自然に行っているであろう離れ業とはもっと大規模なもの、すなわち細胞変化とお考えればわかりやすいと思うのですが、それを行っているのがどのような酵素によるもの何か? それは目下研究中であります。カプサイシン、硫化アリル等の辛味成分に拒否反応を起こすことを鑑みるに、おそらくは……」
「あのー先生、そろそろ時間なんですが……」
 なおも話を続けようとする教授を大学の職員の言葉がさえぎる
「え? もうそんな時間なの? これからがいい所なんだけど」
「次の講座もあるので、もうそろそろ終わっていただきたいんですが……」
「仕方ないなぁ。えー、では最後にこれだけ。
 皆様の中には、先日国会を通過したゆっくり愛護法改正案について、そのきっかけが我が師、由井博士にあるとお思いの方もいるでしょう。しかし博士の発言は純粋に研究者としてのものであり、政治的な意図はありません。我々研究者にとって今回の法改正は本位でなく、むしろ研究を妨げるものとしてこころよく思っておりません。せめてこの講義に参加してくださった皆様だけでもそのことをご了承いただきたいと思います。えーでは中途半端になってしまいましたが私の講義を終了させていただきます」 
 講堂のなかからチラホラと拍手が聞こえる。おそらくは教授の講義に対してのものではなく、法改正を快く思わないという発言に対してのものであろう。
 メガネお兄さんにとっても、今回の講義の一番の収穫はその発言だった。生物学界がゆ愛法改正に反対なのであれば、それを足がかりに対策を打てるかもしれない。
 そんなことを考えながらメガネお兄さんは講堂を出た。


 帰路に着きながらもメガネお兄さんはゆ愛法改正について考えていた。
 実際の所、ゆ愛法改正に反対する人間はかなり多いはずだった。直接的にゆっくりに被害を受ける農家の人間はもちろんだし、一時期ほどではないがゆっくりを食品加工するメーカーだってまだ存在する。ゆっくり虐待は大手を振れる趣味ではないが、それでも潜在的な虐待師の人口は相当数に上るはずだ。虐待グッズを開発するメーカーがかなりの成長を遂げているのがその証明である(もっとも現在株価は底値まで下落し、ふとっちょお兄さんが行っているような「最後の虐待」用の販売が終われば倒産してしまうだろうと言われているが)。
 それに、ペット用のゆっくりへの教育にも影響は出るはずだ。教育無しに行儀の良いゆっくりもごく少数存在はするが、ほとんどは痛みを伴った教育をしないと飼いゆ最低ランクである銅バッチの獲得もままならない。大きなゆっくり販売メーカーはゆっくりを傷つけずに教育する環境と優良な母体を持っているらしいが、中小の販売メーカーは悪いことをする度に針で刺すような教育方針が基本だ。事業の縮小は免れないだろう。
 それらの意見がどうして反映されないのか? 理由は簡単。ゆっくりが現れてから10年も経ってない中で、ゆっくり関連のメーカーはそのほぼすべてが新興メーカーであり、政治に対する影響力が少ないのだ。
 なんにせよ一度国会を通過してしまった法案を覆すことはそう容易なことではない。
(こんな法改正が施行されたらとんでもないことになるっていうのはわかりきっているだろうに!)
 メガネお兄さんは改正案を推進したホズミ議員や、それを通してしまった民社党、主民党への憤りを強く感じた。
 ふとっちょお兄さんや虐待師達がゆっくりに嫌悪を感じる者であるのに対して、メガネお兄さんはゆっくりに危機を覚える者であった。
 ここ数年でこの国はゆっくりという存在に慣れてしまった。しかしゆっくりがいったいどうして、どこから現れたのか? その理由は全く明らかになっていない。そんな正体不明の存在が、本州だけでも数十万いるのだ。虐待や食用への加工が行われている現在でそれである。もしも虐待が行われなくなったらいったいどれだけ増えるというのだろう?
 確かにゆっくりは脆弱な存在である。寿命も長くない。しかしそれだけに恐ろしい。
 ゆっくりのいわゆる天寿がわからないのだ。数が増えれば、それだけ長生きする個体も増える。年齢と共に巨大化する傾向があるゆっくりが、5年10年と生き延びたらいったいどうなってしまうのだろう? そんな巨大化した固体が、全体の1割でも生じたらこの国は滅茶苦茶になってしまうのではないか?
 そんな不安をメガネお兄さんは抱えていた。いや、むしろそれ以上の危険を感じていた。
 ゆ愛法改正案の国会通過を告げるニュースでも言われていた事だが、生物の定義というものは、『外部と隔てる膜がある』『増殖する』『代謝を行う』の三点だと一般的に言われている。しかしある定義ではそれに加えてもうひとつの要素が加わる。
 それは『進化をする』である。
 突然に現れた連中である。突然に進化をしないという道理はどこにも無いのだ。
 現に、都市伝説めいた数の事例ではあるが、『ゆっくりに突然胴体が生えた』という報告も聞く。そして胴が生える理由は全く明らかになっていないのだ。あのわがままで自己中心的な考え方をするゆっくりである。多数の胴付きが現れたら一体どれだけの害を人間の及ぼすのか。想像するに恐ろしかった。
(俺にできることは、ネットやビラでの呼びかけ、それに発言力のある人間に接触して、ゆ愛法改正案の危険性を訴えてもらうことくらいか……? あとは法改正後にも、どうにかゆっくりを減らす方法が欲しいが……)
 そんなことを考えなら歩いていたせいか、メガネお兄さんは本来なら曲がるべき路地を曲がり損ねてしまっていた。
 いつもは通ることの無い公園の前を通り過ぎる形になる。
「おっと、引き返すか……、ん?」
 引き返そうとしたメガネお兄さんの耳に、癇に障る声が届いた
「はやきゅあみゃあみゃをもっちぇこい!こくちょばばぁ!」
「なんてこというのおちびちゃあああああん!!」
 見れば公園の隅にゆっくりの親子がいるようだった。
 とりあえず潰しておこう。メガネお兄さんはそう思ってその親子に近づいていった。その間にも親子はなにやら叫びあっている。
「ごはんさんならおかあさんがむしさんをとってきたでしょう! それでがまんしてね!」
「こんなくちょまじゅいものぐりゅめなれいみゅのおくちにはあわにゃいんだよ! わきゃったらはやきゅあみゃあみゃをもっちぇきちぇね!! たきゅしゃんでいいよ!」
「あのあまあまさんはにんげんさんにとくべつにもらったんだよ! いつでもたべれるものじゃないんだよ! おかあさんのぶんもあげたんだからゆっくりがまんしてね!」
 どうやら物好きな人間がこの親子にあまあまをあげたせいで、赤ゆの舌が肥えてしまい親が取ってきた餌に不満を持つようになったようだった。
「……わきゃたよ」
「ゆゆ! ききわけのいいこでおかあさんうれしいよ! むしさんをたべたらいっしょにすーりすーりしようね!」
「おみゃえがれいみゅをゆっくちさしゃせられにゃいげしゅだってこちょがわきゃったよ! そんなげしゅははやきゅちんでね!」
「ゆゆゆ!?」
「ちね! はやきゅちね!」
「ゆゆーん……。こんどはおかあさんがわかっちゃったよ……」
「にゃらはやきゅち、ぢゃばっ!?」
「せいっさいっ!せいっさいっだよ! やっぱりれいむをすてていなくなったまりさのこだよ! こんなゆっくりしてないげすはいらないよっ!」
 ついには子供を潰し始める親のれいむ。それを見てメガネお兄さんの脳裏にはひらめくものがあった。
(そうか。人間がゆっくりを殺せないなら、ゆっくりにゆっくりを狩らせればいいんだ!)
 ゆっくりの価値観の基準は「ゆっくりしているかどうか」である。もしもゆっくりしていない個体、いわゆるゲスがいればそれがたとえそれが自分の子供であろうとせいっさいっすることはままある。その例は今目の前で繰り広げられた通りである。
「おい、そこのれいむ」
「ゆゆ!にんげんさんだよ!ゆっくりしていってね!」
「俺はお前にお礼を言いたいんだ。ありがとう」
「よくわからなけど、ゆっくりかんしゃしていってね!おれいはあまあまでいいよ! ことばだけじゃせいいはつたわらないんだよ!」
「そうだな。言葉だけじゃいけないよな」
 言葉と同時にメガネお兄さんはれいむを踏み潰す。断末魔の叫びをあげる間もなくれいむは死んだ。
「本来ならゆっくりであるという罪で10回殺す所を、1回で済ませてやる。9回の死刑免除なんて、そうそうないぞ?」
 そう言うと死んだれいむに冷たい一瞥を投げて、メガネお兄さんはすぐに思考を切り替えた。
(何はともあれ、まずは何匹かゆっくりを確保しないとな……)
 調教する対象としては、金バッチ付きが候補のひとつである。金バッチは知能も高く、人間に対して従順である。調教中に感じるストレスも少ないだろう。
(問題は、同属殺しはタブーである、ということも金バッチ取得の教育内容に含まれている点か……。あと値段も張るな)
 複数のゆっくりを飼う事も考えて金、銀バッチには暴力行為全般を「ゆっくりできないこと」と教えることが義務付けられている。それを矯正するのは骨が折れるかもしれない。
(成体は論外だな。価値観が固まっている。赤ゆは、刷り込むにはいいかもしれないが、いかんせん阿呆すぎる。それに今赤ゆから育てても、3週間後には子ゆ程度だ。他のゆっくりを狩る大きさにはならない。となると……)
 子ゆっくり。それも無垢な個体か、人間の恐ろしさを知っている個体が望ましい。
 そこでメガネお兄さんはゆっくりショップへと足を運んだ。店員に、金バッチから生まれた子ゆっくりで、すぐに親元から離された個体はいるかと尋ねてみる。
「すいません。金バッチとその子供は3日前に売り切れてしまったんですよ」
「そうなんですか。では、銀バッチで同じ条件の子ゆっくりは?」
「それも、売り切れでして。ほら、例の法改正があるでしょう? しつけが難しくなるから、行儀のいい子が欲しい人は今のうちに買っておこうってことで……」
「なるほど」
 見れば店内のゲージはそのほとんどが空だった。金銀バッチのみならず少し前に見かけた銅バッチ、バツイチ、キズありの見切り品だったまりさまで売れている。
「あとは大きな声では言えませんけど、虐待し納めっていうお客さんもいるらしいです……」
「そうですか。どうもありがとうございました」
「一週間もすれば、銀バッチは入荷すると思いますが、どうしますか?」
 バッチ取得試験は毎月第2週の日曜に行われる。そこで銀バッチを獲得したものが入荷するのだろう。しかし調教期間に余裕が無い今、それを待っているわけにはいかなかった。
「他の店を回ってみて、それから考えます」
「左様ですか。ではまたのご来店をおまちしております」
 それからメガネお兄さんは3軒のゆっくりショップを回ったが、成果は芳しくなかった。1軒だけ金バッチの子の在庫がある店があったが、足元を見たのか相当の高値だったのであきらめた。結局調教の際の餌として使う見切り品のげす赤ゆを買い込むだけで終わってしまった。
(さて、どうするか……)
 残る手段は野良でもなんでも人間に対して恐怖を抱いている子ゆっくりを確保することだが、いまから子ゆっくりを集めるというのも相当の手間である。
(そうだ。あいつに連絡してみるか。ひょっとすると……)
 メガネお兄さんは携帯電話を取り出すと、ふとっちょお兄さんの番号を呼び出した。
「もしもし。俺だ。いま少しいいか?」
『おう、おまえか。大丈夫だけど、どうした?』
「今お前、町外れの森でゆっくりを狩ってるんだよな。まだ何匹か残ってるか? それとももう全部狩りつくしたか?」
『まだ何匹かいるぜ。いやぁ、途中でみんなただ無造作に殺すのに飽きちまってよ。いろんな方法でやってるとこ。生き残った奴を助けてやるって言って家族同士を殺し合わせたり。うけるぜ! 『れいむのかわいいおちびちゃんを殺すなんてできないよ』とか言ってた奴が、少し痛い目見せたら赤ゆから子ゆまで皆殺しで優勝! あとは飛び散った餡子も掃除しないといけないから死体食わせて吐かせての繰り返しとか。なんなら今から来るか?』
「ああ。顔出させてもらうと思う。それでさ。もし子ゆっくりがいたら10匹ほど残しておいて欲しいんだ。何なら買い取ってもいい」
『お? なんだよ悪巧みか? いいぜ。他のみんなも説得してみる。いやぁやっぱ共通の趣味を持つといいな。すっかり意気投合しちまったよ』
 電話を切るとメガネお兄さんはタクシーを拾いすぐさま町外れの森へと向かった。
 着いてみると、森の一部の切り開かれた広場はネットによって四角く囲まれており、その内側に1台、外側に1台2トントラックがとまっていた。
「お、早いな! 丁度今子ゆを集め終わった所だ」
 メガネお兄さんが着いたとき、ふとっちょおにいさんがトングでつかんだ子ゆっくりを大き目のかごの中に放りこむところだった。
「おね、がいだから……、れいむを ゆぐっ、たすけてね……。にんげんさんのいったとおり、ゆぐっ……、いもうとたちをみんなえいえんにゆっくりさせたよ……、ゆぐわああああああん! おそらをぼげッ!」
 先ほど言っていた家族同士の殺し合いの勝者なのだろうそのれいむを含めて、15匹の子ゆっくりがかごの中にはひしめいていた。内訳としてはまりさ種が7匹にれいむ種が6匹、ありす種が2匹でぱちゅりー種は1匹もいない。おそらく体の弱いぱちゅりー種は殺し合いに耐えられなかったのであろうし、ありす種はその「とかいは」という価値観のせいで殺し合いを躊躇ったためだろう。
 15匹のどれもがゆっくり特有の姦しさはなく、小さな声で「ゆるじでぐださい」だの「おねえちゃんたちはゆっくりできないゆっくりだったんだよ。だかられいむはわるくなんだよ」だの呟いている。
「ありす種はいいや。多分使わない」
「おっけ。じゃあ掃除をさせるわ」
 ふとっちょお兄さんはかごの中から2匹のありすをとりだすと、顔を近づけて言う
「おい。おまえら。すーぱーむーしゃむーしゃたいむだ。またそこらの餡子を食え」
「もういやよ! なかまをたべるなんてとかいはじゃないわ!そんなのげすがすることよ!」
「そうか。じゃあ死ね」
 言うが早いかふとっちょおにいさんは文句を言うありすを地面に叩きつけ、そのまま踏みにじる。カスタードクリームがあたりに散らばった。そうしてからもう1匹のありすに尋ねる。
「なあ、お前はどうだ。食べるよな?」
「た、たべるわ! と、とかいはなありすはあんこさんとくりーむさんがだいすきなのよ! だから……!」
「そうか。じゃあとりあえず今潰れたやつを食え」
 散々脅されたのだろう。こちらのありすはとかいはなプライドを完全に投げ捨てたようだ。ふとっちょお兄さんはそのありすを足元におろす。
「ううっ……。ぺーろぺーろするわ……。うげぇっ!」
 踏みにじられて泥交じりになった仲間の成れの果てを舐めて、ありすは自分のカスタードクリームを吐き出してしまう。それでも自分を睨みつけているふとっちょお兄さんを恐れて、それごと潰れたありすを食べ続ける。
 ネットの中を見てみれば、同じように何匹かのゆっくりがのそのそと仲間の残骸を食べているようだった。ほとんどがありすと同じように、餡子を吐き出してはまた食べといった具合であったが、数匹のゆっくり(奇しくも皆れいむ種だった)は「うっめ、これむっちゃうめっ!」と旺盛に仲間の死体を食っていた。
「むーしゃむーしゃ……お、おにいさん、たべるよ……。ありす、ちゃんとたべるよ……?」
 ありすの方はクリームを吐きながらも何とか半分ほどを食べきったようだった。そんな様子を見ていたメガネのお姉さんが、ありすに顔を近づけ呟く。
「そういえばその子、あなたの妹だったわよね。どう? あまあまーでしょ? しあわせーって言わないの?ねえ? 言って御覧なさいな? いつもみたいな大きな声で、しあわせーって、ねえ!?」
「し、し、し、じばあぜええええ」
「やん。クリームがかかったわ」
 妹を食ってしあわせーを言わされるというストレスにありすは大量のクリームを吐き出す。間近にいたメガネお姉さんの顔にクリームがかかった。それをぬぐって振り返ると。お姉さんはメガネお兄さんに笑いかける。
「あ、そうだ! 今から最後の家族の生き残りゲームをやるんですけど、見ていきますか?」
 そのメガネには白濁したクリームが付着していて妙な色気があった。
「ああ、じゃあ見ていきます。携帯で動画の方を撮らせていただいてもよろしいですか?」
 ゆっくり同士が殺しあう動画は狩ゆっくり(ゆっくりを狩るゆっくり)の調教に使えるかもしれないと思い、誰に対してでもなく尋ねると、小学生と思しき少年と話していた中年の男が答える。
「いいですよ。でも携帯でとらなくても、後半の方はほとんどHDビデオカメラで撮影してありますよ?」
「そうなんですか。出来ればそれもコピーさせていただきたいのですが。あ、いいですか? ありがとうございます。でも一応携帯の方でも撮っておくことにします」
 集まった虐待師の面々は皆気が良い人たちのようだった。突然現れて子ゆっくりをくれだの、動画をくれだの言うメガネお兄さんに嫌な顔ひとつしないで応じてくれる。
 メガネお兄さんはネットの中に入ると、そこに置かれたかなり大型の水槽へと近づいて最後の家族ロワイヤルを見ることにした。
 四隅では4人の男女がそれぞれ手元のゆっくりに小さな声で言い聞かせている。その中でバットを手元に置いた青年のとゆっくりまりさの会話を、メガネお兄さんは聞いてみる。
「いいか、まりさ。お前は特別なゆっくりだ。だから他のゆっくりは潰されたけど、お前にはチャンスをやる」
「ちゃんすってなんのちゃんすなのだぜ?」
「生き残るチャンスだ。このチャンスを掴むことが出来れば、おまえはゆっくりできる。あまあまだってやる」
「ほ、ほんとうなのぜ! まりさはまたとれいむとおちびちゃんたちといっしょにゆっくりできるのぜ!?」
「まりさ。チャンスっていうのはな、そのれいむとおちびちゃんを殺すことなんだ」
「ゆ! そんなことできないのぜ! れいむとおちびちゃんたちはとってゆっくりしたいいゆっくりなのぜ!」
「そうか。まりさはいやか」
「ゆ! とうぜんなんだぜ! かぞくをころすなんてげすがすることなんだぜ!」
「でもなまりさ。れいむとおちびちゃんたちはおまえを殺すつもりだぞ?」
「ゆゆ! そんなはずないのぜ! まりさたちはとってもなかよしさんなかぞくなのぜ!」
「いいか。おまえは特別なゆっくりだ。生まれながらにしてゆっくりする権利があるんだ。だが、れいむとおまえのおちびちゃんたちは違う。だからおまえを殺して特別なゆっくりになろうとしているんだ」
「ちがうのぜちがうのぜ! さっきわかれるときもがんばっていっしょにゆっくりしようねってやくそくしたのぜ!」
「それが奴らの作戦なんだよ」
「……どういうことなのぜ?」
「奴らはお前のことが大切だと言うだろう。戦う気なんて無いと言うかもしれない。でもそうやって油断させておいて、おまえを永遠にゆっくりさせる気なのさ」
「そんな……」
「でもおまえは特別なゆっくりだ。他のゲスとは違う。ゲスなやつらをせいっさいっする権利がお前にはある。お前にはゆっくりする権利がある。なぜなら特別なゆっくりだからだ。だから、な? チャンスをつかめ!」
「れいむとおちびちゃんは、げす……、まりさは、とくべつなゆっくり……」
「そうだ。考えてもみろ。れいむは妊娠している間狩りにいったか? 狩りに行かない癖に、沢山ごはんさんを欲しがったりはしなかったか?」
「そういえば、ほしがったのぜ……。まりさがいっしょうけんめいとってきたごはんさんなのに、いつもたりないっていってたのぜ」
「おちびちゃんたちはどうだ? 生まれてから一度でもお前のために狩りをしたか?」
「おちびちゃんたちは、まりさといっしょにかりをするっていってくれたのぜ?」
「で、実際に狩りにいったのか?」
「……いってないのぜ。れいむが、おちびちゃんたちはゆっくりするのがしごとだっていったし、まりさもかりはまだはやいとおもったのぜ」
「お前達がそう言うのがわかってたんだよ。いかにも狩りをする気があるようなふりをして、実際はずっとおまえにごはんさんをとりに行かせるつもりなんだ」
「ゆ……」
「奴らはおまえを奴隷としか思っていない。ゲスなんだ。特別なお前が奴らを永遠にゆっくりさせるのは正しいことなんだ。そうだろう?」
「ゆ……ゆゆ……ゆ! わかったのぜおにいさん! げすなれいむとおちびちゃんをせいっさいっして、まりさはゆっくりするのぜ!」
「良し! よく言ったぞ。さあすぐにスタートだ!」
 その青年はかなり調子よくまりさを誘導した。見れば他の3人はでこぴんをしたり実際にお菓子を目の前に出したりと、飴と鞭を使ってどうにかその気にさせようとしているが、あまりうまくいっていないようだった。青年がゆっくりを騙すのがうまいのかそれともまりさが単純なのか。
「彼がそそのかしたゆっくり、今のところ3連勝中なんですよ。こういうの得意みたいで」
 メガネのお姉さんがそっと囁く。
 それに言葉を返そうとしたとき、水槽にゆっくりの家族が投入される。
 バットを手元においた青年が説得していたまりさの他には、母れいむがと子れいむ、赤まりさだ。
「ゆゆーん! まりさ! おちびちゃんたち! またあえてうれしいよー!……ぶげっ!?」
 再開を喜ぶれいむにまりさが体当たりを食らわす。れいむは体当たりの衝撃よりも、最愛のまりさからの攻撃にショックをうけたようだった。目を大きく見開き愕然とした表情を浮かべる。
「まりさ……? なにをするの? れいむのおかおをわすれたの?」
「よくもおめおめまりささまのまえにかおをだせたのぜ! これはいままでさんざんこきつかってくれたおかえしなのぜ!」
「ゆゆ! なにをいっているのまりさ! れいむたちはあいしあっているんだよ? まりさがかりにいって、れいむはこそだてをするよ! ささえあっていきているんだよ!」
「ゆっ! よくいうのぜ! とくべつなまりささまをりようして、どれいあつかいしていることはおみとおしなのぜ!」
 そのまままりさは再び体当たりをしようとするが、今度はれいむもなんとか避ける。
「いまのをよくよけたんだぜ! でもそれもまりさがとってきたごはんさんをむーしゃむーしゃしたおかげなのぜ!」
「まりさ! いいかげんにしないとれいむおこるよ! おちびちゃんたちもこわがってるよ!」
「おきゃーしゃん、おこっちぇるとゆっくちできにょいのじぇ? まりちゃとしゅーりしゅーりするのじぇ!」
「すーりすーりすーりすーり、ありがとうねおちびちゃん。おちびちゃんのおかげでおかあさんとってもゆっくりできたよ!」 両親が言い争っている姿を見て、赤まりさがれいむにすーりすーりをする。すーりすーりをすれば両親はゆっくりできる。いままでの経験から赤まりさはそう判断したのだ。
「おねえちゃんのれいむはおとうさんとすーりすーりするよっ! おとうさんすーりすーりだよ!」
 妹の行動をみて、子れいむは父まりさをゆっくりさせようと擦り寄る。
「ゆ! おちびちゃんのすーりすーりはゆっくりできるのぜ……はっ!」
「すーりすーり……おとうさん?……おとう、ぐぇっ!」
 一瞬ゆっくりしかけた父まりさだったが、先ほどのお兄さんの言葉が頭をよぎる
『そうやってゆだんさせておまえをえいえんにゆっくりさせるきなのさ』
 すぐにおさげを振って子れいむを弾き飛ばす。
「まりさ!? おねえちゃんになんてことをするの!?」
「お、とうさん? れいむのすーりすーりゆっくりできなかったの? ごめんね、ごめんね!」
 激高する母れいむと健気にも謝る子れいむを父まりさは鼻で笑う(鼻、無いけどね)。
「ふん! まりさのめはふしあなさんじゃないのだぜ! はらぐろいれいむは、しんでね!!」
「げぼぉっ!……おどうざん、どおぢで……」
 まりさはぴょんと跳ねると、全体重をかけて子れいむにのしかかる。子ゆっくりが成体のゆっくりの重さに耐えられるはずも無く、子れいむはその腹をはじけさせた。 
「ばりざあああっ! ごどぼを!じぶんのごどぼをおおおおお!」
「おねーちゃ……おねーちゃ?……ゆびいいいいいいい!」
「うるさいやつなのぜ! こうしてやるのぜ!」
 父まりさは、こんどは姉を潰されて泣き出す赤まりのおさげを咥えると、そのまま子れいむの残骸へと叩きつける、
 1回
「ゆびっ!」
 2回
「ゆばぁっ……」
 3回
「……」
 三度目にしてもう永遠に泣くことが出来なくなった赤まりさだったが、父まりさはなおも叩きつけようとする。それを妨げたのは母れいむのもみあげによる一撃だった。ダメージは無いが痛みを与える攻撃に、父まりさは振り返る。
「ゆっ! なにをするんだぜ!」
「それはれいむのせりふだよ! まりさよくみてね! まりさがつぶしたのは、まりだがたたきつけてるのは、まりさとれいむのこどもなんだよっ!! がんばっていっしょにえっとうしたおねえちゃんに! はるさんがきてすっきりーしてできたおちびちゃん! まりさとすーりすーりをするのがだいすきだったおねえちゃん! はやくおとうさんみたいにかりをしたいっていっていたおちびちゃん! それを!それをまりさがころしたんだよ!!」
「で、でも、こいつらはまりさをころそうとしたんだぜ……」
 子を失った母の剣幕に、それまで母れいむの言葉を一切聞かなかったまりさが狼狽する。
「まりさ。きっとにんげんさんになにかいわれたんだね? れいむもまりさとおちびちゃんたちをころせば、ゆっくりさせてくれるっていわれたけど、まりさとおちびちゃんをしんじたよ。おちびちゃんたちもまりさをしんじていたんだよ?」
「おちび、ちゃん?」
 まりさはれいむに背を向け、2匹のおちびちゃんの成れの果てを見つめる。
(まりさは……、まりさはとくべつなゆっくりで、れいむとおちびちゃんはそれをねたむげすで、まりさをころそうとしていて……、まりさ……は、まりさは……)
「まりさは、もしかして、とんでもないことを、してしまったの……ぜ?」
「まりさ。おちびちゃんたちはかえってこないよ。でも、れいむとまりさは、きっとやりなおせるよ。だから……」
 れいむがその続きを言おうとしたときだった。まりさを誘導したお兄さんが、水槽のふちから小さく呟く。
「まりさ。れいむが枝を咥えてるぞ」
「ゆっ!?」
 その呟きに、小さくなっていたまりさの中の不審の火種は大きく燃えあがる。 
 おさげを振りながら振り返る
「ゆ゛っ!?でいぶのおべべがっ!」
 もみあげで傷心のまりさをなでなでしようとしていたれいむは、勢いよく振られたおさげに目を直撃されて大きくのけぞる。
 まりさはそれでも攻撃の手を緩めなかった。高く飛び上がると、大きく口を開けたれいむにのしかかる。
「やっぱり!」
「まり、」
「そうやって!!」
「ばり、ざ」
「まりさを!!!」
「ばば、」
「ころそうとするのぜ、このくそれいむ!!!」
「……」
「あぶなかったのぜ! あやうくだまされるところだったのぜ! おにいさんありがとうなのぜ!」
 最後のれいむを始末したまりさは振り返って青年を見上げる。それに対して青年は笑って大きくうなずいて見せた後、まりさに謝罪をした。
「ごめんね。まりさ。れいむは枝なんて咥えてなかったよ」
「え?」
 まりさがれいむの残骸に目をむけると、確かに枝などどこにも見当たらない。
「じゃあ、れいむは……、」
「本心からお前とやり直したいと思ってたみたいだ。あと、おちび二人も。本当はおまえのことを殺そうとはしてなかったらしい。ごめんな俺の勘違いだったよ」
「どういう、こと、なん、だぜ?」
「でも良かったなまりさ! れいむもおちびちゃん2人もお前のことが大好きだったんだよ? 家族に愛されて本当にまりさは幸せ者だなぁ!」 
「ゆげええええええっ!?」
「あれま。餡子吐き出しちまったよ。こりゃノーゲームだな」
「おいおい。途中で声をかけるのは反則だろ」
「あのまま放っておいたら和解してBADEND直行っぽかったんで、つい……」
 バットの青年とサングラスの青年の掛け合いを聞きながら、これは良い収穫だとメガネお兄さんは思った。
 自分を特別なゆっくりだと思い込ませ、ほかのゆっくりはゲスだと教える。短期間でこれだけの成果が出るのだ。残り3週間、子ゆの状態からみっちり仕込めば、ゆっくりを狩るゆっくりは意外と簡単に作り出せるかもしれない。
 その後おにいさんは、バットの青年にゆっくりを誘導するコツを聞き、かごに入った子ゆっくりと、ついでに仲間を喜んで食っていた成体れいむを一体貰い受けてその森を去った。
 


 調教対象を確保したメガネお兄さんは、早速その日の夜から調教を開始した。
 自宅で行うにはスペース的な問題と周囲の目があったので小さめの貸し倉庫を借りてその中で行うことにした。
 柵を用意し、ひとつには子ゆっくりたちをその中に入れる。
 成体ゆっくりの出番はまだ先だったので、とりあえず子ゆっくりの教育からはじめることにした。
 子ゆっくりは全体的に元気が無い。それも当然であろう。300以上いた仲間たちが目の前で虐殺され、あまつさえ自分の家族を手(?)にかけたり、仲間の死体を食わされるはめになったのだ。
「ゆゆ? おにいさんれいむをかってくれるの?」
 柵の中から1匹のれいむがおずおずと尋ねる。それに対してお兄さんは微笑んで見せた。
「すこしの間だけね。君たちが野生でも生きていけるようにお兄さんが教育してあげよう」
「まりさはじぶんでいきていけるのぜ? かりのしかたは、おとうさんが、おとうさんが……ゆぐわあああああん!」
 自分が殺した父親のことでも思い出したのだろうか? まりさが耳障りな泣き声をあげる。それに触発されて他の子ゆっくりたちも涙ぐみはじめる。
 そんな子ゆっくりたちを即座に潰したい衝動を押さえ込みながら、メガネお兄さんはなおも笑みを浮かべる。
「いいかい? ほかのゆっくり達が死んで、おまえたちが生き残ったのは正しいことなんだ。だからお前たちの親や姉妹が死んでも悲しむことじゃない」
「ゆっ、ゆぐ?」
「むしろ、あいつらを殺したり食ったりしたお前たちは褒められるべきなんだ。お前たちはとてもゆっくりしたゆっくりだ」
「ゆっくりしてるの? でもどうぞくごろしはじゅーっざいっなんだよ! おかあさんも、おさのぱちゅりーもそういっていたよ!」
「それは、ほかのゆっくりがお前たちを恐れているから教えた嘘なんだ」
「ゆ? うそ?」
「ああ。いいか、おまえたちはすべての野良ゆっくりの上に立つ存在。捕食種だ」
「ほしょくしゅ、なのぜ?」
「そうだ。おまえらこれを食ってみろ」
 そういってメガネお兄さんはゆっくりを加工した饅頭を子ゆっくりの群れの中に投げ入れてやる。
「ゆ! あまあまさんだよ!」
「まりさにもよこすのぜ!」
 それまでの消沈とした空気が嘘のように貪欲にかぶり付く。
「ししし、しあわせー! し、しあわせー!」
「うっめ! これめっちゃうめええええ!」
 惨劇を逃れた後の「普通のあまあま」にゆっくりたちは口々にしあわせーを連発する。
 食べ終わったころを見計らって、メガネお兄さんは子ゆっくりたちに真実を告げた。
「今おまえらが食べたそれな。正体はゆっくりれいむだ」
「ゆ゛!?」
「おええええっ」
「こらこら吐き出すな。これからお前たちの餌はこの饅頭と、赤ゆだけなんだからな」
「ひどいいいい!?」
「もうなかまはたべたくないよ!」
 口々に非難の声を上げる子ゆっくりたち。それに対してお兄さんは質問する。
「でも、とってもあまあまーだったろう? もしも俺がこいつの正体を教えなかったら、お前らは喜んで食べ続けただろう?」
「ゆ、ゆゆゆゆ?」
「つまりさ。おまえたちは同属を食うことがゆっくりできないと思い込んでいる。それが間違いなんだよ。いいか? ゆっくりにとって一番のあまあまは、ゆっくりなんだ」
「でも、でもでもおかあさんは!」
「だから言っただろう? お前たちは特別なゆっくりだって。他のゆっくりは、ゆっくりを食べることは許されない。でもお前たちだけはそれが許されている。そんなお前たちを妬んで、今まで他の連中はゆっくりを食べることは悪いことだと嘘をおしえてきたんだ。お前たちは特別だ。ほかのゆっくりはゲスだ」
「ゆゆーん?」
 子ゆっくりたちは納得できないようだったが、メガネお兄さんは三日間同じようなことを繰り返し教え、餌にはゆっくりを加工したものを与え続けた。
 2日目、3日目と続けるうちに最初は反駁してきた子ゆっくりたちも段々とそれを言わなくなった。
 そうしておいてから丸2日。お兄さんは子ゆっくりたちに餌を与えなかった。この段階で共食いをされても困るので、柵をさらに区切って、それぞれのゆっくりが接触できないようにした。
「ゆああああああん! おなかがすいたよおおおお」
「おにいさーん! ゆっくりまんじゅうがほしいのぜえええええ!」
 空腹に耐えられなくなったゆっくり達が叫びだすころ、メガネお兄さんは小さな箱を抱えて子ゆっくりたちのもとを訪れた。
「ほうらお前たち。久々の飯だ。ゆっくり味わえよ」
「ゆっ!はやくちょうだいね! 」
「れいむ03か。制裁だな」
 餌を断つ前にすべての子ゆっくりの背中にはまりさは01から07、れいむは01から06の番号がマジックで書き込んであった。見込みがあるもの、無い者を選り分けしやすくするためだ。
 メガネお兄さんはチェックシートの03の欄に『人間への敬意 -1』と書き込むと後ろを向いてメガネを外し、雑貨店で買ったパーティー用のピエロのマスクをかぶる。
「ゆっ? おにいさんだれ? めがねのおにいさんはどこにいったの?」
 ゆっくりはバッチ持ちのように優秀なものを除いて、どれも皆飾りによって個を認識する。人間が顔という模様に対しての認識力が高いのと同じ様に、飾りに対しての認識力が高いのではないかと言われているが、むしろそれ以外への認識力が低いのではないだろうかとメガネお兄さんは常々思っていた。
 マスクをかぶっただけで完全に別人だと思っているところは本当におめでたい。
「何だ貴様!その言葉遣いはぁ!」
 兎も角、飴と鞭の、鞭用のキャラクターになると、れいむ03を怒鳴りつけ、その額へとまち針を刺す。
「いちゃいいいいいい!」
「人間様に対して餌を催促するとはどういうつもりだぁ!?」
 続けてもう1本。今度は頬を貫通させる。
「あべえええええ!?」
「あべええじゃないだろう!? こういうときは何ていうんだ? ああ!?」
「ご、ごべんなざい! もうじまぜんがらあああ!」
「なにをもうしないんだあ!?」
「ゆ?」
「わかってねえじゃねえかぁ!」
 もう一本。今度は目のすぐそばへと叩き込む。
「ゆべえええええ!」
「ほら言ってみろよ! な、に、を!もうしないんだあああ!?」
「に、にんげんざんに、えざをざいぞくじまぜんん!」
「よぉーし! わかったらよろしい! だがもしもまたお前らが、特別なゆっくりにふさわしくない事をしたら、またくるからなああああ!? 理解したかぁ!?」
「ゆ、ゆっくりりかいしたよ!」
「他の連中もだ!わかったな!」
「ゆっくりりかいしたよ!」
 お兄さんはもう一度後ろを向き、マスクを外してメガネをかけると微笑んだ。
「よし、じゃあ餌だ」
 そうして持っていた箱をさかさまにして振る。
「おちょらを、ゆべっ」
 そこから落ちたのは13匹、子ゆっくりと同じ数だけの赤ゆだった。ゆっくりショップで投売りされていものを買い取ったのだ。
「さあ、それぞれ1匹づつあるよ。存分にお食べ」
「ゆやぁあああん! いちゃいよぉぉぉぉぉ!」
 流石に生きた赤ゆを殺して食うのには抵抗があるのだろう。箱から落とされて泣き喚く赤ゆを前にしても子ゆっくりたちはなかなか喰らいつこうとはしない。
「ゆゆーん。あかちゃんかわいそうだよお。すーりすーりしてあげるよっ」
 それどころかれいむ06などはぼせい(笑)を発揮して痛がる赤ゆをあやし始めた。
「仕方がないな」
 メガネお兄さんはすーりすーりされて泣き止んだ赤ゆを取り上げると、ナイフを取り出し、その背中に何本か切れ込みを入れる。
「ゆぴいいいいい!?」
 そうしてからその頬を押して餡子を内部から噴出させる。
「ゆぼおおおおおお!?」
「ほれ。これでどうだ」
 噴出した餡子から漂う甘い香りが、子ゆっくりの無い鼻をくすぐる。
「おいしそうなにおいなのだぜ……。ゆっくりまんじゅうとおなじなのぜ……」
「ゆっ!ゆっ! いちゃいよぉぉぉぉ!おねーしゃ、いちゃいよー!」
 傷だらけになりながらも赤ゆは大きな声で泣き喚く。その赤ゆにれいむ06が駆け寄る。
「ぺーろぺーろすればきずはなおるよ! ぺーろぺーろ……ゆっ! とってもあまあまー!だよ!ぺーろぺーろ、ぺーろぺーろ」
 傷を舐めて治そうとしたれいむ06だったが、こぼれる餡子を舐めて目の色を変える。舌で傷口をほじくり、中の餡子まで舐め取ろうとする。
「おねーしゃっ!? ちょれはれいみゅのにゃかみだよっ! たべちゃだめなんだ、りょおおおおお!?」
「がーつがーつ! むーしゃむーしゃ! ししし、しあわせー!!」
 一度タガを外された食欲を止めるなどということはゆっくりにはできない。大きく広げた傷口かられいむ06は赤ゆの中身を貪り始めた。
「れいむばっかりずるいんだぜ! まりさにもよこすんだぜ!」
 しあわせそうに赤ゆを貪るれいむに他の子ゆっくりたちも飛び掛ろうとする。メガネお兄さんはそれを制した。
「こらこらお前たち。餌ならほかにもいるだろう」
 そうして他の赤ゆたちを指し示す。
「やっちょあんよがいちゃくなきゅなっちゃよ! ……ゆ? おねーしゃたちどおちたにょ? にゃんでよだれしゃんをたりゃしてりゅの!?」
「……ひゃあ、がまんできねぇ!ぜろだぁ!」
 まりさ02が飛び掛ったのを皮切りに、ほかの子ゆっくりたちもそれぞれの赤ゆへと突進する。
「ゆやああああん!ぐべっ」
 あるものは押しつぶし。
「ゆよおおおおん!ぐぼっ」
 あるものは噛み付き。
「ゆやゆよおおおん!ぐばっ」
 あるものは噛み千切り。それぞれ赤ゆを貪っていく。
「とってもあまあまだよおおおお! しあわせー!」
 赤ゆの絶叫のカノンに引き続いて、しあわせー!の輪唱が奏でられた。赤ゆたちはここに連れて来る前にも存分に痛めつけてある。ゆっくりの餡子は不幸であればあるほど、甘くなるのだ。加えて同族に食い殺されるという末路は、その甘みをさらに引き立てるだろう。子ゆっくりたちは極上の甘味にそれぞれ舌鼓を打っている。
「これで第一段階は終了だな。脱落者はゼロ。れいむ03が減点1か」
 その日から子ゆっくりたちの餌は生きた赤ゆになった。一度禁忌を踏み越えてしまえば後はたやすいものである。子ゆたちはなんら抵抗を示すことなく、赤ゆを殺し食うようになった。痛めつけた方が甘いということにも気づいたのか、体の一部を噛み千切り、散々追い回した挙句食うという所業にも走るようになっていた。
 調教の第一段階はそうして終了した。次は、食べても良い個体とそうでない個体を教え込む作業である。
 まずは子ゆたちに、バッチつきのゆっくりの写真と、野良の写真を見せて口頭で説明を行った。
「いいか。この金のバッチと銀のバッチ、それから銅のバッチをつけたゆっくりは食べてはいけない。このなんのバッチもつけてないゆっくりだけが、たべるとゆっくりできるんだ。わかるか?」
 れいむ03が即答する。
「ゆっくりりかいしたよ!」
 別のバッチ付きの写真をれいむ03へと見せる。
「じゃあこいつは食べてもいいゆっくりか?」
「たべてもいいゆっくりだよ!」
「わかってねえじゃねえか!」
「ゆびいいい!ごべんなざいいい!」
 三日間みっちり座学をしたが、れいむ03だけはついに完全に正解することができなかった。
 それ以上時間を割く余裕は無かったので、そのままテストをすることにした。
「よーしお前ら。今日の餌だ」
 その日は赤ゆを20匹柵の中に離した。そしてその赤ゆたちにはある仕掛けがしてあった。
「げすなゆっくりはまりささまのえさになるのぜ!……ゆ! このれいむはきんばっちつきなのぜ!たべちゃだめなのぜ」
 いち早く気づいたのはまりさ04だった。放った赤ゆのうち10匹には金、銀、銅それぞれのバッチがつけられているのだ。無論本物では無い。形だけ似せてボール紙で作った偽ものである。
「ゆゆ!れいむはこっちのばっちなしをたべるよ!」
 ほとんどの子ゆっくりは的確にバッチつきを避けて喰らいついていく。だが案の上というべきか、れいむ03は大して確認もせずに、銀色の偽バッチをつけた赤ゆに食いつく。
「むーしゃむーしゃ、しあ、ばぜえええええええええ!?」
 食いかけの赤ゆもろとも餡子を噴き出す。まわりのゆっくりは何事かと様子を窺っている。
「がらいいいいいい!げぼおおお!ぶじあばぜええええ!げえええええ、げふ」
 餡子を撒き散らすだけ撒き散らすと、れいむ03はピクピクと痙攣して、そして動かなくなった。
「はいみんな注目。バッチ付きのゆっくりを食べるとこういうことになる。よおく覚えておけよ」
「ゆ、ゆっくりりかいしたよ!」
 バッチ付きの赤ゆには、ハバネロの粉末を濃縮したカプセルが埋め込んであったのだ。もしも偽バッチつきの赤ゆをたべれば、口の中でカプセルが割れ、唐辛子の4倍以上の辛味が食べたゆっくりを襲うようになっていた。れいむ03はその辛さに耐えられず、餡子を吐きつくして死んでしまったというわけである。
「ゆゆ! のこったのはぜんぶばっちつきだよ! これじゃあたべられないよ!」
「まりさのぶんもないのぜ! どうすればいいのぜ?」
 食べられる赤ゆの数は10匹。子ゆっくりの数は13-1で12匹である。ぐずぐずしていたれいむ06とまりさ07が餌を食べ損ねてしまう。
「のんびりしているからだよ。いいか? そとではいつでも餌が狩れるとは限らない。飢えるのがいやだったら素早く敵を狩ることだ」
「ゆゆーん。りかいしたよ」
「……わかったのぜ」
 聞き分けもだいぶよくなってきていた。そろそろ最終段階をはじめてもいい頃かとメガネお兄さんは思った。
 偽バッチ持ちとバッチ無しの赤ゆを混ぜて与えることは続けたまま、メガネお兄さんはゆっくりたちを4つのチームに分けた。
 まりさ01-03のAチーム、
 まりさ04-06のBチーム、
 れいむ01、02、04のCチーム、
 そして、まりさ07、れいむ05、06のDチームだ。
 基本的には番号順であるが、Dチームは普段から行っていた跳躍力、瞬発力のテストの結果や素行の悪いものを集めている。DはできそこないのDの略なのである。
 そうして分けたチームにお兄さんは集団での戦い方を教えた。
「いいか。まずは足。あんよを狙うんだ。噛み付いてもいいし木の枝を使ってもいい。相手の動きを封じろ」
「動きを封じたら次は傷をつけるんだ。もしもあんよを狙ったときに傷がついていたらそれを広げろ」
「あとはひたすら押しまくれ。そうすれば中の餡子が飛び出てくる」
「木の枝を使うときは突き刺すな。相手の弾力で自分に刺さる場合がある。相手に引っ掛けて傷をつけるんだ」
「戦うときは固まるな。分散して柔軟に対応できるようにしろ」
「勝てぬと分かったらせめて怪我をさせろ。それが明日へとつながる」
「寝込みを襲え。容赦をするな。お前たち以外の野良は皆ゲスだ。おまえたちに食われるために存在する」
 改正案施行3日前までお兄さんの戦闘訓練は続いた。チーム内での模擬戦も行われ、体も大きくなった子ゆたちはいまや立派な狩ゆっくり、捕食種となろうとしていた。
「では今日は、最終試験だ。これが終わればお前たちは外に出れる。思う存分他のゆっくり達を喰らい尽くせる。準備はいいか?」
「ばんっぜんっだよ!」
「しゃばにでるのがまちどおしいのぜ!」
 ゆっくりたちの戦意は旺盛だった。かつての同属を殺した罪の意識で消沈していた様子は欠片も見当たらない。
「よおし。お前たちの相手は隣の倉庫だ。この箱に入ってろ連れて行ってやる」
 ここに連れてきたころには全員を箱に入れて運んでこれたのだが、成長して体がでかくなっているため、台車に乗せて12匹を隣の倉庫へとつれてゆく。
「ゆ゛っ!おにいさん! ごはんさんはまだなのっ!? れいむはおなかがすいてるんだよっ!?」
 倉庫に入るなり餌の催促をしてきたのは通常のものよりふたまわりは大きいれいむだ。
 かつてふとっちょお兄さん達から譲り受けた、同属の死体を嬉々として食っていた個体である。子ゆっくりたちとは別メニューで調教していたのだが餡子脳の具合が相当なもので、痛めつけてもすぐ増長してしまうため調教を断念したのだった。これまでの所ゆっくりの味を覚えさせる以外何もしていない。
「れいむはおなかぺこぺこなんだよ! れいむをうえさせるなんておにいさんはげすなんだよっ!」
 れいむには昨日から食事を与えていなかった。戦意を高めるためだ。
「成績の悪いチームから順に奴と戦ってもらう。どれか一つのチームでも奴を倒せたら合格だ。わかったか?」
 箱を傾けて狩ゆ候補生たちにれいむの姿を確認させるとお兄さんはまりさ07、れいむ05、06の3匹を箱から放り出した。
「行けっまずはDチームからだ!」
「おそらをとんでるみたい! ゆっ?」
「ゆほおおおお! おいしそうなえさなんだよおおお」
 Dチームが暢気に「おそらを」発言をしている間に、飢えた巨大れいむは突進していた。
「やめてね? やめてね? こっちにこないでね?」
「や、やめるんだぜ! まりさたちはとくべつなゆっぼあ!」
 3匹ともまとめて押しつぶされる。瞬殺である。
「次。Cチーム」
 Dチームにもとより期待などしていなかった。メガネお兄さんは淡々と次のチームを放り出す。
「ゆ! あんなおおきなれいむにれいむはかてないよ! おにいさんはこのなかにもどしてね!」
 Cチームはそれなりに優秀なチームであったが、普段から戦意が不足していた。加えてDチームが瞬殺されたことで臆病風に吹かれたようだ。敵に背を向けメガネお兄さんに命乞いをする。
「おい、後ろ」
「ゆ? ゆびゃああああああ!」
「むーしゃむーしゃ。それなりー!」
 無論。敵に背を向けて無事に済むわけがない。Cチームもあえなく巨大れいむの馳走となった。
「それじゃあ、Aチーム」
 手塩にかけて育てた狩ゆっくり候補生が次々と敗れていくのを見てもメガネお兄さんは大した落胆も見せずに次のチームを投入してゆく。
「とつげきとつげきとつげきなのだぜ! なにがなんでもとつげきなのだぜ!」
 こんどはまりさ種のみで構成されたAチームだ。Cチームと打って変わって戦意は旺盛。率先してまりさ02が体当たりを繰り出す。
「ゆ? いまなにかしたの? れいむさまにはむかうなんてばかなの? しぬの?」
 しかし巨体のれいむに対して、成体になったばかりのまりさの体当たりはほとんどダメージを与えることができない。ただ不要に怒りを買うだけだった。
「ゆげええっ」
 そのまま即座に押しつぶされる。
「まりさはばかなのぜ! かしこいまりさはとつげきするのぜ!」
 一体何を見ていたのか。何の学習も無しに次のまりさ01も体当たりを敢行する。
「ふんっしつこいよっ! とうほうにげいげきのよういありっなんだよっ!」
 巨大れいむはもみあげを振るとまりさ01を弾き飛ばす。地面に体当たりをする羽目になるまりさ02。
「い、いだいのぜぇ……」
「そのままれいむのごはんさんになってね!」
 痛みに呻くまりさ01に巨大れいむは喰らいつく。
「ゆぎぇえええええええ」
「むーしゃむー、ゆ゛っ! いたいよっ!?」
 まりさ01を貪っていた巨大れいむは背後からの鋭い痛みに振り向く。
 そこには巨大れいむのあんよに必死で噛み付くまりさ03の姿がった。
「やっときづいたみたいなのぜっ」
 それを見て反応したのは、箱の中から様子を窺うBチームの面々だった。
「ふんっ きょたいをあいてにするのにまったんをねらうのはじょうしきなのぜっ」
「まりさたちならあのれいむを10びょうでぜつめいできるのぜ!」
 その会話を聞いて、お兄さんはほくそ笑む。
 もとより、A、C、Dチームが倒せるとは思っていなかった。本命は残ったBチームである。
 ただ機械的に番号順で振り分けたチームであったが、Bチームの優秀さは他の追随を許さなかった。
 身体能力、思考力、連携プレイ。何もかもが群を抜いていた。
 故に。この試験はBチームのためのものであり、それ以外のチームにとってはただの処分でしかなかった。
「もっど、ゆっぐりじだがった……」
 その間に。奮闘むなしくまりさ03がえいえんにゆっくりする。悲しいかな巨大れいむの体に傷一つ負わせることができなかった。
「いって来いBチーム」
「ゆっひゃあ! まちかねたのぜ!」
 お兄さんが箱から放り出すまでもなく、自ら跳躍して箱から飛び出すBチームの面々。それだけのその非凡さが窺えた。
「むーしゃむーしゃ。びっみょー、ゆ?」
 まりさ03を食べるのに巨大れいむが夢中になっている間に、Bチームは三角形に巨大れいむを囲んでいた。
「まりさ、いくつなんだぜ?」
「2.5……おおくても3.0から3.2ってところなんだぜ」
 まりさたちが喋っているのは巨大れいむの戦力である。
 一般成体ゆっくりの3.2倍。それがそのれいむの戦力だと見切りをつけたのだ。
「わけのわからないことをいってないで、ゆっくりれいむのごはんさんになってね!」
 これまでと同じように押しつぶす腹なのだろう。まりさ04へと飛び掛る巨大れいむ。しかしそのあんよはしたたかに地面に打ち付けられることになる。
「ゆべっ。いたんんだよおおお? どこにいったのおおお?」
 まりさ04は素早いバックスッテプで巨大れいむののしかかりから身をかわしていた。そしてまりさ04が引いた分、まりさ05、06は巨大れいむに近づき、間合いを崩さない。
「そんなところにいたね! ゆっくりつぶれていってね!」
 近づいてきたまりさ05に今度の狙いをつけて、れいむは飛びかかろうとする。しかしそれは叶わなかった。
「ゆぎゃああああ!?」
 まりさ06がれいむのあんよに噛み付いていたのだ。先のAチームによる噛み付きより強い力が掛かっている証拠に、その小麦粉で出来た皮はビローンと引き伸ばされている。
「こ、このげすがああああ、あ? あ゛ぎゃあああああああ!?」
 罵声を発しようとする巨大れいむ。しかしそれは途中で声ならぬ絶叫へと転じる。
 まりさ05が06によって引き伸ばされたその伸びきった皮に、横から噛み付いたのだ。二方向から掛かる力に耐え切れず、巨大れいむの厚い皮はぶちりと千切れる。
「びいいいい!? あんこさんが! れいむのあんこさんがっ!」
 自重が重いことも手伝って、傷口からはドロドロと餡子が零れ落ちる。
「うごけばうごくほどあんこさんはながれでるのぜ!」
 敗者を見る目で巨大れいむを眺め、まりさ04は笑う。
「でもうごかなければ、ただのまとだああああ!」
 3匹のまりさは動けない巨大れいむへと飛び掛る。
 皮を引きちぎったのと同じ要領でもみあげを引きちぎり。
 引きちぎったもみあげを振り回して巨大れいむのおめめを強打し。
 残ったおめめに見せ付けるように、もう一方のもみあげを目の前で食べてみせる。
 そうして散々痛めつけたあと、3匹は巨大れいむの体に更に二つ穴を開け、そこから餡子を食べ始めた。 
 しばらくして。残ったのはベロベロの皮だけとなった無残な成れの果てであった。
「よし。すばらしい手際だ。Bチーム」
 メガネお兄さんは、初めて本心からゆっくりを褒め称える。
「ゆっ。おにいさんのきょういくのおかげなのぜ!」
 謙虚に答えるまりさ05。それを見てメガネお兄さんはチームBを手放すがほんの少し惜しくなった。
 調教の後半は他のチームに見切りをつけてほとんどこのチームに付きっ切りだった。ここまで真剣にゆっくりと向き合ったのは初めてだった。
 しかし3匹には役目がある。ゆっくりを狩るゆっくり。捕食種としての役目が。
 その日メガネお兄さんはBチームの面々を家へと連れ帰り、その体を洗ってやった。そして大きくB書かれたバッチをそれぞれの帽子へとつけてやった。
 BチームのBは、ゆっくりと戦うバトルのB、ゆっくりを貫くバレットのB。そしてゆっくりを破壊するバスターズのBである。


 次の日。メガネお兄さんは近くの公園へと3匹をつれて行くと1匹づつ地面に降ろした。
「これでお前たちは自由だ。もしもお前たちが、すべてのゆっくりを喰らい尽くしたその日には、また会おう」
「おにいさん。いままでおせわになりましたなのぜ!」
「とくべつなまりさにそだててくれてありがとうなのぜ」
「ゆっくりできないげすはまりさにまかせるのぜ!」
 まりさ達は口々に別れの言葉を告げる。頼もしいその言葉を聞いてお兄さんはその公園を離れようとする。そんなお兄さんに言葉をかける者がいた。
「ちょっとあんた! ゆっくりを捨ててかないでおくれよ!」
 町内会の人間だろうか。竹箒を持ったおばさんがすさまじい剣幕でお兄さんに迫ってくる。
「ただでさえ法律が変わるって言うんで、ゆっくりを捨てる輩が増えて困ってるんだよ。処分するこっちの身にもなっておくれ!」
 みればおばさんの持つ竹箒の柄は茶色く汚れている。おそらく何匹ものゆっくりを突き潰してきたのだろう。
「いや。こいつらは特別なゆっくりなんですよ」
 お兄さんは冷静におばさんへと説明した。しかしそれを聞いてもおばさんの表情は緩まなかった。
「ほんとうだろうねぇ?」
「本当ですよ。ほら。丁度あそこにゆっくりが……」
 タイミングのいいことに、ゴミ箱を漁ろうとでも思ったのか一匹のゆっくりが公園へと入ったきた。頭から茎を生やしたありすである。
「やれ。素早くな」
 メガネお兄さんの号令で、まりさたちは一斉にありすへと飛び掛る。
「しんせんなにくだあああ!」
「ゆ!? かまないでねまりさ!ゆっくりしていってね!?」
「じぶんのあんこをみてしょっくかあああ?」
「あんよがああああ!ありすのあよがちぎれちゃったのおおおおおおお!?」
「ゆゆっげいりー!」
「あかちゃんまでえええ!?」
 3匹のまりさはまずありすのあんよを食いちぎり、逃げ出せないようにすると、次に額の茎を引きちぎり、ありすの目の前で実ゆを食ってみせる。最後に絶望の表情を浮かべるありすを3匹で仲良く分け合う。
 ものの数分で、ありすはおかざりも残さずにまりさたちの腹に収まった。
「どうです? 食べてしまうから汚れないし、やつら自身の餌はゆっくりだから、人間にたかる事もありません」
「あらまあ。これならたしかに便利だわね」
 他人に自分の育てたゆっくりを認められ、メガネお兄さんは満足げに笑った。



 そして。一週間が経った。
 ゆ愛法改正が施行されて五日目である。だがメガネお兄さんの住む町内では増長したゆっくりの姿は見られなかった。それどころかゆっくりの姿すらほとんど見えない。
 メガネお兄さんそれでBチームがしっかりと仕事をしていることを確信した。
 しかし放っておくのも少し不安であったので、3匹の様子を見に行くことにした。
 だが探せども探せども3匹の姿はどこにも見当たらなかった。
(新しいゆっくりを求めて、他の場所に移ったのか……?)
 そんなことを考えながら、メガネお兄さんは3匹と別れた公園へと足を伸ばした。
 やはりそこにもBチームの姿はない。しかしあの日お兄さんに難癖をつけてきたおばさんが公園の掃除をしていた。
「どうも。精が出ますね」
「おや、あんたかい。あんたのおかげでほら。このあたりのゆっくりは全滅だよ」
「それは良かった。ところで、あの3匹のまりさたちを知りませんか?」
「ああ。あいつらかい。もう用済みだからね。ゆっくり管理協会に『ゆっくりを食べるゆっくりがいる』って連絡したら、他のゆっくりを保護する為、っていってすぐに有害認定を出してくれてね」
「……え?」
「昨日処分されたよ。3匹とも」
 3週間。手塩にかけて育てた狩ゆっくり。仕事が終わった後、原付で15分の貸し倉庫に毎日顔をだし、赤ゆを買っては与え、さまざまなことを教えたBチーム。
 それを、たかだが町内のゆっくりを狩り尽くした程度で、用済みだと……?
「なにをしてくれたんじゃあ! この糞婆!」
「なんだい突然。あれは別にバッチ付きじゃないだろう? なんだが下手糞な手作りのバッチはつけてたみたいだけども」
「飼いゆっくり登録したら放せないだろうがあああ? 貴様の脳は餡子か? 餡子なのか!?」
「失礼なことをお言いではないよ。ほれ、掃除の邪魔だよ。ったく近頃の若いもんは……。ほれ行った行った」
 そう言っておばさんはメガネお兄さんに対して竹箒を振るう。
「……」
 おばさんの振る竹箒をかわしざまに合わせたメガネお兄さんの右は、正確におばさんの顎の先端を捕え、脳を頭骨内壁に激突させ、あたかもピンボールゲームの如く頭骨内での振動激突を繰り返し生じさせ、典型的な脳震盪の症状をつくり出し。
 既に意識を分断されたおばさんの下顎へダメ押しの左アッパー、崩れ落ちる体勢を利用した左背足による廻し蹴りはおばさんを更なる遠い世界へと連れ去り、全てを終わらせた!!!
 その間、実に2秒!!!
 これがもうじき24歳を迎えようとするメガネお兄さんベストコンディションの姿である。



 ゆっくり愛護法改正案施行後、ゆっくり虐待師最初の逮捕者はメガネお兄さんであった。その罪状は傷害罪である。





●愛でお兄さんと銀バッチれいむの場合 その2●





 ゆっくり愛護法改正案が施行されて2週間後。
 愛でお兄さんと銀バッチれいむは一緒に散歩をしていた。
「最近あちこちでゆっくりを見るようになったなぁ……」
「そうだねっ。みんなとってもゆっくりしてるよっ」
 足元を歩く銀れいむはご機嫌なときの癖で両方のもみあげをピコピコと振りながら同意する。
 改正案が施行される直前には、各地でゆっくりの駆除が行われたのだが、施行されて駆除を行うものがいなくなるとゆっくりはみるみるうちに増えていった。
「でもなぁ。少しやりすぎなんじゃないかなぁ」
 人間が自分たちを傷つけられないとわかっているゆっくりたちはかなり増長していた。
 歩道の真ん中を我が物顔で歩き、それを踏み潰さないようによける人間を見ては「まりささまのおとおりだよ! にんげんたちはみちをあけてねっ!」等と偉そうなことを言い、信号待ちをする人間の足にさんざん体当たりをかまして、じぶんの子供たちに「にんげんさんはれいむをおそれてやりかえせないでいるよっ! おちびちゃんもやってごらん!」などとけしかけたりとやりたい放題だ。
 人間のほうも人間のほうで、無視して足早に立ち去るのが一番の方法なのだが、大量のゆっくりに囲まれてしまい、踏み潰してしまうのをおそれてお菓子を放ってその間に逃げる者もいる為、そのような嫌がらせで食料を手に入れようとするゆっくりが後を絶たない。
「ゆっ? どうして? 小学校のれいむも、空き地のありすも、あとあと、それから公園のまりさも、みんなゆっくりしてるよっ。幸せそうだよっ?」 
 そういった人間の状況を理解していない銀れいむは、この状況のどこが悪いのかと不思議そうにする。
「うーん。そうだな。おまえの友達は善良なのばかりだからな。心配はないか。ほらここからは車が多いからな。お兄さんが抱っこしてあげよう」
「ゆゆっ。おそらをとんでるみたい! おにーさんありがとう!」
「れいむはいい子だなぁ。どこか行きたい場所はあるか?」
「ゆっ 公園に行きたいよっ」
 恐らくは、公園にいるまりさに会いたいのだろう。公園のまりさが番のぱちゅりーを一斉駆除で喪ってからは2匹は一層仲が良い。
「そうか。じゃあ公園に寄っていこう」
「ゆゆん! うれしいよっ! おにーさんだーいすきっ。すーりすーり」
「こらこら、すりすりしてくれるのは嬉しいけどくすぐったいぞ」
 そういいながらも愛でお兄さんは笑って、あいたほうの手で銀れいむの頬を撫でてやる。そうすると銀れいむはなお一層嬉しそうに、もみあげをピコピコと揺らしてお兄さんの手にすりすりをする。
 
 ゆ愛法改正案が施行されても、愛でお兄さんと銀バッチれいむの生活に変化は無かった。
 今は、まだ。





●背高(せいたか)お兄さんの場合●





 時は再び遡る。
 メガネお兄さんが、Bチームの面々に手製のバッチを付けてやっている頃。
 山の傾斜から、とある農家の畑を窺うゆっくりの一団がいた。それは妙な構成の群れだった。成体のありすとれいむが数体と、まりさ、ぱちゅりーがそれぞれ1匹。それ以外はほとんど子ゆっくりか赤ゆっくりである。
「ゆっ! おろかなにんげんどもはいまごろすーやすーやしてるのぜ! いまがちゃんすなのぜ」
 群唯一のまりさが呼びかける。その体は他のゆっくりよりもひとまわり大きく、それに比例するように態度も大きかった。
「むきゅう……まりさ、やっぱりきけんよ。にんげんさんのはたけにちかづくなんて……」
 ぱちゅりーは心配そうに進言する。それに対してまりさは見下したようにしていう。
「ふん。ぱちゅりーはおくびょうなんだぜ。ぱちゅりーがそんなんだからむれのみんながゆっくりできないのぜ」
「そうだよっぱちゅりー! かっこいいまりさとかわいいれいむのこどもたちがゆっくりできなくてもいいの!?」
「ちがうわよれいむ。とかいはなありすとわいるどなまりさのこどもよ!」
 れいむとありすの口論からも分かるように、いまこの群れにいる赤ゆ、子ゆは皆まりさの子供であった。
 

 もともとこの群れは、しばらく前に行われた人間による一斉駆除から逃れたゆっくりたちによって構成されていた。
 慎重派のぱちゅりーがおさを務めたこともあり、山の中で細々とではあるが、安全で穏やかに暮らしていた。
 だが1匹の傷だらけのまりさが群れに助けを求めてきた事で状況が変わった。
 まりさが言うには、人間さんと戦って負った傷であるらしい。
「ゆっ。にんげんさんはたくさんいたのだぜ! でもまりさはゆうかんにたたかってぜんいんせいっさいっしてやったのぜ! でもさすがのまりさもむきずというわけにはいかなかったのぜ!」
 その言葉をぱちゅりーは全く信じなかった。ゆっくりが束になってかかっても、ひとりの人間すら倒せないことをよく知っていたからである。おおかたそのゲスっぷりで群れを追い出されたはぐれまりさか何かであろうと考えていた。
 しかし群れのれいむとありす達はそのまりさの言葉を信じ、人間さんを倒した英雄として手厚く群れへと迎え入れた。
 このまりさは群れに害を与えるかもしれない。ぱちゅりーはそんな予感を抱えながらも、ほかのゆっくり達の意見を無視できずそれを見過ごした。
 それが間違いだと思い知らされたのは、まりさの傷が治ったころだった。まりさは傷が治ったにもかかわらず、看病役の若いれいむにごはんさんを持ってこさせ、自分は狩りに出ようともしなかった。
「うっ、せんじょうでおったきずがいたむのぜ。かりにいけないじぶんがふがいないのぜ」
 この調子である。そしてまりさはそれだけではあき足らず、まだ成体になりきっていない看病役のれいむと無理やりすっきりをしたのである。
「まりさ! いったいどういうつもりなの? あのこはまだこどもをうめるとしじゃないのよ!」
「にんげんをたおしたまりささまのこだねをもらえるなんて、ぎゃくにかんしゃしてほしいくらいなのぜ」 
 額から茎を生やした若れいむに泣きつかれたぱちゅりーはすぐさままりさを呼び出した。できれば群れから追い出してしまうつもりだった。しかしそこでもほかのれいむやありすがまりさを擁護した。どうやら彼女たちにとってまりさは相当のびゆっくりに映っている様だった。
「どうせれいむがさそったにきまってるわ! いやしいいなかものだもの!」
「わいるどなまりさはかっこいいよおおおお。れいむもまりさとすっきりしたいよっ」
「ゆぐふっ。そんなぬれたひとみでおねがいされたらことわれないのぜ。まりささまのてくにっくでみんなまとめてすっきりさせてやるのぜ!」
「ちょっと、あなたたち!」
 ぱちゅりーの制止も聞かずに、まりさはその場にいたれいむとありす相手にすっきりを始めてしまった。
「ゆほおおおお! れいむはじめてなのにかんじちゃうよおおおお!」
「きつきつでしめつけてくるのぜ!」
「はあはあ! まえのだんなよりもずっといいわあああああ!」
「こっちはつつみこむようなめいまむまむなのぜ!」
「あなたたち……」 
 目の前で繰り広げられる痴態を見かねて、ぱちゅりーは思わず目をそらす。そんなぱちゅりーを見てまりはぐへへといやらしく笑う。
「ぱちゅりーもほんとはまりさとすっきりしたいんじゃないかなのぜ? こっちにくるのぜ! かわいがってやるのぜ!」
「だれがあなたなんかと! それにすっきりしたらあかちゃんができるのよ? えさもたくさんひつようになるし、それがわかってるの!?」
「ゆうしゅうなまりささまのゆうしゅうなこどもなのぜ! もんだいないにきまってるのぜ!」
「……もういいわ。でもこどもたちのせわはせきにんをもってするのよ!」
 それ以上痴態の現場にいることに耐えられず、ぱちゅりーはその場を去った。
「まりささまのびぎによいな! なのぜ!」
 そのときにもっと強く嗜めるべきだったと、後にぱちゅりーは後悔をする。
 群れのれいむとありすは次々とまりさの子をにんっしんっし、狩りにいかないまりさと、動けない母親達に代わって、ぱちゅりーは弱い体に鞭打って一生懸命ごはんさんを集めた。子供の世話は自分達でするように言ったぱちゅりーであったが、長としての責任感が勝ったのだ。
 しかしぱちゅりーがなんとか赤ゆの分まで餌をあつめても、その間にまりさはすっきりを繰り返し、さらに赤ゆは増えていった。
「どうするつもりなの? こんなにたくさんのあかちゃんのごはんさんはとてもあつめきれないわ!」 
 もはや群の大人が全員で狩りに出ても追いつかないほどに赤ゆの数は増えていた。森から手に入る食料では、もう群は養いきれない。
 そう詰め寄るぱちゅりーに、赤ゆ達に囲まれたまりさはこともなげに答えた。
「やまのふとものはたけにいくのぜ! あそこにはおやさいさんがたくさんあるのぜ!」
「むきゅ! だめよあれはにんげんさんのはたけなのよ!」
 かつて山のふもとの畑から野菜を取ろうとしたゆっくりが潰されたのをぱちゅりーは実際に見ていた。
「まりささまがいればだいじょうぶなのぜ! にんげんなんてこてんぱんにしてやるのぜ!」
「そうだよぱちゅりー! まりさはとってもつよいんだよ?」
 まりさの武勇伝を信じきっているれいむがまりさの意見を支持する。それに言い返そうとするぱちゅりーに対して、まりさは品なく笑いながら言う。
「まりさはきいたんだぜ! ぱちゅりーはにんげんさんにおわれてたたかいもせずににげたおくびょうなゆっくりなんだぜ! そんなおくびょうものはおさにふさわしくないのぜ! きょうからまりささまがおさになってやるのぜ!」
「おくびょうなぱちゅりーはおさをやめてねっ!」
「むきゅっ!? みんな、ほんきなの?」
「これはむれのとかいはなそういなのよ」
「まりちゃたちにごはんしゃんをもっちぇこれにゃいげしゅはいりゃないよっ!」
 ぱちゅりーの説得に耳を貸さず、群れのほとんどが「わいるどなまりさ」の側についたようだった。
 おそらくは群のゆっくりの中に、かつて人間に住処を追われ逃げることしかできなかった鬱憤が溜まっていたのだろう。人間を倒したことがあるというまりさの存在はそんな群れのみんなにとって相当に偉大に見えるらしい。
 かつては自分を信じ慕ってくれた仲間達が口々に長をやめるように言うのを聞きいて、ぱちゅりーはなくなくその座をまりさに譲った。
 

 そうして新たな長となったまりさに引き連れられて、ぱちゅりー達は人間の畑の近くまで来ているのだった。
 どんな危険があるか分からないので、赤ゆや子ゆ達は巣に置いていった方が良いとぱちゅりーは進言したのだが、まりさは
「そのままみんなですーぱーむーしゃむーしゃたいむをするのぜ! それにまりささまのこどもはおくびょうなぱちゅりーとちがってゆうかんなのぜ!」
 万事が万事この調子である。
 結局巣に残ったのは、最初にまりさにむりやりすっきりさせられた若れいむとその子供たちだけだった。そのれいむだけはぱちゅりーのことを最後まで信じてくれたのだ。心配して付いてこようとする若れいむにぱちゅりーは「いざというときはあなたたちだけでもいきのびるのよ」と強く言い含めた。
「それじゃあはたけさんにとつげきなのぜ! みんなまりささまのあとにつづくのだぜ!」
 まりさを先頭に、ゆっくり達は畑へと突き進む。その後ろにぱちゅりーは続く。
 ゆっくりたちは気づかなかった。群れの様子を窺うカメラが畑のあちこちに取り付けられていることを。


 やや大きめのまりさに、ありすとれいむが数体。それに子ゆと赤ゆ。最後尾にぱちゅりーが1匹。
 畑の各所に設置された暗視装置つきのカメラからの映像を見て、背高お兄さんはその構成を完全に把握していた。
 ゆっくりの群れが向かっている畑は、背高お兄さんの両親のものだった。
 ゆ愛法改正案が通過したことを知ったお兄さんは即座に実家へと帰ると、両親にゆっくりへの対策はしてあるのかと尋ねた。しかし両親ともにゆ愛法改正のことを余りよく知らないようで、「畑に入ってきたら鍬でつぶしてやりゃいいべさ」とまったく要領を得なかった。一応は害獣侵入防止用のネットを張ってはあるようだが、長年使用してきたものなので破けている箇所も多かったし、それに加えてここらの土は柔らかいため、すこし知恵の回るゆっくりであればネットの下を掘ってくぐることができてしまうのだった。
 お気楽な両親に任せるのはあきらめ、お兄さんは一計を案じた。
 改正案が施行されれば人間はゆっくりたちに手を出せなくなる。そうしたらいくら人間が脅したところで、ゆっくりたちは聞く耳を持たないだろう。きっと畑はあらされるし、気楽な両親のことだからつい潰してしまい、罰を受けるかもしれない。
 ならばどうすればいいのか?
 人間への恐怖が維持できなくなるのであれば、畑自体が「ゆっくりできないもの」として認識されれば良いのではないか。背高お兄さんはそう考え、畑に仕掛けを施した。
 ゆっくりが来たらすぐ分かるように畑の周りには赤外線センサーを張り巡らせてある。何度か小動物を誤認してしまったが、今度こそゆっくりの群れが来たようだった。
「さて。まずはどれくらい減るかな?」


 畑へと近づいたまりさたちがまず最初に目にしたのは、山と畑を区切るように設置されたネットだった。
「ゆ? これじゃあはたけさんにはいれないよっ」
「まりさ、どうしたらいいかしら?」
「ゆゆゆ。これはなんもんなのだぜぇ……」
 れいむやありすに尋ねられ、頭を捻るまりさ。数秒してカッと目を見開くと群に号令をかける。
「みんなでいっせいにとつげきすればいいのぜ!」
「まりさ、それよりも……」
 提案をしようとするぱちゅりーを無視して、まりさ達はネットへと突っ込む。
「いっせいのう、ぜっ!!」
 そんなことでネットを突破できるわけがなかったが、体の小さい赤ゆと、偶然破れ目に飛び込むことになった何匹かの子ゆがネットをすり抜けて畑への侵入に成功する。
「ゆ? どうしてまりさたちはまだこっちにいるのぜ??」
「あかちゃんたちはからだがちいさいから、すきまをとおれたのよ。わたしたちじゃとおれないわ」
「……け、けいかくどおりなのぜ! おちびちゃんたち! おとうさんのためにおやさいさんをもってくるのぜ!」
「ゆっくちりきゃいしちゃよ!」
 偉大なおとうさんに言われて、赤ゆと子ゆ達は地面からのぞく白い野菜に向かって跳ねてゆく。それを見てぱちゅりーは焦った様に忠告する。
「まりさ! あかちゃんたちだけじゃきけんすぎるわ! ほら、じめんさんがやわらかいから、したをほればわたしたちもむこうにいけるわ。それまでまってもらいましょう?」
「うるさいのぜ! ぱちゅりーがごはんさんをもってこれないからまりさはおなかぺこぺこなんだぜ! もうまちきれないのぜ!」
「でも……」
「ゆぴゃあああああああああ!」
 更に食い下がろうとするぱちゅりーの言葉は、赤ゆの絶叫でかき消された。
「! どうしたの!? ねえおちびちゃん、ほかのこたちはどうしたの!?」
 気づけば先ほどまで順調に畑へ進んでいた赤ゆと子ゆのうち3分の1ほどの姿が見えなくなっていた。
「ゆあああああん! ありすの、ありすのとかいはないもうとがあああああ」 
 他の赤ゆと子ゆは泣くばかりでまったく要領を得ない
「れいむのおちびちゃんがいないよっ! かくれてないででてきてねっ!」
 その言葉にぱちゅりーははっとする。このれいむの子供たちは親に似たのか食い意地が張っていた。先ほども畑に向かう集団のなかで先頭を切っていたはずだ。
「みんな、てつだってちょうだい! このしたにあなをほるのよっ!」
 言うが早いかぱちゅりーはネットの下に穴を掘り始める。最初は怪訝そうに見ていた群の仲間も子供たちの元へ行くにはそれしか方法が無いのだと気づき、ぱちゅりーを手伝う。
「おおきたないきたない。そんなどろだらけになるしごとはまりささまにはふさわしくないのぜ」
 まりさだけが最後まで手伝わなかったが、なんとかみんなが通れる大きさまで穴が広がる。
「おちびちゃあああん! おかあさんがきたよっ! でてきてね!……おちびちゃあああああん!?」
 真っ先に穴に飛び込んだれいむが悲痛な叫びをあげる。追いついたぱちゅりーたちが見たのは、畑とこちらの間に開いたいくつもの縦穴だった。そしてその底には水が湛えられている。そこの水面に漂うのは、いくつものおかざりだ。赤ゆたちはそこに落ちて溶けてしまったのだ。
 穴の深さはそこまで深くない。もしも全員がネットを越えてから進んでいれば、たとえ落ちたとしても親たちが救い出すことが出来ただろう。
「ゆっ、やっと穴をとおれたのぜ。もっとおおきなあなをあけないぱちゅりーはほんとうにむのうなのぜ。……どうしたのぜ?」
「まりさああああ! まりさとれいむのかわいいおちびちゃんたちがあああああ」
「ゆ? ゆゆゆ!! これはどういうことなんだぜぱちゅりー!?」
「おとしあなよまりさ。おちびちゃんたちは、おとしあなにおちて、おみずさんでとけてしまったの。わたしたちがいっしょにいっていれば……」
 悔やむぱちゅりーにまりさはおさげでビンタをかます。
「だからまりさはみんなでいっしょにいこうっていったのぜえええええ?! それをぱちゅりーがおなかがすいたからっておちびちゃんだけさきにいかせて! すこしははんせいしたらどうなんだぜ!?」
「まりさ……」
「ねえ、まりささすがにそれはひどいとおもうのよ? じぶんのみすをみとめるのもとかいはとしてじゅうようなことよ?」 
 その責任転嫁っぷりにまりさに心酔するありすも流石に苦言を呈する。
「まりささまがまちがうことなんてありえないのぜ! まちがっていたのはぱちゅりーなのになんでそんなことをいうんだぜ!?」
 だがまりさは自分を否定するありすをキッと睨むとその体を突き飛ばす。
 突き飛ばされたありすは、落とし穴ゾーンよりも更にその先へと落ちる。反論の声の代わりに響いたのは、バチンというバネが弾ける音だった。
「まり、さ?」
「ありす、なんでそんなたかいところにいるんだぜ?」
 バネによって地面から突き出したのは、鋭いステンレス製の針だった。ありすの体重を感知して突き上げられたそれは、ありすを串刺しにして、30センチほどの高さまで持ち上げていた。
「おかしゃああああ!?」
 落とし穴を逃れ、生き残っていたありすの子供たちが串刺しの母をみて悲鳴を上げる。
「おかあさんはまりしゃがたすけるよっ!」
 赤ゆ言葉が抜けかけた一番上の子まりさは母を助けようと勇敢にも向かってゆく。
「! まって、そこをとおっちゃだめよ!」
 ぱちゅりーの静止の言葉が届くより早く、再び地面からはバチンというバネが弾ける音が響く。
「ゆばあああ!?」
 地中から現れたもう一本の針が子まりさを串刺しにする。しかし子ゆということもあり、針は綺麗に真ん中を捉えることができず、その体の右半分だけが30センチの高さまで持ち上げられる。
「おち、び、ちゃ……」
 ありすは半分だけになった子まりさと30センチの中空で再会を果たす。子供の悲惨な姿が止めになったのか、ぐりんと白目をむくとそのまま絶命する。
「なんてことなの……」
 ヒラヒラと舞い落ちてくる子まりさのお飾りを見てぱちゅりーは呻く。これでは先に進むことはできない。



 カメラ越しに戦慄している群を眺めて、背高お兄さんは満足げにほくそ笑んだ。
「だいぶ恐怖を与えることができたみたいじゃあないか」
 落とし穴と飛び出す針の仕掛けだけでゆっくりたちはここが尋常の畑ではないことに気づいただろう。
 普通であればここで進むのをあきらめる。もしもこれであきらめないのなら、それは相当に飢えているか、相当に愚かな群だ。
「しかし、せっかくだから残り2つの仕掛けも味わってもらいたいな……」
 カメラで見ると群の中で言い争いが起こっているようだった。進退を論じているのか、それとも責任の擦り付け合いか。
「さて。それじゃあ奴らの背中を押してやりますか」
 そういうとお兄さんは手元のボタンを押し込んだ。


「これいじょうは、きけんよ。すすめないわ。ひきかえすべきよ」
 ぱちゅりーは言葉を区切り、ゆっくりと言い聞かせるようにまりさに言った。
 まだ赤ゆの3分の2と、ありすを除いた成体が残っている。これ以上の犠牲を出す前に撤退するべきだった。
「でも、まだまりさはおなかぺこぺこなんだぜ? はたけはすぐそばなんだぜ。ぴょーんぴょーんすればはりさんもだいじょうぶなんだぜ」
 ありすが串刺しにされたことはそれなりに堪えたのか、一応はぱちゅりーの言葉を聞くまりさ。しかしすぐそばに迫った畑への未練は捨てきれないようで、まだ進もうなどと言っている。
「れいむ。れいむはどうなの? これいじょうさきにすすむなんていわないわよね?」
「れ、れいむはおさのぱちゅりーのはんっだんっにしたがうよ……」
 かつて群を導いてきたぱちゅりーの冷静な判断力を思い出したのだろう。れいむはぱちゅりーに同意した。それを聞いたまりさは黙っていなかった。
「おさはまりささまなんだぜ! なんでそんなことをゆうんだぜ!」
「ゆううん。でも、れいむのおちびちゃんたちは、みんなえいえんにゆっくりしちゃんたんだよっ。それにありすも……」
「だったられいむとぱちゅりーだけかえればいいのぜ!」
 まりさはれいむをネット側へと押し出す。そのときだった。
「ゆ、つめたいよ。おみずさん?」
 ぽたりと、押し出されたれいむの頬に水滴が落ちる。そしてそれは一滴ではとまらなかった。最初はポタポタと次第にザアザアと、ネット際から追い詰めるように水は激しく振り注ぐ。
「ゆぎゃああああ? あめさんだよ!あめさんはゆっくりできないよ!」
「れいむ! あめがふっているのはれいむのところだけよ! はやくこっちにきなさい!」
 ありすがれいむに呼びかける。その言葉通り、水が降り注いでいるのはネットと畑の間の一部分だけだった。れいむは言葉に従い、そこから逃げ出そうとする。しかし、
「ありすのうそつきいいい!? あめさんいなくならないよおおぉぉ、お、ぉ……」
 水はれいむ追いかけるように、降り注ぐ範囲を広げていた。逃げ切れず、れいむのからだはぐずぐずに溶けてしまう。
 そしてそれだけに留まらず、水流はまりさやぱちゅりー達の元にも迫ろうとしていた。
「あめしゃんきょわいよおおおお!」
「おちびちゃんたち、おかあさんのおくちのなかにかくれてね……ひゃあひへるほ(さあ、にげるよ)!」
「だめよれいむ! そっちは!」
 突然の雨にあわてたれいむは、おちびちゃんを口の中に隠すと雨の降っていない畑の方へと駆け出した。
 バチン。
 無論雨が降り始めたからといって、串刺しトラップが容赦をするはずも無い。れいむはくちのなかのおちびちゃんごと貫かれる。
「おしょら、べっ!げっ!」
 運よく巻き添えにならなった赤ゆも、地面に叩きつけられ、そしてそのまま串刺しトラップの餌食となる。
「どうするんだぜ!? どうすんだぜ!? このままじゃまりさたちえいえんにゆっくりするはめになるんだぜ!」
 がなりたてるまりさの声を無視しながら、ぱちゅりーはこの状況をどうやって切り抜ければよいのか必死で考えていた。
「しかたがないわ。おちびちゃんたちをくちのなかにいれて、あめさんのなかをいそいでぬけるのよ。うまくいけばおちびちゃんたちはたすかるわ」
 苦渋の選択だった。しかし全滅するよりかはよほど良い。ぱちゅりーはだれがどの子を口に入れるのか急いで指示を出す。
「なにをばかなことをいっているのおおおおお? それじゃあまりさがたすからないでしょ? ぱちゅりーはおさでしょ? おさならむれのぜんいんをたすけるべきなんだよっ!? ぱちゅりーにはせきっにんっかんっってものがないのおおおおお!?」
 そうして三度目の突き飛ばしが、こんどはぱちゅりーに炸裂する。
「むきゅっ!?」 
 畑の側に突き飛ばされたぱちゅりーは自分も針に貫かれるのだと死を覚悟する。しかし、針は飛び出さなかった。
「これは……」
 なぜ自分は助かったのか。ぱちゅりーは畑へと続く地面を観察し、その理由を導き出そうとする。
「はりさんがでてこないよ! もうこっちはあんっぜんっだよっ」
「あめしゃんきょわいよおおお」
「おかーしゃまっちぇええええ」
 だが答えを得るよりも早く、勘違いをした数匹のゆっくりが串刺しトラップゾーンへと踏み込む。
 バチン。バチン。バチン。バチン。
 しかし数十センチもいかないうちにだれも針の餌食となる。
「くっ……。……! わかったわ!」
 しかしその仲間の犠牲のおかげでぱちゅりーは答えへとたどり着く。
 よく見れば畑へと続く地面はところどころが色が変わっている。トラップを埋めるために地面を掘り返した部分とそうで無い部分とで微妙な違いが出ているのだ。
「みんな! じめんをよくみるのよ、いろのかわっているところからははりさんがでるわ!」
 地面の色が違う理由まではぱちゅり-には分からなかったが、それでも色が違うところから針が出るという法則性は理解できた。そのことをみなに教え、また証明するように、ゆっくりと普通の地面を進んでいく。
「みんな! ぱちゅりーについていくのよ!」
 ありすを筆頭にして、群のみなはそろーりそりーりとぱちゅりーについていく。群は全滅の危機を乗り越えようとしていた。



 スプリンクラーを作動させ、ゆっくりを追い詰めたお兄さんは素直に感心の声を上げた。
「すごいな。まさかこうまでトラップを避けるとは……」
 串刺しトラップゾーンを緩やかではあるが確実に越えてゆく群。計算上ではそこで70%以上のゆっくりを殲滅できるはずだった。
「ここで数匹に絞れるはずだったんだが、さて。どう間引きするべきか……」
 悩むお兄さん。しかしその悩みは長続きしなかった。


 
「お。おみずさんがきたのぜ! はやくすすむのぜ!」
 串刺しトラップが回避できるということを信じ切れなったまりさは、群の一番後方からぱちゅりーを追っていた。
 その後ろからは確かに水流が迫っていたが、そのままのペースで行けば逃げ切れる速度差だった。
「ゆっがあ!ちびども!じゃまなのぜ!まりささまのためにみちをあけるのぜ!」
 焦ったまりさは前方のおちびちゃんたちを急かす。しかしあがらないペースについにまりさは耐え切れなくなった。
「ふんっ! ふんっ!」
「ゆぎゃっ」バチン
「ゆゆ?」バチン
「おとーしゃ?」バチン
「やめちぇ」バチン
 まりさはおさげを振るうと、前を進むおちびちゃんたちを弾き飛ばし始めた。


「! あめさんがおいついたのかしら……」
 必死になってずーりずーりしながらぱちゅりーの後を追っていたありすは、背中に落ちる水滴に気づきはっとして後ろを振り返る。そこには先ほどまで付いてきていたおちびちゃんたちの姿がなかった。そして次いでぽたぽたと落ちてきたのは、白と黒の雫だった。ありすはいやな予感に震えながら、ゆっくりと上を見上げる。
「どおしてええええええ!」
 そこには串刺しになったおちびちゃんたちのなれの果てがあった。ポタポタと落ちてくるのは、その中身である餡子やカスタードクリームである。
 そこにおちびちゃんたちの後ろにいたはずのまりさが追いついてくる。
「ありすっ! じゃまなのぜ! はやくすすむのぜ!」
「まりさ! きいて、おちび……」
 その先を続けようとして、ありすはまりさのおさげが汚れているのに気づいた。その汚れは決して泥などによるものでは無い。ありすは安全な道を進んでいたはずのおちびちゃんたちが、トラップにかかっている理由に至る。
「まりさ、あなたおちびちゃんをころしたのね!」
「ゆっ! まりささまとちびたちじゃあいのちのおもさがちがうのぜ! たすかったらいっぱいすっきりしてまたうめばいいのぜ。それよりはやくすすむのぜ!」
 欠片の罪悪感も抱いていない様子でまりさはおちびちゃんたちを殺したことを白状する。そのまりさに、ありすは低い声で告げる。
「……ないわ」
「ゆ? なんていったのぜありす?」
「うごかないわ! わたしはここからいっぽもうごかないわ!」
「なんでなんだぜありす! このままじゃふたりともあめさんでとけちゃうのぜ!」
「そうよ! ふたりでいっしょにえいえんにゆっくりするのよ!……わたしはね、まりさ。あなたがほんとは、どうしようもないげすで、うそつきで、くちばかっかりのだめゆっくりだってきづいてたわ。でも、そんなあなたがすきだった。ほかのことすっきりしても、たくさんのおちびちゃんたちとあそぶあなたをみて、あなたはいいゆっくりなんだっておもいこもうとしてたわ……。それを、それを、じぶんのおちびちゃんをころすだなんて……!」
「なにをごちゃごちゃいってるのぜ! そこをどくのぜこのくそありすっ!」
 滔々と思いを語るありす。だがまりさはその言葉をろくに聞かずに、突き飛ばそうとする。
「くっ……!」
 ありすの体が宙を舞う。しかしただ死ぬありすではなかった。その口にはまりさのおさげがしっかりと咥えられている。
「げぇ、ありすぅ!」
 バチンと。バネが弾ける音は一度だけ鳴った。


 畑を目前として、串刺しトラップを超えたぱちゅりーはさけんだ。
「みんな、ここならよし、よ!」
 しかし背後から付いてくるものはいない。
 ゆっくりと振り返ると、その目に飛び込んできたのは、おちびちゃんたちを貫いた針の林。そしてまとめて一本の針に串刺しにされ、その屍を晒すありすとまりさだった。
 後ろのゆっくりは完全に串刺しトラップによって片付けられていた。いや、散らかされていたというべきか。
「そんな…… どうして……」
 気がつけば後方で降っていた雨もやんでいる。降りしきるのは、ただただ餡子とカスタードクリームの雨のみである。
 蹲っていたぱちゅりーだが、しばらくして顔をあげる。ここまできて手ぶらで帰るのはあまりに忍びなかった。せめてひとつだけでもおやさいさんを持ち帰らねばと思ったのだ。
「もうわなさんは、ない、わよね?」
 周囲を警戒しながら、そろーりそろーりと畑に近づく。そこにはにんじんさんやだいこんさんよりも小ぶりな白い野菜が頭を出していた。
 ゆっくりとそれを引き抜く。なにか罠が発動する様子はなかった。
「どくみをするわ。ぺーろぺーろ……! とってもあまいわ! これなられいむとおちびちゃんたちもゆっくりできるわ!」
 払った犠牲に対してあまりに小さすぎる見返りだが、巣で待っている若れいむとその子どもたちをほんのひとときゆっくりさせることはできるだろう。
 ぱちゅりーは土を払ったその野菜を二本背負うと、罠が作動しないよう慎重にもと来た道を引き返した。
 途中で目に入るのは、かつて仲間であったものの成れの果てのみ。
 次第にその姿も目から溢れる涙によって歪んでゆくが、ぱちゅりーは歩みを止めなかった。
 背負う野菜はぱちゅりーからしたら重いものだったが、決して捨てていくことは無い。そしてぱちゅりーはついにネットのそばまでたどり着いた。
 しかし。そのあんよはグズグズに溶けてしまっていた。
 雨が止んだとはいえ地面はびしょびしょである。そのうえをずっとずーりずーりで這ってきたのだ。無事で済むはずがない。
「ここまで、かしらね」
 ぱちゅりーがあきらめかけたそのとき、聞き覚えのある声が響いてきた。
「ぱちゅりー! ぱちゅりー!」
 最初は幻聴かと思った。しかし違う。ネットの向こう側から、巣で待っているはずの若れいむとその子供たちが声をかけているのだ。
「ぱちゅりーしっかりしてっ」
「むきゅう……。れいむ、どうして……」
「いやなよかんっがしたから、きたんだよっ! ぱちゅりーあんよをけがしてるの!?」
「れいむ……わたしはもううごけないわ。せめて、このおやさいさんだけでも……」
 ぱちゅりーは背負った二本の野菜を、ネットの向こうの若れいむの所へ押し出す。
「たしかにうけとったよぱちゅりー! まっててね、いまいくよっ!」
「だめよ、れいむ。こっちの……じめんはおみずさんでぬれているわ。れいむまで、うごけなくなっちゃうわ……」
「でもっ、ぱちゅりーがっ」
「ねえれいむ。そのおやさいさんはとってもあまあまーなのよっ……。それをたべてしあわせーしてくれれば、わたしも、むれのみんなも、やすらかに、えいえんにゆっくりできるわ……」
「ぱちゅりー……」
 たしかにその白い野菜からはほんのりとあまあまーな香りが漂っていた。。
「さぁ、たべるのよ。にほんあるから、おちびちゃんとなかよくたべるの……」
「だめだよっ、ぱちゅりー!」
「……れいむ?」
「いっぽんはぱちゅりーがたべてね! そしたらぱちゅりーもすこしはげんきになるよ! じめんさんがかわいて、ぱちゅりーのあんよがなおるまで、れいむはごはんさんをとってくるよ!」
「れいむ……」
 若れいむの健気な言葉に、ぱちゅりーの瞳からは止まったと思った涙が再び溢れ出してくる。
「さっ、おちびちゃんたち。おちびちゃんたちはこっちのひとつをおかあさんとわけあおうね!」
「ゆっくちりきゃいしちゃよっ!」
「ぱちゅりーはきょっちにょほうをたべちぇね!」
 白い野菜の一本がぱちゅりーの口元におし戻される。
「れいむ。ありがとう。ありがとうね」
 ぱちゅりーはれいむの好意を素直に受け取ることにした。どちらにせよぱちゅりーが一緒に食べるまでれいむはここを動かないだろう。ならばこの野菜を食べて、元気になって、せめて人間さんに見つからない場所まで逃げよう。そう考えたのだ。
「さぁ、みんないっしょに、いただきますっ」
「いちゃじゃきましゅ!」
 赤ゆ達とぱちゅりーが一斉に白い野菜にかぶりつく。若れいむはにこにこしながらそれを見守る。自分たちの分の一本はすべておちびちゃんたちに与えるつもりなのだ。聞こえてくるだろう「ちあわちぇー」の合唱だけで、れいむは十分ゆっくりできる、はずだった。
「むーちゃむー、ぎゃらいいいい!」
「む゛ぎゅう゛う゛う゛!」
 それを噛み千切った瞬間。おちびちゃんたちの口から爆発したように餡子が吹き出した。ぱちゅりーの方も同様である。生クリームが口からとめどなく溢れる。
「おちびぢぁああああん!??ばじゅりー!?ごれはどくいりだよっ!!よぐも、よぐもだまじでぐれだなあああああ?」
(どおして、あまあまーだったはずなのに……)
 ぱちゅりーは恨みのこもった瞳で睨みつけてくる若れいむをみながら、ふしあわせーのままゆん生を閉じた。


「くくくっ、……ははは、あーはっはっは!」
 餡子を吹き出すゆっくりたちの様子をカメラ越しに見ながら、こらえきれずに背高お兄さんは悪役式三段笑いを高らかに響かせた。
 畑に埋められていたのは、実際に育てている野菜では無かった。ネットショップで購入し、背高お兄さんがあらかじめ埋めておいたものだ。
 それはブート・ジョロキアというインド原産の唐辛子の一種であり、その辛さは世界一としてギネスに認定されている。
 そのブート・ジョロキアに糖衣を纏わせておいたものを、ぱちゅりーはあまあまーな野菜と勘違いして、若れいむの元に命がけで運んだのだ。
「あー、可笑しい……。自分を助けにきたゆっくりの子供を殺すなんて、くくっ、やべ涙出てきた」
 ひとしきり笑った後で、背高お兄さんははたと気づく。
 しかし、今回の『畑を恐ろしいところと認識させる作戦』は成功したのだろうか?
 実際に畑の恐ろしさを体験したゆっくりは全滅してしまった。生き残ったのは後からきたれいむが一匹だけである。
「あー、次。次の群が来るのを期待しよう」
 しかしゆ愛法改正案施行前に、再びゆっくりがその畑を訪れることはなく。改正案が施行され、お兄さんがネット以外のトラップを撤去した後、別の群によって畑はさんざん荒らされた。
 荒らされた畑を前に呆然と立ち尽くす両親の後ろで背高お兄さんは、爆笑とは別の涙を流す事となった。





●愛でお兄さんと銀バッチれいむの場合 その3●




「おにーさんっ! おかえりなさいっ。ゆっくりしていってね!」
「……ああ。ただいまれいむ。ゆっくりしていってね」
 帰宅した愛でお兄さんは、銀れいむの「ゆっくりしていってね」に若干のイラつきを覚えている自分に驚きながら、なんとか平静を保って返事をした。
 ゆっくり愛護法改正案が施行されてから、2ヶ月になる。
 街をうろつくゆっくりの数は、爆発的に増えていた。
 そしてそのどれもが、増長し、傲慢になっている。
 今日も昼食のために入ろうとした牛丼屋の前で、子連れのまりさ種に絡まれた。
「そこのくそどれい! まりささまとかわいいおちびちゃんのためにごはんさんをもってくるのぜ!」
「ゆっくちちてないではやきゅもっちぇこい! たきゅしゃんでいいりょ!」
 もちろん無視して店内に入ったが、そこが殺伐とした空気に包まれていたのは、牛丼屋であるからだけでは無いのは確かだった。
 食事を済ませて店をでると、靴の上にうんうんをされた。げらげらという笑い声がする方をみると、さきほどたかって来たまりさである。うんうんをしたのはその子供か。
「ごはんさんはどうしたの? もってきてないの? ちっ、つかえないどれいなのぜ」
 うんうんを地面にこすり付けると、極力まりさたちの方を見ないようにしながら会社へと戻った。その途中でも何匹かのゆっくりに絡まれた。
「俺に、俺にゆっくりを潰させろ! これは正義の行いなんだ!」
 人だかりが出来ていたのでそちらを見やると、サングラスをかけ、特殊警棒をもった若い男が警官に取り押さえられていた。どうやら往来の真ん中でゆっくりを潰していたらしい。
 愛でお兄さんの中には、その男に共感する気持ちが芽生えていたが、極力その感情を無視しようと努めた。
 仕事が終わって帰る途中、駅前のハイビジョンテレビではゆっくりによる菓子の強奪事件が多発していることを伝えるニュースが読み上げられていた。なんでもコンビニなどに侵入し、棚の低い位置にあるお菓子を持っていくゆっくりが相当数あらわれているらしい。店員にはゆっくりを潰すことはできないし、深夜にひとりでレジ番をしている場合には、追いかけてつかまえることも出来ないため、各店舗相当な被害を受けているらしい。ニュースでは棚を高くするなどの対応策を提示していた。
 有害なゆっくりを駆除するべきゆっくり管理協会は、そういった害ゆっくりに対する対応が相当遅く、対してゆっくりに被害をあたえるゆっくりには『保護』の名目で迅速に対応するため非難の的であった。
 また当初は軽犯罪であるゆ虐に対して、警察がそこまで介入することは無いとたかをくくっていたゆっくり虐待師たちも見せしめのためか次々と逮捕、処罰を受けていた。
 電車に乗り、自宅までの道すがら、レンタルビデオショップに寄った。銀れいむは映画が好きで、よく一緒に見ていたからだ。
 今日はとくに頼まれていたわけではないが、気をまぎらわすために愛でお兄さんは店内入った。
 物色していると、ガラガラと商品がぶちまけられる音が聞こえた。見れば、ありすとまりさのつがいが何事かわめきながら、次々と棚の低い位置にある商品を放り投げている。
「どうしてにんげんさんのえいがばっかりなのっ! とかいはなありすがしゅえんのれんあいえいがはどこにあるの!」
「これもだめっ、これもだめなのでぜ! しなぞろえがわるいみぜなのぜ!」
 店員は周囲の客に謝りながら、2匹をつかみあげると店の外に放り出した。しかし2匹はすぐに自動ドアをくぐり、店内に戻ってくる。
「まりさとありすはきゃくなのぜっ!? しょうひんをみていただけでおいだされるなんてぎゃくたいなのぜ!」
「ふんっ、いきましょまりさ。こんないなかくさいみせにいたらありすたちまでいなかくさくなるわ!」
「にどとこないのぜっ!」
 追い出した店員のズボンに唾を吐きかけ2匹は今度こそ店を去っていく。店員は肩を震わせていたが、しばらくすると無言で散らばった商品をもとに戻し始めた。そのきつく噛まれた唇の隅から血がにじんでいるのを愛でお兄さんは見ながら、何も借りずに店をでた。
 そんな一日を終えたせいで、銀れいむの「ゆっくりしていってね!」を聞いたときに、ハブロフの犬的な条件反射でイラついてしまったのだろう。愛でお兄さんは自分にそう言い聞かせた。
(そうだ。うちのれいむはいい子だからな。言う事は聞くし、頭も良い。漢字だって読めるんだ)
「ゆっ?」 
 そう思いながら、銀れいむに笑いかける。銀れいむの方は何で笑いかけられたのか分からないのか、体全体を傾けて、「どういうこと?」のポーズをとる。その姿に、また胸がざわついた。
「れいむ。お腹、すいてるだろ。今日のご飯は、何が良い?」
 尋ねると、れいむは左右のもみあげを器用にすり合わせ、もじもじとしてみせる。
「ゆゆっ、あのねっ、実はおにーさんに言わなきゃいけないことがあるんだよ」
「へぇ、何だい? 楽しみだな」
 愛でお兄さんはれいむに背を向けたまま答えるとリビングルームの扉を開ける。そして硬直した。
 リビングの窓の一部が割られていた。空き巣を疑うよりも前に、その答えが目の前に鎮座していた。
「ゆ! おそいんだぜ! まりさまちくたびれちゃったんだぜ!」
 お兄さん専用と言い聞かせ、れいむにも座らせないよにしているロッキングチェアに座り込んだまりさがお兄さんを見るなり罵声を飛ばした。
「あのね、まりさはれいむを一生ゆっくりさせてくれるっていったんだよ。まりさはバツイチさんだけど、れいむを本気で愛してくれてるんだよっ」
 ロッキングチェアからぴょんと降りると、まりさはれいむの横に並ぶ。
「きょうからここはまりさとれいむのゆっくりぷれいすなのぜ! だからおにいさんはふたりぶんのごはんさんをもってくるのぜ」
「ほんとうはまりさとれいむのゆっくりぷれいすだけど、れいむはおにーさんのことも大好きだから、特別に出て行かなくてもいいんだよ?」
「ゆゆーん。れいむのやさしさはてんじょうしらずなのぜっ。おにーさんはれいむにかんしゃするのぜ!」
 2匹の言葉を無視して、お兄さんは大きく息を吐く。
(落ち着け。落ち着くんだ。ソウだ。テレビを見よう。テレビを見て気持ちをオチツカセヨウ)
 静かに、静かに歩いてリモコンを取ると、まりさがどいたロッキングチェアに座って、テレビの電源を入れる。
『あまあまをちょうだねっ!やさいさんはあきたんだよっ!!はやくしないとれいむおこるよ!』
 最初に飛び込んできたのはそういってぷくーと体を膨らませるれいむの姿だった。
『このように農村部ではゆっくりの被害が増加しており、ゆっくり管理協会の一刻も早い対応が求められています』
 ゆっくり被害のニュースだった。最近はこの手の話題ばかりが報じられている。
「ゆ! そうだおにーさんいっしょにごはんさんをたべようよっ! みんなでむーしゃむーしゃすればしあわせーってなるよっ」
「ゆゆーん。れいむ。そんなことよりまりさ、なんだかすっきりしたくなっちゃったんだぜ。おにいさんへのほうこくもすんだし、いっしょにすっきりするのぜ」
「ちょっとまりさ、おにーさんが見ているよっ、恥ずかしいよっ」
「みせつけてやるのぜ! それにおにいさんもれいむとまりさのかわいいあかちゃんをはやくみたいはずなのぜ!」
『しかし実際には書面による申請から駆除までに1週間以上かかる例もあり……』
「まりさっ、まりさっ! きもちいいよぅ!」
「ゆっほうう! みられながらのぷれいはもえるのぜええええ」
『このように広がるゆっくり被害に対し、今日法改正撤廃を求める抗議デモが行われ、3万人を超える参加者が、ゆっくり愛護法改正案の撤廃をもとめ横断幕等を掲げ、行進をしました』
 お兄さんは横ですっきりをする2匹に目もくれず、黙ってテレビを見続けた。
「まりさぁ、あかちゃん、あかちゃんできちゃうよおおおお!」
「ゆっゆっゆっゆっ、れいむのがよすぎてこしがとまらないのぜええええええっ」
『ゆっくりによる人間への被害はここ数年横ばいになっていたわけですが、この2ヶ月で15倍近くに増加しています』
「「「すっきりー!!!!」」」
 れいむとまりさの声がハモる。ぴちゃりと、まりさのよだれがお兄さんの頬に掛かった。
 お兄さんは静かに立ち上がった。
 れいむの額からはさっそくにょきにょきと茎が生え、そこに実ゆが実っていく。
「まりさに似てとってもゆっくりしたあかちゃんだよぉ」
「れいむににてとってもかわいいのぜぇ」
 お兄さんは寄り添って実ゆを眺めるれいむとまりさを無感動な瞳で眺めながら、静かに、足を振り上げた。

『このような法改正によって生じた被害を受けて、ヤマハト政権の支持率も急落しており、民自党をはじめ野党からは総辞職を求める声があがっております』

 後にはただ、ニュース番組が淡々と、事件を伝える声だけが響いていた。













●エピローグ●







 民社党ホズミ議員の事務所。
 そこには二人の人物がいた。一人はホズミ議員。そしてもう一人は彼女の腹心の秘書である。
 二人はテレビでニュース番組を見ていた。
 そこではゆっくり愛護法改正案を通した政府に対して、国民の不満の声が高まっていることを報じていた。
「これで間違いなく、法改正を通した現政権は倒れるでしょうね」
 秘書がホズミ議員に語り賭ける。それに対してホズミ議員は頷く。
「ええ。次に行われる選挙では、ゆっくり管理協会の利権目当てに賛成票を投じた連中は、ほとんど落選するでしょうね」
 ホズミ議員の言葉を秘書が引き継ぐ。
「そして、政権を取り戻した民自党により、まず間違いなく改正案は撤回される。しかし、先生を含めて民社党と連立与党の主民党は……」
「金に目がくらんで、国民を不幸にする法案を通した連中よ? 同情の余地はないわ。……もっとも。世紀の悪法を通過させた議員として一番非難されるのは私でしょうね」
 そう言って自嘲気味に笑うホズミ議員に秘書は気遣わしげな声を上げる。
「しかし、先生の本意は……」
「私の『ゆっくりが憎い』という欲望の為に国民を利用した事には変わらないわ。民自党の方に法改正で被害をこうむった企業への助成金をだす措置については根回しを済ませてはいるけど、今回の法改正で、不幸になった人間はそれこそ数え切れないほどいる」
 そう。ホズミ議員の目的は断じてゆっくりを保護することではなかった。
 恐らくは、日本にいる誰よりもゆっくりを憎んでいるのは、このホズミ議員であった。


 ホズミ議員には姪がいた。病弱で年の離れた妹が、母体が危険だと言われながらも生んだ子である。
 結局ホズミ議員の妹は、その子を産んでしばらくして亡くなってしまった。
 妹が命と引き換えに産んだ姪をホズミ議員は溺愛した。たまの休みには二人であちこちへ出かけたものだった。
 姪はゆっくりが好きだったが、飼うことは父親の意向でできなかったので、ホズミ議員は何度か高級会員制のゆっくりサロンへと姪を連れて行った。
 そして5度目に訪れたとき悲劇は起こった。
 現在は主民党幹事長を務める、さる大物議員のゆっくりまりさがサロンの隅にしつらえられたテーブルを倒してしまったのだ。
 そして。そばにいた姪は、その角に頭を打ちつけ、命を落とした。
 誰が悪いのかといえば、まずしっかりと姪を監督できなかったホズミ議員である。何度かそのサロンに訪れて、危険はないと判断していたため注意を怠ったのだ。
 そして次に悪いのは、そのまりさだった。しかしテーブルを倒したまりさは、自身もテーブルの下敷きになり潰れた。一番の憎悪の対象は誰に裁かれることも無く勝手に死んだのだ。
 そしてまりさの飼い主である大物議員は、その事件をもみ消した。選挙を控え自分のイメージを悪くすることを嫌ったのだ。そこサロンも会員たちも、議員の影響力を逃れることはできずに、結局それはただの事故ということになった。
 ホズミ議員も、そのときは自責の念と両党間の関係悪化を恐れてそれを見逃した。
 姪の父親からは葬儀に出ることを拒絶された。
 公務には支障をきたさなかったが、仕事をすればするほど、自責の念、無力感、そして行き場の無い憤りにとらわれた。
 そもそも自分が政治の道を志したのは、病弱な妹や子供のような弱いものを救うためではなかったのか。姪を殺されておきながら、こうして仕事をしている自分に政治家としての資格は無いのではないか。 
 自問自答と自己嫌悪。そして多少の自己擁護の果てに、その煮詰まった想念は姪を殺したまりさが既に無いこともあり、ゆっくりという種そのものへの憎悪へと醸成された。
 ゆっくりなど。ゆっくりなどいるから!
 そこには多分の責任転嫁があることは自分でも承知していたが、もはやそれは理性で押さえが利くものではなくなっていた。
 そうして思いついたのが、今回の法改正である。
 ただ愛護法の規制を緩めたとしても、きっと状況は対して変わらないだろう。
 ゆっくりの排除を政府で行うことは諸外国の手前不可能であろう。
 ゆっくりの排除を推奨するのも、国民の意識が変化しない限り不可能だろう。
 では、一度ゆっくりを徹底的に保護してはどうか?
 ただでさえゆっくりは自己中心的で、人の反感を買う生き物である。それが保護を受けることで増長する。増長するゆっくりに対して国民は手を出せない。
 そこで生まれる国民のゆっくりへの嫌悪はどれほどのものであろうか? そしてつもり半年ほどの時間をかけてそれを押さえつけた上で、規制が撤回される。
 それは日本国民1億2千万。それのほとんどを、ゆっくり虐待師と化す悪魔の計であった。


 ホズミ議員はゆるやかに微笑む。それはあと何ヶ月かで政治家生命を失う者とは思えないほどの穏やかな笑みだった。
「世の中にはゆっくり虐待師という人たちがいるというけど」
 そこでホズミ議員は言葉を切る。
「私の『法改正』という虐待。大きな声で自慢できないのが、ほんの少し残念ね」




 ゆっくり愛護法改正案。
 一人の女性議員の憎悪から生まれ、社会全体を巻き込んだこの巨大な虐待装置は、多くの人間とゆっくりの様々な物語を飲み込んで今、動き出そうとしていた。
 ひと時の幸せを謳歌するゆっくり諸君。どうかそれまでの間、ゆっくりしていってね!




ゆっくり愛護法改正案可決 完






















 あとがき

 どうも作者です。なんかもう無茶苦茶ですが、これにて完結です。続きを待ってくれる人がいたのに投稿遅れて申し訳ありませんでした。
 改正案撤回後の話も書いた方がいいのかな?とも思いましたが、ただでさえ冗長なのにこれ以上展開を増やすのはどうかと思い割愛しました。一つのお話としてもやや蛇足くさいですしね。すでに10本足の蛇くらいになってますが。
 本当は虐待描写が苦手で、単調になってしまうっていうの一番の理由です。多彩な表現で虐待を描写できるSS作者の皆様や、イラストがかける絵師の方々は本当に凄いと思います。

 まりさになにか恨みでもあるのかってくらいろくでもないのが多いですが、れいむ=ぼせい、ありす=れいせい、ぱちゅりー=ちせい、まりさ=ばせい というイメージがあり使いやすかったためついついゲス役にしてしまいました。

 実は前回の終わりが中途半端なのは、「どうせだれも俺の作品なんて読まないだろ、ぺぺいぺい」とおもって適当に投稿してバックレてしまうつもりだったから、なあんてことはありませんヨ!
 


 ●蛇足的設定資料

太っちょお兄さんと一緒にヒャッハーした12人の虐待師達
 

サングラス&特殊警棒お兄さん
 20代大学生。伸縮式の特殊警棒でゆっくりを潰す。我慢が出来ない性質。
 鍬おじいさんとの一度に何匹のゆっくりを殺せるかという勝負には敗北。
 本人は「武器の差だ」と言い張る。改正案施行後12人の中で一番最初に逮捕された。
 発言の元ネタはアニメ攻殻機動隊
鍬おじいさん
 鍬を持った初老の男性。58歳。12人の中では最高齢。おじいさんという程の年齢ではないが、便宜上そう呼ぶ。
 畑仕事の邪魔をするゆっくりを殺しているうちに虐待に目覚める。
 鍬の一振りで大量のゆっくりを一度に殲滅せしめる技能の持ち主。
 サングラスお兄さんとの勝負では一度に13匹を殺して勝利。どうやったんだ。
 きっと気とか使う。
ガスガンおじさん
 正確にはおじさんとお兄さんの狭間。でも子供は絶対におじさんと言う。
 SIGP210のガスガン2丁を使って赤ゆを狙い撃つ。残念ながらガンカタは未修得。
ピンヒールお姉さん
 20代半ば。普段はOLをしている。
 仕事でたまったストレスをゆっくりを潰すことで発散している。
 基本的にはピンヒールを履いてスキップをするだけだがその踵は確実に中枢餡を射抜く。
 ゆっくりを潰していると興奮してきて笑い出す。少し怖い。
 なんとなくからくりサーカスのコロンビーヌをイメージしたりしなかったり。
めがねお姉さん
 20代前半。普段は保母さんをしている。
 ゆっくりの精神にダメージを与えたあと叩きつけるのを好む。
 ゆ虐の趣味は周りには秘密にしているため、同じ趣味の仲間と出会えて結構幸せだったりする。
 あと熱心なラジオリスナー。伊集院光の深夜の馬鹿力的なラジオが好き。
バット青年
 20代前半。大学院生。パワポケとドリキャスが好き。
 虐待方法にはそこまで特徴は無い、隠れ技能としてゆっくりに好かれやすいとう特色がある。
 寄ってきたゆっくりを放っては打ち放って打つ。
 めがねお姉さんとはなんとなくいい感じになったが、ざんねん、あなたのれんあいはおわってしまった! 
ウォーターガンの小学生
 ゆっくスマイルカンパニー製のウォーターガンを使う小学生。
 ウォーターガンは大事に使っていたが、誰にでも分け隔てなく貸していたためその中の一人が壊してしまった。
 メーカーのおじさんに憧れてゆっくスマイルカンパニーに入ろうと決意する。
メーカーのおじさん
 ゆっくスマイルカンパニーの商品開発部長。某大手おもちゃメーカーからのヘッドハンティング組。
 しかし現在会社は倒産の危機にある。
 子供達が楽しくゆ虐ができるよう様々な商品を開発してきた。
 しかしおじさんよ。餡子を両断する水圧カッターや餡子共鳴装置って、使い方間違えたら相当危険だぞ?
 ゆっくりの中でゆうかりん種だけは愛して止まない。超希少種扱で全国に百匹程度しかいないゆうかりん種を所有するゆうかりんオーナーの一人。


未活躍組

模造刀青年
 活躍なし。
 ゆっくりに負けず劣らず頭がでかい。
 ゆっくりを見るたびにそのトラウマを突きつけられるのでゆっくりが嫌い。
 低い位置に対しては刀で切りつけるのは困難なのだが、その巨大な頭を起点にしてでんぐり返りその回転のエネルギーでゆっくりを切り裂く異形の剣術を使う。きっと蝦蟇蛙っぽい。
針おばさん
 活躍なし。
 趣味はパッチワークとゲーム。好きなゲームはメガテン
 大量のゆっくりを縫い合わせて「ほーらレギオンだよー」と言ったり、目や口の位置を変える整形手術を施し「ベヘリットだよー」と言ってごく一部の子供と大人を喜ばせる。
素手おじさん
 活躍なし。
 職業は医者。趣味はウェイトトレーニング。鍛え上げた己の五体のみを使ってゆっくりを狩る。
 ゆっくりに手のひらを叩きつけ、内部に衝撃を与え中枢餡を破壊する。
 その技の性質上大きめのゆっくりを好んで狙う。
トランプおじさん
 活躍なし
 伊達男と呼ばれると喜ぶ。トランプマンと言うと怒る。幕張南高校に息子がいる。
 次の虐待の為の虐待を。虐待の歓喜を永遠に味わう為の組織「最後の虐隊」という発作的に思いついたネタのために生まれた人。本編中にメガネお兄さんの調教に協力する「最後の虐隊」ともども登場予定だったが、さすがに荒唐無稽すぎるだろうということで没に。
 もちろん凶器はトランプ。しかしたまに狙いを外す。改正案施行後豚のような悲鳴をあげて捕まった。 


 その他登場人物

ふとっちょお兄さん
 けっこう短気。ゆっくりに嫌悪を抱いている。
 精神構造はオーソドックスなゆっくり虐待師。
 技を繰り出す際のタイムラグをなくした「新・アマギり」でゆっくりたちの目を抉る。
 メガネお兄さんたちと共に、改正反対の署名活動をしていたが、それが実らなかったことから離脱。
 改正案が施行されるまでゆ虐のかぎりを尽くす。
 本編では描写されていないが、同じような大量ゆ虐を施行までの間あと2回行っている。
 その際にかかった費用はすべて自腹。流石に太っ腹である。
 改正案施行後は正体を隠し、ゆっくりを虐待する組織、「ユー・ユギャック・スクラン」をつくり活動中

メガネお兄さん
 基本的に理知的。ゆっくりに危機感を覚えている。
 ゆっくりに関する情報収集も怠らない。
 ほんの少し愛での気を見せたのが運の尽き。
 現在服役中である。

背高お兄さん
 ちょい間抜け。ゆっくりに被害を受けている。
 コロボックルシリーズを思い出しながら命名。電気関係の仕事をしている。
 作中で彼が使った串刺しトラップは、ゆっくスマイルカンパニーの初期商品「ワラキア君」の改造版。
 彼の実家には後に助成金が出されることになる。
 
由井博士の助手
 某寄生獣からパロディ
 実はこの作品で書きたかったのは冒頭のニュースと彼の理論だけというのは秘密。
 ゆっくりと寄生獣ってけっこうかぶる部分があるなあとおもったり。世界の誰かがふと思ったからゆっくりは生まれたのでしょうか。
 ゆっくりに「もんをあっけろっー」と言わせたかったがついうっかりわすれました。ヒストリエ面白いね。


ホズミ議員
 この人の名前を見て、某政党の議員を思い浮かべてしまうことが、この作品最大のミスリードかも。
 ちなみに作者に政治的な意図はありません。ええありませんとも。
「anko1517 ゆっくり愛護法改正案可決 完結編 2」をウィキ内検索
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