ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko1000 ゆ 前編
最終更新:
ankoss
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ゆっくりはキモい、それだけの話。
希少種優遇、人間視点、虐待薄目、~だろう。の終わり方多目につき注意。
人語をしゃべり、表情を作り、涙を流す、ゆっくりと言う生き物は、
これだけ知的生命体の神秘を生まれ持ちながら、優秀な生き物という
わけでは決してなかった。口を開けば騒音をもたらし、同種族間では
常に自信を滾らせる強い瞳は、人間の視点から見れば淀んだ溝のごと
き小汚さを孕んでいる。
そのくせ好奇心は無謀なほど持ち合わせていて、謙虚さ、自制心など
は、最初から持ち合わせてはいない。たとえ命にかかわる約束ごとで
あろうと、ふと眼前に欲っするものが現れたなら、約束などはあっさ
り忘却の彼方へ押しやってしまうのだ。
自らを第一として考えているためか、自身の処理能力を超えた事情を
もくろみ、あっさりと限界を超えてしまう。人間を見かけるたびに、
「じじい」、「ばばあ」、「どれい」と罵り、しかして現実が分かる
と、豹変と言える変貌をとげ、潰れかけの顔でゴマをすった。
こんな性格が災いし、数年前、ペットショップのショーウィンドウを
独占していた下膨れどもは政府公認の害獣とみなされ、見かけた際に
は駆除するように呼びかけられるに至った。
しかし一部の愛好家、俗にいう『ゆっくりんピース』などは、細々と
活動を続けているほか、『躾』に成功した数少ないゆっくりをペット
としている物好きもいるため、害虫でありながら比較的愛好家の多い
という、愛玩用としても歴史上ちょっと珍しい生き物である。
彼らは脆弱な体の代償(誤字ではない)故か、繁殖力が尋常ではなく、
過去2度あった、政府の全滅作戦を生き延びている。野良ゆっくりが
今なお多く生息しているのは、その分野においてはかのゴキブリを
も上回りかねない繁殖力があってこそだろう。実質、『第二のゴキ
ブリ』として、ゆっくり駆除を目的とした研究も存在しているのだ。
――と、説明はこのくらいにしておく。
事例を挙げればきりがないのだ。この饅頭どもの前科を詳細に語ろ
うものなら、神経の図太い阿呆か、口先の回る皮肉屋かでないと、
書き終えるまでに精神が悲劇的な結末を迎えてしまうのが目に見え
ている。
とにかく、ゆっくりは害獣である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ん?」
それに気づいたのは、小説原稿を書き終えて一休みついた僕が、
すっかり冷めきっていたコーヒーの残りを飲んでいる時だった。
一仕事終えて疲れ切った僕の口の中を、酔い覚ますような苦みが
充満していくと、窓を叩く下品な音が聞こえてきたのだ。何事か
と目をやれば、バレーボール程に肥えたれいむ種が1匹、その子
供と思われる、ピンポン玉程のまりさとれいむがそれぞれ1匹、
必死の面持ちで窓に体当たりを繰り出していた。
野良ゆっくりか。と思い、コーヒーを飲んだ。野良ゆっくりとは、
意地汚くサイテーのクソ饅頭の中でもひときわ意地汚く、最低な
害虫のことだ。
あいにくと害虫を入れてやる気にはなれない。だが跳ね返されて
は慌てて体勢を立て直し、また突撃を繰り返す。子供の方はとう
にあきらめていて、窓に顔を押し付け、窓を涙でぐちゃぐちゃ濡
らしているそのさまは、最近のお笑いや政治を見ているよりも、
ずっと滑稽で、心の奥にこそばゆい気持ちを僕にもたらした。
僕がクスリと笑うと、親れいむが突撃を中止して、何かを叫んだ。
しかし残念ながら、声は届かないし、入れることはできない。この
窓は風景を見るためだけに、端からすき間のないように接着されて
いて、大型台風などでも割れないようにとそこそこ分厚いガラスを
宛がわれている。ゆっくりの力では石やパチンコ玉をぶつけたとこ
ろで破壊は無理だし、家主である僕にも開けようがないのだから、
何者であろうとそこから入れないのは当然だ。
しかし、親子そろってあまりにも必死なので、ただ家に入ろうとし
ているだけじゃなく、大げさな行動によって何かを伝えようとして
いるのは、すぐにわかった。せっかくサイレント・天然ショートコ
ントに出会えたのだ。小説家としての悪い好奇心が、疲れ切ってい
たはずの脳を急速に温め、回転させる。
「はてさて、この奇妙な饅頭たちは何の目的があって、コントを繰
り返す? 餌がなくなったのか……? いや違うな。まだ夏だ。冬
越えに蓄えを集める時期ではない。それに、あの動きをみるに……
あのれいむは狩りが下手ではないだろう。子供はたった2匹だし、
養う程度の餌はとれるはず。……いや、なぜ2匹なんだ? ゆっく
りは一度の出産で4~5匹は産むとされる、動物型妊娠は1匹で、
許容を超えた痛みのあまり、一度しかしないと聞くから植物で間違
いはないだろう。
まてよ……? そういえば番がいないようだな。子供を見るにおそら
く(番は)まりさ種だろうが、姿が見えない。しんぐるまざー(笑)か?
それで家を見つけて取り入ろうと……だめだ、醜悪な顔を見せてま
でして、危険性のある人間のもとに言い寄るなど、こういう分野で
妙に狡賢いゆっくりがするのか……?」
推測を重ねると、それは膨れ上がり興味関心へと姿を変える。一時
の快楽、興味に身を委ねるなど常人の行うべき行為ではないが、小
説家とは大抵『奇妙なフィクションより奇妙な事実』を求めている
暇な狂人だ。ここで僕が、あのれいむたちを我が家に招き入れたと
して、なんの問題があるというのだ。
僕はコーヒーの残りを一気に飲み干し、もうガタがきている扇風機
をのスイッチを押すと、長いこと使ってない努力賞のバスタオルを
持ち、玄関へと向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「えーと……ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!!」
「ゆっきゅりしていっちぇねぇ!!」
「ゅ……っき……ゅ…………」
お決まりのあいさつをすると、バスタオル上の親れいむと子まりさ
は元気な返事を返したが、子れいむはほそぼそとつぶやくだけに終
わった。明らかに元気がない。というか半分体がない。乱暴に抉ら
れたようになっていて、餡子がぼとぼと漏れ出してる。助かるわけ
がない。喋れているのが奇跡だ。
親れいむと子まりさが振り返り、子れいむを見つめた。
「おちびちゃあぁぁぁぁぁぁぁんっっ!!! めをあけてぇぇぇぇえ!!!」
「おねぇちゃんしにゃにゃいでぇ!! ゆっくちしちぇぇ!!!」
親れいむがペーろぺーろとほほを舐めまわし、子まりさが正面に回
って励ます。どちらも真剣で、うるさい。だが親れいむと子まりさ
の気持ちなど、子れいむの体力は知ったことではない。
「ゅ……もっ……ちょ……ゅ……」
子れいむは目を閉じ、そのまま動かなくなった。永遠にゆっくりし
たのだろう。親れいむが一瞬大きく震え、子まりさは下から染み出
るしーしー以外の時が止まったかのようになり、茫然とした表情を
浮かべた。僕は一応両手を合わせた。
生前が例えどんな害虫でも、死んだ生き物に差はない。ただ、残念
に思うのは、知的好奇心が満たされる要素を一つ失った、浅い失望
からくるものである。最も、助ける気があったわけじゃないから
どうでもいい部類の失望である。
ただ、親れいむと子まりさに襲いかかるその衝撃たるや。想像に、
文字に書き起こすに値するものがあるだろう。
親れいむと子まりさは決死の形相で子れいむの名を呼んでいたが、
もはや無駄だと教える気にはなれなかった。
「……よくも!!」
親れいむが、ポツリと言葉を漏らす。待ってましたと言うのが惜し
い。僕はすぐさまペンを手に取り、キャップを投げ捨て、紙上の左
上に乗せた。インクが黒い点を作る。準備は万端だ。
「よくもお゛ぢびじゃ゛ん゛を゛ごろじだなぁ゛!!!! ぐじょじ
じい゛め゛ぇ゛……!!!」
「ゆっ! しょうぢゃしょうぢゃ!! おねぇちゃんをころちたくちょ
じじぃは、ゆっきゅりちないぢぇちゃっちゃちょちんでにぇ!!!!」
「おいおい……」
吐き捨てられる、身に覚えのない憎しみの言葉。僕が聞きたい本当
の答えではない。が、口では呆れつつも、今はただペンを走らせる。
言葉を書くのではない。書くのは激しい憎しみを表したイメージだ。
耳に届く言葉をそのままに感じとり、余計な思考や雑念など、入る
余地もない刹那の間に、ありのままの感情を書き表すのだ。
親れいむと子まりさは僕の様子に気づくことなく、理不尽な怒りと
憎しみに全身全霊を注ぐ。性交を求め鳴き続けるコオロギのように、
れいむたちの場合は本能でもなんでもない、知性を持ちつつ単純で
あるという矛盾が生み出した喜劇だろう。しかし、その全身全霊こ
そが、感情をむき出しにできる短絡的思考のありがたみなのだから。
「ゆぅぅぅぅ!! きいてるのくそどれい!! さっさとでいぶたちを
なかにいれてたら、このこはしなずにすんだんだよ!!?」
「しょうぢゃしょうぢゃ!! ごしゅじんしゃまにちゅくすのぎゃ、
ぢょれいのやくめぢぇしょう!!? しょんなきょともわきゃ
らにゃいの!!? ばきゃにゃの!? しぬにょ!!!?」
もみあげを揺さぶって威嚇する親れいむと子まりさ。ペンを止め、
紙に目を落とす。おかげで、書き終えた紙上には、他人では絶対
理解できないであろう感情が鮮明に産声を上げていた。思わず、
笑みがこぼれた。
また親れいむと子まりさの眉間にしわが集まる。
「まぁまぁ落ち着きなよ。これでも食べてさ」
またガタガタ言われる前に、あらかじめ用意しておいた、皿に乗せ
たあまあまを出して制した。あまあまは96円の板チョコと生クリー
ムの塊で、遅れて出したオレンジジュースともどもれいむ親子の視
線をたやすく独占し、口を閉ざさせ、心を射抜いた。
「ゆわ~っ! あまあましゃんだぁ~」
「ゆほぉぉぉっ!! れいむが一番に食べるからね!! ゆっくりし
てないでおちびちゃんはさっさとどいてね!!!!」
涎を撒き散らしながら、我先に食らい付かんと突進する。親れいむ
が前方にいた子まりさを、窓にぶつかった勢いの比ではない突進力
で跳ね飛ばしたが、全く気にしていない。子まりさはアクロバティ
ックな宙返りを散々披露した後、そのままバスタオルにダイブした。
「ゆべっ!」という断末魔が、押しつぶされた際に口から漏れたあ
んこに埋もれてかき消される。
見事着地失敗だ。子まりさはぴくぴくと2、3回体を震わせて、その
まま動かなくなった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はふっ! はふっ!! うっめ!! これっ! めっちゃうっめ!!!」
親れいむは、ゆっくり一口サイズに砕かれたチョコを一心不乱に食い
散らかしている。「故」、子まりさにしても、あんこを撒き散らして
ゆっくりしている。スポーツタオルではなく、面積の広いバスタオル
を敷いておいてよかった、とつくづく思った。
親れいむは口周りに唾液とチョコのカスをこびり付かせ、生クリーム
の塊に顔を突っ込んだ。チョコをすべて平らげたからだ。目の前で死
んだ子れいむの分はともかく、子まりさの分を残していないところを
見るに、ゆっくりの身勝手さがよく表れている。それどころか、故ま
りさの死体を「まだここにあるぞ」とさし出すと、喜んで齧り付き、
あっという間に平らげてしまった。さすがにここまでゲスだと、もう
どう表現すればいいものか、まったくもって悩ましい。
「ゆぅ~ん! くそどれいにしては、それなりのあまあまだったよ!!」
暴風にでもあったようにチョコとクリームのカスが散らばる皿の上に、
れいむが満足満足と寝転がる。事実満足したのだろう。体はだらしな
く伸びきっているし、今しがたげっぷをかました。ガラスを引っかく
ような、嫌な音だった。腹も満たしたし、もう充分のはずだ。
「ところでれいむさん。なにがあったんですか?」
「ゆっ!! なかなかことばづかいのわかってるどれいだね!!
次はおふとんさんをよういしてね! あったかくてふわふわのでいい
よ!!」
「お布団さんの前に、聞いてもいいかな?」
「ゆっ!? 仕方ないね! れいむは心が広いから、どれいの言葉を聞
いてあげるよ! せいぜいれいむに感謝してね! このくそどれい!」
れいむが満面の笑みを浮かべる。つられるように、僕もにやりと笑っ
た。今下手に出るのは、情報を聞くため。れいむたちがなぜこうも醜
くあせっていたのか、何があったのかを。
当然冒険譚(笑)にはゆっくり特有の脚色がかかり、「ぼくのかんが
えたさいこうのすとーりー(笑)」になることは目に見えているが、
ゆっくりの誇張表現などたかが知れている。だいたい言ってること
の反対が真実なのだ。
「れいむたちはね、最高にゆっくりした最高のゆっくりプレイスを求
めて、たびしてたんだよっ! そして人間たちのお家を見つけて、
どれがれいむたちにふさわしいか、れいむのしんがんでゆっくり選
別してあげてたんだよ!」
堂々と胸を張るれいむ。食料難でもなさそうなこの時期に人間の家
を奪おうなどと、やはりゲスだったか。旅というのは大方、近所の
林(家から5mもない所にある)のことだろう。
「でもそれにしちゃ、ずいぶん慌ててたね」
「ゆっ! やっぱりどれいのジジイはバカだね! それはせんりゃく
てきてったいなんだよ! どうみてもそうだったでしょ!?」
「戦略的撤退か……」
つまり、何かに襲われて逃げてたわけか、……面白くない。僕は呟い
た。この辺りには、こいつらの天敵であるれみりゃやふらんもそこそ
こ生息しているのだ。村にはめったに寄り付かないが、僕もれみりゃ
がゆっくりを狩っているところを見たことがある。通行の邪魔だった
ので横っ面を蹴り飛ばした感触は、今だに忘れがたい。
「そんなことも分からないなんて、ばかなの? しぬの? ぷーっ!
ゲラゲラゲラゲラ!!」
「……はぁ」
ため息をついて退出する。テンションがガタ落ちて脳の回転がストッ
プした。れいむが無神経に「べっどさんにはかわいい美まりさをよう
いしてね!」と叫ぶ。注文がお布団からベッドにグレードアップ(?)
してるあたり、ゆっくりらしいというかなんというか。
残念ながらベッドを持ってくる気にはなれない。代わりに昔お世話に
なったアルコールランプとほんの一?ばかしお湯を入れた、かなり大
きめのビーカーを用意してやろう。あんよを焼いた上でその中に放り
込んで、僅かなお湯と熱によって、苦悶の表情を浮かべてゆっくり溶
けるさまを観察するとしよう。叫び声がうるさそうなので、耳栓も持
ってきたほうがよさそうだな。
などと能天気に考え戸棚をあさっていると、
「ゆ゛ぎぃぃぃぃぃぃっっ!! だずげでぇぇぇぇぇ!!!!!!」
天をも引き裂きそうな、ゆっくりの叫び声が木霊した。うるさい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なん……だと……?」
のそのそゆっくり歩いて来た、もはや一遍のやる気のない僕を、その
光景は一撃で叩き起こした。泣き叫ぶゆっくりれいむは予想できてい
たが、その隣でれいむに体をぐりぐり押し付けているゆっくりは、想
定の範囲外だったからだ。
「ゆ゛ぎゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! い゛だい゛っ゛!!!!!!
い゛だい゛~~~っ゛っ゛!!!!!!」
「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」
だがそれ以上に僕の頭をたたきのめす自体がある。さっきさんざん、
れいむの無駄な突進を跳ね返していたあの分厚い小窓が割れていた。
僕はすぐさま考えをめぐらす。結論は一つしかない。
「このゆっくりが叩き割ったのか……?」
完熟したグレープフルーツのように黄色の長い髪、額には赤い角が堂
々とそびえている。ニコニコ上機嫌に笑う口の端から、ゆっくりには
ないはずの糸切り歯が垣間見える。
何から何まで初体験。間違いないこいつは――――
「未確認ゆっくり――だと!?」
僕の心がビクンと跳ねあがり、れいむは皮が震えあがった。
「ゆ゛ぎぃ゛~っ゛! だずげろぐぞどれ゛い゛~っ゛っ゛」
「何で逃げるんだよ~!!! ゆっくり力比べしようよ~!!」
前編終了
予告
「おにいさん! ゆうぎと勝負しようよ! あたしに勝ったらお酒をあげるよ!!」
希少種優遇、人間視点、虐待薄目、~だろう。の終わり方多目につき注意。
人語をしゃべり、表情を作り、涙を流す、ゆっくりと言う生き物は、
これだけ知的生命体の神秘を生まれ持ちながら、優秀な生き物という
わけでは決してなかった。口を開けば騒音をもたらし、同種族間では
常に自信を滾らせる強い瞳は、人間の視点から見れば淀んだ溝のごと
き小汚さを孕んでいる。
そのくせ好奇心は無謀なほど持ち合わせていて、謙虚さ、自制心など
は、最初から持ち合わせてはいない。たとえ命にかかわる約束ごとで
あろうと、ふと眼前に欲っするものが現れたなら、約束などはあっさ
り忘却の彼方へ押しやってしまうのだ。
自らを第一として考えているためか、自身の処理能力を超えた事情を
もくろみ、あっさりと限界を超えてしまう。人間を見かけるたびに、
「じじい」、「ばばあ」、「どれい」と罵り、しかして現実が分かる
と、豹変と言える変貌をとげ、潰れかけの顔でゴマをすった。
こんな性格が災いし、数年前、ペットショップのショーウィンドウを
独占していた下膨れどもは政府公認の害獣とみなされ、見かけた際に
は駆除するように呼びかけられるに至った。
しかし一部の愛好家、俗にいう『ゆっくりんピース』などは、細々と
活動を続けているほか、『躾』に成功した数少ないゆっくりをペット
としている物好きもいるため、害虫でありながら比較的愛好家の多い
という、愛玩用としても歴史上ちょっと珍しい生き物である。
彼らは脆弱な体の代償(誤字ではない)故か、繁殖力が尋常ではなく、
過去2度あった、政府の全滅作戦を生き延びている。野良ゆっくりが
今なお多く生息しているのは、その分野においてはかのゴキブリを
も上回りかねない繁殖力があってこそだろう。実質、『第二のゴキ
ブリ』として、ゆっくり駆除を目的とした研究も存在しているのだ。
――と、説明はこのくらいにしておく。
事例を挙げればきりがないのだ。この饅頭どもの前科を詳細に語ろ
うものなら、神経の図太い阿呆か、口先の回る皮肉屋かでないと、
書き終えるまでに精神が悲劇的な結末を迎えてしまうのが目に見え
ている。
とにかく、ゆっくりは害獣である。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ん?」
それに気づいたのは、小説原稿を書き終えて一休みついた僕が、
すっかり冷めきっていたコーヒーの残りを飲んでいる時だった。
一仕事終えて疲れ切った僕の口の中を、酔い覚ますような苦みが
充満していくと、窓を叩く下品な音が聞こえてきたのだ。何事か
と目をやれば、バレーボール程に肥えたれいむ種が1匹、その子
供と思われる、ピンポン玉程のまりさとれいむがそれぞれ1匹、
必死の面持ちで窓に体当たりを繰り出していた。
野良ゆっくりか。と思い、コーヒーを飲んだ。野良ゆっくりとは、
意地汚くサイテーのクソ饅頭の中でもひときわ意地汚く、最低な
害虫のことだ。
あいにくと害虫を入れてやる気にはなれない。だが跳ね返されて
は慌てて体勢を立て直し、また突撃を繰り返す。子供の方はとう
にあきらめていて、窓に顔を押し付け、窓を涙でぐちゃぐちゃ濡
らしているそのさまは、最近のお笑いや政治を見ているよりも、
ずっと滑稽で、心の奥にこそばゆい気持ちを僕にもたらした。
僕がクスリと笑うと、親れいむが突撃を中止して、何かを叫んだ。
しかし残念ながら、声は届かないし、入れることはできない。この
窓は風景を見るためだけに、端からすき間のないように接着されて
いて、大型台風などでも割れないようにとそこそこ分厚いガラスを
宛がわれている。ゆっくりの力では石やパチンコ玉をぶつけたとこ
ろで破壊は無理だし、家主である僕にも開けようがないのだから、
何者であろうとそこから入れないのは当然だ。
しかし、親子そろってあまりにも必死なので、ただ家に入ろうとし
ているだけじゃなく、大げさな行動によって何かを伝えようとして
いるのは、すぐにわかった。せっかくサイレント・天然ショートコ
ントに出会えたのだ。小説家としての悪い好奇心が、疲れ切ってい
たはずの脳を急速に温め、回転させる。
「はてさて、この奇妙な饅頭たちは何の目的があって、コントを繰
り返す? 餌がなくなったのか……? いや違うな。まだ夏だ。冬
越えに蓄えを集める時期ではない。それに、あの動きをみるに……
あのれいむは狩りが下手ではないだろう。子供はたった2匹だし、
養う程度の餌はとれるはず。……いや、なぜ2匹なんだ? ゆっく
りは一度の出産で4~5匹は産むとされる、動物型妊娠は1匹で、
許容を超えた痛みのあまり、一度しかしないと聞くから植物で間違
いはないだろう。
まてよ……? そういえば番がいないようだな。子供を見るにおそら
く(番は)まりさ種だろうが、姿が見えない。しんぐるまざー(笑)か?
それで家を見つけて取り入ろうと……だめだ、醜悪な顔を見せてま
でして、危険性のある人間のもとに言い寄るなど、こういう分野で
妙に狡賢いゆっくりがするのか……?」
推測を重ねると、それは膨れ上がり興味関心へと姿を変える。一時
の快楽、興味に身を委ねるなど常人の行うべき行為ではないが、小
説家とは大抵『奇妙なフィクションより奇妙な事実』を求めている
暇な狂人だ。ここで僕が、あのれいむたちを我が家に招き入れたと
して、なんの問題があるというのだ。
僕はコーヒーの残りを一気に飲み干し、もうガタがきている扇風機
をのスイッチを押すと、長いこと使ってない努力賞のバスタオルを
持ち、玄関へと向かった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「えーと……ゆっくりしていってね!」
「ゆっくりしていってね!!」
「ゆっきゅりしていっちぇねぇ!!」
「ゅ……っき……ゅ…………」
お決まりのあいさつをすると、バスタオル上の親れいむと子まりさ
は元気な返事を返したが、子れいむはほそぼそとつぶやくだけに終
わった。明らかに元気がない。というか半分体がない。乱暴に抉ら
れたようになっていて、餡子がぼとぼと漏れ出してる。助かるわけ
がない。喋れているのが奇跡だ。
親れいむと子まりさが振り返り、子れいむを見つめた。
「おちびちゃあぁぁぁぁぁぁぁんっっ!!! めをあけてぇぇぇぇえ!!!」
「おねぇちゃんしにゃにゃいでぇ!! ゆっくちしちぇぇ!!!」
親れいむがペーろぺーろとほほを舐めまわし、子まりさが正面に回
って励ます。どちらも真剣で、うるさい。だが親れいむと子まりさ
の気持ちなど、子れいむの体力は知ったことではない。
「ゅ……もっ……ちょ……ゅ……」
子れいむは目を閉じ、そのまま動かなくなった。永遠にゆっくりし
たのだろう。親れいむが一瞬大きく震え、子まりさは下から染み出
るしーしー以外の時が止まったかのようになり、茫然とした表情を
浮かべた。僕は一応両手を合わせた。
生前が例えどんな害虫でも、死んだ生き物に差はない。ただ、残念
に思うのは、知的好奇心が満たされる要素を一つ失った、浅い失望
からくるものである。最も、助ける気があったわけじゃないから
どうでもいい部類の失望である。
ただ、親れいむと子まりさに襲いかかるその衝撃たるや。想像に、
文字に書き起こすに値するものがあるだろう。
親れいむと子まりさは決死の形相で子れいむの名を呼んでいたが、
もはや無駄だと教える気にはなれなかった。
「……よくも!!」
親れいむが、ポツリと言葉を漏らす。待ってましたと言うのが惜し
い。僕はすぐさまペンを手に取り、キャップを投げ捨て、紙上の左
上に乗せた。インクが黒い点を作る。準備は万端だ。
「よくもお゛ぢびじゃ゛ん゛を゛ごろじだなぁ゛!!!! ぐじょじ
じい゛め゛ぇ゛……!!!」
「ゆっ! しょうぢゃしょうぢゃ!! おねぇちゃんをころちたくちょ
じじぃは、ゆっきゅりちないぢぇちゃっちゃちょちんでにぇ!!!!」
「おいおい……」
吐き捨てられる、身に覚えのない憎しみの言葉。僕が聞きたい本当
の答えではない。が、口では呆れつつも、今はただペンを走らせる。
言葉を書くのではない。書くのは激しい憎しみを表したイメージだ。
耳に届く言葉をそのままに感じとり、余計な思考や雑念など、入る
余地もない刹那の間に、ありのままの感情を書き表すのだ。
親れいむと子まりさは僕の様子に気づくことなく、理不尽な怒りと
憎しみに全身全霊を注ぐ。性交を求め鳴き続けるコオロギのように、
れいむたちの場合は本能でもなんでもない、知性を持ちつつ単純で
あるという矛盾が生み出した喜劇だろう。しかし、その全身全霊こ
そが、感情をむき出しにできる短絡的思考のありがたみなのだから。
「ゆぅぅぅぅ!! きいてるのくそどれい!! さっさとでいぶたちを
なかにいれてたら、このこはしなずにすんだんだよ!!?」
「しょうぢゃしょうぢゃ!! ごしゅじんしゃまにちゅくすのぎゃ、
ぢょれいのやくめぢぇしょう!!? しょんなきょともわきゃ
らにゃいの!!? ばきゃにゃの!? しぬにょ!!!?」
もみあげを揺さぶって威嚇する親れいむと子まりさ。ペンを止め、
紙に目を落とす。おかげで、書き終えた紙上には、他人では絶対
理解できないであろう感情が鮮明に産声を上げていた。思わず、
笑みがこぼれた。
また親れいむと子まりさの眉間にしわが集まる。
「まぁまぁ落ち着きなよ。これでも食べてさ」
またガタガタ言われる前に、あらかじめ用意しておいた、皿に乗せ
たあまあまを出して制した。あまあまは96円の板チョコと生クリー
ムの塊で、遅れて出したオレンジジュースともどもれいむ親子の視
線をたやすく独占し、口を閉ざさせ、心を射抜いた。
「ゆわ~っ! あまあましゃんだぁ~」
「ゆほぉぉぉっ!! れいむが一番に食べるからね!! ゆっくりし
てないでおちびちゃんはさっさとどいてね!!!!」
涎を撒き散らしながら、我先に食らい付かんと突進する。親れいむ
が前方にいた子まりさを、窓にぶつかった勢いの比ではない突進力
で跳ね飛ばしたが、全く気にしていない。子まりさはアクロバティ
ックな宙返りを散々披露した後、そのままバスタオルにダイブした。
「ゆべっ!」という断末魔が、押しつぶされた際に口から漏れたあ
んこに埋もれてかき消される。
見事着地失敗だ。子まりさはぴくぴくと2、3回体を震わせて、その
まま動かなくなった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「はふっ! はふっ!! うっめ!! これっ! めっちゃうっめ!!!」
親れいむは、ゆっくり一口サイズに砕かれたチョコを一心不乱に食い
散らかしている。「故」、子まりさにしても、あんこを撒き散らして
ゆっくりしている。スポーツタオルではなく、面積の広いバスタオル
を敷いておいてよかった、とつくづく思った。
親れいむは口周りに唾液とチョコのカスをこびり付かせ、生クリーム
の塊に顔を突っ込んだ。チョコをすべて平らげたからだ。目の前で死
んだ子れいむの分はともかく、子まりさの分を残していないところを
見るに、ゆっくりの身勝手さがよく表れている。それどころか、故ま
りさの死体を「まだここにあるぞ」とさし出すと、喜んで齧り付き、
あっという間に平らげてしまった。さすがにここまでゲスだと、もう
どう表現すればいいものか、まったくもって悩ましい。
「ゆぅ~ん! くそどれいにしては、それなりのあまあまだったよ!!」
暴風にでもあったようにチョコとクリームのカスが散らばる皿の上に、
れいむが満足満足と寝転がる。事実満足したのだろう。体はだらしな
く伸びきっているし、今しがたげっぷをかました。ガラスを引っかく
ような、嫌な音だった。腹も満たしたし、もう充分のはずだ。
「ところでれいむさん。なにがあったんですか?」
「ゆっ!! なかなかことばづかいのわかってるどれいだね!!
次はおふとんさんをよういしてね! あったかくてふわふわのでいい
よ!!」
「お布団さんの前に、聞いてもいいかな?」
「ゆっ!? 仕方ないね! れいむは心が広いから、どれいの言葉を聞
いてあげるよ! せいぜいれいむに感謝してね! このくそどれい!」
れいむが満面の笑みを浮かべる。つられるように、僕もにやりと笑っ
た。今下手に出るのは、情報を聞くため。れいむたちがなぜこうも醜
くあせっていたのか、何があったのかを。
当然冒険譚(笑)にはゆっくり特有の脚色がかかり、「ぼくのかんが
えたさいこうのすとーりー(笑)」になることは目に見えているが、
ゆっくりの誇張表現などたかが知れている。だいたい言ってること
の反対が真実なのだ。
「れいむたちはね、最高にゆっくりした最高のゆっくりプレイスを求
めて、たびしてたんだよっ! そして人間たちのお家を見つけて、
どれがれいむたちにふさわしいか、れいむのしんがんでゆっくり選
別してあげてたんだよ!」
堂々と胸を張るれいむ。食料難でもなさそうなこの時期に人間の家
を奪おうなどと、やはりゲスだったか。旅というのは大方、近所の
林(家から5mもない所にある)のことだろう。
「でもそれにしちゃ、ずいぶん慌ててたね」
「ゆっ! やっぱりどれいのジジイはバカだね! それはせんりゃく
てきてったいなんだよ! どうみてもそうだったでしょ!?」
「戦略的撤退か……」
つまり、何かに襲われて逃げてたわけか、……面白くない。僕は呟い
た。この辺りには、こいつらの天敵であるれみりゃやふらんもそこそ
こ生息しているのだ。村にはめったに寄り付かないが、僕もれみりゃ
がゆっくりを狩っているところを見たことがある。通行の邪魔だった
ので横っ面を蹴り飛ばした感触は、今だに忘れがたい。
「そんなことも分からないなんて、ばかなの? しぬの? ぷーっ!
ゲラゲラゲラゲラ!!」
「……はぁ」
ため息をついて退出する。テンションがガタ落ちて脳の回転がストッ
プした。れいむが無神経に「べっどさんにはかわいい美まりさをよう
いしてね!」と叫ぶ。注文がお布団からベッドにグレードアップ(?)
してるあたり、ゆっくりらしいというかなんというか。
残念ながらベッドを持ってくる気にはなれない。代わりに昔お世話に
なったアルコールランプとほんの一?ばかしお湯を入れた、かなり大
きめのビーカーを用意してやろう。あんよを焼いた上でその中に放り
込んで、僅かなお湯と熱によって、苦悶の表情を浮かべてゆっくり溶
けるさまを観察するとしよう。叫び声がうるさそうなので、耳栓も持
ってきたほうがよさそうだな。
などと能天気に考え戸棚をあさっていると、
「ゆ゛ぎぃぃぃぃぃぃっっ!! だずげでぇぇぇぇぇ!!!!!!」
天をも引き裂きそうな、ゆっくりの叫び声が木霊した。うるさい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なん……だと……?」
のそのそゆっくり歩いて来た、もはや一遍のやる気のない僕を、その
光景は一撃で叩き起こした。泣き叫ぶゆっくりれいむは予想できてい
たが、その隣でれいむに体をぐりぐり押し付けているゆっくりは、想
定の範囲外だったからだ。
「ゆ゛ぎゃ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!! い゛だい゛っ゛!!!!!!
い゛だい゛~~~っ゛っ゛!!!!!!」
「ゆっくりしていってね!! ゆっくりしていってね!!」
だがそれ以上に僕の頭をたたきのめす自体がある。さっきさんざん、
れいむの無駄な突進を跳ね返していたあの分厚い小窓が割れていた。
僕はすぐさま考えをめぐらす。結論は一つしかない。
「このゆっくりが叩き割ったのか……?」
完熟したグレープフルーツのように黄色の長い髪、額には赤い角が堂
々とそびえている。ニコニコ上機嫌に笑う口の端から、ゆっくりには
ないはずの糸切り歯が垣間見える。
何から何まで初体験。間違いないこいつは――――
「未確認ゆっくり――だと!?」
僕の心がビクンと跳ねあがり、れいむは皮が震えあがった。
「ゆ゛ぎぃ゛~っ゛! だずげろぐぞどれ゛い゛~っ゛っ゛」
「何で逃げるんだよ~!!! ゆっくり力比べしようよ~!!」
前編終了
予告
「おにいさん! ゆうぎと勝負しようよ! あたしに勝ったらお酒をあげるよ!!」