ふたば系ゆっくりいじめSS@ WIKIミラー
anko0391 まりさがんばる
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まりさがんばる
「ゆぐぅぅ・・・。ゆげぇぇぇ・・・。」
閑静な住宅街のなかの空き地。
どこかの資材置き場なのか土管やドラム缶、木箱にダンボールなどが散乱している。
ずいぶん長い間放置されているのかドラム缶は赤錆に覆われ、あちこちで背の高い草が伸び放題になっている。
おそらく放置されていたであろう木箱に、雨よけのブルーシートが被せられている。
木箱の中にはさらにほぼ同じ大きさのダンボールが入れられている。
その中から人らしき声が漏れている。
しかし、木箱は人間が入れるほど大きくはない。
人間そっくりの声を発する生き物、ゆっくりの巣だ。
「ゆぅぅぅ・・・。」
「おちびちゃん、ゆっくり!ゆっくりだよ!!」
「まりしゃおにぇーちゃん、ゆっくちしちぇ!」
中には大小のまりさが一匹ずつと小さなありすが一匹。
親まりさと、その子ゆっくり達だ。まだ、赤ゆ言葉がぬけない頃だろうか。
ぐったりと寝込んでうなされているのは子まりさ。
あとの二匹がすぐ傍で心配そうに付き添い、ときどき子まりさに声をかけ励ましている。
「ゆわーん、まりしゃおにぇーちゃん!ありちゅのちぇいでまりしゃおにぇーちゃんが・・・」
「ゆっ!ちがうよ!おねーちゃんがびょーきになっちゃったのはおちびちゃんのせいじゃないよ!」
「ぢぇも、ありちゅがおにぇーちゃんのおぼうちをかりたちぇいで・・・」
「ゆぅ・・・、まりちゃは・・・おにぇーちゃんだから、
・・・いもーちょをたすけるのはあたりまえにゃんだよ・・・・・・ゆぐっゆげぇぇぇぇ」
「おちびちゃん!ゆっくり!あんこさんはいちゃだめだよ!」
「おにぇーちゃんゆっくちぃぃ!!」
姉まりさは病気だった。
ことの始めは二日前にさかのぼる。
折りしも秋の冷たい雨が数日続いていた。
夏から秋にかけては、ゆっくりたちも草花に虫と豊富な食料に恵まれる。
それはこの一家も例外ではなく、十分な食事にありつき、かつ多少の蓄えもすることが出来た。
しかし、断続的に降り続ける雨に狩りにいくもままならない。
蓄えもとうとう尽きてしまった。雨はまだやみそうにない。
自分はともかく、おちびちゃんたちは長く絶食するわけには行かない。
そんなことをすれば、体の小さなおちびちゃんたちは永遠にゆっくりしてしまうだろう。
とすれば、わずかな雨あがりの間に狩りに行って来るしかない。
「ゆっ!おちびちゃんたち、よくきいてね。おとーさんはかりにいってくるよ。
とちゅうであめさんがふってきたら、どこかであまやどりするから、すぐにかえってこれないかもしれないよ。
おとーさんがるすのあいだ、あめさんがやんでもおうちからでちゃだめだよ。」
「でもずっとおうちのにゃかでちゅまんにゃいよ!まりしゃ、おちょとであそびちゃいのじぇ!」
「おにぇーちゃん、おとーしゃんのいいつけをまもりゃにゃいなんちぇ、ときゃいはじゃにゃいわ。」
「そうだよ、おちびちゃん。あめさんは、ふってないようにみえてもまたすぐにふってくるんだよ。
おちびちゃんたちはちいさいから、あめさんにぬれるとすぐにゆっくりできなくなるんだよ。
でも、おうちのなかならあめさんもはいってこないよ。ゆっくりりかいしてね。」
「ゆぅ・・・、ゆっくちりかいしちゃよ・・・。」
「ゆっくちりかいしちゃわ!」
「それじゃいってきます!まりさは、おねーちゃんだから、いもーとのめんどうをちゃんとみてあげるんだよ!」
「ゆん!ゆっくちりかいしちゃのじぇ!」
「おとーしゃん、ゆっくちはやきゅかえってきてにぇ!やくちょくよ!」
「ゆっ!ゆっくりすぐにかえってくるから、おちびちゃんたちもゆっくりいいこにまっててね!」
こうして親まりさは、雨があがったわずかな合間に狩りへと出かけていった。
一時間後
子まりさと子ありすはまだまだ元気に親の帰りを待っている。
「ゆゆーん、おとーしゃん、はやきゅかえっちぇこにゃいかしら?」
「おとーしゃんは、かりのめいじんだから、かえっちぇきたらいーっぱいむーちゃむーちゃできりゅのじぇ!」
「ときゃいはなおはなしゃんもとっちぇきてくれるかちら?」
「おいしいいもむちしゃんもあるかもしれにゃいのじぇ!」
「「ゆゆーん!たのしみなのじぇ(たのしみね)!」」
二時間後
ぽつん、ぽつっ、ぽつっ
少し雨が降り始めた。そのせいでもないだろうが、二匹にも最初の元気がなくなってきた。
「あめしゃんふってきたのじぇ・・・・」
「おにぇーちゃん、おうちのなかでゆっくちまとうにぇ・・・。」
三時間後
びゅーー、ばちゃばちゃ、ザー
雨が本降りになってきた。風も強く、いよいよ大雨といった様相だ。
「ゆぅ・・・おにゃかすいたのじぇ・・・。おとーしゃんゆっくちはやくかえってくるのじぇ・・・。」
「ゆぅぅ、あめしゃんふってきたからあまやどりしちぇるのにぇ・・・。
かぜしゃんもゆっくちしてにゃいわ・・・。あめしゃん、ゆっくちはやくどこきゃいっちぇね!」
びゅうううう
ぶわっ
「ゆぴーー!あおいぬのしゃんとんでっちゃたのじぇ!」
「ゆわーーん!おにぇーちゃんきょわいいいーーーー!」
「だいじょうぶなんだじぇ!おうちのなかまではそうかんたんにあめしゃんは、はいってこにゃいのじぇ!」
「ゆぐっゆぐっ・・・。・・・あめしゃん、はいっちぇこにゃいわ!」
「あんしんするのじぇ。もうすこししたらおとーしゃんがかえってくるのじぇ。」
「ゆんっ!ゆっくちりか「ぽたっ」ゆゆぅ?」
ぽたっ、ぽたっ、ぽたたっ
最初のうちは、入口からわずかに雨が入ってくるぐらいだったが、そこは木箱。
ブルーシートの覆いがなくなってしまえば雨が滲みこんできて、
それが内側の段ボールの許容量を超えれば、当然いずれは雨漏りが始まる。
「「なんであめしゃん、おうちにはいってくるのじぇ(はいってくるにょ)ーーーーー!!」」
「ゆ゛っ・・ゆ゛っ・・ゆ゛っ・・ゆ゛ぁぁぁああああ!!おとーしゃーーーん!ゆっくちたすけちぇーーーー!!!」
「ゆゆっ、ありしゅおちつくのじぇ。こっちにくるのじぇ!ここならあめさんこないのじぇ!」
「ゆ・・・。ゆっくちりかいしちゃよ・・・。」 ずーりずーり
「おにぇーちゃんがついてるのじぇ!」 すーりすーり
「ゆーん!おにぇーちゃんありがちょーー!」 すーりすーり
雨がやむ気配はなく、雨漏りは酷くなる一方だ。
「ゆぐっ、ゆぐっ、にゃんであめしゃんこっちまではいってくるにょぉぉぉぉ!!」
「あめしゃん、おうちにはいっちぇきたらゆっくちできないのじぇぇぇ!!」
「ゆっしゅん!ゆっしゅん!おにぇーちゃん、ありちゅおからだがぬれてゆっくちできにゃいよ・・・。」
帽子のある子まりさに比べ、子ありすは体中が濡れている。
まだまだ、体が崩れることはなさそうだが、皮が薄く軟らかい子ゆっくりではいつまで保つかわからない。
それにこの秋の寒さに加え、体を濡らしてしまえば、簡単に病気になってしまうだろう。
「ゆぅ・・・。ゆゆっ!まりしゃのおぼーしをかしてあげるのじぇ!これがあればぬれないのじぇ!」
「ぢぇも、おにぇーちゃんがあめしゃんにぬれちゃうわ。」
「まりしゃはおにぇーちゃんだから、だいじょうぶなのじぇ!
かわいいいもーちょにょためにゆっくちがまんするのじぇ!」
まりさは、これまでの経験からこの天候では雨がまたすぐに降ってくるだろうと感じていた。
そのため、短時間で集中して狩りをし、結果、節約して二日ぐらいならば一家が食べつなげる程度の食料が手に入った。
このまりさは、天候の読み方といい、狩りの効率といい、そこそこ優秀な個体のようだ。
しかし、さあ帰ろうと思った矢先、雨が降り始めたので雨宿りしてから帰ることにした。
雨は風を伴って強くなる一方だったが、夕方近くにはやっとやんでくれた。
これでおちびちゃんたちのところに帰れる。
またいつ雨が降り出すかわかったものではない。
そうなる前に急いで帰ろう。
お帽子のなかには子まりさの好きな、いもむしさんもある。
子ありすの好きな、とかいはーなはなさんもある。
きっとお腹をすかせているだろうおちびちゃんたちも喜んでくれる。
「ゆっ、ゆっ、あまやどりしてたらおそくなっちゃったよ!おちびちゃんたちおなかぺーこぺーこだね!」
自然帰りの足も軽くなる。
ぽよんぽよん
「でも、これだけあればおちびちゃんたちもおなかいっぱい、むーしゃむーしゃできるよ!」
ぽよんぽよん
「ゆっ、ゆっ、もうすぐおうちだよ!ゆっくりいそぐよ!」
ぽよんぽよん
「ゆがーーん!どぼちてあおいぬのさんとんでっちゃてるのぉぉぉぉぉ!?」
やっとたどりついたおうちには厳重に掛けて固定したつもりのブルーシートが外れている。
なかのおちびちゃんたちは無事だろうか?
大急ぎでおうちのなかに飛び込んだ。
「おちびちゃんたち!だいじょうぶ!?」
「おとーしゃんっっ!まりしゃおにぇーちゃんがっ・・・!」
「おちびちゃん!?おちびちゃん!??」
雨漏りのなか、妹のためにお帽子を貸してあげた子まりさは全身がふやけて、皮が今にも解けだしてしまいそうだ。
子ありすも全身濡れているが、こちらは問題なさそうだ。
やはりまりさのお帽子を被っていたのが良かったのだろう。
それに比べて、子まりさは虫の息だ。
すぐにでも体を乾かしてやらなければ命に関わる。
「そーっとそーっとぺーろぺーろだよ。」
まりさは、獲って来た食料を床に置くと子まりさから余分な水分を取るため
ふやけた皮を傷めないように出来るだけ優しくぺーろぺーろしだした。
次にまりさは自分のお帽子を濡れた床の上に敷いて、その上に子まりさを寝かせた。
そして自分はブルーシートをもう一度木箱の上に被せ直す。
もし、同じことがあれば次こそ子ゆっくりたちの命はないだろう。
今度はブルーシートが飛んで行かないように大き目の石を両側にいくつものせる。
十分にブルーシートを固定すると、おうちのなかにもどる。
そして、心配そうに子まりさの傍に付き添っている子ありすから一部始終を聞きだした。
「ゆぅ・・・。まりさのおちびちゃんはとってもゆっくりしたおちびちゃんだね・・・。」
「ありしゅのせいで、まりちゃおにぇーちゃんがゆっくちできなくなっちゃうわ・・。」
「おちびちゃんのせいじゃないよ。おとーさんがしっかりしてなかったから、おちびちゃんたちをこわいめにあわっせちゃったね。
ごめんね・・・、おちびちゃん・・・。」
それからしばらくは子まりさが目を覚ますのと、体が乾くのを見守るしかなかった。
これ以上子まりさの体に触れれば、体が乾く前に皮が破れそうだったからだ。
途中、子ありすに獲ってきた食料を食べさせた。
子ありすは自分がまりさのお帽子を被っていたことに罪悪感を感じているのか、
子まりさが目を覚ますまで自分もむーしゃむーしゃしないと聞こうとしなかった。
しかし、子ありすにしても冷たい雨に濡れて平気なはずはない。
ただでさえ体力のない子ゆっくりなのだ。
説得の末、子ありすにどうにかむーしゃむーしゃさせると、
やはり体力が低下していたのかすぐに眠りに落ちてしまった。
それからはまりさが子まりさの傍に付き添い、見守り続けた。
「ゆぅぅーん・・・・。」
しばらくして、子まりさがか細いうめき声をあげ、目を覚ました。
「おちびちゃん!おちびちゃん!おとーさんだよ!ゆっくりしてね!」
「ゆぅ、ゆぅぅーん・・・。おとーしゃん・・・。まりちゃ・・・、きぼちわるいのじぇ・・・。」
「おちびちゃん、まっててね!すぐにむーしゃむーしゃさせてあげるよ!
おちびちゃんのだいすきな、いもむしさんもとってきたからね!」
「おとーしゃん・・・。ありしゅはぶじなのじぇ・・・?」
「おねーちゃんのおかげでありすはげんきだよ。
ゆんゆん、おちびちゃんもむーしゃむーしゃしようね。そうすればすぐにげんきになるよ。」
「ゆーん・・・。いもむししゃんおいしそうなのじぇ・・・。」
まりさが獲ってきた食料の中でも子まりさの好物のいもむしをもってきてやると、
子まりさはゆっくりと食事を始めた。
「むーしゃむーしゃ、むーしゃむーしゃちあわちぇー・・・。」
元気いっぱいとはいかないが、子まりさがそれなりに旺盛な食欲を見せたことでまりさもほっと安堵のため息をついた。
まだ体が乾ききっていないうえ、あれほどひどい目にあったのだから、
かなり消耗しているのは仕方ないにしても、食欲があるうちは大丈夫なはずだ。
そこは単純なゆっくりの体、食べて寝ることが出来れば持ち直すだろう。
食事を終えた子まりさを再び寝かしつけ、まりさも眠りにつく。
狩りの疲れに加え、おうちに帰ってからも気の休まる暇がなかった。
明日一日はごはんの心配もない。
またわずかな晴れ間を見て狩りにいくべきかもしれないが、
おちびちゃんたちの体調しだいでは一日中付き添ってやらなければならない。
なんにしろ明日になってからだ。今日はもうすーやすーやしよう。
おとーしゃん!おとーしゃん!
何だろう?おちびちゃんが自分を呼んでいる。
まだ眠いが仕方ない。
妹ありすは昨日は自分が帰ってきてすぐ、眠ってしまったから寂しくて早く起きろとうるさいのだろう。
「どうしたの、おちびちゃん?おとーさん、まだねむいよ・・・・。」
「おにぇーちゃんが・・・!おにぇーちゃんがたいへんにゃのーーーー!!」
おねーちゃん?
姉まりさがどうかしたのか?
こんなときゆっくりの餡子脳は悲しい。すぐには事に思い至らない。
その上、寝起きでぼんやりした頭でゆっくりと昨日の出来事を思い出していく。
そういえば昨日は・・・・?
そうだ、姉まりさは冷たい雨に体が解ける寸前まで濡れて体調をくずしていたんだ!
「ゆぅぅ、ゆぅぅぅん・・・。」
子まりさの方へ目をやると、確かに一目で様子がへんだとわかる。
体は・・・・もうほとんど乾いている。
しかし、顔色が悪いし息も荒い。そっとおちびちゃんの頬へふれると明らかに熱い。
病気だ。おちびちゃんは病気に罹ってしまったのだ。
あれだけ体が濡れて生死をさまよった挙句、冷たい雨で体を冷やしてしまったのが決定的だった。
「おちびちゃん?、おちびちゃん?おとーさんだよ!わかる!?」
「おにぇーちゃん、ゆっくち!ゆっくちしてね!」
「ゆぐぅぅ・・・。おとーしゃん・・、ありしゅ・・、ゆっくち・・ゆげっゆげっ!」
「おちびちゃん!」
「おにぇーちゃん!」
大変だ。子ゆっくりはゆ風邪をこじらせた程度でも簡単に永遠にゆっくりしてしまう。
自分ではどうにもならないかもしれない。
あとで、ぱちゅりーのとこへ行ってみたほうがいいかもしれない。
それはそうと、おちびちゃんたちにむーしゃむーしゃさせなくてはならない。
姉まりさには少しでも体力が必要だし、妹ありすまで倒れたら目も当てられない。
「おちびちゃんたち、あさむーしゃむーしゃしようね。
まりさ、きのうのいもむしさんもまだのこってるよ。いっっぱいたべてね。」
食料は節約しなければならないが、子ゆっくりたちに体力をつけさせる必要もある。
特に姉まりさにはたくさんむーしゃむーしゃしてほしい。
ごはんさんはまたあとで狩りにいくしかないね・・・。
しかし、そんな心配は杞憂だった。
子まりさは余程体調が悪いのか、昨日よりも食欲がなくなっていた。
「ゆぅ・・・。おちびちゃん、もうすこしむーしゃむーしゃしようね。」
「ゆゆぅ・・・。まりしゃもうおなかいっぱいなのじぇ・・・。」
いつもは特に食欲旺盛な子まりさが今日はまるで食欲がない。
まりさはいよいよ危機感を募らせていた。
食欲があるうちはまだ大丈夫。本当に弱っている生き物は食べることさえできなくなるのだ。
本能的にそれを察知したまりさは、子ありすに留守を頼むと小雨の降る中を早々に出かけていった。
「ぱちゅりー!」
「むきゅ!?まりさどうしたの、こんな雨の中を?」
「ぱちゅりぃぃぃぃーーー!!!」
まりさは、近所のぱちゅりーのところを訪ねていた。
このぱちゅりーは賢く、自分で狩りをするほかにその知恵や知識で他のやっくりを助けることでも食料を手に入れていた。
その知識には薬草など怪我や病気にかんするものも含まれていた。
「そう・・・。おちびちゃんがびょうきにかかってしまったのね・・・。」
「そうだよ!ごはんさんもあんまりむーしゃむーしゃしてくれなくて・・・。
もうぱちゅりーにたよるしかないんだよぉぉぉ!」
「むきゅーん・・・。わかったわ、ちょっとまってくれるかしら。」
そういうと、ぱちゅりーはお薬の入った救急セットを引っ張り出してきた。
ぱちゅりーが近くの公園で拾ってきた子供用のポシェットだ。
なかにはぱちゅりー特製の様々なおくすりが入れてある。
「むきゅ!じゅんびはばんたんよ!おちびちゃんのところへいきましょう!」
「ありがとおうぅぅぅぅ!!!ぱちゅでぃぃぃぃぃ!!!」
「おとーしゃん、おかえりなしゃい!」
おうちに帰るなり、妹ありすが駆け寄ってきた。
病気の姉まりさと二匹だけで心細かったのだろう。
「おちびちゃん、おねーちゃんのぐあいはどう?」
「おにぇーちゃんずっとねむっちぇるわ・・。ぢぇもくるちちょう・・・。
こんにゃのときゃいはじゃにゃいわ・・・。」
「むきゅ。おちびちゃん、ここはぱちゅりーにまかせて。」
「ゆゆーん・・。ぱちゅりーおにぇーしゃん、まりしゃおにぇーちゃんのおびょうき、ゆっくちなおしてにぇ!」
「むきゅん!さいぜんをつくすわ。それじゃしんさつするわね。どれどれ・・・。」
ぱちゅりーは熱を測ったり、顔色や呼吸を確認したあとで、
まりさと子ありすにも昨日からの子まりさの容態を聞いてみた。
「ゆ!きのうはこんなにぐあいがわるくなかったんだよ!
きょうのあさ、おちびちゃんをみたら、すっごくくるしそうだったんだよ!」
「ゆん!ありちゅ、おにぇーちゃんのくるちそうなこえでめがさめたのよ!」
「むきゅーん・・・。だいたいわかったわ。たぶんふつうのゆ風邪よ。」
「ゆかぜ!それじゃ、おちびちゃんはたすかるんだね!」
「ゆっくち!ぱちゅりーおにぇーしゃんはときゃいはにぇ!」
けれど、ぱちゅりーは深刻そうな表情で続ける。
「そんなにかんたんじゃないわ。
たいりょくのないおちびちゃんが、つめたいあめさんにいっぱいぬれてしまったんですもの・・・。
たいりょくがていかしてとてもきけんなじょうたいよ・・・。肺ゆんをおこすかもしれないわ。」
「ゆゆっ!はいゆん・・・。そんなぁ・・・、おちびちゃんはたすからないの?」
「・・・まだわからないわ。あんせいにして、えいようのあるものをたべさせてあげて。
それと、おくすりよ。ねつがさがって、すこしはらくになるはずよ。」
そういってぱちゅりーは、救急セットのなかから小瓶を取り出してまりさに渡した。
中にはペースト状にすりつぶされた薬草がはいっていた。
「げねつさようのあるはっぱさんに、なんしゅるいか、じようのあるはっぱさんをまぜたものなの。
ちょっとにがいから、おちびちゃんにはごはんにまぜて、むーしゃむーしゃさせてね。」
「ありがとうぱちゅりー!それでおれいのごはんなんだけど・・・。」
「むきゅ!またこんどでいいわ。おちびちゃんがげんきになったらおねがいね!」
「ゆ!ごめんね、ぱちゅりー・・・。きっとおいしいごはんたくさんもっていくからね!」
「こまったときはおたがいさまよ!」
「おとーしゃん、はやくおにぇーちゃんにおくすりのませてあげてにぇ!」
「ゆん、それじゃごはんにしようね!おちびちゃん!おちびちゃん!おきてね!」
「おにぇーちゃん、ゆっくちむーしゃむーしゃにようにぇ!」
「ゆゆーん・・・。ごはんなのじぇ・・・?」
「まりさにはとくべつにえいようのあるおくすりをあげるよ!
ごはんといっしょにむーしゃむーしゃしてね!そうしたらすぐにげんきになるからね!」
「・・わかったのじぇ。まりしゃおくすりむーしゃむーしゃするのぜ・・。」
まりさは小瓶のふたを開けると、拾ってきたアイスの棒でおくすりをごはんに混ぜ込んでいった。
ちょっと贅沢なおやさいさんの切れ端やあまいおはなさん、軟らかいくささんに混ぜて
出来る限り苦くないように工夫した。
「ゆげぇ・・・。おくすり、ちょっとにがいのじぇ・・・。」
「おちびちゃん、ゆっくりむーしゃむーしゃしてね!おくすりのまないとゆっくりできなくなるよ!」
「ゆぅぅ・・。まりしゃ、おくすりむーしゃむーしゃするのじぇ・・・!」
食事が終わって子まりさを寝かしつけてしばらくすると、苦しそうだった呼吸も心なしか穏やかになってきたようだ。
「ゆんゆん!さすが、ぱちゅりーのおくすりだよ!これでおちびちゃんもだいじょうぶだね!」
やることはまだまだある。
天気は十分に回復していないが、だからこそわずかな晴れ間に狩りに行かなければならない。
次に雨がやむのはいつになるかわからないのだ。
「おちびちゃん、おねーちゃんをよろしくね!
もし、おねーちゃんがどうしてもぐあいがわるいときは、おくすりのませてあげてね!」
「おとーしゃん、かりにいっちゃうにょ?
きょうはむーちゃむーちゃしなくてもいいから、おうちにいてにぇ?」
ああ、そうか。昨日あんなことがあっておちびちゃんは自分が家を空けるのが怖いんだ。
自分がしっかりしなかったせいで、おちびちゃんたちを怖い目にあわせてしまった・・・。
「ごめんね・・・。だめなおとーさんで・・・。
おうちはじょうぶにしといたからもうあおいぬのさんとんでったりしないよ。
おねーちゃんのためにもおいしいごはんたくさんとってこないといけないから、
おとーさん、かりにいってくるよ。ありすもなかないでね・・・。」
「ゆん・・・。ありちゅ、ないてなんかいにゃいもん。
ありちゅはときゃいはだきゃら、おるすばんできりゅわ!」
「ゆーん!おちびちゃんはとかいはだね。・・・しんじゃった、おちびちゃんのおかーさんをおもいだすよ・・・。」
「ゆゆ?どうしたの、おとーしゃん!?」
「ゆん!?なんでもないよ!ゆっくりいってくるよ!」
「ゆっくちいってらっしゃい!!」
ぴょんぴょん
ゆゆーん!おちびちゃんたちはとってもゆっくりしてるよ!
まりさはとってもしあわせだよ!
ぴょんぴょん
まりさは、昨日にもまして必死で狩りに没頭した。
狩場も昨日よりもおうちに近い。
もし、雨が降り始めたら、すぐにでもおうちに帰れる用ようにだ。
もし自分がもっとおうちをきちんと造っていたら・・・、
もし自分がもっと早く帰っていたら・・・、
こんなことにはならなかったはずなのに・・・。
それに、いくら強がっても妹ありすは雨が降り出せば怖い思いをするだろう。
まだまだ、ほんの小さな子ゆっくりなのだ。
なにより、くすりのおかげで小康状態にあるとはいえ子まりさのことが心配だ。
今日は早く帰ろう。
「ゆっくりただいま!おちびちゃん、おねーちゃんのぐあいはどう?」
「おにぇーちゃん、だんだんくるちそうににゃってるにょ!」
見れば確かに子まりさはくすりを飲ませる前と同じような状態に戻っている。
「ゆぅぅ・・・。おくすりがきれちゃったのかもしれないね・・。
おちびちゃん、ごはんにしようね。おねーちゃんもおこしてね。
おとーさんはごはんのよういをするよ。」
「ゆげっ、ゆげえっ!!ゆぐぅ・・・。まりちゃ、きもちわるいのじぇ・・・。」
「おちびちゃん!だいじょうぶ!?」
「おにぇーちゃん、ごはんさんむーしゃむーしゃしょうにぇ!」
「ゆぅぅ、あんまりたべたくないのじぇ・・・。」
「おちびちゃん、そんなこといわないでちょっとだけでもむーしゃむーしゃしようね。」
「ゆっくちりかいしたのじぇ。ごはんさんむーしゃむーしゃするのじぇ・・・。」
おくすりを飲ませて子まりさを再び寝かしつけると多少は顔色も良くなったように見える。
ただ、気のせいだろうか。朝方よりも具合が悪くなっていないだろうか・・・。
まりさの餡子脳にぱちゅりーの言っていた肺ゆんという言葉がふと過ぎる。
そんな馬鹿な!あんなにゆっくりとしたおとびちゃんが!
もし本当に肺ゆんだとしたらぱちゅりーにもどうにもならないだろう・・・。
いいや!違う!
冷たい雨に濡れたせいでゆ風邪を少しこじらせてしまっただけだ。
おくすりも効いているし、寝て起きれば少しは良くなっているはずだ・・・。
まりさは必死に自分に言い聞かせる。
そうして、子まりさを見守っているうちに、自分もうとうとと眠り込んでしまった。
「ゆぐぅぅ・・・。ゆげぇぇぇ・・・。」
まりさは物音で目を覚ます。辺りはまだ暗い。
おそらく早朝といったところだろう。
「ゆげぇぇぇ・・・・っ。」
「・・・おちびちゃん?」
様子が変だ。
暗いなか目を凝らして姉まりさのほうを見てみる。
「どぼちてあんこさんはいちゃってるのぉぉぉぉぉ!!!」
「おちびちゃん!?おちびちゃん!!すぐにおくすりのませてあげるからね!!
これいじょうあんこさんはいちゃだめだよ!!」
「ゆぐっ、ゆぐっ!!」
苦しそうな子まりさは、呼吸も荒くまともに返事も出来ない。
まりさは手早くおくすりの小瓶をあけると、アイスの棒で直接子まりさにおくすりを飲ませる。
子まりさは、呼吸が荒いからなのか、おくすりが苦いからなのか、再び戻しそうになってしまう。
「ゆげっ!ゆげぇぇぇ!!」
「おちびちゃん、ごめんね!!」
まりさは子まりさがおくすりを吐き出さないように口を無理やりふさぎ、落ち着くまでそのまま待つ。
しばらくすると、多少落ち着いてきたのか、静かになった。
次に子まりさが吐いてしまった餡子を集め、子まりさに飲み込ませる。
子まりさは、これも嫌がったが無理やりにでも飲み込ませる。
騒がしかったのか、子ありすも起きてきてしまった。
泣き出す子ありすをあやしつけ、子まりさの様子を見守る。
幸い、吐いてしまった餡子はそれほど多くなかったし、それも全部戻した。
おくすりのおかげでしばらくは大丈夫そうだ。
でも、これではもう一睡もすることができない。
少しでも油断すれば、子まりさは永遠にゆっくりしてしまうだろう。
明るくなったら一番にパチュリーのところへ行こう。
ぱちゅりーでも子まりさの容態は手に負えないかもしれない。
でも、自分には他にどうすることも出来ない。
「おちびちゃん・・・。ごめんね・・・。」
辺りがやっと明るくなった頃、早々にまりさはおうちを飛び出した。
雨は降っていない。
一応、子ありすを起こして、ぱちゅりーのところへ行ってくることと、子まりさの世話を頼んできた。
しかし、また餡子を吐くようなことがあれば、子ありすにはどうすることも出来ないだろう。
急がなければ!
「ぱちゅりー!おきてぱちゅりー!」
「むきゅきゅーん・・・。どうしたのまりさ、こんなそうちょうから・・・?」
「おちびちゃんがたいへんなんだよ!」
「・・・おちびちゃんが?」
「すこしまえに、あんこさんはいちゃったんだよ!とってもぐあいがわるそうだよ!」
「むきゅ!それはたいへんね!まってて、すぐじゅんびするわ!」
言うなり、例の救急セットを取り出してきた。
「むきゅん!じゅんびかんりょうよ。さあ、いきましょう!」
「ゆっゆっ、おちびちゃん!!」びょん
「むきゅー・・・むきゅん。」ごろん
二匹が大急ぎでまりさたちのおうちへ駆け込んできた。
「おとーしゃん!!」
「おちびちゃん、おねーちゃんのぐあいは?」
「ゆっくちねむっちぇるよ・・・。」
「むきゅ!そうね、おくすりがきているみたいね・・・。」
「でもぱちゅりー、おちびちゃん、さっきはあんこさんはいちゃったんだよ・・・。」
「むきゅぅ・・・・。そうね、かおいろもこころなしかきのうよりわるいし、やつれてみえるわ。」
「ぱちゅりー、おちびちゃんのぐあいはどう?」
「・・・・。まりさ、ちょっといいかしら。」
ぱちゅりーは、まりさをおうちの外へ連れ出した。
「どうしたの、いきなりおうちからでるなんて?」
ぱちゅりーは昨日にも増して深刻な表情で言う。
「むきゅ、おちついてきいてほしいわ。おちびちゃんはこのままでは、たすからないとおもうわ・・・。きっときょうかあすには・・・。」
「そんな!!なんとかならないの!? 」
「むきゅん・・・。ごめんなさい・・・・。おくすりをのませて、あとはいっしょうけんめいおせわをするしかないわ・・・。」
恐れていたことがとうとう目の前に現実として突きつけられてしまった。
自分のせいで、自分が頼りないばかりにあのゆっくりとしたおちびちゃんが・・・!
「でも、それじゃおちびちゃんはよくならないんでしょ!
ぱちゅりー、まりさはどうなってもいいよ!!どんなことでもするよ!!
だから、おちびちゃんをたすけてあげてね!!」
「ぱちゅりーにももうどうしようもないのよ・・・。なんとかできるとしたらにんげんさんぐらいしか・・・。」
にんげんさん!
そうだ!
にんげんさんならおちびちゃんをたすけることができるずだ!
「ゆゆ!にんげんさん!にんげんさんならおちびちゃんをなおせるんだね!?」
「むきゅん。にんげんさんのおくすりならおちびちゃんもなおせるとおもうわ・・・。
でも、にんげんさんのおそろしさは、まりさもしっているでしょ?
きけんすぎるわ。」
「それでもまりさはいくよ!ぜったいに、にんげんさんからおくすりをもらってくるんだよ!」
「わかったわ。それじゃあ・・・。」
ぱちゅりーはまりさを説得することが無駄だと悟ると、せめてものアドバイスをしてくれた。
「にんげんさんはとてもおそろしくて、つよいいきものよ。
でも、すべてのにんげんさんがこわいひとばかりじゃないのよ。
なかにはゆっくりにもやさしいひとがいるらしいの。
まりさもきいたことがあるでしょう?
にんげんさんとゆっくりが、いっしょにゆっくりくらしてるというおはなしを。」
「ゆ!かいゆっくりだね!きいたことがあるよ!
わかったよ!
ぱちゅりー、おちびちゃんをかいゆっくりにしてもらえばいいんだね!」
「だめよ、まりさ!にんげんさんにかいゆっくりにしてほしいということは、
つぶされてもいいといってるのとおなじことなのよ!」
「そんな・・・・。じゃあ、どうすればいいの・・・?」
「むきゅん。まずはやさしそうなにんげんさんをみつけるのよ。
ゆっくりをたすけてくれそうなひとよ。
できればかいゆっくりといっしょにくらしているひとがいいわ。
そしたらそのひとにおねがいして、おくすりをもらってくるの。
にんげんさんのおくすりなら、おちびちゃんだってたすかるはずよ!」
「ゆゆ!すごいよ、ぱちゅりー!それでそのおくすりはなんていうの?」
「むきゅん!おくすりのなまえはね・・・・。」
「おくすりのなまえは・・・!?」
「おくすりのなまえは、かぜぐすりと、おれんじじゅーすっていうのよ!!」
こうして、まりさのおくすりを求める旅が始まる。
初めてのSSになります。
続くかどうかわからんです。
ものすごく大まかな次回のストーリーだけ頭のなかにあります。
それとゆ虐がないことに腹がたった人ごめんね。
冒頭の「~があります」って注意書きはネタバレだと思うからやめときました。
「ゆぐぅぅ・・・。ゆげぇぇぇ・・・。」
閑静な住宅街のなかの空き地。
どこかの資材置き場なのか土管やドラム缶、木箱にダンボールなどが散乱している。
ずいぶん長い間放置されているのかドラム缶は赤錆に覆われ、あちこちで背の高い草が伸び放題になっている。
おそらく放置されていたであろう木箱に、雨よけのブルーシートが被せられている。
木箱の中にはさらにほぼ同じ大きさのダンボールが入れられている。
その中から人らしき声が漏れている。
しかし、木箱は人間が入れるほど大きくはない。
人間そっくりの声を発する生き物、ゆっくりの巣だ。
「ゆぅぅぅ・・・。」
「おちびちゃん、ゆっくり!ゆっくりだよ!!」
「まりしゃおにぇーちゃん、ゆっくちしちぇ!」
中には大小のまりさが一匹ずつと小さなありすが一匹。
親まりさと、その子ゆっくり達だ。まだ、赤ゆ言葉がぬけない頃だろうか。
ぐったりと寝込んでうなされているのは子まりさ。
あとの二匹がすぐ傍で心配そうに付き添い、ときどき子まりさに声をかけ励ましている。
「ゆわーん、まりしゃおにぇーちゃん!ありちゅのちぇいでまりしゃおにぇーちゃんが・・・」
「ゆっ!ちがうよ!おねーちゃんがびょーきになっちゃったのはおちびちゃんのせいじゃないよ!」
「ぢぇも、ありちゅがおにぇーちゃんのおぼうちをかりたちぇいで・・・」
「ゆぅ・・・、まりちゃは・・・おにぇーちゃんだから、
・・・いもーちょをたすけるのはあたりまえにゃんだよ・・・・・・ゆぐっゆげぇぇぇぇ」
「おちびちゃん!ゆっくり!あんこさんはいちゃだめだよ!」
「おにぇーちゃんゆっくちぃぃ!!」
姉まりさは病気だった。
ことの始めは二日前にさかのぼる。
折りしも秋の冷たい雨が数日続いていた。
夏から秋にかけては、ゆっくりたちも草花に虫と豊富な食料に恵まれる。
それはこの一家も例外ではなく、十分な食事にありつき、かつ多少の蓄えもすることが出来た。
しかし、断続的に降り続ける雨に狩りにいくもままならない。
蓄えもとうとう尽きてしまった。雨はまだやみそうにない。
自分はともかく、おちびちゃんたちは長く絶食するわけには行かない。
そんなことをすれば、体の小さなおちびちゃんたちは永遠にゆっくりしてしまうだろう。
とすれば、わずかな雨あがりの間に狩りに行って来るしかない。
「ゆっ!おちびちゃんたち、よくきいてね。おとーさんはかりにいってくるよ。
とちゅうであめさんがふってきたら、どこかであまやどりするから、すぐにかえってこれないかもしれないよ。
おとーさんがるすのあいだ、あめさんがやんでもおうちからでちゃだめだよ。」
「でもずっとおうちのにゃかでちゅまんにゃいよ!まりしゃ、おちょとであそびちゃいのじぇ!」
「おにぇーちゃん、おとーしゃんのいいつけをまもりゃにゃいなんちぇ、ときゃいはじゃにゃいわ。」
「そうだよ、おちびちゃん。あめさんは、ふってないようにみえてもまたすぐにふってくるんだよ。
おちびちゃんたちはちいさいから、あめさんにぬれるとすぐにゆっくりできなくなるんだよ。
でも、おうちのなかならあめさんもはいってこないよ。ゆっくりりかいしてね。」
「ゆぅ・・・、ゆっくちりかいしちゃよ・・・。」
「ゆっくちりかいしちゃわ!」
「それじゃいってきます!まりさは、おねーちゃんだから、いもーとのめんどうをちゃんとみてあげるんだよ!」
「ゆん!ゆっくちりかいしちゃのじぇ!」
「おとーしゃん、ゆっくちはやきゅかえってきてにぇ!やくちょくよ!」
「ゆっ!ゆっくりすぐにかえってくるから、おちびちゃんたちもゆっくりいいこにまっててね!」
こうして親まりさは、雨があがったわずかな合間に狩りへと出かけていった。
一時間後
子まりさと子ありすはまだまだ元気に親の帰りを待っている。
「ゆゆーん、おとーしゃん、はやきゅかえっちぇこにゃいかしら?」
「おとーしゃんは、かりのめいじんだから、かえっちぇきたらいーっぱいむーちゃむーちゃできりゅのじぇ!」
「ときゃいはなおはなしゃんもとっちぇきてくれるかちら?」
「おいしいいもむちしゃんもあるかもしれにゃいのじぇ!」
「「ゆゆーん!たのしみなのじぇ(たのしみね)!」」
二時間後
ぽつん、ぽつっ、ぽつっ
少し雨が降り始めた。そのせいでもないだろうが、二匹にも最初の元気がなくなってきた。
「あめしゃんふってきたのじぇ・・・・」
「おにぇーちゃん、おうちのなかでゆっくちまとうにぇ・・・。」
三時間後
びゅーー、ばちゃばちゃ、ザー
雨が本降りになってきた。風も強く、いよいよ大雨といった様相だ。
「ゆぅ・・・おにゃかすいたのじぇ・・・。おとーしゃんゆっくちはやくかえってくるのじぇ・・・。」
「ゆぅぅ、あめしゃんふってきたからあまやどりしちぇるのにぇ・・・。
かぜしゃんもゆっくちしてにゃいわ・・・。あめしゃん、ゆっくちはやくどこきゃいっちぇね!」
びゅうううう
ぶわっ
「ゆぴーー!あおいぬのしゃんとんでっちゃたのじぇ!」
「ゆわーーん!おにぇーちゃんきょわいいいーーーー!」
「だいじょうぶなんだじぇ!おうちのなかまではそうかんたんにあめしゃんは、はいってこにゃいのじぇ!」
「ゆぐっゆぐっ・・・。・・・あめしゃん、はいっちぇこにゃいわ!」
「あんしんするのじぇ。もうすこししたらおとーしゃんがかえってくるのじぇ。」
「ゆんっ!ゆっくちりか「ぽたっ」ゆゆぅ?」
ぽたっ、ぽたっ、ぽたたっ
最初のうちは、入口からわずかに雨が入ってくるぐらいだったが、そこは木箱。
ブルーシートの覆いがなくなってしまえば雨が滲みこんできて、
それが内側の段ボールの許容量を超えれば、当然いずれは雨漏りが始まる。
「「なんであめしゃん、おうちにはいってくるのじぇ(はいってくるにょ)ーーーーー!!」」
「ゆ゛っ・・ゆ゛っ・・ゆ゛っ・・ゆ゛ぁぁぁああああ!!おとーしゃーーーん!ゆっくちたすけちぇーーーー!!!」
「ゆゆっ、ありしゅおちつくのじぇ。こっちにくるのじぇ!ここならあめさんこないのじぇ!」
「ゆ・・・。ゆっくちりかいしちゃよ・・・。」 ずーりずーり
「おにぇーちゃんがついてるのじぇ!」 すーりすーり
「ゆーん!おにぇーちゃんありがちょーー!」 すーりすーり
雨がやむ気配はなく、雨漏りは酷くなる一方だ。
「ゆぐっ、ゆぐっ、にゃんであめしゃんこっちまではいってくるにょぉぉぉぉ!!」
「あめしゃん、おうちにはいっちぇきたらゆっくちできないのじぇぇぇ!!」
「ゆっしゅん!ゆっしゅん!おにぇーちゃん、ありちゅおからだがぬれてゆっくちできにゃいよ・・・。」
帽子のある子まりさに比べ、子ありすは体中が濡れている。
まだまだ、体が崩れることはなさそうだが、皮が薄く軟らかい子ゆっくりではいつまで保つかわからない。
それにこの秋の寒さに加え、体を濡らしてしまえば、簡単に病気になってしまうだろう。
「ゆぅ・・・。ゆゆっ!まりしゃのおぼーしをかしてあげるのじぇ!これがあればぬれないのじぇ!」
「ぢぇも、おにぇーちゃんがあめしゃんにぬれちゃうわ。」
「まりしゃはおにぇーちゃんだから、だいじょうぶなのじぇ!
かわいいいもーちょにょためにゆっくちがまんするのじぇ!」
まりさは、これまでの経験からこの天候では雨がまたすぐに降ってくるだろうと感じていた。
そのため、短時間で集中して狩りをし、結果、節約して二日ぐらいならば一家が食べつなげる程度の食料が手に入った。
このまりさは、天候の読み方といい、狩りの効率といい、そこそこ優秀な個体のようだ。
しかし、さあ帰ろうと思った矢先、雨が降り始めたので雨宿りしてから帰ることにした。
雨は風を伴って強くなる一方だったが、夕方近くにはやっとやんでくれた。
これでおちびちゃんたちのところに帰れる。
またいつ雨が降り出すかわかったものではない。
そうなる前に急いで帰ろう。
お帽子のなかには子まりさの好きな、いもむしさんもある。
子ありすの好きな、とかいはーなはなさんもある。
きっとお腹をすかせているだろうおちびちゃんたちも喜んでくれる。
「ゆっ、ゆっ、あまやどりしてたらおそくなっちゃったよ!おちびちゃんたちおなかぺーこぺーこだね!」
自然帰りの足も軽くなる。
ぽよんぽよん
「でも、これだけあればおちびちゃんたちもおなかいっぱい、むーしゃむーしゃできるよ!」
ぽよんぽよん
「ゆっ、ゆっ、もうすぐおうちだよ!ゆっくりいそぐよ!」
ぽよんぽよん
「ゆがーーん!どぼちてあおいぬのさんとんでっちゃてるのぉぉぉぉぉ!?」
やっとたどりついたおうちには厳重に掛けて固定したつもりのブルーシートが外れている。
なかのおちびちゃんたちは無事だろうか?
大急ぎでおうちのなかに飛び込んだ。
「おちびちゃんたち!だいじょうぶ!?」
「おとーしゃんっっ!まりしゃおにぇーちゃんがっ・・・!」
「おちびちゃん!?おちびちゃん!??」
雨漏りのなか、妹のためにお帽子を貸してあげた子まりさは全身がふやけて、皮が今にも解けだしてしまいそうだ。
子ありすも全身濡れているが、こちらは問題なさそうだ。
やはりまりさのお帽子を被っていたのが良かったのだろう。
それに比べて、子まりさは虫の息だ。
すぐにでも体を乾かしてやらなければ命に関わる。
「そーっとそーっとぺーろぺーろだよ。」
まりさは、獲って来た食料を床に置くと子まりさから余分な水分を取るため
ふやけた皮を傷めないように出来るだけ優しくぺーろぺーろしだした。
次にまりさは自分のお帽子を濡れた床の上に敷いて、その上に子まりさを寝かせた。
そして自分はブルーシートをもう一度木箱の上に被せ直す。
もし、同じことがあれば次こそ子ゆっくりたちの命はないだろう。
今度はブルーシートが飛んで行かないように大き目の石を両側にいくつものせる。
十分にブルーシートを固定すると、おうちのなかにもどる。
そして、心配そうに子まりさの傍に付き添っている子ありすから一部始終を聞きだした。
「ゆぅ・・・。まりさのおちびちゃんはとってもゆっくりしたおちびちゃんだね・・・。」
「ありしゅのせいで、まりちゃおにぇーちゃんがゆっくちできなくなっちゃうわ・・。」
「おちびちゃんのせいじゃないよ。おとーさんがしっかりしてなかったから、おちびちゃんたちをこわいめにあわっせちゃったね。
ごめんね・・・、おちびちゃん・・・。」
それからしばらくは子まりさが目を覚ますのと、体が乾くのを見守るしかなかった。
これ以上子まりさの体に触れれば、体が乾く前に皮が破れそうだったからだ。
途中、子ありすに獲ってきた食料を食べさせた。
子ありすは自分がまりさのお帽子を被っていたことに罪悪感を感じているのか、
子まりさが目を覚ますまで自分もむーしゃむーしゃしないと聞こうとしなかった。
しかし、子ありすにしても冷たい雨に濡れて平気なはずはない。
ただでさえ体力のない子ゆっくりなのだ。
説得の末、子ありすにどうにかむーしゃむーしゃさせると、
やはり体力が低下していたのかすぐに眠りに落ちてしまった。
それからはまりさが子まりさの傍に付き添い、見守り続けた。
「ゆぅぅーん・・・・。」
しばらくして、子まりさがか細いうめき声をあげ、目を覚ました。
「おちびちゃん!おちびちゃん!おとーさんだよ!ゆっくりしてね!」
「ゆぅ、ゆぅぅーん・・・。おとーしゃん・・・。まりちゃ・・・、きぼちわるいのじぇ・・・。」
「おちびちゃん、まっててね!すぐにむーしゃむーしゃさせてあげるよ!
おちびちゃんのだいすきな、いもむしさんもとってきたからね!」
「おとーしゃん・・・。ありしゅはぶじなのじぇ・・・?」
「おねーちゃんのおかげでありすはげんきだよ。
ゆんゆん、おちびちゃんもむーしゃむーしゃしようね。そうすればすぐにげんきになるよ。」
「ゆーん・・・。いもむししゃんおいしそうなのじぇ・・・。」
まりさが獲ってきた食料の中でも子まりさの好物のいもむしをもってきてやると、
子まりさはゆっくりと食事を始めた。
「むーしゃむーしゃ、むーしゃむーしゃちあわちぇー・・・。」
元気いっぱいとはいかないが、子まりさがそれなりに旺盛な食欲を見せたことでまりさもほっと安堵のため息をついた。
まだ体が乾ききっていないうえ、あれほどひどい目にあったのだから、
かなり消耗しているのは仕方ないにしても、食欲があるうちは大丈夫なはずだ。
そこは単純なゆっくりの体、食べて寝ることが出来れば持ち直すだろう。
食事を終えた子まりさを再び寝かしつけ、まりさも眠りにつく。
狩りの疲れに加え、おうちに帰ってからも気の休まる暇がなかった。
明日一日はごはんの心配もない。
またわずかな晴れ間を見て狩りにいくべきかもしれないが、
おちびちゃんたちの体調しだいでは一日中付き添ってやらなければならない。
なんにしろ明日になってからだ。今日はもうすーやすーやしよう。
おとーしゃん!おとーしゃん!
何だろう?おちびちゃんが自分を呼んでいる。
まだ眠いが仕方ない。
妹ありすは昨日は自分が帰ってきてすぐ、眠ってしまったから寂しくて早く起きろとうるさいのだろう。
「どうしたの、おちびちゃん?おとーさん、まだねむいよ・・・・。」
「おにぇーちゃんが・・・!おにぇーちゃんがたいへんにゃのーーーー!!」
おねーちゃん?
姉まりさがどうかしたのか?
こんなときゆっくりの餡子脳は悲しい。すぐには事に思い至らない。
その上、寝起きでぼんやりした頭でゆっくりと昨日の出来事を思い出していく。
そういえば昨日は・・・・?
そうだ、姉まりさは冷たい雨に体が解ける寸前まで濡れて体調をくずしていたんだ!
「ゆぅぅ、ゆぅぅぅん・・・。」
子まりさの方へ目をやると、確かに一目で様子がへんだとわかる。
体は・・・・もうほとんど乾いている。
しかし、顔色が悪いし息も荒い。そっとおちびちゃんの頬へふれると明らかに熱い。
病気だ。おちびちゃんは病気に罹ってしまったのだ。
あれだけ体が濡れて生死をさまよった挙句、冷たい雨で体を冷やしてしまったのが決定的だった。
「おちびちゃん?、おちびちゃん?おとーさんだよ!わかる!?」
「おにぇーちゃん、ゆっくち!ゆっくちしてね!」
「ゆぐぅぅ・・・。おとーしゃん・・、ありしゅ・・、ゆっくち・・ゆげっゆげっ!」
「おちびちゃん!」
「おにぇーちゃん!」
大変だ。子ゆっくりはゆ風邪をこじらせた程度でも簡単に永遠にゆっくりしてしまう。
自分ではどうにもならないかもしれない。
あとで、ぱちゅりーのとこへ行ってみたほうがいいかもしれない。
それはそうと、おちびちゃんたちにむーしゃむーしゃさせなくてはならない。
姉まりさには少しでも体力が必要だし、妹ありすまで倒れたら目も当てられない。
「おちびちゃんたち、あさむーしゃむーしゃしようね。
まりさ、きのうのいもむしさんもまだのこってるよ。いっっぱいたべてね。」
食料は節約しなければならないが、子ゆっくりたちに体力をつけさせる必要もある。
特に姉まりさにはたくさんむーしゃむーしゃしてほしい。
ごはんさんはまたあとで狩りにいくしかないね・・・。
しかし、そんな心配は杞憂だった。
子まりさは余程体調が悪いのか、昨日よりも食欲がなくなっていた。
「ゆぅ・・・。おちびちゃん、もうすこしむーしゃむーしゃしようね。」
「ゆゆぅ・・・。まりしゃもうおなかいっぱいなのじぇ・・・。」
いつもは特に食欲旺盛な子まりさが今日はまるで食欲がない。
まりさはいよいよ危機感を募らせていた。
食欲があるうちはまだ大丈夫。本当に弱っている生き物は食べることさえできなくなるのだ。
本能的にそれを察知したまりさは、子ありすに留守を頼むと小雨の降る中を早々に出かけていった。
「ぱちゅりー!」
「むきゅ!?まりさどうしたの、こんな雨の中を?」
「ぱちゅりぃぃぃぃーーー!!!」
まりさは、近所のぱちゅりーのところを訪ねていた。
このぱちゅりーは賢く、自分で狩りをするほかにその知恵や知識で他のやっくりを助けることでも食料を手に入れていた。
その知識には薬草など怪我や病気にかんするものも含まれていた。
「そう・・・。おちびちゃんがびょうきにかかってしまったのね・・・。」
「そうだよ!ごはんさんもあんまりむーしゃむーしゃしてくれなくて・・・。
もうぱちゅりーにたよるしかないんだよぉぉぉ!」
「むきゅーん・・・。わかったわ、ちょっとまってくれるかしら。」
そういうと、ぱちゅりーはお薬の入った救急セットを引っ張り出してきた。
ぱちゅりーが近くの公園で拾ってきた子供用のポシェットだ。
なかにはぱちゅりー特製の様々なおくすりが入れてある。
「むきゅ!じゅんびはばんたんよ!おちびちゃんのところへいきましょう!」
「ありがとおうぅぅぅぅ!!!ぱちゅでぃぃぃぃぃ!!!」
「おとーしゃん、おかえりなしゃい!」
おうちに帰るなり、妹ありすが駆け寄ってきた。
病気の姉まりさと二匹だけで心細かったのだろう。
「おちびちゃん、おねーちゃんのぐあいはどう?」
「おにぇーちゃんずっとねむっちぇるわ・・。ぢぇもくるちちょう・・・。
こんにゃのときゃいはじゃにゃいわ・・・。」
「むきゅ。おちびちゃん、ここはぱちゅりーにまかせて。」
「ゆゆーん・・。ぱちゅりーおにぇーしゃん、まりしゃおにぇーちゃんのおびょうき、ゆっくちなおしてにぇ!」
「むきゅん!さいぜんをつくすわ。それじゃしんさつするわね。どれどれ・・・。」
ぱちゅりーは熱を測ったり、顔色や呼吸を確認したあとで、
まりさと子ありすにも昨日からの子まりさの容態を聞いてみた。
「ゆ!きのうはこんなにぐあいがわるくなかったんだよ!
きょうのあさ、おちびちゃんをみたら、すっごくくるしそうだったんだよ!」
「ゆん!ありちゅ、おにぇーちゃんのくるちそうなこえでめがさめたのよ!」
「むきゅーん・・・。だいたいわかったわ。たぶんふつうのゆ風邪よ。」
「ゆかぜ!それじゃ、おちびちゃんはたすかるんだね!」
「ゆっくち!ぱちゅりーおにぇーしゃんはときゃいはにぇ!」
けれど、ぱちゅりーは深刻そうな表情で続ける。
「そんなにかんたんじゃないわ。
たいりょくのないおちびちゃんが、つめたいあめさんにいっぱいぬれてしまったんですもの・・・。
たいりょくがていかしてとてもきけんなじょうたいよ・・・。肺ゆんをおこすかもしれないわ。」
「ゆゆっ!はいゆん・・・。そんなぁ・・・、おちびちゃんはたすからないの?」
「・・・まだわからないわ。あんせいにして、えいようのあるものをたべさせてあげて。
それと、おくすりよ。ねつがさがって、すこしはらくになるはずよ。」
そういってぱちゅりーは、救急セットのなかから小瓶を取り出してまりさに渡した。
中にはペースト状にすりつぶされた薬草がはいっていた。
「げねつさようのあるはっぱさんに、なんしゅるいか、じようのあるはっぱさんをまぜたものなの。
ちょっとにがいから、おちびちゃんにはごはんにまぜて、むーしゃむーしゃさせてね。」
「ありがとうぱちゅりー!それでおれいのごはんなんだけど・・・。」
「むきゅ!またこんどでいいわ。おちびちゃんがげんきになったらおねがいね!」
「ゆ!ごめんね、ぱちゅりー・・・。きっとおいしいごはんたくさんもっていくからね!」
「こまったときはおたがいさまよ!」
「おとーしゃん、はやくおにぇーちゃんにおくすりのませてあげてにぇ!」
「ゆん、それじゃごはんにしようね!おちびちゃん!おちびちゃん!おきてね!」
「おにぇーちゃん、ゆっくちむーしゃむーしゃにようにぇ!」
「ゆゆーん・・・。ごはんなのじぇ・・・?」
「まりさにはとくべつにえいようのあるおくすりをあげるよ!
ごはんといっしょにむーしゃむーしゃしてね!そうしたらすぐにげんきになるからね!」
「・・わかったのじぇ。まりしゃおくすりむーしゃむーしゃするのぜ・・。」
まりさは小瓶のふたを開けると、拾ってきたアイスの棒でおくすりをごはんに混ぜ込んでいった。
ちょっと贅沢なおやさいさんの切れ端やあまいおはなさん、軟らかいくささんに混ぜて
出来る限り苦くないように工夫した。
「ゆげぇ・・・。おくすり、ちょっとにがいのじぇ・・・。」
「おちびちゃん、ゆっくりむーしゃむーしゃしてね!おくすりのまないとゆっくりできなくなるよ!」
「ゆぅぅ・・。まりしゃ、おくすりむーしゃむーしゃするのじぇ・・・!」
食事が終わって子まりさを寝かしつけてしばらくすると、苦しそうだった呼吸も心なしか穏やかになってきたようだ。
「ゆんゆん!さすが、ぱちゅりーのおくすりだよ!これでおちびちゃんもだいじょうぶだね!」
やることはまだまだある。
天気は十分に回復していないが、だからこそわずかな晴れ間に狩りに行かなければならない。
次に雨がやむのはいつになるかわからないのだ。
「おちびちゃん、おねーちゃんをよろしくね!
もし、おねーちゃんがどうしてもぐあいがわるいときは、おくすりのませてあげてね!」
「おとーしゃん、かりにいっちゃうにょ?
きょうはむーちゃむーちゃしなくてもいいから、おうちにいてにぇ?」
ああ、そうか。昨日あんなことがあっておちびちゃんは自分が家を空けるのが怖いんだ。
自分がしっかりしなかったせいで、おちびちゃんたちを怖い目にあわせてしまった・・・。
「ごめんね・・・。だめなおとーさんで・・・。
おうちはじょうぶにしといたからもうあおいぬのさんとんでったりしないよ。
おねーちゃんのためにもおいしいごはんたくさんとってこないといけないから、
おとーさん、かりにいってくるよ。ありすもなかないでね・・・。」
「ゆん・・・。ありちゅ、ないてなんかいにゃいもん。
ありちゅはときゃいはだきゃら、おるすばんできりゅわ!」
「ゆーん!おちびちゃんはとかいはだね。・・・しんじゃった、おちびちゃんのおかーさんをおもいだすよ・・・。」
「ゆゆ?どうしたの、おとーしゃん!?」
「ゆん!?なんでもないよ!ゆっくりいってくるよ!」
「ゆっくちいってらっしゃい!!」
ぴょんぴょん
ゆゆーん!おちびちゃんたちはとってもゆっくりしてるよ!
まりさはとってもしあわせだよ!
ぴょんぴょん
まりさは、昨日にもまして必死で狩りに没頭した。
狩場も昨日よりもおうちに近い。
もし、雨が降り始めたら、すぐにでもおうちに帰れる用ようにだ。
もし自分がもっとおうちをきちんと造っていたら・・・、
もし自分がもっと早く帰っていたら・・・、
こんなことにはならなかったはずなのに・・・。
それに、いくら強がっても妹ありすは雨が降り出せば怖い思いをするだろう。
まだまだ、ほんの小さな子ゆっくりなのだ。
なにより、くすりのおかげで小康状態にあるとはいえ子まりさのことが心配だ。
今日は早く帰ろう。
「ゆっくりただいま!おちびちゃん、おねーちゃんのぐあいはどう?」
「おにぇーちゃん、だんだんくるちそうににゃってるにょ!」
見れば確かに子まりさはくすりを飲ませる前と同じような状態に戻っている。
「ゆぅぅ・・・。おくすりがきれちゃったのかもしれないね・・。
おちびちゃん、ごはんにしようね。おねーちゃんもおこしてね。
おとーさんはごはんのよういをするよ。」
「ゆげっ、ゆげえっ!!ゆぐぅ・・・。まりちゃ、きもちわるいのじぇ・・・。」
「おちびちゃん!だいじょうぶ!?」
「おにぇーちゃん、ごはんさんむーしゃむーしゃしょうにぇ!」
「ゆぅぅ、あんまりたべたくないのじぇ・・・。」
「おちびちゃん、そんなこといわないでちょっとだけでもむーしゃむーしゃしようね。」
「ゆっくちりかいしたのじぇ。ごはんさんむーしゃむーしゃするのじぇ・・・。」
おくすりを飲ませて子まりさを再び寝かしつけると多少は顔色も良くなったように見える。
ただ、気のせいだろうか。朝方よりも具合が悪くなっていないだろうか・・・。
まりさの餡子脳にぱちゅりーの言っていた肺ゆんという言葉がふと過ぎる。
そんな馬鹿な!あんなにゆっくりとしたおとびちゃんが!
もし本当に肺ゆんだとしたらぱちゅりーにもどうにもならないだろう・・・。
いいや!違う!
冷たい雨に濡れたせいでゆ風邪を少しこじらせてしまっただけだ。
おくすりも効いているし、寝て起きれば少しは良くなっているはずだ・・・。
まりさは必死に自分に言い聞かせる。
そうして、子まりさを見守っているうちに、自分もうとうとと眠り込んでしまった。
「ゆぐぅぅ・・・。ゆげぇぇぇ・・・。」
まりさは物音で目を覚ます。辺りはまだ暗い。
おそらく早朝といったところだろう。
「ゆげぇぇぇ・・・・っ。」
「・・・おちびちゃん?」
様子が変だ。
暗いなか目を凝らして姉まりさのほうを見てみる。
「どぼちてあんこさんはいちゃってるのぉぉぉぉぉ!!!」
「おちびちゃん!?おちびちゃん!!すぐにおくすりのませてあげるからね!!
これいじょうあんこさんはいちゃだめだよ!!」
「ゆぐっ、ゆぐっ!!」
苦しそうな子まりさは、呼吸も荒くまともに返事も出来ない。
まりさは手早くおくすりの小瓶をあけると、アイスの棒で直接子まりさにおくすりを飲ませる。
子まりさは、呼吸が荒いからなのか、おくすりが苦いからなのか、再び戻しそうになってしまう。
「ゆげっ!ゆげぇぇぇ!!」
「おちびちゃん、ごめんね!!」
まりさは子まりさがおくすりを吐き出さないように口を無理やりふさぎ、落ち着くまでそのまま待つ。
しばらくすると、多少落ち着いてきたのか、静かになった。
次に子まりさが吐いてしまった餡子を集め、子まりさに飲み込ませる。
子まりさは、これも嫌がったが無理やりにでも飲み込ませる。
騒がしかったのか、子ありすも起きてきてしまった。
泣き出す子ありすをあやしつけ、子まりさの様子を見守る。
幸い、吐いてしまった餡子はそれほど多くなかったし、それも全部戻した。
おくすりのおかげでしばらくは大丈夫そうだ。
でも、これではもう一睡もすることができない。
少しでも油断すれば、子まりさは永遠にゆっくりしてしまうだろう。
明るくなったら一番にパチュリーのところへ行こう。
ぱちゅりーでも子まりさの容態は手に負えないかもしれない。
でも、自分には他にどうすることも出来ない。
「おちびちゃん・・・。ごめんね・・・。」
辺りがやっと明るくなった頃、早々にまりさはおうちを飛び出した。
雨は降っていない。
一応、子ありすを起こして、ぱちゅりーのところへ行ってくることと、子まりさの世話を頼んできた。
しかし、また餡子を吐くようなことがあれば、子ありすにはどうすることも出来ないだろう。
急がなければ!
「ぱちゅりー!おきてぱちゅりー!」
「むきゅきゅーん・・・。どうしたのまりさ、こんなそうちょうから・・・?」
「おちびちゃんがたいへんなんだよ!」
「・・・おちびちゃんが?」
「すこしまえに、あんこさんはいちゃったんだよ!とってもぐあいがわるそうだよ!」
「むきゅ!それはたいへんね!まってて、すぐじゅんびするわ!」
言うなり、例の救急セットを取り出してきた。
「むきゅん!じゅんびかんりょうよ。さあ、いきましょう!」
「ゆっゆっ、おちびちゃん!!」びょん
「むきゅー・・・むきゅん。」ごろん
二匹が大急ぎでまりさたちのおうちへ駆け込んできた。
「おとーしゃん!!」
「おちびちゃん、おねーちゃんのぐあいは?」
「ゆっくちねむっちぇるよ・・・。」
「むきゅ!そうね、おくすりがきているみたいね・・・。」
「でもぱちゅりー、おちびちゃん、さっきはあんこさんはいちゃったんだよ・・・。」
「むきゅぅ・・・・。そうね、かおいろもこころなしかきのうよりわるいし、やつれてみえるわ。」
「ぱちゅりー、おちびちゃんのぐあいはどう?」
「・・・・。まりさ、ちょっといいかしら。」
ぱちゅりーは、まりさをおうちの外へ連れ出した。
「どうしたの、いきなりおうちからでるなんて?」
ぱちゅりーは昨日にも増して深刻な表情で言う。
「むきゅ、おちついてきいてほしいわ。おちびちゃんはこのままでは、たすからないとおもうわ・・・。きっときょうかあすには・・・。」
「そんな!!なんとかならないの!? 」
「むきゅん・・・。ごめんなさい・・・・。おくすりをのませて、あとはいっしょうけんめいおせわをするしかないわ・・・。」
恐れていたことがとうとう目の前に現実として突きつけられてしまった。
自分のせいで、自分が頼りないばかりにあのゆっくりとしたおちびちゃんが・・・!
「でも、それじゃおちびちゃんはよくならないんでしょ!
ぱちゅりー、まりさはどうなってもいいよ!!どんなことでもするよ!!
だから、おちびちゃんをたすけてあげてね!!」
「ぱちゅりーにももうどうしようもないのよ・・・。なんとかできるとしたらにんげんさんぐらいしか・・・。」
にんげんさん!
そうだ!
にんげんさんならおちびちゃんをたすけることができるずだ!
「ゆゆ!にんげんさん!にんげんさんならおちびちゃんをなおせるんだね!?」
「むきゅん。にんげんさんのおくすりならおちびちゃんもなおせるとおもうわ・・・。
でも、にんげんさんのおそろしさは、まりさもしっているでしょ?
きけんすぎるわ。」
「それでもまりさはいくよ!ぜったいに、にんげんさんからおくすりをもらってくるんだよ!」
「わかったわ。それじゃあ・・・。」
ぱちゅりーはまりさを説得することが無駄だと悟ると、せめてものアドバイスをしてくれた。
「にんげんさんはとてもおそろしくて、つよいいきものよ。
でも、すべてのにんげんさんがこわいひとばかりじゃないのよ。
なかにはゆっくりにもやさしいひとがいるらしいの。
まりさもきいたことがあるでしょう?
にんげんさんとゆっくりが、いっしょにゆっくりくらしてるというおはなしを。」
「ゆ!かいゆっくりだね!きいたことがあるよ!
わかったよ!
ぱちゅりー、おちびちゃんをかいゆっくりにしてもらえばいいんだね!」
「だめよ、まりさ!にんげんさんにかいゆっくりにしてほしいということは、
つぶされてもいいといってるのとおなじことなのよ!」
「そんな・・・・。じゃあ、どうすればいいの・・・?」
「むきゅん。まずはやさしそうなにんげんさんをみつけるのよ。
ゆっくりをたすけてくれそうなひとよ。
できればかいゆっくりといっしょにくらしているひとがいいわ。
そしたらそのひとにおねがいして、おくすりをもらってくるの。
にんげんさんのおくすりなら、おちびちゃんだってたすかるはずよ!」
「ゆゆ!すごいよ、ぱちゅりー!それでそのおくすりはなんていうの?」
「むきゅん!おくすりのなまえはね・・・・。」
「おくすりのなまえは・・・!?」
「おくすりのなまえは、かぜぐすりと、おれんじじゅーすっていうのよ!!」
こうして、まりさのおくすりを求める旅が始まる。
初めてのSSになります。
続くかどうかわからんです。
ものすごく大まかな次回のストーリーだけ頭のなかにあります。
それとゆ虐がないことに腹がたった人ごめんね。
冒頭の「~があります」って注意書きはネタバレだと思うからやめときました。